JP2004045267A - 測定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】光源からの放射強度やビームサイズそしてビーム強度分布等が変化しても光学素子の光学特性を高精度に測定することができる測定装置を得ること。
【解決手段】入射される光束を複数の光束に回折し、このうち0次回折光を試料に導光し、n次回折光(nは0以外の整数)を参照光検出用の光検出器に導光する回折格子を含むビーム強度モニタを用いて該試料の特性を測定すること。
【選択図】     図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、測定装置に関し、例えばX線・軟X線、EUV光(極端紫外光)を対象とした光学素子の反射率や透過率等の光学特性を測定する際に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
近年のX線・軟X線、EUV等の極短波長の光を対象とした半導体素子の製造装置が種々と提案されている。それに伴いこれらの製造装置に用いる光学素子の光学特性を測定する測定装置も種々と提案されている。
【0003】
例えば軟X線を試料に照射して試料の特性(物理特性、化学特性)を評価する測定装置としては、たとえば、ミラーの反射率やフィルタの透過率を測定する測定装置がある。この測定装置では試料に単色すなわち単一の波長の光を照射し、試料で反射した光の強度や試料を透過した光の強度を計測している。そのほかには、光電子分光装置や、蛍光X線分析装置など、光と試料との相互作用を検出する測定装置が種々な分野で用いられている。
【0004】
図12は、極短波長の光を対象とした反射率の測定装置の概略図である。この測定装置は、光源1、分光器MC、集光光学系4、入射光強度モニタMO、試料室TRなどで構成される。光源1としてはシンクロトロン放射光やレーザープラズマ光源等が用いられる。これらの光源1からは単一の波長ではなく連続したスペクトルの光が放射される。
【0005】
分光器MCは前置鏡2、入口スリットS1、回折格子3、出口スリットS2等から構成され単色化作用を有しており、光源1から放射された連続スペクトルの光の中から単一の波長の光を選別する。測定条件に応じてその波長を任意に設定したり、測定中に波長を予め定めた幅の中で走査したりできるようになっている。
【0006】
集光光学系4は凹面ミラーなどで構成され単色化された光を、試料Saの上の微小な領域に集中して照射させる作用をもつ。
【0007】
シンクロトロン放射光やレーザープラズマ光源から放射される光の強度は時間的に変動する。すなわちシンクロトロン光源では蓄積された電子の量が時間とともに減衰するため、放射される光の強度が時間とともに減衰する。レーザープラズマ光源では、ターゲットの温度や密度、表面状態などが変化した場合に放射される光の強度が変化する。またレーザープラズマを励起するレーザーの強度が僅かに変動しただけでも放射される光の強度は大幅に変化する。
【0008】
また、分光器MCは回折格子3や反射ミラー2、スリットS1、S2等の光学素子で構成されており、これらの光学素子の位置や姿勢が変化した場合、出射される光の出射位置や強度は変動する。光学素子の位置や姿勢の変動の原因としては、装置を設置した床の振動や、環境温度の変化などがある。
【0009】
これらの要因のため試料Saに照射される光の強度は、一定ではなく変動する。光と試料との相互作用を正確に計測するためには、試料に照射される光の強度をモニタすることが必須である。ここではこのための装置を「ビーム強度モニタ」又は「入射光強度モニタ」と呼ぶ。ビーム強度モニタMOはビームを複数に分割する機能と分割した一つのビームを参照ビームとしてそのビームの強度を検出する手段とを持っている。
【0010】
X線やEUV光の波長領域では、ビーム強度モニタとしてビームを複数に分割する機能を持つ素子として可視光領域で用いられるようなハーフミラーやプリズム等のビームスプリッタを用いることが難しい。このため、従来のビーム強度モニタでは穴明きのセンサやメッシュ状の検出器が用いられていた。この検出器は穴のあいた形状のマイクロチャンネルプレートやフォトダイオードなどの検出器であって、穴の大きさより大きいサイズの光ビームを穴の位置に照射する。照射されたビームは、穴を通り抜けたビームと穴の周りに吸収されるビームとに分割される。穴を通り抜けたビームは試料に照射され、穴の周辺に吸収された光は検出器で強度が計測される。ここではこの検出器を仮に第1の検出器7と呼ぶ。
【0011】
試料室TRは試料Saを入射ビームに対して任意の位置と角度に設定するステージや、試料を透過したり試料表面で反射したりした光の強度を測定する第2の検出器8などが設けられている。また、光の吸収を避けるため、試料室内を真空に排気できる機能を有している。
【0012】
試料Saの反射率の測定は以下の手順で実施される。
【0013】
試料Saを入れない状態で第2の検出器8を用いて光強度を計測する。この値をS120とする。同時に第1の検出器7を用いて光強度を検出する。この値をS110とする。
【0014】
次に試料Saを入れた状態で試料Saで反射された光の強度を第2の検出器8を用いて検出するこの値をS121とする。同時に第1の検出器7を用いて光強度を検出する。この値をS111とする。このとき試料Saの反射率Rは
【0015】
【数1】
Figure 2004045267
【0016】
として算出される。第2の項のS110/S111は光源の光強度の変動を補正する項であって、光強度の変動がない場合には
R=S121/S120
として算出される。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
従来の測定装置のビーム強度モニタでは、照射されたビームのうち穴を通り抜けた光を試料に照射し、穴の周辺に遮られた光を検出器で光強度を計測している。
【0018】
ところが、光源の位置や発光部の大きさの変動や、放射角度の変動、分光器内の回折格子、ミラー、スリットなどの光学素子の位置や角度の変動、などにより、分光器から出射されるビームの位置や、大きさや、強度分布が変化することがある。
【0019】
この為図12に示す従来の測定装置のビーム強度モニタにおいては、第1の検出器7の穴に対してビームの位置や大きさが変動したり、ビーム内の光強度分布が変化したりした場合には、測定値が変化する。
【0020】
たとえば、均一な直径1mmのビームを直径0.8mmの穴径の第1の検出器7で検出した場合、入射ビームの36%が第1の検出器7で検出され、残りの64%が試料Saに照射される。ここでビーム強度は変わらずにビーム径が0.9mmに変化した場合、入射ビームの約21%が第1の検出器7で検出され、残りの約79%が試料Saに照射されるようになる。試料Saに照射される光の強度は1.23倍に増大するにもかかわらず、第1の検出器7で検出されるビーム強度は0.58倍に減少する。すなわちビームサイズが変化した場合には計測に誤差が生じることになる。
【0021】
また、ビームの強度分布が均一ではない場合、第1の検出器7の穴とビームとの位置関係が変化したり、強度分布が変化したりすれば、計測に誤差が生じることになる。
【0022】
本発明は光源からの放射強度やビームサイズそしてビーム強度分布等が変化しても光学素子の光学特性を高精度に測定することができる測定装置の提供を目的とする
【0023】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の測定装置は、入射される光束を複数の光束に回折し、このうち0次回折光を試料に導光し、n次回折光(nは0以外の整数)を参照光検出用の光検出器に導光する回折格子を含むビーム強度モニタを用いて該試料の特性を測定することを特徴としている。
【0024】
請求項2の発明は請求項1の発明において前記回折格子からのn次回折光を前記参照光検出用の光検出器に集光する集光ミラーを有していることを特徴としている。
【0025】
請求項3の発明は請求項2の発明において前記集光ミラーは、凹面トロイダルミラー又はシリンドリカルミラー、球面ミラー、回転楕円面ミラーであることを特徴としている。
【0026】
請求項4の発明は請求項2又は3の発明において前記集光ミラーへの入射光の中心軸と反射光の中心軸とで定まる平面内において該集光ミラーは前記回折格子の中心と前記参照光検出用の光検出器の中心とは、略共役となるようにしていることを特徴としている。
【0027】
請求項5の発明は請求項1から4のいずれか1項の発明において前記回折格子はラミナー型又はブレーズ型の平面回折格子であることを特徴としている。
【0028】
請求項6の発明の測定装置は光源と、該光源からの光束を分光し所定の波長の光束を出射する分光器と、該分光器からの光束を複数の光束に回折する回折格子と、該回折格子からの回折光のうちn次回折光(nは0以外の整数)を参照光検出用の光検出器に導光する集光ミラーと、該回折格子からの0次回折光であって試料を介した光を検出する信号光検出用の光検出器と、を有し、該参照光検出用の光検出器と該信号光検出用の光検出器からの出力信号を用いて、該試料の特性を測定することを特徴としている。
【0029】
請求項7の発明は請求項6の発明において前記分光器の光出射口と前記回折格子の中心とを略共役関係とする曲面反射鏡を有していることを特徴としている。
【0030】
請求項8の発明は請求項6又は7の発明において前記集光ミラーへの入射光の中心軸と反射光の中心軸とで定まる平面内において前記回折格子の中心と前記参照光検出用の光検出器の中心は、略共役であることを特徴としている。
【0031】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1の要部概略図である。図1は試料として多層膜ミラーSaの反射率を測定する測定装置を示している。
【0032】
図1においてMCは分光器、MOはビーム強度モニタ(入射光強度モニタ)、TRは試料室である。1は光源であり、X線および紫外領域を発光するレーザープラズマ光源より成っている。
【0033】
2は前置鏡であり、光源1からの光を反射集光し、入口スリットS1の開口部S1aに導光している。
【0034】
3は回折格子であり、入口スリットS1の開口部S1aからの光のうちから所定の波長の光を出口スリットS2の開口部S2aに導光している。
【0035】
4は後置鏡(曲面反射鏡)であり、出口スリットS2の開口部S2aからの光を回折格子5に導光している。
【0036】
回折格子5は後置鏡4からの光を回折する。このうち0次光を信号光として反射率測定のための試料ステージに載置した試料Saに導光し、0次光以外の次数の回折光を参照光として集光ミラー6に導光している。
【0037】
試料Saからの反射光を第2の検出器8で受光し、集光ミラー6からの光をモニター用(参照光検出用)の第1の光検出器7で受光している。部材5、6、7は入射光強度モニタMOの一要素を構成している。
【0038】
図1の実施形態1の測定装置を説明する前にビーム強度モニタMOにおいて、入射光を回折格子5を用いて参照光と信号光の強度の比が常に一定となるように分割し、光検出器に導光する光学的作用について説明する。
【0039】
図7は反射型の平面回折格子の模式図である。回折格子5の溝間隔をd、光L1の波長をλ、入射角をα、回折角をβ、とすると、
以下の関係が成り立つ。
【0040】
d×(sinβ−sinα)=m×λ
ここでmは回折の次数で整数値をとる。
【0041】
m=0の場合は0次回折光を示し、このときα=βとなる。すなわち入射角と回折角が等しく、回折格子5の面に対して鏡面反射したのと同じである。この状況は式から明らかなように波長には依らない。これは0次の回折と呼ばれる。
【0042】
本実施形態ではm=0の次数の回折光を試料に照射する。回折格子5の0次以外の次数の回折光を試料に照射した場合には、回折光の波長によって試料上の照射位置が変化してしまい、試料の特性が面内で一様でない場合にはその差による誤差が生じる。また、反射率の測定の場合には、入射角が変化してしまう。さらに、試料が小さい場合には試料に照射されなくなってしまう、というような問題点が生じる可能性がある。このため、試料に照射される光は、波長によって角度が変化しない0次光を用いている。
【0043】
本実施形態のビーム強度モニタMOでは、回折格子5からの0次以外の次数の回折光を光検出器で検出し、ビーム強度を計測する。
たとえば次数が1すなわちm=1の場合は回折条件の式は
d×(sinβ−sinα)=λ
となり、この式から
sinβ=sinα+λ/d
となる。この式から明らかなように、1次の回折光の回折角βは波長λによって異なることになる。この関係を図8に示す。この計算では、回折格子の溝間隔dを1μm、入射角αを80度と仮定している。また、図9にブレーズ型の回折格子の回折効率の計算結果を示す。ここでも回折格子の溝間隔dを1μm、入射角αを80度と仮定している。波長は10nmと15nmの2条件で計算している。0次光は波長が異なっても同じ角度に回折されているのに対し、1次光は波長により異なる角度に回折されることが分かる。
【0044】
1次の回折光の回折角βは波長λによって異なることから、仮に回折格子から離れた位置に設けられた第1の検出器7に1次回折光をそのまま入射する場合には、第1の検出器7に入射する位置が波長により異なることになる。測定に用いる波長を変えた場合に検出器上の入射位置が異なれば、検出すべきビームが検出器の受光面に収まらず、正確に検出できないという問題が起こる。またこれを避けようとすれば、非常に大きな受光面の検出器が必要となり、装置の大型化やコストの増大の問題が生じる。
【0045】
そこで本実施形態のビーム強度モニタMOでは、この一次回折光を凹面ミラー5で反射させて、測定する光の波長を変化させても、第1の検出器7の受光面内のほぼ同じ位置に入射するようにしている。
【0046】
即ち回折格子5の入射位置を第一の焦点(物点)、第一の検出器7の受光面中央を第二の焦点(像点)に持つような凹面ミラー6からなる集光素子を用いることにより測定する光の波長を変化させても、第1の検出器7の受光面内のほぼ同じ位置に光が入射するようにしている。
【0047】
第一の検出器7で検出するビームは回折格子5からの1次の回折光に限定されるものではなく、0次以外の次数であれば、任意の次数の回折光でも構わない。この場合も、0次以外の次数の回折光の回折角は波長によって異なるので、回折光を凹面ミラー6で反射させて、測定する光の波長を変化させても、第1の検出器7の受光面内のほぼ同じ位置に入射するようにすればよい。
【0048】
反射型の回折格子としては、ブレーズ型、ラミナー型など既知の方式の回折格子を用いることができる。また、第一の検出器7で検出される光強度と試料に照射される光強度が所定の比になるように、その形状を選定することができる。
【0049】
図10にブレーズ型回折格子の異なるブレーズ角に対する回折効率の計算結果の例を示す。回折格子の溝間隔dを1μm、入射角αを80度、波長は10nmで計算している。
【0050】
本実施形態では回折格子5によって入射光の光強度が変化しても、0次光とn次回折光の光強度比が常に一定となる光学性質を利用して、光を分割している。
【0051】
ビーム強度モニタMOでは測定条件に応じて、測定精度が最も高くなるような強度比に分配することが望ましい。たとえば反射率50%程度の試料の反射率を計測する場合、試料に照射される光の強度を、第一の検出器7に照射される光の強度の2倍程度とすれば、測定精度が最も高くなる。
【0052】
回折格子5はブレーズ型に限定されるものではなく、どのような形式のものでも構わない。図11にラミナー型の回折格子の回折効率の計算結果の例を示す。回折格子の溝間隔dを1μm、入射角αを80度、波長は10nm、溝深さ90nm、デューティー比0.5で計算している。ラミナー型回折格子においても同様に、溝深さとデューティー比(溝でない部分の幅と溝ピッチとの比)を最適に選ぶことで各次数の回折効率が変化するので、測定精度が最も高くなるように設定すればよい。
【0053】
次に図1の各部材の作用について説明する。
【0054】
一般に多層膜ミラーSaの反射率は測定光の波長、多層膜ミラーSaへの光の入射角に依存する。そこで本実施形態ではプラズマ光源1からは連続波長を持つ発散光が発光するので、光学系を介して、同一の入射角でかつ単色の光を試料Saに導いている。前置鏡2は光源1からのEUV光を取り込み、光源1の像をスリットS1の開口部に結像する。ここにスリットS1を設置し、その開口部の大きさを調節して、取り込む光源サイズを制限する。回折格子3は入射される光を波長により異なる角度に回折するので下流にスリットS2を設けることで分光を行なっている。すなわち光源1から放射された連続スペクトルの光の中から分光器MCにより単一の波長の光をスリットS2に導光し、測定光を選別する。測定条件に応じて回折格子3を回動してその波長を任意に設定したり、測定中に波長を予め定めた幅の中で走査したりできるようにしている。前置鏡2、スリットS1、回折格子3、スリットS2の各部材は公知の定偏角モノクロメーター(分光器)MCの一要素を構成している。
【0055】
後置鏡4は集光作用を持ち、スリットS2の像を試料Sa上へ結像する。よって、被測定試料Saには集光したかつ単色の光が照射される。試料Saと反射光の強度を検出する光検出器8はθ−2θのステージに設置され、これより、試料Saの反射率が測定される。前置鏡2、回折格子3、後置鏡4はX線領域での全反射を利用するため、通常、斜入射で用いられている。
【0056】
試料Saの反射率の波長依存性を測定するときは、スリットS1、S2の位置を固定したまま分光器の回折格子3を回転し、波長走査を行ない、スリットS2の開口部S2aから射出する光の波長を変えている。
【0057】
レーザープラズマ光源1では、ターゲットの温度や密度、表面状態などが変化した場合に放射される光の強度が変化する。またレーザープラズマを励起するレーザーの強度が僅かに変動しただけでも放射される光の強度は大幅に変化する。そこで本実施形態では、光源1から放射される光の強度変動による計測誤差を補正するために、後置鏡4と試料Saとの間の光路中に入射光強度モニタMOが設けられている。図2は図1の回折格子5以降の拡大説明図である。
【0058】
図2に示す入射光強度モニタMOは反射型の平面回折格子5と、凹円筒面ミラー6と、第1の検出器7を有している。平面回折格子5は溝間隔0.5μmのラミナー型あるいはブレーズ型の回折格子である。
【0059】
凹面トロイダルミラー4で反射した光は回折格子5に入射し、0次回折光は試料Saに照射される。1次回折光は円筒面ミラー6で反射され、第1の検出器7に入射する。第1の検出器7はフォトダイオードである。
【0060】
回折格子5(中心点5a)から凹面ミラー6(中心点6a)までの距離をL1、凹面ミラー6(中心点6a)から第1の検出器7(開口部7a)までの距離をL2とすれば、異なる波長を持ち回折格子5で異なる角度に回折された光が第1の検出器7の同じ位置に入射する条件は
1÷L1+1÷L2=1÷f
である。たとえば、L1=L2=200mmの場合、凹面ミラー6の焦点距離f=100mmとなる。
【0061】
凹面ミラー6の入射光の光軸と反射光の光軸の2つの直線で定まる平面(XY平面)で考えた時の凹面ミラー6の曲率半径をR1、入射角をθとすると、凹面ミラー6の焦点距離fは
f=R1÷2×cos(θ)
で表される。したがって、上記条件
f=100mm、θ=80°
の場合、R=2×f/cosθより
R1=1152mm
となる。すなわち凹面ミラー6への入射光の光軸(中心軸)と反射光の光軸(中心軸)の2つの直線で定まる平面(XY平面)で考えた時凹面ミラー6として曲率半径1152mmの凹面鏡を用いればよい。
【0062】
後置鏡4で出口スリットS2と回折格子5を共役関係となるようにし、更に集光ミラー6によって回折格子5の中心部と第1の光検出器7の中心部とが略共役関係となるようにして、出口スリットS2から単色光が種々の角度で出射しても光検出器7の同一位置に参照光が入射するようにしている。
【0063】
上記平面と垂直方向の曲率については、凹面ミラー6で反射したビームが第1の検出器7の受光面に収まるという条件を満たすように決定すればよい。この方向には回折格子5において波長による回折角度の差はないので、大きな集光作用を持たせる必要はない。
【0064】
凹面ミラー6への入射光の光軸と反射光の光軸の2つの直線で定まる平面(XY平面)に垂直で光の入射点における凹面ミラーの法線を含んだ面(垂直面)で考えた時の曲率半径をR2、入射角をθとすると、垂直面内の焦点距離fは
f=R2÷2÷cos(θ)
で表される。斜入射の場合、焦点距離fは非常に大きくなり、この方向には大きな集光作用を持たないことになる。そこでR1=R2とした球面鏡やR2=∞としたシリンドリカル面鏡などを用いることができる。凹面ミラー6として厳密に第一の検出器7の受光面で集光するようにトロイダル面鏡、あるいは回転楕円面ミラーを用いてもよい。このときそれぞれの方向の曲率半径R1、R2は通常の光線追跡(レイトレース)法などにより最適化すればよい。この他回転非対称な曲面より成る凹面鏡を用いてもよい。
【0065】
ここまでの説明では、入射光強度モニタMOに入射するビームの角度発散を考慮していない。実際の反射率を測定する光学系では、後置鏡4によってビームは集光作用をうけ、試料Sa上の小さな領域に光が集中するようになっている。図3はこのときの状況の概略図である。入射光強度モニタMOに入射するビームが収束ビームである場合には、上記のように、異なる波長を持ち回折格子5で異なる角度に回折された光が検出器7の同じ位置に入射する条件を満たすように配置された光学系では、第1の検出器7に入射する手前で光線が交差し、検出器7の上の集光サイズは大きくなる。このような場合には、凹面集光ミラー6の焦点距離fを
1÷L1+1÷L2=1÷f
で求められる焦点距離よりも長い焦点距離とすることで、検出器7の上での集光サイズを小さくできる。但し、その場合には、波長走査に伴う集光位置の変化が大きくなる。そこで、集光サイズと波長走査に伴う集光位置の変化をあわせて、検出器7の受光面上の最大照射領域を考え、これを最小となるように凹面集光ミラーの焦点距離を設定すればよい。具体的には、通常の光線追跡(レイトレース)法などにより最適化すればよい。
【0066】
また、入射光強度モニタMOの回折格子5の1次回折光が第1の検出器7に入射するとしたが、これはこの次数に限定されるものではなく、0次以外の任意の次数の光で構わない。図4は回折格子5の−1次回折光を第1の検出器7に入射する概略図である。回折格子5の1次回折光が第1の検出器7に入射する例では凹面集光ミラー6の後ろ側を試料Saに向かうビームが通過するために凹面集光ミラー6の厚さを薄くする必要があったが、回折格子5の−1次回折光が第1の検出器7に入射する例では凹面集光ミラー6の後ろ側をビームが通過しないために凹面集光ミラー6の厚さに対する制限がなくなる。このためミラーの製造や保持の方法に対する自由度が高くなる。
【0067】
但し、何れの場合においても、試料Saに照射される光は、波長変更による照射位置の変化を避けるために、入射光強度モニタMOの回折格子5の0次回折光である必要がある。
【0068】
試料室TRは試料Saを入射ビームに対して任意の位置と角度に設定するステージや、試料Saを透過したり試料Saの表面で反射したりした光の強度を測定する第2の検出器8などが設けられている。また、光の吸収を避けるため、試料室TR内を真空に排気できる機能を有している。
【0069】
第2の検出器8としては、フォトダイオード、電荷結合型撮像素子(CCD)、マイクロチャンネルプレート(MCP)、電子増倍管、比例計数管など、通常用いられる検出器7を用いることができる。
【0070】
尚、本実施形態において、集光ミラー6を用いなくてもよい。このときは分光器MCから出射したビームの位置や角度が変化すると検出器7の検出面内でも光の入射位置が変化する。このときは、これに伴う計測誤差ができるだけ小さくなるように、検出器7としては、できるだけ面内の感度が一様な検出器7が望ましい。またCCDやMCPなど、位置分解能を有する検出器を用いた場合には、ビームの入射位置の関数として検出器の感度を予め測定しておいて、実際の測定時には測定された光強度の値とその入射位置から、先に求めた関数を用いて感度補正を行うことができ、さらに計測精度を向上することができる。
【0071】
試料Saの反射率の測定は以下の手順で実施される。まず試料Saを入れない状態で、第2の検出器8を用いて光強度を計測する。この値をS120とする。同時に入射光強度モニタMOの第1の検出器7を用いて光強度を検出する。この値をS110とする。
【0072】
次に試料Saを入れた状態で試料Saで反射された光の強度を第2の検出器8を用いて検出する。この値をS121とする。同時に入射光強度モニタMOの第1の検出器7を用いて光強度を検出する。この値をS111とする。
試料Saの反射率Rは
【0073】
【数2】
Figure 2004045267
【0074】
として算出される。第2の項の(S110/S111)は光源1の光強度の変動を補正する項である。
【0075】
この測定を分光器MCの回折格子3の角度を変更することで試料Saに照射される光の波長を変えながら繰り返して行う。この一連の測定によって、試料Saの反射率の波長依存性R(λ)を精度よく測定することができる。
【0076】
また、別の手順として以下の方法でもよい。まず、試料Saを入れない状態で波長走査を行い第2の検出器8を用いて光強度を計測する。この値をS120(λ)とする。同時に入射光強度モニタMOの第1の検出器6を用いて光強度を検出する。この値をS110(λ)とする。次に試料Saを入れた状態で波長走査を行い試料Saで反射された光の強度を第2の検出器8を用いて検出する。この値をS121(λ)とする。同時に入射光強度モニタMOの第1の検出器6を用いて光強度を検出する。この値をS111(λ)とする。
【0077】
試料Saの反射率の波長依存性R(λ)は
【0078】
【数3】
Figure 2004045267
【0079】
として算出される。第2の項の(S110(λ)/S111(λ))は光強度変動を補正する項である。
【0080】
本実施形態においては、入射光強度モニタMOに対して入射光の位置、入射光角度、入射光形状、入射光サイズ、等が変動した場合でも、回折格子5によって常に一定の割合に入射光が分割され、一方が試料Saに照射され、他方が凹面集光ミラー6によって反射されたのちに波長に依らず検出器7の受光面内のほぼ同一の位置に照射される。したがって、試料Saに照射される入射光の強度の変動を入射光強度モニタMOにより正確に計測することができる。この光学装置によれば、光源1から放射される光の強度変動や、分光器MCの光学素子2、3の変動等が生じた場合においても、その変動を正確に補正することが可能になり、試料Saの反射率や透過率等の特性を精度よく測定することが可能になる。
【0081】
また、試料Saには入射光強度モニタMOの回折格子5で回折した0次回折光が照射されるため、波長によって照射位置や角度が変化するようなことがなく、試料Saを同一条件で測定することができる。このため測定精度が高いという利点や、小さな試料Saの計測が可能であるという利点がある。
【0082】
(実施形態2)
図5は本発明の実施形態2の要部概略図である。図5は光電子分光を利用して試料Saの特性を測定する装置を示している。
【0083】
光電子分光は真空中に置かれた試料Saに高エネルギーの単色光を照射し、外部光電効果によって放出される光電子のエネルギースペクトルを測定する手法である。図5は光電子分光器MCの測定系の要部を示している。装置の主な構成要素は、プラズマ光源1、分光器MC、回転ステージ、光電子エネルギー分析器TRである。
【0084】
光源1からの光は、実施形態1の反射率の測定装置と同様な構成で、分光器MCにより単色化され、入射光強度モニタMOを介して試料Saに照射され、試料Saから出てきた光電子を光検出器8で検出し、演算手段9で解析することで試料Sa固有の情報を得ている。
【0085】
図6は実施形態2の光学装置の入射光強度モニタMOの概略図である。
【0086】
入射光強度モニタMOは透過型の平面回折格子5aと、凹円筒面ミラー6と、第1の検出器7を有している。透過型の平面回折格子5aは溝間隔0.2μmの自立した金属の格子で形成されている。
【0087】
後置鏡4で反射した光は透過型の平面回折格子5aに入射し、真っ直ぐに通り抜けた0次回折光は試料Saに照射される。1次回折光(m=1)は円筒面ミラー6で反射され、第1の検出器7に入射する。第1の検出器7はフォトダイオードである。
【0088】
実施形態2においては、入射光強度モニタMOに対して入射光の位置、入射光角度、入射光形状、入射光サイズ、等が変動した場合でも、透過型の平面回折格子5aによって常に一定の割合に入射光が分割され、一方が試料Saに照射され、他方が凹面ミラー6によって反射されたのちに波長に依らず第1の検出器7の受光面内のほぼ同一の位置に照射される。したがって、試料Saに照射されるビーム(光)の強度の変動を入射光強度モニタMOにより正確に計測することができる。この光学装置によれば、光源1から放射される光の強度変動や、分光器MCの光学素子の変動(位置の変動や、光学特性の変動)等が生じた場合においても、その変動を正確に補正することが可能になり、試料Saの光電子スペクトル等の特性を精度よく測定することができる。
【0089】
また、試料Saには入射光強度モニタMOの回折格子5aで回折した0次回折光が照射されるため、波長によって照射位置や角度が変化するようなことがなく、試料Saを同一条件で測定することができる。このため測定精度が高いという利点や、小さな試料Saの計測が可能であるという利点がある。
【0090】
尚、本発明に係るビーム強度モニタはX線(軟X線)を試料に入射させ、該試料を反射又は透過する光(電磁波)を検出して、試料を測定する装置であればどのような装置にも適用できる。例えば反射率の測定装置や、光電子分光器に限るものでなく、分光測定が必要な反射型XAFS、蛍光XAFS、X線小角散乱、軟X線分光計、X線回折、XPS、AES、RHEED、REED等に適用できる。
【0091】
【発明の効果】
本発明によれば光源からの放射強度やビームサイズそしてビーム強度分布等が変化しても光学素子の光学特性を高精度に測定することができる測定装置を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1の要部概略図
【図2】図1の一部分の拡大説明図
【図3】図1の一部分の拡大説明図
【図4】図1の一部分の他の実施形態の説明図
【図5】本発明の実施形態2の要部概略図
【図6】図5の一部分の拡大説明図
【図7】回折格子と光線との関係説明図
【図8】波長と回折角との関係説明図
【図9】ブレーズ型回折格子の回折効率の説明図
【図10】ブレーズ型回折格子の回折効率の説明図
【図11】ラミナー型回折格子の回折効率の説明図
【図12】従来例の反射率測定装置の概略図
【符号の説明】
1 光源
2 前置鏡
3、5 回折格子
4 後置鏡
6 集光ミラー
7 第1の光検出器
8 第2の光検出器
S1 入口スリット
S2 出口スリット
MC 分光器
MO ビーム強度モニタ
TR 試料室
Sa 試料

Claims (8)

  1. 入射される光束を複数の光束に回折し、このうち0次回折光を試料に導光し、n次回折光(nは0以外の整数)を参照光検出用の光検出器に導光する回折格子を含むビーム強度モニタを用いて該試料の特性を測定することを特徴とする測定装置。
  2. 前記回折格子からのn次回折光を前記参照光検出用の光検出器に集光する集光ミラーを有していることを特徴とする請求項1の測定装置。
  3. 前記集光ミラーは、凹面トロイダルミラー又はシリンドリカルミラー、球面ミラー、回転楕円面ミラーであることを特徴とする請求項2の測定装置。
  4. 前記集光ミラーへの入射光の中心軸と反射光の中心軸とで定まる平面内において該集光ミラーは前記回折格子の中心と前記参照光検出用の光検出器の中心とは、略共役となるようにしていることを特徴とする請求項2又は3の測定装置。
  5. 前記回折格子はラミナー型又はブレーズ型の平面回折格子であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項の測定装置。
  6. 光源と、該光源からの光束を分光し所定の波長の光束を出射する分光器と、該分光器からの光束を複数の光束に回折する回折格子と、該回折格子からの回折光のうちn次回折光(nは0以外の整数)を参照光検出用の光検出器に導光する集光ミラーと、
    該回折格子からの0次回折光であって試料を介した光を検出する信号光検出用の光検出器と、
    を有し、
    該参照光検出用の光検出器と該信号光検出用の光検出器からの出力信号を用いて、該試料の特性を測定することを特徴とする測定装置。
  7. 前記分光器の光出射口と前記回折格子の中心とを略共役関係とする曲面反射鏡を有していることを特徴とする請求項6の測定装置。
  8. 前記集光ミラーへの入射光の中心軸と反射光の中心軸とで定まる平面内において前記回折格子の中心と前記参照光検出用の光検出器の中心は、略共役であることを特徴とする請求項6又は7の測定装置。
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