JP3972380B2 - α−アルミナの製造方法 - Google Patents

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  • Compounds Of Alkaline-Earth Elements, Aluminum Or Rare-Earth Metals (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高純度の粉末状のα−アルミナおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
α−アルミナは、研磨材、焼結用原料、プラズマ溶射材、充填材等に広く用いられている。従来の一般的でかつ最も安価なアルミナの工業的製造方法はバイヤー法である。バイヤー法では、原料であるボーキサイトを水酸化ナトリウムで処理して得られた水酸化アルミニウムを大気中で焼成することにより、α−アルミナ粉末が製造されている。
【0003】
しかし、この方法で製造される水酸化アルミニウム中には、かなりの量のナトリウム分が含有され、このナトリウム分は大気中で焼成して得られるα−アルミナ中にも、殆どそのまま残存する。従って、このα−アルミナを点火栓等の電気絶縁材料として使用する場合には、残存するナトリウム分が電気絶縁性を阻害する等の問題を有していた。
【0004】
このような問題点を解決するためにいくつかの提案がなされてきた。例えば、特開昭47−5744号公報には、多量のナトリウムを含有するバイヤー法によって得られる水酸化アルミニウムを仮焼する際に、該水酸化アルミニウムに塩酸または塩化アルミニウム水溶液を湿潤させて、珪酸質耐火容器に詰めた状態で炉中で焼成して脱ナトリウムする方法が開示されている。
【0005】
また、バイヤー法によって得られる水酸化アルミニウムまたはアルミナに塩酸または塩化アルミニウムと、硼酸または酸化硼素とを共存させて焼成する方法が特開昭48−34680号公報に、またバイヤー法によって得られる水酸化アルミニウムに塩酸または塩化アルミニウムおよび少量のシリカ系物質を添加、混合し、焼成した後にシリカ系物質とアルミナを分離する方法が特開昭54−16398号公報に開示されている。
【0006】
しかしながら、これらの方法で得られるα−アルミナ粉末には、脱ナトリウム処理を行った後も、400〜100ppm程度のナトリウム(Na2 O換算で、0.04〜0.01重量%)が含まれており、用途によっては必ずしも満足できるものではなかった。また、これらの方法ではアルミナ粉末を焼結する際に異常粒成長の原因となるカルシウムや鉄等の他の不純物の除去も困難であった。
【0007】
さらに、これらの方法で得られるα−アルミナ粒子の形状は不定形で、粗大な凝集粒子を多く含むため、それぞれの用途に応じて、ボールミルや振動ミルを使用しての解砕工程を経て製品とされるが、解砕は必ずしも容易でなく、そのために解砕コストもかかり、また、解砕が長時間にわたるため、微粉末が発生して粒度分布が広くなったり、異物の混入によって純度の低下が生じるという問題があった。
【0008】
ところで、脱ナトリウム処理と同時に、α−アルミナの粒子径を制御する方法として、水酸化アルミニウムを、塩素ガスとフッ化アルミニウムの共存下に1000℃以上で焼成する方法が米国特許3175883号明細書に開示されている。この方法で得られるα−アルミナのナトリウム含有量は出発原料である水酸化アルミニウム中のナトリウム含有量の30重量%以下にまで低減されるが、ナトリウム含有量が100ppm以下のα−アルミナは得られていない。
【0009】
米国特許3532460号明細書には、ガリウム、鉄、亜鉛、カルシウム、マンガン、銅あるいはナトリウムの酸化物で汚染された遷移アルミナを、加熱処理により水分量2〜6重量%、比表面積40〜120m2 /gとし、ついで酸素フリーの塩素ガス雰囲気下、800〜1000℃で加熱処理した後、水洗や加熱処理等を行うことにより、不純物の少ないアルミナを製造する方法が開示されている。しかしながら、この方法で得られるアルミナは遷移アルミナであり、該アルミナ中の鉄含有量は塩素ガス雰囲気処理によって大幅に低減し、ナトリウムおよびカルシウム含有量は塩素ガス処理後に水洗や加熱処理を行うことにより低減するが、ナトリウム含有量およびカルシウム含有量が、それぞれ100ppm以下の高純度なアルミナは未だ得られていない。
【0010】
特開昭64−3008号公報には、平均二次粒子径が10μm以下であるバイヤー法によって得られる水酸化アルミニウムまたは遷移アルミナに機械的衝撃を加えた後、塩素含有物質の存在下に焼成することによって、易解砕性のアルミナ粉末を製造する方法が開示されている。この方法によって、平均二次粒子径3μm以下の微粒でかつ粒度分布がシャープなα−アルミナ粉末が得られ、該粉末を用いて、組織が均一な高密度で高強度の焼結体を得ることができるため、電子材料セラミックス用途等に対する工業的価値は大であった。しかしながら、具体的に開示されている方法は、原料である水酸化アルミニウムを塩酸に懸濁、乾燥した後、焼成してα−アルミナ粉末を得る方法であり、ナトリウム含有量が100ppm以下の、高純度のα−アルミナは得られてはいない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記した問題を解決し、バイヤー法による水酸化アルミニウムを出発原料として、従来のバイヤー法により得られるα−アルミナ粉末と比較して、ナトリウム、鉄およびカルシウム含有量の極めて少ない、高純度で、微細な粒子からなり、かつ粒度分布の狭い粉末状のα−アルミナを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、バイヤー法による水酸化アルミニウムまたは該バイヤー法による水酸化アルミニウムを仮焼して得られる遷移アルミナを粉砕し、ついで塩化水素ガスを1体積%以上、あるいは塩素ガスを1体積%以上および水蒸気を0.1体積%以上含有する雰囲気ガス中にて、600〜1400℃の温度で焼成するα−アルミナの製造方法に係るものである。
【0013】
また本発明は、バイヤー法による水酸化アルミニウムまたは該バイヤー法による水酸化アルミニウムを仮焼して得られる遷移アルミナを粉砕し、ついで塩化水素ガスを1体積%以上、あるいは塩素ガスを1体積%以上および水蒸気を0.1体積%以上含有する雰囲気ガス中にて、600〜1400℃の温度で焼成することにより得られ、アルミナ純度が99.8重量%以上、ナトリウム含有量が40ppm以下、鉄含有量が20ppm以下である粉末状のα−アルミナに係るものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
【発明の実施の形態】
【0014】
本発明の粉末状のα−アルミナの製造方法は、原料として、バイヤー法によって得られる水酸化アルミニウム、あるいはバイヤー法によって得られる水酸化アルミニウムを仮焼して得られる遷移アルミナを用いることを特徴とする。以下の説明において、本発明の方法において原料として用いられるバイヤー法による水酸化アルミニウムまたは該バイヤー法による水酸化アルミニウムを仮焼して得られる遷移アルミナを、バイヤー法による水酸化アルミニウム等と略称することがある。
【0015】
バイヤー法によって得られる水酸化アルミニウムは、1μm以上、通常は10μm以上の一次粒子が凝集して形成される10〜100μm程度の二次粒子であり、該水酸化アルミニウムには、ナトリウムが200ppm以上、通常は500〜2000ppm程度、カルシウムが10ppm以上、通常は50〜500ppm程度、鉄が20ppm以上、通常は50〜200ppm程度含まれる。
【0016】
本発明の方法においては、バイヤー法によって得られる水酸化アルミニウム等を、焼成する前に予め粉砕して、塩化水素ガスを1体積%以上、あるいは塩素ガスを1体積%以上および水蒸気を0.1体積%以上含有する雰囲気ガス中にて600〜1400℃、好ましくは800〜1200℃の温度で焼成して粉末状のα−アルミナを得ることを特徴とする。
【0017】
本発明の方法により、ナトリウム含有量が40ppm以下、鉄含有量が20ppm以下の高純度の粉末状のα−アルミナを得ることができる。
【0018】
また、本発明の方法において、好ましくは、ナトリウム含有量が40ppm以下、鉄含有量が20ppm以下、カルシウム含有量が40ppm以下、さらに好ましくはナトリウム、鉄およびカルシウム含有量がそれぞれ10ppm以下の、高純度の粉末状のα−アルミナを得たい場合には、上記のバイヤー法によって得られる水酸化アルミニウム等を予め粉砕する工程および焼成の工程に加えて、焼成して得られたα−アルミナを洗浄する工程を実施することが好ましい。
【0019】
また、バイヤー法による水酸化アルミニウム等を予め粉砕してから焼成することにより、0.1〜2μm程度の微細な粒子からなる粉末状のα−アルミナが得られる。また、得られるα−アルミナ粒子の粒子径の制御は、焼成に際して原料であるバイヤー法による水酸化アルミニウム等に種晶を添加する方法によっても行うことができる。
【0020】
ここで、α−アルミナの粒子径を制御する種晶とは、α−アルミナの結晶成長の核となるもので、該種晶を核としてそのまわりにα−アルミナが成長するものであり、例えば、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、ニッケル等の酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、炭窒化物、ハロゲン化物等を例示することができる。
【0021】
バイヤー法による水酸化アルミニウム等の粉砕後の粒子径は、原料として用いるバイヤー法による水酸化アルミニウム等の粒子径にも依存するので必ずしも限定されないが、好ましくは累積粒度分布の50%径(D50)で10μm以下、より好ましくは5μm以下であり、最も好ましくは、水酸化アルミニウム等の一次粒子が残存しない程度にまで粉砕して用いれば、より高純度の粉末状のα−アルミナを得ることができる。
【0022】
バイヤー法による水酸化アルミニウム等の粉砕の方法は特に限定されるものではなく、例えば、通常工業的に用いられる、振動ミルやボールミルによる粉砕方法が挙げられる。また、これらの粉砕に際しては、乾式粉砕または湿式粉砕またはこれらの組み合わせのいずれの方法も用いることができる。
【0023】
また、バイヤー法による水酸化アルミニウム等の粉砕に用いられる粉砕容器やボールとしては、アルミナ製やジルコニア製や樹脂製等のものが使用できるが、粉砕によってバイヤー法による水酸化アルミニウム等の原料に、ナトリウムや鉄やカルシウム等の汚染が極力生じないように粉砕することが好ましい。
【0024】
このような粉砕方法としては、例えば、粉砕容器はアルミナ製や樹脂製等で、粉砕用ボールとして、例えば、アルミナ製、ジルコニア製あるいは樹脂製等のものを用いた方法等を挙げることができ、このような粉砕方法は、最も高純度なα−アルミナを得たい場合に有効な方法である。
【0025】
また必要に応じて、粉砕後に分級を行ってから焼成をすることもできる。例えば、粉砕後の水酸化アルミニウム中に未粉砕の一次粒子が残存していたり、粒度分布が広い等の場合には、分級することにより、大きな粒子を除いてから、または、所定の粒子径に調整してから焼成する方法も用いることができ、このような方法は高純度のα−アルミナを得るためには好ましい方法である。
【0026】
分級の方法は特に限定されるものではなく、例えば、工業的に使用される湿式或いは乾式分級法を用いることができる。
【0027】
次に、上記の粉砕したバイヤー法による水酸化アルミニウム等を、雰囲気ガスの全体積に対して塩化水素ガスを1体積%以上、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上含有する雰囲気ガス中にて焼成する。塩化水素ガスの濃度の上限は特に限定されないが、工業的生産性の面から、好ましくは70体積%以下、より好ましくは50体積%以下、さらに好ましくは40体積%以下である。塩化水素ガスの希釈ガスとしては、アルゴン等の不活性ガス、窒素、水素あるいは空気またはこれらの混合ガスを用いることができる。
【0028】
また、上記の粉砕したバイヤー法による水酸化アルミニウム等を、雰囲気ガスの全体積に対して塩素ガスを1体積%以上、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上と、水蒸気を0.1体積%以上、好ましくは1体積%以上、より好ましくは5体積%以上とを含有する雰囲気ガス中にて焼成することもできる。塩素ガスの濃度の上限は特に限定されないが、工業的生産性の面から、塩素ガスは、好ましくは70体積%以下、より好ましくは50体積%以下、さらに好ましくは40体積%以下である。塩素ガス及び水蒸気の希釈ガスとしては、アルゴン等の不活性ガス、窒素、水素あるいは空気またはこれらの混合ガスを用いることができる。
【0029】
焼成における雰囲気ガスの圧力は特に限定されず、工業的に用いられる範囲において任意に選ぶことができる。このような雰囲気ガス中での焼成により、比較的に低い焼成温度で、目的とする本発明の粉末状のα−アルミナを得ることができる。
【0030】
焼成温度は600〜1400℃、好ましくは800〜1200℃である。この温度範囲に制御して焼成することにより、工業的に有利な速度でα−アルミナが生成し、また、生成するα−アルミナ粒子同士の凝集が起こりにくく、焼成直後でも粒度分布の狭いα−アルミナ粒子からなる本発明の粉末状のα−アルミナを得ることができる。本発明の特徴の一つとして、従来の方法に比べて低い焼成温度で高純度のα−アルミナを得ることができることが挙げられる。
【0031】
適切な焼成の時間は雰囲気ガスの濃度や焼成の温度にも依存するので必ずしも限定されないが、好ましくは1分以上、より好ましくは10分以上である。バイヤー法による水酸化アルミニウム等からα−アルミナの粒子が結晶成長するまで焼成すれば十分である。本発明の製造方法によれば、従来の方法の焼成時間に比べて短い時間で目的とする粉末状のα−アルミナを得ることができる。
【0032】
雰囲気ガスの供給源や供給方法は特には限定されない。原料であるバイヤー法による水酸化アルミニウム等が存在する反応系に上記の雰囲気ガスを導入することができればよい。
【0033】
焼成装置は必ずしも限定されず、いわゆる焼成炉を用いることができる。焼成炉は塩化水素ガスに腐食されない材質で構成されていることが望ましい。さらには雰囲気を調整できる構造を備えていることが望ましい。また、塩化水素ガスあるいは塩素ガスという腐食性ガスを用いるので、焼成炉には気密性があることが望ましい。
【0034】
工業的には連続方式で焼成することが好ましく、例えば、トンネル炉、ロータリーキルン等を用いることができる。腐食性ガス雰囲気中でα−アルミナの粒子成長が進行するので、焼成工程で用いられる装置、例えば、坩堝やボートは、アルミナ製、石英製、耐酸レンガ製あるいはグラファイト製であることが好ましい。
【0035】
上記の製造方法により製造された粉末状のα−アルミナは、塩化水素ガス、あるいは塩素ガスおよび水蒸気を含有する雰囲気ガス中にて焼成することにより、バイヤー法による水酸化アルミニウムに含まれるナトリウム分や鉄分は、ナトリウム含有量が40ppm以下、鉄含有量が20ppm以下、好ましくはナトリウム含有量が10ppm以下、鉄含有量が10ppm以下にまで低減させることができる。
【0036】
しかし、上記の本発明の方法により製造された粉末状のα−アルミナは、上記雰囲気ガス中にて焼成しただけは、若干のナトリウムが残存したり、用いるバイヤー法による水酸化アルミニウム等のカルシウム含有量によっては、不純物としてのカルシウムを多量に含む場合がある。カルシウム含有量が多いα−アルミナ粉末を焼結して焼結体を作製する場合は、カルシウムが主たる原因で異常粒成長を起こし焼結体強度等の焼結体特性を低下させ易く、このような用途に用いるためにはカルシウム含有量が少ないα−アルミナ粉末が必要となる。
【0037】
従って、このような場合には、焼成後の粉末状のα−アルミナを洗浄することにより、カルシウム含有量が低減された粉末状のα−アルミナを得ることができる。このような方法は、カルシウム含有量が40ppm以下の、より高純度の粉末状のα−アルミナを目的とする場合に特に好ましい。
【0038】
すなわち、洗浄工程を行うとき、カルシウム含有量を40ppm以下、好ましくは10ppm以下にまで低減させることができる。
【0039】
この場合、洗浄の方法は特に限定されるものではないが、焼成後のα−アルミナに含まれるナトリウムやカルシウム分を溶解する溶媒、例えば水による洗浄が好ましい。具体的には、室温〜100℃の温度の水中に焼成して得られたα−アルミナ粉末を投入し撹拌等を行うことにより、水によるナトリウムやカルシウム分の浸出を行った後に、濾過、さらに水洗を行う方法等を採用することができる。また、水洗の程度としては、水洗後の排水に、例えば硝酸銀水溶液を滴下して、該排水の白濁の有無を調べ、該排水中に塩素イオンの存在を認めなくなる程度にまで洗浄することが好ましい。
【0040】
上記の本発明の製造方法によれば、安価なバイヤー法による水酸化アルミニウムを原料に用いて、アルミナ純度が99.8重量%以上、通常は99.9重量%以上の高純度の粉末状のアルミナを容易に得ることができる
【0041】
上記の本発明の製造方法により製造された粉末状のα−アルミナは若干の凝集粒子を含む場合があるが、この凝集は軽度なものであり、簡単な解砕を行うことによって容易に、凝集粒子が殆どない粒度分布の狭い本発明の粉末状のα−アルミナを製造することができる。
ここでいう粒度分布の狭い粉末状のα−アルミナとは、累積粒度分布の微粒子側から、累積10%径、累積90%径をそれぞれD10、D90としたとき、D90/D10の値が小さく、その値が好ましくは15以下、より好ましくは10以下、最も好ましくは5以下の粒度分布を有するものである。
【0042】
上記の本発明の製造方法により製造された粉末状のα−アルミナを原料に用いて、焼結密度が3.8g/cm3 以上の高密度の焼結体を製造することができる。焼結体の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、必要に応じて水等の溶媒で洗浄して、乾式解砕または湿式解砕等により簡単な解砕を行なって粒度分布のより狭い粉末状のα−アルミナとして、加圧成形やスリップキャスト成形等の成形法によって成形体を作製して、ついで、大気中、1400〜1700℃にて焼結する等の方法が挙げられる。
【0043】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
なお、本発明における各種の測定は次のようにして行った。
1.バイヤー法による水酸化アルミニウムおよびα−アルミナ粉末の累積粒度分布とα−アルミナ粒子の平均粒子径の測定
(1)レーザー散乱法を測定原理とするマスターサイザー(マルバーン社製)を用いて測定した。
【0045】
(2)α−アルミナのSEM(走査型電子顕微鏡、日本電子株式会社製;T−220)写真を撮影し、その写真から50〜100個の粒子を選び出して、画像解析を行い、円相当径の平均値を求めた。円相当径とは、面積が等しい真円の直径に換算した値をいう。
【0046】
2.アルミナ純度の測定
発光分析により不純物イオンである珪素、鉄、チタン、マグネシウム、ナトリウム、カルシウム、カリウム、ジルコニウム、イットリウムの混入量を測定し、不純物含有量を酸化物換算して求め、これらの合計量(重量%)を100重量%から差し引いてアルミナ純度とした。
【0047】
実施例において使用したバイヤー法による水酸化アルミニウム原料は次に示すとおりである。
1.水酸化アルミニウムA
一次粒子径が約5〜20μm、累積粒度分布の累積50%径(D50)が17μmで、ナトリウムを830ppm、カルシウムを190ppm、鉄を62ppm含む水酸化アルミニウム。
【0048】
2.水酸化アルミニウムB
一次粒子径が約5〜20μm、累積粒度分布の累積50%径(D50)が38μmで、ナトリウムを1000ppm、カルシウムを90ppm、鉄を26ppm含む水酸化アルミニウム。
【0049】
3.水酸化アルミニウムC
一次粒子径が約1〜5μm、累積粒度分布の累積50%径(D50)が11μmで、ナトリウムを670ppm、カルシウムを58ppm、鉄を39ppm含む水酸化アルミニウム。
【0050】
バイヤー法による水酸化アルミニウムの粉砕方法は次に示すとおりである。
1.粉砕方法A
130℃で乾燥させた水酸化アルミニウム50gとアルミナボール(ニッカト−社製、HDアルミナボール、直径15mm)1800gをアルミナ製2リットルポット(ニッカトー社製、HDポットミル、B型)に入れ、振動ミル(安川電気製作所製、Vibro−Pot)で、2時間、振幅±4mmにて粉砕した。
【0051】
2.粉砕方法B
130℃で乾燥させた水酸化アルミニウム50gとジルコニアボール(ニッカトー社製、YTZボール、直径15mm)3000gをアルミナ製2リットルポット(同上)に入れ、振動ミル(同上)で、振幅±4mmにて、30分間粉砕した。次いで粉砕された水酸化アルミニウム25g、蒸留水150g、ジルコニアボール1200gを、ポリエチレン製1リットルポットに入れ、回転数60rpmにて12時間ボールミルによる粉砕した後、130℃にて乾燥した。
【0052】
3.粉砕方法C
130℃で乾燥させた水酸化アルミニウム90gとアルミナボール1800gをアルミナ製2リットルポット(同上)に入れ、回転数60rpmにて6時間ボールミルによる粉砕した。粉砕物には未粉砕の水酸化アルニウム粒子が残存していたため、これを除去するために湿式分級を行い、水酸化アルミニウムの粒径を10μm以下に調整した。
【0053】
4.粉砕方法D
水酸化アルミニウム25gと種晶としてのα−アルミナ(住友化学社製、AKP−50、一次粒子径約0.2μm)0.14gとジルコニアボール1000gをポリエチレン製1リットルポットに入れ、回転数60rpmにて6時間ボールミルによる粉砕した後、130℃にて乾燥した。
【0054】
塩化水素ガスは鶴見ソーダ(株)製のボンベ塩化水素ガス(純度99.9%)を用いた。
焼成手順は以下のとおりである。原料の水酸化アルミニウムAおよびBはアルミナ製のボートに、水酸化アルミニウムCは白金製容器に充填して白金製の蓋をした。充填量は3〜35g,充填深さは10〜15mm程度とした。焼成は石英製炉芯管(直径58mm、長さ1200mm)を用いた管状炉(株式会社モトヤマ製、MS電気炉)で行った。昇温速度は900℃までは10℃/分、1100℃までは5℃/分とした。
【0055】
雰囲気ガス濃度の調整は、流量計によりガス流量の調整により行った。雰囲気ガスである塩化水素ガスの希釈ガスとしては、窒素ガスを使用し、雰囲気ガス流量線流速を10cm/分に調整し、室温からガスを流した。
【0056】
所定の温度に至った後はその温度にて所定の時間保持した。これをそれぞれ保持温度(焼成温度)および保持時間(焼成時間)と称する。所定の保持時間の経過後、窒素ガスのみを流して冷却し、目的とする粉末状のα−アルミナを、最初に原料としての水酸化アルミニウムを充填したアルミナボートあるいは白金製容器中に得た。
【0057】
また比較例2および3に示した、原料の水酸化アルミニウムの空気中、1300℃での焼成は、原料の水酸化アルミニウム約10gをアルミナ製の坩堝に充填して焼成を行った。
【0058】
焼成によって得られた粉末状のα−アルミナの洗浄方法は次に示すとおりである。
1.洗浄方法A
α−アルミナ粉末約20gを80gの蒸留水に投入し、室温にて30分間撹拌の後、濾過して、更に蒸留水による洗浄を2回行った後、130℃にて乾燥した。
【0059】
2.洗浄方法B
α−アルミナ粉末約5〜10gを500gの蒸留水に投入し、80℃にて30分間撹拌の後、濾過して、更に80℃の蒸留水による洗浄を、洗浄後の排水中に硝酸銀水溶液を添加して、該排水中に塩素イオンの反応を認めなくなるまで行った後、130℃にて乾燥した。
【0060】
また、一部の粉末状のα−アルミナについては、解砕を行った後、累積粒度分布を測定した後、スリップキャスト成形を行い、1600℃にて2時間焼結し、焼結体密度をアルキメデス法にて測定後、焼結体表面を鏡面研磨してSEM観察にて焼結体の粒径を測定した。
【0061】
粉末状のα−アルミナの解砕方法は次に示すとおりである。
1.解砕方法A
焼成後のα−アルミナ粉末約20gと、直径15mmジルコニアボール1000gをポリエチレン製1リットルポットに入れ、回転数80rpmにて6時間乾式ボールミル解砕した。
【0062】
2.解砕方法B
上記の乾式解砕方法Aの条件に更に蒸留水を80g添加して回転数80rpmにて6時間湿式ボールミル解砕を行ったのち、α−アルミナを含むスラリーを濾過し、蒸留水による洗浄を2回行った後、130℃で乾燥した。
【0063】
3.解砕方法C
洗浄方法Bにより洗浄したα−アルミナ粉末5gと、直径5mmジルコニアボール1000gをポリエチレン製500ミリリットルポットに入れ、回転数80rpmにて6時間乾式ボールミル解砕した。
【0064】
スリップキャスト成形は、解砕後のα−アルミナ粉末15gに対して、蒸留水10.5gと分散剤(SNディスパーザント5468、サンノプコ社製)0.18gを混合して超音波分散30分処理の後、石膏型に鋳込む方法により行った。
【0065】
実施例1〜4
バイヤー法による水酸化アルミニウムAおよびBを粉砕後、塩化水素ガス雰囲気ガス中にて焼成した。原料の種類、粉砕条件、粒径、焼成条件等および得られた粉末状のα−アルミナの評価結果を表1および表2に記した。
【0066】
実施例5
実施例1で得た粉末状のα−アルミナをさらに洗浄した。原料の種類、粉砕条件、粒径、焼成条件等および得られた粉末状のα−アルミナの評価結果を表1および表2に記した。
【0067】
実施例6
実施例4で得た粉末状のα−アルミナをさらに洗浄した。原料の種類、粉砕条件、粒径、焼成条件等および得られた粉末状のα−アルミナの評価結果を表1および表2に記した。
【0068】
実施例7
バイヤー法による水酸化アルミニウムCを粉砕後、塩化水素ガス雰囲気ガス中にて焼成して得た粉末状のα−アルミナをさらに洗浄した。原料の種類、粉砕条件、粒径、焼成条件等および得られた粉末状のα−アルミナの評価結果を表1および表2に記した。
【0069】
実施例8
実施例1で得たα−アルミナ粉末を乾式解砕した後、スリップキャスト成形して1600℃で焼結した。
焼成後のα−アルミナの平均粒子径は0.7μm、D90/D10の値が10.2で、若干の凝集粒子を含むものであったが、この凝集は軽度なもので、乾式解砕によって容易にD90/D10の値が4.0と粒度分布の狭いものとなった。
【0070】
この乾式解砕したα−アルミナ粉末は1600℃の焼結にて、3.92g/cm3 にまで緻密化したが、カルシウム含有量が280ppmと多く、焼結体には異常粒成長が認められた。
解砕後のα−アルミナ粉末および焼結体の評価結果を表3に記した。
【0071】
実施例9
実施例1で得たα−アルミナ粉末を湿式解砕した後、洗浄して得たα−アルミナ粉末をスリップキャスト成形して、1600℃で焼結した。
焼成後のα−アルミナは平均粒子径が0.7μm、D90/D10の値が10.2で、若干の凝集粒子を含むものであったが、この凝集は軽度なもので、乾式解砕によって容易にD90/D10の値が4.3と粒度分布の狭いものとなった。
【0072】
この湿式解砕した後に洗浄したα−アルミナ粉末は、1600℃の焼結にて、3.85g/cm3 にまで緻密化し、カルシウム含有量が23ppmと少なく、焼結体には異常粒成長は認められなかった。
解砕後のα−アルミナ粉末および焼結体の評価結果を表3に記した。
【0073】
実施例10
実施例7で得たα−アルミナ粉末を乾式解砕し、スリップキャスト成形して1600℃で焼結した結果を示す。
焼成後のα−アルミナは平均粒子径が0.6μm、D90/D10の値が8.1で、若干の凝集粒子を含むものであったが、この凝集は軽度なもので、乾式解砕によって容易にD90/D10の値が3.6と粒度分布の狭いものとなった。
【0074】
乾式解砕後のα−アルミナ粉末は、1600℃の焼結にて3.98g/cm3 にまで緻密化し、カルシウム含有量が9ppmと少なく、焼結体には異常粒成長は認められなかった。
解砕後のα−アルミナ粉末および焼結体の評価結果を表3に記した。
【0075】
比較例1〜3
バイヤー法による水酸化アルミニウムAおよびCを、従来の方法により空気中にて焼成した。原料の種類、粒子径、焼成条件および得られたアルミナの評価結果を表1および表2に記した。
得られた粉末状のアルミナは、1100℃の焼成ではα相以外にκ相、δ相等が含まれ、α相単相の粉末は得られなかった(比較例1)。
1300℃の焼成によって得られた粉末状のα−アルミナ粉末は、約0.2μm程度のα−アルミナ粒子同士が、強固に固着したものであり、かつ空気中での焼成では不純物の低減効果は認められなかった(比較例2および3)。
【0076】
比較例4
バイヤー法による水酸化アルミニウムAを、予め粉砕せず、塩化水素ガス雰囲気ガス中にて焼成しただけで、洗浄も行わなかった。
得られた粉末状のα−アルミナの平均粒子径は2.2μmと大きく、ナトリウム含有量も60ppmまでしか低減されなかった。原料の種類、粉砕条件、粒径、焼成条件等および得られた粉末状のα−アルミナの評価結果を表1および表2に記した。
【0077】
比較例5
焼成の保持温度を30分とした以外は比較例4と同様な方法で得たα−アルミナ粉末を、湿式解砕した後に洗浄し、スリップキャスト成形して1600℃で焼結した結果を示す。
焼成後のα−アルミナの平均粒子径が2.2μmと大きく、湿式解砕後のD90/D10の値は7.9と、粒度分布の若干広いものとなった。また、ナトリウムおよびカルシウム含有量は40ppm以上であった。
【0078】
湿式解砕後に洗浄したα−アルミナ粉末は、1600℃の焼結にて3.24g/cm3 にまでしか緻密化しなかった。
解砕後のα−アルミナ粉末および焼結体の評価結果を表3に記した。
【0079】
【表1】
Figure 0003972380
【0080】
【表2】
Figure 0003972380
【0081】
【表3】
Figure 0003972380
【0082】
本発明の高純度の粉末状のα−アルミナは、点火栓やIC基板などの電気絶縁材料として使用される場合に、該電気絶縁材料の電気絶縁性を向上させることが期待できる。また、本発明の粒度分布の狭い微粒子からなる粉末状のα−アルミナは、研磨剤および焼結用原料用途に適している。
【0083】
【発明の効果】
本発明のα−アルミナの製造方法によれば、ナトリウム、鉄およびカルシウム含有量が多い、安価なバイヤー法によって得られる水酸化アルミニウムまたは該バイヤー法によって得られる水酸化アルミニウムを仮焼して得られる遷移アルミナを原料として用いて、従来の低ソーダアルミナ以上の一定水準以上のアルミナ純度を有し、ナトリウム、鉄およびカルシウム含有量の少ないα−アルミナ粒子からなる粉末状のα−アルミナを、容易にかつ安価に得ることができる。
【0084】
具体的には、本発明の粉末状のα−アルミナは、数平均粒径が0.1〜2μmの微細なα−アルミナ粒子からなり、アルミナ純度が99.8重量%以上で、かつナトリウム含有量が40ppm以下、鉄含有量が20ppm以下(NaO2 、Fe2 3 に換算して0.01重量%以下)、好ましくはカルシウム含有量が40ppm以下(CaOに換算して0.01重量%以下)、さらに好ましくはこれらの含有量がそれぞれ10ppm以下であり、極めて高純度であるという優れた特性を有している。
【0085】
また、本発明の粉末状のα−アルミナは、α−アルミナ粒子同士の凝集が弱いため、ボールミルやジェットミルなどによって容易に解砕することができ、解砕して得られるα−アルミナは粒度分布が狭く、上記した用途などに工業的に有用なものである。ここでいう粒度分布の狭い粉末状のα−アルミナとは、累積粒度分布の微粒子側から、累積10%径、累積90%径をそれぞれD10、D90としたとき、D90/D10の値が小さく、その値が好ましくは15以下、より好ましくは10以下、最も好ましくは5以下の粒度分布を有するものである。

Claims (9)

  1. バイヤー法による水酸化アルミニウムまたは該バイヤー法による水酸化アルミニウムを仮焼して得られる遷移アルミナを、累積粒度分布の50%径が5μm以下に粉砕し、次いで塩化水素ガスを10体積%以上、あるいは塩素ガスを10体積%以上および水蒸気を0.1体積%以上含有する雰囲気ガス中にて600〜1400℃の温度で焼成することを特徴とする粉末状のα−アルミナの製造方法であって、ナトリウム含有量が40ppm以下、鉄含有量が20ppm以下のα−アルミナの製造方法。
  2. 焼成した後に、洗浄する請求項1記載のα−アルミナの製造方法。
  3. 800〜1200℃の温度で焼成する請求項1記載のα−アルミナの製造方法。
  4. 焼成した後に、水で洗浄することを特徴とする請求項2記載のα−アルミナの製造方法。
  5. α−アルミナのカルシウム含有量が40ppm以下である請求項2記載のα−アルミナの製造方法。
  6. α−アルミナのナトリウム、鉄およびカルシウム含有量がそれぞれ10ppm以下である請求項記載のα−アルミナの製造方法。
  7. 数平均粒径が0.1〜2μmのα−アルミナ粒子からなる請求項1〜のいずれかに記載のα−アルミナの製造方法。
  8. さらに解砕を行う請求項1〜のいずれかに記載のα−アルミナの製造方法。
  9. α−アルミナの累積粒度分布の微粒子側から、累積10%径、累積90%径をそれぞれD10、D90としたとき、D90/D10の値が15以下である請求項記載のα−アルミナの製造方法。
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