JP2004059896A - プリプレグ及びこのプリプレグを用いたプリント配線板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】プリプレグに層間接続用の孔加工と、この層間接続用の孔への導電性ペーストの充填とを行った後に、成形加工を施すことによりプリント配線板を得るにあたり、層間接続信頼性を向上することができるプリプレグを提供する。
【解決手段】基材にエポキシ樹脂組成物を含浸させ、加熱乾燥してエポキシ樹脂組成物をBステージ化してなるプリプレグ1に関する。Bステージ状態のエポキシ樹脂組成物の樹脂軟化温度が、55〜75℃となるようにする。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビアホールが形成されたプリント配線板の製造に好適に用いられるプリプレグ及びこのプリプレグを用いたプリント配線板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、パソコン、携帯電話、デジタルカメラ等の小型、軽量、多機能化等の理由によりプリント配線板に高密度化の要求が高まっており、このため任意の層間でインナービアホール接続が可能なプリント配線板が求められている。
【0003】
このようなプリント配線板の製造方法としては、特許文献1、特許文献2等に開示されているように、多孔質で加圧時の収縮性(被圧縮性)が高いアラミド不織布に熱硬化性樹脂を含浸させて半硬化状態にしたプリプレグの両面に、離型性フィルムをラミネートし、層間接続用の孔加工をおこない、その孔に導電性ペーストを充填後、離型性フィルムを剥離して接着シートを形成し、この接着シートの表裏両面に金属箔を重ねて圧縮成型し、写真法で回路形成を施す方法が提案されている。またこのようにして得られたプリント配線板をコア材とし、これに上記と同様の接着シートを重ねて成形することにより多層化する方法も知られている。
【0004】
このような工法において用いられる導電性ペーストは、良好な孔埋め性を確保するために室温でも充分な流動性を保有するものが用いられる。このような導電性ペーストは、ベースである熱硬化性樹脂からなるバインダー樹脂と、金属粒子とからなり(特許文献3,特許文献4等参照)、このバインダー樹脂は通常は加熱時の硬化反応の進行が速く、導電性ペーストが充填されたプリプレグを熱プレス工程において加熱加圧する際、プリプレグに用いられている含浸樹脂の溶融が開始する時点では、導電性ペーストの硬化反応がかなりの程度進行してしまう。このため、導電性ペーストが溶融・硬化した後に、プリプレグの含浸樹脂が溶融・硬化することとなって、導電性ペーストのバインダー樹脂が周囲のプリプレグの含浸樹脂に阻害されて充分に流動できず、金属粒子間の充分な圧縮、接合を確保しにくい現象が発生する。さらには、導電性ペーストの硬化反応とプリプレグの含浸樹脂の硬化反応とが別個に生じ、導電性ペーストの硬化物と含浸樹脂の硬化物の界面における結合力が低くなってしまい、熱サイクルや吸湿サイクル時に導電性ペーストの硬化物と含浸樹脂の硬化物の間に剥離が生じやすくなって、接続信頼性が低下するという問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−147464号公報
【特許文献2】
特開平7−170046号公報
【特許文献3】
特開平7−176846号公報
【特許文献4】
特開2000−30533公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、プリプレグに層間接続用の孔加工と、この層間接続用の孔への導電性ペーストの充填とを行った後に、成形加工を施すことによりプリント配線板を得るにあたり、層間接続信頼性を向上することができるプリプレグ、及びこのプリプレグを用いたプリント配線板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係るプリプレグ1は、基材にエポキシ樹脂組成物を含浸させ、加熱乾燥してエポキシ樹脂組成物をBステージ化してなるプリプレグ1において、Bステージ状態のエポキシ樹脂組成物の樹脂軟化温度が、55〜75℃であることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明は、プリプレグ中のBステージ化されたエポキシ樹脂組成物の90℃での溶融粘度が、1000Pa・s以下であることを特徴とするものである。
【0009】
また請求項3の発明は、基材に含浸させるエポキシ樹脂組成物として、25℃での粘度が30000mPa・s以下の液状エポキシ樹脂成分を5〜40phr含有するものを用いて成ることを特徴とするものである。
【0010】
また請求項4の発明は、基材としてガラス布を用いて成ることを特徴とするものである。
【0011】
また請求項5の発明は、基材として有機繊維不織布を用いて成ることを特徴とするものである。
【0012】
また請求項6に係るプリント配線板の製造方法は、請求項1乃至5のいずれかに記載のプリプレグ1に層間接続用の孔2加工を施し、この孔2に導電性ペースト3を充填した後、プリプレグ1の一面又は両面に金属箔4又は回路形成を施したコア材のいずれかを配置し、加熱加圧成形することにより、プリプレグ1中の樹脂成分と導電性ペースト3とが共に溶融している状態を経由させて、プリプレグ1中の樹脂成分と導電性ペースト3とを硬化させることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
プリプレグ1は、基材に対してエポキシ樹脂組成物を含浸させ、加熱乾燥することによりエポキシ樹脂組成物を半硬化(Bステージ状態)させることにより得られる。
【0015】
基材としては、配線板用途のプリプレグ1の作製に用いられる適宜のものを採用でき、例えばガラス織布、ガラス不織布、有機繊維織布、有機繊維不織布等が用いられる。
【0016】
エポキシ樹脂組成物中に配合されるエポキシ樹脂としては、特に制限されず、配線板用途のプリプレグ1を形成するために一般的に用いられるものを適用することができる。
【0017】
また、このエポキシ樹脂組成物には、エポキシ樹脂として、特に25℃での粘度が30000mPa・s以下の液状エポキシ樹脂を5〜40phr含有させることが好ましい。ここで、液状エポキシ樹脂の割合(phr)は、液状エポキシ樹脂を除く組成物中のエポキシ樹脂の樹脂量(樹脂固形分量)と硬化剤の固形分量との総量に対する、液状エポキシ樹脂の重量百分率で表される。この液状エポキシ樹脂の粘度の下限は特に設定する必要性はないが、既存の液状エポキシ樹脂では100mPa・s程度が実質的な下限である。このような液状エポキシ樹脂としては、例えば分子中に2個以上のエポキシ基を有する重合度1〜2のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等の一般的なエポキシ樹脂が使用可能であり、その他にもt−ブチルカテコール型エポキシ樹脂、含核ポリオール型エポキシ樹脂、ダイマー酸グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂肪族ポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、さらに近年プリント配線板の熱膨張係数の低減要求の高まりにつれて使用が広がっている2官能のナフタレン型エポキシ樹脂等のようなものを挙げることができる。
【0018】
エポキシ樹脂として、上記のような液状エポキシ樹脂を配合する場合にも、他のエポキシ樹脂としては特に制約はなく、任意の品質目的に応じて選択可能であり、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、更には難燃性を付与する目的で臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、もしくは近年環境対応で使用が拡大している種々のリン変性エポキシ樹脂等を、本発明の目的を達成する範囲内であれば、特に制限なく使用することができるものである。
【0019】
また、このとき硬化剤としてはフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂のようなノボラック型硬化剤、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンのようなアミン型硬化剤等から任意に選択可能であり、混合して使用することも可能である。
【0020】
ここで、特に近年の鉛フリー半田対応等によるプリント配線板の耐熱性要求の高まりにより、ノボラック型硬化剤の使用が拡大している。しかしこのノボラック型硬化剤は分子量が大きく軟化点が高いため、その結果プリプレグに含浸されたB−ステージ樹脂の軟化温度が高くなってしまい本発明の目的とする硬化とは相反する方向に作用する。しかしエポキシ樹脂側に上記の液状エポキシ樹脂を配合することにより、ノボラック型硬化剤を用いる場合であっても、効果的に樹脂全体の軟化温度を低減することができる。
【0021】
また、硬化促進剤としては特に限定するものではないが、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン等の三級アミン類、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類等が使用可能である。
【0022】
尚、上記エポキシ樹脂、硬化剤の配合比率としてはエポキシ基1当量に対し、ノボラック系硬化剤であれば水酸基当量0.5〜1.2が好ましく、またアミン系硬化剤であればエポキシ基1当量に対し、アミノ基当量0.2〜1.2が好ましく、この配合比率は、耐熱性、Tg、吸湿性等の設計バランスにより任意に調整可能である。
【0023】
また硬化促進剤は、プリプレグ化する際の生産性の設計、プリプレグの硬化時間と樹脂流れ性のバランス管理、ひいては熱成型後の成形性確保等様々な寄与をもたらすものであり、添加量としては、エポキシ樹脂に対し0.01〜1.0phr程度の範囲で任意に配合量を調整することが好ましい。この硬化促進剤の配合量(phr)は、組成物中のエポキシ樹脂の樹脂分(樹脂固形分量)の総量に対する、硬化促進剤の配合量の重量百分率で表される。
【0024】
また積層板の熱膨張係数のコントロール、比誘電率調整、若しく半田耐熱性の品質向上等の目的で、必要に応じ別途10〜200phr程度の無機充填材を添加することも可能である。無機充填材としては、例えばアルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0025】
プリプレグ1を作製するにあたっては、熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に分散・溶解させてワニスを調製し、このワニスを基材に含浸させ、加熱乾燥させて溶剤を除去するとともに、含浸している熱硬化性樹脂組成物を半硬化状態すなわちBステージ化する。
【0026】
このようにしてプリプレグ1を得るにあたっては、プリプレグ1を構成するBステージ状態のエポキシ樹脂組成物の、樹脂軟化温度が、55〜75℃の範囲となるようにするものであり、更に好ましくはプリプレグ中のBステージ化されたエポキシ樹脂組成物の90℃での溶融粘度が、1000Pa・s以下となるようにする。
【0027】
この樹脂軟化温度及び溶融粘度は、主には樹脂ワニスを構成する原材料の軟化点に大きな影響を受けるものであるが、例えばプリプレグ1の作製の際に乾燥工程で与える熱量を調節することによっても、適宜調整することができる。
【0028】
このように作製されるプリプレグ1には、積層成形に先だって、層間接続用の孔あけ加工と、この孔2への導電性ペースト3の充填とが行われる。この工程の一例を、図1を示して説明すると、まずプリプレグ1の両面にポリエチレンテレフタレートフィルム等の離型フィルム7を圧着する。この離型フィルム7は、スクリーン印刷法による導電性ペースト3の充填時におけるマスキング材となる。次いで、レーザ光を照射してマスキング材ごとプリプレグ1に孔あけ加工を施す。レーザ光としては、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、YAGレーザ等の適宜のものを使用することができ、加工するプリプレグ1の厚みや形成する孔2の径によって最適なものを選択すれば良い。次いで、図1(a)に示すように、プリプレグ1の孔2内に導電性ペースト3を、スクリーン印刷法等により離型フィルム7を貼着した側から充填した後、フィルムを剥離し、導電性ペースト3が充填されたプリプレグ1を得ることができる。このとき、導電性ペースト3は、プリプレグ1の両面において、離型フィルム7の厚み分だけ孔2から突出した状態となる。
【0029】
ここで使用する導電性ペースト3は熱硬化性の樹脂組成物(ペースト樹脂)と、導電粒子とが混合されたものを用いることができ、配線板製造時にビアホール6の孔埋め用として一般的に用いられるものより選択、適用することができるが、成分中に溶剤を配合しないものを用いることが好ましく、またビアホール6の充填作業を容易に行うために、室温での粘度が2000Pa・s以下のものを用いることが好ましい。
【0030】
また、この導電性ペースト3としては、室温から1〜6℃/分程度の昇温速度で温度上昇させた際に、50〜80℃の範囲で最低粘度値に達した後に、硬化反応の進行により粘度が上昇するものを用いることが好ましい。このような温度特性は、無溶剤の孔埋め用導電性ペースト3が一般に備える性能であり、導電性ペースト3の組成を適宜調整することにより、このような温度特性を導電性ペースト3に容易に付与することができる。
【0031】
導電性ペースト3の具体的な組成を挙げると、導電粒子としては、銀、銅、ニッケル、パラジウム等の適宜の金属粉を用いることができ、その粒径は0.5〜20μm程度のものを用いることが好ましい。また、この導電粒子の配合量は、導電性ペースト3全量に対して30〜70体積%の範囲とすることが好ましい。
【0032】
またペースト樹脂中の樹脂成分としては、適宜の熱硬化性樹脂を用いることができるが、導電性ペースト3の粘度を上記のように維持するために、低粘度のものを配合することが好ましく、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のような分子中に2個以上のエポキシ基を有する低粘度の液状エポキシ樹脂を用いることができる。
【0033】
また硬化剤としては、樹脂成分と反応して硬化反応を進行させるものであれば特に制限されずに用いることができるが、例えば芳香族アミン等のアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、フェノールノボラック樹脂等を用いることができる。
【0034】
また、必要に応じて、一般的に常用される他の適宜の添加物を配合することができる。
【0035】
このような樹脂成分及び硬化剤の組合せにおいては、プリプレグ1を構成する熱硬化性のエポキシ樹脂組成物(含浸樹脂)との反応性に優れ、ペースト樹脂と含浸樹脂の界面を強固に密着させることが可能である。
【0036】
このように導電性ペースト3が充填されたプリプレグ1を絶縁層5の形成用の部材として用い、このプリプレグ1の一面又は両面に金属箔4又は回路形成を施したコア材のいずれかを配置し、加熱加圧成形することにより、プリント配線板が製造される。
【0037】
例えば図1(b)(c)に示すように、このプリプレグ1の両面に銅箔等の金属箔4を配置して、加熱加圧成形を施すことにより積層一体化して両面金属箔張り積層板を得る。このときプリプレグ1は加熱硬化により絶縁層5として形成され、このプリプレグ1中の導電性ペースト3が充填された孔2では、導電性ペースト3の樹脂が加熱硬化されて、層間接続用のビアホール6が形成される。そしてこの積層板の両面の金属箔4に必要に応じて写真法等を利用して回路成形を施すことにより、両面に導体回路が形成されると共にこの導体回路がビアホール6にて接続された配線板(プリント配線板)が得られる。
【0038】
また、上記のように形成されたプリント配線板をコア材とし、導電性ペースト3が充填されたプリプレグ1を用いて更に多層の配線板を作製することもできる。例えば導電性ペースト3が充填されたプリプレグ1の一面に上記のように形成されたコア材を、コア材上の回路の所定位置と導電性ペースト3が充填された孔2の開口とが重なるように配置し、プリプレグ1の他面に同様にしてコア材を積層するか、あるいは銅箔等の金属箔4を配置して、加熱加圧成形を施すものである。このとき、前記の場合と同様に、プリプレグ1は加熱硬化により絶縁層5として形成され、このプリプレグ1中の導電性ペースト3が充填された孔2では、導電性ペースト3の樹脂が加熱硬化されて、層間接続用のビアホール6が形成される。そして更に、外層に回路形成がなされていない金属箔4が配置されている場合には、必要に応じて写真法等にて回路形成を施す。
【0039】
また、同様にして、導電性ペースト3が充填されたプリプレグ1の一面又は両面に、回路形成が施された単層又は多層の絶縁層5を有するコア材と、金属箔4とのいずれかを配置し、加熱加圧成形して積層一体化し、更に必要に応じて最外層に回路形成を施すことによって、ビアホール6を有する配線板(プリント配線板)を得ることができる。
【0040】
また、単層又は多層の絶縁層5を有するコア材と、導電性ペースト3が充填されたプリプレグ1とを複数用い、これらのコア材とプリプレグ1とを交互に配置して、加熱加圧成形により積層一体化することにより、ビアホール6を有する多層の配線板を得ることもできる。
【0041】
上記の加熱加圧条件は、使用するプリプレグ1中の樹脂や導電性ペースト3の組成、或いは積層する部材の寸法等により適宜設定されるが、例えば0.98Mpa(10kg/cm)〜4.90MPa(50kg/cm)の圧力で加圧した状態で、室温から1〜6℃/分程度の昇温速度で温度上昇させ、所定の保持温度まで到達させ、この状態で所定時間保持する。この保持温度は、プリプレグ1及び導電性ペースト3中の樹脂組成により適宜設定されるが、エポキシ樹脂系の樹脂組成の場合には、170〜210℃の範囲とすることが好ましい。
【0042】
この加熱加圧過程においては、プリプレグ1中の含浸樹脂は軟化温度に到達した後に、軟化溶融と硬化の進行が競争し、また導電性ペースト3のペースト樹脂も軟化溶融と硬化の進行が競争するが、上記のようにプリプレグ1を構成するBステージ状態のエポキシ樹脂組成物(含浸樹脂)の樹脂軟化温度が55〜75℃と低い値であることから、ペースト樹脂が硬化しきる前に含浸樹脂が軟化溶融し、含浸樹脂とペースト樹脂とが共にその粘度が軟化溶融している状態を経由することとなる。このとき含浸樹脂とペースト樹脂の粘度が共に1000Pa・s以下となっている状態を経由するように、含浸樹脂とペースト樹脂の組み合わせを適宜設定しておくことが好ましい。特に、プリプレグ1中のBステージ化されたエポキシ樹脂組成物の90℃での溶融粘度が、1000Pa・s以下となるようにし、導電性ペースト3として上記のような特性を有するものを用いると、加熱加圧過程において加熱温度が90℃となった時点で含浸樹脂とペースト樹脂の粘度が共に1000Pa・s以下となって共に軟化溶融している状態を経由することとなる。
【0043】
このように、含浸樹脂とペースト樹脂とが共にその粘度が軟化溶融している状態を経由することから、導電性ペースト3のバインダー樹脂の流動を周囲のプリプレグ1の樹脂が阻害することなく、金属粒子間の充分な圧縮、接合が確保でき、さらには、加熱加圧過程中に含浸樹脂とペースト樹脂との反応が促進されて、導電性ペースト3の硬化物と含浸樹脂の硬化物との間に強固な結合力が生じる。このため、得られたプリント配線板は熱サイクルや吸湿サイクル時においても導電性ペースト3の硬化物と含浸樹脂の硬化物との界面に剥離が生じにくくなり、優れた接続信頼性を有するプリント配線板を得ることができるものである。
【0044】
また、プリプレグ1を作製するための基材として特にアラミド不織布等の有機繊維不織布を用いている場合には、圧力がかけられた場合の基材の圧縮性が高いことから、上記の加熱加圧過程においてプリプレグ1が圧縮され、それに伴って導電性ペースト3が圧縮されることにより、導電性ペースト3内の導電粒子が密充填されることとなってビアホール6における導電性が向上すると共に、導電性ペースト3の硬化物と含浸樹脂の硬化物との間の密着性が更に高くなる。
【0045】
但し、プリプレグ1を作製するための基材としてガラス布を用いる場合でも、有機繊維不織布に比べて加熱加圧過程におけるプリプレグ1の圧縮性は低くなるものの、上記のように加熱加圧過程において含浸樹脂とペースト樹脂とが共にその粘度が軟化溶融している状態を経由して、加熱加圧過程中に含浸樹脂とペースト樹脂との反応が促進されることから、導電性ペースト3の硬化物と含浸樹脂の硬化物との間には、充分に高い密着性が得られる。
【0046】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって詳述する。
【0047】
(プリプレグ作製)
表1に示す配合組成にて原材料を混合し、2時間撹拌して、配合A〜Eのエポキシ樹脂ワニスを調製した。尚、表1に示す各成分の詳細は、表2に示す通りである。
【0048】
また、導電性ペースト3としては表3に示すものを、基材としては表4に示すものを使用した。ここで、導電性ペースト3の25℃粘度は、B型粘度計(東機産業株式会社製)による2rpmでの測定値である。
【0049】
そして、各実施例及び比較例について、表5,6に示すエポキシ樹脂ワニス、導電性ペースト3及び基材の組み合わせにて、導電性ペースト3が充填されたプリプレグ1を作製した。
【0050】
ここで、導電性ペースト3の90℃での粘度(溶融粘度)は、導電性ペースト3をパラレルプレートにセットし、粘弾性測定解析装置(株式会社ユーピーエム製、「MR−300」)にて、1℃/分でサンプルを昇温し、90℃での複素粘性率ηを観測した。
【0051】
プリプレグ1の作製は、基材にエポキシ樹脂を含浸させ、乾燥機にて表5,6に示す加熱温度と加熱時間にて加熱処理を行い、溶剤を揮発させると共に、含浸した樹脂をBステージ化することにより行った。
【0052】
表5,6に示すプリプレグ1の樹脂分は、トリーターのギャップ調整により行ったものである。
【0053】
また、硬化時間はプリプレグ1より樹脂を抽出(もみ出し)し、IPC−TM−650−2.3.18に準拠して、171℃での樹脂のゲル化時間を測定することにより行った。
【0054】
また、90℃での粘度(溶融粘度)は、プリプレグ1より樹脂を抽出(もみ出し)し、この樹脂粉のタブレットを作製し、これを固体測定用具治具(パラレルプレート)にセットし、粘弾性測定解析装置(株式会社ユーピーエム製、「MR−300」)にて、1℃/分でサンプルを昇温し、90℃での複素粘性率ηを観測した。
【0055】
また、樹脂軟化温度測定は以下のようにして行った。
プリプレグ1より樹脂を抽出(もみ出し)し、顕微鏡用加熱冷却装置(ジャパンハイテック株式会社製、「LK−600PH」)を用いて、ヒーター板上に硬質硝子製試料設置板を載せ、その上に樹脂粉を10mg乗せてさらに上から硬質硝子製カバーグラスを重ねた。ヒーター板を1±0.1℃/分の昇温速度で加熱すると共に顕微鏡観察にて樹脂が軟化したポイントを確認することによって測定した。
【0056】
樹脂が軟化したことの判定は、樹脂粉の白色度が失われ始めた時と定義し、その時の温度をモニターしてその温度を軟化温度とした。
【0057】
また、プリプレグくっつき有無(プリプレグ表面のタック性=べとつき)は、プリプレグ1を100枚重ね、これをアルミニウム製の袋にて、減圧包装し、この包装直後に開封したものについて、プリプレグ1間のくっつきの有無を確認することにより行った。
【0058】
そして、このような平面視330mm×500mmの寸法のプリプレグ1の表裏両面に、厚み25μmのフッ素系離型フィルム7(旭硝子製、「アフレックス25N」)を温度105℃、圧力1.47Mpa(15kg/cm)、加熱加圧時間3分間の条件で熱圧着させた後に、炭酸ガスレーザ加工機(三菱電機製、「ML605GTX−5100U」)にて、エネルギー密度30mJ/P、パルス幅15μsec、1ショット加工にて、プリプレグ1と離型フィルム7とを貫通する200μm径の孔2を形成した。次いで、プリプレグ1の一面側からゴム製スキージを用いて導電性ペースト3を孔2内に押し込むと共に他面側から孔2内を減圧吸引法にて吸引することにより、孔2内に導電性ペースト3を充填した後、両面の離型フィルム7を剥離した。
【0059】
(評価用基板作製)
各実施例及び比較例につき、一枚のプリプレグ1の表裏両面に厚み18μmの片面粗化銅箔(古河電工株式会社製、「GTS18μ」)を、粗面がプリプレグ1と対向するように配置し、2.94MPa(30kg/cm)の圧力下で、1.0℃/分の昇温速度で170℃まで昇温した後、この状態を40分間保持して加熱加圧成形を施した。
【0060】
次いで、表裏の銅箔に対してエッチング処理を施すことにより、1000穴直列抵抗値測定用パターンを20ブロック分形成した。
【0061】
(接続抵抗値測定)
初期値:20ブロックの各1000穴直列抵抗値測定用パターンごとに、1000ビアの直列電気抵抗値を四端子法にて測定し、配線抵抗分を差引いた上で1ビア当りの電気抵抗値を算出した。そして20ブロックの各1ビア当りの電気抵抗値の平均値を導出した。
【0062】
冷熱サイクル試験後:評価用基板を55℃の雰囲気下で30分間保持した後、125℃の雰囲気下で30分保持する冷熱サイクルを1000サイクル繰り返し行った。そして、処理後の評価用基板について、20ブロックの各1000穴直列抵抗値測定用パターンごとに、1000ビアの直列電気抵抗値を四端子法にて測定し、断線により導通不良が生じたものの個数を調査すると共に、導通不良が生じなかったものについては、初期値の測定の場合と同様にして各1ビア当りの電気抵抗値の平均値を導出した。
【0063】
オイルディップ試験後:評価用基板を260℃の油浴中に30秒間保持した後、25℃の雰囲気下で15秒保持する動作を1サイクルとして、これを100サイクル繰り返し行った。そして、処理後の評価用基板について、20ブロックの各1000穴直列抵抗値測定用パターンごとに、1000ビアの直列電気抵抗値を四端子法にて測定し、断線により導通不良が生じたものの個数を調査すると共に、導通不良が生じなかったものについては、初期値の測定の場合と同様にして各1ビア当りの電気抵抗値の平均値を導出した。
【0064】
以上の結果を表5,6に示す。
【0065】
【表1】
Figure 2004059896
【0066】
【表2】
Figure 2004059896
【0067】
【表3】
Figure 2004059896
【0068】
【表4】
Figure 2004059896
【0069】
【表5】
Figure 2004059896
【0070】
【表6】
Figure 2004059896
【0071】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1に係るプリプレグは、基材にエポキシ樹脂組成物を含浸させ、加熱乾燥してエポキシ樹脂組成物をBステージ化してなるプリプレグにおいて、Bステージ状態のエポキシ樹脂組成物の樹脂軟化温度が、55〜75℃であるため、このプリプレグに層間接続用の孔加工を施し、この孔に導電性ペーストを充填した後、プリプレグの一面又は両面に金属箔又は回路形成を施したコア材のいずれかを配置し、加熱加圧成形すると、プリプレグ中の樹脂成分と導電性ペーストとが共に溶融している状態を経由させた後に、プリプレグ中の樹脂成分と導電性ペーストとを硬化させることができて、導電性ペーストのバインダー樹脂の流動を周囲のプリプレグの樹脂が阻害することなく、金属粒子間の充分な圧縮、接合が確保できる。さらには、加熱加圧過程中にプリプレグ中の樹脂成分と導電性ペースト中の樹脂成分との反応が促進されて、導電性ペーストの硬化物とプリプレグ中の樹脂成分の硬化物との間に強固な結合力を生じさせることができるものであり、このため、得られたプリント配線板は熱サイクルや吸湿サイクル時においても導電性ペーストの硬化物とプリプレグ中の樹脂成分の硬化物との界面に剥離が生じにくくなり、ビアホールにおける優れた接続信頼性を有するプリント配線板を得ることができるものである。
【0072】
請求項2の発明は、プリプレグ中のBステージ化されたエポキシ樹脂組成物の90℃での溶融粘度が、1000Pa・s以下であるため、プリント配線板製造時の加熱加圧成形過程においては、プリプレグ中の樹脂成分と導電性ペーストとが共に溶融している状態を確実に経由させることができ、ビアホールにおける接続信頼性が更に向上したプリント配線板を得ることができるものである。
【0073】
また請求項3の発明は、基材に含浸させるエポキシ樹脂組成物として、25℃での粘度が30000mPa・s以下の液状エポキシ樹脂成分を5〜40phr含有するものを用いるため、軟化温度の高いノボラック系の樹脂を硬化剤に用いた場合でも効果的にプリプレグ中の含浸樹脂の軟化温度を目標の範囲に入れることが可能となるものである。
【0074】
また請求項4の発明は、基材としてガラス布を用いるため、このプリプレグを用いたプリント配線板製造時の加熱加圧過程において、プリプレグの圧縮性は有機繊維不織布に比べて低くなるものの、加熱加圧過程においてプリプレグ中の樹脂成分とペースト樹脂とが共にその粘度が軟化溶融している状態を経由して、導電性ペーストのバインダー樹脂の流動を周囲のプリプレグの樹脂が阻害することなく、金属粒子間の充分な圧縮、接合が確保できる。さらには、加熱加圧過程中にプリプレグ中の樹脂成分と導電性ペースト中の樹脂成分との反応が促進されることから、導電性ペーストの硬化物とプリプレグ中の樹脂成分の硬化物との間には、充分に高い密着性が得られるものである。
【0075】
また請求項5の発明は、基材として有機繊維不織布を用いるため、このプリプレグを用いたプリント配線板製造時の加熱加圧過程におけるプリプレグの圧縮性が高くなり、加熱加圧過程においてプリプレグが圧縮され、それに伴って導電性ペーストが圧縮され、導電性ペースト内の導電粒子が密充填されてビアホールにおける導電性が向上すると共に、導電性ペーストの硬化物とプリプレグ中の樹脂成分の硬化物との間の密着性が更に高くなるものである。
【0076】
また請求項6に係るプリント配線板の製造方法は、請求項1乃至4のいずれかに記載のプリプレグに層間接続用の孔加工を施し、この孔に導電性ペーストを充填した後、プリプレグの一面又は両面に金属箔又は回路形成を施したコア材のいずれかを配置し、加熱加圧成形することにより、プリプレグ中の樹脂成分と導電性ペーストとが共に溶融している状態を経由させて、プリプレグ中の樹脂成分と導電性ペーストとを硬化させるため、導電性ペーストのバインダー樹脂の流動を周囲のプリプレグの樹脂が阻害することなく、金属粒子間の充分な圧縮、接合が確保できる。さらには、加熱加圧過程中にプリプレグ中の樹脂成分と導電性ペースト中の樹脂成分との反応が促進されて、導電性ペーストの硬化物とプリプレグ中の樹脂成分の硬化物との間に強固な結合力が生じさせることができるものであり、このため、得られたプリント配線板は熱サイクルや吸湿サイクル時においても導電性ペーストの硬化物とプリプレグ中の樹脂成分の硬化物との界面に剥離が生じにくくなり、ビアホールにおける優れた接続信頼性を有するプリント配線板を得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すものであり、(a)乃至(c)はそれぞれ断面図である。
【符号の説明】
1 プリプレグ
2 孔
3 導電性ペースト
4 金属箔

Claims (6)

  1. 基材にエポキシ樹脂組成物を含浸させ、加熱乾燥してエポキシ樹脂組成物をBステージ化してなるプリプレグにおいて、Bステージ状態のエポキシ樹脂組成物の樹脂軟化温度が、55〜75℃であることを特徴とするプリプレグ。
  2. プリプレグ中のBステージ化されたエポキシ樹脂組成物の90℃での溶融粘度が、1000Pa・s以下であることを特徴とする請求項1に記載のプリプレグ。
  3. 基材に含浸させるエポキシ樹脂組成物として、25℃での粘度が30000mPa・s以下の液状エポキシ樹脂成分を5〜40phr含有するものを用いて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載のプリプレグ。
  4. 基材としてガラス布を用いて成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプリプレグ。
  5. 基材として有機繊維不織布を用いて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載のプリプレグ。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載のプリプレグに層間接続用の孔加工を施し、この孔に導電性ペーストを充填した後、プリプレグの一面又は両面に金属箔又は回路形成を施したコア材のいずれかを配置し、加熱加圧成形することにより、プリプレグ中の樹脂成分と導電性ペーストとが共に溶融している状態を経由させて、プリプレグ中の樹脂成分と導電性ペーストとを硬化させることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
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