JP6085708B1 - 合金材料用研磨組成物及び合金材料の研磨方法 - Google Patents

合金材料用研磨組成物及び合金材料の研磨方法 Download PDF

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Abstract

【課題】合金材料の研磨特性を向上させた合金材料研磨組成物及びそれを用いた合金材料の研磨方法を提供する。【解決手段】本発明の合金材料用研磨組成物は、合金材料を研磨対象とし、体積基準における積算粒子径分布の大粒子径側からの積算体積が10%,50%,90%となる粒子径をそれぞれD10,D50,D90としたとき、D50が3.1〜12μmであり、D10とD90との差をD50で除した値が0.7〜2.4である粒子径分布を有する酸化アルミニウム粒子を含んでいる。【選択図】なし

Description

本発明は、合金材料用研磨組成物及び合金材料の研磨方法に関する。
一般に、合金とは、1種の金属元素と、1種以上の他の金属元素や、炭素、窒素、ケイ素等の非金属元素との共融体である。一般的に、合金は、純金属よりも機械的強度、耐薬品性、耐食性、耐熱性等の性質を向上させることを目的として製造される。例えば、アルミニウム合金は、軽量且つ優れた強度を有することから、建材や容器等の構造材料、自動車、船舶、航空機等の輸送機器の他、各種電化製品や、電子部品等の様々な用途に用いられている。また、例えば鉄系合金であるステンレス鋼は、優れた耐食性を有することから、構造材料や輸送機器の他、工具、機械器具、調理器具等の様々な用途で使用されている。
従来より、これらの合金材料の表面に研磨加工を施すための研磨組成物として、特許文献1に開示される合金材料用研磨組成物が知られている。特許文献1は、研磨速度と表面粗度の両方を向上させるために、砥粒の平均粒子径(D50)等に着目している。
特開平8−2913号公報
本発明の目的は、合金材料の研磨特性を向上させた合金材料用研磨組成物及びそれを用いた合金材料の研磨方法を提供することにある。
本発明は、合金材料を研磨する用途に用いられる合金材料用研磨組成物において、研磨特性を向上できる構成を見出したことによりなされたものである。
上記の目的を達成するために、本発明の一態様では、合金材料を研磨対象とし、体積基準における積算粒子径分布の大粒子径側からの積算体積が10%,50%,90%となる粒子径をそれぞれD10,D50,D90としたとき、D50が3.1〜12μmであり、D10とD90との差をD50で除した値が0.7〜2.4である粒子径分布を有する酸化アルミニウム粒子、及び水を含む合金材料用研磨組成物を要旨とする。
前記酸化アルミニウム粒子の平均一次粒子径が0.3μm以上であってもよい。前記酸化アルミニウム粒子のα化率が70〜100%であってもよい。前記酸化アルミニウム粒子のD10が25μm以下であり、D90が1.0μm以上であってもよい。前記合金材料がアルミニウム合金及び鉄合金から選ばれる少なくとも一種であってもよい。前記合金材料がアルミニウム合金であり、マグネシウム、ケイ素、銅、亜鉛、マンガン、クロム、及び鉄から選ばれる少なくとも1種の金属元素を0.1質量%以上含有してもよい。前記合金材料が鉄合金であり、クロム、ニッケル、モリブデン、及びマンガンから選ばれる少なくとも一種を10質量%以上含有してもよい。前記合金材料用研磨組成物中における酸化アルミニウム粒子の含有量が0.1〜50質量%であってもよい。本発明の別の態様では、前記合金材料用研磨組成物を用いて合金材料を研磨する研磨工程を有する合金材料の研磨方法を要旨とする。
本発明によれば、合金材料の研磨特性を向上できる。
以下、本発明の合金材料用研磨組成物(以下、単に「研磨組成物」という)を具体化した一実施形態を説明する。本実施形態の研磨組成物は、合金材料を研磨する用途に用いられる。合金材料の例としては、例えば、アルミニウム合金、鉄合金、チタン合金、ニッケル合金、銅合金等が挙げられる。
アルミニウム合金は、アルミニウムを主成分とし、例えば、ケイ素、鉄、銅、マンガン、マグネシウム、亜鉛、及びクロムから選ばれる少なくとも一種をさらに含有する。アルミニウム合金中のアルミニウム以外の金属の含有量は、例えば0.1質量%以上、より具体的には0.1〜10質量%である。アルミニウム合金の例としては、例えば、日本工業規格(JIS)H4000:2006に記載されているような、合金番号2000番台、3000番台、4000番台、5000番台、6000番台、7000番台、8000番台のものが挙げられる。
鉄合金は、鉄を主成分とし、例えば、クロム、ニッケル、モリブデン、及びマンガンから選ばれる少なくとも一種をさらに含有する。鉄合金中の鉄以外の金属の含有量は、例えば10質量%以上、より具体的には10〜50質量%である。鉄合金の例として、例えばステンレス鋼等が挙げられる。ステンレス鋼の例としては、例えば、JIS G4303:2005に記載されているような、SUS201,SUS303,SUS303Se,SUS304,SUS304L,SUS304NI,SUS305,SUS305JI,SUS309S,SUS310S,SUS316,SUS316L,SUS321,SUS347,SUS384,SUSXM7,SUS303F,SUS303C,SUS430,SUS430F,SUS434,SUS410,SUS416,SUS420J1,SUS420J2,SUS420F,SUS420C,SUS631J1のものが挙げられる。
チタン合金は、チタンを主成分とし、例えば、アルミニウム、鉄、及びバナジウムをさらに含有する。チタン合金中のチタン以外の金属の含有量は、例えば3.5〜30質量%である。チタン合金の例としては、例えば、JIS H4600:2012に記載の11〜23種、50種、60種、61種、80種のものが挙げられる。
ニッケル合金は、ニッケルを主成分とし、例えば、鉄、クロム、モリブデン、及びコバルトから選ばれる少なくとも一種をさらに含有する。ニッケル合金中のニッケル以外の金属の含有量は、例えば20〜75質量%である。ニッケル合金の例としては、例えばJIS H4551:2000に記載されているような、合金番号NCF600,NCF601,NCF625,NCF750,NCF800,NCF800H,NCF825,NW0276,NW4400,NW6002,NW6022のものが挙げられる。
銅合金は、銅を主成分とし、例えば、鉄、鉛、亜鉛、及び錫から選ばれる少なくとも一種をさらに含有する。銅合金中の銅以外の金属の含有量は、例えば3〜50質量%である。銅合金の例としては、例えば、JIS H3100:2006に記載されているような、合金番号C2100,C2200,C2300,C2400,C2600,C2680,C2720,C2801,C3560,C3561,C3710,C3713,C4250,C4430,C4621,C4640,C6140,C6161,C6280,C6301,C7060,C7150,C1401,C2051,C6711,C6712のものが挙げられる。
これらの各合金材料は、一種のみを適用してもよく、二種以上を組み合わせて適用してもよい。また、これらの合金材料のうち主成分がアルミニウム及び鉄のいずれか一種であることが好ましい。
本実施形態の研磨組成物は、砥粒として酸化アルミニウム(アルミナ)粒子を含有し、さらに酸又はその塩、及び分散助剤を含有してもよい。酸化アルミニウム粒子は、合金材料の表面を物理的に研磨することにより合金材料の研磨速度を向上する。
研磨組成物中の酸化アルミニウム粒子は、体積基準における積算粒子径分布において大粒子径側からの積算体積が10%,50%,90%となる粒子径をそれぞれD10,D50,D90としたとき、D10とD90との差をD50で除した値([D10−D90]/D50)の下限は、0.7以上であり、好ましくは1.1以上である。かかる値が、0.7以上であると、研磨組成物による研磨面のスクラッチの発生を抑制できるとともに、表面粗さを良好なものとすることができる。また、上記D10とD90との差をD50で除した値の上限は、2.4以下であり、好ましくは2.3以下である。かかる値が2.4以下であると、研磨速度を向上させることができる。なお、体積基準における積算粒子径分布の測定方法は、細孔電気抵抗法により測定される。
研磨組成物中の酸化アルミニウム粒子のD50の下限は、3.1μm以上であり、好ましくは3.6μm以上である。かかる値が3.1μm以上であると研磨速度を向上させることができる。D50の上限は、12μm以下であり、好ましくは10μm以下である。かかる値が12μm以下であると、研磨組成物による研磨面のスクラッチの発生を抑制できるとともに、表面粗さを良好なものとすることができる。
研磨組成物中の酸化アルミニウム粒子における、D10の下限は、3μm以上であることが好ましく、より好ましくは6μm以上である。かかる値が3μm以上であると、研磨速度をより向上させることができる。D10の上限は、25μm以下であることが好ましく、より好ましくは22μm以下である。かかる値が25μm以下であると、研磨組成物による研磨面のスクラッチの発生をより抑制できるとともに、表面粗さをより良好なものとすることができる。
研磨組成物中の酸化アルミニウム粒子における、D90の下限は、1.0μm以上であることが好ましく、より好ましくは1.3μm以上である。かかる値が1.0μm以上であると、研磨速度をより向上させることができる。D90の上限は、8μm以下であることが好ましく、より好ましくは4μm以下である。かかる値が8μm以下であると、研磨組成物による研磨面のスクラッチの発生をより抑制できるとともに、表面粗さをより良好なものとすることができる。
酸化アルミニウム粒子の平均一次粒子径の下限は、0.3μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.6μm以上であり、更に好ましくは1.0μm以上である。砥粒の平均粒子径が大きくなるにつれて、研磨対象物の研磨速度が向上する。研磨組成物中に含まれる酸化アルミニウム粒子の平均一次粒子径の上限は、12μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以下である。酸化アルミニウム粒子の平均一次粒子径が小さくなるにつれて、研磨組成物による研磨面のスクラッチの発生をより抑制できるとともに、表面粗さをより良好なものとすることができる。なお、酸化アルミニウム粒子の一次粒子径の測定は、走査型電子顕微鏡による当該粒子の画像の面積を計測し、それと同じ面積の円の直径として求めることができ、一般的な画像解析ソフトウエアを用いて求めることができる。平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡の視野範囲内にある複数の粒子の一次粒子径の平均値である。
研磨組成物中に含まれる酸化アルミニウム粒子のBET比表面積の下限は、0.1m/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.2m/g以上である。酸化アルミニウム粒子のBET比表面積が大きくなるにつれて、研磨組成物による研磨面のスクラッチの発生をより抑制できるとともに、表面粗さをより良好なものとすることができる。研磨組成物中に含まれる酸化アルミニウム粒子のBET比表面積の上限は、4.0m/g以下であることが好ましく、より好ましくは3.5m/g以下である。酸化アルミニウム粒子のBET比表面積が小さくなるにつれて、研磨対象物の研磨速度が向上する。なお、酸化アルミニウム粒子のBET比表面積の測定は、流動式比表面積自動測定装置を使用し、窒素吸着法により測定することができる。
酸化アルミニウム粒子は、研磨速度向上の観点からα化率が高い方が好ましい。酸化アルミニウム粒子のα化率は、好ましくは70〜100%、より好ましくは85〜100%である。酸化アルミニウム粒子のα化率は、X線回折測定による(113)面回折線の積分強度比から求められる。
研磨組成物中の酸化アルミニウム粒子の含有量の下限は、0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上である。酸化アルミニウム粒子の含有量が多くなるにつれて、研磨組成物による合金の研磨速度がより向上する。研磨組成物中の酸化アルミニウム粒子の含有量の上限は、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以下である。酸化アルミニウム粒子の含有量が少なくなるにつれて、研磨組成物の製造コストが低減するのに加えて、研磨組成物を用いた研磨によりスクラッチの少ない表面を得ることが容易である。
酸又はその塩は、研磨速度を上昇させる観点から配合してもよい。酸又はその塩としては、無機酸、有機酸又はそれらの塩が挙げられる。無機酸の例としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸、リン酸等が挙げられる。有機酸の例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ジグリコール酸、2−フランカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸、3−フランカルボン酸、2−テトラヒドロフランカルボン酸、メトキシ酢酸、メトキシフェニル酢酸、フェノキシ酢酸等のカルボン酸、メタンスルホン酸等のスルホン酸、ホスホン酸等が挙げられる。
研磨組成物中における酸又はその塩の含有量の下限は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。酸又はその塩の含有量が0.01質量%以上の場合、研磨速度をより向上させることができる。研磨組成物中における酸又はその塩の含有量の上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下である。酸又はその塩の含有量が10質量%以下の場合、研磨組成物を用いた研磨によりスクラッチの少ない表面を得ることが容易である。
分散助剤は、砥粒の凝集体の再分散を容易にする観点から配合してもよい。分散助剤の例としては、例えばポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸塩、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ベントナイト、アルキルスルホン酸、トリポリリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩等が挙げられる。
研磨組成物中における分散助剤の含有量の下限は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。研磨組成物中における分散助剤の含有量の上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。分散助剤の含有量が上記好ましい範囲内である場合、研磨性能の安定化が図られ、被研磨物の平滑性がより好適なものとなる。
本実施形態の研磨組成物は、必要に応じて、前述した成分以外の成分、例えば、合金材料の溶解を促進するエッチング剤、合金材料の表面を酸化させる酸化剤、合金材料の表面や砥粒表面に作用する水溶性重合体、合金材料の表面の腐食を抑制する防食剤やキレート剤、その他機能を有する防腐剤、防黴剤等の成分を含んでもよい。
エッチング剤の例としては、上述した酸の他、アルカリを適用することができる。アルカリの例としては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機アルカリ、アンモニア、アミン、第四級アンモニウム水酸化物等の有機アルカリ等が挙げられる。
酸化剤の例としては、例えば過酸化水素、過酢酸、過炭酸塩、過酸化尿素、過塩素酸塩、過硫酸塩等が挙げられる。
水溶性重合体の例としては、例えば、ポリカルボン酸、ポリホスホン酸、ポリスチレンスルホン酸等のポリスルホン酸、キタンサンガム、アルギン酸ナトリウム等の多糖類、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ソルビタンモノオレエート、単一種又は複数種のオキシアルキレン単位を有するオキシアルキレン系重合体、それらの共重合体、それらの塩、それらの誘導体等が挙げられる。
本実施形態の研磨組成物のpHは、特に限定されないが、7.0以下であることが好ましく、1.0〜6.0であることがより好ましく、1.5〜4.5であることがさらに好ましい。研磨組成物のpHが、この好ましい範囲内の場合、研磨速度をより向上させることができる。研磨組成物のpH調整剤としては、上述した酸、アルカリ、又はそれらの塩を適宜採用することができる。
次に、上記研磨組成物を用いた合金材料の研磨方法について説明する。
合金材料の研磨方法は、上記研磨組成物を用いて合金材料を研磨する研磨工程を有する。研磨組成物は、金属材料の研磨で通常に用いられるのと同じ装置及び条件で使用することができる。研磨パッドを使用した場合には、研磨パッドと合金材料との間の摩擦、及び研磨組成物と合金材料との間の摩擦により、合金材料は物理的に研磨される。
研磨装置の例としては、例えば、片面研磨装置及び両面研磨装置が挙げられる。片面研磨装置では、キャリアと呼ばれる保持具を用いて合金材料を保持し、研磨組成物を供給しながら、研磨パッドを貼付した定盤を合金材料の片面に押しつけて定盤を回転させる。これにより、合金材料の片面が研磨される。両面研磨装置では、キャリアを用いて合金材料を保持し、上方より研磨組成物を供給しながら、研磨パッドが貼付された定盤を合金材料の両面に押し付けて定盤を回転させる。これにより合金材料の両面が研磨される。
研磨条件には、研磨荷重及び研磨線速度が含まれる。一般に研磨荷重が高くなるにつれて、機械的な加工特性が向上するために研磨速度が高まる。また、一般に研磨荷重が低くなるにつれて、研磨面の表面荒れが抑制される。研磨組成物を用いた研磨の際に適用される研磨荷重は、例えば、20〜1,000g/cmであることが好ましく、より好ましくは50〜500g/cmである。
研磨線速度は、一般に研磨パッドの回転数、キャリアの回転数、合金材料の大きさ、合金材料の数等の影響を受ける。線速度が高い場合は合金材料に加わる摩擦力が大きくなるため、合金材料が機械的に研磨されやすくなる。研磨線速度は、例えば、10〜300m/分であることが好ましく、より好ましくは、30〜200m/分である。線速度が上記の範囲内にある場合、十分に高い研磨速度が得られることに加え、合金材料に対して適度な摩擦力を付与することができる。研磨パッドは、特に限定されず、例えば、不織布タイプ、スウェードタイプ、砥粒を含むもの、砥粒を含まないもののいずれを用いてもよい。
上記実施形態の研磨組成物によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態の研磨組成物では、体積基準における積算粒子径分布の大粒子径側からの積算体積が10%,50%,90%となる粒子径をそれぞれD10,D50,D90としたとき、D50が3.1〜12μmであり、D10とD90との差をD50で除した値が0.7〜2.4である粒子径分布を有する酸化アルミニウム粒子を含むよう構成した。したがって、合金材料に対する研磨特性を向上できる。より具体的には、合金材料に対する研磨速度を向上できる。また、研磨組成物による研磨面のスクラッチの発生を抑制するとともに、表面粗さを良好なものとすることができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記研磨組成物は、一剤型であってもよいし、二剤以上から構成する多剤型であってもよい。
・前記研磨組成物は、研磨組成物の原液を水で希釈することにより調製されてもよい。
・前記研磨組成物を用いた合金材料の研磨の前にラッピング研磨工程を行ってもよい。研磨組成物を用いた合金材料の研磨の後に、仕上げ研磨工程を行ってもよい。
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。尚、本発明は、実施例欄記載の構成に限定されるものではない。
(試験例1:アルミニウム合金に対する研磨試験)
砥粒としての下記表1に示す各例のアルミナ粒子を20質量%の含有量となるように水で希釈し、分散助剤としてポリアクリル酸ナトリウム(質量平均分子量:2,000)を0.5質量%の含有量となるようにそれぞれ加えて攪拌し、混合液を調製した。次に、pHメーターによりpHを確認しながら、前記混合液に酸又はその塩としてクエン酸を加え、pH2.2に調整することにより各例の研磨組成物を調製した。各例の研磨組成物中に含有されるアルミナ粒子の詳細を表1に示す。
表1中におけるD10、D50、D90欄は、アルミナ粒子の粒度分布において、体積基準における積算粒子径分布の大粒子径側からの積算体積が10%,50%,90%となる粒子径をそれぞれ示す。D10、D50、D90は、粒度分布測定装置(マルチサイザーIII型、ベックマンコールター社製)を使用し、細孔電気抵抗法により測定した。
アルミナ粒子のBET比表面積(SA)は、流動式比表面積自動測定装置(FlowSorbII、島津製作所社製)を使用し、窒素吸着法により測定した。
アルミナ粒子の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(S- 4700、日立ハイテクノロジーズ社製)の画像から、画像解析ソフトウエアを使用して測定した。測定は、走査型電子顕微鏡の10視野から選択した合計200個のアルミナ(1視野当たり20個)について実施した。
アルミナ粒子のα化率は、X線解析装置(Ultima IV、リガク社製)を使用し、X線回折測定による(113)面回折線の積分強度比より算出した。
実施例1〜4及び比較例1〜3の各研磨組成物を用いて、表3に示す条件でアルミニウム合金を研磨した。そして、各研磨組成物によるアルミニウム合金の研磨速度を求めるとともに、研磨後のアルミニウム合金の表面粗さ及びスクラッチの発生の有無を測定した。
<研磨速度の算出>
研磨前後の合金材料の質量の差から研磨速度を算出した。その結果を表2の“研磨速度”欄に示す。
<表面粗さの測定>
研磨後の合金材料の表面粗さRaを非接触表面形状測定器(レーザー顕微鏡VK-X200、キーエンス社製)を用いて測定した。なお、表面粗さRaは、粗さ曲線の高さ方向の振幅の平均を示すパラメータであって、一定視野内での合金材料表面の高さの算術平均を示す。表面粗さ形状測定機による測定範囲は、285×210μmとした。その結果を表2の“表面粗さRa”欄に示す。
<スクラッチ発生の有無>
蛍光灯下において、目視にて研磨表面全面より観察されるスクラッチを確認することにより、スクラッチ発生の有無を評価した。その結果を表2の“スクラッチ発生の有無”欄に示す。
表2に示すように、実施例1〜4の場合、良好な研磨速度が得られることが確認された。また、研磨組成物による研磨面の表面粗さが低く、スクラッチの発生も見られなかった。本発明の要件を満たさない比較例1は、各実施例に比べ高い研磨速度が得られなかった。また、比較例2,3は、表面粗さが、各実施例に対して劣る結果となった。
(試験例2:ステンレス鋼に対する研磨試験)
砥粒としての下記表4に示す各例のアルミナ粒子を20質量%の含有量となるように水で希釈し、分散助剤としてポリアクリル酸ナトリウム(質量平均分子量:2,000)を0.5質量%の含有量となるようにそれぞれ加えて攪拌し、混合液を調製した。次に、pHメーターによりpHを確認しながら、前記混合液に酸又はその塩としてクエン酸を加え、pH2.2に調整することにより各例の研磨組成物を調製した。各例の研磨組成物中に含有されるアルミナ粒子の詳細を表4に示す。表4に示される各パラメータの測定方法は、試験例1と同様である。
実施例5〜10及び比較例4,5の各研磨組成物を用いて、表6に示す条件で鉄合金(SUS)を研磨した。そして、各研磨組成物による鉄合金の研磨速度を求めるとともに、研磨後の鉄合金の表面粗さ及びスクラッチの発生の有無を測定した。
<研磨速度の算出>
試験例1と同様の方法を用いた。その結果を表5の“研磨速度”欄に示す。
<表面粗さの測定>
試験例1と同様の方法を用いた。その結果を表5の“表面粗さRa”欄に示す。
<スクラッチ発生の有無>
試験例1と同様の方法を用いた。その結果を表5の“スクラッチ発生の有無”欄に示す。
表5に示すように、実施例5〜10の場合、良好な研磨速度が得られることが確認された。また、研磨組成物による研磨面の表面粗さが低く、スクラッチの発生も見られなかった。本発明の要件を満たさない比較例4は、各実施例に比べ高い研磨速度が得られなかった。また、比較例5は、スクラッチの発生が見られた。
以上の結果から、本発明の研磨組成物を用いることで、表面粗さRaのより小さい研磨面を有する合金材料、すなわち研磨面の表面荒れが少なく欠陥が抑制された合金材料が、早い研磨速度で得られることが分かる。

Claims (9)

  1. 合金材料を研磨対象とし、体積基準における積算粒子径分布の大粒子径側からの積算体積が10%,50%,90%となる粒子径をそれぞれD10,D50,D90としたとき、D50が3.1〜12μmであり、D10とD90との差をD50で除した値が0.7〜2.4である粒子径分布を有する酸化アルミニウム粒子、及び水を含む合金材料用研磨組成物。
  2. 前記酸化アルミニウム粒子の平均一次粒子径が0.3μm以上である請求項1に記載の合金材料用研磨組成物。
  3. 前記酸化アルミニウム粒子のα化率が70〜100%である請求項1又は2に記載の合金材料用研磨組成物。
  4. 前記酸化アルミニウム粒子のD10が25μm以下であり、D90が1.0μm以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載の合金材料用研磨組成物。
  5. 前記合金材料がアルミニウム合金及び鉄合金から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか一項に記載の合金材料用研磨組成物。
  6. 前記合金材料がアルミニウム合金であり、マグネシウム、ケイ素、銅、亜鉛、マンガン、クロム、及び鉄から選ばれる少なくとも1種の金属元素を0.1質量%以上含有する請求項5に記載の合金材料用研磨組成物。
  7. 前記合金材料が鉄合金であり、クロム、ニッケル、モリブデン、及びマンガンから選ばれる少なくとも一種を10質量%以上含有する請求項5に記載の合金材料用研磨組成物。
  8. 前記合金材料用研磨組成物中における酸化アルミニウム粒子の含有量が0.1〜50質量%である請求項1〜7のいずれか一項に記載の合金材料用研磨組成物。
  9. 請求項1〜のいずれか一項に記載の合金材料用研磨組成物を用いて合金材料を研磨する研磨工程を有する合金材料の研磨方法。
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