JP2004088842A - 発電機制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】系統の現在状態を監視して需要電力量を出力する系統監視装置と、発電コストの総和が最小になることを要求する評価関数式を需要電力量と供給電力量の総和が等しくなることを要求する需給バランス制約を考慮して解き、発電機の出力を所定間隔ごとに決定する発電機出力最適化部とを備え、この発電機出力最適化部は発電機の変化速度上限値に基づいて決められるAFC容量制約をさらに考慮して前記評価関数式を解くことを特徴とする発電機制御装置。評価関数式には、対象となる発電機の出力の総和が燃料消費目標量に等しくなることを要求する燃料消費量制約を組み込んでもよい。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、発電機制御装置に関し、特に、各発電機の発電量を遠隔から指示する発電機制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
発電所には、水力発電所、火力発電所、原子力発電所などがある。これらの発電所で起こされた電力は送電線を経由して使用者に届けられるが、電気は貯めることができないので、電気の使用量に応じて各発電所の発電量を調整する必要が有る。刻々と変わる電気の使用量をにらみながら各発電所に発電量を指令するのは中央給電指令所である。中央給電指令所が需要電力に応じて供給電力を増減し、需要量と供給量の間に過不足が生じないように発電機の発電量を調整することを需給バランス制約と呼ぶ。
【0003】
中央給電指令所から各発電所に出される指令には、需給バランス制約の他にも様々な制約が考慮されている。例えば、原子力発電所は、一度、燃料を入れると、少なくとも1年間は連続運転ができるが、出力を早急に変化させることは困難である。これに対し、火力発電所は、電力の使われ方に応じて、出力を比較的簡単に増減できる。発電機が出力を無理なく調整できる速度の範囲を変化速度制約と呼ぶ。
【0004】
発電量には、発電機を長期にわたって安定的に動作させるために、適正な範囲が設けられている。発電機が安定に電力を供給できる出力値の範囲を発電機上下限制約と呼ぶ。発電機によっては、この出力値は連続量ではなく離散値でしか指定できない場合がある。また、発電機の出力は複数のバンドに分かれており、あるバンドの範囲内では連続的に変化できるが、バンドからバンドへの移行にはある定められた時間の間は移行できないという発電機出力ステップ移行制約が設けられていることもある。
【0005】
火力発電所は、石油、液化天然ガス(LNG)、石炭などの燃料を使用して発電を行う。これらの燃料の供給量には制限が設けられており、この供給量を越えて発電量を増やすことは出来ない。これを燃料消費量制約と呼ぶ。
【0006】
発電された電力は送電線や変圧器を経由して送られる。送電線や変圧器などの線路は、電力を需要に応じて最も効率よく届けるために、そして万一あるルートでトラブルが起きても即座に別のルートで対応できるように、送電ネットワークを形成している。しかし各線路には送電電力の上限があり、この上限を超えて電力を供給することは出来ない。各線路が自分の上限値を越えて送電することが無いように発電機の発電量をコントロールすることを潮流制約と呼ぶ。
【0007】
ここで、ある発電所の電力発電量が一単位増加したとき、ある線路に流れる電力の増加量を潮流感度と呼ぶ。この潮流感度は、実際の系統状態により各時刻で変化している。
【0008】
中央給電指令所は発電コストを低く抑えることも考慮している。総需要電力の予想値をもとに、発電コストの最適化を行うことはEDC(Economic Dispatching Control)制御と呼ばれる。これは、通常3分から5分程度に一度の割合で行われている。これに類似する制御として、AFC(Automatic Frequency Control)制御が知られている。AFC制御は、電力系統の特性として、需要と供給のバランスが取れない場合に系統周波数が規定値からずれるという性質があるため、例えば5秒おきに周波数偏差をもとに発電機の出力を調整することを指す。特開2001−096649号公報には周波数自動制御機能が記載されている。
【0009】
中央給電指令所はこのような各種制限を考慮して、各発電所に各時刻における発電量を指令する。特開2001−037087号公報には、多時刻断面で、需給バランス制約、発電機上下限制約、潮流制約、燃料消費量制約を満たすように発電機の出力を決定する方法が開示されている。
【0010】
ここでは、潮流制約を、あらかじめ与えられた発電機の送電線と変圧器に関する各時刻の潮流感度を用いて、各時刻で潮流制約が発生する場合に、需給バランス制約に潮流制約式を追加することで解決しようとしている。燃料消費量制約については、上記方法で決定された発電機出力から燃料消費量を計算し、この一旦求められた燃料消費量が燃料消費目標量と一致しない場合は燃料費補正係数を変更したうえで発電機出力の再決定を行うことで解決しようとしている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
さて送電線や変圧器などの線路の保守工事を計画的に行うために線路作業計画が作成されている。保守工事はこの線路作業計画に基づいて行われるが、どの線路がどれだけの時間停止するかは当日の保守作業の進捗状況により変化する。また、事故が発生して予定していない時間帯に送電が完全に止まることも有る。すなわち、線路に対する各時刻の潮流感度は、実際の系統状態や当日の線路作業計画の実施状況により変化するので、あらかじめ与えられた潮流感度を用いる潮流制約は実際の系統状態を必ずしも正しく反映していない。その結果、必要な発電機の出力を精度良く調整できていないことが生じた。
【0012】
また、燃料消費量制約については、一旦発電機出力を決定した後に燃料消費量を計算し、燃料消費目標量と一致するように燃料費補正係数を修正して発電機出力を決定する、ということを繰り返し実施するため、処理時間がかかるという問題点があった。
【0013】
また、電力需要量を予め予想して発電量を制御しているが、予想値からずれると、発電機には、出力を増減できる速度に制限があるため、制御が追いつかないことが生じる。当日の総需要実績が総需要予想値とずれた場合、需給バランス制約を満たさない、あるいは周波数偏差が発生する不具合があった。
【0014】
さらに、周波数偏差を直接扱っていないので、EDC制御の中で、発電機、特に揚水発電機の並解列時において、周波数を規定値に維持できないことが生じていた。
【0015】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、総需要電力の予想値をもとに、発電コストの最適化を行いながら、発電機の出力をより精度良く調整し、系統周波数の変動を抑えることを目的とする。
【0016】
本発明に係る発電機制御装置は、系統の現在状態を監視して需要電力量を出力する系統監視装置と、発電コストの総和が最小になることを要求する評価関数を需要電力量と供給電力量の総和が等しくなることを要求する需給バランス制約を考慮して解き、発電機の出力を所定間隔ごとに決定する発電機出力最適化部とを備え、この発電機出力最適化部は発電機の変化速度上限値に基づいて決められるAFC容量制約をさらに考慮して前記評価関数を解くものである。
【0017】
また本発明に係る発電機制御装置は、系統に接続する線路の開閉状態を監視し現在系統状態を出力する系統監視装置と、線路の開閉予定を表す線路作業計画を出力する線路作業計画調整装置と、現在系統状態と線路作業計画を用いて将来系統状態を作成する系統断面作成手段と、系統断面作成手段で作成される系統断面ごとに線路の潮流感度を算出する感度算出手段と、対象となる複数の発電機の発電コストの総和が最小になることを要求する評価関数を各線路に上限値を越えて送電されることが起こらないことを要求する潮流制約を組み込んで解き、所定間隔ごとに発電機の出力を決定する発電機出力最適化部とを備えてなり、潮流制約は潮流感度を用いて表され、発電機出力最適化部はこの潮流感度に感度算出手段で算出される潮流感度を用いるものである。
【0018】
また、発電機出力最適化部は評価関数を、対象となる発電機の出力の総和が燃料消費目標量に等しくなることを要求する燃料消費量制約を組み込んで解くものである。
【0019】
また、発電機出力最適化部は評価関数を、発電機の変化速度上限値に基づいて決められるAFC容量制約を組み込んで解くものである。
【0020】
また、負荷の変動を予測する負荷動作予測手段を備え、発電機出力最適化部は評価関数を、負荷動作予測手段で算出される制御量予測値を考慮して決められる可変速フライホイール容量制約を組み込んで解くものである。
【0021】
また、発電機出力最適化部は評価関数を、発電機の追従遅れを考慮した周波数偏差制約を組み込んで解くものである。
【0022】
また、発電機出力最適化部は、周波数偏差制約を組み込んで評価関数を解く際に、まず周波数偏差制約を考慮しないで所定間隔ごとに発電機の出力を算出し、この算出された発電出力を利用して評価関数を周波数偏差制約を考慮して所定間隔よりも短い時間間隔で解くものである。
【0023】
また、発電機出力最適化部で決定された発電機の出力を各発電所に送信する制御信号送出装置を備えているものである。
【0024】
また、発電機の発電コストは発電機の出力の2次関数で表されているものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、中央給電指令所の1構成例で、この中央給電指令所は、発電機制御装置10、データ設定装置20、線路作業計画調整装置30、系統監視装置40、制御信号送出装置50、AFC制御部60から構成されている。発電機制御装置10は発電コストの最適化を行うために例えば5分毎にEDC制御を指令する信号を出力する。AFC制御部60は系統監視装置40が検出した電力系統の周波数偏差ΔFに基づいて、例えば5秒おきにAFC制御を指令する信号を出力する。
【0026】
発電機制御装置10およびAFC制御部60の出力は、制御信号送出装置50により個々の発電機(図示せず)に指令値として伝送され、個々の発電機はこの指令値にしたがって動作する。なお、本発明は本質的にEDC制御に関するものであるため、AFC制御部60については深く説明することはない。
【0027】
図2は発電機制御装置10の構成を示すブロック図である。発電機制御装置10は発電機出力最適化部5、および系統計算部6から構成されている。発電機出力最適化部5は最適化問題を解くことが出来るコンピュータにより構成され、発電機出力決定手段1を含む。系統計算部6は系統断面作成手段2および発電機感度算出手段3を含む。
【0028】
発電機出力最適化部5はデータ設定装置20から総需要予測値、発電機燃料費特性、発電機上下限制約、発電機変化速度制約、燃料消費制約、各線路潮流制約、AFC容量制約などを入手する。系統計算部6は、線路作業計画調整装置30から線路作業計画データを、さらに系統監視装置30から現在系統状態および事故設備情報を入手する。
【0029】
発電機出力7は、図3〜図9に定式化されている評価関数ならびに各種制約式を最適化手法を用いて解くことで決定される。これらの制約式は要求される精度に応じて適宜取り外すことが出来る。図3に示される評価関数は、計画対象期間全体(T)における発電コストの総和を最小にすることを表している。ここでは発電機gの発電コストは出力Pgtの2次関数で近似されている。
【0030】
図4〜図6に示した制約式は先に定性的に説明した需給バランス制約、発電機上下限制約、変化速度制約を数式化したものである。図7に示した潮流制約は、各線路の潮流感度(klg)を用いて数式化されている。後で説明するように潮流感度は将来系統断面ごとに算出される。また、制御対象の全発電機出力を0とした時の線路lの潮流値をF0とする。
【0031】
図8に示した燃料消費量制約で、燃料消費制約グループDは火力発電所のように、燃料消費量を考慮する必要の有る発電機の集合体を表している。燃料消費量制約は、このグループに属する発電機の出力Pgtの総和が燃料消費目標量(TotalD)に等しくなるように制御する必要性を表している。この燃料消費量制約が評価関数を解く制約条件に組み込まれているため、燃料費補正計算の繰り返し計算を行うことがなくなり、一度の計算処理で発電機出力を決定することができる。
【0032】
図9に示すAFC容量制約は、発電機の変化速度上限値Ymaxに基づいて各発電機のAFC容量を確保している。AFC容量は、あとどれだけ発電量を余裕をもって増加できるかを表す制御余裕量のことである。このAFC容量は図10に示されるように、発電機の出力に応じて変化する。発電機の出力が低いときは、AFC容量はYmaxとTafcの積で求められるx1に固定されているが、発電機の出力が或る程度大きくなると、AFC容量は出力の増加に対し傾き−1の直線で減少する。両者の交わる点の出力がP1である。
【0033】
このようにAFC容量制約が定式化されており、各発電機の出力は、AFC容量を予め確保して決定される。その結果、予想総需要と実際の総需要がずれた場合でも、需給バランス制約を逸脱することなく、系統周波数が大幅に変動することを抑制することができる。
【0034】
上述した評価関数ならびに各種制約式で表される最適化問題は、最適化手法を適用して解かれ、各時刻の各々の発電機出力7が決定される。この演算に際しては、発電機出力などの連続値変数と、揚水発電機の並解列(揚水を行ってダムに貯水することを並列、またこの揚水を中止すること解列と呼ぶ)やバンド位置などの離散値変数が独立変数となる。連続値の最適化については、2次計画法(QP:Quadratic Programming)を適用することができる。
【0035】
離散値の最適化については、平成10年特許願第221634号「火力発電機の経済負荷配分装置およびその方法」に記載の方法が適用できる。また問題空間探索法、タブ探索法、遺伝的アルゴリズム等を適用してもよい。一例として問題空間探索法と内点法2次計画法を併用する場合のフローチャートを図11に示す。太線で表示されているステップで内点法2次計画法を適用する。
【0036】
系統断面作成手段2では、系統監視装置40から入力される現在系統状態および事故設備情報と、線路作業計画調整装置30から入力される線路作業計画データから、将来系統状態を作成する。ここで、線路作業計画データは、停止・復旧操作が必要な開閉器のON/OFF状態ならびにON/OFFが実行される時刻の情報から構成されている。
【0037】
図12に系統断面作成手段2の動作原理を示す。系統断面作成手段2では、現在系統状態と作業設備情報を比較することにより、作業停止の実施着手判定を行う。この結果、計画された時刻より例えば60分以上、着手されていない作業については、作業が中止されたと判定を行い、以降の将来系統断面作成には用いない(作業A)。作業が中止されたと判定されていない作業については、開閉器のON/OFF状態変化を時刻の順に並び替え、現在系統状態に時間の順に重ね合わせることで複数の将来系統断面を作成する。
【0038】
なお、作業Bのように、作業終了予定時刻になっても作業が終了していない作業は、1分後に作業が終了するとして扱う。また、作業Cのように、現在時刻より1時間以内前に着手予定であるにも拘わらず、未着手の作業については、作業着手の遅れを反映させるために、1分後に作業が着手されるものとして扱う。作業Dは、作業の開始をn2分後に、作業の終了をn3分後に予定されている作業である。
【0039】
発電機感度算出手段3では、系統断面作成手段2で得られた将来系統状態と、発電機出力決定手段1で得られた発電機出力とを用いて、将来系統断面ごとに各線路の潮流感度を算出する。図13に潮流感度を算出するフローチャートを示す。発電機Gの線路Lに対する潮流感度は、たとえばDC潮流計算を用いて求められる。
【0040】
以上のように潮流感度は将来系統断面ごとに求められる。このようにして求められた潮流感度は当日の系統状態や線路作業計画の実施状況をより正しく反映しているため、潮流制約が実際の系統状態を正確に反映できるようになり、発電機出力のより正確な調整が可能になる。
【0041】
実施の形態2.
製鉄所等の大口電力需要家から予め電力需要量(負荷)の増減に関する情報を入手できる場合がある。実施の形態2では、この情報と可変速フライホイールを利用して、より精密に発電量を制御する。
【0042】
実施の形態2にかかわる発電機出力最適化部5は図14に示すように負荷動作予測手段11を備えている。負荷動作予測手段11は、大口需要家などから入手する負荷動作情報によって、電力需要量の増減を事前に知ることができる。あるいは系統監視装置40が出力する周波数偏差ΔFのパターンを負荷動作パターン検出部12で解析し、電力需要量の増減を予測してもよい。
【0043】
可変速フライホイールは、電力を回転エネルギとして蓄積する装置で、制御容量は少ないが、火力発電機に比べて高速に電力を放出、吸収できる。周波数制御を目的とした可変速フライホイールの使用は、たとえば「可変速システムの電力分野への適用拡大」(東芝レビューVol.51:No.12, 1996年)に記載されている。
【0044】
発電機出力最適化部5は評価関数(図3参照)を解くにあたり、図15に示す可変速フライホイール容量制約を考慮する。この可変速フライホイール容量制約は負荷の増減を予想して決められる制御量予想値rtを用いて数式化されている。また制御変数として整定値(Fst)を含むことができる。以降では可変速フライホイール容量制約を考慮したEDC制御を協調制御と呼ぶことにする。負荷動作予測手段11が電力需要の増加を予測した場合、発電機出力決定手段1は、AFC制御との協調を考慮するので、火力発電機のAFC容量を通常よりも大きく設定する。
【0045】
可変速フライホイール容量制約を考慮する場合の効果を図16(a)〜(e)を用いて説明する。点線が協調制御を行わない場合の制御結果、実線が協調制御を行った場合の制御結果である。図16(a)は製鉄所の負荷(需要電力)が時刻t1にΔPsだけ増加したことを表している。このとき、図16(b)に示されているように、どちらの場合も系統周波数Fは減少するが、協調制御を行った場合の方が周波数偏差ΔFは少ない。
【0046】
図16(c)は加変速フライホイールの回転数の変化を表している。協調制御を行う場合、負荷の増加を予測して、加変速フライホイールの回転数は、負荷変動が起こる前に690rpmに設定されている。この回転数は上限値であるため、加変速フライホイールのAFC容量が最大限確保されている。協調制御を行わない場合は、可変速フライホイールの回転数は600rpm(回転数の中央値)に設定されている。この場合、可変速フライホイールのAFC容量は最大値の半分しか確保できていない。
【0047】
時刻t1に、系統監視装置40は系統周波数の変動を感知し、加変速フライホイールに電力を系統に供給するように指令を出すため、加変速フライホイールの回転数は510rpm(回転数の下限値)まで下がる。そのあと、協調制御の有る無しに係らず、加変速フライホイールの回転数は初期の整定値に戻る。このように、協調制御を行う場合は事前にAFC容量の整定値(Fst)を変化させておくことで、可変速フライホイールのAFC制御容量を最大変化量分確保できる。
【0048】
図16(d)は火力発電機の出力の変化を表している。協調制御の有る無しに係らず、中央給電指令所からの指令に基づいて、火力発電所の出力は時刻t1から増加し始める。増加の速度は可変速フライホイールに比べると比較的ゆっくりである。図16(e)は火力発電所ののAFC容量を表している。可変速フライホイールで片方向のAFC容量を最大限確保したので、これを補償するために、火力発電機では同方向のAFC容量が大きめに確保されている。
【0049】
要するに電力需要の大幅な変動を予知して火力発電機のAFC容量を大きめに確保しておき、瞬時の変動に対してはまず変化速度の速い可変速フライホイールで制御を行う。その後、変化速度が可変速フライホイールよりも遅い火力発電機で持ち替えるように制御が行われる。
【0050】
なお、可変速フライホイールがローカル情報のみで動いており、中央給電指令所から整定値を直接制御できない場合がある。この場合には、以下の様にして可変速フライホイールを間接制御することができる。
【0051】
例えば需要の急激な上昇に備えて事前に可変速フライホイールの回転数を上昇させておきたい場合、直接制御が可能であれば、整定値(基準周波数)を通常の運転よりも低く設定することで可変速フライホイールの回転数を上昇させた。これに対し間接制御する場合は、直接制御が可能な火力発電機に出力増大方向の指令を送り、系統周波数を増加させる。この系統周波数の増加をローカルで検出した可変速フライホイールは回転数を上昇させるので同様の効果が生まれる。
【0052】
実施の形態3.
周波数制御には追従遅れが生じる。実施の形態1と2では周波数偏差ΔFをEDC制御で直接扱っていないので、たとえ周波数を一定に維持するためにAFC制御を5秒周期で実行していても、周波数が規定値(50Hzまたは60Hz)からかなりずれることがある。このずれは、特に、揚水発電機の並解列を指示する制御信号と、火力発電機を含む複数の発電機の出力を指示する制御信号が中央給電指令所から各発電所へ送信される場合に起こり易い。
【0053】
実施の形態3では、5分毎のEDC制御の結果に対し、これを初期値として、各発電機の追従遅れと変化速度を考慮して、さらに最適化を行うことにより、周波数偏差の最小化を図る。ここでの制約条件は図17に示す周波数偏差制約である。周波数偏差ΔF[tj]は、発電機出力の追従遅れと変化速度を考慮して決められるPi[tj]から算出される。なお、最適化すべき目的関数は今までと同じく図3に示した評価関数である。
【0054】
この場合の独立変数は、5分毎の演算と同様に、各発電機の出力値と並解列状態である。従来は考慮されることのなかった周波数偏差ΔF[tj]を周波数偏差制約として考慮して発電機の出力を決定するようにしたので、発電機の追従遅れや変化速度が考慮され、発電機の出力調整ならびに、発電機の並解列、特に揚水発電機の並解列に伴う、周波数変動を低減できる。
【0055】
実施の形態4.
実施の形態3で示した周波数偏差制約に基づいて、出力指令値を5分毎ではなく1分毎に演算しようとすると、時間刻みが増大するので、演算量が大きくなり、実際上の計算速度が追随しない。そこで実施の形態4では、図18に示すように、まず、周波数偏差制約を組み込まないで5分毎の周期で計算する(図11参照)。これをベースにさらに1分毎に、より精密に周波数偏差ΔFに関する制約条件(図17参照)を付加して発電機への出力指令値とその時刻、また、発電機の並解列信号の制御時刻を求める。すなわち、2段階で計算を行う。
【0056】
なお、1分毎の各発電機の出力指令値は、周波数偏差ΔF[tj]を求める式において、Pi[tj]の発電機出力の追従遅れと変化速度は事前に分かっているので、ある追従遅れパターン、または、一次式として変化するなどの簡易なモデルを適用することにより、過去の需要実績等から簡単に計算することができる。
【0057】
5分毎に行われるEDC制御に関する計算結果から1分毎の計算結果を展開する効果を図19を用いて説明する。指令値301と指令値302は火力発電機に対する出力指令値である。指令値301は5分毎の計算結果で、時刻0分に出力を100MWから120MWに上げて、さらに時刻5分には100MWに下げるように出力を変更する指令を表している。
【0058】
ところが発電プラントには各種の追従遅れがあるため、時刻0分に100MWから120MWに出力指定値を変更したとしても、ただちに120MWへとステップ状に変化することはない。実際には、時刻0分を基点としてある傾きをもって傾斜状に100MWから120MWまで比較的緩やかに上昇する。この上昇の仕方を過去の需要実績等から予測し、これらの総和を求めることにより、0分、1分、2分、3分、4分、5分におけるPi[tj]の値を求める。
【0059】
指令値303と指令値304は例えば50万KWクラスの揚水発電機に対する並解列指令値である。指令値303は時刻0分に揚水発電機を系統から解列することを指示している。この指示が忠実に実行されると、50万kWの負荷がいきなり0kWへと減少するので、需要と供給のバランスが大きく崩れ、結果として系統周波数が、規定値から0.1Hz程度上昇することになる。
【0060】
このため発電機出力の追従遅れと変化速度を考慮し、5分刻みの発電機出力等を1分刻みに展開した場合には、火力発電機に対しては時刻1分に出力を増加させ、時刻7分に出力を減少させる指令値302を出力する。また揚水発電機に対しては、解列指令を0分ではなく3分に出力する指令値304を出力する。
【0061】
このように発電機出力の決定を数分程度の荒い精度で実施した結果に基づき、さらに計算間隔を1分程度の細かい精度で実施することで、揚水発電機の起動停止などの大きな制御を行うタイミングを、計算時間を大きく増大させることなく決定することが可能となる。
【0062】
【発明の効果】
本発明に係る発電機制御装置は、系統の現在状態を監視して需要電力量を出力する系統監視装置と、発電コストの総和が最小になることを要求する評価関数を需要電力量と供給電力量の総和が等しくなることを要求する需給バランス制約を考慮して解き、発電機の出力を所定間隔ごとに決定する発電機出力最適化部とを備え、この発電機出力最適化部は発電機の変化速度上限値に基づいて決められるAFC容量制約をさらに考慮して前記評価関数を解くことにより、実際の総需要が予想値とずれた場合でも、発電機の出力を精度良く決定できる。
【0063】
また本発明に係る発電機制御装置は、系統に接続する線路の開閉状態を監視し現在系統状態を出力する系統監視装置と、線路の開閉予定を表す線路作業計画を出力する線路作業計画調整装置と、現在系統状態と線路作業計画を用いて将来系統状態を作成する系統断面作成手段と、系統断面作成手段で作成される系統断面ごとに線路の潮流感度を算出する感度算出手段と、対象となる複数の発電機の発電コストの総和が最小になることを要求する評価関数を各線路に上限値を越えて送電されることが起こらないことを要求する潮流制約を組み込んで解き、所定間隔ごとに発電機の出力を決定する発電機出力最適化部とを備えてなり、潮流制約は潮流感度を用いて表され、発電機出力最適化部はこの潮流感度に感度算出手段で算出される潮流感度を用いることにより、潮流制約に実際の系統状態を反映できる。
【0064】
また、発電機出力最適化部は評価関数を、対象となる発電機の出力の総和が燃料消費目標量に等しくなることを要求する燃料消費量制約を組み込んで解くことにより、複雑な計算処理を省くことができる。
【0065】
また、発電機出力最適化部は評価関数を、発電機の変化速度上限値に基づいて決められるAFC容量制約を組み込んで解くことにより、実際の総需要が予想値とずれた場合でも、発電機の出力を精度良く決定できる。
【0066】
また、負荷の変動を予測する負荷動作予測手段を備え、発電機出力最適化部は評価関数を、負荷動作予測手段で算出される制御量予測値を考慮して決められる可変速フライホイール容量制約を組み込んで解くことにより、発電機の出力をより精度良く決定できる。
【0067】
また、発電機出力最適化部は評価関数を、発電機の追従遅れを考慮した周波数偏差制約を組み込んで解くことにより、発電機の出力をより精度良く決定できる。
【0068】
また、発電機出力最適化部は、周波数偏差制約を組み込んで評価関数を解く際に、まず周波数偏差制約を考慮しないで所定間隔ごとに発電機の出力を算出し、この算出された発電出力を利用して評価関数を周波数偏差制約を考慮して所定間隔よりも短い時間間隔で解くことにより、決められた計算時間内に発電機の出力をより精度良く決定できる。
【0069】
また、発電機出力最適化部で決定された発電機の出力を各発電所に送信する制御信号送出装置を備えていることにより、制御信号を各発電所に通知できる。
【0070】
また、発電機の発電コストは発電機の出力の2次関数で表されていることにより、簡単に発電コストを計算できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】中央給電指令所の構成を表すブロック図である。
【図2】発電機出力決定装置の構成を表すブロック図である。
【図3】EDC制御に使われる評価関数を説明するための図である。
【図4】需給バランス制約を説明するための図である。
【図5】発電機上下限制約を説明するための図である。
【図6】変化速度制約を説明するための図である。
【図7】潮流制約を説明するための図である。
【図8】燃料消費量制約を説明するための図である。
【図9】AFC容量制約を説明するための図である。
【図10】AFC容量と出力の関係を説明するための図である。
【図11】発電機の出力を解析する手順を説明するためのフローチャートである。
【図12】系統断面を作成する手順を説明するための図である。
【図13】潮流感度を算出する手順を説明するためのフローチャートである。
【図14】協調制御を説明するためのブロック図である。
【図15】可変速フライホイール制約を説明するための図である。
【図16】協調制御の効果を説明するための図である。
【図17】周波数偏差制約を説明するための図である。
【図18】2段階で出力指令値を算出する手順を説明するためのフローチャートである。
【図19】2段階で出力指令値を算出した効果を説明するための図である。
【符号の説明】
1 発電機出力決定手段、 2 系統断面作成手段、 3 発電機感度算出手段、 5 発電機出力最適化部、 6 系統計算部、 10 発電機制御装置、 11 負荷動作予測手段、 12 負荷動作パターン検出部、 20 データ設定装置、 30 線路作業計画調整装置、 40 系統監視装置、 50 制御出力信号送出装置、 60 AFC制御部。
Claims (9)
- 系統の現在状態を監視して需要電力量を出力する系統監視装置と、発電コストの総和が最小になることを要求する評価関数を前記需要電力量と供給電力量の総和が等しくなることを要求する需給バランス制約を考慮して解き、発電機の出力を所定間隔ごとに決定する発電機出力最適化部とを備え、この発電機出力最適化部は発電機の変化速度上限値に基づいて決められるAFC容量制約をさらに考慮して前記評価関数を解くことを特徴とする発電機制御装置。
- 系統に接続する線路の開閉状態を監視し現在系統状態を出力する系統監視装置と、前記線路の開閉予定を表す線路作業計画を出力する線路作業計画調整装置と、前記現在系統状態と前記線路作業計画を用いて将来系統状態を作成する系統断面作成手段と、前記系統断面作成手段で作成される系統断面ごとに前記線路の潮流感度を算出する感度算出手段と、対象となる複数の発電機の発電コストの総和が最小になることを要求する評価関数を各線路に上限値を越えて送電されることが起こらないことを要求する潮流制約を組み込んで解き、所定間隔ごとに発電機の出力を決定する発電機出力最適化部とを備えてなり、前記潮流制約は潮流感度を用いて表され、前記発電機出力最適化部はこの潮流感度に前記感度算出手段で算出される潮流感度を用いることを特徴とする発電機制御装置。
- 発電機出力最適化部は評価関数を、対象となる発電機の出力の総和が燃料消費目標量に等しくなることを要求する燃料消費量制約を組み込んで解くことを特徴とする請求項1または2記載の発電機制御装置。
- 発電機出力最適化部は評価関数を、発電機の変化速度上限値に基づいて決められるAFC容量制約を組み込んで解くことを特徴とする請求項2記載の発電機制御装置。
- 負荷の変動を予測する負荷動作予測手段を備え、発電機出力最適化部は評価関数を、前記負荷動作予測手段で算出される制御量予測値を考慮して決められる可変速フライホイール容量制約を組み込んで解くことを特徴とする請求項1または2記載の発電機制御装置。
- 発電機出力最適化部は評価関数を、発電機の追従遅れを考慮した周波数偏差制約を組み込んで解くことを特徴とする請求項1または2記載の発電機制御装置。
- 発電機出力最適化部は、周波数偏差制約を組み込んで評価関数を解く際に、まず前記周波数偏差制約を考慮しないで所定間隔ごとに発電機の出力を算出し、この算出された発電出力を利用して前記評価関数を前記周波数偏差制約を考慮して前記所定間隔よりも短い時間間隔で解くことを特徴とする請求項6記載の発電機制御装置。
- 発電機出力最適化部で決定された発電機の出力を各発電所に送信する制御信号送出装置を備えてなる請求項1または2記載の発電機制御装置。
- 発電機の発電コストは発電機の出力の2次関数で表されていることを特徴とする請求項1または2記載の発電機制御装置。
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