JP2004057869A - 燃料改質触媒ならびに水素リッチガス製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】比較的低温であっても高い燃料転化率および選択率での燃料改質を実現でき、改質触媒システムの大幅なダウンサイズィングを可能にする炭化水素系燃料改質触媒を提供する。
【解決手段】燃料ガスが流通可能な貫通孔を有し、ニッケルを含有し、気孔率が90%〜97%、平均孔数が20〜120個/インチである金属製フォーム状支持体の骨材表面上に、ロジウムを含む多孔性触媒層を形成させてなるモノリス触媒に、燃料を含有するガスを流通させる。
【選択図】      図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池用燃料から水素リッチガスを生成するための燃料改質触媒およびその使用方法に関し、より詳しくは、低温であっても高い改質効率を有し、燃料改質に伴う副生成物の発生量が少ないコンパクトな燃料改質触媒およびその使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
次世代の自動車用エネルギー源として燃料電池に大きな期待が掛けられているが、その燃料である水素の供給法が大きな課題となっている。
【0003】
水素の供給法には、▲1▼水素をそのまま供給する方法、▲2▼メタンが主成分である都市ガスやプロパンが主成分であるLPGを改質・分解して得られた水素を用いる方法、▲3▼メタノール、エーテル、ガソリン、灯油などの液体燃料を改質・分解して得られた水素を用いる方法など各種の方法が提案されている。
【0004】
しかしながら、上記▲1▼の方法を適用するためには、高圧ボンベなどの特殊な貯蔵装備が必要となり、安全性、ハンドリング、インフラなど克服すべき課題が大きい。また、上記▲2▼の方法を適用する場合にも、取り扱い、インフラなどの問題点がある。上記▲3▼の方法を適用するにあたっては、メタノールをオンボードで改質して水素を得る場合は、エネルギー密度が低い、インフラ、毒性、価格など数々の問題点がある。しかし、内燃機関用燃料として従来使われているガソリンまたはガソリン類似の炭化水素留分を用いる場合は、エネルギー密度も比較的高く、インフラの問題もない。従って、従来燃料として一般的に用いられてきたガソリンまたはガソリン類似の炭化水素留分を水素源として、オンボードで改質することが、現段階においては、エネルギー密度、搭載性、インフラストラクチャー、安全性などの観点から最も好都合であるといえる。
【0005】
従来の炭化水素系燃料改質の実施形態を以下に例示する。まずニッケル系触媒を用いて、燃料を700℃〜800℃程度の高温で改質し、水素含有ガスを得る。改質ガス中には副生したCOが10%程度含有するため、引き続き反応式(1)CO+HO→CO+HのCO水性ガスシフト反応(CO変成反応)により、Hに変換する。
【0006】
このCO変成反応は、典型的な熱力学平衡支配反応であり、高温ほど平衡が左に寄ることから、できるだけ低温で効率よく反応を進めることが必要である。しかし、現状は、低温で高活性な触媒がないため、高温型触媒を用いてできるだけCO濃度を下げておき、次いで、低温型触媒で1%程度にまでCO濃度を下げる。さらに、残留COを、CO選択酸化触媒を用いて40ppm、あるいはそれ以下にまで除去し、燃料電池スタックに送る。
【0007】
従って、従来の改質触媒システムは、燃料改質触媒+高温型CO変成触媒+低温型CO変成触媒+CO選択酸化触媒の4ステージの触媒システムを必要とする。CO除去効率をより高める目的で、CO選択酸化触媒を2分割する場合もあり、その場合には5ステージの触媒システムとなる。
【0008】
したがって、車両への適用に際しては、小型化・軽量化が重要であり、この4ステージあるいは5ステージの改質触媒システムの容量を減らすことが求められている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記触媒システムにおいて、最も容量を占めるのはCO変成触媒である。それは、CO水性ガスシフト反応が熱力学平衡支配反応であり、高活性触媒を用いても、温度とガス組成で、転化できるCO量が決まってしまうからである。したがって、水素リッチガス中に含まれるCO濃度を低減させ、改質触媒システムの大幅なダウンサイズィングを可能とするには、上流の燃料改質触媒の段階でCO生成を抑制することが肝要である。
【0010】
また、各種耐熱対策費用の削減やエネルギー効率の向上を考慮すると、より低温で改質反応を進行させる改質触媒の開発が希求されている。
【0011】
上記事項に鑑み、本発明は、比較的低温であっても高い燃料転化率および選択率での燃料改質を実現でき、改質触媒システムの大幅なダウンサイズィングを可能にする炭化水素系燃料改質触媒を提供することを目的とする。
【0012】
また、かかる炭化水素系燃料改質触媒を用いる水素リッチガスの製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、炭化水素系燃料を含む燃料ガスが流通可能な、貫通したマクロ孔を有する多孔性材料からなる支持体として、ニッケル(Ni)を含有し、気孔率が90%〜97%、1インチ長さ当りに有する平均孔数が20〜120個である金属製フォーム状支持体を用い、その骨材表面上に、ロジウム(Rh)を含む多孔性触媒層を形成させてなるモノリス型燃料改質触媒の貫通したマクロ孔に炭化水素系燃料を含む燃料ガスを流通させることによって燃料転化率および選択率を高めることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
また、かかるモノリス型燃料改質触媒の貫通孔に、炭化水素系燃料を含有するガスを流通させることによる水素リッチガスの製造方法によって、達成される。
【0015】
【発明の効果】
本発明のモノリス型燃料電池用燃料改質触媒によれば、燃料ガスが流通可能な貫通したマクロ孔を有する多孔性材料からなる支持体において、Niを含有し、気孔率が90%〜97%、1インチ長さ当りに有する平均孔数が20〜120個である金属製フォーム状支持体を用い、その骨材表面上に、Rhを含む多孔性触媒層を形成させてなるモノリス触媒の貫通した貫通可能な孔に炭化水素系燃料を含む燃料ガスを流通させることによって燃料転化率および選択率を高めることができる。燃料転化率および選択率が高いことから、改良触媒システムの大幅なダウンサイズィングを可能にする。
【0016】
また、本発明のモノリス型燃料電池用燃料改質触媒を用いる方法によれば、所望の水素リッチガスを製造することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のモノリス型燃料電池用燃料改質触媒は、燃料ガスが流通可能な貫通したマクロ孔を有する多孔性材料からなる支持体において、Niを含有し、気孔率が90%〜97%、1インチ長さ当りに有する平均孔数が20〜120個である金属製フォーム状支持体を用い、その骨材表面上に、Rhを含む多孔性触媒層を形成させてなるモノリス触媒の貫通したマクロ孔または貫通可能な孔に炭化水素系燃料を含む燃料ガスを流通させることによって燃料転化率および選択率を高めることができる。尚、気孔率および平均孔数は、慣用的に用いられているが、それぞれ単位体積あたりの気孔の体積百分率および単位断面積あたりの気孔の数をいう。
【0018】
このように、気孔率が90%以上の多孔性支持体に微細な貫通孔を多数設けることにより実質的な反応場が増大し、例えば、空間速度が100,000hr−1以上の極めて高い空間速度条件であっても燃料ガスの水素への転化を充分に進行させることができる。また、改質触媒成分が微細貫通孔内部の金属骨材表面上に分散担持されているため、活性が高く、比較的低い温度であって高い転化率を達成できる。その上、COなどの副生物の生成量を低く抑えることができる。そして、燃料改質触媒によって改質された水素リッチガス中に含まれるCO濃度が低減される結果、該水素リッチガス中に含まれるCO濃度を低減するためのCO変成触媒を簡素化でき、改質触媒システム全体の大幅なダウンサイズィングが可能となる。燃料電池自動車に適用した場合においては、車体の軽量化、動力装置の小型化などが可能となる。さらに、従来方法と比較して低温で改質反応を進行させることができるため、反応器などに各種耐熱対策を施す必要を省ける。従って、本発明の燃料改質触媒を用いてなる触媒システムを用いることによって、システムの簡素化、信頼性の向上、設備コストの削減などの効果が得られる。低温で改質反応を進行させることができる他の効果としては、反応温度の昇温に要するエネルギー量が少なくて済むため、エネルギー効率が高まることが挙げられる。
【0019】
本発明になるモノリス触媒を使用するに際しては、触媒の貫通孔に流通させる燃料含有ガスにおける酸素/燃料炭素(O/C)比を0.1〜0.5、かつ、水蒸気/燃料炭素(HO/C)比を0.8〜1.8とすることにより、部分酸化反応と水蒸気改質反応を効率よく併発させることができる。いわゆるオートサーマル反応による水素リッチガスの製造方法である。ここで、水素リッチガスとは、ガス成分中で水素が最も多い割合であるようなガスを意味する。
【0020】
この場合、部分酸化反応の発熱と水蒸気改質反応による吸熱をバランス良く起こすことがこの反応の要件である。しかし、上記のような空間速度が100,000hr−1以上の極めて高い条件下では、通常、反応速度の速い部分酸化反応が優先的に起こりやすく、反応速度の遅い水蒸気改質反応はほとんど進まず、十分な燃料転化率が得られなくなる傾向にある。
【0021】
しかし、本発明になるモノリス型燃料電池用燃料改質触媒を用いると空間速度が極めて高い条件上記条件下においても、上記(O/C)比、および(HO/C)比条件において両反応がバランス良く進み、高い燃料転化率、水素収率が得られる。
【0022】
その理由は不明であるが、多数の貫通孔を有する金属製フォーム状支持体にコートした触媒では、支持体内の孔が入り組んだ構造となり、燃料ガスが貫通孔をストレートに通過せずに一部は支持体内のマクロ孔の中に滞留することが寄与しているものと思われる。
【0023】
すなわち、支持体内に多数のマクロ反応器が形成され、それが高い反応率、水素収率に寄与しているものと思われる。そのようなマクロ反応器が形成されるには、金属製フォーム状支持体において1インチ長さ当りの平均孔数が20個以上存在していることが必要であり、それ以下では燃料ガスを適度に滞留させ得るようなマクロ孔が形成されず、燃料ガスが単純に貫通し、水蒸気改質反応がうまく進まない。
【0024】
また、平均孔数が120個/インチを超えると、平均孔直径が小さくなり、触媒コートにより、閉塞がおこり易くなり、孤立マクロ孔が多くなって、部分酸化反応と水蒸気改質反応のバランスが保てなくなる。さらには、ガスの流通抵抗が大きくなり、エネルギー損失を増加させるため好ましくない。
【0025】
本発明の場合、触媒成分としてロジウム(Rh)を用いると低温活性および耐久性に優れた触媒が得られ、かつ、金属製フォーム状支持体がニッケル(Ni)を含む場合に、高い水素収率が得られる。金属フォーム骨格中のNi成分が触媒として作用している可能性が考えられるが、特に、触媒成分であるRhとの組み合わせが何らかの相互作用で効果を発揮していると思われる。たとえば、触媒層は多数の細孔を含んでいる。その細孔内で、部分酸化反応が進行し、その下層にある骨格表面のNiにより水蒸気改質が進む、といった機能分担がなされている可能性も想定される。
【0026】
金属製フォーム状支持体としては、Niを含有する金属であれば有効で、100%Ni製の支持体はもちろん、Ni−Crを主成分とするオーステナイト系の金属も有効である。
【0027】
本発明になるモノリス触媒の場合、上記平均孔数は、平均孔直径にすると、概略240〜1500μmの範囲になる。この範囲で、上述したような適切なマクロ孔が形成されて両反応のバランスが保てるのである。
【0028】
前記の金属製フォーム状支持体の骨材表面に形成させる触媒層に、上記Rh以外に、Ce、Zr、Ca、Mg、Al、Si、Pt、Ni、Feから選ばれた1種以上の成分を含有させたモノリス型燃料改質触媒であることが好ましい。これらの成分の内、Ce、Zr、Ca、Mg、Ni、Feに関しては、触媒表面上での酸素の移動を助け、酸化を促進させる。さらに部分酸化反応を促進させたい場合は、Ptを添加すると効果的である。Alは酸化物として高表面積の担体を提供し、Siはその耐熱性を高めるのに有効である。
【0029】
前記の金属製フォーム状支持体の骨材表面に形成させる触媒層の量を、単位容積当たり30〜180g/Lとしたモノリス型燃料改質触媒であることが好ましく、金属フォーム骨格にコートする量をこの範囲とすることで、適度な大きさのマクロ反応場を支持体内に形成できる。
【0030】
前記の金属製フォーム状支持体を得るにあたり、複数の支持体片を燃料ガスの流れ方向に対して垂直方向に積層して形成して得たモノリス型燃料改質触媒であることが好まし。予め触媒成分を均一にコートした比較的薄いフォーム状支持体を用いて触媒体を構成すると、全体としても均一なマクロ孔構造を有する触媒体を得てもよい。本発明になる極めて孔直径の小さなフォームを用いる場合、厚いフォームに触媒スラリーを均一にコートすることは困難であり、それどころか、目詰まりを生じてしまう。たとえば、10mm程度あるいはそれ以下の厚さのフォームに均一に触媒をコーティングし、それを積層して触媒をなすことで均一な貫通孔構造を有するモノリス触媒が提供できる。
【0031】
前記の金属製フォーム状支持体の貫通孔直径が、燃料ガス流れ方向に沿って上流から下流になるにしたがって小さくなるように該支持体片を積層して得られたモノリス型燃料改質触媒であることが好まし。孔サイズの異なる比較的薄い金属製フォームに均一に触媒成分をコートしておき、それを孔サイズにしたがって重ねることで、いわゆる傾斜機能を有する触媒が構成できる。このようにしてできた触媒においては、燃料ガス上流側のガスの流れ抵抗の比較的少ない部位で部分酸化反応が起こり、下流側の微細なマクロ反応場が多い部位で水蒸気改質反応を促進できるため、全体としてバランスよくオートサーマル反応が進むことになる。
【0032】
本発明の燃料改質触媒におけるガスの流れと改質反応について図面を参照しながら説明する。
【0033】
図1は、本発明に用いる金属製フォーム型モノリス触媒のマクロ孔構造を示す模式図である。金属フォーム骨格は3次元不規則網目構造をなしており、触媒がコートされることにより、構造はさらに複雑になる。一部は、閉じたマクロ場となり、一部は、貫通して燃料ガスが容易にすり抜けることになる。本発明になる触媒においては、貫通した通路の脇に片側が閉じたマクロ場が数多くつながり,それが、高効率反応に寄与しているものと考えられる。
【0034】
上記マクロ反応場がいわゆる無数のマクロ反応器として有効に作用し、孔から孔への物質移動を促進することで反応効率が高まり、燃料ガスから水素への燃料転化率を高めることができ、その上、COなどの副生物の生成量を低減できる(選択率の向上)。
【0035】
金属フォーム支持体にコートする触媒の具体例としては、比表面積が200m/g、あるいは300m/g程度の高比表面積を有するアルミナ(Al)に、シリカ(SiO)、マグネシア(MgO)、ジルコニア(ZrO)、セリア(CeO)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)から必要に応じて数成分を選んで添加し、さらに主触媒成分であるRhを担持して得られる。さらには、部分酸化反応を促進するために微量の白金(Pt)成分を添加することも有効である。
【0036】
改質触媒の主活性成分、助触媒成分の原料としては、例えば、硝酸ロジウム、硝酸ニッケル、硝酸セリウム、硝酸鉄、硝酸ジルコニウム、硝酸カルシウム、硝酸アルミニウム等の硝酸塩、塩化ロジウム等の塩化物、ジニトロジアンミン白金、塩化白金酸、ビスアセチルアセトナト塩等各種の原料、また、炭酸カルシウム、炭酸セリウム、酢酸ニッケルなど炭酸塩、酢酸塩も用いることができる。
【0037】
上記成分の添加方法としては、ベースとなるアルミナに各成分の水溶液を接触させて吸着させる方法、含浸担持する方法、混練法等各種の方法が有効である。あるいは、各成分の硝酸塩、酢酸塩などの液を用い、炭酸塩やアンモニアを添加してpH調整により共沈させる方法、尿素を用いる均一沈殿法なども用いることができる。
【0038】
改質触媒の主成分となる貴金属成分(Rh、Pt)の担持量は、0.1〜6g/リットル程度が一般的である。
【0039】
これに対して、遷移金属成分のNi、Feは10〜20質量%、Ceは5〜10質量%、Zrは、2〜5質量%、また、Ca、Mgは2〜5質量%程度が概ね適切である。
【0040】
本発明において用いる金属製フォーム支持体は、例えば、ウレタンフォームを心材とし、そのフォーム表面に金属をメッキした後、焼成によって心材のウレタンフォームを除去することにより得られる。市販品としては、住友電工株式会社製のセルメットなどが知られている。また、三菱マテリアルでは、金属粉末を発泡剤、界面活性剤、水溶性樹脂結合剤とともに混合することにより発泡性スラリーを得、それを焼結することにより、金属製フォームを形成する、いわゆる、スラリー発泡法によって、微細な気孔を有する金属製フォーム(発泡金属)を得ている。なお、金属製フォーム支持体の形状としては、モノリス触媒として使用できれば特に制限はされないが、板状物を例示できる。かかる板状物を一枚、必要により二枚以上を組み合わせて用いる。複数の薄い板状物を用いることにより、主活性成分、助触媒成分を均一に担持できるとともに、板状物ごとに異なる組成とし、耐久性を向上させることもできる。
【0041】
燃料ガス供給量など使用条件に応じて、適宜、好ましい特性を有する金属フォームを選定することができる。
【0042】
本発明になる改質触媒は、例えば、図2に示すように、脱硫黄剤−燃料改質触媒−高温型CO変成(CO水性ガスシフト)触媒−低温型CO変成(CO水性ガスシフト)触媒−CO選択酸化触媒−燃料電池スタック−排水素燃焼触媒といったシステムの中で用いられる。本触媒を用いる場合、CO変成触媒は1段でも所定の性能を確保できることもあり、より高い性能要求に応じて2段化する場合でも、容量を減ずることが可能になる。 また、脱硫黄剤は、使用する燃料の性状に応じて各種のものが用いられ、例えば、Cu−Zn系の脱硫黄剤やゼオライトに各種遷移金属酸化物を担持した脱硫黄剤が有効である。脱硫黄剤を用いる場所としては、使用条件によって、CO選択酸化触媒とスタックの間に設置する場合もある。また、燃料改質触媒で生じた水素、あるいはスタックで使われなかった水素の一部を脱硫黄剤に導入することで、脱硫黄の効率を高めることもできる。
【0043】
CO選択酸化触媒では、触媒温度の制御が極めて重要であり、熱交換器と併用したり、断熱システムにしたり、あるいは、熱交換器にコートした触媒と断熱条件運転の触媒を直列あるいは並列に連結させることも有効である。
【0044】
排水素燃焼触媒では、スタックで使われなかった水素の他に、スタック前段の触媒システムで生成したCHも燃焼させ、その燃焼熱を有効に回収して、必要に応じてシステム部位あるいは触媒に熱を供給することができる。この場合、各触媒の入口で、水分、酸素量を制御することで、高効率のシステムを実現できる。
【0045】
なお、本発明の燃料改質触媒によって改質される燃料ガスは、特に限定されるものではなく、炭化水素系燃料を含むガスが典型例として挙げられる。炭化水素系燃料は、ガソリン、灯油、天然ガス(LNG)、ナフサ、軽油等が挙げられる。これらは組み合わせて用いてもよい。また、燃料ガスには、空気や水蒸気などの炭化水素系燃料以外の成分を必要に応じて含んでいてもよい。
【0046】
本発明のモノリス触媒は、水蒸気と酸素が共存する条件、いわゆるオートサーマル反応条件で使用する。その条件としては、触媒の貫通孔に流通させる燃料含有ガスにおける酸素/燃料炭素(O/C)比を0.1〜0.5、かつ、水蒸気/燃料炭素(HO/C)比を0.8〜1.8とすることにより、部分酸化反応と水蒸気改質反応を効率よく併発させることができる。
【0047】
【実施例】
以下、本発明の燃料改質触媒を実施例及び比較例を用いて更に詳細に説明する。しかしながら、以下の方法は一実施形態に過ぎず、例示する方法に限定されるものではない。例えば、使用する改質触媒成分の添加、担持方法や、添加量、乾燥方法、焼成方法などは、製造する燃料改質触媒のサイズや種類などに応じて従来方法に準じて適宜決定すればよい。
【0048】
(実施例1)
硝酸アルミニウム9水和物Al(NO・9HO、硝酸ニッケル6水和物Ni(NO・6HO及び硝酸セリウム6水和物Ce(NO・6HOの混合水溶液に尿素(NHCOを6倍当量添加し、撹拌しながら、98℃で尿素を加水分解させることにより、沈殿を溶液中で均一に生成させ、余分な溶液を吸引濾過により取り除いて混合均一ゲルを得た。
【0049】
得られた均一ゲルを吸引濾過により1週間乾燥し、次いで、100℃で3日間、150℃で1日乾燥してNi−Ce−Alの均一ゲルを得た。このゲルを500℃で4時間焼成して、10質量%Ni−8質量%Ce−Alを得た。
【0050】
この焼成体を硝酸ロジウムの希釈水溶液に含浸した後、ロータリーエバポレーターにより、撹拌しながら、水分を蒸発させ、さらに、500℃で1時間乾燥することにより、Rh担持量を0.67質量%、0.8質量%、1質量%、1.1質量%、1.3質量%、2質量%と変えた触媒;Rh−10質量%−8質量%Ce−Al触媒を6種類調製した。
【0051】
このRh−Ni−Ce−Al触媒粉末に水を加え、さらに硝酸酸性アルミナゾルを1質量%添加し、ボールポットミルを用いて粉砕し、触媒スラリーを得た。
【0052】
触媒支持体として、見かけ厚さ10mmで1インチ当たりの平均孔数▲1▼20ppi(ポア/インチ)、及び▲2▼30ppi(以上、気孔率90%)、見かけ厚さ5mmで平均孔数▲3▼40ppi、及び▲4▼50ppi(以上、気孔率93%)、見かけ厚さ2mmで平均孔数▲5▼80ppi、及び▲6▼120ppi(気孔率96%)の6種類のニッケル製メタルフォームを用意した。
【0053】
上記触媒スラリーを適当に水で希釈し、各メタルフォームへのコーティングを行った。その後、120℃での乾燥、400℃での焼成工程を経て、モノリス触媒を得た。
【0054】
各触媒のメタルフォーム支持体へのコーティング量は、▲1▼20ppi,▲2▼30ppi,▲3▼40ppi,▲4▼50ppi,▲5▼80ppi,▲6▼120ppiのメタルフォーム、それぞれについて、▲1▼120g/L、▲2▼100g/L、▲3▼80g/L、▲4▼70g/L、▲5▼60g/L、▲6▼40g/Lであり、Rhの担持量は、全ての触媒について、ほぼ0.8g/Lであった。
【0055】
上記のモノリス型燃料改質触媒の性能を、触媒評価用の固定床流通型反応装置を用いて以下の方法により評価した。ガソリンのモデル炭化水素燃料は、イソオクタン(C18)とし、イソオクタン=3体積%、空気=55.5体積%、水蒸気=41.5体積%の組成の燃料ガスを用いて(酸素/カーボン比=約0.46、水蒸気/カーボン比=約1.73)、触媒層入口のガス温度450℃の条件で改質反応を行った。触媒出口ガスは、ガスクロマトグラフで分析し、下記式(1):
燃料転化率(%)=
(入口ガス濃度−出口ガス濃度)/入口ガス濃度×100  ・・・(1)
からイソオクタンの転化率を計算した。燃料ガス供給量は、標準状態換算値で50リットル/分とした。また、ガス空間速度は150,000h−1となるようにメタルフォーム触媒の板を重ねて用いた。水素濃度の測定は、ドライ・Nフリー条件化で測定した。
【0056】
上記メタルフォーム触媒の燃料転化率、CO濃度を触媒の仕様と併せて表1に示す。
【0057】
(実施例2)
実施例1において、硝酸アルミニウム9水和物Al(NO・9HO、硝酸ニッケル6水和物Ni(NO・6HO及び硝酸セリウム6水和物Ce(NO・6HOの混合水溶液に、さらに硝酸ジルコニウム5水和物Zr(NO・5HO、硝酸鉄9水和物Fe(NO・9HOを加えて、同様に、尿素(NHCOを用いた均一沈殿法により混合均一ゲルを得た。
【0058】
以下、同様にして、硝酸ロジウムの希釈水溶液を用いて、1質量%Rh−10質量%Ni−8質量%Ce−4質量%Zr−4質量%Fe−Al触媒を調製し、同様に触媒スラリーを得た。触媒支持体としては、見かけ厚さ10mmで1インチ当たりの平均孔数30ppi(気孔率90%)のニッケル製メタルフォームを用意し、該触媒スラリーをコーティング、その後、120℃での乾燥、400℃での焼成工程を経て、実施例2になるモノリス触媒を得た。該触媒のメタルフォーム支持体へのコーティング量は、100g/Lであり、従って、Rhの担持量は、1.0g/Lであった。
【0059】
実施例1と同様にして該モノリス触媒の燃料改質性能を評価した。燃料転化率、CO濃度を表1に示す。
【0060】
(実施例3)
実施例2において、硝酸アルミニウム9水和物Al(NO・9HO、硝酸ニッケル6水和物Ni(NO・6HO、硝酸セリウム6水和物Ce(NO・6HO、硝酸ジルコニウム5水和物Zr(NO・5HO、硝酸鉄9水和物Fe(NO・9HOの混合水溶液に、さらに硝酸カルシウム4水和物Ca(NO・4HO、及び硝酸マグネシウム6水和物Mg(NO・6HOを加えて、同様に、尿素(NHCOを用いた均一沈殿法により混合均一ゲルを得た。
【0061】
以下、同様にして、硝酸ロジウムの希釈水溶液を用いて、1質量%Rh−10質量%Ni−8質量%Ce−4質量%Zr−4質量%Fe−4質量%Ca−2質量%Mg−Al触媒を調製し、同様に触媒スラリーを得た。
【0062】
触媒支持体としては、見かけ厚さ10mmで平均孔数30ppi(気孔率90%)のニッケル製メタルフォームを用意し、該触媒スラリーをコーティング、その後、120℃での乾燥、400℃での焼成工程を経て、実施例2になるモノリス触媒を得た。該触媒のメタルフォーム支持体へのコーティング量は、100g/Lであり、従って、Rhの担持量は、1.0g/Lであった。
【0063】
実施例1と同様に該モノリス触媒の燃料改質性能を評価した。燃料転化率、CO濃度を表1に示した。
【0064】
(実施例4)
実施例1において得られた0.67質量%Rh−10質量%Ni−8質量%Ce−Al触媒のスラリーを、見かけ厚さ10mmで平均孔数30ppi(気孔率90%)のニッケル製メタルフォームにコーティングし、同様にして、実施例4になるモノリス触媒を得た。該触媒のメタルフォーム支持体へのコーティング量は、180g/Lであり、従って、Rhの担持量は、約1.2g/Lであった。
【0065】
実施例1と同様に該モノリス触媒の燃料改質性能を評価した。燃料転化率、CO濃度を表1に示す。
【0066】
(実施例5)
実施例1において得られた2質量%Rh−10質量%Ni−8質量%Ce−Al触媒のスラリーを、見かけ厚さ10mmで平均孔数30ppi(気孔率90%)のニッケル製メタルフォームにコーティングし、同様にして、実施例5になるモノリス触媒を得た。該触媒のメタルフォーム支持体へのコーティング量は、30g/Lであり、従って、Rhの担持量は、約0.6g/Lであった。
【0067】
実施例1と同様に該モノリス触媒の燃料改質性能を評価した。燃料転化率、CO濃度を表1に示す。
【0068】
(実施例6)
実施例1において得られた30ppi、40ppi、50ppiのフォーム触媒を重ねて一体のモノリス触媒とし、実施例1と同様に該モノリス触媒の燃料改質性能を評価した。燃料転化率、CO濃度を表1に示す。
【0069】
(比較例1)
実施例1と同様にして、0.5質量%Rh−10質量%Ni−8質量%Ce−Al触媒粉末のスラリーを得た。これを、同様に見かけ厚さ10mmで平均孔数13ppi(気孔率90%)のニッケル製メタルフォームにコーティングして比較例1になるモノリス触媒を得た。該触媒のメタルフォーム支持体へのコーティング量は、170g/Lであり、従って、Rhの担持量は、約0.85g/Lであった。
【0070】
実施例1と同様に該モノリス触媒の燃料改質性能を評価した。燃料転化率、CO濃度を表1に示す。
【0071】
(比較例2)
実施例1で得られた2.0質量%Rh−10質量%Ni−8質量%Ce−Al触媒粉末のスラリーを、見かけ厚さ2mmで平均孔数160ppi(気孔率96%)のニッケル製メタルフォームにコーティングして比較例2になるモノリス触媒を得た。該触媒のメタルフォーム支持体へのコーティング量は、40g/Lであり、従って、Rhの担持量は、約0.8g/Lであった。
【0072】
実施例1と同様に該モノリス触媒の燃料改質性能を評価した。燃料転化率、CO濃度を表1に示した。
【0073】
(比較例3)
実施例1で得られた0.67質量%Rh−10質量%Ni−8質量%Ce−Al触媒粉末のスラリーを、見かけ厚さ10mmで平均孔数20ppi(気孔率80%)のセラミック製フォームにコーティングして比較例3になるモノリス触媒を得た。該触媒のメタルフォーム支持体へのコーティング量は、120g/Lであり、従って、Rhの担持量は、約0.8g/Lであった。
【0074】
実施例1と同様に該モノリス触媒の燃料改質性能を評価した。燃料転化率、CO濃度を表1に示す。
【0075】
【表1】
Figure 2004057869
【0076】
表1に示す通り、実施例の各触媒は、比較例1、2、3のモノリス触媒に比べて、燃料転化率に優れ、また、反応後のガス中のCO濃度は、実施例と比較例とで同等の結果が得られたが、選択率の観点から優れているといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るモノリス型触媒構造体のマクロ孔構造の一例を示す図である。
【図2】本発明に係るモノリス型触媒を車載する際の触媒システムの一例を示す図である。

Claims (7)

  1. ニッケル(Ni)を含有し、気孔率が90%〜97%、燃料ガスが貫通可能な孔を有し、1インチ長さ当りの平均孔数が20〜120個/インチである金属製フォーム状支持体の骨材表面上に、ロジウム(Rh)を含む多孔性触媒層を形成させてなることを特徴とする炭化水素系燃料から水素リッチガスを製造するモノリス型燃料改質触媒。
  2. 前記金属製フォーム状支持体の骨材表面に形成させる触媒層が、ロジウム(Rh)に加え、セリウム(Ce)、ジルコニウム(Zr)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)から選ばれた1種以上の成分を含有することを特徴とする請求項1記載のモノリス型燃料改質触媒。
  3. 前記金属製フォーム状支持体の骨材表面に形成させる触媒層の量が、単位容積当たり30〜180g/Lであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のモノリス型燃料改質触媒。
  4. 前記の金属製フォーム状支持体が、複数の支持体片を燃料ガスの流れ方向に対して垂直の方向に積層して形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のモノリス型燃料改質触媒。
  5. 前記の複数の金属製フォーム状支持体片に予め改質触媒成分を担持した後、燃料ガスの流れ方向に対して垂直の方向に積層して得られたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のモノリス型燃料改質触媒。
  6. 前記の金属製フォーム状支持体の貫通孔直径が、燃料ガス流れ方向に沿って上流から下流になるにしたがって小さくなるように該支持体片を積層したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のモノリス型燃料改質触媒。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のモノリス型燃料改質触媒の貫通孔に、炭化水素系燃料を含有するガスを流通させることを特徴とする水素リッチガスの製造方法。
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