JP2004051846A - ペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】塩化ビニル単量体又は塩化ビニル単量体と塩化ビニル単量体との共重合可能なビニル単量体との混合物(以下塩化ビニル系単量体)を界面活性剤、開始剤の存在下、水性媒体中で重合反応する方法において、塩化ビニル系単量体の重合缶への仕込を重合反応前は全仕込量の30〜80%、重合反応温度到達後は残りの20〜70%と分割し、且つ重合反応温度到達後に仕込む塩化ビニル系単量体の温度を5〜30℃に冷却して仕込みペースト加工用塩化ビニル系樹脂を製造する。
【選択図】 選択図なし。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ペースト加工用塩化ビニル樹脂の製法に関するものであり、更に詳しくは、塩化ビニル系単量体を界面活性剤、開始剤の存在下、水性媒体中に分散し重合を行う方法において、重合反応制御性に優れたペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
塩化ビニル系単量体を界面活性剤、開始剤の存在下、水性媒体中に分散して、乳化重合、播種乳化重合、微細懸濁重合、播種微細懸濁重合等により粒子径0.05〜10μm程度の塩化ビニル系重合体ラテックスが生産されている。さらに、該ラテックスを噴霧乾燥機等により乾燥することによりペースト加工用塩化ビニル重合体が生産されている。これら乳化重合、播種乳化重合、微細懸濁重合、播種微細懸濁重合等の重合反応においては、発熱量が重合反応の進行に伴って変化し、通常、反応が進行するに従って発熱量が増大し、反応の末期には発熱量が最大となる。一方、重合缶の除熱能力を大きくするためには攪拌速度を早くする方法があるが、塩化ビニル系重合体ラテックスは非常に不安定であるため、攪拌シエア等が大きくなると重合中に重合体粒子が凝集し、スケール量の増加、ラテックス安定性の低下等、生産性や品質の悪化等の問題が発生する。
【0003】
このため、重合反応制御を安定に行うためには、通常反応の末期の最大発熱量が重合缶の除熱能力以下となるように重合反応前に一括して仕込む塩化ビニル系単量体の仕込量を予め低めに設定して重合反応が行われているが、この場合でも重合反応の末期の急激な発熱量の増大に冷却が追従できずに反応温度が上昇する問題や、重合末期の反応制御を安定化させるために除熱能力に余裕を持たせた場合には、塩化ビニル系単量体がさらに低い仕込量となるために重合缶を十分に活用できないという問題があった。
【0004】
これら乳化重合、播種乳化重合、微細懸濁重合、播種微細懸濁重合等においては、塩化ビニル系単量体は予め設定された量を重合反応前に一括して仕込まれるのが一般的であるが、塩化ビニル系単量体の仕込法について種々の提案もなされている。
【0005】
例えば、特開平3−220210号公報には、重合反応前に塩化ビニル系単量体の全仕込量の5〜25%を仕込み、重合反応温度到達後に残りの75〜95%を重合缶の下部から供給することで塩化ビニル系単量体の重合缶内の分散性を改善しスケールが少なく、コンデンサーによる除熱を高率的に行う方法が提案され、また、特開平7−258303号公報には、重合転化率80〜95%の時期に重合反応前に仕込んだ塩化ビニル系単量体量の0.5〜8%を仕込むことでコンデンサーの円滑な使用方法が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平3−220210号公報で提案された方法では、塩化ビニル系単量体の重合缶内の分散性という点では効果がみられるものの、単に塩化ビニル系単量体を分割仕込みする際の分散性のみに着目しているため、重合反応温度到達後に供給する塩化ビニル系単量体量が増加すると水性分散液の安定性が悪化する等重合反応制御の点で十分でなく、また特開平7−258303号公報で提案された方法では、コンデンサーへの塩化ビニル系単量体の気化を円滑に行うのみに着目しているため、やはり重合反応制御の点で未だ十分ではない等の問題を有していた。
【0007】
そこで本発明では、塩化ビニル系単量体の仕込み量、及び仕込み温度を適正化することによって、重合反応末期等の温度上昇を抑制し、重合反応温度到達後に塩化ビニル系単量体を仕込んだ場合でも水性分散液の安定性が改善されるペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、塩化ビニル系単量体の仕込みを重合反応前と重合反応開始後に分割して仕込み、且つ塩化ビニル単量体の仕込み比率と仕込み温度とを特定条件下で重合反応を行うことにより、重合反応の末期の急激な発熱量の増大を抑制し、且つ安定して重合反応制御ができることを見出し本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、塩化ビニル系単量体を界面活性剤、開始剤の存在下、水性媒体中で重合反応する方法において、塩化ビニル系単量体の重合缶への仕込を重合反応前は全仕込量の30〜80%、重合反応温度到達後は残りの20〜70%と分割し、且つ重合反応温度到達後に仕込む塩化ビニル系単量体の温度を5〜30℃に冷却して仕込むことを特徴とするペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法に関するものである。
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明におけるペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、界面活性剤の存在下、塩化ビニル系単量体を水性媒体中で重合して得られるペースト加工用塩化ビニル系重合体であり、その重合方法としては、塩化ビニル系単量体を乳化重合法、播種乳化重合法、微細懸濁重合法、播種微細懸濁重合等で重合される。
【0012】
ここでいう塩化ビニル系単量体とは、塩化ビニル単量体又は塩化ビニル単量体と塩化ビニル単量体との共重合可能なビニル単量体との混合物であり、塩化ビニル単量体と共重合し得るビニル単量体としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸又はその無水物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル類;マレイン酸エステル、フマル酸エステル、桂皮酸エステル等の不飽和カルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルアミルエーテル、ビニルフェニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のモノオレフィン類;塩化ビニリデン、スチレン及びその誘導体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができ、これらビニル単量体は1種以上で用いることが可能である。
【0013】
界面活性剤としては、例えばジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等が挙げられ、これらは単独又は2種類以上の組合わせで用いることが可能である。
【0014】
重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の水溶性開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド等の芳香族ジアシルパーオキサイド;カプロイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の脂肪族ジアシルパーオキサイド;アゾビスイソブチロニトロリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ化合物;t−ブチルパーオキシピバレート等の有機酸のパーオキシジエステル;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジオクチルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド等の油溶性開始剤が挙げられる。そして、これらは単独又は2種類以上の組合わせで用いることが可能である。
【0015】
本発明における水性媒体とは、通常ペースト塩ビの製造に用いられるものであれば特に限定するものではなく、例えば、脱イオン水、蒸留水、フィルター濾過水等が挙げられる。
【0016】
本発明では、塩化ビニル系単量体を界面活性剤、開始剤の存在下、水性媒体中で重合反応する方法において、塩化ビニル系単量体の重合缶への仕込を重合反応前は全仕込量の30〜80%、重合反応温度到達後は残りの20〜70%と分割し、且つ重合反応温度到達後に仕込む塩化ビニル系単量体の温度を5〜30℃に冷却して重合反応を行う。ここでいう重合反応とは、重合反応温度まで上昇させた後から重合反応終了後までの期間を指す。
【0017】
本発明においては、塩化ビニル系単量体の重合缶への仕込を重合反応前は全仕込量の30〜80%、重合反応温度到達後は残りの20〜70%と分割して重合反応を行う。重合缶内の水性分散液の安定性や重合末期の除熱等を考慮すると、好ましくは塩化ビニル系単量体の重合缶への仕込を重合反応前は全仕込量の50〜80%、重合反応温度到達後は残りの20〜50%と分割し、更に好ましくは塩化ビニル系単量体の重合缶への仕込を重合反応前は全仕込量の60〜80%、重合反応温度到達後は残りの20〜40%と分割し重合反応を行う。ここで重合反応到達後に仕込む塩化ビニル系単量体の温度として5〜30℃に冷却する。重合缶内の水性分散液の安定性等を考慮すると、好ましくは5〜25℃、更に好ましくは5〜20℃に冷却する。ここで重合反応前に仕込む塩化ビニル系単量体量が全仕込み量の30%未満である場合、重合反応温度到達後に仕込む塩化ビニル系単量体量が全仕込み量の70%を越える場合、及び重合反応温度到達後に仕込む塩化ビニル系単量体の温度が30℃を越える場合は、重合缶内の水性分散液の安定性が低下し、重合後の水性分散液のラテックス安定性が悪化したり、重合中の水性分散液中で局部的に発熱が大きくなり特に重合反応末期の除熱が難しくなる等の問題がある。
【0018】
また、重合反応前に仕込む塩化ビニル系単量体量が全仕込み量の80%を越える場合、重合反応温度到達後に仕込む塩化ビニル系単量体量が全仕込み量の20%未満である場合は、塩化ビニル系単量体を重合反応前に一括して仕込む方法に比べ改善方向とはなるが、その効果が少なくなる。一方、重合反応温度到達後に仕込む塩化ビニル系単量体の温度が5℃未満の場合は、本発明の効果は得られるものの、塩化ビニル系単量体の冷却設備費用が大きくなる。
【0019】
塩化ビニル系単量体を仕込む際の、仕込み比率と仕込み温度によって重合反応制御が安定化する機構の詳細は不明であるが、塩化ビニル系単量体を重合反応前・重合反応温度到達後に分割して仕込んだ場合には、塩化ビニル系単量体を重合反応前に一括して仕込む場合と比べ、重合反応の単位時間あたりの発熱ピーク量が分散できるため、重合缶の除熱能力が有効に使用できるようになり重合反応温度の制御性は改善すると考えられる。一方で、重合反応温度到達後に仕込む塩化ビニル単量体の量が多くなると、重合缶に供給された塩化ビニル系単量体の液滴が重合反応場に供給される過程で、水相側での重合反応も発生するため水性媒体中での重合反応が不均一な傾向となる。本発明の方法では、重合反応温度到達後に仕込む塩化ビニル系単量体の温度を5〜30℃と冷却して仕込むため、重合反応後に仕込まれた塩化ビニル系単量体の液滴が重合缶内の水性分散液中を分散する過程では重合開始温度に到達せずに水相側での重合反応が抑制され、塩化ビニル系単量体を冷却せずに仕込む場合の様な重合缶内の水性分散液の安定性低下が抑えられるためと考えられる。
【0020】
重合反応温度到達後の塩化ビニル系単量体の仕込み開始時期としては、特に限定はないが、重合反応の発熱ピークを分散化させる目的からは、重合反応前に仕込んだ塩化ビニル系単量体の重合転化率が20%以上進んだ時点から重合反応温度到達後の塩化ビニル系単量体の仕込を開始する。20%〜90%までの間に仕込みを開始することが好ましく、微細懸濁重合に用いる場合には、水相側での重合反応の影響を受けやすいため、重合反応前に仕込んだ塩化ビニル系単量体の重合転化率が40%以上進んだ時期から仕込むことがより好ましい。
【0021】
また、重合反応後の塩化ビニル系単量体の仕込み方法も特に限定はないが、重合反応温度が重合反応開始から終了まで同一、若しくは重合反応中に重合温度を上昇させる場合は、重合反応温度を安定化させる意味からは、重合反応温度到達後に仕込む塩化ビニル系単量体の仕込み速度は、冷却して仕込まれた塩化ビニル系単量体が重合反応温度まで上昇するのに必要な熱量が、重合反応熱量以下となるような速度で連続的に仕込む事が好ましい。重合反応中に重合温度を低下させる場合は、重合反応温度低下に必要な熱量見合いの塩化ビニル系単量体を一括して仕込み、その後冷却して仕込まれた塩化ビニル系単量体が重合反応温度まで上昇するのに必要な熱量が、重合反応熱量以下となるような速度で連続的に仕込む事が好ましい。
【0022】
重合反応後の塩化ビニル系単量体を重合缶に仕込む位置も特に限定はないが、重合缶内に均一に分散させる意味で、重合缶の液相下部から仕込む事が好ましく、重合缶上部から仕込む場合は、攪拌機による下降流発生部から仕込む事が好ましい。ここで攪拌機の下降流発生部は、相似型の攪拌機模型によるトレーサー実験により目視或いは画像解析により確認できる。
【0023】
塩化ビニル系単量体の冷却方法としては、本発明の温度に冷却できる方法であれば特に限定はないが、例えば、塩化ビニル系単量体の重合缶への仕込ライン中に、プレート型、U字管型、固定管板型、二重管型、コイル型、ジャケット型等の通常用いられている熱交換機を設置し、冷媒として低温のブライン、冷却水等で所定温度まで連続的に冷却しながら仕込む方法や、塩化ビニル系単量体の貯蔵タンクにコイル型、ジャケット型等の熱交換設備を設置し、予め所定の温度まで冷却して使用することができる。これら塩化ビニル系単量体の仕込は、ポンプによる仕込や窒素加圧等の通常採用される仕込装置を使用すればよい。
【0024】
塩化ビニル系単量体の重合反応を行う重合缶としては、通常用いられているジャケット付重合缶以外に、還流凝縮器付重合缶、外部循環熱交換器付重合缶等、重合反応の発熱量制御により必要に応じて使用が可能である。重合缶の形状としては、H/D(H;重合缶直胴部長さ、D;重合缶内径)が1.0〜3.0の範囲とすることが塩化ビニル系単量体の分散性の点で好ましく、特に1.0〜2.5であることが好ましい。重合缶の攪拌方式やバッフル等も特に制限はなく、例えばアンカー翼、ループ翼、マックスブレンド翼、フルゾーン翼、パイプバッフル等を使用することができる。重合缶攪拌機の条件としては、塩化ビニル系単量体の分散性を改善する意味では攪拌強度が大きいことが好ましいが、反面重合安定性は悪化するため、両者のバランスから攪拌機の先端速度の範囲は0.5〜2.4m/secが好ましく、特に0.6〜2.0m/secが好ましい。また単位液容積あたりの攪拌動力値の範囲としては5〜90W/m3が好ましく、特に10〜80W/m3が好ましい。
【0025】
本発明の方法は、重合反応末期等の温度上昇を抑制し、重合反応温度到達後に供給した塩化ビニル系単量体の水相側での重合反応を安定化させることにより重合後の水性分散液のラテックス安定性にも優れる等の効果が得られる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらによってなんら限定されるものではない。
【0027】
以下、実施例における評価方法を詳細に説明する
<ラテックス安定性の測定>
500ccカップに25℃に調整したラテックスを250g、クロロホルム1.25gを入れ、ホモジナイザー(ヤマト科学製、商品名ULTRA−DISPERSER MODEL LK−41)を用いて、攪拌開始から重合体粒子が凝集し流動性が低下するまでの時間を測定した。
<ゾル粘度の測定>
得られた塩化ビニル系重合体ラテックスを噴霧乾燥機により乾燥機入口温度140℃、乾燥機出口温度55℃で乾燥後、粉砕機により粉砕しペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル60重量部を配合しデイゾルバー式ミキサー(TOKUSYU KIKA KOGYO(製)、商品名T.K.HOMO DISPER MODEL7C)を用い25℃、800rpmの条件で3分間混練しペーストゾルを調整した。得られたペーストゾルを25℃恒温槽内に2時間保存した後の粘度をB8H型粘度計No.5ローターを用いて20rpm粘度を測定した。
【0028】
調整例1(シード粒子の調整)
1000Lオートクレーブ中に脱イオン水360Kg、塩化ビニル単量体300Kg、重合開始剤として3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド3Kg、15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液5.0Kgを仕込んだ後、3時間ホモジナイザーを用いて均質化処理後、系内の温度を40℃にあげて重合を進めた。そして、重合圧力が低下した後、未反応の塩化ビニル単量体を回収してシード粒子(1)の水性分散液を得た。
【0029】
実施例1
H/D(H=1.2m,D=1.0m)が1.2である1000Lオートクレーブ中に脱イオン水350Kg、塩化ビニル単量体240Kg、20重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液2Kg、シード粒子の水性分散液44Kgを仕込んだ後、温度を48℃に昇温し重合を開始した。そして、重合開始から重合終了までの間、20重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液20Kgを連続的に添加した。重合缶の攪拌条件は、攪拌機先端速度1.2m/sec、攪拌機動力値54W/m3で重合を行った。重合開始前に仕込んだ塩化ビニル単量体の重合添加率が40%となった時点から、20℃に冷却した160kgの塩化ビニル単量体を連続的に添加した。重合圧力が48℃における塩化ビニル単量体の飽和蒸気圧から0.3MPa降下した時点で重合を停止し、未反応の塩化ビニル単量体を回収しペースト塩化ビニル樹脂の水性分散液を得た。重合反応末期の上昇温度、及び得られた塩化ビニル系重合体ラテックスのラテックス安定性、ゾル粘度の評価結果を表1に示した。
【0030】
【表1】
実施例2
重合前に添加する塩化ビニル単量体の量を160kg、重合反応温度到達後に添加する塩化ビニル単量体を240kgとした以外は、実施例1と同様の方法で行った。重合反応末期の上昇温度、及び得られた塩化ビニル系重合体ラテックスのラテックス安定性、ゾル粘度の評価結果を表1に示した。
【0031】
実施例3
重合反応温度到達後に添加する塩化ビニル単量体を14℃まで冷却した以外は、実施例1と同様の方法で行った。重合反応末期の上昇温度、及び得られた塩化ビニル系重合体ラテックスのラテックス安定性、ゾル粘度の評価結果を表1に示した。
【0032】
実施例4
重合前に添加する塩化ビニル単量体の量を240kg、重合反応温度到達後に添加する塩化ビニル単量体を180kgとした以外は、実施例3と同様の方法で行った。重合反応末期の上昇温度、及び得られた塩化ビニル系重合体ラテックスのラテックス安定性、ゾル粘度の評価結果を表1に示した。
【0033】
実施例5
重合反応温度到達後に添加する塩化ビニル単量体の仕込開始時期を重合反応前に仕込んだ塩化ビニル系単量体の転化率が5%の段階から仕込んだ以外は、実施例1と同様の方法で行った。重合反応末期の上昇温度、及び得られた塩化ビニル系重合体ラテックスのラテックス安定性、ゾル粘度の評価結果を表1に示した。
【0034】
実施例6
重合反応中の攪拌条件を攪拌機先端速度1.6m/sec、攪拌機動力値130W/m3とした以外は、実施例1と同様の方法で行った。重合反応末期の上昇温度、及び得られた塩化ビニル系重合体ラテックスのラテックス安定性、ゾル粘度の評価結果を表1に示した。
【0035】
比較例1
重合前に塩化ビニル単量体の量400kgを一括添加した以外は、実施例1と同様の方法で行った。重合反応末期の上昇温度、及び得られた塩化ビニル系重合体ラテックスのラテックス安定性、ゾル粘度の評価結果を表1に示した。
【0036】
重合反応末期の温度が上昇し、ゾル粘度も高くなった。
【0037】
比較例2
重合前に添加する塩化ビニル単量体の量を50kg、重合反応温度到達後に添加する塩化ビニル単量体を350kgとした以外は、実施例1と同様の方法で行った。重合反応末期の上昇温度、及び得られた塩化ビニル系重合体ラテックスのラテックス安定性の評価結果を表1に示した。
【0038】
重合反応末期の温度が上昇し、得られたペースト加工用塩化ビニル系重合体ラテックスはラテックス安定性が悪いものであった。
【0039】
比較例3
重合反応温度到達後に添加する塩化ビニル単量体を32℃のまま冷却しなかった以外は、実施例1と同様の方法で行った。重合反応末期の上昇温度、及び得られた塩化ビニル系重合体ラテックスのラテックス安定性の評価結果を表1に示した。
【0040】
重合反応末期の温度が上昇し、得られたペースト加工用塩化ビニル系重合体ラテックスはラテックス安定性が悪いものであった。
【0041】
【発明の効果】
本発明の方法は、重合反応の末期の急激な発熱量の増大が抑制され重合反応制御が安定に行えると伴に、塩化ビニル系単量体の仕込み量の増加が可能となる等の効果に優れたものである。
Claims (3)
- 塩化ビニル単量体又は塩化ビニル単量体と塩化ビニル単量体との共重合可能なビニル単量体との混合物(以下、塩化ビニル系単量体)を界面活性剤、開始剤の存在下、水性媒体中で重合反応する方法において、塩化ビニル系単量体の重合缶への仕込を重合反応前は全仕込量の30〜80%、重合反応温度到達後は残りの20〜70%と分割し、且つ重合反応温度到達後に仕込む塩化ビニル系単量体の温度を5〜30℃に冷却して仕込むことを特徴とするペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法。
- 重合反応前に仕込んだ塩化ビニル系単量体の重合転化率が20%以上進んだ時点から重合反応温度到達後の塩化ビニル系単量体の仕込を開始することを特徴とする請求項1に記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法。
- 塩化ビニル系単量体の重合反応を行う重合缶としてH/D(H;重合缶直胴部長さ、D;重合缶内径)1.0〜3.0、重合缶攪拌機の攪拌条件として攪拌機先端速度0.5〜2.4m/sec、単位容積あたりの攪拌動力値5〜90W/m3とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法。
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