JP2004083417A - 血管新生抑制剤 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアルコキシフラボノイドを有効成分として含有する血管新生抑制剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
既存の血管から新しい血管が形成される事象を血管新生とよび、現在、創薬科学の分野で注目されている。最近の研究の進展によって、癌、糖尿病性網膜症、動脈硬化症などの生活習慣病は、血管新生異常を基本病態とし、その病像の成立・悪性化に血管新生が深く関わっていることが明らかにされている(Folkman, J., 1995, Nature Med., 1:27−31;及びBattegay, E.J., 1995, J. Mol. Med., 73:333−346)。しかも血管新生病とも呼ばれているこれら難治性生活習慣病は、現在満足できる治療法が無く、新しい治療薬の開発が切望されている。従って、血管新生を効果的に抑制する薬剤が開発された場合には、癌などの難治性生活習慣病の治療法が確立されることが期待される。こうした視点を基盤に血管新生阻害剤の探索・開発研究が活発に展開されており、現在20数種類の血管新生阻害剤候補が臨床試験中あるいはその準備段階にある(Randal, J., 2000, J. Natl.Cancer Inst., 92:520−522)。臨床試験中のものとしては、血管内皮増殖因子に対する中和抗体、血管内皮増殖因子レセプターのチロシンキナーゼ活性を阻害する合成化合物(SU5416など)、内皮細胞増殖を阻害することによって血管新生抑制作用を発揮すると考えられているTNP−470(フマギリン誘導体)やエンドスタチン(内因性血管新生抑制物質)などがある。
【0003】
しかし、現在、実用化に至っている血管新生抑制剤はなく、優れた薬剤の開発が期待されている。具体的には、癌などの血管新生が関与する疾患の治療は長期間にわたるものが多いため、血管新生抑制剤は、副作用が少なく、また経口投与により効果を発揮するものが好ましい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、細胞毒性が低い血管新生抑制剤を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、柑橘類に含まれるポリメトキシフラボノイドが、マトリックスメタロプロテアーゼ産生阻害作用を示すだけでなく、血管新生に関連している血管内皮細胞機能である血管内皮細胞の増殖、プラスミノーゲンアクチベーター活性レベル、管腔形成を抑制するなどの血管新生抑制作用を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記式(I)で表されるポリアルコキシフラボノイドを有効成分として含有することを特徴とする血管新生抑制剤である。
【0006】
【化3】
〔式中、R1は水素原子又は炭素数1〜6の低級アルキル基を表し、R2、R3及びR4は各々独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、R5は炭素数1〜6の低級アルキル基を表す。〕
【0007】
上記血管新生抑制剤において、ポリアルコキシフラボノイドは、下記式(II)で表されるポリメトキシフラボノイドであることが好ましい。
【0008】
【化4】
〔式中、R11は水素原子又はメチル基を表し、R12、R13及びR14は各々独立に水素原子又はメトキシ基を表す。〕
【0009】
また、上記ポリメトキシフラボノイドとしては、5−デメチルノビレチン、タンゲレチン、ノビレチン、8−デメトキシノビレチン、6−デメトキシタンゲレチン及び6−デメトキシノビレチンが挙げられる。
上記血管新生抑制剤は、血管新生が関係する疾患の予防及び/又は治療薬として使用することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る血管新生抑制剤(以下、「本血管新生抑制剤」ともいう)は、柑橘類に由来するフラボノイドの1種であるポリアルコキシフラボノイドを有効成分として含むことを特徴とする。このポリアルコキシフラボノイドは、血管新生抑制作用、例えば、新たな血管形成の抑制、血管内皮細胞の増殖抑制、プラスミノーゲンアクチベーター活性の抑制、血管内皮細胞による管腔形成の抑制、及びマトリックスメタロプロテアーゼ産生阻害を示すため、本血管新生抑制剤は、血管新生が関係する疾患の予防及び/又は治療薬として有用である。
【0011】
1.ポリアルコキシフラボノイドの調製
本血管新生抑制剤に有効成分として配合するポリアルコキシフラボノイドは、柑橘類、すなわちミカン科に属する果樹植物から単離・精製して調製することができる。そのような果樹植物としては、これに限定するものではないが、ミカン区に属するシイクワシャー(Citrus depressa)、タチバナ(C. tachibana)、コウジ(C. leiocarpa)、ギリミカン(C. tardiva)、ジミカン(C. succosa)、シカイカン、キシュウ(C. kinokuni)、コベニミカン(C. erythrosa)、スンキ(C. sunki)、チチユウカイマンダリン(C. deliciosa)、キング(C. nobilis)、ポンカン(C. retuculata)、ダンシータンジェリン(C. tangerina)、及び、ユズ区に属するハナユ(C. hanayu)、コウライタチバナ(C. nippokoreana)などが挙げられる。上記果樹植物からポリアルコキシフラボノイドを単離するには、当該技術分野で公知の単離・精製手法に従えばよく、そのような手法は、例えばTwo new polimethoxylated flavones, a class of compounds with potential anticancer activity, isolated from cold pressed dancy tangerin peel oil solids (Jie Chem et al. J. Agric Food Chem. 1997, 45, 364−368)に記載されている。
本血管新生抑制剤において、ポリアルコキシフラボノイドは、下記一般式(I)で表される化合物である。
【0012】
【化5】
〔式中、R1は水素原子又は炭素数1〜6の低級アルキル基を表し、R2、R3及びR4は各々独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、R5は炭素数1〜6の低級アルキル基を表す。〕
【0013】
また本血管新生抑制剤において、ポリアルコキシフラボノイドとしては、下記式(II)で表されるポリメトキシフラボノイドが好ましい。
【0014】
【化6】
〔式中、R11は水素原子又はメチル基を表し、R12、R13及びR14は各々独立に水素原子又はメトキシ基を表す。〕
【0015】
本血管新生抑制剤において利用可能なポリメトキシフラボノイドとしては、例えばこれに限定するものではないが、下記表1に示す置換基(R11〜R14)を有する式(II)で表される化合物が挙げられる。
【0016】
【表1】
【0017】
本発明において、本血管新生抑制剤は、1種のポリアルコキシフラボノイドを含有するものであってもよいし、又は2種以上のポリアルコキシフラボノイドを組み合わせて含有するものであってもよい。本血管新生抑制剤は、ポリアルコキシフラボノイドを有効成分として含有する限り、下記の血管新生抑制作用を発揮する。
【0018】
上記ポリアルコキシフラボノイドは、既にマトリックスメタロプロテアーゼ産生阻害作用が報告されており(特許第3010210号)、また本発明者は、ポリアルコキシフラボノイドの新たな血管形成の抑制作用、血管内皮細胞の増殖抑制作用、プラスミノーゲンアクチベーター活性の抑制作用、血管内皮細胞による管腔形成の抑制作用を確認し、ポリアルコキシフラボノイドが複数の内皮細胞機能を阻害することによって、血管新生抑制作用を有することを証明した。またポリアルコキシフラボノイドは、本発明者によるddy系マウスを用いたノビレチンの急性毒性試験の結果では、LD50(50%致死濃度)が1.39g/kgであり、毒性はほぼないといえる。また、Denlany et alは、ポリメトキシフラボノイドに遺伝子毒性がないことを報告している(Denlany et al., Food Chem. Toxicol. 40:617−624 (2002))。従って、ポリアルコキシフラボノイドは細胞毒性が低く、副作用が少ないため長期投与が可能であるという医薬上の利点を有する。また脂溶性が高いことや薬物排泄タンパク質であるp−糖タンパク質の阻害作用(Er−jia Wang et al., Chem. Res. Toxicol. 2001, 14, 1596−1603)があり、細胞への移行度が高いという医薬上の利点も有する。
【0019】
2.血管新生抑制剤
ポリアルコキシフラボノイドは、上述したように、複数の血管新生抑制作用を示す。従って、ポリアルコキシフラボノイドは、血管新生抑制剤として用いることが可能である。本発明において、本血管新生抑制剤には、ポリアルコキシフラボノイド、好ましくはポリメトキシフラボノイドを有効成分として配合する。ここで、ポリメトキシフラボノイドとしては、特に5−デメチルノビレチン、タンゲレチン、ノビレチン、8−デメトキシノビレチン、6−デメトキシタンゲレチン、及び6−デメトキシノビレチンが好ましい。
【0020】
血管新生は、種々の疾患と関係しており、そのような血管新生が関係する疾患としては、血管新生がその発症原因の1つとして関与して発症する疾患、例えば、リウマチ性関節炎、乾癬症、浮腫性硬化症、糖尿病性網膜症、未熟児性網膜症、鎌状赤血球網膜症、網膜静脈閉塞症、角膜移植又は白内障手術に伴う血管新生、血管新生性緑内障、虹彩ルベオーシス、老人性円板状黄斑部変性症、各種腫瘍、粥状動脈硬化巣外膜の異常毛細血管網、コンタクトレンズ長期装用による角膜内の血管新生などが挙げられる。さらに具体的には、固形腫瘍の増殖・転移、糖尿病性網膜症、後水晶体繊維増殖症、緑内障、血管腫、繊維性血管腫、アテローム性動脈硬化症、乾癬、慢性炎症疾患などが挙げられる。
本血管新生抑制剤は、上記血管新生に関連する疾患の予防及び/又は治療薬として有用である。
【0021】
本血管新生抑制剤は、有効成分であるポリアルコキシフラボノイドの他、薬学的に許容される担体及び/又は添加物を共に含むものであってもよい。このような担体及び添加物の例としては、水、薬学的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などの他、リポゾームなどの人工細胞構造物などが挙げられる。使用される添加物は、医薬組成物の剤形に応じて上記の中から適宜又は組み合わせて選択される。
【0022】
本血管新生抑制剤は、経口的又は非経口的に投与することができる。
上記組成物を経口的に投与する場合は、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤などの固形製剤、あるいは液剤、懸濁剤、シロップ剤などの液体製剤等としてポリアルコキシフラボノイドを製剤化すればよい。特に顆粒剤及び散剤は、カプセル剤として単位投与剤形としてもよいし、また液体製剤の場合には使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。
【0023】
上記剤形のうち経口用固形製剤は、通常それらの組成物中に薬学上一般に使用される結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤などの添加剤を含有する。また、経口用液体製剤は、通常それらの組成物中に薬学上一般に使用される安定剤、緩衝剤、矯味剤、保存剤、芳香剤、着色剤などの添加剤を含有する。
【0024】
本血管新生抑制剤を非経口的に投与する場合は、注射剤又は坐剤などの剤形とすることができる。例えば注射剤は、ポリアルコキシフラボノイドを溶液、懸濁液、乳液などに溶解又は懸濁して調製されるものであり、通常単位投与量アンプル又は多投与量容器の形態で提供される。また注射剤は、使用する際に適当な担体、例えば発熱物質不含の滅菌水に再溶解させる粉剤であってもよい。注射手法としては、例えば点滴静脈内注射、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、皮内注射が挙げられる。これらの非経口投与剤形は、通常それらの組成物中に薬学上一般的に使用される乳化剤、懸濁剤などの添加剤を含有する。
【0025】
上記組成物に配合するポリアルコキシフラボノイドは、その用途、剤形、投与経路などにより異なるが、例えば、総重量を基準として1〜70重量%、好ましくは30〜60重量%である。
【0026】
また、その投与量は、投与対象の年齢及び体重、投与経路、投与回数により異なり、広範囲に変更することができる。例えば、ポリアルコキシフラボノイドと適切な希釈剤及び薬学的に使用しうる担体との組み合わせとして投与される有効量は、経口的に投与する場合には、1日につき体重1kg当たり0.01〜0.5gであり、1日間から2日間の間隔で投与される。
【0027】
本血管新生抑制剤を投与する対象としては、限定するものではないが、ヒト、家畜、愛玩動物、実験動物などでありうる。
また、本血管新生抑制剤は、食品又は飼料に添加して用いてもよい。「食品」及び「飼料」とは、栄養素を1種以上含む天然物及びその加工品をいい、あらゆる飲食物を含む。本血管新生抑制剤が配合された食品及び飼料は、血管新生が関係する疾患の予防及び/又は治療のための健康補助用機能性食品として有用である。
【0028】
本血管新生抑制剤を配合する食品としては、米飯類、菓子類、麺類、カマボコ・チクワ等の水産練り製品、ハム・ソーセージ等の畜肉加工品、清涼飲料・果実飲料等の飲料類、マヨネーズ・ドレッシング・味付け調味液等の調味料等が挙げられるが、これらに限定されない。食品への本血管新生抑制剤の配合は、例えば混合、浸漬、塗布、噴霧等の方法で行うことができる。これらの食品には、通常の食品に使用される着色料、香料、甘味料、酸味料等を適宜配合してもよい。食品に配合する本血管新生抑制剤(ポリアルコキシフラボノイド)の量は、例えば10〜500g/kgであり、好ましくは30〜300g/kgである。
【0029】
本血管新生抑制剤を配合する飼料としては、家畜・家禽・魚類用の粉状、練り製品状又はペレット状の飼料等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの飼料には、通常の飼料に使用される着色料、香料等を適宜配合してもよい。飼料に配合する本血管新生抑制剤(ポリアルコキシフラボノイド)の量は、例えば10〜500g/kgであり、好ましくは30〜300g/kgである。
【0030】
【実施例】
本発明を以下の実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
〔製造例〕
柑橘類の1種であるシイクワシャー(Citrus depressa)の果皮のフラベドの部分を剥皮し、これをアセトン中に液浸し、粗フラボノイド抽出液を得る。これを濃縮乾固した後、50%メタノールに溶かし、オクタデシルシリカゲルを担体とする逆相系カラム、溶離液としてメタノール−10mMリン酸(4:6→6:4)を用い、紫外線吸収検出器(340nm)でモニターしながら分取を行う。得られた分画を濃縮乾固することで目的のポリアルコキシフラボノイドを得ることができる。
【0032】
代表的な6種のポリメトキシフラボノイドについて、その具体的な理化学的性質を以下に記載する。
【0033】
5−デメチルノビレチン:
淡黄色粉末
EI−MS m/z 388 [M]+ (C20H20O8)
IR νmax(KBr)cm−1: 3420, 2945, 2830, 1640, 1610, 1585, 1510, 1480, 1460,1435, 1430, 1415, 1365, 1340, 1265, 1225, 1190, 1170, 1145, 1115, 1065,1035, 1030, 1015, 960, 850, 835, 795.
1H−NMR(CDCl3)δ 12.53 (s,OH), 7.58 (1H,dd,J=8.6,2.0Hz), 7.42 (1H,d,J=2.0Hz), 6.99 (1H,d,J=8.6Hz), 6.60 (1H,s), 4.11 (3H,s), 3.98 (3H×2,s), 3.96(3H,s), 3.95 (3H,s).
13C−NMR(CDCl3)δ 182.9 (C=O), 163.9 (C), 153.0 (C), 152.5 (C), 149.5 (C), 149.4 (C), 145.7 (C), 136.6 (C), 132.9 (C), 123.7 (C), 120.1 (CH), 111.3 (C), 108.8 (CH), 107.0 (C), 104.0 (CH), 62.0 (OMe), 61.7 (OMe), 61.1 (OMe), 56.1 (OMe), 56.0(OMe).
【0034】
タンゲレチン:
無色針状結晶(クロロホルム、メタノール混液より再結晶して得られる)
融点150〜151℃
EI−MS m/z 372 [M]+ (C20H20O7)
IR νmax(KBr)cm−1: 2945, 2835, 1645, 1605, 1580, 1510, 1480, 1460, 1420,1400, 1365, 1305, 1260, 1215, 1175, 1130, 1105, 1065, 1025, 1015, 1000,965, 945, 935, 890, 825, 795.
UV λmax(EtOH)nm: 322, 272.
1H−NMR(CDCl3)δ 7.87 (2H,d,J=8.9Hz), 7.02 (2H,d,J=8.9Hz), 6.59 (1H,s), 4.09 (3H,s), 4.02 (3H,s), 3.94 (3H×2,s), 3.88 (3H,s).
13C−NMR(CDCl3)δ 177.3 (C=O), 162.3 (C), 161.2 (C), 151.3 (C), 148.4 (C), 147.7 (C), 144.1 (C), 138.1 (C), 127.7 (CH×2), 123.8 (C), 114.9 (C), 114.5 (CH×2), 106.7 (CH), 62.2 (OMe), 62.0 (OMe), 61.8 (OMe), 61.6 (OMe), 55.5 (OMe).
【0035】
ノビレチン:
無色針状結晶(クロロホルム、メタノール混液より再結晶して得られる)
融点137〜138℃
EI−MS m/z 402 [M]+ (C21H22O8)
IR νmax(KBr)cm−1: 2950, 2840, 1640, 1585, 1565, 1510, 1480, 1460, 1415,1410, 1365, 1335, 1300, 1275, 1255, 1220, 1205, 1170, 1145, 1100, 1075,1035, 1030, 1015, 965, 950, 905, 860, 835, 810, 800.
UV λmax(EtOH)nm: 331, 271, 250.
1H−NMR(CDCl3)δ 7.55 (1H,dd,J=8.5,2.1Hz), 7.39 (1H,d,J=2.1Hz), 6.97 (1H,d,J=8.5Hz), 6.59 (1H,s), 4.08 (3H,s), 4.01 (3H,s), 3.96 (3H,s), 3.94 (3H,s), 3.93 (3H×2,s).
13C−NMR(CDCl3)δ 177.2 (C=O), 160.9 (C), 151.9 (C), 151.3 (C), 149.2 (C), 148.3 (C), 147.6 (C), 144.0 (C), 137.9 (C), 123.9 (C), 119.5 (CH), 114.8 (C), 111.2 (CH), 108.5 (CH), 106.8 (CH), 62.2 (OMe), 61.9 (OMe), 61.7(OMe), 61.6 (OMe), 56.0 (OMe), 55.9 (OMe).
【0036】
シネンセチン:
白色粉末
EI−MS m/z 372 [M]+ (C20H20O7)
IR νmax(KBr)cm−1: 2990, 2935, 2820, 1635, 1595, 1505, 1485, 1460, 1445,1425, 1415, 1345, 1320, 1285, 1265, 1255, 1245, 1215, 1205, 1200, 1165,1145, 1115, 1095, 1060, 1020, 985, 955, 865, 835, 815, 785, 760.
1H−NMR(CDCl3)δ 7.50 (1H,dd,J=8.5,2.1Hz), 7.32 (1H,d,J=2.1Hz), 6.96 (1H,d,J=8.5Hz), 6.79 (1H,s), 6.58 (1H,s), 3.99 (3H,s), 3.98 (3H,s), 3.97 (3H,s), 3.95 (3H,s), 3.91 (3H,s).
13C−NMR(CDCl3)δ 177.1 (C=O), 161.1 (C), 157.6 (C), 154.5 (C), 152.6 (C), 151.8 (C), 149.3 (C), 140.3 (C), 124.1 (C), 119.6 (CH), 112.9 (C), 111.2 (CH), 108.7 (CH), 107.4 (CH), 96.2 (CH), 62.2 (OMe), 61.5 (OMe), 56.3(OMe), 56.1 (OMe), 56.0 (OMe).
【0037】
6−デメトキシタンゲレチン:
白色粉末
EI−MS m/z 342 [M]+ (C19H18O6)
IR νmax(KBr)cm−1: 3000, 2945, 2845, 1635, 1600, 1570, 1505, 1460, 1420,1405, 1375, 1340, 1305, 1295, 1255, 1245, 1210, 1185, 1175, 1135, 1110,1045, 1030, 875, 960, 930, 880, 840, 810, 800.
1H−NMR(CDCl3)δ 7.87 (2H,d,J=9.0Hz), 7.01 (2H,d,J=9.0Hz), 6.58 (1H,s), 6.43 (1H,s), 3.99 (3H,s), 3.97 (3H,s), 3.94 (3H,s), 3.87 (3H,s).
13C−NMR(CDCl3)δ 177.8 (C=O), 162.1 (C), 160.6 (C), 156.4 (C), 156.3 (C), 151.9 (C), 130.8 (C), 127.6 (CH×2), 123.9 (C), 114.4 (CH×2), 109.1 (C), 106.9 (CH), 92.6 (CH), 61.5 (OMe), 56.6 (OMe), 56.3 (OMe), 55.4 (OMe).
【0038】
6−デメトキシノビレチン:
白色粉末
EI−MS m/z 372 [M]+ (C20H20O7)
IR νmax(KBr)cm−1: 2930, 2845, 1635, 1595, 1575, 1505, 1455, 1435, 1420,1400, 1375, 1340, 1320, 1295, 1275, 1255, 1230, 1210, 1205, 1170, 1135,1120, 1105, 1040, 1035, 1015, 965, 945, 855, 835, 800, 795.
1H−NMR(CDCl3)δ 7.58 (1H,dd,J=8.5,2.1Hz), 7.42 (1H,d,J=2.1Hz), 6.98 (1H,d,J=8.5Hz), 6.61 (1H,s), 6.44 (1H,s), 4.00 (3H,s), 3.98 (3H,s), 3.97 (3H,s), 3.95 (3H×2,s).
13C−NMR(CDCl3)δ 177.8 (C=O), 160.5 (C), 156.5 (C), 156.3 (C), 151.9 (C), 151.8 (C), 149.3 (C), 130.8 (C), 124.1 (C), 119.5 (CH), 111.2 (CH), 109.1 (C), 108.6 (CH), 107.2 (CH), 92.6 (CH), 61.5 (OMe), 56.6 (OMe), 56.3(OMe), 56.0 (OMe), 55.9 (OMe).
【0039】
〔実施例1〕鶏胚漿尿膜法
血管新生抑制作用を検定するための鶏胚漿尿膜法は既に報告されている方法に従って行った(Oikawa, T. et al., 1989, Cancer Lett., 48:157−162)。すなわち、孵卵0日の鶏受精卵(大宮家禽より入手)の気室を上にして4.5日間37℃の孵卵器内で培養後、漿尿膜上に各種用量のノビレチンを含有するエチレンビニールアセテート共重合体のペレットを静置した。同条件下でさらに2日間培養後、漿尿膜で包まれた嚢内に適当量の脂肪乳剤を注入して漿尿膜上の血管網を実体顕微鏡下で観察し、陽性と陰性の2段階に分けて判定した。すなわち、処理した鶏卵漿尿膜上に径3mm以上の無血管ゾーンが形成された場合、血管新生抑制作用は陽性と判定し、それ以下の場合は陰性と判定した。少なくとも13個以上の受精鶏卵を試験に用い、陽性を示す受精鶏卵の頻度を全受精鶏卵に対する割合により求めた。
【0040】
その結果を図1に示す。鶏卵は、計6.5日間のインキュベーションによってCAM(漿尿膜)上に新たな血管が形成されるが、ノビレチン処理を行った卵では、血管新生がみられなかった。図1に示すように、ノビレチンの血管新生抑制作用は用量依存的であり、ID50(50%抑制用量)は24.9nmol/卵であった。
【0041】
〔実施例2〕ヒト血管内皮細胞の増殖に対するノビレチンの作用
血管新生抑制の作用点としては、血管内皮細胞の増殖の抑制がある。従って、本実施例においては、ノビレチンの存在下におけるヒト血管内皮細胞の増殖能を既に報告されている方法を用いて測定した(Uchida, M. et al, 2000, Cancer Lett., 154:63−69;及びOikawa, T. et al., 1998, Biochem. Biophys. Res. Commun., 246:243−248)。ゼラチンコートしたフラスコ(イワキ社製)内壁上で半集密的な状態に増殖したヒト血管内皮細胞(国内販売代理店:大日本製薬(株))を10mlのPBS−(マグネシウムイオンとカルシウムイオンを含まないリン酸塩で緩衝化した生理食塩水)で洗浄後、1mlの0.05%トリプシン/0.02% EDTA(エチレンジアミン四酢酸)で約1分間処理してフラスコ壁から浮遊させた。適当量の10%ウシ胎児血清含有完全培地(MCDB131+10μg/ml内皮細胞成長添加剤(ECGS)+10ng/ml上皮成長因子(EGF)+10μg/mlヘパリン)を添加して酵素反応を停止させた後に、ピペッティングして細胞浮遊液を調製した。次いで、コールターカウンターで細胞数を計測し、10%ウシ胎児血清含有同完全培地で希釈して最終的に1×104細胞/mlの細胞浮遊液を調製した。この細胞浮遊液1mlをゼラチンコートした24ウエルプレートの各ウエルに播種し、各種濃度のノビレチン存在下で37℃で5%炭酸インキュベーター内で培養した。72時間培養後、PBS−で洗浄してから0.25%トリプシンで処理して、細胞を浮遊させた。その後、コールターカウンターで細胞数を計測した。
【0042】
その結果を図2に示す。図2に示すように、ノビレチンは、用量依存的に血管内皮細胞の増殖を抑制し、IC50(50%阻害濃度)は34μmol/lであることがわかる。
【0043】
〔実施例3〕ヒト血管内皮細胞のPA活性レベルに対するノビレチンの作用血管新生抑制の他の作用点としては、プラスミノーゲンアクチベーター(PA)活性の抑制が知られている。従って、本実施例においては、ヒト血管内皮細胞のPA活性レベルに対するノビレチンの作用を、既に報告されている方法を用いて測定した(Uchida, M. et al, 2000, 前掲;及びOikawa, T. et al., 1998, 前掲)。
【0044】
(a)ノビレチン処理
実施例2と同様の方法で細胞浮遊液を10%ウシ胎児血清完全培地で調製後、1×105細胞/cm2になるようにゼラチンコート処理フラスコに播種した。24時間培養した後に0.1%ウシ血清アルブミン含有MCDB131で2回洗浄し、各種濃度のノビレチン存在下で10%ウシ胎児血清含有完全培地中で18時間培養した。次いで、PBS−で洗浄後、ラバーポリスマンを用いて細胞を1.5mlチューブに剥離・回収し、この中にTriton X−100が最終濃度0.5%になるように加え、4℃で1時間撹拌した。その後、遠心(15,000rpm、30分、4℃)して上清を採取し、PA活性測定とタンパク質定量まで−30℃で保存した。
【0045】
(b)PA活性測定
96ウエルプレートを用いてPA活性を測定した。すなわち、氷冷下100μlの基質溶液(0.95mM S−2251+1.25U/mlプラスミノーゲン+0.2M Tris−HCl、pH7.4)に25μlのサンプルを添加してミキシングした後に、37℃で4時間反応した。酵素反応は75μlの67%酢酸を加えて停止させた後、マイクロプレートリーダー(吸光度405nm)で測定した。活性量は、同時に測定したウロキナーゼを用いて得られた標準曲線から算出した。
【0046】
その結果を図3に示す。図3に示すように、ノビレチンは、用量依存的にプラスミノーゲン活性を抑制していることがわかる。この抑制は、乳癌の血管新生抑制を作用機序とすることが知られている制癌剤、酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)と同レベルであった。
【0047】
(c)タンパク質量
タンパク質量は、DCプロテインアッセイ(Bio−Rad社)を用いて定量した。結果を図4に示す。図4から、ノビレチン処理したヒト血管内皮細胞抽出物中のタンパク質量は、MPAと同レベルであることがわかる。
【0048】
〔実施例4〕マトリゲル上でのヒト血管内皮細胞による管腔形成に対するノビレチンの作用
本実施例においては、血管新生抑制のin vitro検定システムとして一般的に用いられているマトリゲルを用いて(Oikawa, T. et al., 1998, 前掲;及びOikawa, T. et al., 2001, Jpn. J. Cancer Res., 92:1225−1234)、ノビレチンの存在下におけるマトリゲル上でのヒト血管内皮細胞による管腔形成能を検討した。
【0049】
(a)マトリゲルの作製
氷冷下24ウエルプレートの各ウエルに10mg/mlマトリゲル(ベクトン・ディッキンソン製)を0.2ml添加した後に、5%CO2インキュベーター内(37℃)でゲル化させた。
【0050】
(b)ノビレチン処理
実施例2と同様の方法で細胞浮遊液(完全培地+10%FBS中)を調製後、2×104細胞/cm2になるようにゼラチンコート処理フラスコに播種し、各種濃度のノビレチン存在下、37℃で24時間5%CO2インキュベーター内で培養した。次いで、0.1%ウシ血清アルブミン含有MCDB131で2回洗浄後、0.05%トリプシン/0.02%EDTAで約1分間処理してフラスコ壁から浮遊させた。適当量の1%FBS+完全培地を添加して酵素反応を停止させた後、ピペッティングして細胞浮遊液を調製した。コールターカウンターで細胞数を計測した後、1%FBS+完全培地で希釈して最終的に1×105細胞/mlの細胞浮遊液を調製した。その後、最終濃度が0、8、32又は128μMとなるようにノビレチンを加え、この細胞浮遊液1mlを上記(a)でゲル化させたマトリゲル上に静かに播種して、37℃で16時間、5%CO2インキュベーター内で培養した。その後、位相差顕微鏡(ライカ製;倍率100倍)で観察し、その画像をCCDカメラを使ってディスクに取り組んだ。これらのデータを画像解析装置(ライカ;Q500C)で計測し、ヒト血管内皮細胞が形成する管腔の長さを算出した。
【0051】
その結果を図5に示す。図5に示すように、ノビレチンにより、マトリゲル上における血管内皮細胞の管腔形成が有意に抑制された。
【0052】
【発明の効果】
本発明により、血管新生抑制剤が提供される。本血管新生抑制剤は、血管新生に直接関与する複数の内皮細胞機能を阻害することによって血管新生抑制作用を示すため、血管新生が関係する疾患の予防及び治療に有用である。また本血管新生抑制剤は、細胞毒性が低いため、副作用がないという医薬製剤としての利点を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】鶏胚漿尿膜における血管新生に対するノビレチンの作用を示す図である。
【図2】ヒト内皮細胞の増殖に対するノビレチンの作用を示す図である。
【図3】ヒト内皮細胞におけるプラスミノーゲンアクチベーターレベルに対するノビレチンの作用を示す図である。
【図4】ヒト血管内皮細胞抽出物中のタンパク質量に対するノビレチンの作用を示す図である。
【図5】マトリゲル上におけるヒト内皮細胞による管腔形成に対するノビレチンの作用を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアルコキシフラボノイドを有効成分として含有する血管新生抑制剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
既存の血管から新しい血管が形成される事象を血管新生とよび、現在、創薬科学の分野で注目されている。最近の研究の進展によって、癌、糖尿病性網膜症、動脈硬化症などの生活習慣病は、血管新生異常を基本病態とし、その病像の成立・悪性化に血管新生が深く関わっていることが明らかにされている(Folkman, J., 1995, Nature Med., 1:27−31;及びBattegay, E.J., 1995, J. Mol. Med., 73:333−346)。しかも血管新生病とも呼ばれているこれら難治性生活習慣病は、現在満足できる治療法が無く、新しい治療薬の開発が切望されている。従って、血管新生を効果的に抑制する薬剤が開発された場合には、癌などの難治性生活習慣病の治療法が確立されることが期待される。こうした視点を基盤に血管新生阻害剤の探索・開発研究が活発に展開されており、現在20数種類の血管新生阻害剤候補が臨床試験中あるいはその準備段階にある(Randal, J., 2000, J. Natl.Cancer Inst., 92:520−522)。臨床試験中のものとしては、血管内皮増殖因子に対する中和抗体、血管内皮増殖因子レセプターのチロシンキナーゼ活性を阻害する合成化合物(SU5416など)、内皮細胞増殖を阻害することによって血管新生抑制作用を発揮すると考えられているTNP−470(フマギリン誘導体)やエンドスタチン(内因性血管新生抑制物質)などがある。
【0003】
しかし、現在、実用化に至っている血管新生抑制剤はなく、優れた薬剤の開発が期待されている。具体的には、癌などの血管新生が関与する疾患の治療は長期間にわたるものが多いため、血管新生抑制剤は、副作用が少なく、また経口投与により効果を発揮するものが好ましい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、細胞毒性が低い血管新生抑制剤を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、柑橘類に含まれるポリメトキシフラボノイドが、マトリックスメタロプロテアーゼ産生阻害作用を示すだけでなく、血管新生に関連している血管内皮細胞機能である血管内皮細胞の増殖、プラスミノーゲンアクチベーター活性レベル、管腔形成を抑制するなどの血管新生抑制作用を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記式(I)で表されるポリアルコキシフラボノイドを有効成分として含有することを特徴とする血管新生抑制剤である。
【0006】
【化3】
〔式中、R1は水素原子又は炭素数1〜6の低級アルキル基を表し、R2、R3及びR4は各々独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、R5は炭素数1〜6の低級アルキル基を表す。〕
【0007】
上記血管新生抑制剤において、ポリアルコキシフラボノイドは、下記式(II)で表されるポリメトキシフラボノイドであることが好ましい。
【0008】
【化4】
〔式中、R11は水素原子又はメチル基を表し、R12、R13及びR14は各々独立に水素原子又はメトキシ基を表す。〕
【0009】
また、上記ポリメトキシフラボノイドとしては、5−デメチルノビレチン、タンゲレチン、ノビレチン、8−デメトキシノビレチン、6−デメトキシタンゲレチン及び6−デメトキシノビレチンが挙げられる。
上記血管新生抑制剤は、血管新生が関係する疾患の予防及び/又は治療薬として使用することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る血管新生抑制剤(以下、「本血管新生抑制剤」ともいう)は、柑橘類に由来するフラボノイドの1種であるポリアルコキシフラボノイドを有効成分として含むことを特徴とする。このポリアルコキシフラボノイドは、血管新生抑制作用、例えば、新たな血管形成の抑制、血管内皮細胞の増殖抑制、プラスミノーゲンアクチベーター活性の抑制、血管内皮細胞による管腔形成の抑制、及びマトリックスメタロプロテアーゼ産生阻害を示すため、本血管新生抑制剤は、血管新生が関係する疾患の予防及び/又は治療薬として有用である。
【0011】
1.ポリアルコキシフラボノイドの調製
本血管新生抑制剤に有効成分として配合するポリアルコキシフラボノイドは、柑橘類、すなわちミカン科に属する果樹植物から単離・精製して調製することができる。そのような果樹植物としては、これに限定するものではないが、ミカン区に属するシイクワシャー(Citrus depressa)、タチバナ(C. tachibana)、コウジ(C. leiocarpa)、ギリミカン(C. tardiva)、ジミカン(C. succosa)、シカイカン、キシュウ(C. kinokuni)、コベニミカン(C. erythrosa)、スンキ(C. sunki)、チチユウカイマンダリン(C. deliciosa)、キング(C. nobilis)、ポンカン(C. retuculata)、ダンシータンジェリン(C. tangerina)、及び、ユズ区に属するハナユ(C. hanayu)、コウライタチバナ(C. nippokoreana)などが挙げられる。上記果樹植物からポリアルコキシフラボノイドを単離するには、当該技術分野で公知の単離・精製手法に従えばよく、そのような手法は、例えばTwo new polimethoxylated flavones, a class of compounds with potential anticancer activity, isolated from cold pressed dancy tangerin peel oil solids (Jie Chem et al. J. Agric Food Chem. 1997, 45, 364−368)に記載されている。
本血管新生抑制剤において、ポリアルコキシフラボノイドは、下記一般式(I)で表される化合物である。
【0012】
【化5】
〔式中、R1は水素原子又は炭素数1〜6の低級アルキル基を表し、R2、R3及びR4は各々独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、R5は炭素数1〜6の低級アルキル基を表す。〕
【0013】
また本血管新生抑制剤において、ポリアルコキシフラボノイドとしては、下記式(II)で表されるポリメトキシフラボノイドが好ましい。
【0014】
【化6】
〔式中、R11は水素原子又はメチル基を表し、R12、R13及びR14は各々独立に水素原子又はメトキシ基を表す。〕
【0015】
本血管新生抑制剤において利用可能なポリメトキシフラボノイドとしては、例えばこれに限定するものではないが、下記表1に示す置換基(R11〜R14)を有する式(II)で表される化合物が挙げられる。
【0016】
【表1】
【0017】
本発明において、本血管新生抑制剤は、1種のポリアルコキシフラボノイドを含有するものであってもよいし、又は2種以上のポリアルコキシフラボノイドを組み合わせて含有するものであってもよい。本血管新生抑制剤は、ポリアルコキシフラボノイドを有効成分として含有する限り、下記の血管新生抑制作用を発揮する。
【0018】
上記ポリアルコキシフラボノイドは、既にマトリックスメタロプロテアーゼ産生阻害作用が報告されており(特許第3010210号)、また本発明者は、ポリアルコキシフラボノイドの新たな血管形成の抑制作用、血管内皮細胞の増殖抑制作用、プラスミノーゲンアクチベーター活性の抑制作用、血管内皮細胞による管腔形成の抑制作用を確認し、ポリアルコキシフラボノイドが複数の内皮細胞機能を阻害することによって、血管新生抑制作用を有することを証明した。またポリアルコキシフラボノイドは、本発明者によるddy系マウスを用いたノビレチンの急性毒性試験の結果では、LD50(50%致死濃度)が1.39g/kgであり、毒性はほぼないといえる。また、Denlany et alは、ポリメトキシフラボノイドに遺伝子毒性がないことを報告している(Denlany et al., Food Chem. Toxicol. 40:617−624 (2002))。従って、ポリアルコキシフラボノイドは細胞毒性が低く、副作用が少ないため長期投与が可能であるという医薬上の利点を有する。また脂溶性が高いことや薬物排泄タンパク質であるp−糖タンパク質の阻害作用(Er−jia Wang et al., Chem. Res. Toxicol. 2001, 14, 1596−1603)があり、細胞への移行度が高いという医薬上の利点も有する。
【0019】
2.血管新生抑制剤
ポリアルコキシフラボノイドは、上述したように、複数の血管新生抑制作用を示す。従って、ポリアルコキシフラボノイドは、血管新生抑制剤として用いることが可能である。本発明において、本血管新生抑制剤には、ポリアルコキシフラボノイド、好ましくはポリメトキシフラボノイドを有効成分として配合する。ここで、ポリメトキシフラボノイドとしては、特に5−デメチルノビレチン、タンゲレチン、ノビレチン、8−デメトキシノビレチン、6−デメトキシタンゲレチン、及び6−デメトキシノビレチンが好ましい。
【0020】
血管新生は、種々の疾患と関係しており、そのような血管新生が関係する疾患としては、血管新生がその発症原因の1つとして関与して発症する疾患、例えば、リウマチ性関節炎、乾癬症、浮腫性硬化症、糖尿病性網膜症、未熟児性網膜症、鎌状赤血球網膜症、網膜静脈閉塞症、角膜移植又は白内障手術に伴う血管新生、血管新生性緑内障、虹彩ルベオーシス、老人性円板状黄斑部変性症、各種腫瘍、粥状動脈硬化巣外膜の異常毛細血管網、コンタクトレンズ長期装用による角膜内の血管新生などが挙げられる。さらに具体的には、固形腫瘍の増殖・転移、糖尿病性網膜症、後水晶体繊維増殖症、緑内障、血管腫、繊維性血管腫、アテローム性動脈硬化症、乾癬、慢性炎症疾患などが挙げられる。
本血管新生抑制剤は、上記血管新生に関連する疾患の予防及び/又は治療薬として有用である。
【0021】
本血管新生抑制剤は、有効成分であるポリアルコキシフラボノイドの他、薬学的に許容される担体及び/又は添加物を共に含むものであってもよい。このような担体及び添加物の例としては、水、薬学的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などの他、リポゾームなどの人工細胞構造物などが挙げられる。使用される添加物は、医薬組成物の剤形に応じて上記の中から適宜又は組み合わせて選択される。
【0022】
本血管新生抑制剤は、経口的又は非経口的に投与することができる。
上記組成物を経口的に投与する場合は、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤などの固形製剤、あるいは液剤、懸濁剤、シロップ剤などの液体製剤等としてポリアルコキシフラボノイドを製剤化すればよい。特に顆粒剤及び散剤は、カプセル剤として単位投与剤形としてもよいし、また液体製剤の場合には使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。
【0023】
上記剤形のうち経口用固形製剤は、通常それらの組成物中に薬学上一般に使用される結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤などの添加剤を含有する。また、経口用液体製剤は、通常それらの組成物中に薬学上一般に使用される安定剤、緩衝剤、矯味剤、保存剤、芳香剤、着色剤などの添加剤を含有する。
【0024】
本血管新生抑制剤を非経口的に投与する場合は、注射剤又は坐剤などの剤形とすることができる。例えば注射剤は、ポリアルコキシフラボノイドを溶液、懸濁液、乳液などに溶解又は懸濁して調製されるものであり、通常単位投与量アンプル又は多投与量容器の形態で提供される。また注射剤は、使用する際に適当な担体、例えば発熱物質不含の滅菌水に再溶解させる粉剤であってもよい。注射手法としては、例えば点滴静脈内注射、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、皮内注射が挙げられる。これらの非経口投与剤形は、通常それらの組成物中に薬学上一般的に使用される乳化剤、懸濁剤などの添加剤を含有する。
【0025】
上記組成物に配合するポリアルコキシフラボノイドは、その用途、剤形、投与経路などにより異なるが、例えば、総重量を基準として1〜70重量%、好ましくは30〜60重量%である。
【0026】
また、その投与量は、投与対象の年齢及び体重、投与経路、投与回数により異なり、広範囲に変更することができる。例えば、ポリアルコキシフラボノイドと適切な希釈剤及び薬学的に使用しうる担体との組み合わせとして投与される有効量は、経口的に投与する場合には、1日につき体重1kg当たり0.01〜0.5gであり、1日間から2日間の間隔で投与される。
【0027】
本血管新生抑制剤を投与する対象としては、限定するものではないが、ヒト、家畜、愛玩動物、実験動物などでありうる。
また、本血管新生抑制剤は、食品又は飼料に添加して用いてもよい。「食品」及び「飼料」とは、栄養素を1種以上含む天然物及びその加工品をいい、あらゆる飲食物を含む。本血管新生抑制剤が配合された食品及び飼料は、血管新生が関係する疾患の予防及び/又は治療のための健康補助用機能性食品として有用である。
【0028】
本血管新生抑制剤を配合する食品としては、米飯類、菓子類、麺類、カマボコ・チクワ等の水産練り製品、ハム・ソーセージ等の畜肉加工品、清涼飲料・果実飲料等の飲料類、マヨネーズ・ドレッシング・味付け調味液等の調味料等が挙げられるが、これらに限定されない。食品への本血管新生抑制剤の配合は、例えば混合、浸漬、塗布、噴霧等の方法で行うことができる。これらの食品には、通常の食品に使用される着色料、香料、甘味料、酸味料等を適宜配合してもよい。食品に配合する本血管新生抑制剤(ポリアルコキシフラボノイド)の量は、例えば10〜500g/kgであり、好ましくは30〜300g/kgである。
【0029】
本血管新生抑制剤を配合する飼料としては、家畜・家禽・魚類用の粉状、練り製品状又はペレット状の飼料等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの飼料には、通常の飼料に使用される着色料、香料等を適宜配合してもよい。飼料に配合する本血管新生抑制剤(ポリアルコキシフラボノイド)の量は、例えば10〜500g/kgであり、好ましくは30〜300g/kgである。
【0030】
【実施例】
本発明を以下の実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
〔製造例〕
柑橘類の1種であるシイクワシャー(Citrus depressa)の果皮のフラベドの部分を剥皮し、これをアセトン中に液浸し、粗フラボノイド抽出液を得る。これを濃縮乾固した後、50%メタノールに溶かし、オクタデシルシリカゲルを担体とする逆相系カラム、溶離液としてメタノール−10mMリン酸(4:6→6:4)を用い、紫外線吸収検出器(340nm)でモニターしながら分取を行う。得られた分画を濃縮乾固することで目的のポリアルコキシフラボノイドを得ることができる。
【0032】
代表的な6種のポリメトキシフラボノイドについて、その具体的な理化学的性質を以下に記載する。
【0033】
5−デメチルノビレチン:
淡黄色粉末
EI−MS m/z 388 [M]+ (C20H20O8)
IR νmax(KBr)cm−1: 3420, 2945, 2830, 1640, 1610, 1585, 1510, 1480, 1460,1435, 1430, 1415, 1365, 1340, 1265, 1225, 1190, 1170, 1145, 1115, 1065,1035, 1030, 1015, 960, 850, 835, 795.
1H−NMR(CDCl3)δ 12.53 (s,OH), 7.58 (1H,dd,J=8.6,2.0Hz), 7.42 (1H,d,J=2.0Hz), 6.99 (1H,d,J=8.6Hz), 6.60 (1H,s), 4.11 (3H,s), 3.98 (3H×2,s), 3.96(3H,s), 3.95 (3H,s).
13C−NMR(CDCl3)δ 182.9 (C=O), 163.9 (C), 153.0 (C), 152.5 (C), 149.5 (C), 149.4 (C), 145.7 (C), 136.6 (C), 132.9 (C), 123.7 (C), 120.1 (CH), 111.3 (C), 108.8 (CH), 107.0 (C), 104.0 (CH), 62.0 (OMe), 61.7 (OMe), 61.1 (OMe), 56.1 (OMe), 56.0(OMe).
【0034】
タンゲレチン:
無色針状結晶(クロロホルム、メタノール混液より再結晶して得られる)
融点150〜151℃
EI−MS m/z 372 [M]+ (C20H20O7)
IR νmax(KBr)cm−1: 2945, 2835, 1645, 1605, 1580, 1510, 1480, 1460, 1420,1400, 1365, 1305, 1260, 1215, 1175, 1130, 1105, 1065, 1025, 1015, 1000,965, 945, 935, 890, 825, 795.
UV λmax(EtOH)nm: 322, 272.
1H−NMR(CDCl3)δ 7.87 (2H,d,J=8.9Hz), 7.02 (2H,d,J=8.9Hz), 6.59 (1H,s), 4.09 (3H,s), 4.02 (3H,s), 3.94 (3H×2,s), 3.88 (3H,s).
13C−NMR(CDCl3)δ 177.3 (C=O), 162.3 (C), 161.2 (C), 151.3 (C), 148.4 (C), 147.7 (C), 144.1 (C), 138.1 (C), 127.7 (CH×2), 123.8 (C), 114.9 (C), 114.5 (CH×2), 106.7 (CH), 62.2 (OMe), 62.0 (OMe), 61.8 (OMe), 61.6 (OMe), 55.5 (OMe).
【0035】
ノビレチン:
無色針状結晶(クロロホルム、メタノール混液より再結晶して得られる)
融点137〜138℃
EI−MS m/z 402 [M]+ (C21H22O8)
IR νmax(KBr)cm−1: 2950, 2840, 1640, 1585, 1565, 1510, 1480, 1460, 1415,1410, 1365, 1335, 1300, 1275, 1255, 1220, 1205, 1170, 1145, 1100, 1075,1035, 1030, 1015, 965, 950, 905, 860, 835, 810, 800.
UV λmax(EtOH)nm: 331, 271, 250.
1H−NMR(CDCl3)δ 7.55 (1H,dd,J=8.5,2.1Hz), 7.39 (1H,d,J=2.1Hz), 6.97 (1H,d,J=8.5Hz), 6.59 (1H,s), 4.08 (3H,s), 4.01 (3H,s), 3.96 (3H,s), 3.94 (3H,s), 3.93 (3H×2,s).
13C−NMR(CDCl3)δ 177.2 (C=O), 160.9 (C), 151.9 (C), 151.3 (C), 149.2 (C), 148.3 (C), 147.6 (C), 144.0 (C), 137.9 (C), 123.9 (C), 119.5 (CH), 114.8 (C), 111.2 (CH), 108.5 (CH), 106.8 (CH), 62.2 (OMe), 61.9 (OMe), 61.7(OMe), 61.6 (OMe), 56.0 (OMe), 55.9 (OMe).
【0036】
シネンセチン:
白色粉末
EI−MS m/z 372 [M]+ (C20H20O7)
IR νmax(KBr)cm−1: 2990, 2935, 2820, 1635, 1595, 1505, 1485, 1460, 1445,1425, 1415, 1345, 1320, 1285, 1265, 1255, 1245, 1215, 1205, 1200, 1165,1145, 1115, 1095, 1060, 1020, 985, 955, 865, 835, 815, 785, 760.
1H−NMR(CDCl3)δ 7.50 (1H,dd,J=8.5,2.1Hz), 7.32 (1H,d,J=2.1Hz), 6.96 (1H,d,J=8.5Hz), 6.79 (1H,s), 6.58 (1H,s), 3.99 (3H,s), 3.98 (3H,s), 3.97 (3H,s), 3.95 (3H,s), 3.91 (3H,s).
13C−NMR(CDCl3)δ 177.1 (C=O), 161.1 (C), 157.6 (C), 154.5 (C), 152.6 (C), 151.8 (C), 149.3 (C), 140.3 (C), 124.1 (C), 119.6 (CH), 112.9 (C), 111.2 (CH), 108.7 (CH), 107.4 (CH), 96.2 (CH), 62.2 (OMe), 61.5 (OMe), 56.3(OMe), 56.1 (OMe), 56.0 (OMe).
【0037】
6−デメトキシタンゲレチン:
白色粉末
EI−MS m/z 342 [M]+ (C19H18O6)
IR νmax(KBr)cm−1: 3000, 2945, 2845, 1635, 1600, 1570, 1505, 1460, 1420,1405, 1375, 1340, 1305, 1295, 1255, 1245, 1210, 1185, 1175, 1135, 1110,1045, 1030, 875, 960, 930, 880, 840, 810, 800.
1H−NMR(CDCl3)δ 7.87 (2H,d,J=9.0Hz), 7.01 (2H,d,J=9.0Hz), 6.58 (1H,s), 6.43 (1H,s), 3.99 (3H,s), 3.97 (3H,s), 3.94 (3H,s), 3.87 (3H,s).
13C−NMR(CDCl3)δ 177.8 (C=O), 162.1 (C), 160.6 (C), 156.4 (C), 156.3 (C), 151.9 (C), 130.8 (C), 127.6 (CH×2), 123.9 (C), 114.4 (CH×2), 109.1 (C), 106.9 (CH), 92.6 (CH), 61.5 (OMe), 56.6 (OMe), 56.3 (OMe), 55.4 (OMe).
【0038】
6−デメトキシノビレチン:
白色粉末
EI−MS m/z 372 [M]+ (C20H20O7)
IR νmax(KBr)cm−1: 2930, 2845, 1635, 1595, 1575, 1505, 1455, 1435, 1420,1400, 1375, 1340, 1320, 1295, 1275, 1255, 1230, 1210, 1205, 1170, 1135,1120, 1105, 1040, 1035, 1015, 965, 945, 855, 835, 800, 795.
1H−NMR(CDCl3)δ 7.58 (1H,dd,J=8.5,2.1Hz), 7.42 (1H,d,J=2.1Hz), 6.98 (1H,d,J=8.5Hz), 6.61 (1H,s), 6.44 (1H,s), 4.00 (3H,s), 3.98 (3H,s), 3.97 (3H,s), 3.95 (3H×2,s).
13C−NMR(CDCl3)δ 177.8 (C=O), 160.5 (C), 156.5 (C), 156.3 (C), 151.9 (C), 151.8 (C), 149.3 (C), 130.8 (C), 124.1 (C), 119.5 (CH), 111.2 (CH), 109.1 (C), 108.6 (CH), 107.2 (CH), 92.6 (CH), 61.5 (OMe), 56.6 (OMe), 56.3(OMe), 56.0 (OMe), 55.9 (OMe).
【0039】
〔実施例1〕鶏胚漿尿膜法
血管新生抑制作用を検定するための鶏胚漿尿膜法は既に報告されている方法に従って行った(Oikawa, T. et al., 1989, Cancer Lett., 48:157−162)。すなわち、孵卵0日の鶏受精卵(大宮家禽より入手)の気室を上にして4.5日間37℃の孵卵器内で培養後、漿尿膜上に各種用量のノビレチンを含有するエチレンビニールアセテート共重合体のペレットを静置した。同条件下でさらに2日間培養後、漿尿膜で包まれた嚢内に適当量の脂肪乳剤を注入して漿尿膜上の血管網を実体顕微鏡下で観察し、陽性と陰性の2段階に分けて判定した。すなわち、処理した鶏卵漿尿膜上に径3mm以上の無血管ゾーンが形成された場合、血管新生抑制作用は陽性と判定し、それ以下の場合は陰性と判定した。少なくとも13個以上の受精鶏卵を試験に用い、陽性を示す受精鶏卵の頻度を全受精鶏卵に対する割合により求めた。
【0040】
その結果を図1に示す。鶏卵は、計6.5日間のインキュベーションによってCAM(漿尿膜)上に新たな血管が形成されるが、ノビレチン処理を行った卵では、血管新生がみられなかった。図1に示すように、ノビレチンの血管新生抑制作用は用量依存的であり、ID50(50%抑制用量)は24.9nmol/卵であった。
【0041】
〔実施例2〕ヒト血管内皮細胞の増殖に対するノビレチンの作用
血管新生抑制の作用点としては、血管内皮細胞の増殖の抑制がある。従って、本実施例においては、ノビレチンの存在下におけるヒト血管内皮細胞の増殖能を既に報告されている方法を用いて測定した(Uchida, M. et al, 2000, Cancer Lett., 154:63−69;及びOikawa, T. et al., 1998, Biochem. Biophys. Res. Commun., 246:243−248)。ゼラチンコートしたフラスコ(イワキ社製)内壁上で半集密的な状態に増殖したヒト血管内皮細胞(国内販売代理店:大日本製薬(株))を10mlのPBS−(マグネシウムイオンとカルシウムイオンを含まないリン酸塩で緩衝化した生理食塩水)で洗浄後、1mlの0.05%トリプシン/0.02% EDTA(エチレンジアミン四酢酸)で約1分間処理してフラスコ壁から浮遊させた。適当量の10%ウシ胎児血清含有完全培地(MCDB131+10μg/ml内皮細胞成長添加剤(ECGS)+10ng/ml上皮成長因子(EGF)+10μg/mlヘパリン)を添加して酵素反応を停止させた後に、ピペッティングして細胞浮遊液を調製した。次いで、コールターカウンターで細胞数を計測し、10%ウシ胎児血清含有同完全培地で希釈して最終的に1×104細胞/mlの細胞浮遊液を調製した。この細胞浮遊液1mlをゼラチンコートした24ウエルプレートの各ウエルに播種し、各種濃度のノビレチン存在下で37℃で5%炭酸インキュベーター内で培養した。72時間培養後、PBS−で洗浄してから0.25%トリプシンで処理して、細胞を浮遊させた。その後、コールターカウンターで細胞数を計測した。
【0042】
その結果を図2に示す。図2に示すように、ノビレチンは、用量依存的に血管内皮細胞の増殖を抑制し、IC50(50%阻害濃度)は34μmol/lであることがわかる。
【0043】
〔実施例3〕ヒト血管内皮細胞のPA活性レベルに対するノビレチンの作用血管新生抑制の他の作用点としては、プラスミノーゲンアクチベーター(PA)活性の抑制が知られている。従って、本実施例においては、ヒト血管内皮細胞のPA活性レベルに対するノビレチンの作用を、既に報告されている方法を用いて測定した(Uchida, M. et al, 2000, 前掲;及びOikawa, T. et al., 1998, 前掲)。
【0044】
(a)ノビレチン処理
実施例2と同様の方法で細胞浮遊液を10%ウシ胎児血清完全培地で調製後、1×105細胞/cm2になるようにゼラチンコート処理フラスコに播種した。24時間培養した後に0.1%ウシ血清アルブミン含有MCDB131で2回洗浄し、各種濃度のノビレチン存在下で10%ウシ胎児血清含有完全培地中で18時間培養した。次いで、PBS−で洗浄後、ラバーポリスマンを用いて細胞を1.5mlチューブに剥離・回収し、この中にTriton X−100が最終濃度0.5%になるように加え、4℃で1時間撹拌した。その後、遠心(15,000rpm、30分、4℃)して上清を採取し、PA活性測定とタンパク質定量まで−30℃で保存した。
【0045】
(b)PA活性測定
96ウエルプレートを用いてPA活性を測定した。すなわち、氷冷下100μlの基質溶液(0.95mM S−2251+1.25U/mlプラスミノーゲン+0.2M Tris−HCl、pH7.4)に25μlのサンプルを添加してミキシングした後に、37℃で4時間反応した。酵素反応は75μlの67%酢酸を加えて停止させた後、マイクロプレートリーダー(吸光度405nm)で測定した。活性量は、同時に測定したウロキナーゼを用いて得られた標準曲線から算出した。
【0046】
その結果を図3に示す。図3に示すように、ノビレチンは、用量依存的にプラスミノーゲン活性を抑制していることがわかる。この抑制は、乳癌の血管新生抑制を作用機序とすることが知られている制癌剤、酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)と同レベルであった。
【0047】
(c)タンパク質量
タンパク質量は、DCプロテインアッセイ(Bio−Rad社)を用いて定量した。結果を図4に示す。図4から、ノビレチン処理したヒト血管内皮細胞抽出物中のタンパク質量は、MPAと同レベルであることがわかる。
【0048】
〔実施例4〕マトリゲル上でのヒト血管内皮細胞による管腔形成に対するノビレチンの作用
本実施例においては、血管新生抑制のin vitro検定システムとして一般的に用いられているマトリゲルを用いて(Oikawa, T. et al., 1998, 前掲;及びOikawa, T. et al., 2001, Jpn. J. Cancer Res., 92:1225−1234)、ノビレチンの存在下におけるマトリゲル上でのヒト血管内皮細胞による管腔形成能を検討した。
【0049】
(a)マトリゲルの作製
氷冷下24ウエルプレートの各ウエルに10mg/mlマトリゲル(ベクトン・ディッキンソン製)を0.2ml添加した後に、5%CO2インキュベーター内(37℃)でゲル化させた。
【0050】
(b)ノビレチン処理
実施例2と同様の方法で細胞浮遊液(完全培地+10%FBS中)を調製後、2×104細胞/cm2になるようにゼラチンコート処理フラスコに播種し、各種濃度のノビレチン存在下、37℃で24時間5%CO2インキュベーター内で培養した。次いで、0.1%ウシ血清アルブミン含有MCDB131で2回洗浄後、0.05%トリプシン/0.02%EDTAで約1分間処理してフラスコ壁から浮遊させた。適当量の1%FBS+完全培地を添加して酵素反応を停止させた後、ピペッティングして細胞浮遊液を調製した。コールターカウンターで細胞数を計測した後、1%FBS+完全培地で希釈して最終的に1×105細胞/mlの細胞浮遊液を調製した。その後、最終濃度が0、8、32又は128μMとなるようにノビレチンを加え、この細胞浮遊液1mlを上記(a)でゲル化させたマトリゲル上に静かに播種して、37℃で16時間、5%CO2インキュベーター内で培養した。その後、位相差顕微鏡(ライカ製;倍率100倍)で観察し、その画像をCCDカメラを使ってディスクに取り組んだ。これらのデータを画像解析装置(ライカ;Q500C)で計測し、ヒト血管内皮細胞が形成する管腔の長さを算出した。
【0051】
その結果を図5に示す。図5に示すように、ノビレチンにより、マトリゲル上における血管内皮細胞の管腔形成が有意に抑制された。
【0052】
【発明の効果】
本発明により、血管新生抑制剤が提供される。本血管新生抑制剤は、血管新生に直接関与する複数の内皮細胞機能を阻害することによって血管新生抑制作用を示すため、血管新生が関係する疾患の予防及び治療に有用である。また本血管新生抑制剤は、細胞毒性が低いため、副作用がないという医薬製剤としての利点を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】鶏胚漿尿膜における血管新生に対するノビレチンの作用を示す図である。
【図2】ヒト内皮細胞の増殖に対するノビレチンの作用を示す図である。
【図3】ヒト内皮細胞におけるプラスミノーゲンアクチベーターレベルに対するノビレチンの作用を示す図である。
【図4】ヒト血管内皮細胞抽出物中のタンパク質量に対するノビレチンの作用を示す図である。
【図5】マトリゲル上におけるヒト内皮細胞による管腔形成に対するノビレチンの作用を示す図である。
Claims (4)
- ポリメトキシフラボノイドが、5−デメチルノビレチン、タンゲレチン、ノビレチン、8−デメトキシノビレチン、6−デメトキシタンゲレチン及び6−デメトキシノビレチンからなる群より選択されるものである、請求項2記載の血管新生抑制剤。
- 血管新生が関係する疾患の予防及び/又は治療薬として使用する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の血管新生抑制剤。
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