JP5046279B2 - 非熟成タイプチーズの製造方法 - Google Patents

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本発明は、従来にない独特で良好な風味とテクスチャーを持つチーズの製造法とその製造法により得られる新規なチーズに関する。
乳・クリーム・バターミルク又はこれらを混合したものを凝固させた後、乳清を除去して得られる生鮮のもの又は熟成して製造することができるものをナチュラルチーズと呼ぶ。その中でも非熟成タイプチーズとは、熟成を必要としないナチュラルチーズの総称である。非熟成タイプチーズの具体的な製造方法は、(1)チーズ原料の混合液(以降、ミックスともいう)を調製する、(2)ミックスをチーズバット等の容器に満たして適正量の乳酸菌スターターを添加し、乳酸菌スターター添加と前後して必要に応じて凝乳酵素レンネットを添加してまたは添加することなく発酵させる、(3)発酵期間中にカード生成が始まると適切な条件でホエイを排除する、(4)この後所定の酸度に到達して目標とするカードが生成されたところで冷却や加熱等により発酵を停止する、(5)最終的に冷却して最終製品化する、という各種工程からなる。また、乳酸菌発酵工程に代えて、酸を添加して、あるいは加熱して非熟成タイプチーズを製造することもできる。
非熟成タイプチーズの品質を左右する因子としては、特に風味やテクスチャー(組織)が重要視されている。チーズにまろやかな風味および/又は舌触りが滑らかなテクスチャーを付与する手段の1つに、脂肪含量が高い原料を使用する、原料以外に増粘剤・発酵促進物質・風味物質などの添加剤を使用する等、ミックス組成を変更する方法を挙げることができる。また、出来上がったチーズカードに添加剤を使用する方法も可能である。例えば、チーズカードを熱変性が生じない程度に加温してからハイメトキシルペクチンを添加することにより、ザラツキのないテクスチャーが得られることが知られている(特許文献1:特開平5−252866号公報)。
他に、発酵工程における乳酸菌スターター、発酵温度および発酵時間は、最終製品の生産効率に影響を与えるだけでなく、その風味やテクスチャーの品質にも大きな影響を与える。このため、非熟成タイプチーズの製造においては、風味やテクスチャーへの影響を考慮しながら乳酸菌スターター、発酵温度または発酵時間を適宜設定する必要がある。乳酸菌スターターの選択については、クエン酸の消費能力が高い乳酸菌を選択することで滑らかなテクスチャーを有するチーズを得た例が知られている(特許文献2:特開平7-250672号公報)。
しかし、ミックス組成の変更、添加剤の添加、乳酸菌スターターの選択を行った場合、製品の風味やテクスチャー等に与える影響を考慮した上で製品設計を行う必要が生じることは避けることができない。すなわち、これらの場合、元の製品の製品特性を維持した状態で、さらに良好な風味やテクスチャーを付与するのは困難であった。
一方で、発酵温度を低めとした場合、ミックス組成の変更、添加剤の使用、乳酸菌スターターの選択等をしなくても、酸味の少ないまろやかな風味を製品に与える効果が期待できる。ここで問題となるのは、乳酸菌発酵が遅延するために所定の酸度に達するまでの発酵時間が延長してしまい、非熟成タイプチーズの生産効率が低下することである。従って、この場合には、生産効率を低下させることなく、良好な風味やテクスチャーを持つ非熟成タイプチーズを得ることは難しい現状があった。通常の温度において発酵時間を短縮する手段としては、ミックス中の溶存酸素濃度を低減する方法が報告されているが、溶存酸素濃度の低減による風味・テクスチャーの向上や、低温での発酵時にみられる生産効率の低下を改善する効果については記載も示唆もない(特許文献3:特開2005−261303号公報)。
また、非熟成タイプチーズと同様にミックスに乳酸菌スターターを接種して発酵する事を特徴とする発酵乳においても、風味やテクスチャーを向上する方法が幾つか報告されている。例えば、発酵開始時における発酵乳ミックス中の溶存酸素濃度を低減せしめて発酵を行う方法等が知られている(特許文献4:特許第3644505号公報)。具体的には、発酵開始時における発酵乳ミックス中の溶存酸素濃度が不活性ガスとの置換で5ppm以下に低減することにより、「舌触りの滑らかさ」「味のまろやかさ」「コク味」において低温で発酵して得られた発酵乳に対して優れていることが報告されている。しかし、発酵乳とは別異の官能特性や物性を有する非熟成タイプチーズについては記載も示唆もない。
特開平5−252866号公報 特開平7−250672号公報 特開2005−261303号公報 特許第3644505号公報
本発明は、ミックス組成の変更、添加剤の使用、乳酸菌スターターの選択をすることなく、製品のまろやかな風味および舌触りが滑らかなテクスチャーを向上せしめ、かつ生産効率の維持が可能な非熟成タイプチーズの製造法を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、非熟成タイプチーズ(例えば、クワルクチーズ)の製造工程中、発酵開始時及び発酵期間中におけるミックスの溶存酸素濃度を低減させた状態で発酵を行った場合、なんらミックス組成の変更、添加剤の使用、乳酸菌スターターの選択をしていないにも関わらず、通常用いられる原料と乳酸菌スターターからまろやかな風味及び舌触りが滑らかなテクスチャーを有する非熟成タイプチーズをより短時間で製造できることを見いだした。
また、ミックスの溶存酸素濃度を低減する工程に加え、乳酸菌スターターの至適増殖温度に代表される通常の発酵温度よりもさらに低い発酵温度での発酵工程を組み合わせたところ、発酵温度が低温であるにも関わらず、通常の発酵条件(ミックスの溶存酸素濃度を低減せずに通常の発酵温度で発酵させた場合)よりも短時間で発酵が終了することを見だした。
そして、このようにして得られた非熟成タイプチーズは、通常の発酵条件はもとより低温で長時間の発酵条件で発酵を行った非熟成タイプチーズが示す以上の、まろやかな風味及び舌触りが滑らかなテクスチャーを持っていることも併せて見だした。
つまり、本発明の非熟成タイプチーズの製造法において、ミックスの溶存酸素濃度を低減させた状態で発酵を行うことにより、まろやかな風味と舌触りが滑らかなテクスチャーが効率的に得られることができた。それと共に、低温で長時間発酵していた製品についても溶存酸素濃度を低減させることにより、発酵時間を延長することなくさらにまろやかで舌触りの滑らかな非熟成タイプチーズを得ることができた。本発明は、元の製品の製品特性を維持しつつも、風味・テクスチャーにすぐれた新たな価値を持つ非熟成タイプチーズを効率良く提供するものである。
すなわち、本発明は、
[1] 製造工程において、発酵時のミックス中の溶存酸素濃度を6ppm以下に低減せしめ、かつ、発酵温度を増殖温度帯の中でも乳酸菌スターターの至適増殖温度−3℃の温度以下とする工程を含有することにより、まろやかな風味および舌触りが滑らかなテクスチャーを向上せしめることを特徴とする、非熟成タイプチーズの製造方法、
[2] 上記溶存酸素濃度が3ppm以下であり、かつ、上記発酵温度が、乳酸菌スターターの増殖温度帯の中でも至適増殖温度−5℃の温度以下である、前記[1]に記載の方法、
[3] 溶存酸素濃度を低減せしめる方法が、不活性ガスとの置換、減圧処理、超音波処理、気液分離膜での分離、加温処理からなる群のいずれか1つあるいは2つ以上の組み合わせである、前記[1]又は[2]に記載の方法、
からなる。
本発明の非熟成タイプチーズの製造法において、ミックスの溶存酸素濃度を低減させることでミックス組成の変更、添加剤の使用、乳酸菌スターターの選択を必要とすることなく、製品にまろやかな風味および舌触りが滑らかなテクスチャーの付与が可能となる。しかも発酵時間の短縮をも実現するため、生産効率を高めることもできる。すなわち、ミックスの溶存酸素濃度を6ppm以下に低減させた状態で発酵温度を乳酸菌スターターの増殖温度帯の中でも至適増殖温度−3℃の温度以下にしているので、通常の発酵条件(ミックスの溶存酸素濃度を低減せずに通常の発酵温度で発酵させた場合)と比較しても、短い発酵時間で飛躍的にまろやかな風味および舌触りが滑らかなテクスチャーを有する非熟成タイプチーズを提供することができる。
非熟成タイプチーズは、例えば、主に以下の製造工程を経て得ることができる。(1)チーズ原料の混合液(以降、ミックスともいう)を調製する。(2)ミックスをチーズバット等の容器に満たして適正量の乳酸菌スターターを添加し、乳酸菌スターター添加と前後して必要に応じて凝乳酵素レンネットを添加してまたは添加することなく発酵させる。(3)発酵期間中にカード生成が始まると適切な条件でホエイを排除する。(4)この後所定の酸度に到達して目標とするカードが生成したものを非熟成タイプチーズとして得る。製造方法はこの例に限定されず、さらに均質化、殺菌、所定温度(発酵温度)までの冷却、冷却や加熱等による発酵の停止、カードの冷却等、他の製造工程を前記方法に加えても良い。このようにして得られる非熟成タイプチーズの例として、フェタ、クリームチーズ、クワルク、カッテージ、フロマージュブランなどを挙げることができるが、これらの例に限定されない。また、非熟成タイプチーズに香りや味を付与する目的等で乳に由来しないものを添加することもできる。例えば、果実、果汁、シロップや、香料、甘味料、調味料、矯味料などの食品添加物等を添加した非熟成タイプのチーズを製造することもできる。本発明でいう非熟成タイプチーズにはこれらの製品も含むことができる。
非熟成タイプチーズの原料としては、乳、クリーム、バターミルク、脱脂乳、低脂肪乳、無脂肪乳、加工乳、乳飲料、全脂粉乳、脱脂粉乳、部分脱脂粉乳、カゼイン、ホエイ、ホエイタンパク質、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質分離物等を使用することができる。これらのうち乳原料の由来は牛、羊、山羊、水牛等のいずれの動物であってもよい。さらに、これらの原料をそのまま、水等に分散または溶解させ、もしくは濃縮する等したものを単独あるいは2種類以上を組み合わせたものを、ミックスとして得る。また、香りや味を付与する目的等で乳に由来しないものを添加することもできる。例えば、果実、果汁、シロップや、香料、甘味料、調味料、矯味料などの食品添加物等をミックスに添加してもよい。
得られたミックスを必要に応じて常法に従って均質化し、殺菌した後に、所定の温度(発酵温度)まで冷却する。発酵温度は乳酸菌スターターの増殖温度帯でも至適増殖温度−3℃の温度以下または至適増殖温度−5℃の温度以下から適宜選択して発酵することができるまた、乳酸菌スターターとして異なる至適増殖温度の乳酸菌を2つ以上用いる場合は、前記至適増殖温度が、至適増殖温度の最も高い乳酸菌の至適増殖温度として発酵することができる。例えば、Lactococcus lactis subsp. lactis、Lactococcus lactis subsp. cremoris、Lactococcus lactis
subsp. lactis biovar diacetylactisの3種混合スターター(増殖温度帯は20〜40℃、至適増殖温度は約30℃)を使用する場合は20〜27℃、
好ましくは20〜25℃の温度で発酵することもできるが、この例に限定されない。また、Lactobacillus bulgaricusおよびStreptococcus thermophilusの2種混合スターター(増殖温度帯は30〜47℃、至適増殖温度は約43℃)を使用する場合は30〜40℃、好ましくは30〜38℃の温度、で発酵することができるが、この例に限定されない。なお、本発明でいう増殖温度帯とは、使用する乳酸菌が生育可能な温度範囲を示す。また、至適増殖温度とは使用する乳酸菌の生育が最良である温度を示す。
次いで適正量の乳酸菌スターターを接種し、乳酸菌スターター接種と前後して必要に応じて凝乳酵素レンネットを添加して所定の温度で発酵させる。乳酸菌とは、通常は糖類を基質としてその50%以上を乳酸に変換する菌の総称であり、その発酵様式によりホモ乳酸菌(糖類から乳酸のみを産生する)、ヘテロ乳酸菌(糖類から乳酸以外にも酢酸、アルコール等産生する)に分類される。また、ビフィズス菌も広義の乳酸菌として捉えられる場合がある。グラム陽性であり、球菌・桿菌のいずれも存在する。自然界や動物の腸内等に存在し、発酵乳やチーズのみならず、漬物、鮒寿司、味噌、醤油、酒類など各種発酵食品の製造に利用されている。本発明の製造方法において、ミックスに乳酸菌スターターとして接種する乳酸菌は、チーズや発酵乳の製造に一般的に用いられるものを用いることができる。例えば、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス((Lactococcus subsp. lactis)、ラクトコッカス・サブスピーシーズ・クレモリス((Lactococcus subsp. cremoris)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ジアセチラクティス((Lactococcus subsp. diacetylactis)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)の他、チーズや発酵乳の製造に一般的に用いられる乳酸菌の中から1種または2種以上を組み合わせたものを用いることが可能である。好適な例として、Lactococcus lactis subsp. lactis、Lactococcus lactis subsp. cremoris、Lactococcus lactis subsp. lactis biovar diacetylactisの3種混合スターターや、Lactobacillus bulgaricus、Streptococcus thermophilusの2種混合スターターを挙げることができるが、これらの例に限定されない。
また、レンネットはチーズの製造に一般的に用いられるものを使用することができる。レンネットの由来は動物、植物、微生物等いずれであってもよい。
本発明は、原料作製〜ミックス調製〜ミックス殺菌〜発酵開始時〜発酵期間中のいずれかの時点において、原料またはミックス中の溶存酸素濃度を低減することを特徴とする。溶存酸素濃度の低減はミックスを調合する工程から乳酸菌スターターを接種したのち発酵が終了するまでの間に行えば良く、その製造工程における溶存酸素濃度の低減の時期は任意である。例えば、これらの方法をミックス調製後、あるいはミックス殺菌後、あるいはミックスに乳酸菌スターターを添加してすぐに行うことにより発酵開始時点での溶存酸素濃度を低減させることができる。発酵開始時点での溶存酸素濃度を低減させる場合、とりわけミックス殺菌〜発酵開始の過程で溶存酸素濃度を低減させるのが好ましい。また、乳酸菌スターターを接種後、継続的又は必要に応じて適宜行うことによって発酵期間中での溶存酸素濃度を低減することができる。
原料またはミックス中での溶存酸素濃度の低減は、窒素ガス等の不活性ガスと酸素を置換する方法、減圧処理する方法、超音波処理等の振動を与える方法、気液分離膜等を用いて気相と液相を分離する方法、加温する方法等の公知の方法を1つ又は2つ以上を組み合わせて行うことにより実現できる。溶存酸素濃度の低減工程はバッチ式、連続式などいずれも方式で行ってもよい。
ミックスの溶存酸素濃度は、その濃度が低いほど良好な結果が得られるが、実用上有用な結果を与える濃度は、6ppm以下、好ましくは5ppm以下、より好ましくは3ppm以下である。また、発酵開始時のミックスの溶存酸素濃度が低いほど、より良好な結果を得ることができる。このときに実用上有用な結果を与える濃度は、6ppm以下、好ましくは5ppm以下、より好ましくは3ppm以下である。
本発明で、不活性ガスと酸素を置換して溶存酸素濃度を低減する場合に用いられる不活性ガスとしては、窒素ガスやアルゴンガス、ヘリウムガスを挙げることができる。とりわけ窒素ガスは食品に通常用いられている不活性ガスとしてより好適に用いることができる。ミックスの溶存酸素濃度を低減するには、これら不活性ガスをミックスに直接バブリングする方法や、スタティックミキサーを用いる方法、ミックスと共にミキサーを入れて攪拌するなどの公知の方法を採ることができる。ミックスのほか、原料その他各種工程で調製される調製物も同様にして溶存酸素濃度を低減することができる。
本発明で減圧処理して溶存酸素濃度を低減する場合に用いられる減圧装置においては、真空度200〜760mmHg、好ましくは真空度200〜500mmHg程度でミックスを充填している容器を減圧することにより調製する。この場合、バッチ式、減圧チャンバーの中ミックスを薄膜状に通液する方法など、公知の各種方法と組み合わせて用いることもできる。ミックスのほか、原料その他各種工程で調製される調製物も同様にして溶存酸素濃度を低減することができる。
本発明で、振動を与えて溶存酸素濃度を低減する場合には、原料やミックスを充填している容器に振動を与える方法の他、超音波等の公知の手段を用いてもよい。
本発明で、気液分離膜等を用いて気相と液相を分離して溶存酸素濃度を低減する場合には、公知の気液分離膜等を用いることができる。その例として、非結晶フッ素樹脂製の中空糸膜、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)製の中空糸膜、シリコン膜(ポリジメチルシロキサン)などを挙げることができるが、これらの例に限定されない。また、脱気チャンバーなどの減圧装置と組み合わせて用いてもよい。気相と液相の分離はバッチ式、ライン等を利用した連続式など、いずれ方式であってもかまわない。
発酵時間は、乳酸菌スターターの増殖温度帯や至適増殖温度、原料などの諸条件によって異なるため、特に限定されない。
発酵期間中にカード生成が始まると適切な条件でホエイを排除する。この条件はチーズの製造に一般的に用いられる方法に準じて行えばよい。さらに、所定の酸度に到達して目標とするカードが生成したものを非熟成タイプチーズとして得ることができる。必要に応じて加熱や冷却等によって発酵を停止する工程や、カードを冷却する工程などを行ってもよい。こうして本発明の非熟成タイプチーズを製造することができる。
本発明の方法により製造した非熟成タイプチーズは、実施例に示すように、通常の製法(ミックスの溶存酸素濃度、発酵温度)で製造したものに比べて、まろやかな風味及び舌触りが滑らかなテクスチャーといった官能的特性を有する。すなわち、本発明は、ミックスの溶存酸素濃度を低減して発酵を行うことで、ミックス組成の変更、添加剤の使用、乳酸菌スターターの選択をすることなく官能的にすぐれた非熟成タイプチーズの製造を可能とするものである。また、さらに発酵温度を至適増殖温度−3℃の温度以下に低下させることで、溶存酸素濃度低減による上記効果を相乗的に高めることが可能となり、また発酵時間も短縮できる。また、ミックス組成の変更、添加剤の使用、乳酸菌スターターの選択などの方法と組み合わせて、さらに官能的にすぐれた非熟成タイプチーズを製造することも可能である。
以下、本発明に関して実施例を挙げて説明するが、本発明は、これにより限定されるものではない。
参考例1](異なる溶存酸素濃度で試作したクリームチーズの品質比較)
クリームチーズを低温発酵で作製するにあたり、ミックス中の溶存酸素濃度の低減の有無がクリームチーズの品質に与える影響について、検討を行った。製造に用いた乳酸菌スターターの至適増殖温度は約30℃であるため、至適増殖温度に近い発酵条件として31℃に設定した。
[クリームチーズの製造]
原料として牛乳を6.0kg、クリーム2.0kgを混合したミックスを調製し、この調製乳を温度50℃、圧力150kg/cm2で均質化を行い72℃15秒間の加熱殺菌をした。さらにこの殺菌乳を35℃前後まで冷却した。このミックスにパイプを通して窒素ガスを混合分散させ、溶存酸素濃度を5ppm以下となるように調製した。
これを7Lバットに移し、Lactococcus lactis subsp. lactis、Lactococcus lactis subsp cremoris、Lactococcus lactis
subsp. lactis biovar diacetylactisの3混合スターターを3w/w%接種した。なお、乳酸菌スターター接種直前のミックスにおける溶存酸素濃度は3.7ppmであった。次にミックスにレンネットを0.005w/w%を目安に添加し、ミックスを31℃にて静置した。その後pHが5以下となった時点で発酵終了とし、以降は常法に従いクリームチーズを製造した(試作1)。比較には、溶存酸素濃度を調整せずに発酵したものを用いた(対照1)。なお、対照1を製造するにあたり、乳酸菌スターターを接種直前の溶存酸素濃度は7.6ppm、乳酸菌スターターを接種した段階でこのミックスの溶存酸素濃度は7.2ppmであった。
[クリームチーズの品質比較]
本発明に係わるミックス(試作1)と対照に係わるミックス(対照1)(すなわち、発酵開始直前の溶存酸素濃度が異なる2種のミックス)を用いて製造したクリームチーズについて、専門パネリスト5名により、風味の「まろやかさ」及び舌触りの「滑らかさ」に関する官能評価試験(以降、品質試験ともいう)を実施した。評価方法は評点法で、「よい」=+5、「やや良い」=+4、「普通」=+3、「やや悪い」=+2、「悪い」=+1の5段階とした。
その結果を表1に示した。この結果からも明らかなように、発酵開始直前の溶存酸素濃度を低減させたミックスで製造したクリームチーズは、溶存酸素濃度を調整せずに製造したものよりも、「まろやかさ」「滑らかさ」とも有意に(p<0.05、Mann-WhitneyのU検定)優れていた。以上の結果から、至適増殖温度に近い発酵条件において溶存酸素濃度を低減させたミックスを使用することで、溶存酸素濃度を低減させなかったものよりまろやかな風味および舌触りが滑らかなテクスチャーを持ったクリームチーズを得られることが見出された。
Figure 0005046279
表1はクリームチーズの品質比較の結果である。n=5における平均値(mean)±標準偏差(SD)を示す。*:p<0.05(Mann-WhitneyのU検定)。
[実施例](異なる溶存酸素濃度および発酵温度で試作したクワルクチーズ間の、品質、発酵時間、pH経時変化の比較)
クワルクチーズを作製するにあたり、生産効率が高く、かつ良好な品質の付与が可能な製造条件の検討を行った。具体的には、ミックス中の溶存酸素濃度の低減の有無、および発酵温度が、品質および発酵終了時間に与える影響について検討を行った。製造に用いた乳酸菌スターターの至適増殖温度は約43℃であるため、通常の発酵温度を43℃、低温の発酵温度を37℃とした。
[クワルクチーズの製造]
原料として脱脂乳15kgを用いた。脱脂乳を72℃15秒間の加熱殺菌をした後、この殺菌乳を7Lバット2つに移し、それぞれ37、43℃前後まで冷却した。そしてラクトバチルス・ブルガリカス[Lactobacillus bulgaricus]とストレプトコッカス・サーモフィルス[Streptococcus thermophilus]の2種混合スターターを1w/w%ずつ接種した。なお、乳酸菌スターター接種した段階でのミックスにおける溶存酸素濃度は43℃の場合は7.1ppm、37℃の場合は7.3ppmであった。これらのミックスにパイプを通して窒素ガスを混合分散させ、溶存酸素濃度を3ppm以下となるように調整した(以降、37℃で乳酸菌スターターを摂取したものを試作2−37、43℃で乳酸菌スターターを摂取したものを試作2−43ともいう)。また比較例として各温度につき窒素ガス置換を行わないものも用意した(以降、37℃で乳酸菌スターターを摂取したものを対照2−37、43℃で乳酸菌スターターを摂取したものを対照2−43ともいう)。試作2−37および対照2−37を37℃で、試作2−43および対照2−43を43℃で発酵させた。ミックスのpHが4.6以下となった時点で発酵終了とし、以降、常法に従いクワルクチーズを製造した。
得られたクワルクチーズについて、参考例1と同様に官能評価試験を実施した。また、発酵開始からミックスのpHが4.6に到達するまでの時間を計測し、これを発酵終了時間として記録した。さらに発酵中の発酵物のpHを経時的に観察した。
[異なる溶存酸素濃度で試作したクワルクチーズの品質比較]
結果を表2および表3に示した。この結果からも明らかなように、通常の温度の発酵温度において溶存酸素濃度を3ppm以下に調整したミックスで製造したクワルクチーズ(試作2−43)は、通常の製造法で得られたもの(対照2−43)よりも、「滑らかさ」が有意に(p<0.05、Mann-WhitneyのU検定)優れていた(表2)。しかも、試作2−43の発酵終了時間は、対照2−43に比べて短縮されていた。また、低温の発酵温度において溶存酸素濃度を3ppm以下に調整したミックスで製造したクワルクチーズは(試作2−37)、通常の製造法で得られたもの(対照2−37)よりも、「まろやかさ」と「滑らかさ」が有意に(p<0.05、Mann-WhitneyのU検定)優れていた(表3)。しかも、試作2−37の発酵終了時間は、対照2−37に比べて約半分と、大幅に短縮されたものになっていた。よって、以上の結果から溶存酸素濃度を低減させたミックスからまろやかな風味および舌触りが滑らかなテクスチャーを持ったクワルクチーズを得られることが見出された。とりわけ、低温発酵においては溶存酸素濃度を低減した効果が顕著にみられた。
Figure 0005046279
Figure 0005046279
表2は通常の温度(43℃)、表3は低温(37℃)におけるクワルクチーズの品質比較の結果である。「まろやかさ」および「滑らかさ」については、n=5における平均値(mean)±標準偏差(SD)を示す。*:p<0.05(Mann-WhitneyのU検定)。
[発酵終了時間が近く、発酵条件(溶存酸素濃度、発酵温度)が異なるクワルクチーズの品質比較]
各種発酵条件における発酵物のpHと発酵時間の関係を図1に示す。溶存酸素濃度を調整しなかった場合、低い温度(37℃)で発酵すると、通常の温度(43℃)に比べて大幅なpH低下の遅延が認められた。一方、溶存酸素濃度を低減した場合、全体的にpHの低下速度が高まった。発酵温度を低下させても、pH低下の遅延はわずかであった。
そこで、発酵終了時間がより近傍にある、試作2−37および対照2−43について、品質を比較した。品質試験および発酵終了時間の結果を表4に示した。この結果からも明らかなように、発酵時間が同様となる発酵条件の組み合わせにおいて、溶存酸素濃度を3ppm以下に調整したミックスで製造したクワルクチーズ(試作2−37)は、通常の製造法で得られたもの(対照2−43)よりも、「まろやかさ」と「滑らかさ」が有意に(p<0.01、Mann-WhitneyのU検定)優れていた。
よって、以上の結果から、溶存酸素濃度を低減させたミックスから、低温発酵でありながら、短時間でまろやかな風味および舌触りが滑らかなテクスチャーを持ったクワルクチーズを得られることが見出された。
Figure 0005046279
表4はクワルクチーズの品質比較の結果である。「まろやかさ」および「滑らかさ」については、n=5における平均値(mean)±標準偏差(SD)を示す。**:p<0.01(Mann-WhitneyのU検定)。
本発明のチーズ製造法は、ミックス組成の変更、添加剤の使用、乳酸菌スターターの選択をすることなく、まろやかな風味および舌触りが滑らかなテクスチャーを有するチーズを効率的に得ることを可能とするものである。
クワルクチーズの製造にあたり、本発明法(試作2)と従来法(対照2)で製造したミックスを乳酸菌発酵した。異なる発酵温度における各ミックスのpHと発酵時間の関係を示した。

Claims (3)

  1. 製造工程において、発酵時のミックス中の溶存酸素濃度を6ppm以下に低減せしめ、かつ、発酵温度を乳酸菌スターターの増殖温度帯の中でも至適増殖温度−3℃の温度以下とする工程を含有することにより、まろやかな風味および舌触りが滑らかなテクスチャーを向上せしめることを特徴とする、非熟成タイプチーズの製造方法。
  2. 上記溶存酸素濃度が3ppm以下であり、かつ、上記発酵温度が、乳酸菌スターターの増殖温度帯の中でも至適増殖温度−5℃の温度以下である、請求項1に記載の方法。
  3. 溶存酸素濃度を低減せしめる方法が、不活性ガスとの置換、減圧処理、超音波処理、気液分離膜での分離、加温処理からなる群のいずれか1つあるいは2つ以上の組み合わせである、請求項1又は2に記載の方法。
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