JP2004087460A - 収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置 - Google Patents

収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置 Download PDF

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Abstract

【課題】安定かつ最適な収差補正を実現し、荷電粒子ビームの最小プローブ径を得ることができる収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置を実現する。
【解決手段】4段の静電型4極子1、2、3、4と4段の静電型4極子の中央の2段の静電型4極子2、3の電位分布と相似な磁位分布を重畳させる2段の磁場型4極子5、6と4段の静電型4極子1、2、3、4の電位分布に8極子電位を重畳させる4段の静電型8極子11、12、13、14から成る収差補正装置Cの最終段の多極子の主面と焦点距離fのトランスファーレンズ27aの主面との距離Lをf程度とし、トランスファーレンズ27aの主面と焦点距離fのトランスファーレンズ27bの主面との距離Lをf+f程度とし、トランスファーレンズ27bの主面と対物レンズ7の前方焦点距離FFPとの距離Lをf程度となるように配置する。
【選択図】   図5

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、走査電子顕微鏡などの電子ビーム装置やイオンマイクロプローブなどのイオンビーム装置の荷電粒子ビームをフォーカスして試料に照射する荷電粒子光学系における色収差、球面収差などの収差を補正するための収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
走査電子顕微鏡や透過電子顕微鏡において、高分解能の像を観察したりプローブ電流密度を上げることを目的として、電子光学系の中に収差補正装置が組み込まれている。この収差補正装置として、色収差を静電型4極子と磁場型4極子の組合せで補正し、球面収差を4段の8極子で補正する方式が提案されている。その原理については、次に示す文献に詳しく紹介されている。
【0003】
[1]H. Rose, Optik 33, Heft 1 (1971) 1−24
[2]J. Zach, Optik 83, No. 1 (1989) 30−40
[3]J. Zach and M. Haider, Nucl. Instr. and Meth. in Pyhs. Res.A 363 (1995) 316−325
ここで、上記した収差補正装置の原理の概略を、図1に基づいて説明する。図1において、対物レンズ7の前段、対物レンズ絞り8の後段に収差補正装置Cが配置されている。収差補正装置Cは、4段の静電型4極子1、2、3、4と、静電型4極子の2段目と3段目が作り出す電位分布と相似な磁位分布を作り出し、電界と重畳した磁界を形成する2段の磁場型4極子5、6と、4段の静電型4極子が形成する電界と重畳した電界を形成する4段の静電型8極子11,12,13,14とより構成されている。
【0004】
なお、図では第1段の静電型4極子1と第1段の静電型8極子11とを重ねて描かれている。同様に、第2段の静電型4極子2と、第2段の静電型8極子12と、第1の磁場型4極子5とが重ねて描かれている。同様に、第3段の静電型4極子3と、第3段の静電型8極子13と、第2の磁場型4極子6とが重ねて描かれている。同様に、第4段の静電型4極子4と、第4段の静電型8極子14とが重ねて描かれている。
【0005】
また、9は操作表示部、10は静電型4極子用電源、15は磁場型4極子用電源、17は対物レンズ用電源、18は静電型8極子用電源、19は制御部である。更に、FFPは対物レンズ7の前方焦点位置、PPは対物レンズの主面位置である。
【0006】
このような構成において、図の左側から入射した荷電粒子ビームは、4段の静電型4極子1、2、3、4と対物レンズ7によって、基準となる荷電粒子ビームの軌道が作られ、試料面20に荷電粒子ビームがフォーカスされる。この図1では、粒子線のX方向の軌道RとY方向の軌道Rを平面上に模式的に描いている。
【0007】
基準軌道とは、近軸軌道として、4極子1によってY方向の軌道Rが4極子2の中心を通り、4極子2によってX方向の軌道Rが4極子3の中心を通り、最後に4極子3、4と対物レンズ7によって荷電粒子ビームが試料面20にフォーカスされる軌道をいう。実際には完全なフォーカスのために、これらの相互調整が必要になる。
【0008】
次に、収差補正装置Cによる色収差補正について説明する。図1に示したような系で先ず色収差を補正するには、上記の基準軌道を変えないように静電型4極子2の電位φq2[V]と磁場型4極子5の励磁J[AT](あるいは磁位)が調整され、レンズ系全体としてX方向の色収差が0に補正される。同様に基準軌道を変えないように静電型4極子3の電位φq3[V]と磁場型4極子6の励磁J[AT]が調整され、レンズ系全体としてY方向の色収差が0に補正される。
【0009】
次に、球面収差補正(3次の開口収差補正)について説明する。球面収差を補正する場合には、X,Y方向の色収差の補正を行った後に、静電型8極子12の電位φO2[V]によってレンズ系全体としてX方向の球面収差を0に補正し、静電型8極子13の電位φO3によってY方向の球面収差を0に補正する。
【0010】
次に、XYが合成された方向の球面型収差を静電型8極子11、14で0に補正する。実際は交互の繰返し調整が必要になる。なお、4極子や8極子の電位や励磁の重畳は、1個の12極子を用いて、12極の各極子に印加する電位や励磁を変化させ2極子、4極子、6極子、8極子などの合成が行われ、実用化されている。このように、凸レンズとして動作する対物レンズ7の正の収差を、凹レンズと凸レンズの組合せとして動作する収差補正装置Cの負の収差によって打ち消すことが行われている。
【0011】
なお、球面収差補正は色収差を補正しなくても行うことができる。例えば、加速電圧が高い場合には、色収差は球面収差に比して相対的に影響が小さくなるから、球面収差だけを補正してもよい。
【0012】
以下の説明で、静電型の多極子で電位φ(あるいは電圧)という表現を用いた場合には、図2a、2bに示すような標準配列をした多極子の+側の値を表すものとする。同様に、磁場型の励磁Jという表現を用いた場合には、+側の励磁[AT]を表すものとする。
【0013】
図1に示した収差補正装置Cで、前記した収差補正の理論や、実際に行われた実験に基づく結果では、色収差と球面収差がほぼ完全に補正され、前記収差補正系の優秀性が認められる。
ところで図1に示した収差補正装置Cは4極子および8極子で構成されているが、これとは別に球面収差を補正するための6極子で構成された収差補正装置があり、例えば、透過電子顕微鏡の結像側(試料の像を拡大する側)に用いられる。更に、この6極子で構成した収差補正装置を透過電子顕微鏡の結像側に用いる場合には、収差補正装置と対物レンズとの間にトランスファーレンズを設け、収差補正装置のコマフリーポイント(コマ収差がゼロとなるような位置)と対物レンズのコマフリーポイントとを共役にして像の歪やコマ収差によるボケを減少させることが考えられている。また、このようなトランスファーレンズを設けることによって、収差補正装置と対物レンズ間の光学的な距離を長くすることなしに物理的な距離を確保することができる。
【0014】
例えば、収差補正装置として、2個の6極子による球面収差の補正装置を有し、色収差を補正する場合には、6極子の間に色収差補正装置を配置する方法が次の文献[4]に示されている。
【0015】
[4]H. Rose, Optik 84, No.3 (1990) 91−107
また、焦点距離がfの2個のトランスファーレンズを用いる方法として次の文献に示されている。
【0016】
[5]H. Rose, Optik 85, No.1 (1990) 19−24
[6]USP No.5,084,622
これらの文献に示されている光学系では、対物レンズのコマ収差がない位置ZOLC(結像系の場合、対物レンズの後方焦点位置にほぼ一致するといわれている)と収差補正装置のコマ収差がない面の位置ZCCとの距離をLとするとき、L=4fとし、対物レンズのコマ収差がない位置ZOLCと前段のトランスファーレンズの主面との距離をf、前段のトランスファーレンズと後段のトランスファーレンズの両主面間の距離を2f、後段のトランスファーレンズの主面と収差補正装置のコマ収差がない面の位置ZCCとの距離をfとしている。
【0017】
また、次の米国特許
[7]USP No.6,191,423
に紹介されているように、対物レンズのコマ収差がない面の位置ZOLC(結像系の場合、対物レンズの後方焦点位置にほぼ一致するといわれている)と収差補正装置のコマ収差がない面の位置ZCCとの距離をLとするとき、L=4fとし、収差補正装置のコマ収差がない面の位置ZCCとトランスファーレンズの主面との距離を2f、トランスファーレンズの主面と対物レンズのコマ収差がない面の位置ZOLCとの距離を2fとしている。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
前記した収差補正の理論や、実際に行われた実験に基づく結果では、図1に示した収差補正方式により、色収差と球面収差がほぼ完全に補正され、前記収差補正系の優秀性が認められたが、実用化の観点からは、収差補正系の安定度や印加電圧の範囲、さらには最適条件等に関しては、十分な配慮がなされていなかった。例えば、次に示すような問題点が生じている。
【0019】
第1には、図1に示すような構成において、加速電圧が低い場合には、仮に収差補正装置Cで発生させる補正のための収差量が多少大きかったとしても、加速電圧が低いから静電型の多極子(4極子や8極子など)への印加電圧がさほどに高くは設定されないので、多極子の耐電圧に問題が生じることはない。しかし、この光学系において加速電圧が低い状態から加速電圧が高い状態に装置の条件を変更した場合には、当然補正のための補正電圧は加速電圧が低い場合よりも大きくなり、従って静電型の多極子への印加電圧が高くなり、多極子の耐電圧を超えてしまう恐れが生じる。
そうかといって、加速電圧が高い場合に多極子の耐電圧を超えないように装置を設計すると、加速電圧が低い場合には当然多極子への印加電圧が低くなり、印加電圧へのノイズや電源変動等の影響を受け易くなってしまい、適正な収差補正が困難になる。
一方、荷電粒子ビームをフォーカスして試料に照射する荷電粒子ビーム装置、例えば、汎用の走査電子顕微鏡や元素分析機能を備えた電子プローブ装置等においては、加速電圧は低加速電圧から高加速電圧まで必要とするので、上記のことは実用上の問題となる。
【0020】
第2には、より性能を高めるためには、色収差や球面収差が補正された後に残る高次収差、例えば5次の開口収差係数C5(粒子ビームの試料への入射角αの5乗に比例して収差が発生する)や4次の収差係数である3次開口・色収差係数C3c(試料への入射角αの3乗に比例し、粒子ビームのエネルギー幅に比例する)などの高次の収差係数も考慮する必要がある。
【0021】
第3には、荷電粒子ビームをフォーカスして試料に照射する荷電粒子ビーム装置においては、収差補正装置Cと対物レンズ7との間には、偏向装置や非点補正装置等を配置するための空間を必要とする。しかし、単にそのための空間(距離)を空けるだけでは、下記のような問題が生じてしまう。すなわち、収差の補正は、収差補正装置Cが収差補正を行っていないときの試料面上における収差の大きさを収差補正装置Cによって逆の収差を試料面上において発生させるようにして行われるが、単に両者間の空間(距離)を空けるだけだと、収差補正装置Cの収差と対物レンズ7の収差との合成によって発生する高次の収差(C5やC3cなど)が、大きな値になってしまう。つまり、これらの高次の合成収差は両者間の距離に比例して増大する。
【0022】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、その目的は、安定かつ最適な収差補正を実現し、荷電粒子ビームの最小プローブ径を得ることができる荷電粒子ビーム装置の収差補正装置を実現するにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明に基づく収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置の基本的な構成は、(a)荷電粒子ビーム装置の光学系内部に配置された、4段の静電型4極子と4段の静電型4極子の中央の2段の静電型4極子の電位分布と相似な磁位分布を重畳させる2段の磁場型4極子とを有する収差補正装置と、(b))収差補正装置の下流に配置され、試料に照射される荷電粒子ビームをフォーカスするための対物レンズと、(c)収差補正装置と対物レンズとの間に配置され、収差補正装置によって形成される像面を対物レンズの物面の位置に伝達するための少なくとも1段のトランスファーレンズより成るトランスファーレンズ系と、(d) 4段の静電型4極子の電源と2段の磁場型4極子の電源と対物レンズの電源とトランスファーレンズ電源と、(e)荷電粒子ビームに所定のエネルギーを与える加速電圧や対物レンズと試料との間の距離である作動距離のうちの少なくとも1つを変更する操作部と、(f) 操作部の操作または設定に基いて4段の静電型4極子の電源と2段の磁場型4極子の電源と対物レンズの電源とトランスファーレンズ電源とを制御する制御部と、を備えたことを特徴としている。
【0024】
特に、収差補正装置と対物レンズとの間に少なくとも1段のトランスファーレンズより成るトランスファーレンズ系を配置し、トランスファーレンズ系と対物レンズとの合成倍率を調整可能としたことを特徴とする。
【0025】
更に、4段の静電型4極子の電位分布に8極子電位を重畳させる4段の静電型8極子と、4段の静電型8極子に電圧を供給する電源と、操作表示部の操作または設定に基づいて前記4段の静電型8極子の電源を制御する制御部を備えたことを特徴とする。
【0026】
本発明に基づく他の収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置は、前記基本的な構成に加えて、トランスファーレンズ系が拡大系あるいは縮小系であることを特徴とする。
【0027】
すなわち、収差補正装置の出射点近傍を物面と見なし、対物レンズの前方焦点付近を像面と見なしたとき、トランスファーレンズ系の倍率が1/3倍から3倍となるようにトランスファーレンズ系のレンズを配置した。
【0028】
あるいは、収差補正装置の最終段の多極子の主面と対物レンズの前方焦点との中間点を通って光軸に垂直な面に対して、トランスファーレンズ系を非対称に配置した。
【0029】
この様な構成において、トランスファーレンズ系と対物レンズとの合成倍率を調整することによって、試料面における5次の開口収差係数C5あるいは4次の収差である3次開口色収差係数C3cの大きさ(絶対値)が最小となるように成した。
【0030】
あるいは、試料面における5次の開口収差係数C5のX,Y方向の成分C5,C5あるいは4次の収差である開口色収差係数C3cのX,Y方向の成分C3c,C3cの大きさが同程度となるように、収差補正装置に対するトランスファーレンズ系と対物レンズの位置を定めた。
【0031】
更に、上記各種の構成に加えて、収差補正装置の多極子のフォーカス電位、色収差補正電位、球面収差補正電位に5次の収差係数を補正するための12極子電位を重畳した。
【0032】
また、本発明に基づくその他の収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置は、試料面に電圧を印加するための電源を備え、電圧の印加により試料面に照射される荷電粒子ビームを減速させることによって収差補正前の収差係数を小さくした。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図5は本発明の基本構成(第1の実施の形態)を示しており、荷電粒子ビームの一部をプローブとして試料に照射する装置において、色収差を補正するために、4段の静電型4極子1、2、3、4と中央の2段の静電型4極子2、3の電位分布と相似な磁位分布を重畳させる2段の磁場型4極子5、6と、対物レンズ7と、トランスファーレンズ27aとトランスファーレンズ27bと、光路の一部に設けられた対物絞り8と、荷電粒子ビームに所定のエネルギーを与えるための加速電圧や対物レンズ7と試料面20間の距離である作動距離を変更する操作表示部9と、4段の静電4極子1〜4に電圧を供給する電源10と、2段の磁場型4極子5、6を励磁する電源15と、対物レンズとトランスファーレンズ用の電源17と、操作表示部9の操作または設定に基づいて前記電源10、15、17を制御する制御部19が備えられている。
【0034】
また、球面収差を補正するために、前記した各構成要素に加えて4段の静電型4極子1、2、3、4の電位分布に8極子電位を重畳させる4段の静電型8極子11、12、13、14と、4段の静電型8極子に電圧を供給する電源18と、操作表示部9の操作または設定に基づいて前記電源18を制御する制御部19が備えられている。
【0035】
このような収差補正装置Cは、例えば図12に示す如くに走査電子顕微鏡などに組み込まれる。100は内部が真空雰囲気にされた鏡筒である。鏡筒100内には、電子ビームを発生し、加速電圧によって電子にエネルギーを与える電子銃101、電子銃101で発生した電子ビームの電流を適当な値に制限するためのコンデンサレンズ102と対物絞り103、収差補正装置C、トランスファーレンズ系T、電子ビームを二次元的に偏向して走査するための偏向器104、電子ビームをフォーカスして試料106に照射する対物レンズ105、試料106を載置して所望の場所で電子ビーム照射・走査されるように試料106を任意に駆動できる試料ステージ107、電子ビームの照射・走査に伴って試料106から発生する二次電子などの信号を検出する検出器108等が備えられている。
ただし、実際の装置ではトランスファーレンズ系Tと偏向器104などの配置関係は必ずしもこの図とは一致しない。なお、電子銃101から対物レンズ107までを電子ビームの光学系と呼ぶことがある。また更に、試料ステージ107を介して試料106に電子ビームに対する減速電位を印加いている場合は、電子銃101から試料106までを電子ビームの光学系と呼ぶことがある。
【0036】
図12は収差補正装置Cが走査電子顕微鏡などに組み込まれた例であるが、走査電子顕微鏡と同じように電子ビームを二次元的に走査して試料に照射する機能を持たせた透過電子顕微鏡に収差補正装置Cを組み込んだ例については、図12の試料106を透過した電子ビームによって形成された透過像を拡大するためのレンズ系と拡大された透過像を投影する蛍光板等が試料ステージ107の下方に設けらていると考えればよい。
【0037】
更に、図5において対物レンズ7とトランスファーレンズ系の位置関係を述べる。まず、焦点距離fが得られるトランスファーレンズ27aと前記静電型4極子4の主面との距離Lをf程度とする。また、焦点距離fが得られるトランスファーレンズ27bとトランスファーレンズ27aの主面との距離Lをf+f程度とする。更に、対物レンズ7を、トランスファーレンズ27bの主面と対物レンズ7の前方焦点位置FFPとの距離Lがf程度となるように配置する。
【0038】
上記した構成により、粒子プローブは、対物レンズ7とトランスファーレンズ用の電源17の制御によって、試料面20にフォーカスされる。ここで、f程度、f+f程度、f程度という表現は、機械的な許容精度を示すものではなく、装置を都合良く構成するために、意図的にこれらの基準の値から10〜20%程度ずらして配置しても、性能には影響しないように、トランスファーレンズ27a、27b、対物レンズ7の位置を構成できることを示すものである。
【0039】
ところで、図5の極く特殊な場合として、図3に示すようなトランスファーレンズの配置が考えられる。すなわち、焦点距離fが得られるトランスファーレンズ27aと前記静電型4極子4の主面との距離Lをfとする。同じく焦点距離fが得られるトランスファーレンズ27bとトランスファーレンズ27aの主面との距離Lをf+f=2fとする。更に、対物レンズ7を、トランスファーレンズ27bの主面と対物レンズ7の前方焦点位置FFPとの距離Lがfとなるように配置する。なお、この場合、トランスファーレンズ27aとトランスファーレンズ27bとによって形成されるトランスファーレンズ系の倍率は1倍である。
【0040】
そして、この図3に示すトランスファーレンズの配置は、先に従来技術として示した6極子とトランスファーレンズとを組合せて透過電子顕微鏡の結像側(試料の像を拡大する側)の場合のトランスファーレンズの配置に類似している。実は、透過電子顕微鏡の結像側に設けた収差補正装置の場合には、試料の透過像は有限の大きさ(面積)があるため、トランスファーレンズの配置によっては、光軸外の像に歪やコマ収差によるボケ等の不都合が生じる。この歪やボケ等を減少させるためには、トランスファーレンズの焦点距離fとトランスファーレンズの配置の関係とが厳密に保たれる必要がある。
これに対して、フォーカスしたビームを試料面20に照射する本発明が適用される装置の場合には、トランスファーレンズの焦点距離fとトランスファーレンズの配置の関係とが厳密でなくとも、上記のごとき不都合は生じないことを、本発明者らは発見した。この発見によれば、第1にトランスファーレンズの配置が自由になり、第2にトランスファーレンズをある配置にした場合において、トランスファーレンズの倍率を変化させても支障が生じないということが分かる。
ただし、配置をあまり大きくずらすと、その光学系の収差が大きくなるので、トランスファーレンズ系の位置のずらし得る限界はトランスファーレンズの焦点距離の50%程度にとどめるのが無難である。すなわち図3の場合でいえば、トランスファーレンズ系の位置をトランスファーレンズの焦点距離の50%程度ずらすと、実現可能なトランスファーレンズ系の倍率は、1/3倍程度から3倍程度ということになる。
同じく、トランスファーレンズの倍率にも、下記のような制限がある。第1に、トランスファーレンズの倍率を変化させると、試料表面における荷電粒子ビームのフォーカスが変化してしまうから、対物レンズの倍率を調節して荷電粒子ビームを試料表面に丁度フォーカスさせる操作が必要である。第2に、トランスファーレンズの倍率を変化させると、トランスファーレンズの倍率と対物レンズの倍率との合成倍率が変わり、試料表面の位置における補正量が変ってしまう。従って、試料表面の位置において収差を丁度打消す補正量となるように収差補正装置で発生される補正量を再度調節する等の操作が必要である。本発明においては、この制限は、むしろ欠点ではなく課題を解決するための利点として活用している。
以下、図5に示した基本構成の動作について、図6を参照して説明する。
【0041】
説明を単純にするために、図5の構成における収差補正装置C、トランスファーレンズ27a,27b、対物レンズ7の位置関係は、対物レンズ・トランスファーレンズ電源17を制御して設定したトランスファーレンズ27a,27bの各々の焦点距離f,fに対して、次に示す関係とする。
【0042】
=f,L=f+f,L=f            ・・・(1)
即ち、これは図5の特殊な場合である。
【0043】
まず、収差補正装置における粒子ビームの基準軌道の作り方は、前記従来技術の項で示した方法により行なう。すなわち、近軸軌道(収差が無いとして考えた軌道)として、4極子1によってy方向の軌道Rが4極子2の中心を通り、4極子2によってX方向の軌道Rが4極子3の中心を通り、4極子3、4によって、4極子4を出射した荷電粒子ビームのX,Y方向の像面位置が一致するように制御する。この状態は、X,Y方向のフォーカス状態が同時に合うようにすることで調整される。
【0044】
次に、トランスファーレンズ27aに入射するビームは、光軸に対して平行になるように、収差補正装置を調整する。このようにすれば、トランスファーレンズ27aから出射したビームは、トランスファーレンズ27aの主面からfだけ離れたフォーカス位置TFPを通り、トランスファーレンズ27bに入射する。トランスファーレンズ27bから出射したビームは、光軸に対して平行(但し、図5は上記の式(1)の関係とは必ずしも同じではないので平行には描いていない)になり、対物レンズ7に入射する。
【0045】
なお、トランスファーレンズ27aに入射するビームを、光軸に対して「平行」になるように、収差補正装置Cを調整することは必要条件ではない。すなわち、設計上の焦点距離になるようにトランスファーレンズや対物レンズを設定し、前記のフォーカスがX,Y方向で合えば、平行にこだわる必要は全くなく、「平行」としたのは、動作説明がわかりやすくなるためである。
【0046】
次に、対物レンズ・トランスファーレンズ電源17を制御して、ビームを試料面20にフォーカスさせる。このような近軸軌道が得られるレンズ動作は、従来方式を応用した標準的な考え方に基づいている。式(1)を満たすレンズ配置のトランスファー系の共役点に対する倍率MTLはf=fのとき1になる。この状態で色収差や球面収差を補正する場合には、前記した従来例で示した方法、あるいは、先願の特許出願2001−328776号に示された方法で行なうことができる。
【0047】
上記の先願の特許出願2001−328776号に示された方法について簡単に説明しておく。収差の補正量の調節は、従来の方法では、収差補正装置Cの各多極子に印加する電位や励磁を調節して行うが、特許出願2001−328776号の方法では、対物レンズ7と対物レンズ7の上流直近のレンズまたはレンズ系(本発明においてはトランスファーレンズ27bまたはトランスファーレンズ27aと27b)との合成倍率も合せて調節する。収差補正装置Cの調節と対物レンズ7と直近レンズの合成倍率の調節とを併せて行うことによって、調節できる収差の補正量の範囲が大幅に広げることができる。ただし、以下では従来例での方法で説明する。
【0048】
すなわち、色収差を補正する場合には、上記の基準軌道を変えないように静電型4極子2の電位φq2[V]と磁場型4極子5の励磁J[AT](あるいは磁位)が調整され、レンズ系全体としてX方向の色収差が0に補正される。同様に基準軌道を変えないように静電型4極子3の電位φq3[V]と磁場型4極子6の励磁J[AT]が調整され、レンズ系全体としてY方向の色収差が0に補正される。
【0049】
次に、球面収差を補正する場合には、X,Y方向の色収差の補正を行った後に、静電型8極子12の電位φO2[V]によってレンズ系全体としてX方向の球面収差を0に補正し、静電型8極子13の電位φO3によってY方向の球面収差を0に補正する。次に、XYが合成された方向の球面型収差を静電型8極子11、14で0に補正する。実際は交互の繰返し調整が必要になる。
【0050】
次に、収差補正装置Cとトランスファーレンズ27aの制御はそのままにして、対物レンズ7の焦点距離fOLとトランスファーレンズ27bの焦点距離fを調整して、粒子ビームが試料面20にフォーカスが合うように、レンズ系の総合倍率M,Mを変える。この新しい基準軌道を変えないように、前記の従来技術の項で説明した収差補正装置の色収差補正の方法や、球面収差の補正方法、あるいは、先願の特許出願2001−328776号に示された方法で色収差や球面収差を補正する。
【0051】
このとき、色収差・球面収差補正後の5次の開口収差係数C5や3次開口・色収差係数C3cをトランスファーレンズ27bの焦点距離fに対してプロットしたものが図6である。この例では、fがLとは異なるfのところで最小となっている。すなわち、収差補正装置Cの構造によっては、収差補正装置Cの動作条件の方がC5やC3cに大きく寄与し、必ずしも収差補正装置の主面付近が対物レンズ7の前方焦点と共役になるようにするのがよいとはいえないことを示している。
【0052】
このことは、C5やC3cを減らす目的では、トランスファーレンズ27a,27bの配置としては、図3あるいは図3のトランスファーレンズと類似な適用例の米国特許USP No.5,084,622に示されたような、厳密な位置関係は必要がなく、むしろ、装置構成上の都合でトランスファーレンズ27a,27bを配置し、トランスファーレンズ27bと対物レンズ7の焦点距離を調整した方が良いことを示している。
【0053】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態では、第1にトランスファーレンズ27a,27bを設計の都合に合せて配置可能にし、第2にトランスファーレンズの焦点距離を可変にした。主として、第2の理由によって、高次の収差を最適に補正できるようにしている。更に、第2の理由に伴って、トランスファーレンズ系の倍率と対物レンズの倍率との合成倍率が可変になった。これを利用して、合成倍率を調節して試料面上での収差量を増減できるので、加速電圧等の変更に伴う収差補正装置Cの多極子への印加電圧等の増減の幅を小さくできるようになった。このようにして、制御部19は、操作表示部9で設定されたプローブの加速電圧V、作動距離WD、プローブ電流Iなどに対し、操作表示部9で計算された(または記憶された)C5またはC3cが最小となるような動作条件を収差補正装置C、トランスファーレンズ27b、対物レンズ7に設定する。ここで、トランスファーレンズ27aの焦点距離は固定でもかまわない。
【0054】
なお、本基本構成では、レンズ系全体の長さを所定の長さに制限した場合、トランスファーレンズ27bと対物レンズ7との間隔が比較的小さくなる。このため、本来収差補正装置Cと対物レンズ7との間に配置すべき偏向装置や非点補正装置などを全てトランスファーレンズ27bと対物レンズ7との間に配置することは好ましくない。そこで、例えば、偏向装置はトランスファーレンズ27aと27bの間に配置し、非点補正装置は収差補正装置Cとトランスファーレンズ27aとの間に配置するなどが好ましい。
【0055】
以上本発明の基本構成(第1の実施の形態)について図5、図6に基づいて説明したが、この実施の形態では、トランスファーレンズ27aの焦点距離がfで、4段目静電型4極子4の主面とトランスファーレンズ27aの主面との間の距離Lがfとなるような配置になる例について詳説した。
【0056】
しかし、本発明の基本構成(第1の実施の形態)の図5において、図7に示すように、収差補正装置の動作条件によっては、C5のX,Y方向成分C5,C5や、C3cのX,Y方向成分C3c,C3cの大きさ(絶対値)が等しくなるところは、必ずしもL=fのところにあるとは限らない。
【0057】
したがって、C5やC3cのX,Y成分を同時に0にできない場合には、粒子プローブのボケができるだけ対称的になるように(すなわち、X成分によるボケもY成分によるボケも同程度に小さくなるような)条件を選び、X,Y方向の成分の大きさが同程度になるようなL=Lを選ぶことができる。これを第2の実施の形態とする。ただし、Lは可変にすることが実際上は困難であるから、予めLがどの程度であるかを計算または実験等によって求めておき、これを設計上の距離Lとすればよい。また、図6のように、最小になるf=fを求めておき、この条件下でLを設定することによってL=Lを得るようにすることもできる。
【0058】
前記した第1と第2の実施の形態では、トランスファーレンズを2段用いた系について説明したが、1段のトランスファーレンズを用いても同様の効果を得ることができる。これを第3の実施の形態として図8を用いて説明する。この場合には、次の2つの条件が前提となる。まず第1に、焦点距離fが得られるトランスファーレンズ27bと前記4段目静電型4極子4の主面との距離Lを2f程度とする。
【0059】
第2に、対物レンズ7をトランスファーレンズ27bの主面と対物レンズ7の前方焦点位置FFPとの間の距離Lが2f程度となるように配置する。このような条件下で、対物レンズ・トランスファーレンズ電源17の制御によって、粒子プローブは試料面20にフォーカスされる。
【0060】
ここで2f程度という表現は、機械的な許容精度を示すのではなく、装置を都合良く構成するために、意図的にこれらの基準の値から、10〜20%程度ずらして配置しても、性能には影響しないように、トランスファーレンズ27bと対物レンズ7の位置を決定できることを示すものである。
【0061】
ところで、図8の極く特殊な場合として、図4に示すようなトランスファーレンズの配置が考えられる。すなわち、焦点距離fが得られるトランスファーレンズ27bと前記静電型4極子4の主面との距離Lを2fとする。更に、対物レンズ7を、トランスファーレンズ27bの主面と対物レンズ7の前方焦点位置FFPとの距離Lが2fとなるように配置する。なお、この場合、トランスファーレンズ27bとによって形成されるトランスファーレンズ系の倍率は1倍である。 この場合も、図4に示すトランスファーレンズの配置を図8のようにずらすことが可能であるが、先に述べた理由によって、その限界はトランスファーレンズの焦点距離と同程度にとどめるのが無難である。すなわち図4の場合でいえば、トランスファーレンズの位置をトランスファーレンズの焦点距離と同程度ずらすと、実現可能なトランスファーレンズ系の倍率は、1/3倍程度から3倍程度ということになる。
【0062】
次に、図8を用いて、従来の考え方と比較しながら、高次の収差係数を最小とするための動作原理を説明する。説明を単純にするために、収差補正装置C、トランスファーレンズ27b、対物レンズ7の位置関係は、対物レンズ・トランスファーレンズ電源17を制御して設定したトランスファーレンズ27bの焦点距離fに対して、下記のように配置したとする。
【0063】
=2f、  L=2f                 ・・・(2)
まず、収差補正装置における粒子ビームの基準軌道の作り方は、従来技術の項で説明した方法で行なう。次に、トランスファーレンズ27bに入射するビームは、トランスファーレンズ27bの主面から収差補正装置よりにfだけ離れた光軸上の点CFPを通過するように(収差補正装置のフォーカス位置がCFPになるように)、収差補正装置Cを調整する。このようにすれば、トランスファーレンズ27bを出射するビームは、光軸に対して平行(但し、図8は上記の式(2)の関係とは必ずしも同じではないので平行には描いていない)となり、対物レンズ7に入射する。
【0064】
次に、対物レンズ・トランスファーレンズ電源17を制御してビームを試料面20にフォーカスさせる。このような近軸軌道が得られるレンズ動作は、従来方式を応用した標準的な考え方に基づいている。この場合のトランスファーレンズ系の共役点に対する倍率MTLは1になる。この状態で色収差や球面収差を補正する場合には、従来技術で示した方法、あるいは、先願の特許出願2001−328776号に示された方法で行なうことができる。
【0065】
次に、対物レンズ7の焦点距離fOLとトランスファーレンズ27bの焦点距離fを調整して、粒子ビームが試料面20にフォーカスが合う条件を維持して、レンズ系の総合倍率M,Mを変える。この新しい基準軌道を変えないように、収差補正装置を用いた従来技術の項で示した方法、あるいは、先願の特許出願2001−328776号に示された方法で色収差や球面収差を補正する。
【0066】
このとき、色収差・球面収差補正後の5次の開口収差係数c5や、3次開口色収差係数C3cをトランスファーレンズ27bの焦点距離fに対してプロットすると、図6と同様に、fがLとは異なるfのところで最小になっつている。すなわち、収差補正装置の構造によっては、収差補正装置の動作条件の方がC5やC3cに大きく寄与し、必ずしも収差補正装置Cの主面付近が対物レンズ7の前方焦点と共役になる必要はない。
【0067】
このことは、C5やC3cを減らす目的では、トランスファーレンズ27bの配置としては、図4に示すような厳密な位置関係は必要がなく、むしろ装置構成上の都合でトランスファーレンズ27b配置し、トランスファーレンズ27bと対物レンズ7の焦点距離を調整した方が良いことを示している。
【0068】
なお念のため下記を補足しておく。図7におけるfは、収差補正装置Cに隣接する側のトランスファーレンズ27aの焦点距離を示すが、図8においては27aは存在しないので、トランスファーレンズ27bの焦点距離を示している。すなわち、図8が示す第3の実施の形態においては、図7のfは図8のfに相当し、図7のLは図8のLに相当する。
【0069】
以上のように、これまでに示した本発明の第1、第2、第3の実施の形態では、操作表示部9で設定された加速電圧V、作動距離WD、プローブ電流I等に対し、操作表示部9で計算された(または記憶された)、C5またはC3cが最小となるような動作条件を収差補正装置Cとトランスファーレンズ27b、対物レンズ7に設定するようにしている。
【0070】
なお、本発明の第3の実施の形態で示した構成では、レンズ系全体の長さを所定の長さに制限した場合、トランスファーレンズ27bと対物レンズ7との間隔が比較的小さくなるため、偏向装置や非点補正装置などを全てトランスファーレンズ27bと対物レンズ7との間に入れられない場合には、収差補正装置Cとトランスファーレンズ27bの間などが、それらの装置を配置するために利用される。
【0071】
図5〜8を参照して説明した各実施の形態では、トランスファーレンズ系の共役点に対する倍率MTLが1付近になるような構成を考えてきたが、これ以外の倍率になるように構成できることを第4の実施の形態として図9を用いて以下に説明する。この場合には、焦点距離fが得られるトランスファーレンズ27bと4段目静電型4極子4の主面との間の距離Lを1.5f程度とし、対物レンズ7をトランスファーレンズ27bの主面と対物レンズ7の前方焦点位置FFPとの距離Lが3f程度になるように配置し、対物レンズ・トランスファーレンズ電源17の制御によって、粒子プローブは試料面20にフォーカスされる。
【0072】
ここで、1.5fb,3fb程度という表現は、機械的な許容精度を示すものではなく、装置を都合良く構成するために意図的にこれらの基準の値から10〜20%程度ずらして配置しても、性能には影響しないように、トランスファーレンズ27b、対物レンズ7の位置を構成できることを示す。
【0073】
以下に、図9を用いて、従来の考え方と比較しながら、高次の収差係数を最小にするための動作原理を説明する。説明を単純にするために、収差補正装置C、トランスファーレンズ27b、対物レンズ7の位置関係は、対物レンズ・トランスファーレンズ電源17を制御して設定したトランスファーレンズ27bに対して、次のように配置したとする。
【0074】
=1.5f,  L=3f              ・・・(3)
即ち、これは図9の特殊な場合である。
【0075】
まず、収差補正装置Cにおける粒子ビームの基準軌道の作り方は、従来技術の項で示した方法、あるいは、先願の特許出願2001−328776号に示された方法で行なう。次に、トランスファーレンズ27bに入射するビームは、トランスファーレンズ27bの主面から収差補正装置Cよりにfだけ離れた光軸上の点CFPを通過するように(収差補正装置のフォーカス位置がCFPになるように)、収差補正装置Cを調整する。
【0076】
このようにすれば、トランスファーレンズ27bを出射するビームは、光軸に対して平行(但し、図9は上記の式(3)の関係とは必ずしも同じではないので平行には描いていない)になり、対物レンズ7に入射する。次に、対物レンズ・トランスファーレンズ電源17を制御して、ビームを試料面20にフォーカスさせる。この場合のトランスファーレンズ系の共役点に対する倍率MTLは2になる。この状態で色収差や球面収差補正後の5次の開口収差係数C5や3次開口・色収差係数C3cの大きさを最小にする方法は、前記した図8に基づいて説明した第3の実施の形態と同様に行なうことができる。
【0077】
なお、第4の実施の形態においては、1<MTLになるようなL、Lを用いるので、第3の実施の形態と比較して、C5やC3cは増大する。しかし、トランスファーレンズ27bをもたないで、収差補正装置Cと対物レンズ7との距離がL+L(あるいは4f)の場合の装置と比較すると、L+L(あるいは4f)の大きさにもよるが、トランスファーレンズを用いた方がC5やC3cを小さくでき、かつその空間にトランスファーレンズ27bと対物レンズ7との間に偏向装置や非点補正装置を配置することができるので都合が良い。
【0078】
なお、図8や図9の説明では、収差補正装置Cとトランスファーレンズ27bとの間に収差補正装置Cの像面CFPがある例を示したが、これは図4のようにトランスファーレンズ27bと対物レンズ7の間(TF)にあってもよいことは明らかである。
【0079】
同じく、図13に2段のトランスファーレンズから成るトランスファーレンズ系の倍率が1以外の倍率になるように構成できる第5の実施の形態を以下に説明する。収差補正装置Cの出射点と対物レンズ7の前方焦点との距離が4fとした場合に、焦点距離fが得られるトランスファーレンズ27aと4段目の静電型4極子4の主面との間の距離Lをf=0.5f程度とし、焦点距離fが得られるトランスファーレンズ27bとトランスファーレンズ27aの主面との間の距離Lをf+f=2f程度とし、対物レンズ7をトランスファーレンズ27bの主面と対物レンズ7の前方焦点位置FFPとの距離Lがf=1.5f程度になるように配置し、対物レンズ・トランスファーレンズ電源17の制御によって、粒子プローブは試料面20にフォーカスされる。このとき、トランスファーレンズ系による倍率、すなわち収差補正装置Cの出射位置に対する対物レンズ7の前方焦点位置におけるトランスファーレンズ系による倍率は3である。
【0080】
ここで、0.5f,2f,1.5f程度という表現は、機械的な許容精度を示すものではなく、装置を都合良く構成するために意図的にこれらの基準の値から10〜20%程度ずらして配置しても、性能には影響しないように、トランスファーレンズ27a,27b、対物レンズ7の位置を構成できることを示す。
【0081】
以下に、図13を用いて、従来の考え方と比較しながら、高次の収差係数を最小にするための動作原理を説明する。説明を単純にするために、収差補正装置C、トランスファーレンズ27a,27b、対物レンズ7の位置関係は、対物レンズ・トランスファーレンズ電源17を制御して設定したトランスファーレンズ27a,27bに対して、次のように配置したとする。
【0082】
=0.5f,L=2f,L=1.5f            ・・・(4)
即ち、これは図13の特殊な場合である。
【0083】
まず、収差補正装置Cにおける粒子ビームの基準軌道の作り方は、従来技術の項で示した方法、あるいは、先願の特許出願2001−328776号に示された方法で行なう。次に、トランスファーレンズ27aに入射するビームは、光軸に対して平行になるように、収差補正装置Cを調整する。このようにすれば、トランスファーレンズ27aから出射したビームは、トランスファーレンズ27aの主面から0.5fだけ離れたフォーカス位置TFPを通り、トランスファーレンズ27bに入射する。トランスファーレンズ27bから出射したビームは、光軸に対して平行(但し、図13は上記の式(4)の関係とは必ずしも同じではないので平行には描かれていない)になり、対物レンズ7入射する。
【0084】
次に、対物レンズ・トランスファーレンズ電源17を制御して、ビームを試料面20にフォーカスさせる。この場合のトランスファーレンズ系の共役点に対する倍率MTLは、3になる。この状態で色収差や球面収差補正後の5次の開口収差係数C5や3次開口・色収差係数C3cの大きさを最小にする方法は、前記した図8に基づいて説明した第3の実施の形態と同様に行なうことができる。
【0085】
なお、第5の実施の形態においては、1<MTLになるようなL、L、Lを用いるので、第3の実施の形態と比較して、C5やC3cは増大する。しかし、トランスファーレンズ27a,27bをもたないで、収差補正装置Cと対物レンズ7との距離がL+L+L(あるいは4f)の場合の装置と比較すると、L+L+L(あるいは4f)の大きさにもよるが、トランスファーレンズを用いた方がC5やC3cを小さくでき、かつその空間にトランスファーレンズ27aと27bおよび27bと対物レンズ7との間に偏向装置や非点補正装置を配置することができるので都合が良い。
【0086】
図10に第6の実施の形態を示す。この実施の形態において、試料20に入射する粒子プローブを試料近傍で減速するために、試料面またはその近傍に粒子プローブを減速する電位を与える構造を、前記した第1〜第5の実施の形態と組み合わせている(ただし、図10には第3の実施の形態との組み合わせを代表例として示した)。減速による効果は、例えば、次の文献に示されている。
【0087】
[8]E. Munro et al., J. Vac. Sci. Technol. B6(6), Nov/Dec (1988) 1971−1976
すなわち、この文献において、最も現実的な例として、試料面20に電圧を印加して、入射エネルギーを減速電圧によって1/4にまで減速したとき、色収差係数Ccは約1/4.5に減衰し、球面収差係数Csは約1/2.5に減衰できることを示している。また、試料面20の電圧を上げて、更に減速の度合いを大きくすると、効果は更に大きくなることも示されている。
【0088】
本発明の第6の実施の形態において、試料面またはこの近傍に粒子プローブを減速するための電圧を供給するため、減速電圧電源30を設け、前記した性質を利用すると、収差補正前の対物レンズ7の色収差係数Ccおよび球面収差係数Csを小さくすることができる。
【0089】
これによって、収差補正後に合成収差として発生する高次収差係数である前記のC5やC3cも小さな値にすることができる。一例として、入射エネルギーを1/4にまで減速した場合、これらの収差係数を1/5〜1/10まで減少可能であることが、シミュレーションにより確認できた。
【0090】
したがって、トランスファーレンズ27bと本減速電圧電源30を用いることにより、これらを全く用いない場合と比較して、収差補正後の高収差係数のC5やC3cは約2桁程度減少させることができ、これによって、更に細かいプローブ径を得ることが可能になる。
【0091】
図11に本発明の第7の実施の形態を示す。この実施の形態では、前記した第6の実施の形態の効果を更に生かすことができる。すなわち、図10に示した第6の実施の形態では、5次の開口収差係数が2桁のオーダーで減少できる構成を説明したが、ここまで小さな値となると、12極子場を用いた5次の開口収差補正が現実的なものとなる(例えば、[9]H.Rose, Optik 34, Heft 3 (1971) 285−311)。すなわち、詳細には述べないが、4極子場や8極子場は、12極子またはそれ以上の多極子を用いて各極子の作る場を合成して得られたものであるから、この12極子またはそれ以上の多極子を本来の5次の開口収差の補正のための12極子として使用することができる。
【0092】
したがって、上述のごとく働く1段目〜4段目の12極子31〜34と、これに12極子用の電源35を接続すれば、12極子による5次の開口収差の補正が可能となる。この図11では、第1段の静電型4極子1と第1段の静電型8極子11と第1段の静電型12極子31が重ねて描かれている。同様に、第2段の静電型4極子2と、第2段の静電型8極子12と、第1の磁場型4極子5と、第2段の静電型12極子32が重ねて描かれている。同様に、第3段の静電型4極子3と、第3段の静電型8極子13と、第2の磁場型4極子6と、第3段の静電型12極子33が重ねて描かれている。同様に、第4段の静電型4極子4と、第4段の静電型8極子14と、第4段の静電型12極子34が重ねて描かれている。
【0093】
以下、この方法を説明する。5次の開口収差の補正法は、従来技術の球面収差補正と同様な方法で実施することができる。すなわち、最も基本的な(初歩的な)方法として、次のステップによる調整手段が用いられる。
【0094】
第1のステップでは、C5のX成分であるC5を2段目の12極子32で補正する。この時、Y方向の軌道は、2段目12極子の中心を通過しているので、Y方向の成分であるC5への影響は少ない。
【0095】
次に第2のステップでは、C5のY成分であるC5を3段目の12極子33で補正する。このとき、X方向の軌道は、3段目の12極子の中心を通過しているので、X方向の成分であるC5への影響は少ない。
【0096】
次に第3のステップでは、X,Y方向が合成された成分を1段目と4段目の12極子31、34で補正する。例えば、試料に入射する粒子プローブのX,Y方向の開き角α,αに対して、開口収差がα α に比例する成分を1段目の12極子31で補正し、開口収差がα α に比例する成分を4段目の12極子34で補正するようにしてもよい。
【0097】
次に第4のステップでは、前記第3のステップの補正によって、C5(収差がα に比例する係数)やC5(収差がα に比例する係数)は、影響を受けるので、再度第1ステップ、第2ステップの調整を行なう。また、この調整によってα α およびα α に比例する成分は影響を受けるので、再度第3ステップの調整を行なう。実際にはこの交互調整を繰り返す。
【0098】
この第1から第4のステップを数回繰り返すことによって、12極子場による収差補正前の値に対して、収差補正後は5次の開口収差係数を更に1/100まで減少させることができる。これは実質的に5次の全ての開口収差係数を実質的に0にできることを示している。
【0099】
このようにすれば、5次の開口収差係数C5の影響を受けないため、実質的にプローブ径を決める収差は、理想的には回折収差とC3cのみとなり、著しい効果が得られる。
【0100】
ところで、図11において、第1段の静電型4極子1と第1段の静電型8極子11を静電型12極子に置き換えて静電型12極子31と兼用し、同様に、第2段の静電型4極子2と第2段の静電型8極子12、第3段の静電型4極子3と第3段の静電型8極子13、第4段の静電型4極子4と第4段の静電型8極子14をそれぞれ静電型12極子に置き換えて静電型12極子32、33、34と兼用し、かつ理論上は、電源35で電源10、15、18の機能を兼用してもよい。しかしながら、実用上は、あたかも電源10,15,18が電源35から独立しているかのように操作できるようにすべきである。そうでないと、上記の調整作業は極めて困難になってしまうからである。
【0101】
また、上記実施の形態においては、電場と磁場が重畳された4極子場による色収差の補正のための機能と8極子場による球面収差のための機能の両方を備えている荷電粒子ビーム装置について説明した。しかし、実際に本発明の収差補正装置が応用される荷電粒子ビーム装置の特性によっては、色収差の補正の機能と球面収差の機能のうちの何れかを省くことができる。例えば、加速電圧が高い装置では球面収差に比して色収差が相対的に小さくなり、色収差の補正を実用上省略できる場合がある。同様に、加速電圧が低い装置では色収差に比して球面収差が相対的に小さくなり、球面収差の補正を実用上省略できる場合がある。
【0102】
なお、図9においてトランスファーレンズ系の倍率が2の場合を示したが、この倍率をもっと大きくしていくと、高次の収差、例えば、5次の開口収差係数C5も大幅に大きくる。一方、5次の開口収差係数C5が大きい場合には、12極子場を作る電圧が極端に大きくなるため(例えば10倍)、12極子によるC5の補正が困難となる。また、仮にC5が補正できたとしても、大きな収差補正電圧によって、6次以上の収差係数(例えば、7次の開口収差係数)が大きくなり、回折効果を減らそうとして試料に入射する開き角α,αを大きくすると、これらの収差の影響が無視できなくなり、微小プローブを得る手段としては現実的ではない。従って、高次の収差を考慮した場合は、トランスファーレンズ系の効果が期待できる倍率は3倍程度が実用的な上限と思われる。
【0103】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明に基づく収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置は、(a)荷電粒子ビーム装置の光学系内部に配置された、4段の静電型4極子と4段の静電型4極子の中央の2段の静電型4極子の電位分布と相似な磁位分布を重畳させる2段の磁場型4極子とを有する収差補正装置と、(b))収差補正装置の下流に配置され、試料に照射される荷電粒子ビームをフォーカスするための対物レンズと、(c)収差補正装置と対物レンズとの間に配置され、収差補正装置によって形成される像面を対物レンズの物面の位置に伝達するための少なくとも1段のトランスファーレンズより成るトランスファーレンズ系と、(d) 4段の静電型4極子の電源と2段の磁場型4極子の電源と対物レンズの電源とトランスファーレンズ電源と、(e)荷電粒子ビームに所定のエネルギーを与える加速電圧や対物レンズと試料との間の距離である作動距離のうちの少なくとも1つを変更する操作部と、(f) 操作部の操作または設定に基いて4段の静電型4極子の電源と2段の磁場型4極子の電源と対物レンズの電源とトランスファーレンズ電源とを制御する制御部と、を備えたことを特徴としている。
【0104】
このような系において、収差補正装置と対物レンズとの間に配置されるトランスファーレンズ系のトランスファーレンズを比較的自由に配置したので、収差補正装置と対物レンズとの間の偏向装置や非点補正装置等を配置する自由度が増すことになる。
【0105】
更に、トランスファーレンズ系の倍率を比較的自由に設定できるので、試料上でのビームのフォーカスを変えることなしに、トランスファーレンズ系の倍率と対物レンズの倍率との合成倍率を調整することができる。これによって、加速電圧が低い場合には合成倍率を低くなるように調整して、収差補正装置で発生させる収差量があまり小さくならないようにして、印加電圧へのノイズや電源変動等の影響を軽減し、加速電圧が高い場合には合成倍率を高くなるように調整して、収差量があまり大きくならないようにして、多極子の耐電圧に問題を軽減している。
【0106】
同じく、トランスファーレンズ系の倍率を比較的自由に設定できるので、色収差や球面収差が補正された後に残る高次収差、例えば5次の開口収差係数C5や4次の収差係数である3次開口・色収差係数C3cなどの高次の収差係数を最適に補正して、試料面に照射される荷電粒子ビームが最小のプローブ径となるようにすることができる。
【0107】
また、試料面における5次の開口収差係数C5のX,Y方向の成分C5,C5あるいは4次の収差である開口色収差係数C3cのX,Y方向の成分C3c,C3cの大きさが同程度となるように、収差補正装置に対するトランスファーレンズ系と対物レンズの位置を定めたので、試料面に照射される荷電粒子ビームのプローブ径の対称性を向上させて最小のプローブ径となるようにすることができる。
【0108】
更に、収差補正装置の多極子のフォーカス電位、色収差補正電位、球面収差補正電位に5次の収差係数を補正するための12極子電位を重畳した。このような構成とすることにより、5次の開口収差係数を実質的に0にできるようになり、試料面に照射される荷電粒子ビームのプローブ径を最小のプローブ径となるようにすることができる。
【0109】
また更に、試料面に電圧を印加するための電源を備え、電圧の印加により試料面に照射される荷電粒子ビームを減速させることによって収差補正前の収差係数を小さくしたので、高次の収差係数C5やC3cを1/5〜1/10に減少でき、試料面に照射される荷電粒子ビームのプローブ径を最小のプローブ径となるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】色収差を静電型4極子と磁場型4極子の組合せで補正し、球面収差を4段の8極子で補正する収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置の原理を説明するための図である。
【図2】静電型多極子の標準配列を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態の極く特殊な場合の2段のトランスファーレンズが配置された収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置を示す図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態の極く特殊な場合の1段のトランスファーレンズが配置された収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態の2段のトランスファーレンズが配置された収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置を示す図である。
【図6】色収差・球面収差補正後の5次の開口収差係数C5や3次開口・色収差係数C3cの大きさ(絶対値)の変化をトランスファーレンズ27bの焦点距離fに対してプロットした図である。
【図7】Lに対するC5のX,Y方向成分C5,C5や、C3cのX,Y方向成分C3c,C3cの変化を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態の1段のトランスファーレンズが配置された収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置を示す図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態の1段のトランスファーレンズが非対称に配置された収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置の他の例を示す図である。
【図10】本発明の第6の実施の形態の試料に入射する粒子プローブを減速させる収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置を示す図である。
【図11】本発明の第7の実施の形態の12極子場を重畳した収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置を示す図である。
【図12】収差補正装置を備えた走査電子顕微鏡を説明するための図である。
【図13】本発明の第5の実施の形態の2段のトランスファーレンズが非対称に配置された収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置の他の例を示す図である。
【符号の説明】
1,2,3,4 静電型4極子
5,6 磁場型4極子
7 対物レンズ
8 対物絞り
9 操作表示部
10,15,18,17,30,35 電源
11,12,13,14 静電型8極子
19 制御部
20 試料面
27a,27b トランスファーレンズ

Claims (15)

  1. 荷電粒子ビームをフォーカスして試料に照射する荷電粒子ビーム装置において、
    (1)荷電粒子ビーム装置の光学系内部に配置され、4段の静電型4極子と該4段の静電型4極子の中央の2段の静電型4極子の電位分布と相似な磁位分布を重畳させる2段の磁場型4極子とを有する収差補正装置と、
    (2)4段の静電型4極子のそれぞれに電圧を供給する電源と2段の磁場型4極子のそれぞれに電流を供給する電源と、
    (3)収差補正装置の下流に配置され、試料に照射される荷電粒子ビームをフォーカスするための対物レンズと、
    (4)対物レンズの電源と、
    (5)収差補正装置と対物レンズとの間に配置され、収差補正装置によって形成される像面を対物レンズの物面の位置に伝達するための少なくとも1段のトランスファーレンズより成るトランスファーレンズ系と、
    (6)トランスファーレンズ電源と、
    (7)荷電粒子ビームに所定のエネルギーを与える加速電圧や対物レンズと試料との間の距離である作動距離のうちの少なくとも1つを変更する操作部と、
    (8)操作部の操作または設定に基づいて前記4段の静電型4極子のそれぞれに電圧を供給する電源と2段の磁場型4極子のそれぞれに電流を供給する電源と対物レンズの電源とトランスファーレンズ電源とを制御する制御部と、
    を備えたことを特徴とする収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置。
  2. トランスファーレンズ系と対物レンズとの合成倍率を調整可能としたことを特徴とする請求項1記載の収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置。
  3. 4段の静電型4極子の電位分布に8極子電位を重畳させる4段の静電型8極子と、4段の静電型8極子に電圧を供給する電源と、操作表示部の操作または設定に基づいて前記4段の静電型8極子の電源を制御する制御部を備えたことを特徴とする請求項2記載の収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置。
  4. トランスファーレンズ系が拡大系あるいは縮小系であることを特徴とする請求項3記載の収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置。
  5. トランスファーレンズ系の物面を収差補正装置の最終段付近に設定し、これに共役な像面を対物レンズの前方焦点付近に設定したとき、共役点に対するトランスファーレンズ系の倍率が1/3倍から3倍となる位置に、トランスファーレンズ系を配置したことを特徴とする請求項4記載の収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置。
  6. 収差補正装置の最終段の多極子の主面と対物レンズの前方焦点との中間点を通って光軸に垂直な面に対して、トランスファーレンズ系を非対称に配置したことを特徴とする請求項3記載の収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置。
  7. トランスファーレンズ系と対物レンズとの合成倍率を調整して、試料面における5次の開口収差係数C5あるいは4次の収差である3次開口色収差係数C3cの大きさ(絶対値)が最小となるように成したことを特徴とする請求項3乃至6の何れかの1つに記載の収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置。
  8. 試料面における5次の開口収差係数C5のX,Y方向の成分C5,C5あるいは4次の収差である開口色収差係数C3cのX,Y方向の成分C3c,C3cの大きさが同程度となるように、収差補正装置に対するトランスファーレンズ系と対物レンズの位置とを定めたことを特徴とする請求項3乃至6の何れかの1つに記載の収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置。
  9. 収差補正装置の多極子のフォーカス電位、色収差補正電位、球面収差補正電位に5次の収差係数を補正するための12極子電位を重畳したことを特徴とする請求項3乃至6の何れかの1つに記載の収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置。
  10. 試料面に電圧を印加するための電源を備え、電圧の印加により試料面に照射される荷電粒子ビームを減速させることによって収差補正前の収差係数を小さくしたことを特徴とする請求項1乃至9の何れかの1つに記載の収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置。
  11. トランスファーレンズ系は、1段のトランスファーレンズより成ることを特徴とする請求項1乃至10の何れかの1つに記載の収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置。
  12. トランスファーレンズ系は、2段のトランスファーレンズより成ることを特徴とする請求項1乃至10の何れかの1つに記載の収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置。
  13. トランスファーレンズ系が拡大系あるいは縮小系であることを特徴とする請求項1または2に記載の収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置。
  14. トランスファーレンズ系の物面を収差補正装置の最終段付近に設定し、これに共役な像面を対物レンズの前方焦点付近に設定したとき、共役点に対するトランスファーレンズ系の倍率が1/3倍から3倍となる位置に、トランスファーレンズ系を配置したことを特徴とする請求項13記載の収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置。
  15. 収差補正装置の最終段の多極子の主面と対物レンズの前方焦点との中間点を通って光軸に垂直な面に対して、トランスファーレンズ系を非対称に配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の収差補正装置を備えた荷電粒子ビーム装置。
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