JP2004097051A - ヨーグルトの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】半流動ソフトタイプのヨーグルトの製造において、従来の発酵タンクを使用しながら、一般的に行なわれている方法のものよりゲル粒子が細かく、なめらかとなり、外観、風味、組織安定性とも向上したヨーグルトの製造技術を提供する。
【解決手段】半流動ソフトタイプのヨーグルトの製造方法であって、発酵工程においてゲル化現象が現れる手前(通常pHが5.8付近)で発酵タンクのジャケットに冷却液(通常1〜3℃の水)を通し、発酵タンク内壁表層部のミックスの発酵を停止させ、さらに発酵が継続している中心部側のミックスがpH4.7付近となった時点で、攪拌を行いゲルを破壊させることを特徴とするヨーグルトの製造方法。
上記の方法によって製造された半流動ソフトタイプのヨーグルト。
【選択図】 図1
【解決手段】半流動ソフトタイプのヨーグルトの製造方法であって、発酵工程においてゲル化現象が現れる手前(通常pHが5.8付近)で発酵タンクのジャケットに冷却液(通常1〜3℃の水)を通し、発酵タンク内壁表層部のミックスの発酵を停止させ、さらに発酵が継続している中心部側のミックスがpH4.7付近となった時点で、攪拌を行いゲルを破壊させることを特徴とするヨーグルトの製造方法。
上記の方法によって製造された半流動ソフトタイプのヨーグルト。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヨーグルトの製造方法に関し、より詳しくは、発酵タンクの内壁に接触する表層部のスターターを接種した発酵途中の少量のミックスとタンク中心部側の多量の発酵終点に達したヨーグルトが混合されることにより、ゲル粒子が一般的に行なわれているゲルの破壊による方法のものより細かく均質でなめらかとなり、外観、風味を良くし、組織安定性をも向上させることができるヨーグルトの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ヨーグルトは元来は牛乳、山羊乳などをそのままあるいは濃縮したものに、乳酸菌スターターを接種し、発酵させて製造されるもので、酸甘味、独特の風味、さっぱりとした口触りを有する発酵乳製品として知られている。その種類は、果汁や果肉を添加したものなど最近多様化されているものの、乳を含む原材料に一定量の乳酸菌スターターを接種し、紙容器等の流通用個食容器に充填して発酵させてプリン状に固化させたハードタイプと、発酵後解砕して流通用個食容器に充填したソフトタイプに大別することができる。
【0003】
従来、乳酸菌を含む多種類の菌の適切な共生培養により、食品に利用可能な風味を保ちつつ、人体の健康維持に有効な微生物とその産生物質を多種類かつ多量に含有するヨーグルトの製造方法が報告されている(特許文献1参照)。
また、乳タンパク質の等電点凝集によりゲルが安定する従来のpH4.6付近より高いpH4.9〜5.1で発酵を終了させ、次いで10℃以下に冷却する酸味の強すぎない、さわやかな酸味のハードタイプ(後発酵)ヨーグルトの製造方法が報告されている(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特許第2676591号公報(第(2)〜(3)頁、第1〜3図)
【特許文献2】
特開2001−252011号公報(第(2)〜(5)頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来、発酵後解砕して流通用個食容器に充填したソフトタイプのヨーグルトの製造は、攪拌機およびジャケットを備えた発酵タンクを使用し、発酵終了時のpH4.7付近でジャケットに冷却水を通して攪拌機による攪拌を行い、発酵の減速とゲルの破壊による均質化を行なうが、一般的には、攪拌だけで良好な粘度を有する均質でなめらかな組織に仕上げることは困難であり、攪拌後のヨーグルトを一定のメッシュの網目のフィルターを通して再度なめらかに仕上げ、個食容器に充填するのが通常の工程となっている。
本発明は、従来の発酵タンクと同様の設備を使用しながら、ヨーグルトを均質でなめらかとする攪拌後のフィルターによる濾過工程を必要とせずに、一般的に行なわれている方法のものよりゲル粒子が細かく、なめらかとなり、外観、風味、組織安定性とも向上したヨーグルトの製造技術を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ソフトタイプヨーグルトの製造方法において、発酵工程においてヨーグルトミックスのゲル化現象が現れる手前で発酵タンクのジャケットに冷却水を通水し、発酵タンク内壁表層部のミックスの発酵を停止させ、さらに発酵が継続している中心部側のミックスがpH4.7付近となった時点で、攪拌を行いゲルを破壊させることにより、一般的に行なわれているものよりゲル粒子が細かく、なめらかとなり、外観、風味、組織安定性のすぐれたヨーグルトに仕上がることを見出し、この知見を基に本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、ソフトタイプのヨーグルトの製造方法であって、発酵工程においてヨーグルトミックスのゲル化現象が現れる手前で発酵タンクのジャケットに冷却液を通し、発酵タンク内壁表層部のミックスの発酵を停止させ、さらに発酵が継続している中心部側のミックスがpH4.7付近となった時点で、攪拌を行いゲルを破壊させることを特徴とするヨーグルトの製造方法に関するものである。
本発明はまた、上記の製造方法によって製造されたヨーグルト、すなわち従来一般的に行なわれているソフトタイプヨーグルトよりゲル粒子が細かく、なめらかとなり、外観、風味、組織安定性の向上したヨーグルトにも関するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明におけるヨーグルトの製造方法は、上述のように通常の攪拌機およびジャケット付き発酵タンク設備を用いることにより、発酵タンク中の発酵の温度制御を変更するだけで、すなわち、発酵工程においてゲル化現象が現れる手前で発酵タンクのジャケットに冷却液を通し、発酵タンク内壁表層部の発酵途中のミックスの発酵を停止させ、さらに発酵が継続している中心部側のミックスがpH4.7付近となった時点で、攪拌を行いゲルを破壊させることにより、実施可能となる。
【0008】
上記のように、ヨーグルトの種類はハードタイプとソフトタイプに大別することができるが、ソフトタイプのヨーグルトは更に半流動タイプのものと液状のドリンクタイプとに細別でき、本発明方法は、半流動タイプのソフトタイプヨーグルトを対象としている。本発明方法において、発酵材料としてのミックスの調製、発酵初期までの操作は従来の方法と基本的に変わらない。
【0009】
本発明によるヨーグルトの製造方法は、攪拌機およびジャケット付き発酵タンクにて、まず従来の方法と同様に牛乳、山羊乳等の乳をそのままあるいは濃縮された形態(全乳、全粉乳、脱脂粉乳など)で含む殺菌された原材料調合物としてのミックスに適量の乳酸菌スターターを添加し、通常35〜47℃で約3時間程度発酵を行なう。
【0010】
乳を含む通常のミックスとしては、例えば原乳、脱脂粉乳に砂糖、香料、フルーツ等の添加物を適当な割合で配合したものがあげられる。必要があれば、ゲル化の安定化あるいは促進等を目的として凝乳活性物質(レンネット等の凝乳酵素など)等を添加してもよい。
またスターターとしては、Streptococcus lactis、Streptococcus thermophilus 、 Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus acidophilus等の乳酸菌が例示され、これらの1種または2種以上の複数種の組合せで使用することができる。スターターの添加量、発酵条件等については、使用菌の種類等により適宜設定すればよい。
【0011】
発酵工程において、通常35〜47℃で約3時間程度の発酵を行ない、ゲル化現象が現れる手前であるpHが約5.8付近になったところで、ジャケット(図1参照)にヨーグルトミックスを凍結させない低温、通常1〜3℃の冷却液を通し、発酵タンク内壁表層部(発酵タンクの大きさ、形状等にもよるが、通常のタンクで例えば数センチメートル厚程度の層部分)のミックスの発酵を停止もしくは抑制させる。
ここでpH約5.8付近とは、通常pH5.95〜5.75を意味する。また、冷却液としては通常水を使用するが、ブライン、プロピレングリコール等を使用することもできる。
【0012】
その後、さらに発酵を継続し(通常約1.5時間程度)、タンク中心部のミックスのpHが約4.7付近(通常pH4.9〜4.7)になったところで攪拌機(図1参照)による攪拌を行なう。この工程におけるヨーグルトのpHは、上記表層部よりタンク中心部側の内層部であれば任意の部位で測定できるが、できるだけタンクの中心付近で測定するのが好ましい。
この工程における攪拌は、一般的に行なわれているソフトタイプのヨーグルトの製造方法と同様に良好な外観、風味、組織を得るために重要である。最適な攪拌方法は、各発酵タンクにて実際に行なって確認・設定される。攪拌後の操作として、攪拌を行なった後のヨーグルトを発酵タンク下部より取り出して(図1参照)、そのまま、あるいは果汁や果肉等を混合して個食容器に入れ、10℃以下の冷却室を通過させるか、またはそのまま10℃以下の冷蔵庫に入れて10℃以下に冷却し、熟成・保管する。攪拌後の他の操作方法として、攪拌を行なった後、ヨーグルトはポンプ、冷却機、バッファータンク、また果汁や果肉等を混合する工程を通り、10℃以下に冷却し、熟成・保管することにより、本発明方法によるソフトタイプのヨーグルトが製造される。
【0013】
上述のような本発明のヨーグルト製造法によれば、一般的に行なわれている方法のものよりゲル粒子が細かく、なめらかとなり、外観、風味、組織安定性のすぐれたソフトタイプのヨーグルトに仕上がる。
【0014】
【実施例】
以下、本発明を実施例等により更に具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0015】
[参考例1] 従来のソフトタイプヨーグルト(プレーン)の製造方法
乳を含むミックス(牛乳、脱脂粉乳、砂糖、水)を均一になるまで混合し、均質化後95℃で5分間の加熱殺菌を行い、40℃前後まで冷却し、発酵タンクにて凍結乾燥された乳酸菌スターター(YC−X16、クリスチャンハンセン社)を添加し、発酵を開始させた。このときのpHは6.6であった。乳酸菌がミックス中の乳糖を分解し乳酸が生成して、約5時間でpHが4.7となり、乳タンパク質の等電点凝集によりゲル化が安定した時点でジャケットに冷却水を流し約5分間の攪拌を行い、ゲルの破壊を行なった後、60メッシュのフィルターを通して、さらにゲル粒子を均質でなめらかな組織にしながら、ヨーグルトを別のタンクに移送した後、個食容器に充填して、冷蔵庫(5〜10℃)に約4時間保管した。最終製品のpHは4.5となった。
従来法によるヨーグルト原材料の配合割合を表1に示す。また、原材料中の脂肪分、SNF(脱脂乳固形分)の割合および甘味度を表2に示す。
【0016】
[実施例1] ゲル化現象が現れる手前で冷却を開始するソフトタイプ(プレーン)のヨーグルトの製造法
原料調合とスターターの添加までは、参考例と同様の操作を行なった。発酵工程においてゲル化現象が現れる手前(pH約5.8付近)で発酵タンクのジャケットに冷却水(1〜3℃)を通水し、発酵タンク内壁表層部の発酵を停止させ、ヨーグルトの中心部がpH4.7付近となったら、攪拌を行いゲルを破壊させ、個食容器に充填して、冷蔵庫(5〜10℃)に約4時間保管した。最終製品のpHは、4.5となった。
【0017】
【0018】
[参考例2] 従来の果肉入りソフトタイプヨーグルトの製造方法
乳を含むミックス(牛乳、脱脂粉乳、砂糖、水)を均一になるまで混合し、均質化後95℃で5分間の加熱殺菌を行い、40℃前後まで冷却し、発酵タンクにて凍結乾燥された乳酸菌スターター(YC−X16、クリスチャンハンセン社)を添加し、発酵を開始させた。このときのpHは6.6であった。乳酸菌がミックス中の乳糖を分解し乳酸が生成して、約4.5時間でpHが4.7となり、乳タンパク質の等電点凝集によりゲル化が安定した時点でジャケットに冷却水を流し約10分間の攪拌を行い、ゲルの破壊を行なった後、60メッシュのフィルターを通して、さらにゲル粒子を均質でなめらかな組織にしながら、ヨーグルトを別のタンクに移送した後、果肉プレパレイションと香料を別のタンクに投入しヨーグルトと混合して個食容器に充填して、冷蔵庫(5〜10℃)に約4時間保管した。最終製品のpHは4.5となった。
従来法によるヨーグルト原材料の配合割合を表3に示す。また、原材料中の脂肪分、SNF(脱脂乳固形分)の割合および甘味度を表4に示す。
【0019】
[実施例2] ゲル化現象が現れる手前で冷却を開始する果肉入りソフトタイプのヨーグルトの製造法
原料調合とスターターの添加までは、参考例と同様の操作を行なった。発酵工程においてゲル化現象が現れる手前(pH約5.8付近)で発酵タンクのジャケットに冷却水(1〜3℃)を通水し、発酵タンク内壁表層部の発酵を停止させ、ヨーグルトの中心部がpH4.7付近となったら、攪拌を行いゲルを破壊させ、その後果肉プレパレイションと香料を発酵タンクに投入しヨーグルトと混合して個食容器に充填して、冷蔵庫(5〜10℃)に約4時間保管した。最終製品のpHは、4.5となった。
【0020】
【0021】
[試験例](官能評価試験)
参考例および実施例で製造された発酵、攪拌終了後のプレーンヨーグルト(参考例1、実施例1)、および果肉入りソフトタイプのヨーグルト(参考例2、実施例2)の各サンプルに関し、口触り(やわらかさ、なめらかさ等)および風味の良さ(酸味が強すぎない等)、組織の状態(ゆるすぎない等)について5名のパネラーにより官能評価試験を行なった。その結果を表5に示す。
表5の結果に示されるように、本発明の方法で製造されたヨーグルトは、従来の方法(参考例)で製造されたヨーグルトと比較して、ざらつきがなく、なめらかとなり、外観、風味、組織安定性のいずれについても高い評価が得られた。
【0022】
【発明の効果】
上述してきたように、本発明の方法によれば、半流動ソフトタイプのヨーグルトの製造方法において、発酵工程においてゲル化現象が現れる手前で発酵タンクのジャケットに冷却液を通し、発酵タンクの内壁表層部のミックスの発酵を停止させ、ヨーグルトの中心部がpH4.7付近となった時点で、攪拌を行いゲルを破壊させることにより、発酵タンクの内壁に接触する表層部の発酵途中の少量のミックスとタンク内部側の多量の発酵終点に達したヨーグルトが混合され、一般的に行なわれている方法のものよりゲル粒子が細かく、均質でなめらかとなり、外観、風味を良くし、組織安定性をも向上させることが可能となった。
また本発明により、発酵したプレーンヨーグルトまたは果汁や果肉等を添加するヨーグルト製品の製造において、発酵タンク内でのヨーグルトの攪拌冷却後の一定のメッシュの網目のフィルターによるゲルの均質的でなめらかな破壊のための工程が不要となり、結果的に別のタンクに移送することなく、プレーンの場合にはそのまま個食容器に充填し、また果肉等入りヨーグルトの場合には発酵したタンクにて果汁や果肉等を添加、混合し個食容器に充填し、熟成・保管することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】ヨーグルト用発酵タンクの構造の概略を示す説明図である。
【符号の説明】
1 鏡
2 攪拌機
3 ジャケット
4 冷却液入口
5 冷却液出口
6 ヨーグルト取出口
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヨーグルトの製造方法に関し、より詳しくは、発酵タンクの内壁に接触する表層部のスターターを接種した発酵途中の少量のミックスとタンク中心部側の多量の発酵終点に達したヨーグルトが混合されることにより、ゲル粒子が一般的に行なわれているゲルの破壊による方法のものより細かく均質でなめらかとなり、外観、風味を良くし、組織安定性をも向上させることができるヨーグルトの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ヨーグルトは元来は牛乳、山羊乳などをそのままあるいは濃縮したものに、乳酸菌スターターを接種し、発酵させて製造されるもので、酸甘味、独特の風味、さっぱりとした口触りを有する発酵乳製品として知られている。その種類は、果汁や果肉を添加したものなど最近多様化されているものの、乳を含む原材料に一定量の乳酸菌スターターを接種し、紙容器等の流通用個食容器に充填して発酵させてプリン状に固化させたハードタイプと、発酵後解砕して流通用個食容器に充填したソフトタイプに大別することができる。
【0003】
従来、乳酸菌を含む多種類の菌の適切な共生培養により、食品に利用可能な風味を保ちつつ、人体の健康維持に有効な微生物とその産生物質を多種類かつ多量に含有するヨーグルトの製造方法が報告されている(特許文献1参照)。
また、乳タンパク質の等電点凝集によりゲルが安定する従来のpH4.6付近より高いpH4.9〜5.1で発酵を終了させ、次いで10℃以下に冷却する酸味の強すぎない、さわやかな酸味のハードタイプ(後発酵)ヨーグルトの製造方法が報告されている(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特許第2676591号公報(第(2)〜(3)頁、第1〜3図)
【特許文献2】
特開2001−252011号公報(第(2)〜(5)頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来、発酵後解砕して流通用個食容器に充填したソフトタイプのヨーグルトの製造は、攪拌機およびジャケットを備えた発酵タンクを使用し、発酵終了時のpH4.7付近でジャケットに冷却水を通して攪拌機による攪拌を行い、発酵の減速とゲルの破壊による均質化を行なうが、一般的には、攪拌だけで良好な粘度を有する均質でなめらかな組織に仕上げることは困難であり、攪拌後のヨーグルトを一定のメッシュの網目のフィルターを通して再度なめらかに仕上げ、個食容器に充填するのが通常の工程となっている。
本発明は、従来の発酵タンクと同様の設備を使用しながら、ヨーグルトを均質でなめらかとする攪拌後のフィルターによる濾過工程を必要とせずに、一般的に行なわれている方法のものよりゲル粒子が細かく、なめらかとなり、外観、風味、組織安定性とも向上したヨーグルトの製造技術を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ソフトタイプヨーグルトの製造方法において、発酵工程においてヨーグルトミックスのゲル化現象が現れる手前で発酵タンクのジャケットに冷却水を通水し、発酵タンク内壁表層部のミックスの発酵を停止させ、さらに発酵が継続している中心部側のミックスがpH4.7付近となった時点で、攪拌を行いゲルを破壊させることにより、一般的に行なわれているものよりゲル粒子が細かく、なめらかとなり、外観、風味、組織安定性のすぐれたヨーグルトに仕上がることを見出し、この知見を基に本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、ソフトタイプのヨーグルトの製造方法であって、発酵工程においてヨーグルトミックスのゲル化現象が現れる手前で発酵タンクのジャケットに冷却液を通し、発酵タンク内壁表層部のミックスの発酵を停止させ、さらに発酵が継続している中心部側のミックスがpH4.7付近となった時点で、攪拌を行いゲルを破壊させることを特徴とするヨーグルトの製造方法に関するものである。
本発明はまた、上記の製造方法によって製造されたヨーグルト、すなわち従来一般的に行なわれているソフトタイプヨーグルトよりゲル粒子が細かく、なめらかとなり、外観、風味、組織安定性の向上したヨーグルトにも関するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明におけるヨーグルトの製造方法は、上述のように通常の攪拌機およびジャケット付き発酵タンク設備を用いることにより、発酵タンク中の発酵の温度制御を変更するだけで、すなわち、発酵工程においてゲル化現象が現れる手前で発酵タンクのジャケットに冷却液を通し、発酵タンク内壁表層部の発酵途中のミックスの発酵を停止させ、さらに発酵が継続している中心部側のミックスがpH4.7付近となった時点で、攪拌を行いゲルを破壊させることにより、実施可能となる。
【0008】
上記のように、ヨーグルトの種類はハードタイプとソフトタイプに大別することができるが、ソフトタイプのヨーグルトは更に半流動タイプのものと液状のドリンクタイプとに細別でき、本発明方法は、半流動タイプのソフトタイプヨーグルトを対象としている。本発明方法において、発酵材料としてのミックスの調製、発酵初期までの操作は従来の方法と基本的に変わらない。
【0009】
本発明によるヨーグルトの製造方法は、攪拌機およびジャケット付き発酵タンクにて、まず従来の方法と同様に牛乳、山羊乳等の乳をそのままあるいは濃縮された形態(全乳、全粉乳、脱脂粉乳など)で含む殺菌された原材料調合物としてのミックスに適量の乳酸菌スターターを添加し、通常35〜47℃で約3時間程度発酵を行なう。
【0010】
乳を含む通常のミックスとしては、例えば原乳、脱脂粉乳に砂糖、香料、フルーツ等の添加物を適当な割合で配合したものがあげられる。必要があれば、ゲル化の安定化あるいは促進等を目的として凝乳活性物質(レンネット等の凝乳酵素など)等を添加してもよい。
またスターターとしては、Streptococcus lactis、Streptococcus thermophilus 、 Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus acidophilus等の乳酸菌が例示され、これらの1種または2種以上の複数種の組合せで使用することができる。スターターの添加量、発酵条件等については、使用菌の種類等により適宜設定すればよい。
【0011】
発酵工程において、通常35〜47℃で約3時間程度の発酵を行ない、ゲル化現象が現れる手前であるpHが約5.8付近になったところで、ジャケット(図1参照)にヨーグルトミックスを凍結させない低温、通常1〜3℃の冷却液を通し、発酵タンク内壁表層部(発酵タンクの大きさ、形状等にもよるが、通常のタンクで例えば数センチメートル厚程度の層部分)のミックスの発酵を停止もしくは抑制させる。
ここでpH約5.8付近とは、通常pH5.95〜5.75を意味する。また、冷却液としては通常水を使用するが、ブライン、プロピレングリコール等を使用することもできる。
【0012】
その後、さらに発酵を継続し(通常約1.5時間程度)、タンク中心部のミックスのpHが約4.7付近(通常pH4.9〜4.7)になったところで攪拌機(図1参照)による攪拌を行なう。この工程におけるヨーグルトのpHは、上記表層部よりタンク中心部側の内層部であれば任意の部位で測定できるが、できるだけタンクの中心付近で測定するのが好ましい。
この工程における攪拌は、一般的に行なわれているソフトタイプのヨーグルトの製造方法と同様に良好な外観、風味、組織を得るために重要である。最適な攪拌方法は、各発酵タンクにて実際に行なって確認・設定される。攪拌後の操作として、攪拌を行なった後のヨーグルトを発酵タンク下部より取り出して(図1参照)、そのまま、あるいは果汁や果肉等を混合して個食容器に入れ、10℃以下の冷却室を通過させるか、またはそのまま10℃以下の冷蔵庫に入れて10℃以下に冷却し、熟成・保管する。攪拌後の他の操作方法として、攪拌を行なった後、ヨーグルトはポンプ、冷却機、バッファータンク、また果汁や果肉等を混合する工程を通り、10℃以下に冷却し、熟成・保管することにより、本発明方法によるソフトタイプのヨーグルトが製造される。
【0013】
上述のような本発明のヨーグルト製造法によれば、一般的に行なわれている方法のものよりゲル粒子が細かく、なめらかとなり、外観、風味、組織安定性のすぐれたソフトタイプのヨーグルトに仕上がる。
【0014】
【実施例】
以下、本発明を実施例等により更に具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0015】
[参考例1] 従来のソフトタイプヨーグルト(プレーン)の製造方法
乳を含むミックス(牛乳、脱脂粉乳、砂糖、水)を均一になるまで混合し、均質化後95℃で5分間の加熱殺菌を行い、40℃前後まで冷却し、発酵タンクにて凍結乾燥された乳酸菌スターター(YC−X16、クリスチャンハンセン社)を添加し、発酵を開始させた。このときのpHは6.6であった。乳酸菌がミックス中の乳糖を分解し乳酸が生成して、約5時間でpHが4.7となり、乳タンパク質の等電点凝集によりゲル化が安定した時点でジャケットに冷却水を流し約5分間の攪拌を行い、ゲルの破壊を行なった後、60メッシュのフィルターを通して、さらにゲル粒子を均質でなめらかな組織にしながら、ヨーグルトを別のタンクに移送した後、個食容器に充填して、冷蔵庫(5〜10℃)に約4時間保管した。最終製品のpHは4.5となった。
従来法によるヨーグルト原材料の配合割合を表1に示す。また、原材料中の脂肪分、SNF(脱脂乳固形分)の割合および甘味度を表2に示す。
【0016】
[実施例1] ゲル化現象が現れる手前で冷却を開始するソフトタイプ(プレーン)のヨーグルトの製造法
原料調合とスターターの添加までは、参考例と同様の操作を行なった。発酵工程においてゲル化現象が現れる手前(pH約5.8付近)で発酵タンクのジャケットに冷却水(1〜3℃)を通水し、発酵タンク内壁表層部の発酵を停止させ、ヨーグルトの中心部がpH4.7付近となったら、攪拌を行いゲルを破壊させ、個食容器に充填して、冷蔵庫(5〜10℃)に約4時間保管した。最終製品のpHは、4.5となった。
【0017】
【0018】
[参考例2] 従来の果肉入りソフトタイプヨーグルトの製造方法
乳を含むミックス(牛乳、脱脂粉乳、砂糖、水)を均一になるまで混合し、均質化後95℃で5分間の加熱殺菌を行い、40℃前後まで冷却し、発酵タンクにて凍結乾燥された乳酸菌スターター(YC−X16、クリスチャンハンセン社)を添加し、発酵を開始させた。このときのpHは6.6であった。乳酸菌がミックス中の乳糖を分解し乳酸が生成して、約4.5時間でpHが4.7となり、乳タンパク質の等電点凝集によりゲル化が安定した時点でジャケットに冷却水を流し約10分間の攪拌を行い、ゲルの破壊を行なった後、60メッシュのフィルターを通して、さらにゲル粒子を均質でなめらかな組織にしながら、ヨーグルトを別のタンクに移送した後、果肉プレパレイションと香料を別のタンクに投入しヨーグルトと混合して個食容器に充填して、冷蔵庫(5〜10℃)に約4時間保管した。最終製品のpHは4.5となった。
従来法によるヨーグルト原材料の配合割合を表3に示す。また、原材料中の脂肪分、SNF(脱脂乳固形分)の割合および甘味度を表4に示す。
【0019】
[実施例2] ゲル化現象が現れる手前で冷却を開始する果肉入りソフトタイプのヨーグルトの製造法
原料調合とスターターの添加までは、参考例と同様の操作を行なった。発酵工程においてゲル化現象が現れる手前(pH約5.8付近)で発酵タンクのジャケットに冷却水(1〜3℃)を通水し、発酵タンク内壁表層部の発酵を停止させ、ヨーグルトの中心部がpH4.7付近となったら、攪拌を行いゲルを破壊させ、その後果肉プレパレイションと香料を発酵タンクに投入しヨーグルトと混合して個食容器に充填して、冷蔵庫(5〜10℃)に約4時間保管した。最終製品のpHは、4.5となった。
【0020】
【0021】
[試験例](官能評価試験)
参考例および実施例で製造された発酵、攪拌終了後のプレーンヨーグルト(参考例1、実施例1)、および果肉入りソフトタイプのヨーグルト(参考例2、実施例2)の各サンプルに関し、口触り(やわらかさ、なめらかさ等)および風味の良さ(酸味が強すぎない等)、組織の状態(ゆるすぎない等)について5名のパネラーにより官能評価試験を行なった。その結果を表5に示す。
表5の結果に示されるように、本発明の方法で製造されたヨーグルトは、従来の方法(参考例)で製造されたヨーグルトと比較して、ざらつきがなく、なめらかとなり、外観、風味、組織安定性のいずれについても高い評価が得られた。
【0022】
【発明の効果】
上述してきたように、本発明の方法によれば、半流動ソフトタイプのヨーグルトの製造方法において、発酵工程においてゲル化現象が現れる手前で発酵タンクのジャケットに冷却液を通し、発酵タンクの内壁表層部のミックスの発酵を停止させ、ヨーグルトの中心部がpH4.7付近となった時点で、攪拌を行いゲルを破壊させることにより、発酵タンクの内壁に接触する表層部の発酵途中の少量のミックスとタンク内部側の多量の発酵終点に達したヨーグルトが混合され、一般的に行なわれている方法のものよりゲル粒子が細かく、均質でなめらかとなり、外観、風味を良くし、組織安定性をも向上させることが可能となった。
また本発明により、発酵したプレーンヨーグルトまたは果汁や果肉等を添加するヨーグルト製品の製造において、発酵タンク内でのヨーグルトの攪拌冷却後の一定のメッシュの網目のフィルターによるゲルの均質的でなめらかな破壊のための工程が不要となり、結果的に別のタンクに移送することなく、プレーンの場合にはそのまま個食容器に充填し、また果肉等入りヨーグルトの場合には発酵したタンクにて果汁や果肉等を添加、混合し個食容器に充填し、熟成・保管することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】ヨーグルト用発酵タンクの構造の概略を示す説明図である。
【符号の説明】
1 鏡
2 攪拌機
3 ジャケット
4 冷却液入口
5 冷却液出口
6 ヨーグルト取出口
Claims (4)
- ソフトタイプのヨーグルトの製造方法において、発酵工程においてヨーグルトミックスのゲル化現象が現れる手前で発酵タンクのジャケットに冷却液を通し、発酵タンク内壁表層部のミックスの発酵を停止させ、さらに発酵が継続している中心部側のミックスがpH4.7付近となった時点で、攪拌を行いゲルを破壊させることを特徴とする、ヨーグルトの製造方法。
- スターターを接種したミックスのpHが5.8付近となったとき、ジャケットに冷却液として冷却水を通水することを特徴とする、請求項1に記載のヨーグルトの製造方法。
- ジャケットに冷却液を通すときの冷却液の温度がヨーグルトミックスを凍結させない低温、通常1〜3℃であることを特徴とする、請求項1または2に記載のヨーグルトの製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法によって製造されたヨーグルト。
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