JP4540986B2 - ワートマニン類似体およびそれらを用いる方法 - Google Patents

ワートマニン類似体およびそれらを用いる方法 Download PDF

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Description

本出願は、2001年9月14日に出願された米国仮出願第60/322,139号に優先権を主張しており、全体としてここに参照のために示される。
本発明はワートマニン類似体に関することであり、そしてこれらの誘導体を、PI−3キナーゼ活性の阻害、およびある種の悪性腫瘍の治療のために用いる方法への応用である。ワートマニンはフォスファチジルイノシトール−3−キナーゼ(PI−3キナーゼ)の阻害薬および抗がん剤として効果のある物質として知られている。ワートマニンはペニシリウムワートマニンの培養液から単離された自然発生の化合物であり、ここに参照として示す米国特許番号5,480,906に示される基本構造を持つ。
ワートマニンの欠点の1つは、生きている生物への毒性である。低用量でさえ、純粋なワートマニンは実験動物に対してしばしば致死的であった。
本発明は新規のワートマニン類似体、および対象においてがんを阻害する方法を示すものであり、対象に、図1−3に示されるワートマニン類似体で構成される集団から選択された化合物を、薬学的に有効な量投与することを有する。
本発明は、本発明の化合物の1つを効果的な量投与して、哺乳類でのPI−3キナーゼ活性を阻害する方法も規定している。PI−3キナーゼ活性はある種のがんの要因であるために、本発明は抗がん(抗腫瘍)剤としてこれらの化合物を用いることも規定し、さらには薬学的に許容されるキャリア、レシピエント、希釈剤と混合した化合物を含む、薬学的な剤形も規定する。
別の例では、本発明は、ワートマニン類似体がある対象において再狭窄を阻害するのに有用であることを示す。本発明は、ステント、もしくはワートマニン類似体で覆われている生体人工物(bioprosthetic)インプラントなどの他の器具を有する。また、本発明は、ワートマニン類似体をある対象に薬学的に効果的な量投与する工程も指示する。ワートマニン類似体はここで述べられるいずれの形態であってよく、しかし、図1−3で示されるワートマニン類似体で構成される集団から選択されることが好ましく、さらには図2であることが好ましい。再狭窄の治療に有効であると期待される本発明の類似体は以下の一般的な化学構造で表される:
Figure 0004540986
ここにおいて、Yはヘテロ原子、好ましくはNもしくはSであり、そしてR1、R2は不飽和アルキル、非線形アルキル、分岐アルキル、置換アルキルもしくは環状アルキルのいずれかである。
本発明の詳細な記述
本発明は、ワートマニン類似体ががんの阻害に有用であるという発見に関する。図1は本発明に従う化合物の一般的な構造を示す。図2は本発明に従う特有ワートマニン類似体を示し、図3は本発明に従い、有用である可能性のあるほかのワートマニン類似体を示す。
ワートマニンの生合成は本分野ではよく知られており、その類似体はワートマニンから合成される。本明細書にその全てを参照としている米国特許番号5480906に典型的な合成経路が述べられている。一般的にワートマニンは、タラロマイセスワートマニンやペニシリウムワートマニン、クワ暗斑病菌、およびフザリウムのなどのすでに知られた微生物うちの1つを発酵させることにより合成される。発酵後、ワートマニンが抽出され、すでに知られた方法により精製される。好ましくは、ワートマニンは微生物学的に合成され、発酵培地(このような発酵培地は、A24603.1として認識される)から純粋な形態で単離されるのがよい。
浸水好気条件下、適当な培地でワートマニンが充分回収できる量だけ生成するまでその菌株を培養すると、ワートマニンが得られる。ワートマニンは本分野で知られた様々な単離、生成方法を用いて回収されうる。
培養菌を育てるための培地はたくさんの培地のうちいずれか1つであればよい。経済的に、最適の生成量で合成し、そして生成物の単離を容易にするために、しかしながら、大容量規模発酵での好ましい炭素源は、グルコースおよびコーンスターチなどの可溶性でんぷんである。マルトース、リボース、キシロース、フルクトース、ガラクトーズ、マンノース、マンニトール、芋デキストリン、オレイン酸メチル、ダイズ油などの油類、そしてそれらの類似物も使用してもよい。
好ましい窒素源は酵素−加水分解化カゼインおよび綿実小麦粉であるが、ペプシン化ミルク、消化大豆ミール、魚ミール、コーンスティープリカー、酵母エキス、酸−加水分解化カゼイン、牛エキス、そしてそれらの類似物を用いてもよい。
培養に加えられうる栄養源となる無機塩類は、通常用いられる可溶性塩であり、それらはカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、アンモニウム、塩化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、亜鉛、そしてそのようなイオン類を生じうる。有機物の成長および発達に必要な必須微量元素も培養培地に加えなければならない。そのような微量元素は一般的に、その有機物の成長に充分必要な量で、その培地のほかの置換物(substituents)に不純物として存在する。
充分な量のワートマニンを産生させるためには、攪拌型生物反応での浸水好気発酵が好ましい。少量のワートマニンは、振盪フラスコ培養によって得ることができる。大容量の生物反応物にその有機物の芽胞形態を接種すると起こる一般的な生成における時間的ずれのために、栄養型の接種材料を用いることが望ましい。新鮮で活発に成長する培養のために、栄養型の接種材料は、少量の培養培地にその有機物の菌糸または芽胞体を接種することで調整される。栄養型の接種培地は、より大きい発酵に用いられるのと同じものでよいが、他の培地でもよい。
その生成の後、ワートマニンは本分野で用いられる方法により、発酵培地から回収されうる。たとえば、A24603.1の有機物の発酵では、生成したワートマニンは主に培養液中にある。
概して、ワートマニンは様々な技術により生物量(バイオマス)から回収されうる。好ましい技術は、セラミックフィルターで全発酵培養液をろ過するものである。そのろ過物は酢酸エチルなどの有機溶媒で溶出され、そして濃縮される。その濃縮物は結晶が生じるまでアルコールに浮遊させ、その溶液はろ過、洗浄そして乾燥される。確認のため、その結晶を有機溶媒に溶かし、逆相シリカゲル吸着剤(CもしくはC18)にてクロマトグラフィを行う。分画は60%アセトニトリルなどの有機−水バッファにて溶出される。
ワートマニンはさらに本発明の化合物に至るまで操作される。特有なワートマニンの類似体の合成を以下に示すが、本分野に共通のほかの合成経路でも、本分野に熟練した人ならば本発明に一致する化合物を合成することができ、決してここに挙げた合成経路に限るものではない。
酢酸4−ジアリルアミノメチレン−6−ヒドロキシ−1−α−メトキシメチル−10β,13β−ジメチル−3,7,17−トリオキソ−1,3,4,7,10,11β,12,13,14α,15,16,17−ドデカヒドロ−2−オキサ−シクロペンタ〔α〕フェナンスレン−11−イル エステル(djm2−166)
Figure 0004540986
塩化メチレン(125μL)にワートマニン(10.7mg,25μmol)を溶解し、この溶液を、準備したての、塩化メチレンに溶解したジアリルアミン(138μL,27.5μmol)0.2Mストック溶液に加える。その反応混合液を室温で1時間攪拌する。その溶媒と過剰のアミンは真空状態で取り除かれ、そしてその生成物は二酸化ケイ素(ヘキサン/酢酸エチル 1:9)を用いたクロマトグラフィにより精製され、djm2−166(9.0mg,17μmol,68%)の橙色の油状物質を与えた:〔α〕−630(c0.0015,CHCl,23℃);IR(KBr)3391,1743,1695,1685,1622,1569,1222,1111,1100cm−1H NMRδ8.20(s,1H),6.81(s,1H),6.06(dd,1H,J=7.4,4.8Hz),5.85(br s,1H),5.62(br,1H),5.44−5.04(m,4H),4.48(dd,1H,J=7.2,1.9Hz),4.05−3.60(m,4H),3.26(s,3H),3.27−3.20(m,1H),3.16(dd,1H,J=10.9,7.2Hz),3.00−2.90(m,2H),2.59(dd,1H,J=19.4,8.6Hz),2.40(dd,1H,J=14.4,7.7Hz),2.35−2.07(m,2H),2.07(s,3H),1.83(dd,1H,J=14.4,4.7Hz),1.54(s,3H),0.86(s,3H);13C NMRδ217.0,178.5,169.6,164.8,156.3,151.5,139.0,136.9,132.2,131.3,127.7(2C),119.2,89.0,81.9,73.1,67.6,59.1,50.9(2C),48.9,42.3,42.2,37.5,36.0,24.6,22.2,20.8,16.1;MS(EI)m/z(rel.intensity)525(M,11),466(17),391(15),350(14),323(13),266(17),239(17),60(100);HRMS(EI) C2935NO 525.2363と計算され、525.2386であると分かった。
酢酸6−ヒドロキシ−1α−メトキシメチル−10β,13β−ジメチル−3,7,17−トリオキソ−4-ピロリジン−1−イル−メチレン−1,3,4,7,10,11β,12,13,14α,15,16,17−ドデカヒドロ−2−オキサ−シクロペンタ〔α〕フェナンスレン−11−イル(djm2−167)
Figure 0004540986
塩化メチレン(200μL)にワートマニン(30.0mg,70.0μmol)を溶解し、この溶液を、塩化メチレンに溶解したピロリジン(7.0μL、84μmol)に加える。その反応混合液を室温で一時間攪拌する。その溶媒と過剰のチオールは真空状態で取り除かれ、そしてその生成物は二酸化ケイ素(ヘキサン/酢酸エチル 9:1、続いて1:1)を用いたクロマトグラフィにより精製され、djm2−167(30.0mg,60.6μmol,86%)の橙色の油状物質を与えた:〔α〕−390(c0.0073,CHCl,23℃);IR(KBr)3337,1740,1684,1617,1570,1261,1221,1099,1018cm−1H NMRδ8.29(s,1H),6.72(s,1H),6.07(dd,1H,J=6.9,4.8Hz),4.47(dd,1H,J=7.0,1.9Hz),3.80−3.70(m,2H),3.25(s,3H),3.25−3.14(m,2H),3.02−2.90(m,2H),2.69(br s,1H),2.58(dd,1H,J=19.1,8.4Hz),2.39(dd,1H,J=14.6,7.8Hz),2.32−2.08(m,2H),2.06(s,3H),1.99−1.95(m,5H),1.84(dd,1H,J=14.5,4.2Hz),1.56(s,3H),0.86(s,3H);13C NMRδ217.5,178.9,169.9,164.9,153.9,151.3,137.6,137.1,129.2,89.4,82.1,73.3,67.7,59.3,55.2,49.2(2C),42.6,42.4,37.8,36.3,25.6(2C),24.5,22.4,21.0,16.3;MS(EI)m/z(rel.intensity)499(M,1),439(2),365(7),167(35),149(100);HRMS(EI) C2733NO 499.2206と計算され、499.2191であると分かった。
酢酸4−〔(ベンジルメチルアミノ)メチレン〕−6−ヒドロキシ−1α−メトキシメチル−10β,13β−ジメチル−3,7,17−1,3,4,7,10,11β,12,13,14α,15,16,17−ドデカヒドロ−2−オキサ−シクロペンタ〔α〕フェナンスレン−11−イル エステル(djm2−181)
Figure 0004540986
塩化メチレン(125μL)にワートマニン(10.7mg、25μmol)を溶解し、この溶液を、準備したての塩化メチレンに溶解したN−メチルベンジルアミン(185μL,37μmol)の0.2M溶液に加える。その反応混合液を室温で2時間攪拌する。その溶媒は真空状態で取り除かれ、そしてその生成物は二酸化ケイ素(ヘキサン/酢酸エチル 1:9)を用いたクロマトグラフィにより精製され、djm2−181(13.3mg、24.2μmol、97%)の橙色の油状物質を与えた:〔α〕−835(c0.0014,CHCl,23℃);IR(neat)1742,1685,1618,1589,1575,1224cm−1H NMRδ8.36(br s,1H),7.36−7.27(m,5H),6.60(bs s,1H),6.10−6.00(m,1H),4.68−4.63(m,1H),4.53−4.47(m,2H),3.25(s,3H),3.25−3.11(m,2H),2.99−2.84(m,2H),2.71(br,2H),2.55(dd,1H,J=19.5,8.9Hz),2.38(dd,1H,J=14.4,7.6Hz),2.32−2.05(m,2H),2.05(s,3H),1.85(br s,1H),1.80(dd,1H,J=14.5,4.7Hz),1.52(s,3H),0.82(s,3H);13C NMRδ217.3,178.9,169.9,164.7,158.3,151.7,138.8,137.1,134.9,129.0(3C),128.6,128.1(2C),88.7,82.2,73.4,67.9,64.3,59.4,49.1,42.7,42.5,37.8(2C),36.3,25.2,22.5,21.1,16.3;MS(EI)m/z(rel.intensity)549(M,14),489(37),415(15),120(23),91(100);HRMS(EI)C3135NO 549.2363であると計算され、549.2340であると分かった。
ある指定された適応症の治療のために、図1−3のワートマニン類似体がそのままの形で投与されるかもしくは、非経口、経皮、直腸、鼻腔、局所静脈内投与、もしくは好ましくは経口投与のために、単位用量の薬剤に化合物化され、製剤化されることができる。そのような薬剤は本分野でよく知られた方法で調整され、図1−3のワートマニン類似体で構成される集団から選択された少なくとも1つの活性化合物を有し、それは薬学的キャリアと結合している。本明細書中で用いられる"活性化合物"とは、その化合物もしくはその化合物の薬学的に許容される塩形態から選択された、少なくとも1つの化合物を意味する。
本明細書中で用いられる"効果的な量"とは、細胞の活性化、遊走もしくは増殖を阻害、遮断もしくは逆転することのできる本発明の化合物の量を意味する。ここに述べられた方法によって期待される事は、医学的な治療処置および/または予防処置の両方である。治療学的および/または予防的効果を得るために本発明に従い投与されるある化合物の明確な用量は、もちろんその症例を取り巻く特異的な状況、例えば、投与された化合物、投与経路、そして治療されているときの状態など、によって決定される。
その化合物は幅広い用量範囲にわたり効果的であり、たとえば、1日用量が一般的に0.001から10mg/kgの範囲内に落ち着き、さらに通常は0.01から1mg/kgの範囲である。しかし、投与されるべき効果的な量は、治療されているときの状態、投与される化合物の選択、そして選択された投与経路などの関連する状況を考慮して医師により決定されるのが通常であり、したがって、いずれにしろ上記の用量範囲は発明の範囲を制限するという事は意図しない。
"阻害する"という用語は、その症状の発現を妨げ、その症状を緩和し、もしくはその疾患、状態もしくは障害を取り除くために、本発明の化合物を投与することである。
このような合成物の中で、活性化合物は"活性成分"として知られている。その合成物を作る際、活性成分はたいていあるキャリアと混合されるか、もしくはあるキャリアにより希釈されるか、カプセル、小袋(Sachet)、紙もしくはほかの容器形態のキャリアの中に包まれる。キャリアが希釈剤であるとき、それは固体、半固体、もしくは液体のいずれであってもよく、賦形剤(Vehcle)、つまり活性成分を仲介する添加物として機能する。したがって、その合成物は錠剤、丸剤、散剤、甘味入り錠剤(lozenges)、小袋、オブラート(cachets)、エリキシル剤、乳剤、液剤、シロップ、懸濁剤、ソフトおよびハードゼラチンカプセル、滅菌注射溶液、そして滅菌包装散剤などの形態になりうる。
適切なキャリア、添加剤そして希釈剤の例は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、スターチ、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ケイ酸カルシウム、微細結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、トラガカント、ゼラチン、シロップ、メチルセルロース、安息香酸メチルおよびプロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、水、そして鉱油である。その製剤にはさらに、滑剤、湿潤剤、乳化および懸濁剤、保存剤、甘味剤もしくは風味剤を加えてもよい。その合成物は、活性成分を患者に投与した後に、即効的、持続的、もしくは遅延的に活性成分が放出するように、本分野で知られた方法により製剤化してもよい。
経口投与のために、ある化合物はキャリアや希釈剤と事前に混合され、錠剤に成型されるか、もしくはゼラチンカプセルに入れられる。あるいはその混合物は、10%水性グルコース溶液、等張食塩水、滅菌水、もしくはそれに相当する液体などに溶解し、静注もしくは注射により投与することができる。
"薬学的に許容される"とは、キャリア、希釈剤もしくは添加剤がその製剤のほかの成分と相溶性があり、それを飲む人に有害であってはならない。
がん治療のために活性化合物の阻害量を局所に配送することは、増殖部位の近郊または増殖部位にその化合物を投与する様々な技術により可能である。局所配送技術の例は限定的になることを意図するものではなく、利用できる技術の実例である。局所配送カテーテル、部位特異的キャリア、インプラント、直接注入、もしくは直接適用などの例がある。カテーテルによる局所配送は、薬剤を直接増殖部位に投与することができる。
インプラントによる局所配送は、薬剤を含むマトリックスを増殖病巣に外科的に置くことである。インプラントされたマトリックスは、拡散、化学反応もしくは溶媒活性化剤(solvent activators)により薬剤を放出する。
別の例は重合内腔封鎖による薬剤の配送である。この技術はカテーテルを用い、重合インプラントを内腔の内部表面に適用するものである。したがって、生物分解性の重合インプラントに組み込まれた薬剤は外科的部位で放出される。これは、PCT WO 90/01969(Schindler、Aug.23,1989)で述べられている。
インプラントによる局所配送の最後の例は、小胞もしくはマイクロ分子の増殖部位への直接注入によるものである。これらのマイクロ分子はタンパク、脂質、炭水化物、もしくは合成ポリマーなどの物質から成る。これらのマイクロ分子は、マイクロ分子内に、もしくはコーティングとしてマイクロ分子上に薬剤が存在する。マイクロ分子が組み込まれた配送システムは、Lange,Science 249:1527−1533(September,1990)およびMathiowitzら、J.App.Poly.Sci.,26:809(1981)に述べられている。
部位特異的キャリアによる局所配送は、薬剤を増殖病巣に直接配送するキャリアに薬剤を結合させることである。この配送技術の例はプロテインリガンドやモノクローナル抗体などのキャリアを用いたものがある。
直接適用による局所配送は、表面に適用することである。直接適用による局所配送の例は、動脈の腫瘍、もしくは腫瘍の切除後に残る部位に薬剤を適用することである。
ワートマニン類似体の製剤化は、発酵経路のように、本分野でよく知られている。合成経路や製剤化に関する詳細について述べるよりも、熟練した人に本発明を任せ、それらの一般的な合成および製剤化の技術を用いて、以下の一般的な式の化合物を合成する:
Figure 0004540986
ここで、Yはヘテロ原子であり、そしてR1、R2は不飽和アルキル、非線形アルキル、分岐アルキル、置換アルキルもしくは環状アルキルのいずれかである。好ましくは、本発明は図1−3に示される化学式に相当する式を有するのがよい。さらには、本発明は、図2で示されるものと一致する化学式であることが好ましい。
細胞の増殖はPI3−キナーゼ―AKT−mTORシグナル経路に依存している。さらに、PI3−キナーゼおよびAKTを通したシグナルはアポトーシスを阻害すると考えられている。
以下の表Iはワートマニン類似体の活性と生体内での毒性を表す。
Figure 0004540986
Figure 0004540986
酵素阻害―ワートマニンとその類似体がフォスファチジルイノシトール−3−キナーゼおよびmTORを阻害する能力が、50%阻害を引き起こす用量(IC50)として示されている。細胞毒性―ヒトMCF−7乳がん細胞の成長阻害がMTTアッセイを用い4日間測定され、50%阻害を引き起こす用量(IC50)として示されている。毒性―3匹のC57BL6マウスの群に、充分な化合物が利用できる用量、すなわちワートマニンを1、2もしくは3mg/kg、もしくはワートマニン類似体を1、3、9もしくは18mg/kg、毎日4日間腹腔内投与した。その動物は最終投与24時間後に殺され、その血液分画と血清生化学が決定された。観察された主要な毒性は、肝毒性およびリンパ球減少症であり、高用量投与時に赤血球数の減少と血清グルコースの上昇が伴った。毒性は最大耐用量、もしくは試験された最高用量で測定され、肝毒性は、血清ALTおよびASTの平均%上昇で表され、ワートマニンでの値を1.0として相対化している。リンパ球減少症は、リンパ球数の%減少で表され、ワートマニンでの値を1.0として相対化している。腫瘍細胞の成長を阻害するサロゲートとしては、低い肝毒性と高いリンパ球毒性が望ましい特徴である。強調されているのは、抗腫瘍検査のために作成されている化合物である。
上記の証拠に基づくと、PI3−キナーゼ活性阻害剤が細胞の成長と生存を阻害するだろうということが示唆された。さらに、PI3−キナーゼ活性阻害剤は局所炎症反応も阻害し、特に生体人工物のインプラントの場合には、長期の生着もしくはほかの生体人工物インプラントの有望な要因となりうる。原理的には、ワートマニン誘導体は、PI3−キナーゼ―AKT−mTOR経路の一時的遮断を誘導する理想的な薬剤になりうる。
図4−9はワートマニンとその類似体(図2参照)のPC−3ヒト前立腺がん;HT−29ヒト大腸がん;OVCAR−3ヒト卵巣腫瘍;体重減少;そして抗腫瘍活性に対する影響を示している。
別の例では、本発明は血管再狭窄の治療に用いられる可能性がある。血管再狭窄は、経皮的冠状動脈拡張術(PTCA)、アテローム切除、レーザー血管形成術および動脈バイパス術による遮断された動脈の外科処置の後に起こる主要な長期合併症である。PTCAを受ける患者の約35%で、術後3から6ヶ月以内に再閉塞が起こる。血管再狭窄の治療のための現在の戦略は、ステントなどの器具による機械的な処置、もしくはヘパリン、低分子量ヘパリン、クマリン、アスピリン、魚油、カルシウム拮抗剤、ステロイドおよびプロスタサイクリンを含む薬理学的治療である。
経皮的冠状動脈拡張術(PTCA)後の血管再狭窄は、初期および後期の相に特徴のある、ある細胞反応を示す。PTCA後数時間から数日に起こる初期の相は、血管攣縮を伴う血栓症によるものであり、後期の相は主に平滑筋細胞の過剰な増殖および移動に支配されることによる。この疾患では、細胞の運動性の上昇、平滑筋細胞とマクロファージによる集落形成が主に疾患の病原になっている。血管平滑筋細胞の過剰な増殖と移動が、PTCA、アテローム切除、レーザー血管形成術および動脈バイパス術の後に起こる冠動脈の再閉塞の主要な機序である。
再閉塞の病原論において、過剰な細胞の増殖と移動が起こるのは、血液中の細胞成分、および血管の再閉塞時に平滑筋細胞の増殖を仲介する損傷した動脈血管壁により生成される増殖因子の結果である。平滑筋の増殖および/もしくは移動を阻害する薬剤が再狭窄の治療および予防に有用である。さらに、平滑筋の炎症性反応を阻害する薬剤も再狭窄の治療および予防に有用である。本発明は、ワートマニンおよびある類似体を再狭窄の阻害薬として使用することを供するものである。
ここに述べる発明は、ステント、もしくはワートマニン類似体で覆われた生体人工物インプラントなどのほかの器具を有する。また、本発明は、ワートマニン類似体を薬学的に有効な量である対象に投与する方法を指示している。ワートマニン類似体は、本明細書で記したいずれの形態でもよいが、好ましくはは、図1−3に示されたワートマニン類似体から成る集団から選択されるのがよく、さらには、図2から選択されるのが好ましい。再狭窄の治療に有効であることが期待される本発明のワートマニン類似体は、以下の一般的な化学式で示される:
Figure 0004540986
ここにおいて、Yはヘテロ原子、好ましくはNもしくはSであり、そしてR1、R2は不飽和アルキル、非線形アルキル、分岐アルキル、置換アルキルもしくは環状アルキルのいずれである。
上記で述べたように、再狭窄の治療のために活性化合物の阻害量を局所に配送することは、増殖部位もしくはその近郊にその化合物を適用する様々な技術によって可能である。局所配送技術の例は限定的になることを意図するものではなく、利用できる技術の実例である。局所配送カテーテル、部位特異的キャリア、インプラント、直接注入、もしくは直接適用などの例がある。カテーテルによる局所配送は、薬剤を直接増殖部位に投与することができる。バルーン付きカテーテルを用いた局所配送の例は、EPO 383 492 A2および米国特許番号4,636,195(Wolinsky、Jan.13,1987)で述べられている。
インプラントによる局所配送は、薬剤を含むマトリックスを増殖病巣に外科的に置くことである。インプラントされたマトリックスは、拡散、化学反応もしくは溶媒活性化剤により薬剤を放出する。
インプラントによる局所配送の1つの例は、ステントの利用である。ステントは冠状動脈の虚脱および再閉塞を技術的に妨げるように設計されている。薬剤をステントに組み込むと、増殖部位に直接薬剤を配送できる。この技術による局所配送は、Kohn,Pharmaceutical Technology(October、1990)で述べられている。
別の例は、薬剤を含むポリマーが液体の状態で病巣に注入されるという配送システムである。そしてそのポリマーはその部位でインプラントを形成し治療する。この方法はPCT WO90/03768(Donn,Apr.19、1990)で述べられている。
部位特異的キャリアによる局所配送は、薬剤を増殖部位に直接配送するキャリアに薬剤を結合させることである。この配送技術の例は、プロテインリガンドやモノクローナル抗体などのキャリアを用いたものがある。
直接適用による局所配送は、表面に適用することである。直接適用による局所配送の例は、外科的処置の間に、動脈バイパス片に薬剤を直接適用することである。
ワートマニン類似体の製剤化は、発酵経路のように、本分野でよく知られている。本発明は、熟練した人に任せ、それらの一般的な合成および製剤化の技術を用いて以下の一般的な式の化合物を合成する:
Figure 0004540986
ここにおいて、Yはヘテロ原子であり、そしてR1、R2は不飽和アルキル、非線形アルキル、分岐アルキル、置換アルキルもしくは環状アルキルのいずれかである。好ましくは、本発明は図1−3に示される化学式に相当する式を有するのがよい。さらには、本発明は、図2で示されるものと一致する化学式であることが好ましい。
最狭窄は、冠状動脈のステントインプラントを伴う冠状動脈処置後の主な臨床的問題である。冒された冠状動脈を覆う平滑筋が過形成および増殖するのは、処置の結果としての一過性の低酸素もしくは炎症性の反応のいずれか(もしくはそれら要因の組み合わせ)のためである。血管平滑筋細胞の増殖はPI3−キナーゼ―AKT−mTORシグナル経路に強く依存している。さらに、PI3−キナーゼおよびAKTシグナルは、平滑筋細胞のアポトーシスを阻害すると考えられ、それは冒された動脈において平滑筋層の塊を増加させる。
上記の証拠に基づくと、PI3−キナーゼ活性阻害剤がステント機器に埋め込まれると細胞の成長と生存を阻害するだろうということが示唆された。さらに、PI3−キナーゼ活性阻害剤は、インプラントに対する局所炎症反応も阻害し、それは、長期の生着もしくは他の生体人工物インプラントの有望な要因となりうる。原理的には、ワートマニン誘導体は、埋め込まれたステントの周りの局所的微小環境におけるPI3−キナーゼ―AKT−mTOR経路の一時的遮断を誘導する理想的な薬剤になりうる。
ここで述べられている例は例示的な目的のみであり、様々な改良や変更が本分野に熟練した人により提案されることが可能であり、また、それは本応用の範囲および真意内、および添付の請求の範囲内に含まれるべきである。したがって、ここで引用されている全ての出版物、特許および特許応用は、全ての目的のために、その全範囲にわたり参考として組み込まれている。
図1は本発明に従う、基本のワートマニン類似体の構造を示す; 図2は本発明に従う、ある種のワートマニン類似構造の構造を示す; 図3は本発明に従う、ある種のほかのワートマニン類似構造の構造を示す; 図4はPC−3ヒト前立腺がんに対する、ワートマニンおよび類似体(図2参照)の影響を示す; 図5はHT−29ヒト大腸がんに対する、ワートマニンおよび類似体の影響を示す; 図6はOVCAR−3ヒト卵巣腫瘍に対する、ワートマニンおよび類似体の影響を示す; 図7はワートマニンおよび類似体による体重減少への影響を示す; 図8はワートマニンの抗腫瘍活性を示す;そして 図9はワートマニン、および図2、3に示されるワートマニン類似体に対して得られたデータを要約したものである。

Claims (8)

  1. 以下の化学式で表される構造を有する化合物
    Figure 0004540986
  2. 以下の化学式で表される構造を有する化合物
    Figure 0004540986
  3. 以下の化学式で表される構造を有する化合物
    Figure 0004540986
  4. 以下の化学式で表される構造を有する化合物
    Figure 0004540986
  5. 以下の化学式で表される構造を有する化合物
    Figure 0004540986
  6. 有効な量の請求項の化合物と、その薬学的に許容されるキャリア、希釈剤、もしくは添加剤と、を含む薬剤。
  7. 有効な量の請求項の化合物と、その薬学的に許容されるキャリア、希釈剤、もしくは添加剤と、を含む薬剤。
  8. 有効な量の請求項の化合物と、その薬学的に許容されるキャリア、希釈剤、もしくは添加剤と、を含む薬剤。
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