JP3644505B1 - 発酵乳の製造法及び発酵乳 - Google Patents

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Abstract

【課題】 発酵促進物質等を用いることなく発酵が促進される発酵乳の製造法とその製造法によって得られる従来の製品にはない緻密さとまろやかさを有しながら流通段階で組織が崩れない固い組織を有する新規な発酵乳を提供することを課題とする。
【解決手段】発酵開始時の発酵乳原料ミックス中の溶存酸素を不活性ガス置換によって低減させることで発酵効率が向上することを見出し、その状態で通常温度による発酵を行った場合は発酵時間が短縮し生産性が向上する発酵乳の製造法となり、発酵温度を通常より下げた場合は通常の発酵時間で従来の低温長時間発酵で得られるまろやかな風味を持つ発酵乳と比べて、より緻密でまろやかな風味と、流通段階で組織が崩れない固い組織を有する新規な発酵乳を与える発酵乳の製造法及びその発酵乳となることを見出したことにより課題を解決した。
【選択図】 なし

Description

本発明は、発酵促進物質などを用いることなく発酵が促進される新規な発酵乳の製造法とその製造法によって得られる新規な発酵乳に関する。
発酵乳とは乳またはこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を乳酸菌または酵母で発酵させ、糊状または液状にしたもの、またはこれを凍結したもので、二つのタイプに大別できる。一つは前発酵タイプ、もう一つは後発酵タイプである。前者は容器に詰める前のタンク内で発酵・冷却を完了させた発酵乳を破砕して流通用個食容器に充填したもの。後者は一定量のスターターを添加した発酵乳原料ミックス(以下ミックス)を紙容器等の流通用個食容器に充填した後、発酵室にて所定の乳酸酸度に到達するまで発酵させてプリン状に固化させた後、冷却したものである。前発酵は果肉入りのフルーツヨーグルトや飲むヨーグルト等の製造に多く用いられ、後発酵はいわゆるハードタイプやプレーンタイプと呼ばれるヨーグルト等の製造に多く用いられる。
どちらの発酵タイプの場合でも発酵工程は殺菌したミックスにスターターを所定の温度で添加して所定の酸度になるまで発酵を行い、冷却して発酵を止め製品としている。この際の発酵温度や発酵時間は製品の生産効率に影響を与えるばかりでなくその風味や品質にも大きな影響を与える為、それらの影響を考慮しながら発酵温度、発酵時間を適宜設定する必要がある。例えば、まろやかな風味を製品に与えたい場合は、発酵温度を低めとする等である。
ここで問題となるのは、例えばまろやかな風味を製品に与えるために発酵温度を低めとした場合には、所定の酸度に達するまでの発酵時間が通常より大幅に延長し、且つ組織の硬度が流通過程において崩れてしまうような低い硬度しか得られない等、生産効率や製品品質に問題を生じてしまうということである。従って、発酵時間を延長することなく、まろやかな風味を持ち且つ流通過程においても崩れることのない硬度の組織を持つ発酵乳を得ることは難しい現状があった。
このような現状を改善する直接的な方法はこれまで報告されていないが応用可能な方法として従来から次のようなアプローチが成されていた。第一に発酵工程の効率を向上させて発酵時間を短縮できる条件に持っていく方法。これにより生産効率を向上させるという目的以外に通常より低い発酵温度での発酵も可能となるものと考えられる。第二にまろやかな風味を与える物質を生産する乳酸菌を選択する方法。第三に発酵工程の工夫ではなく、風味を改善する添加物を製品に加えることによってまろやかさ等必要とするテクスチャーを付与する方法等である。
第一の発酵を促進させる方法としては、乳タンパク質濃縮物を添加する方法(特開平11-028056号公報)やバターミルクを添加する方法(特開平09-201164号公報)等が提案されている。
しかしながらこれら先行例は低温発酵を想定しておらず低温で発酵が促進されるかどうかについては言及していない。
第二の方法としては、用いる乳酸菌を選択した発酵によりL-乳酸が総乳酸の85%以上となることでさわやかでマイルドな風味を発酵乳に与える方法(特開平06-327401号公報)が提案されている。
第三の方法としては、得られた発酵乳に特定組成のアミノ酸を加えて風味を改善する方法(例えば特許文献4)が提案されている。
これらの方法はいずれの方法でも何らかの物質を発酵乳に添加したり成分組成の変化を伴うものであり、添加物等が製品の風味や品質等に与える影響を考慮した上で製品設計を行う必要が生じることは避けることができない。すなわち、添加物等を使用せずに元の製品の製品特性を維持した状態で生産効率を向上させたり元の製品の生産効率や製品特性を維持した状態で製品にさらに「まろやかさ」を付加したものとはなっていない。
特開平11-028056号公報 特開平09-201164号公報 特開平06-327401号公報 特開平10-327751号公報
本発明は、発酵促進物質等を添加することなく発酵が促進し発酵時間が短時間となって生産性が向上する発酵乳の製造法を提供することを課題とする。さらに、発酵時間をほとんど延長することなく従来より低い温度で発酵を行うことができ、その結果、従来得られなかった新規な発酵乳製品を得ることを可能とする発酵乳の製造法とその製造法で得られる新規な発酵乳を提供することを課題として成し遂げられたものである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、発酵乳製造工程において、発酵開始時におけるミックスの溶存酸素濃度を窒素ガス等の不活性ガスとの置換により低減させた状態で発酵させたところ、なんら発酵促進物質等の添加物を用いていないにも関わらず、発酵による乳酸酸度上昇速度が速まり、発酵終了乳酸酸度までの到達時間が大幅に短縮されることを見出し第一の課題を解決した。
そしてさらにミックスの溶存酸素濃度を低減させた状態で、通常より低い発酵温度で発酵を行ったところ、この場合は通常の発酵温度で行った場合とほとんど変わらない発酵時間内に発酵終了乳酸酸度に達することを見出した。
そしてそのようにして得られた発酵乳は従来の低温で長時間発酵を行った発酵乳が示すまろやかな風味以上の緻密でまろやかな風味を持っているにも関わらず、従来の低温長時間発酵で製造した製品では実現し得なかった流通過程においても崩れない固い組織を有する新規な発酵乳となっていることを見出し、第二の課題を解決するに至った。
即ち、本発明は、発酵乳の製造工程において発酵開始時のミックスの溶存酸素濃度を、窒素ガス等の不活性ガスと置換して低減することで発酵効率が向上することを見出し、その特性を発酵時間の短縮や、発酵温度を通常より下げることに向けることが可能となったことからもたらされたものである。
つまり、ミックスの溶存酸素濃度を低減させた状態で通常温度での発酵を行うことは、発酵時間が短縮し生産性の向上をもたらす発酵乳の製造法に関する発明をもたらし、ミックスの溶存酸素濃度を低減させた状態で発酵温度を通常より下げることは従来の製造法では得ることが出来なかった緻密でまろやかな風味を持ちながら流通過程に耐えうる固い組織を有する発酵乳を得ることを可能とした発酵乳の製造法と、その製造法を用いた結果得られる新規な発酵乳に関する発明をもたらした。
以上述べたように、本発明の発酵乳の製造法は発酵温度が通常の温度範囲の場合は発酵促進物質等の添加物を用いることなく発酵時間を短縮して生産性の向上をもたらす効果を有し、発酵温度を通常より下げた場合は通常とほぼ同様の発酵時間で必要な酸度に達することができ、そのようにして得られた発酵乳は従来の低温で長時間発酵させて得られた製品と比べてもより緻密でまろやかな風味を有し、さらに従来の製品にはない組織の固さを維持した新規な発酵乳となり、新たな価値をもつ発酵乳を提供するという効果を有している。
本発明における発酵乳とは、ヨーグルト、乳等省令で定義される「発酵乳」、「乳製品乳酸菌飲料」、「乳酸菌飲料」これらすべてを指す。
本発明は、発酵開始時点でのミックス中の溶存酸素濃度が窒素ガス等の不活性ガスと置換することによって低減されていることにより成される。発酵開始時点での溶存酸素濃度を低減させる為には不活性ガスによる置換処理をミックスを調製後、あるいはミックスを殺菌後に行ったり、あるいはミックスに乳酸菌スターターを加えてから直ぐに行うことによって成される。
ミックスは、牛乳、脱脂乳、脱脂粉乳、クリーム等の乳原料、砂糖、糖類、香料、水等、発酵乳の製造に常用される原料を加温・溶解し、安定剤を使用する場合には、予め加温・溶解したゼラチン液等を加え混合することで得られる。得られたミックスを均質化し、殺菌後、所定温度(発酵温度)まで冷却する。次いで乳酸菌スターターを接種し攪拌後に前発酵の場合はタンク内に充填して発酵を開始し、後発酵の場合は流通用個食容器に充填して発酵を開始する。また、発酵終了後これらミックスに糖液等を加えても良い。
不活性ガスによる置換処理は原料ミックスを調合する段階から乳酸菌スターターを接種後、発酵を開始するまでの間に行えばよく、その製造工程における置換時期は任意である。しかしながら発酵開始時に溶存酸素濃度が低減された状態が維持されていることが重要であることから、不活性ガス置換は乳酸菌スターターを接種する直前から直後に行うことが望ましい。
さらに、発酵開始時のミックスの溶存酸素濃度は、その濃度が低いほど良好な結果が得られるが実用上有用な結果を与える濃度は、ミックスの温度が30℃から40℃の際に5ppm以下、好ましくは3ppm以下、より好ましくは2ppm以下である。この場合、ミックスの温度が先の条件以外の場合でも先の条件にミックスを置いた場合の溶存酸素濃度に換算して評価すべきことは言うまでもないことである。
本発明に用いられる不活性ガスとしては、窒素ガスやアルゴンガス、ヘリウムガスを挙げることができるが、窒素ガスは食品に通常用いられている不活性ガスとしてより好適に用いることができる。ミックスの溶存酸素を低減するには、これら不活性ガスをミックスに直接バブリングする方法や、スタティックミキサーを用いる方法、ミックスと共にミキサーに入れて撹拌するなどの公知の方法を採ることができる。
ミックスに接種する乳酸菌スターターについては、ラクトバチルス・ブルガリカス(L.bulgaricus)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(S.thermophilus)、ラクトバチルス・ラクティス(L.lactis)の他、発酵乳の製造に一般的に用いられる乳酸菌や酵母の中から1種又は2種以上を選んだものを用いることが可能であるが、本発明においては、ラクトバチルス・ブルガリカス(L.bulgaricus)とストレプトコッカス・サーモフィルス(S.thermophilus)の混合スターターをベースとするスターターを好適に用いることができる。
尚、発酵温度等は、生産効率を重視する場合は各々の乳酸菌の至適条件を考慮して適宜決定すれば良い。例えば先の混合スターターを用いた場合の至適温度は40℃から44℃となる。この場合、本発明法を用いれば発酵時間は通常の場合の80%から70%程度に短縮することが可能となる。この効果は「前発酵」「後発酵」の発酵タイプの如何に依らず認めることができる。つまり、このようにして製造することで、すべての発酵タイプにおいて従来通りの乳酸菌スターターを従来通りの添加量で、乳酸菌生育促進物質を添加することなく、発酵乳の発酵時間の短縮が可能となり、生産性が大幅に向上したにも関わらず、従来の製造法で得られた製品となんら変わらない製品を得ることができる。
一方、製品に通常製品よりまろやかな風味を付与したい場合には発酵温度を30℃から37℃、好ましくは32℃から36℃、より好ましくは34℃から36℃の低温条件を選択すれば良い。この場合、発酵時間は発酵温度によって変動するが本発明法の場合、34℃から35℃下で従来の発酵法で通常の発酵温度で行っていた場合と同等の発酵時間で目標とする酸度に達することが可能である。30℃まで発酵温度を下げた場合には通常より発酵時間は延長するが、この場合でも本発明法を行わない場合と比べると60%程度の時間で発酵を終了することができ、本発明法による効果は明かである。
以上述べたような本発明の低温発酵条件で得られた発酵乳は特に後発酵タイプで製造されたものにおいて従来の方法で得られた製品に比べて優れた特性を付与することができる。すなわち、通常の発酵温度で製造された発酵乳に比べてまろやかな風味を持つことは元より、従来の低温で長時間発酵させた発酵乳と比較した場合でも、より緻密でまろやかな風味を有する発酵乳を得ることができる。しかも本発明の低温で発酵させた発酵乳は従来の低温で長時間発酵させた発酵乳では実現出来なかった流通段階での組織の崩れのない固い組織を有しており、これまでにないまろやかな風味を持ちながら、固い組織を有している新規で有用な発酵乳となっている。
一方、前発酵タイプに本発明法を適用した場合、前発酵では得られたカードを破砕して充填するという工程があるため、最終的に固い組織を有する発酵乳とはならないが、破砕を荒く行う等により従来の低温で長時間の発酵を行っただけの製品に比べて官能評価でより緻密でまろやかな風味を有する発酵乳を得ることは可能である。また前発酵タイプでも発酵温度が通常の温度の場合は発酵時間が短縮するという本発明の効果を得ることは言うまでもない。
さらに、脱酸素低温発酵の場合には、従来製品とのカードの形成パターンの違いにより、離水が起こりにくい等の従来と異なった物性による付加価値を付与できる可能性も有している。
以下に、試験例を示しながら本発明法の有用性の内容を詳しく説明する。
まず、ミックスに含まれる溶存酸素濃度が乳酸酸度の上昇に与える影響(発酵時間に与える影響)について検討した試験例を示す。
(試験例1)発酵開始時のミックス中の溶存酸素濃度と乳酸酸度上昇との関係について。
牛乳78.2kg、脱脂粉乳2.6kg、水17.2kgを混合したミックスを調製し、95℃、5分間の加熱殺菌した後、40℃前後まで冷却し、乳酸菌スターター(ラクトバチルス・ブルガリカス(L.bulgaricus JCM 1002T)とストレプトコッカス・サーモフィルス(S.thermophilus ATCC 19258)の混合培養物)を2重量%接種した。このミックスにパイプを通して窒素ガスを混合分散させ、溶存酸素濃度を7、6、5、4、3、2ppmに調製した。
次にそれぞれの溶存酸素濃度に調製したミックスを100ml容器に充填し、40℃前後の発酵室にて静置発酵させ、乳酸酸度が0.7%前後に到達した時点で10℃以下の冷蔵庫に入れ、冷却・発酵停止させた。比較には、溶存酸素濃度を調整せずに発酵させたものを用いた。その場合、乳酸菌スターターを接種した段階でのミックスの溶存酸素濃度は8ppmであった。
上記試験例1における発酵中の乳酸酸度変化結果を図1に示す。この結果から明らかなように、発酵前ミックスの溶存酸素濃度が低いほど発酵時間は短縮され、その短縮効果は溶存酸素濃度が5ppm以下から顕著に現れ、3ppm以下になると従来法(8ppm)との差がより明確となる。従って、発酵時間短縮に効果のある発酵時ミックス溶存酸素濃度は、5ppm以下、好ましくは3ppm以下であると判断できる。
次いで、本発明において発酵温度を通常より低下させた場合の発酵時間への影響とその際に得られる製品の性状について検討した試験例を示す。
(試験例2)本発明における発酵温度と発酵時間、得られる発酵乳性状との関係について。
牛乳78.2kg、脱脂粉乳2.6kg、水17.2kgを混合したミックスを調製し、95℃、5分間の加熱殺菌した後、30、35、37、43℃前後まで冷却し、乳酸菌スターター(ラクトバチルス・ブルガリカス(L.bulgaricus JCM 1002T)とストレプトコッカス・サーモフィルス(S.thermophilus ATCC 19258)の混合培養物)2重量%の接種を行った。このミックスにパイプを通して窒素ガスを混合分散させ、溶存酸素濃度を3ppm以下に調整した。また比較例として各温度につき窒素ガス置換を行わないものも用意した。これらを100ml容器に充填し、30、35、37、43℃の発酵室にて静置発酵させ、乳酸酸度が0.7%前後に到達した時点で10℃以下の冷蔵庫に入れ、冷却・発酵停止させ発酵乳を製造した。尚、乳酸酸度は、0.1規定NaOHを用い、フェノールフタレインを指示薬として滴定し、算出した。
得られた結果を表1に示す。
Figure 0003644505
表1の結果から明らかなように、本発明法では、乳酸酸度0.7%前後に達するまでの発酵時間が従来法に比べて著しく短くなっている。また、本発明法で得られたプレーンヨーグルトは、37℃以下の発酵温度で、その物性測定値から流通時に衝撃に十分耐えうる硬さ(高い硬度)を有していながら、なめらかさ(ヨーグルトナイフの侵入角度が小さい)も併せ持っていることが判る。
また、37℃低温発酵で得られた本発明法の発酵乳と従来法の発酵乳について専門パネルを用いた2点強度テストによる官能的評価を行った結果を表2に示す。
Figure 0003644505
官能評価の結果、本発明品は「舌触りの滑らかさ」、「味のまろやかさ」「コク味」において従来の低温で長時間の発酵を行って得られた発酵乳に対して優れていることが明らかとなった。また同程度の酸度でありながらより酸味を感じにくいマイルドな風味となっていることが明かとなった。
また、カードの形成が各製造法でどのように進行しているかを見るために後発酵、前発酵の両タイプについて、通常発酵(43℃)と通常の低温発酵(37℃)、本発明の溶存酸素低減下での低温発酵(37℃)におけるカードの形成状況を比較した。その結果、後発酵、前発酵共ほぼ同様の結果を与えた。図2に後発酵の場合の結果を示す。
カードの形成は乳酸酸度が約0.4%となってから開始されるので、0.4%から目標酸度の0.7%に至るまでをカードの形成時間としてみなすと、図2から本発明法の場合は通常の低温発酵と比べて全体としては発酵時間の短い発酵となっていてもカードの形成開始が早く、その結果カードの形成に要している時間は検討した3者中最も長い時間が費やされていることが読みとれる。このことが、緻密でまろやかな風味を製品に与える原因の一つとなっているものと考えられる。
以上の試験例の結果から本発明法が従来の製造法に対して優れた特徴を有するものであることが明確となった。
以下に、本発明法を実施例を元にさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
低温発酵における前発酵ヨーグルトの製造
牛乳80.0kg、脱脂粉乳3.1kg、無塩バター1.1kg、水13.8kgを混合したミックスを調製し、95℃、5分間の加熱殺菌した後、35℃前後まで冷却し、乳酸菌スターター(ラクトバチルス・ブルガリカス(L.bulgaricus JCM 1002T)とストレプトコッカス・サーモフィルス(S.thermophilus ATCC 19258)の混合培養物)2重量%の接種を行った。このミックスにパイプを通して窒素ガスを混合分散させ、溶存酸素濃度を3ppm以下に調整した。また同時に窒素置換を行わないものも用意した。尚、各サンプルの溶存酸素量は、DOメーター(東亜ディーケーケー株式会社製)を用い電極をそれぞれのサンプルに差し込んで測定した。
これらを35℃前後のタンクで発酵させ、乳酸酸度が0.7%前後に到達した後にカードを破砕して10℃以下まで冷却し、発酵停止させて発酵乳を製造した。乳酸酸度測定は、0.1規定NaOHを用い、フェノールフタレインを指示薬として滴定し、算出した。その結果、本発明の窒素置換低温発酵法では発酵時間3時間で酸度0.7%に達したが、従来の低温長時間発酵法では4時間半の発酵時間を要した。
低温発酵における後発酵ヨーグルトの製造
牛乳78.2kg、脱脂粉乳2.6kg、水17.2kgを混合したミックスを調製し、95℃、5分間の加熱殺菌した後、37℃前後まで冷却し、乳酸菌スターター(ラクトバチルス・ブルガリカス(L.bulgaricus JCM 1002T)とストレプトコッカス・サーモフィルス(S.thermophilus ATCC 19258)の混合培養物)2重量%の接種を行った。このミックスにパイプを通して窒素ガスを混合分散させ、溶存酸素濃度を3ppm以下に調整した。またコントロールとして窒素ガス置換を行わないものも用意した。これらを100ml容器に充填し、37℃の発酵室にて静置発酵させ、乳酸酸度が0.7%前後に到達した時点で10℃以下の冷蔵庫に入れ、冷却・発酵停止させ発酵乳を製造した。
尚、乳酸酸度は、0.1規定NaOHを用い、フェノールフタレインを指示薬として滴定し、算出した。
また、ヨーグルトの物性測定は、ネオカードメーターM302(アイテクノエンジニアリング:旧飯尾電機)を使用し、100gの重りをつけた際のヨーグルトナイフの侵入角度を測定し、得られる侵入角度曲線の破断に至るまでの弾力性を硬度(g)とし、角度をなめらかさの目安とした(角度は90°までの値をとり、値が小さいほど組織はなめらかと判断できる)。なお、本測定機器において測定したヨーグルトの硬度が、40g以上の場合、輸送中の衝撃等で破砕されることのない安定した組織といえる。
その結果、本発明法の場合の硬度は55g、侵入角度は30°となり、従来法によるものの硬度は35g、侵入角度は50°となり、本発明法による発酵乳が物性値から見てよりなめらかで、流通段階で組織を維持できる硬度を有することが確認された。また、実際の風味においても従来品に比べてより緻密でなめらかな風味となっていることが確認された。
発酵乳原料ミックス中の溶存酸素が発酵時間に与える影響を見た結果を示す図である。 低温発酵における、従来法と本発明法及び通常温度での発酵におけるカードの形成状況を比較した図である。

Claims (4)

  1. 発酵開始時における発酵乳原料ミックス中の溶存酸素濃度が不活性ガスとの置換により5ppm以下に低減しており且つ発酵温度を30℃-37℃で行うこと、を特徴とする発酵乳の製造法。
  2. 請求項1の製造法において、発酵時間がその発酵温度における従来法の発酵時間の60%から80%に短縮されていること、を特徴とする発酵乳の製造法。
  3. 請求項1または請求項2の製造法で得られ、従来の低温長時間発酵乳に対して、舌触りの滑らかさ、味のまろやかさ、味の濃厚さが優れており、且つ流通段階で組織を維持できる硬度を有すること、を特徴とする発酵乳。
  4. 請求項1または請求項2の製造法で得られ、ネオカードメーターを使用して100gの重りをつけた際のヨーグルトナイフの侵入角度を測定し、得られる侵入角度曲線の破断に至るまでの弾力性を硬度(g)とし、角度をなめらかさの指標とした場合の侵入角度が31度以下であり、且つ硬度が40g以上であること、を特徴とする発酵乳。
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