JP2004031436A - バリスタの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】漏れ電流が小さく、低電圧化を図った場合であっても、絶縁抵抗及び電圧非直線性が高く、電気的特性のばらつきが少ないバリスタを製造することを可能とする方法を提供する。
【解決手段】主成分としての酸化亜鉛と、副成分として少なくともプラセオジム及びコバルトを含む半導体磁器からなるバリスタの製造方法に際し、酸化亜鉛に、プラセオジムを除いた副成分のうちの少なくともコバルトを元素もしくは化合物の形態で混合して一次混合物を得、600〜1200℃の温度で熱処理し、しかる後、熱処理された生成物にプラセオジムを元素もしくは化合物の形態で混合し、二次混合物を得、二次混合物を熱処理し、熱処理された生成物を成形して成形体を得、得られた成形体を焼成し、焼結体を得る各工程を備える、バリスタの製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】主成分としての酸化亜鉛と、副成分として少なくともプラセオジム及びコバルトを含む半導体磁器からなるバリスタの製造方法に際し、酸化亜鉛に、プラセオジムを除いた副成分のうちの少なくともコバルトを元素もしくは化合物の形態で混合して一次混合物を得、600〜1200℃の温度で熱処理し、しかる後、熱処理された生成物にプラセオジムを元素もしくは化合物の形態で混合し、二次混合物を得、二次混合物を熱処理し、熱処理された生成物を成形して成形体を得、得られた成形体を焼成し、焼結体を得る各工程を備える、バリスタの製造方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば定格電圧30V以下の低電圧で駆動され得るバリスタの製造方法に関し、より詳細には漏れ電流が少なく、信頼性に優れたバリスタを安定に供給することを可能とするバリスタの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、通信機器等の各種電子機器分野においては、電子回路の集積化と駆動電圧の低電圧化とが急速に進んできている。ノイズ吸収素子として用いられているバリスタにおいても、小型化及び低電圧化が強く求められている。バリスタを構成する材料としては、酸化亜鉛を主成分とする組成物が従来より用いられている。例えば、特公昭53−11076号公報などには、Bi2O3、Sb2O3、CoO及びMnO等が添加されているZnO−Bi系材料が開示されている。また、例えば特公昭56−39884号公報などには、Pr6O11及びCoO等が添加されているZnO−Pr系材料が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
酸化亜鉛を主成分とした材料を用いて構造されたバリスタでは、立ち上がり電圧(以下、バリスタ電圧V1mAと称する)の低電圧化を図るには、電極間に存在する粒界の数を少なくする必要があった。例えばV1mA=10V以下の低電圧化を実現するためには、上記粒界の数は数個とされる必要があった。
【0004】
従って、電圧非直線性を示さない不良な粒界の数が多くなると、不良な粒界同士が容易につながる確率が高くなる。その結果、絶縁抵抗や電圧非直線性が低下するという問題があった。特に、ZnO−Bi系バリスタでは、焼成時に低融点であるBi2O3やSb2O3が液相を生成するため、異常粒成長を引き起しがちであった。そのため、粒界ばらつきに伴った電気的特性のばらつきが大きくなり、特に、低電圧化を図った場合には、電極間に存在する粒界の数が少ないために電気的特性のばらつきがより一層大きくなりがちであった。よって、信頼性に優れたバリスタを安定に供給することは非常に困難であった。
【0005】
他方、ZnO−Pr系バリスタは、低温で液相を生成する成分を含まない。従って、ZnO−Pr系バリスタは、低電圧化を図る上で有利である。しかしながら、ZnO−Pr系バリスタでは粒界に絶縁層が存在しない。従って、ZnO−Pr系バリスタでは、ZnO−Bi系バリスタに比べて漏れ電流が大きくなるという欠点があった。低電圧化を進めるために電極間の距離を小さくした場合には、上記漏れ電流はさらに大きくなり、絶縁抵抗及び電圧非直線性の低下が生じるという問題があった。このような問題が生じると、消費電力の増加及び信号回路の誤動作を引き起こす恐れがあった。
【0006】
本発明は、上述した従来技術の欠点に鑑み、漏れ電流を小さくすることができ、低電圧化を進めた場合であっても、絶縁抵抗及び電圧非直線性の低下が生じ難く、ZnO−Pr系バリスタの製造方法の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るバリスタの製造方法は、主成分としての酸化亜鉛と、副成分として少なくともプラセオジム及びコバルトを含む半導体磁器からなるバリスタの製造方法であって、酸化亜鉛に、プラセオジムを除いた副成分のうちの少なくともコバルトを元素もしくは化合物の形態で混合して、一次混合物を得る工程と、前記一次混合物を600〜1200℃の温度で熱処理し、一次仮焼物を得る第1熱処理工程と、第1熱処理工程で得られた一次仮焼物に、プラセオジムを元素もしくは化合物の形態で混合し、二次混合物を得る工程と、前記二次混合物を熱処理し、二次仮焼物を得る第2熱処理工程と、前記第2熱処理工程で得られた二次仮焼物を用いて成形し、成形体を得る工程と、前記成形体を焼成し、焼結体を得る焼成工程と、前記焼結体に電極を形成する電極形成工程とを含む。
【0008】
酸化亜鉛を主成分とし、副成分として少なくともプラセオジムとコバルトとを添加してなるバリスタの従来の製造方法では、主成分の酸化亜鉛に対し、副成分の元素あるいは化合物が一度に添加されていた。すなわち、図2に示すように、ZnO素材に対し、Pr、Co及びその他の副成分が一度に添加されて、粉砕・混合される。しかる後、混合物が脱水・乾燥されて、仮焼される。仮焼物が粉砕され、得られた粉体を成形することにより成形体が得られ、この成形体を焼成することによりバリスタ素体が得られている。
【0009】
本願発明者等は、上述した従来の製造方法では、副成分同士が仮焼時に異相を生成して偏析し、副成分の分散性が低下したり、副成分同士による化合物の生成により、粒成長や焼結性に多く影響を及ぼし、それによって特性のばらつきや信頼性の低下が生じていることを見出した。また、本願発明者等は、さらに検討した結果、上記問題は、漏れ電流を増大させたり、電圧非直線性を低下させる原因でもあり、特に、粒界数が非常に少ない低電圧用バリスタでは、漏れ電流の増大及び電圧非直線性の低下が顕著となり、甚だしき場合にはバリスタ特性が消滅する恐れがあることを見出した。
【0010】
そこで、本願発明の製造方法では、副成分として添加されるプラセオジム及びコバルトが酸化亜鉛に一度に添加されず、別々に添加される。
従来法では、プラセオジム及びコバルトなどの副成分が酸化亜鉛に同時に加えられ、混合・熱処理されるため、熱処理時に、プラセオジムとコバルトとの間で化合物が生成され、該化合物が偏析する。従って、プラセオジム及びコバルトの分散性が低下しがちであった。
【0011】
これに対して、図1に示すように、本発明の製造方法では、まず、酸化亜鉛に容易に固溶するコバルトが酸化亜鉛に添加され、第1の熱処理工程が行われ、それによってコバルトが酸化亜鉛にほぼ完全に固溶する。次に、上記第1熱処理工程で得られた一次仮焼物に、プラセオジムが混合されて、二次混合物が得られる。二次混合物が第2熱処理工程において熱処理されるが、コバルトが酸化亜鉛に固溶しているので、プラセオジムとコバルトとの化合物の生成が効果的に抑制される。そのため、プラセオジム及びコバルトを高分散することができる。その結果、不良な粒界の数を著しく低減することができる。よって、電極間の粒界数が数個である低電圧バリスタの製造に本発明を用いた場合であっても、漏れ電流を小さくでき、バリスタの安定性及び信頼性を効果的に高めることができる。
【0012】
以下、本発明の詳細を説明する。
本発明に係るバリスタの製造方法は、主成分としての酸化亜鉛と、副成分として少なくともプラセオジム及びコバルトを含む半導体磁器からなるバリスタを提供するものである。ここで、副成分は、少なくともプラセオジム及びコバルとを含む限り特に限定されず、プラセオジム及びコバルト以外の副成分としては、例えば、K、Al、Ca、La、Crなどを挙げることができる。
【0013】
本発明では、まず、酸化亜鉛に、プラセオジムを除いた副成分のうちの少なくともコバルトを元素もしくは酸素の形態で混合することにより、一次混合物が得られる。すなわち、一次混合物を得る工程では、酸化亜鉛にコバルトのみを元素もしくは化合物の形態で混合物してもよく、あるいは酸化亜鉛に、コバルトと、プラセオジムを除いた残りの副成分のうち少なくとも1種とを元素もしくは化合物の形態で混合してもよい。一次混合物を得る際の混合工程については、ボールミルを用いた湿式混合方法など、任意の方法を用いることができる。
【0014】
次に、第1熱処理工程において、一次混合物が600〜1200℃の温度で熱処理される。熱処理に際しては、一次混合物を加熱炉内で加熱する方法など適宜の加熱方法を用いることができ、熱処理方法は特に限定されない。また、熱処理に際しての雰囲気は、大気中とされるが、酸素、窒素、もしくはこれらの混合雰囲気などの他の雰囲気中で行われてもよい。
【0015】
熱処理に際しての温度が600℃未満の場合には、酸化亜鉛のコバルトへの固溶が不十分となる。従って、コバルトが粒界に偏析し、最終的に異相の生成を引き起し、コバルトの分散性が低下する。その結果、得られたバリスタの絶縁抵抗が低くなったり、バリスタ電圧のばらつきが大きくなる。熱処理温度が1200℃より高くなると、粒成長や焼成が進みすぎる。従って、粉砕混合が困難となり、成形に先立って粉砕混合により均一な粉体を得ることができなくなり、かつバリスタ電圧のばらつきが大きくなる。
【0016】
上記第1熱処理工程における熱処理時間は、30分〜6時間程度とすればよい。このようにして、第1熱処理工程において、一次混合物が仮焼される。
次に、第1熱処理工程で得られた一次仮焼物に、プラセオジムが元素もしくは化合物の形態で混合され、二次混合物が得られる。二次混合物を得るための混合方法についても、ボールミルを用いた湿式混合方法など適宜の方法を用いることができる。
【0017】
しかる後、上記のようにして得られた二次混合物が第2熱処理工程において熱処理され、二次仮焼物が得られる。第2熱処理工程の温度は、特に限定されないが、好ましくは、400〜1000℃の範囲で行うことが望ましい。400℃より低い場合には、第1熱処理工程後に添加された元素が、充分に熱処理されず、成形体を得るための成形時に偏析が生じ易くなり、プラセオジム及び必要に応じてプラセオジムと同時に添加される他の副成分の分散性が低下し易くなる。そのため、絶縁抵抗が低下したり、バリスタ電圧がばらついたりする可能性がある。1000℃よりも高い場合には、二次混合物が焼結及びネッキングして、焼結し、粒径分布が大きくなる恐れがあり、かつ酸化亜鉛に固溶しないPrの分散性が低下する可能性があるからである。
【0018】
上記成形体を得る工程とは、次に焼成されて焼結体を得るための成形体を得る工程である。従って、得られる成形体は、目的とするバリスタの構造に応じて適宜定められる。例えば、単板型のバリスタを得る場合には、成形工程においては、第2熱処理工程で得られた二次仮焼物が金型等を用いて板状物に成形される。このようにして、単板型のバリスタに適した板状の成形体が用意される。
【0019】
また、本発明に係るバリスタの製造方法では、バリスタ層を介して複数の内部電極が重なり合うように配置されている積層型バリスタを製造してもよい。積層型バリスタを得る場合には、上記成形体を得る工程において、第2熱処理工程で得られた二次仮焼物層を介して複数の内部電極が厚み方向に重なり合うように配置された積層体が成形体として得られる。
【0020】
なお、成形体を得る工程における成形方法としては、上記のように成形体の構造に応じた適宜の方法を用いればよい。
本発明では、上記のようにして得られた成形体が焼成され、焼結体が得られる。この焼結体を得るための焼成条件については、使用する半導体磁器組成に応じて、適宜設定すればよい。
【0021】
本発明では、上記のようにして得られた焼結体に電極が形成され、それによってバリスタが得られる。電極の形成は、焼結体表面に導電ペーストを塗布・焼付ける方法、蒸着、メッキもしくはスパッタリングなどの薄膜形成方法などの適宜の方法により行ない得る。
【0022】
前述したように、本発明により得られるバリスタは、主成分としての酸化亜鉛と、副成分として少なくともプラセオジム及びコバルトを含む半導体磁器を備えるが、好ましくは、プラセオジムが半導体磁器中の0.05〜3.0atom%、かつコバルトが、半導体磁器中の0.5〜20atom%含有される。プラセオジムの含有割合が0.05atom%よりも少ない場合には、プラセオジム酸化物から結晶粒界に供給される酸素量が少なくなり、絶縁抵抗や電圧非直線性が低下することがある。また、プラセオジムの含有割合が3.0atom%より多くなると、粒成長が阻害され、低電圧化が困難となる恐れがあり、かつバリスタ電圧のばらつきが大きくなることがある。
【0023】
コバルトの含有量が0.5atom%より少ない場合には、絶縁抵抗及び電圧非直線性が著しく低下することがあり、20atom%よりも多くなると、酸化亜鉛にコバルトが完全に固溶し難くなり、コバルトが粒界に偏析し、バリスタ電圧のばらつきが大きくなることがある。
【0024】
なお、前述したように、上記副成分としてプラセオジム及びコバルト以外の他の元素を元素または化合物の形態で一次混合物を得る工程及び/または二次混合物を得る工程において添加してもよい。この場合には、一次混合物を得る混合工程において、プラセオジムを除いた副成分のうち少なくともコバルトが元素もしくは化合物の形態で混合され、二次混合物を得る混合工程において、プラセオジムと、一次混合物を得る工程で添加されなかった残りの副成分とが元素もしくは化合物の形態で混合されることになる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施例を挙げることにより、本発明を明らかにする。
【0026】
[実験例1]
(1)半導体磁器組成
実験例1では、焼成後の組成比率が下記の表1に示す組成番号1〜5の各組成の半導体磁器からなるバリスタを作製した。
【0027】
【表1】
【0028】
(2)バリスタの製造
本発明の効果を明らかにするために、本発明の実施例の製造方法と、従来の製造方法によりそれぞれ組成番号1〜5の組成の半導体磁器からなるバリスタを製造した。実施例及び従来法の製造方法は以下の通りである。
【0029】
(実施例の製造方法)
ZnOに対し、下記の表2に〇印で示されている一次混合時添加元素を各組成番号の組成比率となるように秤量した。なお、表2の試料番号1〜20において、組成番号は、表1に示す組成番号に対応している。また、各元素は、CoO、K2CO3、Al2O3、La2O3、CaCO3及びCr2O3のように、化合物として添加した。上記のようにして、配合された組成物をボールミルで24時間粉砕し、混合し、乾燥した。このようにして、一次混合物を得た。
【0030】
次に、一次混合物を、大気中で800℃の温度で2時間熱処理し、一次仮焼物を得た。この一次仮焼物を粉砕して粉体とした後、下記の表2に示すように、二次混合時添加元素を添加した。すなわち、下記の表2に示す〇で示した二次混合時添加元素を上記と同様に化合物の形態で添加した。なお、一次混合時添加元素及び二次混合時添加元素をZnOに添加する際、表2の試料番号の右に示されている組成番号が実現されるように、一次混合時及び二次混合時の副成分元素の量を定めた。
【0031】
上記のようにして、二次混合時添加元素を添加し、ボールミルで再び粉砕し、混合し、乾燥し、二次混合物を得た。得られた二次混合物を、大気中にて600℃の温度で2時間熱処理した。
【0032】
上記のような第2熱処理工程で得られた二次仮焼物に有機バインダ、有機溶剤、可塑剤及び分散剤を加えボールミルで12時間粉砕混合し、スラリーを得た。このようにして得たスラリーを、ドクターブレード法によりPETフィルム上に約25μmの厚さのグリーンシートとなるように成形した。
このようにして得られたグリーンシートを短冊状に切断し、矩形のセラミックグリーンシートを得た。
【0033】
次に、上記のようにして得られた矩形のセラミックグリーンシートの上面に、Ptペーストをスクリーン印刷した。Ptペーストが印刷された複数枚のセラミックグリーンシートを積層し、上下に無地の上記セラミックグリーンシートを積層した。このようにして得られた積層体を2ton/cm2の圧力で圧着し、マザーの積層体を得た。このマザーの積層体を個々の積層バリスタ単位の寸法に切断した。
【0034】
なお、個々の積層バリス単位の上記積層体において、電極を構成するPtペーストの重なり面積は、2.3mm2、積層体の長さは1.6mm、幅は0.8mmである。
【0035】
次に、上記積層体を大気中で500℃の温度で12時間熱処理し、有機バインダーを除去した後、大気中で1150℃〜1250℃の温度で2時間焼成し、積層型バリスタ素体となる焼結体を得た。
【0036】
次に、この焼結体の両端面にAgペーストを塗布し、大気中で800℃で焼付け、外部電極を形成した。
上記のようにして、図3に示す積層バリスタ1を得た。積層バリスタ1では、内部電極2,3がバリスタ層を介して厚み方向に重なり合うように配置されている。また、積層体4の両端面には、外部電極5,6が形成されている。なお、図4は、上記積層体における内部電極2,3のパターンを示すための分解斜視図である。
【0037】
上記のようにして、試料番号6〜20の各積層バリスタを得た。
【0038】
(従来例バリスタの製造)
表2に示す試料番号1〜5において、それぞれ組成番号1〜5となるようにZnOに対し、副成分を化合物の形態で添加した。すなわち、ZnOに対し全ての副成分を一度に添加した。次に、ボールミルで24時間粉砕・混合、乾燥し、大気中にて800℃の温度で2時間熱処理した。このようにして、バリスタ原料を得た。
【0039】
上記のようにして得られたバリスタ原料を用いたことを除いては、実施例と同様にして、積層型バリスタを作製した。なお、表2を含む以下の表において※で示した試料は、本発明外の試料であることを示す。
【0040】
【表2】
【0041】
(3)実施例及び従来例の評価
上記のようにして得られた各積層型バリスタの▲1▼バリスタ電圧(1mA)、▲2▼バリスタ電圧の60%の電圧を0.1秒間印加した時の絶縁抵抗(IR)、▲3▼0.1mA〜1mA間の電圧非直線係数(α)及び▲4▼バリスタ電圧V1mAのばらつきを測定した。なお、ばらつきの測定に際しては、試料の数は1000個とした。
【0042】
結果を下記の表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
表3から明らかなように、従来例で製造された試料番号1〜5の各積層型バリスタでは、バリスタ電圧が約9Vとなるようにバリスタを設計した場合、絶縁抵抗が1MΩ以下、電圧非直線係数(α)が20以下と低く、バリスタ電圧のばらつきΔV1mAが15%を越え、ばらつきが非常に大きいことがわかる。
【0045】
試料番号6,9,12,15,18においては、コバルトとプラセオジムが一次混合物を得る場合に同時に添加されていたため、従来法で得られた試料番号1〜5の積層バリスタと同様に、絶縁抵抗及び電圧非直線係数が低く、バリスタ電圧のばらつきが大きかった。
【0046】
これに対して、本発明の実施例としての試料番号7,8,10,11,13,14,16,17,19,20で得られた積層型バリスタでは、バリスタ電圧が約9Vと低いにもかかわらず、絶縁抵抗が5.0MΩ以上と高く、電圧非直線係数αも20以上と高かった。また、バリスタ電圧のばらつきも15%以下であった。
【0047】
[実験例2]
次に、一次混合物の熱処理温度を種々変更したことを除いては、上記実験例1と同様にして積層バリスタを得、評価した。実験例1によりプラセオジム及びコバルト以外の副成分は、一次混合物を得る工程及び二次混合物を得る工程のいずれにおいて添加しても同様の効果があることがわかったため、本実験例では、コバルトのみを第一次混合物を得る際に添加し、他の副成分は二次混合物に添加した。すなわち、ZnOに対し、CoO粉末を表1に示した組成番号1〜5における添加量となるように秤量し、ボールミルで24時間粉砕し、混合し、乾燥した。しかる後、表4に示した各温度で大気中で2時間熱処理し、すなわち一次仮焼を行った。この第1熱処理工程で得られた一次仮焼物に対し、Pr6O11、K2CO3、Al2O3、La2O3、CaCO3及びCr2O3を、表1の組成番号1〜5に応じた組成比となるように添加し、ボールミルで再び粉砕し、混合し、乾燥した。しかる後、大気中にて600℃で2時間熱処理し、二次仮焼物を得た。以下、前述した積層バリスタの製造方法と同様にして、積層型バリスタを得た。
【0048】
また、得られた各積層型バリスタにつき、バリスタ電圧、バリスタ電圧の60%の電圧を0.1秒間印加したときの絶縁抵抗(IR)及び電圧非直線係数(α)及びバリスタ電圧ばらつきを、上記と同様にして測定した。結果を下記の表4に示す。
【0049】
【表4】
【0050】
表4の試料番号21,27,33,39,45から明らかなように、第1熱処理工程の熱処理温度が600℃を下回ると、絶縁抵抗及び電圧非直線係数がともに低く、バリスタ電圧のばらつきが15%を越えることがわかる。また、試料番号26,32,38,44,50から明らかなように、第1熱処理工程の熱処理温度が1200℃を上回った場合も同様に、絶縁抵抗及び電圧非直線係数は高いものの、バリスタ電圧のばらつきが15%を越えることがわかる。これに対して、第1熱処理工程の温度が600〜1200℃である試料番号22〜25,28〜31,34〜37,40〜43,46〜49では、絶縁抵抗及び電圧非直線係数が高いだけでなく、バリスタ電圧のばらつきも15%以下と低いことがわかる。
【0051】
[実験例3]
ZnOに対し、CoOを下記の表5の組成比となるように秤量し、ボールミルで24時間粉砕、混合、乾燥した。このようにして、一次混合物を得た。この一次混合物を、大気中にて800℃で2時間熱処理し、一次仮焼物を得た。この一次仮焼物を粉砕した後、下記の表5の組成比となるように、Pr6O11、K2CO3、及びAl2O3を添加し、再びボールミルで粉砕し、混合し、乾燥した。しかる後、乾燥された生成物を大気中にて600℃で2時間熱処理し、二次仮焼物を得た。以下、実験例1と同様にして、この二次仮焼物を用いて表5の試料番号51〜73の各積層型バリスタを作製し、同様にして評価した。
【0052】
結果を下記の表5に示す。
【0053】
【表5】
【0054】
表5の試料番号63,64から明らかなように、半導体磁器において、プラセオジム含有割合が0.05atom%より少ない場合には、バリスタ電圧のばらつきが15%以下と小さいものの、絶縁抵抗が5MΩよりも小さく、また電圧非直線係数も20以下であった。他方、試料番号72,73から明らかなように、プラセオジム含有割合が3.0atom%より多いと、絶縁抵抗及び電圧非直線係数は高いものの、バリスタ電圧のばらつきが15%より大きくなることがわかる。
【0055】
試料番号65〜71から明らかなように、プラセオジム含有割合が0.05〜3.0atom%の範囲であれば、絶縁抵抗が5.0MΩ以上、電圧非直線係数αが20以上であり、かつバリスタ電圧のばらつきが15%以下と小さく、特に優れた電気的特性の得られることがわかる。
【0056】
他方、試料番号51,52から明らかなように、コバルトの含有割合が0.5atom%より少ないと、バリスタ電圧のばらつきが15%以下と小さいものの、絶縁抵抗が5.0MΩよりも小さく、電圧非直線係数は20以下であった。また、試料番号61,62から明らかなように、Co含有割合が20atom%より多いと、絶縁抵抗及び電圧非直線係数は高いものの、バリスタ電圧のばらつきが15%より大きくなることがわかる。従って、コバルト含有割合を0.5〜20atom%の範囲とした試料53〜60であれば、絶縁抵抗が5MΩ以上、電圧非直線係数が20以上であり、かつバリスタ電圧のばらつきが15%以下と小さく、特に優れた電気的特性の得られることがわかる。
【0057】
[実験例4]
ZnOに対し、前述した表1に示した組成比となるようにCoOを秤量し、ボールミルで24時間粉砕し、混合し、乾燥した。このようにして得られた一次混合物を800℃の温度で大気中で2時間熱処理し、一次仮焼物を得た。一次仮焼物を粉砕した後、表7に示す組成番号(表1参照)の組成比率となるように、Pr6O11、K2CO3、Al2O3、La2O3、CaCO3及びCr2O3を添加し、ボールミルで再び粉砕、混合、乾燥した。このようにして、二次混合物を得、この二次混合物を下記の表7に示す温度で大気中で2時間熱処理し、二次仮焼物を得た。以下、実験例1と同様にしてセラミックグリーンシートを得た。得られたセラミックグリーンシートにおけるCo及びPrの分散性を以下の分散性評価技法を用いて評価した。また、比較のために、従来法で作製された試料についても同様にCo及びPrの分散性を評価した。
【0058】
分散性評価技法…波長分散性X線分光器(WDX)を用いてマッピング分析を行った。条件は以下の通りである。
ピクセル数:256×256
ピクセルサイズ:0.4μm
測定領域(面積):102.4μm
上記マッピング分析により得られたCo及びPrのX線強度のマッピングデータを下記の表6に示す条件で12通りに分割し、各領域の平均強度を算出した。算出された平均値は、全データの平均値の平方根により算出された標準偏差の2倍の値の上下所定の範囲に入る確率を求めた。この確率が95%の場合、各領域の検出強度の平均値に有意差が認められない、すなわち、均一な分散であると判断し、各領域の検出強度の平均値に有意差が認められない最小の領域を均一領域とした。均一領域が小さい程、分散性が高いことを示す。
【0059】
上記のようにして求めた均一領域の大きさを、下記の表7に示す。
なお、バリスタ特性に大きく寄与するPr及びCoの均一領域がそれぞれ1.6μm以下であれば充分均一であり、1.6μmよりも大きいと不均一であると判断した。
【0060】
【表6】
【0061】
【表7】
【0062】
表7から明らかなように、本発明の方法を用いて得られた試料番号75〜78,81〜84,87〜90,93〜96及び99〜102では、Coの均一領域は0.4μmと小さく、分散性が高いことがわかる。
【0063】
なお、第2熱処理工程における熱処理温度が400℃よりも低い場合には、試料番号74,80,86,92,98の結果から明らかなように、Prの均一領域が6.4μm以上となった。他方、第2熱処理工程の熱処理温度が1000℃より高い場合には、試料番号79,85,91,97,103の結果から明らかなように、Prの均一領域が6.4μm以上であり、分散性が低下していた。
【0064】
第2熱処理工程の熱処理温度が400℃より低いとPrの分散性が低下する。従って、充分に仮焼が進まず、シート成形時のスラリー化の際にPr6O11が表面に浮きでたと考えられる。また、該熱処理温度が1000℃よりも高いと、Prの分散性が低下するのは、熱処理温度が高いために、原料の焼結及びネッキングが進行し、スラリー化の際に充分に粉砕することが困難であり、凝集分、粗粒子が存在し、Prが偏析したためと考えられる。
【0065】
なお、副成分を一度に添加することを除いては、実施例と同様にして得られたセラミックグリーンシート、すなわち試料番号104〜108のセラミックグリーンシートでは、Prだけでなく、Coの均一領域も6.4μm以上と大きく、分散性が低かった。これは、熱処理時に、PrとCoとの間でPrCoO3やPr2CoO5等の化合物が生成され、粒界に偏析したためと考えられる。
【0066】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係るバリスタの製造方法では、酸化亜鉛に、プラセオジムを除いた副成分のうちの少なくともコバルトを元素もしくは化合物の形態で混合し、一次混合物を得、600〜1200℃の温度で熱処理した後に、プラセオジムを元素もしくは化合物の形態で混合し、二次混合物を得、該二次混合物を熱処理することにより、バリスタ原料としての二次仮焼物が得られる。従って、酸化亜鉛に容易に固溶するコバルトが先に添加されて熱処理が行われ、コバルトが酸化亜鉛にほぼ完全に固有する。
【0067】
よって、得られたバリスタ原料において、プラセオジムとコバルト間での化合物の生成が抑制され、かつコバルト及びプラセオジムの分散性が飛躍的に高められる。そのため、上記バリスタ原料を成形し、焼成することにより得られた焼結体において、不良な粒界を著しく少なくすることができる。従って、低電圧化を図った場合であっても、漏れ電流が小さく、電圧非直線性に優れ、さらにバリスタ電圧のばらつきが少ないバリスタを安定に提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のバリスタの製造方法の各工程を示すフロー図。
【図2】従来のバリスタの製造方法の各工程を示すフロー図。
【図3】実験例1で得られた積層バリスタの構造を説明するための略図的正面断面図。
【図4】図3に示した積層バリスタを得るのに用いられたセラミックグリーンシート及びPtペーストパターンを示す分解斜視図。
【符号の説明】
1…積層バリスタ
2,3…内部電極
4…積層体
5,6…外部電極
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば定格電圧30V以下の低電圧で駆動され得るバリスタの製造方法に関し、より詳細には漏れ電流が少なく、信頼性に優れたバリスタを安定に供給することを可能とするバリスタの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、通信機器等の各種電子機器分野においては、電子回路の集積化と駆動電圧の低電圧化とが急速に進んできている。ノイズ吸収素子として用いられているバリスタにおいても、小型化及び低電圧化が強く求められている。バリスタを構成する材料としては、酸化亜鉛を主成分とする組成物が従来より用いられている。例えば、特公昭53−11076号公報などには、Bi2O3、Sb2O3、CoO及びMnO等が添加されているZnO−Bi系材料が開示されている。また、例えば特公昭56−39884号公報などには、Pr6O11及びCoO等が添加されているZnO−Pr系材料が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
酸化亜鉛を主成分とした材料を用いて構造されたバリスタでは、立ち上がり電圧(以下、バリスタ電圧V1mAと称する)の低電圧化を図るには、電極間に存在する粒界の数を少なくする必要があった。例えばV1mA=10V以下の低電圧化を実現するためには、上記粒界の数は数個とされる必要があった。
【0004】
従って、電圧非直線性を示さない不良な粒界の数が多くなると、不良な粒界同士が容易につながる確率が高くなる。その結果、絶縁抵抗や電圧非直線性が低下するという問題があった。特に、ZnO−Bi系バリスタでは、焼成時に低融点であるBi2O3やSb2O3が液相を生成するため、異常粒成長を引き起しがちであった。そのため、粒界ばらつきに伴った電気的特性のばらつきが大きくなり、特に、低電圧化を図った場合には、電極間に存在する粒界の数が少ないために電気的特性のばらつきがより一層大きくなりがちであった。よって、信頼性に優れたバリスタを安定に供給することは非常に困難であった。
【0005】
他方、ZnO−Pr系バリスタは、低温で液相を生成する成分を含まない。従って、ZnO−Pr系バリスタは、低電圧化を図る上で有利である。しかしながら、ZnO−Pr系バリスタでは粒界に絶縁層が存在しない。従って、ZnO−Pr系バリスタでは、ZnO−Bi系バリスタに比べて漏れ電流が大きくなるという欠点があった。低電圧化を進めるために電極間の距離を小さくした場合には、上記漏れ電流はさらに大きくなり、絶縁抵抗及び電圧非直線性の低下が生じるという問題があった。このような問題が生じると、消費電力の増加及び信号回路の誤動作を引き起こす恐れがあった。
【0006】
本発明は、上述した従来技術の欠点に鑑み、漏れ電流を小さくすることができ、低電圧化を進めた場合であっても、絶縁抵抗及び電圧非直線性の低下が生じ難く、ZnO−Pr系バリスタの製造方法の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るバリスタの製造方法は、主成分としての酸化亜鉛と、副成分として少なくともプラセオジム及びコバルトを含む半導体磁器からなるバリスタの製造方法であって、酸化亜鉛に、プラセオジムを除いた副成分のうちの少なくともコバルトを元素もしくは化合物の形態で混合して、一次混合物を得る工程と、前記一次混合物を600〜1200℃の温度で熱処理し、一次仮焼物を得る第1熱処理工程と、第1熱処理工程で得られた一次仮焼物に、プラセオジムを元素もしくは化合物の形態で混合し、二次混合物を得る工程と、前記二次混合物を熱処理し、二次仮焼物を得る第2熱処理工程と、前記第2熱処理工程で得られた二次仮焼物を用いて成形し、成形体を得る工程と、前記成形体を焼成し、焼結体を得る焼成工程と、前記焼結体に電極を形成する電極形成工程とを含む。
【0008】
酸化亜鉛を主成分とし、副成分として少なくともプラセオジムとコバルトとを添加してなるバリスタの従来の製造方法では、主成分の酸化亜鉛に対し、副成分の元素あるいは化合物が一度に添加されていた。すなわち、図2に示すように、ZnO素材に対し、Pr、Co及びその他の副成分が一度に添加されて、粉砕・混合される。しかる後、混合物が脱水・乾燥されて、仮焼される。仮焼物が粉砕され、得られた粉体を成形することにより成形体が得られ、この成形体を焼成することによりバリスタ素体が得られている。
【0009】
本願発明者等は、上述した従来の製造方法では、副成分同士が仮焼時に異相を生成して偏析し、副成分の分散性が低下したり、副成分同士による化合物の生成により、粒成長や焼結性に多く影響を及ぼし、それによって特性のばらつきや信頼性の低下が生じていることを見出した。また、本願発明者等は、さらに検討した結果、上記問題は、漏れ電流を増大させたり、電圧非直線性を低下させる原因でもあり、特に、粒界数が非常に少ない低電圧用バリスタでは、漏れ電流の増大及び電圧非直線性の低下が顕著となり、甚だしき場合にはバリスタ特性が消滅する恐れがあることを見出した。
【0010】
そこで、本願発明の製造方法では、副成分として添加されるプラセオジム及びコバルトが酸化亜鉛に一度に添加されず、別々に添加される。
従来法では、プラセオジム及びコバルトなどの副成分が酸化亜鉛に同時に加えられ、混合・熱処理されるため、熱処理時に、プラセオジムとコバルトとの間で化合物が生成され、該化合物が偏析する。従って、プラセオジム及びコバルトの分散性が低下しがちであった。
【0011】
これに対して、図1に示すように、本発明の製造方法では、まず、酸化亜鉛に容易に固溶するコバルトが酸化亜鉛に添加され、第1の熱処理工程が行われ、それによってコバルトが酸化亜鉛にほぼ完全に固溶する。次に、上記第1熱処理工程で得られた一次仮焼物に、プラセオジムが混合されて、二次混合物が得られる。二次混合物が第2熱処理工程において熱処理されるが、コバルトが酸化亜鉛に固溶しているので、プラセオジムとコバルトとの化合物の生成が効果的に抑制される。そのため、プラセオジム及びコバルトを高分散することができる。その結果、不良な粒界の数を著しく低減することができる。よって、電極間の粒界数が数個である低電圧バリスタの製造に本発明を用いた場合であっても、漏れ電流を小さくでき、バリスタの安定性及び信頼性を効果的に高めることができる。
【0012】
以下、本発明の詳細を説明する。
本発明に係るバリスタの製造方法は、主成分としての酸化亜鉛と、副成分として少なくともプラセオジム及びコバルトを含む半導体磁器からなるバリスタを提供するものである。ここで、副成分は、少なくともプラセオジム及びコバルとを含む限り特に限定されず、プラセオジム及びコバルト以外の副成分としては、例えば、K、Al、Ca、La、Crなどを挙げることができる。
【0013】
本発明では、まず、酸化亜鉛に、プラセオジムを除いた副成分のうちの少なくともコバルトを元素もしくは酸素の形態で混合することにより、一次混合物が得られる。すなわち、一次混合物を得る工程では、酸化亜鉛にコバルトのみを元素もしくは化合物の形態で混合物してもよく、あるいは酸化亜鉛に、コバルトと、プラセオジムを除いた残りの副成分のうち少なくとも1種とを元素もしくは化合物の形態で混合してもよい。一次混合物を得る際の混合工程については、ボールミルを用いた湿式混合方法など、任意の方法を用いることができる。
【0014】
次に、第1熱処理工程において、一次混合物が600〜1200℃の温度で熱処理される。熱処理に際しては、一次混合物を加熱炉内で加熱する方法など適宜の加熱方法を用いることができ、熱処理方法は特に限定されない。また、熱処理に際しての雰囲気は、大気中とされるが、酸素、窒素、もしくはこれらの混合雰囲気などの他の雰囲気中で行われてもよい。
【0015】
熱処理に際しての温度が600℃未満の場合には、酸化亜鉛のコバルトへの固溶が不十分となる。従って、コバルトが粒界に偏析し、最終的に異相の生成を引き起し、コバルトの分散性が低下する。その結果、得られたバリスタの絶縁抵抗が低くなったり、バリスタ電圧のばらつきが大きくなる。熱処理温度が1200℃より高くなると、粒成長や焼成が進みすぎる。従って、粉砕混合が困難となり、成形に先立って粉砕混合により均一な粉体を得ることができなくなり、かつバリスタ電圧のばらつきが大きくなる。
【0016】
上記第1熱処理工程における熱処理時間は、30分〜6時間程度とすればよい。このようにして、第1熱処理工程において、一次混合物が仮焼される。
次に、第1熱処理工程で得られた一次仮焼物に、プラセオジムが元素もしくは化合物の形態で混合され、二次混合物が得られる。二次混合物を得るための混合方法についても、ボールミルを用いた湿式混合方法など適宜の方法を用いることができる。
【0017】
しかる後、上記のようにして得られた二次混合物が第2熱処理工程において熱処理され、二次仮焼物が得られる。第2熱処理工程の温度は、特に限定されないが、好ましくは、400〜1000℃の範囲で行うことが望ましい。400℃より低い場合には、第1熱処理工程後に添加された元素が、充分に熱処理されず、成形体を得るための成形時に偏析が生じ易くなり、プラセオジム及び必要に応じてプラセオジムと同時に添加される他の副成分の分散性が低下し易くなる。そのため、絶縁抵抗が低下したり、バリスタ電圧がばらついたりする可能性がある。1000℃よりも高い場合には、二次混合物が焼結及びネッキングして、焼結し、粒径分布が大きくなる恐れがあり、かつ酸化亜鉛に固溶しないPrの分散性が低下する可能性があるからである。
【0018】
上記成形体を得る工程とは、次に焼成されて焼結体を得るための成形体を得る工程である。従って、得られる成形体は、目的とするバリスタの構造に応じて適宜定められる。例えば、単板型のバリスタを得る場合には、成形工程においては、第2熱処理工程で得られた二次仮焼物が金型等を用いて板状物に成形される。このようにして、単板型のバリスタに適した板状の成形体が用意される。
【0019】
また、本発明に係るバリスタの製造方法では、バリスタ層を介して複数の内部電極が重なり合うように配置されている積層型バリスタを製造してもよい。積層型バリスタを得る場合には、上記成形体を得る工程において、第2熱処理工程で得られた二次仮焼物層を介して複数の内部電極が厚み方向に重なり合うように配置された積層体が成形体として得られる。
【0020】
なお、成形体を得る工程における成形方法としては、上記のように成形体の構造に応じた適宜の方法を用いればよい。
本発明では、上記のようにして得られた成形体が焼成され、焼結体が得られる。この焼結体を得るための焼成条件については、使用する半導体磁器組成に応じて、適宜設定すればよい。
【0021】
本発明では、上記のようにして得られた焼結体に電極が形成され、それによってバリスタが得られる。電極の形成は、焼結体表面に導電ペーストを塗布・焼付ける方法、蒸着、メッキもしくはスパッタリングなどの薄膜形成方法などの適宜の方法により行ない得る。
【0022】
前述したように、本発明により得られるバリスタは、主成分としての酸化亜鉛と、副成分として少なくともプラセオジム及びコバルトを含む半導体磁器を備えるが、好ましくは、プラセオジムが半導体磁器中の0.05〜3.0atom%、かつコバルトが、半導体磁器中の0.5〜20atom%含有される。プラセオジムの含有割合が0.05atom%よりも少ない場合には、プラセオジム酸化物から結晶粒界に供給される酸素量が少なくなり、絶縁抵抗や電圧非直線性が低下することがある。また、プラセオジムの含有割合が3.0atom%より多くなると、粒成長が阻害され、低電圧化が困難となる恐れがあり、かつバリスタ電圧のばらつきが大きくなることがある。
【0023】
コバルトの含有量が0.5atom%より少ない場合には、絶縁抵抗及び電圧非直線性が著しく低下することがあり、20atom%よりも多くなると、酸化亜鉛にコバルトが完全に固溶し難くなり、コバルトが粒界に偏析し、バリスタ電圧のばらつきが大きくなることがある。
【0024】
なお、前述したように、上記副成分としてプラセオジム及びコバルト以外の他の元素を元素または化合物の形態で一次混合物を得る工程及び/または二次混合物を得る工程において添加してもよい。この場合には、一次混合物を得る混合工程において、プラセオジムを除いた副成分のうち少なくともコバルトが元素もしくは化合物の形態で混合され、二次混合物を得る混合工程において、プラセオジムと、一次混合物を得る工程で添加されなかった残りの副成分とが元素もしくは化合物の形態で混合されることになる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施例を挙げることにより、本発明を明らかにする。
【0026】
[実験例1]
(1)半導体磁器組成
実験例1では、焼成後の組成比率が下記の表1に示す組成番号1〜5の各組成の半導体磁器からなるバリスタを作製した。
【0027】
【表1】
【0028】
(2)バリスタの製造
本発明の効果を明らかにするために、本発明の実施例の製造方法と、従来の製造方法によりそれぞれ組成番号1〜5の組成の半導体磁器からなるバリスタを製造した。実施例及び従来法の製造方法は以下の通りである。
【0029】
(実施例の製造方法)
ZnOに対し、下記の表2に〇印で示されている一次混合時添加元素を各組成番号の組成比率となるように秤量した。なお、表2の試料番号1〜20において、組成番号は、表1に示す組成番号に対応している。また、各元素は、CoO、K2CO3、Al2O3、La2O3、CaCO3及びCr2O3のように、化合物として添加した。上記のようにして、配合された組成物をボールミルで24時間粉砕し、混合し、乾燥した。このようにして、一次混合物を得た。
【0030】
次に、一次混合物を、大気中で800℃の温度で2時間熱処理し、一次仮焼物を得た。この一次仮焼物を粉砕して粉体とした後、下記の表2に示すように、二次混合時添加元素を添加した。すなわち、下記の表2に示す〇で示した二次混合時添加元素を上記と同様に化合物の形態で添加した。なお、一次混合時添加元素及び二次混合時添加元素をZnOに添加する際、表2の試料番号の右に示されている組成番号が実現されるように、一次混合時及び二次混合時の副成分元素の量を定めた。
【0031】
上記のようにして、二次混合時添加元素を添加し、ボールミルで再び粉砕し、混合し、乾燥し、二次混合物を得た。得られた二次混合物を、大気中にて600℃の温度で2時間熱処理した。
【0032】
上記のような第2熱処理工程で得られた二次仮焼物に有機バインダ、有機溶剤、可塑剤及び分散剤を加えボールミルで12時間粉砕混合し、スラリーを得た。このようにして得たスラリーを、ドクターブレード法によりPETフィルム上に約25μmの厚さのグリーンシートとなるように成形した。
このようにして得られたグリーンシートを短冊状に切断し、矩形のセラミックグリーンシートを得た。
【0033】
次に、上記のようにして得られた矩形のセラミックグリーンシートの上面に、Ptペーストをスクリーン印刷した。Ptペーストが印刷された複数枚のセラミックグリーンシートを積層し、上下に無地の上記セラミックグリーンシートを積層した。このようにして得られた積層体を2ton/cm2の圧力で圧着し、マザーの積層体を得た。このマザーの積層体を個々の積層バリスタ単位の寸法に切断した。
【0034】
なお、個々の積層バリス単位の上記積層体において、電極を構成するPtペーストの重なり面積は、2.3mm2、積層体の長さは1.6mm、幅は0.8mmである。
【0035】
次に、上記積層体を大気中で500℃の温度で12時間熱処理し、有機バインダーを除去した後、大気中で1150℃〜1250℃の温度で2時間焼成し、積層型バリスタ素体となる焼結体を得た。
【0036】
次に、この焼結体の両端面にAgペーストを塗布し、大気中で800℃で焼付け、外部電極を形成した。
上記のようにして、図3に示す積層バリスタ1を得た。積層バリスタ1では、内部電極2,3がバリスタ層を介して厚み方向に重なり合うように配置されている。また、積層体4の両端面には、外部電極5,6が形成されている。なお、図4は、上記積層体における内部電極2,3のパターンを示すための分解斜視図である。
【0037】
上記のようにして、試料番号6〜20の各積層バリスタを得た。
【0038】
(従来例バリスタの製造)
表2に示す試料番号1〜5において、それぞれ組成番号1〜5となるようにZnOに対し、副成分を化合物の形態で添加した。すなわち、ZnOに対し全ての副成分を一度に添加した。次に、ボールミルで24時間粉砕・混合、乾燥し、大気中にて800℃の温度で2時間熱処理した。このようにして、バリスタ原料を得た。
【0039】
上記のようにして得られたバリスタ原料を用いたことを除いては、実施例と同様にして、積層型バリスタを作製した。なお、表2を含む以下の表において※で示した試料は、本発明外の試料であることを示す。
【0040】
【表2】
【0041】
(3)実施例及び従来例の評価
上記のようにして得られた各積層型バリスタの▲1▼バリスタ電圧(1mA)、▲2▼バリスタ電圧の60%の電圧を0.1秒間印加した時の絶縁抵抗(IR)、▲3▼0.1mA〜1mA間の電圧非直線係数(α)及び▲4▼バリスタ電圧V1mAのばらつきを測定した。なお、ばらつきの測定に際しては、試料の数は1000個とした。
【0042】
結果を下記の表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
表3から明らかなように、従来例で製造された試料番号1〜5の各積層型バリスタでは、バリスタ電圧が約9Vとなるようにバリスタを設計した場合、絶縁抵抗が1MΩ以下、電圧非直線係数(α)が20以下と低く、バリスタ電圧のばらつきΔV1mAが15%を越え、ばらつきが非常に大きいことがわかる。
【0045】
試料番号6,9,12,15,18においては、コバルトとプラセオジムが一次混合物を得る場合に同時に添加されていたため、従来法で得られた試料番号1〜5の積層バリスタと同様に、絶縁抵抗及び電圧非直線係数が低く、バリスタ電圧のばらつきが大きかった。
【0046】
これに対して、本発明の実施例としての試料番号7,8,10,11,13,14,16,17,19,20で得られた積層型バリスタでは、バリスタ電圧が約9Vと低いにもかかわらず、絶縁抵抗が5.0MΩ以上と高く、電圧非直線係数αも20以上と高かった。また、バリスタ電圧のばらつきも15%以下であった。
【0047】
[実験例2]
次に、一次混合物の熱処理温度を種々変更したことを除いては、上記実験例1と同様にして積層バリスタを得、評価した。実験例1によりプラセオジム及びコバルト以外の副成分は、一次混合物を得る工程及び二次混合物を得る工程のいずれにおいて添加しても同様の効果があることがわかったため、本実験例では、コバルトのみを第一次混合物を得る際に添加し、他の副成分は二次混合物に添加した。すなわち、ZnOに対し、CoO粉末を表1に示した組成番号1〜5における添加量となるように秤量し、ボールミルで24時間粉砕し、混合し、乾燥した。しかる後、表4に示した各温度で大気中で2時間熱処理し、すなわち一次仮焼を行った。この第1熱処理工程で得られた一次仮焼物に対し、Pr6O11、K2CO3、Al2O3、La2O3、CaCO3及びCr2O3を、表1の組成番号1〜5に応じた組成比となるように添加し、ボールミルで再び粉砕し、混合し、乾燥した。しかる後、大気中にて600℃で2時間熱処理し、二次仮焼物を得た。以下、前述した積層バリスタの製造方法と同様にして、積層型バリスタを得た。
【0048】
また、得られた各積層型バリスタにつき、バリスタ電圧、バリスタ電圧の60%の電圧を0.1秒間印加したときの絶縁抵抗(IR)及び電圧非直線係数(α)及びバリスタ電圧ばらつきを、上記と同様にして測定した。結果を下記の表4に示す。
【0049】
【表4】
【0050】
表4の試料番号21,27,33,39,45から明らかなように、第1熱処理工程の熱処理温度が600℃を下回ると、絶縁抵抗及び電圧非直線係数がともに低く、バリスタ電圧のばらつきが15%を越えることがわかる。また、試料番号26,32,38,44,50から明らかなように、第1熱処理工程の熱処理温度が1200℃を上回った場合も同様に、絶縁抵抗及び電圧非直線係数は高いものの、バリスタ電圧のばらつきが15%を越えることがわかる。これに対して、第1熱処理工程の温度が600〜1200℃である試料番号22〜25,28〜31,34〜37,40〜43,46〜49では、絶縁抵抗及び電圧非直線係数が高いだけでなく、バリスタ電圧のばらつきも15%以下と低いことがわかる。
【0051】
[実験例3]
ZnOに対し、CoOを下記の表5の組成比となるように秤量し、ボールミルで24時間粉砕、混合、乾燥した。このようにして、一次混合物を得た。この一次混合物を、大気中にて800℃で2時間熱処理し、一次仮焼物を得た。この一次仮焼物を粉砕した後、下記の表5の組成比となるように、Pr6O11、K2CO3、及びAl2O3を添加し、再びボールミルで粉砕し、混合し、乾燥した。しかる後、乾燥された生成物を大気中にて600℃で2時間熱処理し、二次仮焼物を得た。以下、実験例1と同様にして、この二次仮焼物を用いて表5の試料番号51〜73の各積層型バリスタを作製し、同様にして評価した。
【0052】
結果を下記の表5に示す。
【0053】
【表5】
【0054】
表5の試料番号63,64から明らかなように、半導体磁器において、プラセオジム含有割合が0.05atom%より少ない場合には、バリスタ電圧のばらつきが15%以下と小さいものの、絶縁抵抗が5MΩよりも小さく、また電圧非直線係数も20以下であった。他方、試料番号72,73から明らかなように、プラセオジム含有割合が3.0atom%より多いと、絶縁抵抗及び電圧非直線係数は高いものの、バリスタ電圧のばらつきが15%より大きくなることがわかる。
【0055】
試料番号65〜71から明らかなように、プラセオジム含有割合が0.05〜3.0atom%の範囲であれば、絶縁抵抗が5.0MΩ以上、電圧非直線係数αが20以上であり、かつバリスタ電圧のばらつきが15%以下と小さく、特に優れた電気的特性の得られることがわかる。
【0056】
他方、試料番号51,52から明らかなように、コバルトの含有割合が0.5atom%より少ないと、バリスタ電圧のばらつきが15%以下と小さいものの、絶縁抵抗が5.0MΩよりも小さく、電圧非直線係数は20以下であった。また、試料番号61,62から明らかなように、Co含有割合が20atom%より多いと、絶縁抵抗及び電圧非直線係数は高いものの、バリスタ電圧のばらつきが15%より大きくなることがわかる。従って、コバルト含有割合を0.5〜20atom%の範囲とした試料53〜60であれば、絶縁抵抗が5MΩ以上、電圧非直線係数が20以上であり、かつバリスタ電圧のばらつきが15%以下と小さく、特に優れた電気的特性の得られることがわかる。
【0057】
[実験例4]
ZnOに対し、前述した表1に示した組成比となるようにCoOを秤量し、ボールミルで24時間粉砕し、混合し、乾燥した。このようにして得られた一次混合物を800℃の温度で大気中で2時間熱処理し、一次仮焼物を得た。一次仮焼物を粉砕した後、表7に示す組成番号(表1参照)の組成比率となるように、Pr6O11、K2CO3、Al2O3、La2O3、CaCO3及びCr2O3を添加し、ボールミルで再び粉砕、混合、乾燥した。このようにして、二次混合物を得、この二次混合物を下記の表7に示す温度で大気中で2時間熱処理し、二次仮焼物を得た。以下、実験例1と同様にしてセラミックグリーンシートを得た。得られたセラミックグリーンシートにおけるCo及びPrの分散性を以下の分散性評価技法を用いて評価した。また、比較のために、従来法で作製された試料についても同様にCo及びPrの分散性を評価した。
【0058】
分散性評価技法…波長分散性X線分光器(WDX)を用いてマッピング分析を行った。条件は以下の通りである。
ピクセル数:256×256
ピクセルサイズ:0.4μm
測定領域(面積):102.4μm
上記マッピング分析により得られたCo及びPrのX線強度のマッピングデータを下記の表6に示す条件で12通りに分割し、各領域の平均強度を算出した。算出された平均値は、全データの平均値の平方根により算出された標準偏差の2倍の値の上下所定の範囲に入る確率を求めた。この確率が95%の場合、各領域の検出強度の平均値に有意差が認められない、すなわち、均一な分散であると判断し、各領域の検出強度の平均値に有意差が認められない最小の領域を均一領域とした。均一領域が小さい程、分散性が高いことを示す。
【0059】
上記のようにして求めた均一領域の大きさを、下記の表7に示す。
なお、バリスタ特性に大きく寄与するPr及びCoの均一領域がそれぞれ1.6μm以下であれば充分均一であり、1.6μmよりも大きいと不均一であると判断した。
【0060】
【表6】
【0061】
【表7】
【0062】
表7から明らかなように、本発明の方法を用いて得られた試料番号75〜78,81〜84,87〜90,93〜96及び99〜102では、Coの均一領域は0.4μmと小さく、分散性が高いことがわかる。
【0063】
なお、第2熱処理工程における熱処理温度が400℃よりも低い場合には、試料番号74,80,86,92,98の結果から明らかなように、Prの均一領域が6.4μm以上となった。他方、第2熱処理工程の熱処理温度が1000℃より高い場合には、試料番号79,85,91,97,103の結果から明らかなように、Prの均一領域が6.4μm以上であり、分散性が低下していた。
【0064】
第2熱処理工程の熱処理温度が400℃より低いとPrの分散性が低下する。従って、充分に仮焼が進まず、シート成形時のスラリー化の際にPr6O11が表面に浮きでたと考えられる。また、該熱処理温度が1000℃よりも高いと、Prの分散性が低下するのは、熱処理温度が高いために、原料の焼結及びネッキングが進行し、スラリー化の際に充分に粉砕することが困難であり、凝集分、粗粒子が存在し、Prが偏析したためと考えられる。
【0065】
なお、副成分を一度に添加することを除いては、実施例と同様にして得られたセラミックグリーンシート、すなわち試料番号104〜108のセラミックグリーンシートでは、Prだけでなく、Coの均一領域も6.4μm以上と大きく、分散性が低かった。これは、熱処理時に、PrとCoとの間でPrCoO3やPr2CoO5等の化合物が生成され、粒界に偏析したためと考えられる。
【0066】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係るバリスタの製造方法では、酸化亜鉛に、プラセオジムを除いた副成分のうちの少なくともコバルトを元素もしくは化合物の形態で混合し、一次混合物を得、600〜1200℃の温度で熱処理した後に、プラセオジムを元素もしくは化合物の形態で混合し、二次混合物を得、該二次混合物を熱処理することにより、バリスタ原料としての二次仮焼物が得られる。従って、酸化亜鉛に容易に固溶するコバルトが先に添加されて熱処理が行われ、コバルトが酸化亜鉛にほぼ完全に固有する。
【0067】
よって、得られたバリスタ原料において、プラセオジムとコバルト間での化合物の生成が抑制され、かつコバルト及びプラセオジムの分散性が飛躍的に高められる。そのため、上記バリスタ原料を成形し、焼成することにより得られた焼結体において、不良な粒界を著しく少なくすることができる。従って、低電圧化を図った場合であっても、漏れ電流が小さく、電圧非直線性に優れ、さらにバリスタ電圧のばらつきが少ないバリスタを安定に提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のバリスタの製造方法の各工程を示すフロー図。
【図2】従来のバリスタの製造方法の各工程を示すフロー図。
【図3】実験例1で得られた積層バリスタの構造を説明するための略図的正面断面図。
【図4】図3に示した積層バリスタを得るのに用いられたセラミックグリーンシート及びPtペーストパターンを示す分解斜視図。
【符号の説明】
1…積層バリスタ
2,3…内部電極
4…積層体
5,6…外部電極
Claims (6)
- 主成分としての酸化亜鉛と、副成分として少なくともプラセオジム及びコバルトを含む半導体磁器からなるバリスタの製造方法であって、
酸化亜鉛に、プラセオジムを除いた副成分のうちの少なくともコバルトを元素もしくは化合物の形態で混合して、一次混合物を得る工程と、
前記一次混合物を600〜1200℃の温度で熱処理し、一次仮焼物を得る第1熱処理工程と、
第1熱処理工程で得られた一次仮焼物に、プラセオジムを元素もしくは化合物の形態で混合し、二次混合物を得る工程と、
前記二次混合物を熱処理し、二次仮焼物を得る第2熱処理工程と、
前記第2熱処理工程で得られた二次仮焼物を用いて成形し、成形体を得る工程と、
前記成形体を焼成し、焼結体を得る焼成工程と、
前記焼結体に電極を形成する電極形成工程とを含む、バリスタの製造方法。 - 前記プラセオジムが前記半導体磁器中0.05〜3.0atom%含有され、前記コバルトが、前記半導体磁器中0.5〜20atom%含有されている、請求項1に記載のバリスタの製造方法。
- 前記第2熱処理工程における熱処理温度が400〜1000℃である、請求項1または2に記載のバリスタの製造方法。
- 前記副成分が、プラセオジム及びコバルト以外の他の元素を含み、前記一次混合物を得る混合工程において、プラセオジムを除いた副成分のうち少なくともコバルトが元素もしくは化合物の形態で混合され、かつ前記二次混合物を得る混合工程において、プラセオジムと残りの副成分とが元素もしくは化合物の形態で混合される、請求項1〜3のいずれかに記載のバリスタの製造方法。
- 前記成形体を得る工程において、前記第2熱処理工程で生成された二次仮焼物層を介して複数の内部電極が厚み方向に重なり合うように配置された積層体が形成される、請求項1〜4のいずれかに記載のバリスタの製造方法。
- 前記成形体を得る工程において、前記第2熱処理工程で得られた二次仮焼物からなる板状の成形体が得られる、請求項1〜5のいずれかに記載のバリスタの製造方法。
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