JP2004067753A - 熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】実質的に透明性を有する抗菌性に優れた熱可塑性樹脂組成物および成形品を提供すること。
【解決手段】ゴム質重合体に、ビニル系単量体をグラフトさせたグラフト共重合体(A)と、ビニル系(共)重合体(B)からなる熱可塑性樹脂に対し、特定の抗菌性粒子を添加することにより、透明性、抗菌性に優れた熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形品による。
【選択図】なし
【解決手段】ゴム質重合体に、ビニル系単量体をグラフトさせたグラフト共重合体(A)と、ビニル系(共)重合体(B)からなる熱可塑性樹脂に対し、特定の抗菌性粒子を添加することにより、透明性、抗菌性に優れた熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形品による。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、菌の増殖を抑制し、かつ菌を減少させる性質(以後、抗菌性という)を持つガラスを含有し、実質的に透明性を有する熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ジエン系ゴム等ゴム質重合体にアクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアン化ビニルやスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニルなどビニル系単量体をグラフト共重合して得られる透明性を有する熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、成形性、外観、透明性等に優れており、OA機器、家電製品、一般雑貨等の用途に幅広く利用されている。
【0003】
また、最近では家電製品や一般雑貨等の用途において清潔さを要求される場合も多く、抗菌性能を有する熱可塑性樹脂が望まれている。
【0004】
一般的に抗菌性能を有するものとしては、銀又は銀イオンが知られている。その中でも、ホウ珪酸ガラスに銀を含有させた抗菌性ガラスは広く知られており、フレーク、繊維又は粉末の状態で熱可塑性樹脂組成物と混ぜ合わせて使用すると、抗菌性能を有する熱可塑性樹脂が得られる。
【0005】
しかし、従来の銀を含有するホウ珪酸系ガラスを練り混んだ抗菌性熱可塑性樹脂組成物は、抗菌性ガラスの屈折率が熱可塑性樹脂と異なるため、透明性に劣る。
【0006】
また、特開平08−231811号公報には、透明性を有する抗菌性樹脂組成物について記載されているが、ジエン系ゴム等ゴム質重合体を含有し、透明性を有する熱可塑性樹脂組成物については記載されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を解消し、実質的に透明性を有する耐衝撃性、成形性、抗菌性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記問題点を解決するために、主として、以下の構成を有する。すなわち、ゴム質重合体(a)に対し、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)から選ばれた1種以上の単量体をグラフト共重合せしめたグラフト共重合体(A)と、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)から選ばれた1種以上の単量体からなるビニル系重合体(B)とを重量比で10:90〜60:40含む熱可塑性樹脂(I)100重量部に対し、屈折率が1.48〜1.54である抗菌性粒子(II)を0.1〜10.0重量部添加してなる熱可塑性樹脂組成物である。また、本発明の成形品は、主として、上記熱可塑性樹脂組成物からなる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明におけるグラフト共重合体(A)に用いられるゴム質重合体(a)は特に制限はないが、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン系ゴム等が使用できる。具体例として、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、ポリイソプレン、ポリ(ブタジエン−アクリル酸ブチル)、ポリ(ブタジエン−メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸エチル)、エチレン−プロピレンラバー、エチレン−プロピレン−ジエンラバー、ポリ(エチレン−イソプレン)、ポリ(エチレン−アクリル酸メチル)等が挙げられる。これらのゴム質重合体(a)は、1種または2種以上の混合物で使用される。これらのゴム質重合体(a)のうち、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、エチレン−プロピレンラバーが耐衝撃性の点で好ましく用いられる。
【0010】
本発明におけるグラフト共重合体(A)を構成するゴム質重合体(a)の重量平均粒子径は特に制限はないが、0.1〜0.5μmが好ましく、さらに好ましくは0.15〜0.4μmである。この範囲にあれば、得られる熱可塑性樹脂組成物は、衝撃強度に優れ、また、透明性が良好となる。
【0011】
本発明におけるグラフト共重合体(A)及びビニル系(共)重合体(B)に用いる芳香族ビニル系単量体(b)は特に制限はないが、具体例として、スチレン,α−メチルスチレン,オルソメチルスチレン,パラメチルスチレン,パラ−t−ブチルスチレン及びハロゲン化スチレン等が挙げられ、1種または2種以上用いることができる。なかでもスチレン,α−メチルスチレンが機械的特性、生産性、経済性などのバランスの点で好ましく、特に好ましくはスチレンである。
【0012】
本発明におけるグラフト共重合体(A)及びビニル系(共)重合体(B)に用いるシアン化ビニル系単量体(c)は特に制限はないが、具体例として、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等が挙げられ、1種または2種以上用いることができる。なかでもアクリロニトリルが耐衝撃性の点で好ましい。
【0013】
本発明におけるグラフト共重合体(A)及びビニル系(共)重合体(B)に用いる不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)は特に制限はないが、炭素数1〜6のアルキル基または置換アルキル基を持つアクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルが好適であり、1種または2種以上を用いることができる。具体例として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル及び(メタ)アクリル酸2−クロロエチル等が挙げられ、なかでもメタクリル酸メチルが機械的特性、生産性、経済性などのバランスの点で好ましい。
【0014】
本発明におけるグラフト共重合体(A)及びビニル系(共)重合体(B)に用いる共重合可能なその他のビニル系単量体(e)は特に制限はないが、具体例として、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸、無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物及びアクリルアミド等の不飽和アミド化合物に代表される共重合可能なビニル化合物等を挙げることができ、これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
【0015】
なお、ビニル系(共)重合体(B)は複数種類用いることができる。
【0016】
ゴム質重合体(a)とマトリックス樹脂との屈折率の差は0.03以下であることが好ましい。ここでいうマトリックス樹脂とは、グラフト共重合体(A)からゴム質重合体(a)を除いた、グラフト共重合成分及びビニル系(共)重合体(B)からなる。ゴム質重合体(a)、グラフト共重合成分及びビニル系(共)重合体(B)の屈折率はアッベ屈折計を用いて測定する。ゴム質重合体(a)、グラフト共重合成分及びビニル系(共)重合体(B)の相互の屈折率の差が0.03以下であれば、透明性が良好となり好ましい。
【0017】
本発明の抗菌性粒子(II)は、その組成について特に限定されるものではないが、屈折率が1.48〜1.54であることが必要であり、好ましくは1.49〜1.53であるものを用いる。屈折率が1.48〜1.54の範囲を外れると、得られる熱可塑性樹脂組成物の透明性が劣る。また、抗菌性粒子(II)は、Ag2Oを0.1〜5.0重量%含有することが好ましく、より好ましくは0.5〜3.0重量%含有するものである。Ag2O含有量がかかる好ましい範囲にあれば、抗菌性能が十分となり、成形安定性などに優れる。
【0018】
本発明の抗菌性粒子(II)の添加量は、熱可塑性樹脂(I)100重量部に対し0.1〜10重量部であることが必要であり、好ましくは0.2〜7.0重量部である。抗菌性粒子(II)が0.1重量部未満では抗菌性が十分でなく、10重量部を越えると透明性、耐衝撃性が著しく劣る。
【0019】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、帯電防止の目的で、ポリアミドエラストマー(III)を添加することができる。
【0020】
本発明におけるポリアミドエラストマー(III)としては、例えば炭素数が6以上のポリアミド形成成分(a)、ポリ(アルキレンオキシド)グリコール(b)との反応によるグラフトまたはブロック共重合体が挙げられる。ここで、炭素数が6以上のアミド形成成分(a)としては、具体的には、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸、あるいはカプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ラウロラクタム等のラクタム、ヘキサメチレンジアミン−アジピン酸塩、ヘキサメチレンジアミン−セバシン酸塩、ヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸塩等のナイロン塩が挙げられる。ポリ(アルキレンオキシド)グリコール(b)の例としては、ポリエチレンオキシドグリコール、ポリ(1,2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックまたはランダム共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランのブロックまたはランダム共重合体等が用いられる。該ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの数平均分子量は200〜6000が重合性および剛性の点で好ましく、300〜4000がより好ましい。また、必要に応じて、(b)成分の両末端をアミノ化またはカルボキシル化してもよい。
【0021】
本発明の炭素数が6以上のポリアミド形成成分(a)とポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分(b)の結合は、通常エステル結合、アミド結合であるが、特にこれらのみに限定されない。また、ジカルボン酸(c)、ジアミン(d)等の第3成分を両成分の反応成分として用いることも可能であり、この場合のジカルボン酸成分(c)としては、炭素数4〜20のテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウムのような芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4’−ジカルボン酸のような脂環族ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸のような脂肪族ジカルボン酸が挙げられ、特に1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸が重合性、色調、物性の点から好ましい。一方、ジアミン成分(d)としては、芳香族、脂環族、脂肪族のジアミンが用いられ、なかでも脂肪族ジアミンのヘキサメチレンジアミンが上記同様、重合性、色調、物性の点から好ましい。
【0022】
ポリエーテルエステルアミド(III)の含有量は、帯電防止性、剛性および成形加工性とのバランスの点から1〜50重量部が好ましく、より好ましくは3〜30重量部である。含有量がかかる好ましい範囲にあれば、得られる熱可塑性樹脂組成物の帯電防止性が十分となり、剛性および耐衝撃性が良好となる。
【0023】
ポリアミドエラストマー(III)の重合方法に関しては特に限定されず、例えばアミノカルボン酸またはラクタム(a)とジカルボン酸(c)を等モル比で反応させて、両末端がカルボン酸基のポリアミドプレポリマーを作り、これにポリ(アルキレンオキシド)グリコール(b)を真空下に反応させる方法や、上記(a)、(b)、(c)の各化合物を反応槽に仕込み、水の存在下または非存在下に高温で加圧反応させることにより、カルボン酸末端のポリアミドプレポリマーを生成させ、その後、常圧または減圧下で重合を進める方法、あるいは、上記(a)、(b)、(c)の化合物を同時に反応槽に仕込、溶融重合した後、高真空下で一挙に重合を進める方法などの公知の方法を採用することができる。
【0024】
本発明における変性ビニル系共重合体(IV)とは、2種以上のビニル系単量体を共重合して得られる構造を有し、分子鎖中にカルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基の少なくとも1種の官能基を有するものである。これらの官能基の含有量としては、特に限定はないが、0.1〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15重量%である。含有量がかかる好ましい範囲にあれば、耐衝撃向上効果が十分となり、また、変性ビニル系重合体の製造上の問題を回避し、自己反応によるゲル化発生を防止することができる。変性ビニル系共重合体(IV)中にカルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を導入する方法については、特に制限されないが、通常、上記官能基を有するビニル系単量体を共重合する方法、上記官能基を有する重合開始剤または連鎖移動剤を用いて所定のビニル系単量体を共重合する方法などが例示できる。
【0025】
上記官能基を有するビニル系単量体、重合開始剤および連鎖移動剤の具体例は以下の通りである。ビニル系単量体の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸またはイタコン酸等のカルボキシル基を有する単量体、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルまたはイタコン酸グリシジル等のエポキシ基を有する単量体、アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル誘導体類、N−アセチルビニルアミン等のビニルアミン誘導体類、メタアリルアミン等のアリルアミン誘導体またはアミノスチレン等のアミノ基を有する単量体、アクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド等のアミド基を有する単量体が挙げられる。
【0026】
重合開始剤の例としては、γ,γ´−アゾビス(γ−シアノバレイン酸)または過酸化サクシン酸等のカルボキシル基を有する開始剤や、α, α´−アゾビス(γ−アミノ−α, γ−ジバレロニトリル)またはp−アミノベンゾイルパーオキサイド等のアミノ基を有する開始剤が挙げられる。
【0027】
連鎖移動剤の例としては、メルカプトプロピオン、4−メルカプト安息香酸またはチオグリコール酸等のカルボキシル基を有する連鎖移動剤やメルカプトメチルアミン、N−(β−メルカプトエチル)−N−メチルアミン、ビス−(4−アミノフェニル)ジスルフィドまたはメルカプトアニリン等のアミノ基を有する連鎖移動剤が挙げられる。
【0028】
この変性ビニル系共重合体(IV)の還元粘度は、成形加工性および耐衝撃性の点から、0.2dl/g〜1.5dl/gが好ましい。より好ましくは0.4dl/g〜1.0dl/gである。変性ビニル共重合体(IV)の還元粘度がかかる好ましい範囲内であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性向上効果が十分となり、成形加工性が良好となり好ましい。
【0029】
変性ビニル系共重合体(IV)の含有量は、機械的強度と成形加工性とのバランスの点から0.1〜15重量部が好ましく、より好ましくは1.0〜10重量部である。変性ビニル系共重合体(IV)の含有量がかかる好ましい範囲にあれば、得られる熱可塑性樹脂樹脂組成物の耐衝撃性向上効果が十分発揮され、成形加工性が良好になる。
【0030】
変性ビニル系共重合体(IV)を共重合する際の重合方法については特に制限されないが、懸濁重合、塊状重合、乳化重合、溶液重合等の方法が好ましい。
【0031】
グラフト共重合体(A)に用いる単量体は、機械的特性、成形性などのバランスの点で、芳香族ビニル系単量体(b)5〜50重量%、シアン化ビニル系単量体(c)50重量%以下、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)30〜80重量%、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)60重量%以下からなることが好ましい。より好ましくは、芳香族ビニル系単量体(b)15〜35重量%、シアン化ビニル系単量体(c)40重量%以下、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)50〜80重量%、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)40重量%以下である。
【0032】
本発明におけるビニル系(共)重合体(B)を構成する芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)及び必要に応じて共重合可能なその他のビニル系単量体(e)の組成は特に制限はないが、透明性、耐衝撃性のバランスをとる点で、好ましくは芳香族ビニル系単量体(b)5〜50重量%、シアン化ビニル系単量体(c)50重量%以下、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)30〜80重量%、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)60重量%以下である。さらに好ましくは芳香族ビニル系単量体(b)15〜35重量%、シアン化ビニル系単量体(c)40重量%以下、及び不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)50〜80重量%、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)40重量%以下である。
【0033】
本発明の熱可塑性樹脂(I)を構成するグラフト共重合体(A)とビニル系(共)重合体(B)は、重量比で(A):(B)=10:90〜60:40であることが必要である。熱可塑性樹脂(I)100重量部に対し、グラフト共重合体(A)が10重量部未満もしくはビニル系(共)重合体(B)が90重量部を越えると衝撃強度が低下する。またグラフト共重合体(A)が60重量部を越えると溶融粘度が上昇して成形性が悪くなる。好ましくはグラフト共重合体(A)20〜50重量部、ビニル系(共)重合体(B)50〜80重量部である。
【0034】
また、グラフト共重合体(A)におけるゴム質重合体(a)の含有量は特に制限はないが、20〜80重量部が好ましい。この範囲であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物は衝撃強度に優れ、また、溶融粘度が上昇して成形性が悪くなることもなく好ましい。さらに好ましくは35〜60重量部である。尚、グラフト共重合体(A)に配合された単量体混合物は、そのすべてが、ゴム質重合体(a)と結合してグラフト化している必要はなく、単量体混合物の単量体同士で結合し、グラフト化していない重合体として含まれていても良い。しかし、グラフト率は好ましくは、10〜100%、特に好ましいのは20〜50%である。本発明におけるビニル系(共)重合体(B)の還元粘度(ηsp/c)は特に制限はないが、0.1〜0.6dl/gが好ましく、さらに好ましくは0.3〜0.5dl/gである。この範囲にあれば、得られる熱可塑性樹脂組成物は衝撃強度に優れ、また、溶融粘度が上昇して成型性が悪くなることもないので好ましい。
【0035】
本発明におけるグラフト共重合体(A)及びビニル系(共)重合体(B)の製造方法は特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等のいずれでもよい。単量体の仕込方法も特に制限はなく、初期一括仕込み、単量体の一部または全てを連続仕込み、あるいは単量体の一部または全てを分割仕込みのいずれの方法を用いてもよい。
【0036】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ヘイズ値が30%以下であることが好ましい。ヘイズ値がこの範囲にあれば、本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品内部の視認性が良好となるので好ましい。
【0037】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関しては特に制限はなく、熱可塑性樹脂(I)と抗菌性粒子(II)を例えばバンバリミキサー、ロール、エクストルーダー、ニーダーなどで溶融混練することによって製造することができる。
【0038】
なお本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、各種の熱可塑性樹脂やエラストマー類を配合することにより、成形用樹脂組成物として性能をさらに改良することができる。
【0039】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じてヒンダードフェノール系、含硫黄化合物系、含リン有機化合物系などの酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系などの熱安定剤、ベンゾトリアゾール系、ベンソフェノン系、サクシレート系などの紫外線吸収剤、有機ニッケル系、ヒンダードアミン系などの光安定剤などの各種安定剤、高級脂肪酸の金属塩類、高級脂肪酸アミド類などの滑剤、フタル酸エステル類、リン酸エステル類などの可塑剤、ハロゲン系、リン系(赤燐、リン酸エステル等)等の難燃剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどの難燃助剤、カーボンブラック、顔料および染料などを添加することもできる。
【0040】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、各種の補強剤や充填剤を添加することもできる。
【0041】
上記によって得られた実質的に透明性、抗菌性を有する熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形および、ガスアシスト成形などの現在熱可塑性樹脂の成形に用いられる公知の方法によって成形することができ、特に制限されるものではない。
【0042】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は耐衝撃性、耐熱性、成形時の流動性、透明性、抗菌性に優れた特徴を生かして、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類に適している。
【0043】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例にて詳細に説明するが、これをもって本発明を制限するものではない。なお、実施例及び比較例中、特にことわりのない限り「部」または「%」で表示したものは、すべて重量比率を表わしたものである。熱可塑性樹脂および抗菌性粒子の特性について、分析方法を下記する。
【0044】
(1)熱可塑性樹脂の屈折率
測定するサンプルに1−ブロモナフタレンを少量滴下し、アッベ屈折計を用いて以下の条件で屈折率を測定した。
【0045】
光 源 :ナトリウムランプD線
測定温度:20℃
(2)抗菌性粒子の屈折率
80〜200μmの抗菌性粒子をスライドガラスに乗せ、屈折率既知の溶剤(屈折液)を1滴垂らしカバーガラスをかぶせ、偏光顕微鏡にてベッケラインの変化を見る。ベッケラインの変化により、屈折液に対し抗菌性粒子の屈折率が高いか低いかを判断する。屈折液を順々に変えていき、試料に最も近い上下の屈折液を見つけ、その2つの屈折液の屈折率の平均値を抗菌性粒子の屈折率とした。
【0046】
(3)重量平均ゴム粒子径
「ラバーエイジ第88巻484頁〜490頁(Rubber Age Vol.88 p.484〜490(1960)by E.Schmidt, P.H.Biddison)」記載のアルギン酸ナトリウム法によって求める。すなわち、アルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める。
【0047】
(4)グラフト率
グラフト共重合体所定量(m)にアセトンを加え、3時間還流し、この溶液を8800r/min(10000G)で40分間遠心分離後、不溶分を濾取し、この不溶分を60℃で5時間減圧乾燥し、重量(n)を測定した。グラフト率は、下記式より算出した。グラフト率(%)={[(n)−(m)×L]/[(m)×L]}×100
ここで、Lはグラフト共重合体のゴム含有量である。
【0048】
(5)還元粘度ηsp/c
サンプル1gにアセトン200mlを加え、3時間還流し、この溶液を8800r/min(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過する。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、析出物(アセトン可溶分)を60℃で5時間減圧乾燥後、0.4g/100ml(メチルエチルケトン、30℃)に調整し、ウベローデ粘度計を用いηsp/cを測定した。
【0049】
(6)アイゾット衝撃強度
ASTM D256に準拠し(12.7mmノッチ付き、23℃)、測定した。
【0050】
(7)メルトフローレート
ISO 1133(220℃、98N荷重)に準じて測定した。
【0051】
(8)透明性評価方法
東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを使用して角板(厚さ3mm)のヘイズ値[%]を測定した。ヘイズ値が低いほど透明性に優れた樹脂である。
【0052】
(9)抗菌性
「銀等無機抗菌剤の自主規格および抗菌試験法 抗菌加工製品の抗菌力試験法I(1995年度版)フィルム密着法」に準拠し、35℃、24時間後の滅菌率を測定した。
【0053】
(10)帯電圧(静電気消散性能)、帯電圧減衰半減期
80℃熱風乾燥機中で3時間乾燥した樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度250℃に設定した東芝(株)製IS50A成形機内に充填し、射出成形により得た角板成形品(40mm(W)×50mm(L)×3mm(t))にてスタティックオネストメーター(宍戸製)で測定した。成形品と印加電極との距離を15mm、検出電極との距離を10mmとし、8kVの電圧を1分間印加し、そのときの帯電圧を読みとった。帯電圧減衰半減期は、印加を止め、帯電圧が半減するまでの時間を読みとった。帯電圧が低く、かつ帯電圧減衰半減期が短いほど静電気消散性能に優れるといえる。
【0054】
以上の物質を重合容器に仕込み、撹拌しながら65℃に昇温した。内温が65℃に達した時点を重合開始として、メタクリル酸メチル70部、スチレン25部、アクリロニトリル5部、t−ドデシルメルカプタン0.3部からなる混合物50重量部を5時間かけて連続滴下した。並行してクメンハイドロパーオキサイド0.25部、オレイン酸カリウム2.5部及び純水25部からなる水溶液を、7時間で連続滴下し反応を完結させた。得られたグラフト共重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソ−ダで中和後、洗浄、濾過、乾燥してグラフト共重合体(A)A1を得た。このグラフト共重合体(A)A1のグラフト率は45%、還元粘度ηsp/cは0.27dl/gであった。
【0055】
[参考例2]ビニル系(共)重合体(B)の製造方法
容量が20Lで、バッフル及びファウドラ型攪拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体(特公昭45−24151号公報記載)0.05部をイオン交換水165部に溶解した溶液を400rpmで攪拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に下記混合物質を反応系を攪拌しながら添加し、60℃に昇温し重合を開始した。
メタクリル酸メチル 70重量部
スチレン 25重量部
アクリロニトリル 5重量部
t−ドデシルメルカプタン 0.2重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.4重量部
15分かけて反応温度を65℃まで昇温したのち、50分かけて100℃まで昇温した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行ない、ビニル系(共)重合体(B)B1を得た。このビニル系(共)重合体(B)B1の還元粘度ηsp/cは0.36dl/gであった。
【0056】
[参考例3]抗菌性粒子(II)
<II−1> “アモルクリンP−10”(屈折率:1.51)(日本板硝子(株)製)
<II−2> “アモルクリンP−05”(屈折率:1.52)(日本板硝子(株)製)
<II−3> “アモルクリンP−02”(屈折率:1.52)(日本板硝子(株)製)
<II−4> “イオンピュアTA”(屈折率:1.576)(石塚硝子(株)製)
[参考例4]ポリアミドエラストマー(III)
カプロラクタム40.0部、数平均分子量1000のポリエチレングリコール53.1部およびテレフタル酸9.2部を“イルガノックス1098”(日本チバガイギー(株)製)(酸化防止剤)0.2部および三酸化アンチモン触媒0.1部とともにヘリカルリボン撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、窒素置換して260℃で1時間加熱撹拌して透明な均一溶液とした後、260℃、0.5mmHg以下の条件で4時間重合し、粘調で透明なポリマーを得た。得られたポリマーをストランド状に吐出させ、カットしてペレット上のポリエーテルエステルアミドIII−1を得た。
【0057】
[参考例5]変性ビニル系共重合体(IV)
スチレン70部、アクリロニトリル25部、メタクリル酸5部を懸濁重合して、ビーズ状の変性ビニル系共重合体IV−1を得た。該変性ビニル系共重合体の還元粘度は0.55dl/gであった。
【0058】
実施例1〜9 参考例で示したグラフト共重合体(A)、ビニル系(共)重合体(B)、抗菌性粒子(II)、ポリアミドエラストマー(III)および変性ビニル系共重合体(IV)を表1に示した配合比で混合し、ベント付40mm単軸押出機で溶融混練、押出しを行うことによって、ペレット状の実質的に透明性、抗菌性を有する熱可塑性樹脂組成物を製造した。次いで射出成形機により、シリンダー温度230℃、金型温度60℃で試験片を成形し、上記条件で物性を測定し、得られた測定結果を表1に示した。
【0059】
【表1】
比較例1〜5
参考例で示した、グラフト共重合体(A)、ビニル系(共)重合体(B)、抗菌性粒子(II)、ポリアミドエラストマー(III)および変性ビニル系共重合体(IV)を表1に示した配合比で混合し、実施例と同様の方法で各物性を測定し、測定結果を表1に示した。
【0060】
表1の結果から次のことが明らかである。本発明の熱可塑性樹脂組成物(実施例1〜5)はいずれも透明性(ヘイズ値)、成形加工性、機械特性および抗菌性が均衡してすぐれる。
【0061】
ビニル系(共)重合体(B)の配合量が90重量部を越えるもの(比較例1)は耐衝撃性が劣り好ましくない。
【0062】
一方、グラフト共重合体(A)の配合量が60重量部を越えるものは成形加工性に劣る(比較例2)。
【0063】
抗菌性粒子(II)の添加量が0.1重量部未満のもの(比較例3)は抗菌性に劣り、10重量部を越えるもの(比較例4)は耐衝撃性、透明性に劣り好ましくない。
【0064】
また、抗菌性粒子(II)としてイオンピュアTA(屈折率1.576)を使用する(比較例5)と透明性が失われてしまう。
【0065】
【発明の効果】
特定の抗菌性粒子を添加することにより抗菌性に優れた実質的に透明性を有する難燃性熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、菌の増殖を抑制し、かつ菌を減少させる性質(以後、抗菌性という)を持つガラスを含有し、実質的に透明性を有する熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ジエン系ゴム等ゴム質重合体にアクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアン化ビニルやスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニルなどビニル系単量体をグラフト共重合して得られる透明性を有する熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、成形性、外観、透明性等に優れており、OA機器、家電製品、一般雑貨等の用途に幅広く利用されている。
【0003】
また、最近では家電製品や一般雑貨等の用途において清潔さを要求される場合も多く、抗菌性能を有する熱可塑性樹脂が望まれている。
【0004】
一般的に抗菌性能を有するものとしては、銀又は銀イオンが知られている。その中でも、ホウ珪酸ガラスに銀を含有させた抗菌性ガラスは広く知られており、フレーク、繊維又は粉末の状態で熱可塑性樹脂組成物と混ぜ合わせて使用すると、抗菌性能を有する熱可塑性樹脂が得られる。
【0005】
しかし、従来の銀を含有するホウ珪酸系ガラスを練り混んだ抗菌性熱可塑性樹脂組成物は、抗菌性ガラスの屈折率が熱可塑性樹脂と異なるため、透明性に劣る。
【0006】
また、特開平08−231811号公報には、透明性を有する抗菌性樹脂組成物について記載されているが、ジエン系ゴム等ゴム質重合体を含有し、透明性を有する熱可塑性樹脂組成物については記載されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を解消し、実質的に透明性を有する耐衝撃性、成形性、抗菌性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記問題点を解決するために、主として、以下の構成を有する。すなわち、ゴム質重合体(a)に対し、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)から選ばれた1種以上の単量体をグラフト共重合せしめたグラフト共重合体(A)と、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)から選ばれた1種以上の単量体からなるビニル系重合体(B)とを重量比で10:90〜60:40含む熱可塑性樹脂(I)100重量部に対し、屈折率が1.48〜1.54である抗菌性粒子(II)を0.1〜10.0重量部添加してなる熱可塑性樹脂組成物である。また、本発明の成形品は、主として、上記熱可塑性樹脂組成物からなる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明におけるグラフト共重合体(A)に用いられるゴム質重合体(a)は特に制限はないが、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン系ゴム等が使用できる。具体例として、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、ポリイソプレン、ポリ(ブタジエン−アクリル酸ブチル)、ポリ(ブタジエン−メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸エチル)、エチレン−プロピレンラバー、エチレン−プロピレン−ジエンラバー、ポリ(エチレン−イソプレン)、ポリ(エチレン−アクリル酸メチル)等が挙げられる。これらのゴム質重合体(a)は、1種または2種以上の混合物で使用される。これらのゴム質重合体(a)のうち、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、エチレン−プロピレンラバーが耐衝撃性の点で好ましく用いられる。
【0010】
本発明におけるグラフト共重合体(A)を構成するゴム質重合体(a)の重量平均粒子径は特に制限はないが、0.1〜0.5μmが好ましく、さらに好ましくは0.15〜0.4μmである。この範囲にあれば、得られる熱可塑性樹脂組成物は、衝撃強度に優れ、また、透明性が良好となる。
【0011】
本発明におけるグラフト共重合体(A)及びビニル系(共)重合体(B)に用いる芳香族ビニル系単量体(b)は特に制限はないが、具体例として、スチレン,α−メチルスチレン,オルソメチルスチレン,パラメチルスチレン,パラ−t−ブチルスチレン及びハロゲン化スチレン等が挙げられ、1種または2種以上用いることができる。なかでもスチレン,α−メチルスチレンが機械的特性、生産性、経済性などのバランスの点で好ましく、特に好ましくはスチレンである。
【0012】
本発明におけるグラフト共重合体(A)及びビニル系(共)重合体(B)に用いるシアン化ビニル系単量体(c)は特に制限はないが、具体例として、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等が挙げられ、1種または2種以上用いることができる。なかでもアクリロニトリルが耐衝撃性の点で好ましい。
【0013】
本発明におけるグラフト共重合体(A)及びビニル系(共)重合体(B)に用いる不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)は特に制限はないが、炭素数1〜6のアルキル基または置換アルキル基を持つアクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルが好適であり、1種または2種以上を用いることができる。具体例として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル及び(メタ)アクリル酸2−クロロエチル等が挙げられ、なかでもメタクリル酸メチルが機械的特性、生産性、経済性などのバランスの点で好ましい。
【0014】
本発明におけるグラフト共重合体(A)及びビニル系(共)重合体(B)に用いる共重合可能なその他のビニル系単量体(e)は特に制限はないが、具体例として、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸、無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物及びアクリルアミド等の不飽和アミド化合物に代表される共重合可能なビニル化合物等を挙げることができ、これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
【0015】
なお、ビニル系(共)重合体(B)は複数種類用いることができる。
【0016】
ゴム質重合体(a)とマトリックス樹脂との屈折率の差は0.03以下であることが好ましい。ここでいうマトリックス樹脂とは、グラフト共重合体(A)からゴム質重合体(a)を除いた、グラフト共重合成分及びビニル系(共)重合体(B)からなる。ゴム質重合体(a)、グラフト共重合成分及びビニル系(共)重合体(B)の屈折率はアッベ屈折計を用いて測定する。ゴム質重合体(a)、グラフト共重合成分及びビニル系(共)重合体(B)の相互の屈折率の差が0.03以下であれば、透明性が良好となり好ましい。
【0017】
本発明の抗菌性粒子(II)は、その組成について特に限定されるものではないが、屈折率が1.48〜1.54であることが必要であり、好ましくは1.49〜1.53であるものを用いる。屈折率が1.48〜1.54の範囲を外れると、得られる熱可塑性樹脂組成物の透明性が劣る。また、抗菌性粒子(II)は、Ag2Oを0.1〜5.0重量%含有することが好ましく、より好ましくは0.5〜3.0重量%含有するものである。Ag2O含有量がかかる好ましい範囲にあれば、抗菌性能が十分となり、成形安定性などに優れる。
【0018】
本発明の抗菌性粒子(II)の添加量は、熱可塑性樹脂(I)100重量部に対し0.1〜10重量部であることが必要であり、好ましくは0.2〜7.0重量部である。抗菌性粒子(II)が0.1重量部未満では抗菌性が十分でなく、10重量部を越えると透明性、耐衝撃性が著しく劣る。
【0019】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、帯電防止の目的で、ポリアミドエラストマー(III)を添加することができる。
【0020】
本発明におけるポリアミドエラストマー(III)としては、例えば炭素数が6以上のポリアミド形成成分(a)、ポリ(アルキレンオキシド)グリコール(b)との反応によるグラフトまたはブロック共重合体が挙げられる。ここで、炭素数が6以上のアミド形成成分(a)としては、具体的には、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸、あるいはカプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ラウロラクタム等のラクタム、ヘキサメチレンジアミン−アジピン酸塩、ヘキサメチレンジアミン−セバシン酸塩、ヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸塩等のナイロン塩が挙げられる。ポリ(アルキレンオキシド)グリコール(b)の例としては、ポリエチレンオキシドグリコール、ポリ(1,2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックまたはランダム共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランのブロックまたはランダム共重合体等が用いられる。該ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの数平均分子量は200〜6000が重合性および剛性の点で好ましく、300〜4000がより好ましい。また、必要に応じて、(b)成分の両末端をアミノ化またはカルボキシル化してもよい。
【0021】
本発明の炭素数が6以上のポリアミド形成成分(a)とポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分(b)の結合は、通常エステル結合、アミド結合であるが、特にこれらのみに限定されない。また、ジカルボン酸(c)、ジアミン(d)等の第3成分を両成分の反応成分として用いることも可能であり、この場合のジカルボン酸成分(c)としては、炭素数4〜20のテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウムのような芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4’−ジカルボン酸のような脂環族ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸のような脂肪族ジカルボン酸が挙げられ、特に1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸が重合性、色調、物性の点から好ましい。一方、ジアミン成分(d)としては、芳香族、脂環族、脂肪族のジアミンが用いられ、なかでも脂肪族ジアミンのヘキサメチレンジアミンが上記同様、重合性、色調、物性の点から好ましい。
【0022】
ポリエーテルエステルアミド(III)の含有量は、帯電防止性、剛性および成形加工性とのバランスの点から1〜50重量部が好ましく、より好ましくは3〜30重量部である。含有量がかかる好ましい範囲にあれば、得られる熱可塑性樹脂組成物の帯電防止性が十分となり、剛性および耐衝撃性が良好となる。
【0023】
ポリアミドエラストマー(III)の重合方法に関しては特に限定されず、例えばアミノカルボン酸またはラクタム(a)とジカルボン酸(c)を等モル比で反応させて、両末端がカルボン酸基のポリアミドプレポリマーを作り、これにポリ(アルキレンオキシド)グリコール(b)を真空下に反応させる方法や、上記(a)、(b)、(c)の各化合物を反応槽に仕込み、水の存在下または非存在下に高温で加圧反応させることにより、カルボン酸末端のポリアミドプレポリマーを生成させ、その後、常圧または減圧下で重合を進める方法、あるいは、上記(a)、(b)、(c)の化合物を同時に反応槽に仕込、溶融重合した後、高真空下で一挙に重合を進める方法などの公知の方法を採用することができる。
【0024】
本発明における変性ビニル系共重合体(IV)とは、2種以上のビニル系単量体を共重合して得られる構造を有し、分子鎖中にカルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基の少なくとも1種の官能基を有するものである。これらの官能基の含有量としては、特に限定はないが、0.1〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15重量%である。含有量がかかる好ましい範囲にあれば、耐衝撃向上効果が十分となり、また、変性ビニル系重合体の製造上の問題を回避し、自己反応によるゲル化発生を防止することができる。変性ビニル系共重合体(IV)中にカルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を導入する方法については、特に制限されないが、通常、上記官能基を有するビニル系単量体を共重合する方法、上記官能基を有する重合開始剤または連鎖移動剤を用いて所定のビニル系単量体を共重合する方法などが例示できる。
【0025】
上記官能基を有するビニル系単量体、重合開始剤および連鎖移動剤の具体例は以下の通りである。ビニル系単量体の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸またはイタコン酸等のカルボキシル基を有する単量体、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルまたはイタコン酸グリシジル等のエポキシ基を有する単量体、アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル誘導体類、N−アセチルビニルアミン等のビニルアミン誘導体類、メタアリルアミン等のアリルアミン誘導体またはアミノスチレン等のアミノ基を有する単量体、アクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド等のアミド基を有する単量体が挙げられる。
【0026】
重合開始剤の例としては、γ,γ´−アゾビス(γ−シアノバレイン酸)または過酸化サクシン酸等のカルボキシル基を有する開始剤や、α, α´−アゾビス(γ−アミノ−α, γ−ジバレロニトリル)またはp−アミノベンゾイルパーオキサイド等のアミノ基を有する開始剤が挙げられる。
【0027】
連鎖移動剤の例としては、メルカプトプロピオン、4−メルカプト安息香酸またはチオグリコール酸等のカルボキシル基を有する連鎖移動剤やメルカプトメチルアミン、N−(β−メルカプトエチル)−N−メチルアミン、ビス−(4−アミノフェニル)ジスルフィドまたはメルカプトアニリン等のアミノ基を有する連鎖移動剤が挙げられる。
【0028】
この変性ビニル系共重合体(IV)の還元粘度は、成形加工性および耐衝撃性の点から、0.2dl/g〜1.5dl/gが好ましい。より好ましくは0.4dl/g〜1.0dl/gである。変性ビニル共重合体(IV)の還元粘度がかかる好ましい範囲内であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性向上効果が十分となり、成形加工性が良好となり好ましい。
【0029】
変性ビニル系共重合体(IV)の含有量は、機械的強度と成形加工性とのバランスの点から0.1〜15重量部が好ましく、より好ましくは1.0〜10重量部である。変性ビニル系共重合体(IV)の含有量がかかる好ましい範囲にあれば、得られる熱可塑性樹脂樹脂組成物の耐衝撃性向上効果が十分発揮され、成形加工性が良好になる。
【0030】
変性ビニル系共重合体(IV)を共重合する際の重合方法については特に制限されないが、懸濁重合、塊状重合、乳化重合、溶液重合等の方法が好ましい。
【0031】
グラフト共重合体(A)に用いる単量体は、機械的特性、成形性などのバランスの点で、芳香族ビニル系単量体(b)5〜50重量%、シアン化ビニル系単量体(c)50重量%以下、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)30〜80重量%、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)60重量%以下からなることが好ましい。より好ましくは、芳香族ビニル系単量体(b)15〜35重量%、シアン化ビニル系単量体(c)40重量%以下、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)50〜80重量%、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)40重量%以下である。
【0032】
本発明におけるビニル系(共)重合体(B)を構成する芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)及び必要に応じて共重合可能なその他のビニル系単量体(e)の組成は特に制限はないが、透明性、耐衝撃性のバランスをとる点で、好ましくは芳香族ビニル系単量体(b)5〜50重量%、シアン化ビニル系単量体(c)50重量%以下、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)30〜80重量%、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)60重量%以下である。さらに好ましくは芳香族ビニル系単量体(b)15〜35重量%、シアン化ビニル系単量体(c)40重量%以下、及び不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)50〜80重量%、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)40重量%以下である。
【0033】
本発明の熱可塑性樹脂(I)を構成するグラフト共重合体(A)とビニル系(共)重合体(B)は、重量比で(A):(B)=10:90〜60:40であることが必要である。熱可塑性樹脂(I)100重量部に対し、グラフト共重合体(A)が10重量部未満もしくはビニル系(共)重合体(B)が90重量部を越えると衝撃強度が低下する。またグラフト共重合体(A)が60重量部を越えると溶融粘度が上昇して成形性が悪くなる。好ましくはグラフト共重合体(A)20〜50重量部、ビニル系(共)重合体(B)50〜80重量部である。
【0034】
また、グラフト共重合体(A)におけるゴム質重合体(a)の含有量は特に制限はないが、20〜80重量部が好ましい。この範囲であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物は衝撃強度に優れ、また、溶融粘度が上昇して成形性が悪くなることもなく好ましい。さらに好ましくは35〜60重量部である。尚、グラフト共重合体(A)に配合された単量体混合物は、そのすべてが、ゴム質重合体(a)と結合してグラフト化している必要はなく、単量体混合物の単量体同士で結合し、グラフト化していない重合体として含まれていても良い。しかし、グラフト率は好ましくは、10〜100%、特に好ましいのは20〜50%である。本発明におけるビニル系(共)重合体(B)の還元粘度(ηsp/c)は特に制限はないが、0.1〜0.6dl/gが好ましく、さらに好ましくは0.3〜0.5dl/gである。この範囲にあれば、得られる熱可塑性樹脂組成物は衝撃強度に優れ、また、溶融粘度が上昇して成型性が悪くなることもないので好ましい。
【0035】
本発明におけるグラフト共重合体(A)及びビニル系(共)重合体(B)の製造方法は特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等のいずれでもよい。単量体の仕込方法も特に制限はなく、初期一括仕込み、単量体の一部または全てを連続仕込み、あるいは単量体の一部または全てを分割仕込みのいずれの方法を用いてもよい。
【0036】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ヘイズ値が30%以下であることが好ましい。ヘイズ値がこの範囲にあれば、本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品内部の視認性が良好となるので好ましい。
【0037】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関しては特に制限はなく、熱可塑性樹脂(I)と抗菌性粒子(II)を例えばバンバリミキサー、ロール、エクストルーダー、ニーダーなどで溶融混練することによって製造することができる。
【0038】
なお本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、各種の熱可塑性樹脂やエラストマー類を配合することにより、成形用樹脂組成物として性能をさらに改良することができる。
【0039】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じてヒンダードフェノール系、含硫黄化合物系、含リン有機化合物系などの酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系などの熱安定剤、ベンゾトリアゾール系、ベンソフェノン系、サクシレート系などの紫外線吸収剤、有機ニッケル系、ヒンダードアミン系などの光安定剤などの各種安定剤、高級脂肪酸の金属塩類、高級脂肪酸アミド類などの滑剤、フタル酸エステル類、リン酸エステル類などの可塑剤、ハロゲン系、リン系(赤燐、リン酸エステル等)等の難燃剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどの難燃助剤、カーボンブラック、顔料および染料などを添加することもできる。
【0040】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、各種の補強剤や充填剤を添加することもできる。
【0041】
上記によって得られた実質的に透明性、抗菌性を有する熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形および、ガスアシスト成形などの現在熱可塑性樹脂の成形に用いられる公知の方法によって成形することができ、特に制限されるものではない。
【0042】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は耐衝撃性、耐熱性、成形時の流動性、透明性、抗菌性に優れた特徴を生かして、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類に適している。
【0043】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例にて詳細に説明するが、これをもって本発明を制限するものではない。なお、実施例及び比較例中、特にことわりのない限り「部」または「%」で表示したものは、すべて重量比率を表わしたものである。熱可塑性樹脂および抗菌性粒子の特性について、分析方法を下記する。
【0044】
(1)熱可塑性樹脂の屈折率
測定するサンプルに1−ブロモナフタレンを少量滴下し、アッベ屈折計を用いて以下の条件で屈折率を測定した。
【0045】
光 源 :ナトリウムランプD線
測定温度:20℃
(2)抗菌性粒子の屈折率
80〜200μmの抗菌性粒子をスライドガラスに乗せ、屈折率既知の溶剤(屈折液)を1滴垂らしカバーガラスをかぶせ、偏光顕微鏡にてベッケラインの変化を見る。ベッケラインの変化により、屈折液に対し抗菌性粒子の屈折率が高いか低いかを判断する。屈折液を順々に変えていき、試料に最も近い上下の屈折液を見つけ、その2つの屈折液の屈折率の平均値を抗菌性粒子の屈折率とした。
【0046】
(3)重量平均ゴム粒子径
「ラバーエイジ第88巻484頁〜490頁(Rubber Age Vol.88 p.484〜490(1960)by E.Schmidt, P.H.Biddison)」記載のアルギン酸ナトリウム法によって求める。すなわち、アルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める。
【0047】
(4)グラフト率
グラフト共重合体所定量(m)にアセトンを加え、3時間還流し、この溶液を8800r/min(10000G)で40分間遠心分離後、不溶分を濾取し、この不溶分を60℃で5時間減圧乾燥し、重量(n)を測定した。グラフト率は、下記式より算出した。グラフト率(%)={[(n)−(m)×L]/[(m)×L]}×100
ここで、Lはグラフト共重合体のゴム含有量である。
【0048】
(5)還元粘度ηsp/c
サンプル1gにアセトン200mlを加え、3時間還流し、この溶液を8800r/min(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過する。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、析出物(アセトン可溶分)を60℃で5時間減圧乾燥後、0.4g/100ml(メチルエチルケトン、30℃)に調整し、ウベローデ粘度計を用いηsp/cを測定した。
【0049】
(6)アイゾット衝撃強度
ASTM D256に準拠し(12.7mmノッチ付き、23℃)、測定した。
【0050】
(7)メルトフローレート
ISO 1133(220℃、98N荷重)に準じて測定した。
【0051】
(8)透明性評価方法
東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを使用して角板(厚さ3mm)のヘイズ値[%]を測定した。ヘイズ値が低いほど透明性に優れた樹脂である。
【0052】
(9)抗菌性
「銀等無機抗菌剤の自主規格および抗菌試験法 抗菌加工製品の抗菌力試験法I(1995年度版)フィルム密着法」に準拠し、35℃、24時間後の滅菌率を測定した。
【0053】
(10)帯電圧(静電気消散性能)、帯電圧減衰半減期
80℃熱風乾燥機中で3時間乾燥した樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度250℃に設定した東芝(株)製IS50A成形機内に充填し、射出成形により得た角板成形品(40mm(W)×50mm(L)×3mm(t))にてスタティックオネストメーター(宍戸製)で測定した。成形品と印加電極との距離を15mm、検出電極との距離を10mmとし、8kVの電圧を1分間印加し、そのときの帯電圧を読みとった。帯電圧減衰半減期は、印加を止め、帯電圧が半減するまでの時間を読みとった。帯電圧が低く、かつ帯電圧減衰半減期が短いほど静電気消散性能に優れるといえる。
【0054】
以上の物質を重合容器に仕込み、撹拌しながら65℃に昇温した。内温が65℃に達した時点を重合開始として、メタクリル酸メチル70部、スチレン25部、アクリロニトリル5部、t−ドデシルメルカプタン0.3部からなる混合物50重量部を5時間かけて連続滴下した。並行してクメンハイドロパーオキサイド0.25部、オレイン酸カリウム2.5部及び純水25部からなる水溶液を、7時間で連続滴下し反応を完結させた。得られたグラフト共重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソ−ダで中和後、洗浄、濾過、乾燥してグラフト共重合体(A)A1を得た。このグラフト共重合体(A)A1のグラフト率は45%、還元粘度ηsp/cは0.27dl/gであった。
【0055】
[参考例2]ビニル系(共)重合体(B)の製造方法
容量が20Lで、バッフル及びファウドラ型攪拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体(特公昭45−24151号公報記載)0.05部をイオン交換水165部に溶解した溶液を400rpmで攪拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に下記混合物質を反応系を攪拌しながら添加し、60℃に昇温し重合を開始した。
メタクリル酸メチル 70重量部
スチレン 25重量部
アクリロニトリル 5重量部
t−ドデシルメルカプタン 0.2重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.4重量部
15分かけて反応温度を65℃まで昇温したのち、50分かけて100℃まで昇温した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行ない、ビニル系(共)重合体(B)B1を得た。このビニル系(共)重合体(B)B1の還元粘度ηsp/cは0.36dl/gであった。
【0056】
[参考例3]抗菌性粒子(II)
<II−1> “アモルクリンP−10”(屈折率:1.51)(日本板硝子(株)製)
<II−2> “アモルクリンP−05”(屈折率:1.52)(日本板硝子(株)製)
<II−3> “アモルクリンP−02”(屈折率:1.52)(日本板硝子(株)製)
<II−4> “イオンピュアTA”(屈折率:1.576)(石塚硝子(株)製)
[参考例4]ポリアミドエラストマー(III)
カプロラクタム40.0部、数平均分子量1000のポリエチレングリコール53.1部およびテレフタル酸9.2部を“イルガノックス1098”(日本チバガイギー(株)製)(酸化防止剤)0.2部および三酸化アンチモン触媒0.1部とともにヘリカルリボン撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、窒素置換して260℃で1時間加熱撹拌して透明な均一溶液とした後、260℃、0.5mmHg以下の条件で4時間重合し、粘調で透明なポリマーを得た。得られたポリマーをストランド状に吐出させ、カットしてペレット上のポリエーテルエステルアミドIII−1を得た。
【0057】
[参考例5]変性ビニル系共重合体(IV)
スチレン70部、アクリロニトリル25部、メタクリル酸5部を懸濁重合して、ビーズ状の変性ビニル系共重合体IV−1を得た。該変性ビニル系共重合体の還元粘度は0.55dl/gであった。
【0058】
実施例1〜9 参考例で示したグラフト共重合体(A)、ビニル系(共)重合体(B)、抗菌性粒子(II)、ポリアミドエラストマー(III)および変性ビニル系共重合体(IV)を表1に示した配合比で混合し、ベント付40mm単軸押出機で溶融混練、押出しを行うことによって、ペレット状の実質的に透明性、抗菌性を有する熱可塑性樹脂組成物を製造した。次いで射出成形機により、シリンダー温度230℃、金型温度60℃で試験片を成形し、上記条件で物性を測定し、得られた測定結果を表1に示した。
【0059】
【表1】
比較例1〜5
参考例で示した、グラフト共重合体(A)、ビニル系(共)重合体(B)、抗菌性粒子(II)、ポリアミドエラストマー(III)および変性ビニル系共重合体(IV)を表1に示した配合比で混合し、実施例と同様の方法で各物性を測定し、測定結果を表1に示した。
【0060】
表1の結果から次のことが明らかである。本発明の熱可塑性樹脂組成物(実施例1〜5)はいずれも透明性(ヘイズ値)、成形加工性、機械特性および抗菌性が均衡してすぐれる。
【0061】
ビニル系(共)重合体(B)の配合量が90重量部を越えるもの(比較例1)は耐衝撃性が劣り好ましくない。
【0062】
一方、グラフト共重合体(A)の配合量が60重量部を越えるものは成形加工性に劣る(比較例2)。
【0063】
抗菌性粒子(II)の添加量が0.1重量部未満のもの(比較例3)は抗菌性に劣り、10重量部を越えるもの(比較例4)は耐衝撃性、透明性に劣り好ましくない。
【0064】
また、抗菌性粒子(II)としてイオンピュアTA(屈折率1.576)を使用する(比較例5)と透明性が失われてしまう。
【0065】
【発明の効果】
特定の抗菌性粒子を添加することにより抗菌性に優れた実質的に透明性を有する難燃性熱可塑性樹脂組成物が得られる。
Claims (11)
- ゴム質重合体(a)に対し、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)から選ばれた1種以上の単量体をグラフト共重合せしめたグラフト共重合体(A)と、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)から選ばれた1種以上の単量体からなるビニル系重合体(B)とを、重量比で(A):(B)=10:90〜60:40含む熱可塑性樹脂(I)100重量部に対し、屈折率が1.48〜1.54である抗菌性粒子(II)を0.1〜10重量部添加してなる熱可塑性樹脂組成物。
- 抗菌性粒子(II)が、銀を含有するホウ珪酸ガラスであり、Ag2Oを0.1〜5.0重量%含有する抗菌性ガラスであることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ゴム質重合体(a)の重量平均粒子径が0.1〜0.5μmであり、かつ、グラフト共重合体(A)を構成するゴム質重合体(a)と単量体との重量比が20:80〜80:20である請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- グラフト共重合体(A)を構成する単量体が芳香族ビニル系単量体(b)5〜50重量%、シアン化ビニル系単量体(c)50重量%以下、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)30〜80重量%、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)60重量%以下からなるものである請求項1〜3いずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ビニル系重合体(B)を構成する単量体が芳香族ビニル系単量体(b)5〜50重量%、シアン化ビニル系単量体(c)50重量%以下、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(d)30〜80重量%、及び共重合可能なその他のビニル系単量体(e)60重量%以下からなるものである請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ヘイズが30%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物に、ポリアミドエラストマー(III)を1〜50重量部添加してなる熱可塑性樹脂組成物。
- ポリアミドエラストマー(III)が、ポリエーテルエステルアミドであることを特徴とする請求項7に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物に、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも一種類以上の官能基を有する変性ビニル系共重合体(IV)を0.1〜15重量部添加してなる熱可塑性樹脂組成物。
- 変性ビニル系共重合体(IV)が、少なくとも芳香族ビニル、シアン化ビニルおよびメタクリル酸とが共重合されてなる共重合体である請求項9に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
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