JP3743012B2 - α−アルミナ粉末の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、粒径や形状が制御され、粒度分布が狭く、凝集粒子が少ないα−アルミナ粉末を高い焼成効率で製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
α−アルミナ粉末は研磨剤用原料、焼結体用原料等に広く用いられている。従来までの一般的な製造方法である、例えば、バイヤー法などにより得られるα−アルミナ粉末は、形状が不均一な多結晶体で、凝集粒子を多く含み、粒度分布が広く、用途によってはα−アルミナ純度が低いなどの問題があった。そこで以下に示すような改良法が提案されているが、なお種々の問題点を有している。
【0003】
例えば、水酸化アルミニウムにフラックスを添加して溶融後、析出させる方法(特開平3−131517号公報)は、得られるα−アルミナの形状が不均一であるという問題がある。水酸化アルミニウムを用いる水熱処理法(特公昭57−22886号公報)は、コランダムを種晶として添加して粒径を制御しているが、α−アルミナの製造を高圧下で、長時間実施するため工業的には効率良い方法とは言えない。さらに、水酸化アルミニウムを鉱化剤の存在下で焼成する方法(特開昭59−97528号公報)は、形状の均一なα−アルミナを得ることはできるが、製造時に鉱化剤として使用したホウ素またはフッ素がα−アルミナ中に残存する上に、焼成時に生成する凝集体が多数含まれるという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、これまで知られている製造方法では、得られるα−アルミナの粒径を制御することが難しかったり、形状が不均一であったり、多結晶体である凝集粒子を多く含んでいたり、粒度分布が広いなどの理由により、充填性が低く、均質に充填しないという問題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、下記に説明する濃度のハロゲン存在下で焼成することにより、粒径および形状が制御され、粒度分布が狭いα−アルミナ粒子を容易に得ることができることを見出したが、出発原料である遷移アルミナの嵩密度が0.1g/cm3 と低いために充填性が十分でなく、そのため焼成効率が十分ではない。
【0006】
嵩密度を上げる方法としては、原料粉末を造粒する方法が知られているが、造粒して焼成すると凝集粒子が多数生成するという問題があった。
そこでさらに鋭意検討を重ねた結果、α−アルミナ粉末を粒状に造粒して嵩密度を高め、これを0.1体積%以上のハロゲンが存在する雰囲気ガス下で焼成することにより、形状および粒径が制御され粒度分布が狭く、凝集粒子が少ないα−アルミナ粉末を高い焼成効率で製造できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、遷移アルミナまたはアルミナ化合物或いはこれらの混合物を、攪拌造粒および転動造粒から選ばれる造粒方法により造粒して粒状体とし、該粒状体を塩化水素ガスの濃度が1体積%以上100体積%以下である塩化水素含有ガス雰囲気下に焼成することを特徴とするα−アルミナ粉末の製造方法を提供するものである。
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の方法における出発原料としては、遷移アルミナ、アルミナ化合物またはこれらの混合物を造粒して粒状体としたものを使用する。また、必要に応じて、これらに種晶、形状制御剤、または種晶および形状制御剤を添加し、これを造粒して粒状体としたものを使用することができる。
【0009】
ここで、遷移アルミナとはAl2 O3 として表される多形を有するアルミナの内、α形以外の全てのアルミナを意味し、具体的にはγ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ等を例示することができる。
原料として使用するアルミナ化合物としては、特に制限はなく、例えば、水酸化アルミニウム、硫バン(硫酸アルミニウム)、硫酸アルミニウムカリウムや硫酸アルミニウムアンモニウム等のいわゆる明バン類、アンモニウムアルミニウム炭酸塩、アルミニウムの水中放電法等により得られるアルミナゲルなどを挙げることができる。
【0010】
遷移アルミナまたはアルミナ化合物の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、水酸化アルミニウムを熱処理する方法、硫酸アルミニウムを分解する方法、明バンを分解する方法、塩化アルミニウムを気相分解する方法、アンモニウムアルミニウム炭酸塩を分解する方法、バイヤ−法、有機アルミニウム化合物を加水分解する方法、またはコンデンサ−等のエッチング廃液から得られるアルミニウム化合物を出発原料とする方法などの公知の方法を使用することができる。
【0011】
本発明の製造方法によれば、バイヤ−法のような工業的に安価な方法で得られる粒子径が10μm以上の水酸化アルミニウムや遷移アルミナを原料として用いて、目的とするα−アルミナ粉末を得ることもできる。
【0012】
本発明のα−アルミナ粉末の粒径を適切な範囲に制御するためには、出発原料である遷移アルミナおよび/またはアルミナ化合物に種晶を添加することが好ましい。
【0013】
種晶は、α−アルミナの結晶成長の起点となるものを意味し、該種晶を起点としてそのまわりにα−アルミナが成長するものであれば特に限定されるものではなく、使用される種晶としては、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、ニッケルの酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、炭窒化物、ハロゲン化物、ホウ化物などが挙げられ、酸化物、窒化物が好ましく、特に酸化物を用いることが好ましい。これらの金属化合物は、単独または二種以上混合して用いることができる。
【0014】
種晶の添加量は、原料をアルミナに換算し、これを100重量部としたとき、通常、10-3〜50重量部であり、好ましくは10-3〜30重量部、さらに好ましくは10-3〜10重量部である。ここにいうアルミナの量は、原料の遷移アルミナまたは水酸化アルミルウムに、吸着水または結晶水が含有されている場合には、これらの重量を除いたアルミナの量を意味する。
得られるα−アルミナ粉末の一次粒子の粒子径は、種晶の数により制御することが可能であり、種晶の数が多いと粒子径は小さくなる。
【0015】
種晶の添加方法としては、撹拌、ボ−ルミル、超音波分散等の方法が採用できる。種晶を添加するかわりに、混合装置の材料の摩耗物を利用して目的とするα−アルミナ粉末の粒径を制御することも可能である。例えば、アルミナボ−ルを用いボ−ルミルすることによってアルミナの摩耗粉を種晶として原料に混合することにより粒径を制御することができる。
【0016】
本発明のα−アルミナ粉末の形状を制御するためには、出発原料である遷移アルミナ、アルミナ化合物、またはこれらの混合物に形状制御剤を添加することが好ましい。
形状制御剤は、結晶の成長の過程で作用し、D/H比(六方最密格子であるα−アルミナの六方格子面に平行な最大粒子径をD、六方格子面に垂直な粒子径をHとしたときのDとHの比)および晶癖を変化させる働きをするものであり、このような機能を有するものであれば特に限定されるものではない。
【0017】
本発明において用いられる形状制御剤としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、バナジウム、モリブデン、銅、亜鉛、ホウ素、ケイ素、ランタン、セリウム、ネオジウム等の金属単体およびこれら金属の酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、炭窒化物、ハロゲン化物、ホウ化物等の金属化合物が挙げられる。金属化合物としては、酸化物が好ましい。上記の金属単体、金属化合物は、単独または二種以上混合して使用される。バナジウムについては、種晶としての機能も有する。
【0018】
形状制御剤の添加量は、原料をアルミナに換算し、これを100重量部としたとき、通常、10-3〜50重量部であり、好ましくは10-3〜30重量部、さらに好ましくは10-3〜10重量部である。
例えば、形状制御剤がD/H比を大きくする形状制御剤としては、マグネシウム、カルシウム、シリコン、銅、モリブデン、ニオブ、亜鉛、ジルコニウム、バナジウム、ストロンチウムを用いることができる。またD/H比を小さくする形状制御剤としては、ランタン、セリウム、ネオジウムを用いることができる。
【0019】
晶癖を制御する場合、例えば、n面を出さしめる形状制御剤としては、ランタン、セリウム、ネオジウム、ジルコニウムを、c面とr面からなる粒子を合成するにはカルシウムを、a面を消去するためにはジルコニウムを、a面とc面からなる6角柱状にするにはホウ素を用いることが出来る。
形状制御剤の添加方法は特に限定されるものではなく、例えば、ボ−ルミル、超音波分散等の方法を挙げることができる。また混合メディア等の混合装置材料の混合時の摩耗物を形状制御剤として用いてもよい。
【0020】
さらに目的とするα−アルミナ粉末の粒径と形状を制御するためには種晶と形状制御剤とを同時に添加してもよい。これにより目的とする用途に適した一次粒子の粒子径および形状を有するα−アルミナ粉末を製造することができる。
この場合、合計の添加量は、原料をアルミナに換算し、これを100重量部としたとき、通常、10-3〜50重量部であり、好ましくは10-3〜30重量部、さらに好ましくは10-3〜10重量部である。
【0021】
本発明においては、原料粉末を造粒して使用する。造粒方法は、例えば、結合剤として水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類を添加し、ヘンシェルミキサー、バ−チカルグラニュレ−タ−、皿型造粒機を用い、攪拌造粒、転動造粒の湿式方法により造粒することができる。
【0022】
造粒により見かけ嵩密度を0.15g/cm3 以上とすると、見かけ嵩密度が0.1g/cm3 程度の原料粉末の状態と比べて、充填量が増大するため焼成効率を向上せしめることが可能となり、さらに作業中の飛散がなくなり、流動性が向上する等の効果が認められる。原料粉末を造粒し、見かけ嵩密度を高くすることにより生産性、作業性を向上できることは一般に知られているが、原料粉末を造粒すると、これが焼成時に凝集粒を生じさせる原因となって製品の品質を著しく低下させていた。
【0023】
しかし、造粒したものを以下に説明する濃度のハロゲン化水素ガスまたはハロゲンガスまたはハロゲンガスと水蒸気を含む雰囲気下で焼成し、さらに必要に応じて解砕工程とハロゲンを除去する工程を組み込む本発明に記載の方法によれば、凝集粒を生じることなく生産性、作業性を向上させて目的とするα−アルミナ粉末を得ることができる。
【0024】
次に、原料粉末を造粒して粒状体としたものを焼成する工程について説明する。
焼成工程においてハロゲン化水素ガスを用いる場合、雰囲気ガスの全体積に対してハロゲン化水素ガスを0.1体積%以上、好ましくは0.5体積%以上、さらに好ましくは1体積%以上含有した雰囲気ガスが使用される。ハロゲン化水素ガスの希釈ガスとしては、窒素や水素あるいはアルゴン等の不活性ガスまたは空気を用いることができる。ハロゲン化水素ガスを含む雰囲気ガスの圧力は、通常、常圧であるが、特に限定されず工業的に用いられている範囲において任意に選ぶことができる。このような雰囲気ガス中で焼成するとにより、低い温度で目的とするα−アルミナ粉末を得ることができる。
焼成温度は500〜1400℃、好ましくは600〜1300℃、さらに好ましくは800〜1200℃である。
【0025】
焼成工程においてハロゲンガスを用いる場合、雰囲気ガスの全体積に対してハロゲンガスを0.1体積%以上、好ましくは0.5体積%以上、さらに好ましくは1.0体積%以上含有した雰囲気ガスが使用される。ハロゲンガスの希釈ガスとしては、窒素や水素あるいはアルゴン等の不活性ガスまたは空気を用いることができる。ハロゲンガスを含む雰囲気ガスの圧力は、通常、常圧であるが、特に限定されず工業的に用いられている範囲において任意に選ぶことができる。このような雰囲気ガス中で焼成することにより、低い温度で目的とするα−アルミナ粉末を得ることができる。
焼成温度は950〜1500℃、好ましくは1050〜1400℃、さらに好ましくは1100〜1300℃である。
【0026】
焼成工程においてハロゲンガスと水蒸気を含む雰囲気ガスを用いる場合、雰囲気ガスの全体積に対しハロゲンガスを0.1体積%以上、好ましくは0.5体積%以上、さらに好ましくは1体積%以上と、水蒸気を0.01体積%以上、好ましくは0.1体積%以上、さらに好ましくは0.5体積%以上含有した雰囲気ガスが使用される。ハロゲンガスの希釈ガスとしては、窒素や水素あるいはアルゴン等の不活性ガスまたは空気を用いることができる。水蒸気は、窒素ガスにより焼成炉内に搬送され、その体積%は水の温度による飽和水蒸気圧変化により制御される。ハロゲンガスと水蒸気を含む雰囲気ガスの圧力は、通常、常圧であるが、特に限定されず工業的に用いられている範囲において任意に選ぶことができる。このような雰囲気ガス中で焼成するとにより、目的とするα−アルミナ粉末を得ることができる。
ハロゲンガスと水蒸気を用いた場合の焼成温度は500〜1400℃、好ましくは600〜1300℃以下、さらに好ましくは800〜1200℃である。
【0027】
上記した雰囲気ガスを用い、それぞれに対応した焼成温度で焼成することにより、工業的に有利な生成速度で、α−アルミナ粒子同士の凝集が起こりにくく、焼成直後でも粒度分布の狭いα−アルミナ粒子からなるα−アルミナ粉末を得ることができる。
【0028】
焼成時間は、遷移アルミナまたはアルミナ化合物がα−アルミナに結晶成長するまで焼成すれば十分であり、好ましくは1分以上、より好ましくは10分以上である。本発明の製造方法によれば、従来の方法に比べ短い時間で目的とするα−アルミナ粉末を得ることができる。
【0029】
雰囲気ガスの供給源や供給方法は、遷移アルミナ等の原料が存在する反応系に上記の雰囲気ガスを導入できれば特に限定されない。例えば、ハロゲン化水素ガスやハロゲンガス供給源としては、通常はボンベガスを用いるが、得られるハロゲン化水素ガスやハロゲンガスを所定のガス組成になるようにしてボンベガスの代わりとして固体状または液体状のハロゲン化合物を用いることもできる。
【0030】
固体状または液体状のハロゲン化水素ガス供給源としては、例えば、フッ酸、塩酸、臭化水素酸等のハロゲン化水素の溶液、フッ化アンモンニウム、塩化アンモンニウム、臭化アンモンニウム、ヨウ化アンモンニウム等のハロゲン化アンモニウムなどのハロゲン化合物、ハロゲン含有高分子化合物などが挙げられ、塩化アンモンニウムが好ましく使用される。例えば、塩化アンモンニウムは、約400℃で昇華するので、原料と同時に炉内に導入することにより昇華させて、塩化水素ガス雰囲気を作ることができる。塩化アンモンニウムを用いてバッチ法で実施した場合、塩化アンモンニウムは、本発明の方法における焼成温度では完全に分解し、モル分率に従って体積%でそれぞれ塩化水素ガス33体積%、窒素ガス17体積%、水素ガス50体積%の雰囲気を形成する。塩化水素ガス濃度は、塩化アンモンニウムの充填量と炉の大きさにより調整する。
【0031】
固体状または液体状のハロゲンガス供給源としては、例えば、固体状のK2 N2 F6 ・KFや固体状のヨウ素、液体臭素や液体状の臭素酸、ハロゲン含有高分子化合物などが挙げられる。固体状のハロゲンガス供給源についても塩化アンモンニウムと同様にして使用することができる。
【0032】
ハロゲン化水素ガス濃度が高いほど、低温度で短時間焼成するだけでも高純度のα−アルミナ粉末を得ることが可能となる。ガスの供給方法としては連続方式または回分方式のいずれの方法も使用することができる。
【0033】
焼成装置は必ずしも限定されず、通常の焼成炉を用いることができる。焼成炉は、ハロゲン化水素ガス、ハロゲンガス等に腐食されない材質で構成されていることが望ましく、さらに雰囲気を調整できる機構を備えていることが望ましい。また、ハロゲン化水素ガスやハロゲンガス等の酸性ガスを用いるため、焼成炉は気密性であることが望ましく、工業的にはトンネル炉、ロ−タリ−キルン、またはプッシャ−炉等を用いることができる。
【0034】
製造工程の中で用いられる装置の材質としては、酸性の雰囲気中で反応が進行するため、アルミナ製、石英製、耐酸煉瓦製、白金製、炭化ケイ素製、ムライト製またはグラファイト製のルツボやボ−ト等が好ましく使用される。
【0035】
上記した遷移アルミナ等の原料の焼成を工業的により効率良く実施する方法として、固体状または液体状のハロゲン化水素ガス源および/またはハロゲンガス源を焼成炉内に直接供給し、ハロゲン化水素ガスおよび/またはハロゲンガスを含有する雰囲気中で連続的に焼成する方法を挙げることができる。
【0036】
この場合には、雰囲気の全体積に対して、ハロゲン化水素ガス、ハロゲンガス、またはこれらの混合物を1体積%以上、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上含有する雰囲気ガスを形成するよう固体状または液体状のハロゲン化水素ガス源、ハロゲンガス源、またはこれらの混合物を焼成炉内に直接供給して、遷移アルミナおよび/またはアルミナ化合物を焼成することが好ましい。
【0037】
また、ハロゲンガス源と水蒸気とを同時に供給してもよい。この場合、焼成炉内のハロゲンガスおよび水蒸気を含有する雰囲気の圧力は、通常、常圧であるが、特に限定されず工業的に用いられる範囲において任意に選ぶことができる。
【0038】
アルミナ原料を焼成する焼成炉内の雰囲気中のハロゲン化水素ガスまたはハロゲンガスの濃度は、上記の所定の濃度に保たれていれば十分であるので、ハロゲン化水素ガス源またはハロゲンガス源となる固体状または液体状の物質は、焼成炉内の雰囲気中のハロゲン化水素ガスまたはハロゲンガスを上記の濃度に維持する量だけ供給すればよい。また、過剰に供給しても特に問題はなく、排出する必要もない。
【0039】
ハロゲン化水素ガス源またはハロゲンガス源となる固体状または液体状の物質は焼成炉内へ直接供給されることが好ましい。これらのガス源は、単独で供給する。例えば、連続で操業するプッシャー式トンネル炉のような間欠的に原料を供給する炉の場合は、アルミナ原料を入れる容器にガス源入れて炉内に挿入してもよいので、ボンベガスを用いる場合に比べてガス供給のための設備が不要となる。
【0040】
さらに、焼成炉の最高均熱ゾーンにおいてハロゲン化水素ガスおよび/またはハロゲンガスの濃度を必要濃度以上に維持するため、固体状または液体状のハロゲン化水素ガス源またはハロゲンガス源が分解して生成したハロゲン化水素ガスまたはハロゲンガスは、遷移アルミナまたはアルミナ化合物或いはこれらの混合物の供給方向と並流して流すことが好ましい。
【0041】
ハロゲン化水素ガスまたはハロゲンガスをアルミナ原料の供給方向と並流に流す方法としては、該アルミナ原料の入口側から炉内の最高均熱ゾーンの方向に該ガスを流し、窒素ガスでこれらのガスを搬送する方法、または焼成して得られたα−アルミナ粉末の取り出し口からブロワーで吸引する方法などが挙げられ、これにより炉内の焼成が行われる領域の雰囲気が常に所定の濃度の雰囲気に保つことが容易になる。
【0042】
ここで、最高均熱ゾーンとは、遷移アルミナまたはアルミナ化合物或いはこれらの混合物がハロゲン化水素ガスまたはハロゲンガスと反応して焼成が行われる領域のことで、炉内ではここの温度が反応に最適な最高温度に維持されなければならない。
【0043】
焼成温度は好ましくは600℃以上1400℃以下、より好ましくは700℃以上1300℃以下、さらに好ましくは800℃以上1200℃以下である。この温度範囲に制御して焼成することにより、α−アルミナ粒子同士の凝集が起こりにくく、焼成直後でも粒度分布の狭いα−アルミナ粒子からなる粉末状のα−アルミナを工業的に有利な生成速度で得ることができる。
【0044】
焼成時間は、アルミナ原料がα−アルミナに成長するまで焼成すれば十分であり、好ましくは1分以上、より好ましくは10分以上である。従来の方法に比べて、より短時間で目的とするα−アルミナ粉末を得ることができる。
【0045】
焼成装置は連続に原料を供給し製品を取り出すことができるトンネル炉やロータリーキルン等の連続式焼成炉が用いられるが、特に電気加熱方式または間接ガス加熱方式のトンネル炉を用いることが好ましい。
焼成炉はハロゲン化水素ガス、ハロゲンガス等に腐食されない材質で構成されていることが望ましく、さらには雰囲気を調整できる機構を備えていることが望ましい。また、ハロゲン化水素ガスやハロゲンガス等の酸性ガスを用いるので、焼成炉には気密性があり、装置の材質は、アルミナ製、石英製、耐酸レンガ製、日金製、炭化ケイ素製、ムライト製またはグラファイト製のルツボやボ−ト等が好ましく使用される。
【0046】
本発明の方法では、ハロゲン化水素ガスまたは、ハロゲンガス、またはハロゲンガスと水蒸気を含有する雰囲気下で焼成するため、焼成したものにハロゲンが残留する場合があり、このような場合にはハロゲンを除去することが好ましい。例えば、得られた粒径が1μm以下の微粒のα−アルミナ粉末では、表面積が大きく焼成直後にはハロゲンが200ppm以上残留している場合がある。また、粒径が数μmのα−アルミナ粉末粒子でも数十ppm残留している場合がある。ハロゲンが数百ppm以上残留している場合、例えば、封止材用原料として用いたときに、ICに封止後、腐食性のハロゲンイオンが流出してアルミニウム配線を断線させる等の問題を発生させることがある。したがって、このようにハロゲンイオンが悪影響を及ぼす用途、例えば、単結晶用原料、封止材用原料、高純度焼結体用原料等の用途に使用する場合にはハロゲンを除去することが好ましい。
【0047】
ハロゲンの除去方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。
(a)ハロゲンを含有したα−アルミナ粉末を、空気中、窒素中、またはこれらに水蒸気、酸素、水素、二酸化炭素、アルコール、アンモニアから選ばれる一種以上のガスを0.1体積%以上、好ましくは1体積%以上、さらに好ましくは10体積%以上含有する雰囲気中で400〜1400℃、好ましくは600〜1200℃、さらに好ましくは800〜1200℃の温度範囲で熱処理する方法。熱処理時間は1分以上、好ましくは10分以上、さらに好ましくは1時間以上である。例えば、用途によりハロゲンの残留濃度を10ppm以下とする場合は、上記のガスを1体積%以上含有する雰囲気中で800℃以上で、30分以上熱処理すればよい。
【0048】
(b)ハロゲンを含有したα−アルミナ粉末を、不活性ガス雰囲気中で600〜1400℃、好ましくは900〜1200℃の温度範囲で熱処理する方法。熱処理時間は1分以上、好ましくは30分以上、さらに好ましくは1時間以上である。
【0049】
(c)ハロゲンを含有したα−アルミナ粉末を、1Torr以下、好ましくは0.1Torr以下の減圧下で400〜1400℃、好ましくは700〜1200℃の温度範囲で熱処理する方法。熱処理時間は1分以上、好ましくは10分以上、さらに好ましくは1時間以上である。
【0050】
(d〜f)ハロゲンを含有したα−アルミナ粉末を、(d)水、アルカリ性溶液(pH9〜13)またはアルコール溶液で洗浄処理後、70〜300℃の温度範囲で乾燥処理する方法、(e)水、アルカリ性溶液(pH9〜13)またはアルコール溶液を沸点まで加熱して煮沸処理後、70〜300℃の温度範囲で乾燥処理する方法、または(f)水、アルカリ性溶液(pH9〜13)またはアルコール溶液を用い70〜200℃の温度範囲でオートクレーブで処理後、70〜300℃の温度範囲で乾燥処理する方法。
【0051】
使用されるアルカリ性溶液は、特に限定はされないが、アンモニア、水酸化ナトリウム等を所定のpHに溶液を調整して用いることができる。また、使用されるアルコール類としては、特に限定はされないが、エタノール、メタノール等を用いることができる。
オートクレーブ処理をする場合には、各溶媒の飽和蒸気圧で処理すれば十分脱ハロゲン効果があるが、処理時間を短くしたい場合は加圧機構のあるオートクレーブを用いることが好ましい。
いずれの場合も除去されるハロゲン量は微量であるので、通常使用される市販の焼成炉やオートクレーブを使用することができる。
【0052】
さらに、α−アルミナ粉末が微粒の場合、一部が軽く凝集している粒子が存在する場合があるため、用途によっては解砕工程を加えることが好ましい。
解砕工程は、脱ハロゲン工程の前または後を選択することができるが、工業的な生産設備を考える場合、いずれか都合のよい順序でプロセスを設計することができる。
また、α−アルミナ粉末の原料粉末を造粒した後、焼成する本発明の方法では、α−アルミナ粉末のハロゲン含有量が十分に低い場合があり、この時には脱ハロゲン工程が不要であるので、造粒工程、焼成工程に続いて解砕工程を行うことも可能である。
【0053】
解砕方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ジェットミル、振動ミル、ボールミル等を用いて実施することができ、特にジェットミルを用いることが好ましい。本発明で得られるα−アルミナ粉末の凝集は弱く、小さい粉砕エネルギーでも十分粉砕することが可能であり、例えば、ジェットミルを用いる場合、供給する空気の圧力は、従来法により製造されたα−アルミナ粉末では十分な解砕ができない程度の圧力;1〜6kg/cm2 でも本発明のα−アルミナ粉末を解砕することができる。
【0054】
【実施例】
以下,実施例で本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
なお、本発明における各種測定は以下の方法で行った。
1.α−アルミナ粉末の数平均粒径と粒度分布(D90/D10)の測定
(1)数平均粒径はα−アルミナ粉末の走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、T−300)写真から80ないし100個の粒子を選び出して画像解析を行い、円相当径の平均値とその分布を求めた。円相当径とは、面積の等しい真円の直径に換算した値を言う。
(2)(D90/D10)値は、レ−ザ−散乱法を測定原理とするマスタ−サイザ−(マルバ−ン社製)を用い測定した。ここで、累積粒度分布の微粒側から、累積10%、累積90%のところの粒径をそれぞれD10、D90と称する。
【0056】
2.α−アルミナの結晶形状(D/H)の測定。
本発明においてα−アルミナ粉末の形状とは、六方最密格子であるα−アルミナの六方格子面に平行な最大粒子径をD、六方格子面に垂直な粒子径をHとしたときのD/H比をいう。(D/H)はα−アルミナの走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製:T−300)写真から5ないし10個の粒子を選び出してD/Hを測定し、その平均値として求めた。
【0057】
3.ハロゲンの残留濃度測定。
10ppm以上の残留ハロゲン量は蛍光X線により測定した。α−アルミナ粉末を直径40mmの容器に入れ、これにX線を照射した。
10ppm未満の残留ハロゲン量はグロー放電質量分析法により測定した。α−アルミナ粉をIn線に付着させて分析した。
【0058】
4.粒状体の見かけ嵩密度。
造粒した原料粉末10gを200ccのメスシリンダーに流し込み、体積を測定して見かけ嵩密度を求めた。
【0059】
実施例1
遷移アルミナとして、アルミニウム有機金属化合物の加水分解法による遷移アルミナ粉末(商品名AKP−G15、住友化学工業株式会社製)を用いた。
該遷移アルミナ粉末(1kg)をバーチカルグラニュレータ(パウレック社製)を用い、水を100重量部添加して造粒し、120℃で1時間乾燥して粒体を得た。
該粒体600gをグラファイトボ−トに充填し、石英炉芯管を用いた管状炉にて焼成した。希釈ガスとして窒素ガスを用い、昇温速度500℃/時間にて昇温し、800℃になったときボンベ塩化水素ガスを導入した。雰囲気の濃度調整は流量計により窒素ガスとボンベ塩化水素ガスのそれぞれのガス流量を調整して行った。雰囲気全体の流量は線速度20mm/分に調整した。雰囲気ガスの全圧はすべて大気圧であった。1100℃に至った後はその温度で30分間保持した後、自然放冷してα−アルミナ粉末を得た。結果を表1および表2に示す。
【0060】
実施例2
実施例1で得られたα−アルミナ粉末を空気中600℃で30分間脱塩素処理して、目的とするα−アルミナ粉末を得た。結果を表1および表2に示す。
【0061】
実施例3
原料としてアルミニウム有機金属化合物の加水分解法により合成した水酸化アルミニウム(水アルと略すことがある)を用い、造粒した後800℃で焼成して粒体を得た。以下、実施例1と同様にしてα−アルミナ粉末を得た。該粉末を空気中600℃で30分間脱塩素処理して、目的とするα−アルミナ粉末を得た。結果を表1および表2に示す。
【0062】
実施例4
遷移アルミナとして、アルミニウム有機金属化合物の加水分解法による遷移アルミナ粉末(商品名AKP−G15、住友化学工業株式会社製)を用いた。
種晶としてα−アルミナ粉末(商品名AKP−50、住友化学工業株式会社製)34.8gを用い、これを上記遷移アルミナ粉末に混合して634.8gとし、該混合物を実施例1同様にして造粒、焼成してα−アルミナ粉末を得た。該粉末を空気中600℃で30分間脱塩素処理して、目的とするα−アルミナ粉末を得た。結果を表1および表2に示す。
【0063】
実施例5
実施例4で得られたα−アルミナ粉末をジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製、PJM−100SP)により解砕した。解砕処理条件は、空気圧6kg/cm2 で、粉末の供給速度を2.4kg/hrとした。結果を表1および表2に示す。得られたα−アルミナ粉末の粒子構造を図1に示す。(倍率4900倍の走査型電子顕微鏡写真)。また、その粒度分布図を図2に示す。
【0064】
実施例6
遷移アルミナとして、アルミニウム有機金属化合物の加水分解法による遷移アルミナ粉末(商品名AKP−G15、住友化学工業株式会社製)を用いた。
種晶としてα−アルミナ粉末(商品名AKP−50、住友化学工業株式会社製)34.8gを用い、これを上記遷移アルミナ粉末に混合して634.8gとし、該混合物を実施例1同様にして造粒、焼成してα−アルミナ粉末を得た。次に、得られたα−アルミナ粉末をジェットミルにより解砕(空気圧6kg/cm2 で、粉末の供給速度を2.4kg/hr)してから空気中600℃で30分間脱塩素処理して、目的とするα−アルミナ粉末を得た。結果を表1および表2に示す。
【0065】
実施例7
遷移アルミナとして、アルミニウム有機金属化合物の加水分解法による遷移アルミナ粉末(商品名AKP−G15、住友化学工業株式会社製)を用いた。
種晶としてα−アルミナ粉末(商品名AKP−50、住友化学工業株式会社製)34.8gを用い、これを上記遷移アルミナ粉末に混合して634.8gとし、該混合物を実施例1同様にしてバーチカルグラニュレータを用いて造粒して粒体を得た。
該粒体600gをグラファイトボ−トに充填し、石英炉芯管を用いた管状炉にて焼成した。希釈ガスは用いず、昇温速度500℃/時間にて昇温し、400℃になったときボンベ塩化水素ガスのみを導入した。雰囲気の調整は流量計によりボンベ塩化水素ガスのガス流量を調整して行った。雰囲気全体の流量は線速度20mm/分に調整した。雰囲気ガスの全圧はすべて大気圧であった。600℃に至った後はその温度で90分間保持した後、自然放冷してα−アルミナ粉末を得た。
得られたα−アルミナ粉末を空気中600℃で30分間脱塩素処理した後、ジェットミルにより解砕(空気圧6kg/cm2 で、粉末の供給速度を2.4kg/hr)して、目的とするα−アルミナ粉末を得た。結果を表1および表2に示す。
【0066】
参考例1
遷移アルミナとして、アルミニウム有機金属化合物の加水分解法による遷移アルミナ粉末(商品名AKP−G15、住友化学工業株式会社製)を用いた。種晶としてα−アルミナ粉末(商品名AKP−50、住友化学工業株式会社製)34.8gを用い、これを上記遷移アルミナ粉末に混合して634.8gとし、該混合物を実施例1同様にしてバーチカルグラニュレータを用いて造粒して粒体を得た。該粒体600gをグラファイトボ−トに充填し、石英炉芯管を用いた管状炉にて焼成した。希釈ガスは用いず、昇温速度500℃/時間にて昇温し、800℃になったときボンベ塩素ガスのみを導入した。雰囲気の調整は流量計によりボンベ塩素ガスのガス流量を調整して行った。雰囲気全体の流量は線速度20mm/分に調整した。雰囲気ガスの全圧はすべて大気圧であった。1200℃に至った後はその温度で30分間保持した後、自然放冷してα−アルミナ粉末を得た。得られたα−アルミナ粉末を空気中600℃で30分間脱塩素処理した後、ジェットミルにより解砕(空気圧6kg/cm2 で、粉末の供給速度を2.4kg/hr)して、目的とするα−アルミナ粉末を得た。結果を表1および表2に示す。
【0067】
参考例2
遷移アルミナとして、アルミニウム有機金属化合物の加水分解法による遷移アルミナ粉末(商品名AKP−G15、住友化学工業株式会社製)を用いた。種晶としてα−アルミナ粉末(商品名AKP−50、住友化学工業株式会社製)34.8gを用い、これを上記遷移アルミナ粉末に混合して634.8gとし、該混合物を実施例1同様にしてバーチカルグラニュレータを用いて造粒して粒体を得た。該粒体600gをグラファイトボ−トに充填し、石英炉芯管を用いた管状炉にて焼成した。希釈ガスとして窒素ガスを用い、昇温速度500℃/時間にて昇温し、600℃になったときボンベ塩素ガスと水蒸気とを導入した。雰囲気の濃度調整は流量計により窒素ガスとボンベ塩素ガスのそれぞれのガス流量を調整して行った。雰囲気ガスの流量は線速度20mm/分に調整した。雰囲気ガスの全圧はすべて大気圧であった。800℃に至った後はその温度で90分間保持した後、自然放冷してα−アルミナ粉末を得た。得られたα−アルミナ粉末をジェットミルにより解砕(空気圧6kg/cm2 で、粉末の供給速度を2.4kg/hr)してから空気中600℃で30分間脱塩素処理して、目的とするα−アルミナ粉末を得た。結果を表1および表2に示す。
【0068】
実施例10
遷移アルミナとして、アルミニウム有機金属化合物の加水分解法による遷移アルミナ粉末(商品名AKP−G15、住友化学工業株式会社製)を用いた。
形状制御剤としてMgO粉末(和光純薬工業株式会社製)18gを用い、これを上記遷移アルミナ粉末に混合して618gとし、該混合物を実施例1同様にしてバーチカルグラニュレータを用いて造粒して粒体を得た。
該粒体600gをグラファイトボ−トに充填し、石英炉芯管を用いた管状炉にて焼成した。希釈ガスとして窒素ガスを用い、昇温速度500℃/時間にて昇温し、800℃になったときボンベ塩化水素ガスを導入した。雰囲気の濃度調整は流量計により窒素ガスとボンベ塩化水素ガスのそれぞれのガス流量を調整して行った。雰囲気全体の流量は線速度20mm/分に調製した。雰囲気ガスの全圧はすべて大気圧であった。1100℃に至った後はその温度で30分間保持した後、自然放冷してα−アルミナ粉末を得た。
得られたα−アルミナ粉末を空気中600℃で30分間脱塩素処理して、目的とするα−アルミナ粉末を得た。結果を表1および表2に示す。
【0069】
実施例11
遷移アルミナとして、アルミニウム有機金属化合物の加水分解法による遷移アルミナ粉末(商品名AKP−G15、住友化学工業株式会社製)を用いた。
種晶としてα−アルミナ粉末(商品名AKP−50、住友化学工業株式会社製)34.8gを用い、形状制御剤としてMgO粉末(和光純薬工業株式会社製)18gを用い、これを上記遷移アルミナ粉末に混合して652.8gとし、該混合物を実施例1同様にしてバーチカルグラニュレータを用いて造粒して粒体を得た。
該粒体600gをグラファイトボ−トに充填し、石英炉芯管を用いた管状炉にて焼成した。希釈ガスとして窒素ガスを用い、昇温速度500℃/時間にて昇温し、800℃になったときボンベ塩化水素ガスを導入した。雰囲気の濃度調整は流量計により窒素ガスとボンベ塩化水素ガスのそれぞれのガス流量を調整して行った。雰囲気全体の流量は線速度20mm/分に調製した。雰囲気ガスの全圧はすべて大気圧であった。1100℃に至った後はその温度で30分間保持した後、自然放冷してα−アルミナ粉末を得た。
得られたα−アルミナ粉末をジェットミルにより解砕(空気圧6kg/cm2 で、粉末の供給速度を2.4kg/hr)してから空気中600℃で30分間脱塩素処理して、目的とするα−アルミナ粉末を得た。結果を表1および表2に示す。
【0070】
実施例12
遷移アルミナとして、アルミニウム有機金属化合物の加水分解法による遷移アルミナ粉末(商品名AKP−G15、住友化学工業株式会社製)を用いた。
種晶としてα−アルミナ粉末(商品名AKP−50、住友化学工業株式会社製)34.8gを用い、これを上記遷移アルミナ粉末に混合して634.8gとし、該混合物を実施例1同様にして造粒、焼成してα−アルミナ粉末を得た。次に、得られたα−アルミナ粉末を空気中1000℃で60分間脱塩素処理を行った後、ジェットミルにより解砕(空気圧6kg/cm2 で、粉末の供給速度を2.4kg/hr)して、目的とするα−アルミナ粉末を得た。結果を表1および表2に示す。
【0071】
実施例13
遷移アルミナとして、アルミニウム有機金属化合物の加水分解法による遷移アルミナ粉末(商品名AKP−G15、住友化学工業株式会社製)を用いた。
種晶としてα−アルミナ粉末(商品名AKP−50、住友化学工業株式会社製)34.8gを用い、これを上記遷移アルミナ粉末に混合して634.8gとし、該混合物を実施例1同様にしてバーチカルグラニュレータを用いて造粒して粒体を得た。
該粒体600gをグラファイトボ−トに充填し、石英炉芯管を用いた管状炉にて焼成した。希釈ガスとして窒素ガスを用い、昇温速度500℃/時間にて昇温し、800℃になったときボンベ塩化水素ガスを導入した。雰囲気の濃度調整は流量計により窒素ガスとボンベ塩化水素ガスのそれぞれのガス流量を調整して行った。雰囲気全体の流量は線速度20mm/分に調製した。雰囲気ガスの全圧はすべて大気圧であった。1100℃に至った後はその温度で30分間保持した後、自然放冷してα−アルミナ粉末を得た。
得られたα−アルミナ粉末を水蒸気(25体積%)と窒素(75体積%)からなる雰囲気中500℃で60分間脱塩素処理した後、ジェットミルにより解砕(空気圧6kg/cm2 で、粉末の供給速度を2.4kg/hr)して、目的とするα−アルミナ粉末を得た。結果を表1および表2に示す。
【0072】
実施例14
脱塩素処理の温度を900℃とした以外は実施例12と同様にして、目的とするα−アルミナ粉末を得た。結果を表1および表2に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
実施例15
脱塩素処理を窒素のみからなる雰囲気中1100℃で180分間行った以外は実施例12と同様にして、目的とするα−アルミナ粉末を得た。結果を表3および表4に示す。
【0076】
実施例16
ロータリーポンプ(真空機工株式会社製、GVD−050A)で0.1Torrに減圧して、1000℃で脱塩素処理を60分間行った以外は実施例12と同様にして、目的とするα−アルミナ粉末を得た。結果を表3および表4に示す。
【0077】
実施例17
水で洗浄した後、250℃で60分間乾燥して脱塩素処理を行った以外は実施例12と同様にして、目的とするα−アルミナ粉末を得た。結果を表3および表4に示す。
【0078】
実施例18
遷移アルミナとして、アルミニウム有機金属化合物の加水分解法による遷移アルミナ粉末(商品名AKP−G15、住友化学工業株式会社製)を用いた。
種晶としてα−アルミナ粉末(商品名AKP−50、住友化学工業株式会社製)34.8gを用い、これを上記遷移アルミナ粉末に混合して634.8gとし、該混合物を実施例1同様にして造粒、焼成してα−アルミナ粉末を得た。該粉末をオートクレーブ中で180℃で2時間脱塩素処理した後、ジェットミルにより解砕(空気圧6kg/cm2 で、粉末の供給速度を2.4kg/hr)して、目的とするα−アルミナ粉末を得た。結果を表3および表4に示す。
【0079】
実施例19〜22
表1に示す雰囲気ガス組成、焼成温度、焼成時間とする以外は実施例6と同様にして目的とするα−アルミナ粉末を得た。結果を表3および表4に示す。
【0080】
実施例23
造粒を皿型造粒機により行い、見かけ嵩密度を0.55g/cm3 とした以外は実施例6と同様にして目的とするα−アルミナ粉末を得た。見かけ嵩密度が0.55g/cm3 と高くなってもD90/D10は3であった。
【0081】
比較例1
実施例3で得た水酸化アルミニウムの粒体200gを用いて、石英炉芯管を用いた管状炉にて空気中で焼成した。昇温速度500℃/時間にて昇温し、1100℃に至った後はその温度で30分間保持した後、自然放冷した。目的とするα−アルミナ粉末を得ることができなかった。結果を表3および表4に示す。
【0082】
比較例2
実施例4において、遷移アルミナ粉末の造粒を行わなかった。得られたα−アルミナ粉末はその嵩密度が0.1g/cm3 と低いものであった。結果を表3および表4に示す。
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
実施例24
アルミナ原料としてアルミニウムイソプロポキシドの加水分解法により合成して得られる水酸化アルミニウムを皿型造粒機を用い直径2〜3mmの球形状に造粒する。造粒した原料を800℃にて1時間仮焼成し、BET比表面積150m2 /gの遷移アルミナを得る。この遷移アルミナ600gをアルミナ製の焼成容器に入れ、17分間隔にて、電気加熱により最高均熱ゾーンを1100℃に保持したプッシャー式トンネル炉に供給する。焼成容器10個に1個につき塩化アンモニウム1.2kgを入れた焼成容器を供給する。均熱ゾーンの通過時間は1時間とする。塩化アンモニウムの熱分解により生成する塩化水素ガスが焼成炉の高温部に供給されるよう、窒素ガスを原料供給側のガス供給口より導入する。焼成後得られるアルミナは、多面体形状を有する数平均粒径18μmのα−アルミナ粒子からなり、容易に解砕されるアルミナ粉末である。焼成炉内の雰囲気ガス中の塩化水素濃度は18体積%とする。
【0086】
実施例25
実施例24と同じ造粒した遷移アルミナ原料を、下記以外は実施例23と同じ条件にて焼成する。焼成容器それぞれに塩化アンモニウム200gを入れた後、遷移アルミナ原料を塩化アンモニウムの上に400g入れ焼成炉に供給する。窒素ガスは導入しない。焼成後得られるアルミナは、多面体形状を有する数平均粒径18μmのα−アルミナ粒子からなり、容易に解砕されるアルミナ粉末である。焼成炉内の雰囲気ガス中の塩化水素濃度は25体積%とする。
【0087】
比較例5
アルミナ原料として遷移アルミナ(商品名:AKP−G15、住友化学工業株式会社製)30kgに、種晶としてα−アルミナ(商品名:AKP−30、住友化学工業株式会社製)を900gおよび塩化アンモニウム1.5kgをV型ブレンダーにて混合した後、混合造粒機(商品名:バーチカルグラニュレーター、パウレック社製)を用い造粒する。120℃にて1時間乾燥させた後、この混合造粒原料950gをアルミナ製の焼成容器に入れ、8.5分間隔にて、電気加熱により最高均熱ゾーンを1100℃に保持したプッシャー式トンネル炉に供給する。均熱ゾーンの通過時間は0.5時間とする。塩化アンモニウムの熱分解により生成した塩化水素ガスが焼成炉の高温部に供給されるよう、窒素ガスを原料供給側のガス供給口より導入する。焼成後得られるアルミナは、多面体形状を有する数平均粒径0.8μmのα−アルミナ粒子からなり容易に解砕されるアルミナ粉末である。焼成炉内の雰囲気ガス中の塩化水素濃度は3体積%とする。
【0088】
比較例3
塩化アンモニウムを供給しない以外は実施例24と同じ原料、条件にてアルミナを焼成する。焼成後得られたアルミナは、主にδ−アルミナからなる遷移アルミナ粉末である。
【0089】
比較例4
比較例3を均熱ゾーンを1300℃に昇温する以外は同じ条件で繰り返す。焼成後得られたアルミナは、不均一形状を有する数平均粒径0.4μmのα−アルミナ粒子からなり、堅い凝集が生じたアルミナ粉末である。
【0090】
【発明の効果】
本発明により、形状や粒径が制御され、粒度分布が狭く、凝集粒子が少ないα−アルミナ粉末を、高い焼成効率で製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例5で観察されたα−アルミナ粉末の粒子構造を示す。図面に代わる写真。(倍率4900倍の走査型電子顕微鏡写真)。
【図2】実施例5で得られたα−アルミナ粉末の粒度分布図を示す。
Claims (13)
- 遷移アルミナまたはアルミナ化合物或いはこれらの混合物を、攪拌造粒および転動造粒から選ばれる造粒方法により造粒して粒状体とし、該粒状体を塩化水素ガスの濃度が1体積%以上100体積%以下である塩化水素含有ガス雰囲気下に焼成することを特徴とするα−アルミナ粉末の製造方法。
- 塩化水素ガスの濃度が5体積%以上100体積%以下である請求項1記載のα−アルミナ粉末の製造方法。
- 塩化水素ガスの濃度が30体積%以上100体積%以下である請求項1記載のα−アルミナ粉末の製造方法。
- 粒状体の見かけ嵩密度が0.15g/cm 3 以上である請求項1〜3のいずれかに記載のα−アルミナ粉末の製造方法。
- 粒状体の見かけ嵩密度が0.35g/cm 3 以上0.55g/cm 3 以下である請求項4記載のα−アルミナ粉末の製造方法。
- 遷移アルミナまたはアルミナ化合物或いはこれらの混合物に、種晶または形状制御剤或いはこれらの混合物を添加することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のα−アルミナ粉末の製造方法。
- 種晶として、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、ニッケルの化合物から選ばれた一種または二種以上を用いることを特徴とする請求項6記載のα−アルミナ粉末の製造方法。
- 形状制御剤として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、バナジウム、モリブデン、銅、亜鉛、ホウ素、ケイ素、ランタン、セリウム、ネオジウムの各金属単体およびそれらの化合物から選ばれた一種または二種以上を用いることを特徴とする請求項6記載のα−アルミナ粉末の製造方法。
- 焼成温度が500℃〜1400℃の温度範囲である請求項1〜8のいずれかに記載のα−アルミナ粉末の製造方法。
- 塩化水素ガスが、ボンベ塩化水素ガスである請求項1〜9のいずれかに記載のα−アルミナ粉末の製造方法。
- 塩化水素ガスが、固体状または液体状の塩化アンモニウムを単独で焼成炉内に直接供給して発生させた塩化水素ガスである請求項1〜9のいずれかに記載のα−アルミナ粉末の製造方法。
- 焼成温度が600℃〜1400℃である請求項11記載のα−アルミナ粉末の製造方法。
- 遷移アルミナまたはアルミナ化合物或いはこれらの混合物が、有機アルミニウム化合物の加水分解により得られるものである請求項1〜12のいずれかに記載のα−アルミナ粉末の製造方法。
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