JPH1067656A - 細胞接着抑制剤 - Google Patents

細胞接着抑制剤

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JPH1067656A
JPH1067656A JP8328271A JP32827196A JPH1067656A JP H1067656 A JPH1067656 A JP H1067656A JP 8328271 A JP8328271 A JP 8328271A JP 32827196 A JP32827196 A JP 32827196A JP H1067656 A JPH1067656 A JP H1067656A
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Yusuke Shibuya
祐輔 渋谷
Yoshinori Nishizawa
義則 西澤
Ichirou Tokimitsu
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 一般式(1) 【化1】 (式中、R1、R2、R3 及びR4 は同一又は異なって水
素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアル
キル基又はアルコキシ基を示す)で表されるリグナン類
を有効成分とする細胞接着抑制剤。 【効果】 癌転移抑制剤、動脈硬化の予防・治療剤とし
て有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は細胞接着抑制剤、癌
転移抑制剤及び動脈硬化症予防・治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、動脈硬化症、癌転移等に関する分
子レベルでの研究が進展し、これらの疾患には共通して
白血球と血管内皮細胞、癌細胞と血管内皮細胞などの細
胞間接着が大きく関与していることが明らかとなってき
た。
【0003】生体に種々の刺激〔化学物質、日光(紫外
線)、ウイルス感染、細菌感染、外傷等〕が加わると、
一連の炎症反応が誘起され、血管拡張、血管透過性の亢
進に続き、好中球、マクロファージ、T細胞等の白血球
が炎症巣へと浸潤していく。また、外部から生体に異物
が侵入すると、生体では一連の免疫反応が誘発され、そ
の部位に白血球が多数浸潤し、いわゆる炎症反応が起こ
る。ここで、白血球が血管から組織内へ浸潤する際に、
白血球と血管内皮細胞はそれぞれの細胞表面に存在する
特異的な細胞接着分子を介して接着することが知られて
いる。血管内皮細胞がIL−1、TNF等のサイトカイ
ン類、活性酸素などによって活性化されると、細胞表面
にICAM−1、ELAM−1、VCAM−1、GMP
−140等の接着分子が誘導される。すると白血球はそ
の表面に発現しているLFA−1、Mac−1、Sia
lyl Lewis X(sLex)、Sialyl
Lewis a(sLea)、VLA−4等の分子を介
して内皮細胞に接着し、接着した白血球の大部分はその
まま組織内へ移行し、一連の炎症、免疫反応が進行して
いく。従って、白血球と血管内皮細胞との接着は、白血
球の浸潤のみならず、動脈硬化、一連の炎症、免疫反応
の過程において極めて重要なステップであると考えられ
ている。
【0004】一方、癌転移は(1)原発巣で増殖した癌
細胞の離脱と血管内への遊離、(2)癌細胞の血管内で
の移動、(3)癌細胞の末梢血管内皮への接着、(4)
癌細胞の基底膜及び結合組織内への浸潤による転移巣の
成立という4つの段階を経て成立すると考えられてい
る。このうち細胞接着分子が大きな役割を演じるのは、
主に原発巣からの離脱の局面と血管内皮細胞への接着の
局面の2点である。血管内皮細胞上に発現し、癌転移に
関与する分子としてICAM−1、VACM−1、EL
AM−1等が知られており、それぞれに対応する白血球
側のリガンドはLFA−1、VLA−4、Sialyl
Lewis X(sLex)及びSialyl Le
wis a(sLea)であることが同定されている。
悪性細胞のうち白血病細胞にはこれらの細胞接着分子と
そのリガンドがしばしば発現されており、白血病細胞の
血管外への浸潤に関与していると考えられている。メラ
ノーマや神経芽細胞腫、骨肉腫ではVCAM−1/VL
A−4系で血管内皮細胞に接着するものがかなり多いこ
とが知られている。また、胃癌、大腸癌、肺癌、肝癌、
膵癌等では、ELAM−1が主役を演じていると考えら
れている〔「接着分子の発現調節と臨床応用」(メジカ
ルビュー社,1991年)、Nature, Vol.364, 149-155(199
3)、Science, Vol.247, 456-459(1990)、Annual Review
免疫1989, 175-185、Trends in Glycoscience and Gly
cotechnology, Vol.4, No.19, 405-414(1992)、実験医
学Vol.10, No.11, 1402-1413(1992)、実験医学Vol.11,
No.16,2168-2175(1993)、Annual Review 免疫1989, 175
-185、感染・炎症・免疫Vol.19(2), 129-153(1989)、感
染・炎症・免疫Vol.24(3), 158-165(1994)、Molecular
Medicine, Vol.32(4), 348-355(1995)、医学のあゆみVo
l.174(1), 41-45(1995)、臨床免疫Vol.27(11), 1302-13
08(1995)、臨床免疫Vol.27(4), 388-392(1995)、実験医
学Vol.10(11), 1388-1395(1992)、実験医学Vol.12(8),9
06-964(1994)、医学のあゆみVol.169(1), 108-111(199
4)、医学のあゆみVol.169(1), 103-107(1994)、Advance
s in immunology, Vol.58,345-416〕。
【0005】粥状動脈硬化発生の初期には、細胞内に大
量のエステル化コレステロールを蓄積した泡沫細胞と呼
ばれる単球マクロファージ由来の細胞の、血管内皮下で
の局所的な集簇が認められる。また、粥状動脈硬化巣に
はTリンパ球の存在も知られている。このような白血球
の動脈硬化部位への集簇にも、血管内皮細胞上の細胞接
着分子の関与が知られており、動脈硬化発症過程におけ
る重要な初期ステップとして認識されている。
【0006】このように、動脈硬化症や癌の転移には細
胞接着分子を介した白血球や癌細胞と血管内皮細胞との
細胞接着が極めて重要な役割を果していることが明らか
となっており、また、理論的にも動物実験レベルにおい
ても細胞接着抑制物質が動脈硬化や癌転移の抑制に有効
であることが広く示され、認識されるに至っていること
から、本出願人を含め多くの研究者が動脈硬化、癌移転
等の抑制や制御を目的に細胞接着抑制物質の探索を行っ
ている。
【0007】そして、これまでにこれらの細胞接着を抑
制する物質としては細胞表面接着分子に対する抗体やS
ialy Lewis X誘導体、N−(フルオレニル
−9−メトキシカルボニル)アミノ酢酸、3−デアザア
デノシン等〔Proc. Natul. Acad. Sci. USA, Vol.88, 3
55-359(1991)、Immunopharmacology, 23, 139-149(199
2)、J. Biological Chemistry, Vol.267(13), 9376-938
2(1992) 、J. Immunology, Vol.144(2), 653-661(199
0)〕等が報告されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、その細
胞接着抑制効果は未だ満足できるものではなかった。従
って、本発明の目的は癌転移抑制剤、動脈硬化症の予防
・治療に有用な細胞接着抑制剤を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】かかる実情において、本
発明者らは、数多くの化合物について細胞接着抑制作用
を評価した結果、一般式(1)記載のリグナン類が優れ
た細胞接着抑制作用を有し、動脈硬化症の予防・治療、
癌転移抑制剤等に有用であることを見出し、本発明を完
成するに至った。
【0010】すなわち、本発明は、一般式(1)
【0011】
【化2】
【0012】(式中、R1、R2、R3 及びR4 は同一又
は異なって水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒ
ドロキシアルキル基又はアルコキシ基を示す)で表され
るリグナン類を有効成分とする細胞接着抑制剤、癌転移
抑制剤及び動脈硬化症予防・治療剤を提供するものであ
る。
【0013】
【発明の実施の形態】リグナン類は植物においてはヒノ
キ科のアスナロ(Chem. Pharm. Bull. 20(6)1150-1155
(1972))などに見出されている他、種々の合成法が報告
されており(Natural Product Report, 183-205(199
5)、Tetrahedron Lett. 2759-2762(1969)、Chem. Phar
m. Bull. 20(6)1150-1155(1972)等)、またこれまでに
抗ウイルス活性や癌細胞増殖抑制活性(Planta Med. 5
9, 246-249(1993))、血小板へのPAFの結合阻害(Na
tural Product Report, 183-205(1995))などが報告さ
れているが、その細胞接着抑制作用についてはこれまで
全く知られていなかった。
【0014】本発明で用いられるリグナン類は、前記一
般式(1)で表されるものであり、式中R1 〜R4 は同
一又は異なって水素原子、ヒドロキシル基、アルキル
基、ヒドロキシアルキル基又はアルコキシ基を示し、ア
ルキル基としては炭素数1〜10のものが好ましく、例
えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル
基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペ
ンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニ
ル基、デシル基などの直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙
げられる。ヒドロキシアルキル基としては炭素数1〜1
0のヒドロキシアルキル基が挙げられ、具体的にはヒド
ロキシエチル基等を挙げることができる。またアルコキ
シ基としては炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖のものが
好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロピ
ルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ
基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ
基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオ
キシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオ
キシ基等を挙げることができる。これらのうち、一般式
(1)においてR1 が水素原子、ヒドロキシル基又は炭
素数1〜3のアルコキシ基であり、R2 、R3 及びR4
がヒドロキシル基又はメトキシ基で表されるものが特に
好ましい。
【0015】このようなリグナン類(1)は、例えばア
スナロ〔主に葉部、小枝部(以下「原体」と称する)〕
から抽出することができる。抽出は、アスナロ原体又は
その乾燥末を水、有機溶媒(石油エーテル、n−ヘキサ
ン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン等の炭化水素
系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等
のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル等のエーテ
ル系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;アセトン等
のケトン類;ピリジン等の塩基性溶媒;ブタノール、プ
ロパノール、エタノール、メタノール、ポリエチレング
リコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール
等の一価又は多価アルコール系溶媒など)、水性アルコ
ール等を用い、通常3〜70℃で抽出処理することによ
り行う。
【0016】アスナロ原体からの好ましい具体的抽出例
としては、アスナロの乾燥粉砕物100gをエタノール
1リットルに浸漬し、室温で時々攪拌しながら7日間抽
出を行い、得られた抽出液をろ過し、ろ液を5℃で3日
間静置した後、再度ろ過して上澄みを得る方法が挙げら
れる。次いで得られた抽出液から溶媒を留去して得られ
た残渣を、適宜メタノール、エタノール、酢酸エチル等
の溶媒に溶解し、更に水、メタノール、エタノール、酢
酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタン、ヘキサン、
アセトン、ベンゼン等を溶出溶媒として、アンバーライ
トXAD−2、ダイアイオンHP−20、TSKゲルH
W−40等の親水性ポリマーやセファデックスLH−2
0等のセファデックス、逆相系シリカゲルやシリカゲ
ル、セルロース等を担体に用いたカラムクロマトグラフ
ィーに付し、薄層クロマトグラフィーなどで目的成分を
確認しながら分画することにより目的物を得ることがで
きる。また、場合によりベンゼン、エーテル、ヘキサ
ン、アセトン、メタノール、エタノール、水等の適当な
溶媒を用いて再結晶することにより精製しても良い。
【0017】また、文献記載の方法(Natural Product
Report, 183-205(1995)、Tetrahedron Lett. 2759-2762
(1969)、Chem. Pharm. Bull. 20(6)1150-1155(1972)
等)により種々の誘導体を合成することができ、その由
来は特に限定されるものではない。
【0018】本発明の細胞接着抑制剤及び動脈硬化症予
防・治療剤には、リグナン類に加えて、既存の高脂血症
治療剤、抗癌剤等の薬物を任意に組合わせて配合するこ
とができ、また、通常用いられる賦形剤及びその他の添
加剤とともに任意の形態に製剤化される。かかる賦形
剤、添加剤の例として、固形状のものとしては乳糖、カ
オリン、ショ糖、結晶セルロース、コーンスターチ、タ
ルク、寒天、ペクチン、ステアリン酸、ステアリン酸マ
グネシウム、レシチン、塩化ナトリウム等が挙げられ、
液状のものとしてはグリセリン、落花生油、ポリビニル
ピロリドン、オリーブ油、エタノール、ベンジルアルコ
ール、プロピレングリコール、水等が挙げられる。
【0019】本発明の医薬は、その剤型に応じて経口、
経腸、外用、注射、点眼、点鼻、吸入、経粘膜等いずれ
の経路によってもヒトに投与することができる。またそ
の投与量は、年齢、体重、性別、症状、治療効果、投与
方法、処理時間等の種々の要因によって異なり、特に限
定されないが、経口投与の場合は通常大人1人当たり1
回に0.1〜2000mg、特に10〜400mgの範囲を
1日1回〜数回に分けて投与することが好ましい。ま
た、非経口投与の場合は、通常大人1人当たり1回に
0.1〜2000mg、特に10〜400mgの範囲を1日
1回〜数回投与することが好ましい。
【0020】本発明の医薬の剤型としては特に限定され
ず、例えば錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、ト
ローチ剤、シロップ剤、乳液、軟ゼラチンカプセル、ク
リーム、ゲル、ペースト、スプレー、注射剤等が挙げら
れる。錠剤の形態にする場合は、担体としては、この分
野で公知のものを広く使用できる。これには、例えば澱
粉、乳糖、ショ糖、カルボキシメチルセルロース、コー
ンスターチ、無機塩類、尿素等の賦形剤;水、エタノー
ル、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖、澱粉液、ゼ
ラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、
メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリ
ドン等の結合剤;乾燥澱粉、アルギン酸ナトリウム、カ
ンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カ
ルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステ
ル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリ
セライド、澱粉、乳糖等の崩壊剤;白糖、ステアリン、
カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤;ラウリル硫
酸ナトリウム、第4級アンモニウム塩等の吸収促進剤;
グリセリン、澱粉等の保湿剤;澱粉、乳糖、カオリン、
ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤;ステアリ
ン酸塩、ホウ酸末、精製タルク、ポリエチレングリコー
ル等の滑沢剤等が挙げられる。更に錠剤は必要に応じて
通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包
錠、腸溶包錠、フィルムコーティング錠あるいは二重
錠、多層錠とすることができる。
【0021】丸剤の形態にする場合には、担体としては
この分野で公知のものを広く使用でき、これには、例え
ば澱粉、乳糖、ブドウ糖、カカオ脂、硬化植物油、カオ
リン、タルク等の賦形剤;アラビアゴム末、トラガント
末、ゼラチン、エタノール等の結合剤;ラミナランカン
テン等の崩壊剤等が挙げられる。
【0022】坐剤の形態にする場合は、担体としてはこ
の分野で公知のものを広く使用でき、これには例えばカ
カオ脂、ゼラチン、ポリエチレングリコール、高級アル
コール、高級アルコールのエステル類、半合成グリセリ
ド等を挙げることができる。
【0023】注射剤として調製する場合は、液剤及び懸
濁剤は殺菌され、かつ血液と等張であることが望まし
く、これら液剤、懸濁剤及び乳剤の形態にする場合は、
希釈剤として、この分野において慣用されているものを
利用することができる。例えば水、エチルアルコール、
プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアル
コール、ポリオキシエチレン化イソステアリルアルコー
ル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等
を挙げることができる。尚、この場合、等張性の水溶液
を調製するに十分な量の食塩、ブドウ糖、グリセリン等
を医薬製剤中に含有せしめてもよく、また通常の溶解補
助剤、緩衝剤、無痛化剤等を添加してもよい。更に必要
に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤や他の
医薬品を医薬製剤中に含有せしめてもよい。
【0024】また、噴霧剤の形態にする場合には、分散
剤及び噴射剤はこの分野で公知のものを広く使用でき、
分散剤としては例えば大豆レシチン、卵黄レシチン類、
オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の脂肪酸、ソル
ビタントリオレート、ソルビタンモノオレート等のソル
ビタン類等を用いることができる。また噴射剤として例
えばフレオン11、フレオン12、フレオン114等の
通常不燃性液化ガスを用いることができる。
【0025】軟膏の形態にする場合にもこの分野で公知
のものを広く使用でき、例えば水、エタノール、イソプ
ロピルアルコール、グリセリン、ポリエチレングリコー
ル、ソルビトール、ポリビニルアルコール等の多価アル
コール、動物性油脂、植物性油脂、鉱物油、硬化油、ミ
ツロウ等のワックス、液状パラフィン、パラフィンロウ
等の高級炭化水素、ステアリン酸等の脂肪酸、乳化剤、
アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活
性剤といった界面活性剤、キサンタンガム、アルギン酸
ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセル
ロース、カルボキシビニルポリマー等の水溶性高分子化
合物等を使用することができる。また、色素、保存剤、
香料等も必要に応じて配合してもよい。
【0026】リグナン類(1)が製剤中に配合されるべ
き量としては特に限定されず、広範囲に適宜選択される
が、通常製剤中1〜70重量%、特に1〜30重量%で
あるのが好ましい。
【0027】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説
明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】製造例1 アスナロ乾燥粉砕物(180g)をエタノール1Lに浸
漬し、室温において時々攪拌しながら7日間抽出を行
い、得られた抽出液を濾過し、濾液を5℃において3日
間静置した後、再度濾過し、上澄みを得た。次に溶媒を
留去して得られた残渣(2.4g)をシリカゲルカラム
クロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル、CHCl
3:CH3OH、H2O:CH3OH)、高速液体クロマト
グラフィー(YMC−ODS S−10、YMC社製)
に供し、化合物1(一般式(1)において、R1=H、
2=R3=R4=OCH3)25mgを得た。
【0029】製造例2 製造例1と同様にして、化合物2(一般式(1)におい
て、R1=OH、R2=R3=R4=OCH3)10mgを得
た。
【0030】製造例3 製造例1と同様にして、化合物3(一般式(1)におい
て、R1=R2=R3=R4=OCH3)21mgを得た。
【0031】製造例4 製造例2で得た化合物2(10mg)を常法によりエチル
化し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製
し、化合物4(一般式(1)において、R1=OC
25、R2=R3=R4=OCH3)10mgを得た。
【0032】製造例5 製造例2で得た化合物2(10mg)を常法によりプロピ
ル化し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精
製し、化合物5(一般式(1)において、R1=OC3
7、R2=R3=R4=OCH3)10mgを得た。
【0033】製造例6 製造例1と同様にして、化合物6(一般式(1)におい
て、R1=H、R2=R 4=OCH3、R3=OH)15mg
を得た。
【0034】試験例1 白血球−血管内皮細胞接着抑制
試験:96穴培養プレート上にコンフルエントとなった
ヒト血管内皮細胞に対し、最終濃度10nMとなるように
被験物質を添加した。3時間後にヒトIL−1αを最終
濃度2.5ng/mlとなるように添加し、6時間培養し
た。培養液除去後、RPMI−1640培地で2回洗浄
した後、あらかじめ51Crで標識したヒト末梢白血球
(106cells/ml)を200μl添加し、培養した。3
0分後、未接着細胞を除去し、接着細胞を0.1% S
DS/50mM Tris溶液で溶解後その放射活性を測
定した。その結果、表1に示すようにリグナン類は、優
れた細胞接着抑制活性を有することが判明した。
【0035】試験例2 癌細胞−血管内皮細胞接着抑制
試験:96穴培養プレート上にコンフルエントとなった
ヒト血管内皮細胞に対し、最終濃度10nMとなるように
被験物質を添加した。18時間後にヒトIL−1αを最
終濃度2.5ng/mlとなるように添加し、6時間培養し
た。培養液除去後、RPMI−1640培地で2回洗浄
した後、あらかじめ51Crで標識したヒト骨髄腫瘍細胞
HL−60(106cells/ml)を200μl添加し、培
養した。30分後、未接着細胞を除去し、接着細胞を
0.1% SDS/50mM Tris溶液で溶解後その
放射活性を測定した。その結果、表1に示すようにリグ
ナン類は、癌細胞の転移に重要な、癌細胞と血管内皮細
胞の接着を強く抑制することが判明した。
【0036】試験例3 血管内皮細胞に対する毒性試験
(蛋白質合成):蛋白質合成は常法に従い、3H−ロイ
シンの取り込みを指標に、被験物添加後18時間培養の
最終4時間における取り込み量を液体シンチレーション
カウンターを用いて評価した。なお、被験物濃度は10
nMとした。その結果、表1に示すようにリグナン類はい
ずれも血管内皮細胞に対し、低毒性であった。
【0037】
【表1】
【0038】試験例4 ウサギ動脈硬化モデルにおける
細胞接着抑制効果:ニュージーランド白色ウサギを使用
した。高コレステロール食(1%コレステロール,9%
ココナッツオイル,1%コーンオイル;200g/day
摂食)での飼育により、動脈における硬化巣形成の第一
段階といわれる、動脈内皮への白血球の接着を誘導し
た。各種リグナン類投与群(4mg/kg/day)、対照薬
物としてのプロブコール投与群(4mg/kg/day)、溶
媒投与群及び通常食群を設け、各被験物質を飼育開始日
より1日1回経口投与した。6週間後に大動脈弓部を採
取し、光学顕微鏡下にて動脈内皮細胞への白血球の接着
数(個/mm2)を算定した。その結果、表2に示すよう
に各種リグナン類は強い細胞接着抑制効果を有すること
が判明した。
【0039】
【表2】
【0040】試験例5 ウサギ動脈効果モデルにおける
線維化及び粥状変性抑制効果:ニュージーランド白色ウ
サギを使用した。高コレステロール食(1%コレステロ
ール,9%ココナッツオイル,1%コーンオイル;20
0g/day摂食)での飼育により、動脈硬化巣及びその
前段階である粥状変性を誘導した。各種リグナン類投与
群(4mg/kg/day)、対照薬物としてのプロブコール
投与群(4mg/kg/day)、溶媒投与群及び通常食群を
設け、各被験物質を飼育開始日より1日1回経口投与し
た。30週間後に大動脈弓部を採取し、パラフィン包埋
切片の膠原線維染色及び大動脈内腔の脂質染色を行い、
光学顕微鏡下にて膠原線維染色陽性面積(%)及び脂肪
染色陽性面積(%)を算定した。その結果、表3及び表
4に示すように各種リグナン類は強い線維化及び粥状変
性抑制効果を有することが判明した。
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】実施例1 錠剤 下記成分を用い、常法に従って、直径9mm、重量200
mgの錠剤を製造した。
【0044】 (組成) (g) リグナン類(化合物1) 1000 ヒドロキシプロピルセルロース 800 軽質無水ケイ酸 200 乳糖 500 結晶セルロース 500 タルク 500
【0045】実施例2 硬カプセル剤用充填薬剤 下記成分を用い、常法に従って、硬カプセル剤用充填薬
剤を製造した。
【0046】 (組成) (g) リグナン類(化合物1) 1000 結晶セルロース 1000 乳糖 1500 軽質無水ケイ酸 200
【0047】実施例3 顆粒剤 下記成分を用い、常法に従って、顆粒剤を製造した。
【0048】 (組成) (g) リグナン類(化合物1) 200 乳糖 200 ヒドロキシプロピルセルロース 300 タルク 15
【0049】実施例4 クリーム 下記成分を常法に従って混合し、クリームを製造した。
【0050】 (組成) (重量%) リグナン類(化合物1) 1.0 コレステロール 0.5 コレステリルイソステアレート 1.0 ポリエーテル変性シリコーン 1.5 環状シリコーン 20.0 メチルフェニルポリシロキサン 2.0 メチルポリシロキサン 2.0 硫酸マグネシウム 0.5 55%エタノール 5.0 カルボキシメチルキチン 0.5 精製水 残 量 計 100.0
【0051】実施例5 軟膏 下記成分を常法に従って混合し、軟膏を製造した。
【0052】 (組成) (重量%) リグナン類(化合物1) 3 コレステリルイソステアレート 3 流動パラフィン 10 グリセリルエーテル 1 グリセリン 10 白色ワセリン 73 計 100
【0053】実施例6 クリーム 下記成分を常法に従って混合し、クリームを製造した。
【0054】 (組成) (重量%) リグナン類(化合物2) 1.0 コレステロール 0.5 コレステリルイソステアレート 1.0 ポリエーテル変性シリコーン 1.5 環状シリコーン 20.0 メチルフェニルポリシロキサン 2.0 メチルポリシロキサン 2.0 硫酸マグネシウム 0.5 55%エタノール 5.0 カルボキシメチルキチン 0.5 グリチルリチン酸ジカリウム 0.5 精製水 残 量 計 100.0
【0055】実施例7 クリーム 下記処方に従い、成分(1)〜(5)を加熱溶解して混
合し、70℃に保ち油相とした。成分(6)〜(12)
を(14)に均一に分散し、75℃に保ち水相とした。
油相に水相を加えて乳化分散し、成分(13)を加えて
かき混ぜながら30℃まで冷却してクリームを製造し
た。
【0056】 (組成) (重量%) (1)リグナン類(化合物3) 1.0 (2)スクワラン 11.5 (3)セチルアルコール 2.5 (4)ポリオキシエチレン(20)ソルビタン モノステアレート 1.0 (5)ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル 2.5 (6)1,3−ブチレングリコール 4.0 (7)プロピレングリコール 3.5 (8)二酸化チタン 7.0 (9)ベンガラ 0.5 (10)黄酸化鉄 0.2 (11)黒酸化鉄 0.1 (12)パラオキシ安息香酸メチル 0.3 (13)香料 0.1 (14)精製水 残 量 計 100.0
【0057】実施例8 クリーム 下記処方に従い、成分(1)〜(9)を加熱溶解して混
合し、70℃に保ち油相とした。成分(10)〜(1
2)を(14)に均一に分散し、75℃に保ち水相とし
た。油相に水相を加えて乳化分散し、成分(13)を加
えてかき混ぜながら30℃まで冷却してクリームを製造
した。
【0058】 (組成) (重量%) (1)リグナン類(化合物4) 1.0 (2)スクワラン 5.5 (3)オリーブ油 3.0 (4)ステアリン酸 2.0 (5)ミツロウ 2.0 (6)ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5 (7)ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル 3.0 (8)ベヘニルアルコール 1.5 (9)グリセリンモノステアレート 2.5 (10)1,3−ブチレングリコール 8.5 (11)パラオキシ安息香酸メチル 0.2 (12)パラオキシ安息香酸エチル 0.2 (13)香料 0.1 (14)精製水 残 量 計 100.0
【0059】実施例9 クリーム(水中油型エマルショ
ン) 下記成分を常法に従って混合し、クリームを製造した。
【0060】 (組成) (重量%) リグナン類(化合物5) 0.25 ステアリン酸グリセリド 2.00 ポリソルバート60(ICI社製ツイーン60) 1.00 ステアリン酸 1.40 メトロニダゾール 1.00 トリエタノールアミン 0.70 カルボメール 0.40 カリテナッツバターの液体成分 12.00 ワセリン油 12.00 酸化防止剤 0.05 香料 0.50 防腐剤 0.30 精製水 残 量 計 100.00
【0061】実施例10 クリーム(水中油型エマルシ
ョン) 下記成分を常法に従って混合し、クリームを製造した。
【0062】 (組成) (重量%) リグナン類(化合物6) 0.25 ステアリン酸グリセリド 2.00 ポリソルバート60(ICI社製ツイーン60) 1.00 ステアリン酸 1.40 リクリチルレチン酸 2.00 トリエタノールアミン 0.70 カルボメール 0.40 カリテナッツバターの液体成分 12.00 ひまわり油 10.00 酸化防止剤 0.05 香料 0.50 防腐剤 0.30 セラミド 0.10 精製水 残 量 計 100.00
【0063】実施例11 錠剤 下記成分を用い、常法に従って錠剤を製造した。
【0064】 (組成) (mg) リグナン類(化合物3) 20 デンプン 130 ステアリン酸マグネシウム 10 乳糖 40 計 200
【0065】実施例12 錠剤 下記成分を均一に混合し、打錠機にて圧縮成型して1錠
200mgの錠剤を製造した。
【0066】 (組成) (g) コーンスターチ 44.0 結晶セルロース 40.0 カルボキシメチルセルロースカルシウム 5.0 軽質無水ケイ酸 0.5 ステアリン酸マグネシウム 0.5 リグナン類(化合物3) 10.0 計 100.0
【0067】実施例13 錠剤 下記処方に従い、(1)、(4)及び(2)の一部を均
一に混合して圧縮成型した後粉砕し、(3)及び(2)
の残量を加えて混合し、打錠機にて圧縮成型して1錠2
00mgの錠剤を製造した。
【0068】 (組成) (g) (1)結晶セルロース 84.5 (2)ステアリン酸マグネシウム 0.5 (3)カルボキシメチルセルロースカルシウム 5.0 (4)リグナン類(化合物7) 10.0 計 100.0
【0069】実施例14 顆粒剤 下記成分を均一に混合し、捏和し、押出し造粒機により
造粒後、乾燥し、篩別して、顆粒剤を製造した。
【0070】 (組成) (g) 結晶セルロース 55 10%ヒドロキシプロピルセルロース エタノール溶液 35 リグナン類(化合物4) 10 計 100
【0071】実施例15 カプセル剤 下記成分を均一に混合し、200mgを2号カプセルに充
填した。
【0072】 (組成) (g) コーンスターチ 89.5 軽質無水ケイ酸 0.5 リグナン類(化合物2) 10.0 計 100.0
【0073】実施例16 注射剤 下記処方に従い、(5)を(1)及び(3)溶解し、こ
れに(2)と(4)の溶液を加えて乳化し、注射剤を製
造した。
【0074】 (組成) (g) (1)大豆油 5.0 (2)注射用蒸留水 89.5 (3)大豆リン脂質 2.5 (4)グリセリン 2.0 (5)リグナン類(化合物3) 1.0 計 100.0
【0075】
【発明の効果】本発明の細胞接着抑制剤は、細胞毒性が
低く、優れた細胞接着抑制作用を有し、癌転移抑制剤、
動脈硬化症の予防・治療剤として有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 西澤 義則 栃木県芳賀郡市貝町赤羽2606 花王株式会 社研究所内 (72)発明者 時光 一郎 栃木県芳賀郡市貝町赤羽2606 花王株式会 社研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(1) 【化1】 (式中、R1、R2、R3 及びR4 は同一又は異なって水
    素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアル
    キル基又はアルコキシ基を示す)で表されるリグナン類
    を有効成分とする細胞接着抑制剤。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のリグナン類を有効成分と
    する癌転移抑制剤。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のリグナン類を有効成分と
    する動脈硬化症予防治療剤。
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