JP2004029126A - 帯電防止性反射防止フィルム - Google Patents

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岡村 賢吾
Toshikazu Iijima
飯島 俊和
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Abstract

【課題】従来持ち合わせていた反射防止フィルム性能を維持したまま、帯電防止機能を有する帯電防止性反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】プラスチックフィルムの少なくとも片面に、酸化インジウムと酸化スズの混合物からなり、その混合比がそれぞれ65重量%以下及び60重量%以上からなり、かつ表面抵抗値が10Ω/□以上の導電層を含む反射防止膜層を有する帯電防止性反射防止フィルム。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)やテレビ・コンピューターのブラウン管(CRT)などの画像表示装置などの全面に装着され、外光などからの光が表示画面に反射し、表示画面が見にくくなることを防止し、なおかつフィルムに帯電する静電気を防止する帯電防止性反射防止フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)やテレビ・コンピューターのブラウン管(CRT)などの画像表示画面は、ガラスやプラスティック板である場合が多く、従来は、そのガラス面やプラスティック板等の基材に、直接反射防止機能を付与してきた。しかしながら、近年の画像表示画面のフラット化に伴い、当該基材に反射防止機能を有するプラスティックフィルム(反射防止膜層)を貼ることができるようになった。
【0003】
また、コンピューター用のディスプレイなどの画像表示装置では、作業者と表示装置からの距離が近いこともあり、表示装置から発せられるVLF帯(2〜400kHz)およびELF帯(5〜2000Hz)の電磁波の人体への影響が問題視されつつある。このような漏洩電磁波に対し、ヨーロッパを中心にTCO規格が設けられている。かかる課題に対応するため、反射防止膜層内に導電層を設け表示装置のアースに落とすことにより、電磁波の人体への影響を防止する策がとられている。この導電層は、表面抵抗値を10Ω/□以下とする必要があるため、一般的には、酸化インジウムと酸化スズの混合物(以下ITOという)が使用され、かつその導電性を得るためには、酸化スズの混合比が5〜30重量%の範囲である必要があった。
【0004】
しかしながら、上記導電層による電磁波シールド効果を満足するためには、アースする必要があり、この方法として特開平8−287850号公報に示されるような超音波はんだを使用して、導電層にはんだを浸透させる方法が必要となる。そのため、表示装置製造行程内に超音波はんだ装置および工程が必要となり、コストアップにつながっている。しかし、民生用テレビなど作業者と表示装置からの距離が遠い表示装置、また液晶ディスプレイなど漏洩電磁波の影響があまりないものについては、電磁波シールド機能に関する規格は特に設けられていない。このため、反射防止膜内の導電層を帯電防止レベルの10Ω/□以上を満たすものでよく、フィルムに帯電した静電気は反射防止フィルムの表面に導電テープなど簡略なものを使用するだけで防止することができ、コストダウンに寄与する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
反射防止フィルムに要求される性能は、次のとおりである。
(1)可視光線領域における反射防止膜の反射率が1%になる短波長と長波長の比(バンド幅)が、1.40以上あること。
(2)反射防止膜が膜密着性、耐擦傷性に優れること。
(3)表面に傷が付きにくい。具体的に表面の鉛筆硬度が2H以上。望ましくはマジックインキ、コーヒー、口紅、ガラスクリーナーなどの生活用品に対しても汚れにくいこと。
(4)前記反射防止フィルム性能が温度(−10〜50℃)、湿度(10〜95%RH)の環境変化に伴う長期使用状態においても変化しないこと。
【0006】
本発明の目的は、高屈折率導電層として一般的なITOを使用し、従来持ち合わせていた反射防止フィルム性能を維持したまま、表面抵抗値を漏洩電磁波シールド効果を付加させるために10Ω/□以下に押さえていたものを帯電防止機能のみを持たせるための10Ω/□以上とした帯電防止性反射防止フィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の本発明の目的は、次の(1)〜(5)の発明によって達成される。
(1)プラスチックフィルムの少なくとも片面に、酸化インジウムと酸化スズの混合物からなり、それらの混合比がそれぞれ65重量%以下及び35重量%以上からなり、かつ表面抵抗値が10Ω/□以上の導電層を含む反射防止膜層を有することを特徴とする帯電防止性反射防止フィルム。
(2)反射防止膜層が、高屈折率の導電層と低屈折率層からなることを特徴とする上記(1)記載の帯電防止性反射防止フィルム。
(3)反射防止膜層が、エレクトロンビーム加熱法による真空蒸着法またはスパッタリング法により成膜されている上記(1)または(2)記載の帯電防止性反射防止フィルム。
(4)反射防止膜層が、エレクトロンビーム加熱法による真空蒸着法またはスパッタリング法により成膜されている上記(1)〜(3)のいずれかに記載の帯電防止性反射防止フィルム。
(5)反射防止膜層の上に、純水接触角が90deg以上である撥水防汚層が設けられている上記(1)〜(4)のいずれかに記載の帯電防止性反射防止フィルム。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の帯電防止性反射防止フィルムは、プラスチックフィルムの少なくとも片面に、酸化インジウムと酸化スズの混合物からなり、それらの混合比がそれぞれ65重量%以下及び35重量%以上からなり、かつ表面抵抗値が10Ω/□以上の導電層を含む反射防止膜層を有することを特徴とする帯電防止性反射防止フィルムである。
【0009】
本発明で用いられるプラスチックフィルムとしては、可視光線を通過することができる透明性があり、その表面に、後述する図1に示すようなハードコート層と反射防止膜層を蒸着などの方法により成膜し、またディスプレイの全面に接着する工程に耐えられる熱的、機械的、形態的安定製のあるものであれば差し支えない。具体的には、厚さが好ましくは50〜250μm、より好ましくは188μm程度の、ポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、トリアセテート系樹脂などからなるフィルムが挙げられる。その中でも、熱的、機械的、形態的安定性の面と経済性のバランスの面から、ポリエステル系樹脂、その中でもポリエチレンテレフタレートを主体とする樹脂からなるフィルムが好ましく用いられる。
【0010】
本発明では、反射防止膜層における導電層の表面抵抗値を10Ω/□以上とする。本発明で、反射防止膜層における導電層の表面抵抗値を10Ω/□以上とする手段として、ITOを使用する。ITOは可視光線を通過することができ、また導電性能が高いため、漏洩電磁波シールド効果を持った反射防止膜作製の際は有効な材料であることは公知のことである。導電層の表面抵抗値を10Ω/□以上とする手段として他の種類の高屈折率材料を使用することは容易に考えられるが、本発明では、酸化インジウムと酸化スズの混合比を変えることにより、表面抵抗値を10Ω/□以上、好ましくは、10〜10Ω/□とする。
【0011】
そのため、本発明においては、酸化インジウムと酸化スズの混合物の混合比がそれぞれ65重量%以下及び35重量%以上であることが必要であるが、好ましくは30〜40重量%及び60〜70重量%である。
【0012】
本発明において、導電層の表面抵抗値を10Ω/□以上とすることの利点として、一般に使用されているITO(酸化スズを混合比で5〜30重量%)と屈折率が大きく変わらず、ほぼ2.0であることから、成膜条件を大きく変更することなく成膜できることが挙げられる。
【0013】
また、表面抵抗値の点から導電層の厚みは薄いほど好ましいが、反射率の点から対象とする波長に対して、光学的理論から要求される厚み近辺でなければならない。ただし、この値は必ずしも一つの値ではなく、設計膜構成(反射防止膜層数や使用する低屈折率層の屈折率など)により変化するものである。
【0014】
この導電層は、一般に使用されているポリエチレンテレフタレートの屈折率1.6より大きい屈折率2.0を持つため、高屈折率層と呼び、また屈折率1.6より低い屈折率を低屈折率層と呼ぶ。ポリエチレンテレフタレート上にこの高屈折率層と低屈折率層を交互に積層することにより反射防止層を形成する。
【0015】
本発明の反射防止膜層は、上記の高屈折率の導電層を含むものであり、該導電層と低屈折率層からなることが好ましい。
【0016】
低屈折率層を構成する成分としては、酸化マグネシウム(屈折率n=1.6)、二酸化珪素(n=1.4)、フッ化マグネシウム(n=1.4)、フッ化カルシウム(n=1.3〜1.4)、フッ化セリウム(n=1.6)、フッ化アルミニウム(n=1.3)、酸化アルミニウム(n=1.6)などが挙げられる。しかしながら、反射防止膜層の最表層膜としては、二酸化珪素を使用することが好ましい。これは、二酸化珪素(以下SiOと省略)以外の材料の場合には十分な表面硬度が得られない場合があるためである。このため、反射防止膜層の最表層膜としての膜厚は100nm以上設けることが好ましい。 また、本発明の帯電防止性反射防止フィルムにおいては、基材のプラスチックフィルムと反射防止膜層の間に、厚さ1μm〜15μmの耐擦傷性を有しその鉛筆硬度が2H以上であるハードコート層を設けることが好ましい。
【0017】
ハードコート層は、本発明の帯電防止性反射防止フィルムをディスプレイ表面に貼り合わせた状態で、本来、目的として使用しない物品との接触(例として、鉛筆、シャープペンシルの先、爪など)や表面を拭いて洗浄しようとする際の、摩擦による傷の発生を押さえるものである。表面硬度の表現方法は種々あるが、通常鉛筆硬度が便利に使われ、本発明では少なくとも2H以上の硬度であることが好ましい。
【0018】
本発明の各種酸化物で構成される反射防止膜層はそれ自体十分硬いものであるが、典型例である4層全体でも厚さが約0.5μm以下であり、このような厚さの反射防止膜層の下に、基材である一般に硬度の低いプラスティック層が存在する場合、上記にある種々の傷発生原因に対してはほとんど効果がない。傷発生防止の効果を発揮するために、かなりの厚みを必要とするハードコート層を反射防止膜層の外側(上側)に設けることは、反射防止の原理からは不可能である。したがって、ハードコート層を基材であるプラスチックフィルムと反射防止膜層の間に設けることになる。このハードコート層の厚みは傷の付きにくい表面硬度を発揮するために最小限の厚みとして一般的には2μm以上必要であり、また厚すぎるとフィルム全体の柔軟性をなくしたり、光学特性の点からも障害の原因となりやすいため、15μm以下が望ましい。
【0019】
ハードコート層の化学的組成としては、ポリオルガノシロキサン、シリカ、アルミナなどの無機系樹脂、あるいは有機アクリル系樹脂のいずれでもよい。
【0020】
また、ハードコート層の成膜方法としては、真空蒸着方式あるいは、溶液の塗布・乾燥によるいわゆるウエットコーティング方式など、通常行われているいずれの方式も可能である。しかしながら、ハードコート層は上記のように一般には2μm以上の厚みを必要とするため、ウエットコーティング方式を用いて形成することが望ましい。その場合は、有機アクリル系樹脂が選択しやすく、メタクリル酸などのアクリル化合物と多官能グリコールとのエステル化合物を架橋させて成膜する方法が好ましい。
【0021】
ハードコート層とプラスチックフィルムとの接着性および、プラスチックフィルムとディスプレイと貼り合わせるための粘着層との接着性を高めるために、2μm以下程度の薄いアンカーコート層を設けることも好ましく行われる。その場合、アンカーコート層は、例えばアクリル系樹脂あるいはポリエステル系樹脂を用いて、プラスティックフィルム製造時でのインライン方式あるいはオフライン方式により形成することができる。
【0022】
また、ハードコート層と反射防止膜層との密着性を高めるために、0.01μm程度の極めて薄いプライマー層を設けることも好ましく行われる。このプライマー層は反射防止膜性能に影響のない範囲で設計されるものであり、ハードコート層および反射防止膜層との密着性がよいものであればよく、SiOなどに代表される無機物をエレクトロンビーム法による真空蒸着法(EB蒸着法)あるいはスパッタリング法などにより形成することが望ましい。
【0023】
本発明においては、反射防止膜層の上に、さらに反射防止性能に影響のない範囲で通常、厚みが1nm〜20nmの範囲において、純水接触角が90deg以上の撥水防汚層が設けられていることが好ましい。この目的は、本発明の帯電防止性反射防止フィルムをディスプレイ表面に貼り合わせた状態で、本来使用目的ではない様々な使用環境において、表面を汚れにくくかつ反射防止膜層を保護するためである。汚れの原因として、人体の汗、指紋、マジックインキ、コーヒーなどを想定して、撥水性、撥油性の被膜を設けることで目的は達成される。この撥水性、撥油性被膜の具体的な成膜方法としては、種々の方法があるが、例えば、特開平6−122776号公報に示されているようなフルオロアルキルシランなどの表面エネルギーの小さい化合物を反射防止膜層の最外層表面で化学結合によって高分子被膜化する方法が挙げられる。汚れ防止性能の尺度として、純水接触角を用いることが便利であり、純水接触角が90deg以上あるときに、上記のような汚れ原因に対して効果があり、顕著な撥水効果が発揮できる。
【0024】
次に、反射防止膜層の成膜について説明する。一般的な反射防止膜の原理と成膜方法についてはすでに公知であり、種々の目的に応じて多種多様の方法と実施例として紹介されている。基本的には基材であるプラスチックフィルムの、本発明の場合アンカーコート層やハードコート層を含めた基材フィルムの屈折率より大きい屈折率をもつ透明な化合物と小さい屈折率をもつ透明な化合物の層を、全体の反射率を極小に近い値にするように設計された光学的膜厚み(屈折率nと絶対厚みdの積)で構成することからなる。しかしながら、使用される目的、許容される生産のための費用、生産のために採用できる成膜方法によって具体的な多層の構成内容が異なってくることがある。
【0025】
図面に基づいて本発明の帯電防止性反射防止フィルムを説明する。図1は、本発明の帯電防止性反射防止フィルムの構成を例示する断面図である。図1において、ポリエチレンテレフタレート等からなるプラスチックフィルム1の上にハードコート層2をコーティングにより形成する。その上に帯電防止および反射防止膜層として、ITOからなる高屈折導電層3とSiO等からなる低屈折率層4を真空蒸着法にて交互に4層を積層する。そして最表層には、撥水防汚層5を形成する。
【0026】
本発明の帯電防止性反射防止フィルムは、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)やテレビ・コンピューターのブラウン管(CRT)などの画像表示装置などの全面に装着使用される。
【0027】
【実施例】
以下、本発明の実施様態を実施例をもって説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0028】
実施例全体を通して共通的な製造条件と物性評価方法について説明する。
【0029】
ベースフィルムであるプラスチックフィルムには、成膜時にオンラインで、非晶性ポリエステル樹脂を0.5〜0.8μmの厚みを塗布した188μmポリエチレンテレフタレート(以下PETと省略)フィルムを用いた。ハードコート層は、PETフィルムの片面に多官能アクリレート(エリスリトール系、ポリエステル系、ヒドロキシプロピル系の混合物)、表面平滑剤(ポリシロキサン)、光開始剤(フェニルケトン化合物)のトルエン、メチルエチルケトン混合溶媒の溶液を塗布し、乾燥後、UV照射により架橋反応を完結させることにより、鉛筆硬度3Hの厚み4μmの層を形成させた。鉛筆硬度の測定は、東洋精機製作所製鉛筆硬度試験機を使用し、使用した鉛筆は鉛筆硬度試験用「三菱ユニ」であり、JISK5400に基づき荷重1kg、鉛筆先接触角45度で実施した。
【0030】
反射防止膜の形成は すべて、図1に示すようなPETフィルムの上にハードコート層を形成した基板上にITO(高屈折率導電層)、SiO(低屈折率層)、ITO(高屈折率導電層)、SiO(低屈折率層)の順に4層すべてをエレクトロンビーム加熱を蒸発エネルギー源とする連続巻取式真空蒸着装置を用いて、また、部分的にRFイオンプレーティング方式併用で、各層の膜厚みを光学膜厚(n×d)をオンラインで計測制御しながら成膜した。各層の光学膜厚を下記に示す。
【0031】
Figure 2004029126
ITOおよびSiO成膜時における到達真空度を5.0×10−5Torrに設定し、ITOの成膜時には酸素を導入し、酸素分圧を1.1×10−4Torr、高周波(13.56MHz)10kWをかけたプラズマ雰囲気の条件下で成膜した。また、SiOの成膜時には酸素分圧2.0×10−4Torrの条件下で成膜した。
【0032】
撥水防汚層の成膜は、ヘプタデカフロロ−1,1,2,2−1−トリメトキシシランを蒸気として、真空装置内に放電電極に100Wの高周波プラズマを発生させた環境に導入し、4層からなる反射防止膜を成膜した上記フィルム表面上に5nmの厚みに反応成膜させることによって行った。得られた撥水防汚層の純水接触角は協和界面科学製接触角計CA−Xを使用し、純水を反射防止フィルム表面に一滴滴下し接触角を測定した。測定結果は102〜110degの範囲であり、防汚層としての性能を満たしていることを確認した。
【0033】
得られた反射防止フィルムの反射防止特性、すなわち反射率特性の測定は、島津製作所製UVPC−3100を使用した。フィルムの裏面反射を打ち消すために、成膜した反射防止膜層の裏面側を黒色に塗って実施し、また、反射測定角は5度である。評価項目は、波長450nm〜650nmにおける最大反射率および平均反射率、そして視感反射率すなわち可視光波長の中心波長である550nmの反射率である。また、バンド幅の算出は、可視光線領域である380nm〜780nmにおける反射率が1%になる短波長と長波長の比(長波長/短波長)から求めた。
【0034】
得られた反射防止フィルムの透過率特性の測定は、村上色彩製光線透過率計HR−100を使用し、全光線透過率を測定した。なお、測定波長は380〜760nmである。
【0035】
得られた帯電防止性反射防止フィルムの膜密着力特性の評価は、JISK5400に基づくクロスカット法(碁盤目テープ法)を実施した。また使用したテープはニチバンNO.405である。
【0036】
得られた帯電防止性反射防止フィルムの耐擦傷性および耐エタノール性の評価は、テスター産業製学振型摩擦堅牢度試験機AB−301を使用して実施した。耐擦傷性評価では、スチールウール#0000を使用し、これに200g/cmの荷重を加え120mmのストロークで30往復(1往復/2秒)反射防止フィルム表面を擦り、傷および膜剥がれの有無を確認した。また、耐エタノール性の評価では、摩擦堅牢度試験用綿布金巾3号を2枚重ね、メチルアルコールをしみこませた後、2kg/cmの荷重を加え120mmのストロークで30往復(1往復/2秒)反射防止フィルム表面を擦り、傷および膜剥がれの有無を確認した。
【0037】
得られた帯電防止性反射防止フィルムの表面抵抗値の測定は、最表層に超音波はんだ(超音波はんだ発生機:旭硝子製サンボルダー/はんだ剤:旭硝子製セラソルザW143)を使用し、抵抗値測定用の電極を2点形成した。(2点間の距離:10mm)その後テスターにより2極間の抵抗値を測定し、その値を表面抵抗値とした。
【0038】
[実施例1]
188μmPETフィルムの片面に、4μmのハードコート層を設けたフィルム上に高屈折率層として酸化インジウムと酸化スズの混合比をそれぞれ30重量%および70重量%としたITO膜を形成し、次に、低屈折率層としてSiO膜を交互に積層し、図1で示した4層構成の反射防止膜を成膜した。なお、成膜はいずれもエレクトロンビーム蒸着法で実施した。得られた反射防止特性、透過率特性、膜密着力特性、耐擦傷性、耐エタノール性、表面抵抗値、鉛筆硬度試験結果を表1に示す。
【0039】
[実施例2]
酸化インジウムと酸化スズの混合比をそれぞれ40重量%および60重量%としたこと以外は、実施例1と同様に成膜を実施した。得られた反射防止特性、透過率特性、膜密着力特性、耐擦傷性、耐エタノール性、表面抵抗値、鉛筆硬度試験結果を表1に示す。
【0040】
[比較例1]
酸化インジウムと酸化スズの混合比をそれぞれ70重量%および30重量%としたこと以外は、実施例1と同様に成膜を実施した。得られた反射防止特性、透過率特性、膜密着力特性、耐擦傷性、耐エタノール性、表面抵抗値、鉛筆硬度試験結果を表1に示す。
【0041】
[比較例2]
酸化インジウムと酸化スズの混合比をそれぞれ95重量%および5重量%としたこと以外は、実施例1と同様に成膜を実施した。得られた反射防止特性、透過率特性、膜密着力特性、耐擦傷性、耐エタノール性、表面抵抗値、鉛筆硬度試験結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
Figure 2004029126
表1に示すように、ITOを電磁波シールド性をもたせた高屈折率導電層として成膜したもの〔比較例1および比較例2〕ついては表面抵抗値が10Ω/□以下に押さえられているのに対し、酸化インジウムと酸化スズの混合比をそれぞれ65重量%以下および35重量%以上であるITOを高屈折率導電層として成膜したもの〔実施例1および実施例2〕については表面抵抗値が10Ω/□以上になっており帯電防止レベルに達している。
【0043】
一方、表1に示すように反射防止特性、透過率特性、膜密着力特性、耐擦傷性および耐エタノール性については、ITOを電磁波シールド性を持たせた高屈折率導電層として成膜したもの〔比較例1および比較例2〕と酸化インジウムと酸化スズの混合比をそれぞれ65重量%以下および35重量%以上であるITOを高屈折率導電層として成膜したもの〔実施例1および実施例2〕と何ら変わらない物性を有していることがわかる。
【0044】
また、このフィルムを反射防止膜/撥水防汚層を形成されている面が外側になるように、さらに屈折率がディスプレイのガラスとほぼ同一の多官能アクリル系接着剤を用いて36インチ民生用テレビに装着した。このテレビのディスプレイ画面は実施例1・2および比較例1・2ともに室内照明などの写り込み(反射像)が極めて少なくテレビを鑑賞することができ、得られたフィルムが反射防止フィルムとしての機能を有効的に作用していることを確認した。
【0045】
最後に、実施例1および実施例2に対して、温度(−10〜50℃)、湿度(10〜95%RH)及び直射日光などによる環境変化に伴う長期使用状態における反射防止特性、透過率特性、膜密着力特性、耐擦傷性、耐エタノール性および表面抵抗値の変化を確認した。試験方法は以下のとおりである。
【0046】
試験1(耐湿試験) 温度50℃、湿度90%RH条件下に48時間放置する。
試験2(熱衝撃試験)温度−40℃と71℃の雰囲気下に各々4時間放置する           サイクルを5サイクル繰り返す。
【0047】
試験3(耐光性試験)150時間紫外線を照射する。
【0048】
上記試験後における反射防止特性、透過率特性、膜密着力特性、耐擦傷性、耐エタノール性および表面抵抗値を評価したところ、表1に示すデータとほとんど変わらないものであった。これより、得られた環境変化に伴う長期使用においても帯電防止性反射防止フィルムとして機能することを確認した。
【0049】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明による帯電防止性反射防止フィルムは、電磁波シールド性の影響の少ない画像表示装置においてこのフィルムを装着することによって、画面表示に入光する光の反射が極めて少なくなり、使用者の目の疲労を防止することができる。しかも表面に傷が付きにくく、さらに手の汗や生活用品による表面汚れが付きにくく、拭き取り易い特徴をもつ。また、本発明は電磁波シールド性を持ち合わせた反射防止フィルムの成膜方法に対し、混合比の異なったITOに変更するのみにより容易に帯電防止性反射防止フィルム作成することができる。よってこのフィルムは性能と製造のための費用のバランスのとれた製品であり、これを使うことによる産業面からの経済効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の帯電防止性反射防止フィルムの構成を例示する断面図である。
【符号の説明】
1. プラスチックフィルム
2. ハードコート層
3. 高屈折導電層
4. 低屈折率層
5. 撥水防汚層

Claims (5)

  1. プラスチックフィルムの少なくとも片面に、酸化インジウムと酸化スズの混合物(以下ITOと省略)からなり、それらの混合比がそれぞれ65重量%以下及び35重量%以上からなり、かつ表面抵抗値が10Ω/□以上の導電層を含む反射防止膜層を有することを特徴とする帯電防止性反射防止フィルム。
  2. 反射防止膜層が、高屈折率の導電層と低屈折率層からなることを特徴とする請求項1記載の帯電防止性反射防止フィルム。
  3. 反射防止膜層が、エレクトロンビーム加熱法による真空蒸着法またはスパッタリング法により成膜されている請求項1または2記載の帯電防止性反射防止フィルム。
  4. プラスチックフィルムと反射防止膜層の間に、厚さ1μm〜15μmの耐擦傷性を有し、その鉛筆硬度が2H以上であるハードコート層が設けられている請求項1〜3のいずれかに記載の帯電防止性反射防止フィルム。
  5. 反射防止膜層の上に、純水接触角が90deg以上である撥水防汚層が設けられている請求項1〜4のいずれかに記載の帯電防止性反射防止フィルム。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006171648A (ja) * 2004-12-20 2006-06-29 Asahi Glass Co Ltd 反射防止体およびこれを用いたディスプレイ装置
JPWO2009119469A1 (ja) * 2008-03-24 2011-07-21 昭和電工株式会社 エポキシ化合物およびその製造方法
WO2024070686A1 (ja) * 2022-09-28 2024-04-04 日東電工株式会社 反射防止フィルム及び画像表示装置
JP7538299B1 (ja) 2023-07-11 2024-08-21 日東電工株式会社 反射防止フィルム及び画像表示装置

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