JP2004028172A - 摩擦式変速装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】駆動トルクの伝達損失を抑制しつつ、出力軸の回転速度を高回転領域から低回転領域まで無段階でスムーズに変速する。
【解決手段】入力軸1の駆動トルクを摩擦力によって出力軸9に伝達するとともに、出力軸9の回転速度を無段階に変速するように構成された摩擦式変速装置において、入力軸1から駆動リング2に伝達される駆動トルクに応じて駆動リング2の外周面を円錐状ローラ3の被駆動部14に圧接させる方向に付勢する第1付勢手段12と、円錐状ローラ3から軌道リング6に加えられる駆動トルクに応じて軌道リング6の内周面を円錐状ローラ3の頭部15に圧接させる方向に付勢する第2付勢手段33と、円錐状ローラ3から変速リング5に加えられる駆動トルクに応じて円錐状ローラ3をその軸方向に変位させて上記円錐台状部13の外周面を変速リング5の内周面に圧接させる方向に付勢する第3付勢手段28とを設けた。
【選択図】 図1
【解決手段】入力軸1の駆動トルクを摩擦力によって出力軸9に伝達するとともに、出力軸9の回転速度を無段階に変速するように構成された摩擦式変速装置において、入力軸1から駆動リング2に伝達される駆動トルクに応じて駆動リング2の外周面を円錐状ローラ3の被駆動部14に圧接させる方向に付勢する第1付勢手段12と、円錐状ローラ3から軌道リング6に加えられる駆動トルクに応じて軌道リング6の内周面を円錐状ローラ3の頭部15に圧接させる方向に付勢する第2付勢手段33と、円錐状ローラ3から変速リング5に加えられる駆動トルクに応じて円錐状ローラ3をその軸方向に変位させて上記円錐台状部13の外周面を変速リング5の内周面に圧接させる方向に付勢する第3付勢手段28とを設けた。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用または産業機械用等として使用される変速装置であって、入力軸の駆動トルクを摩擦力によって出力軸に伝達するとともに、出力軸の回転速度を無段階に変速するように構成された摩擦式変速装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば特公昭57−13221号公報に示されるように、同軸に設けられた入力軸(入力要素)および出力軸(出力要素)と、入力軸より出力軸に至る伝動系上に設けられた複数の円錐形転子と、各円錐形転子に共通に摩擦係合する第1の要素(変速リング)、第2の要素(軌道リング)および第3の要素(伝動板)と、負荷トルクに応じる大きさの推力を発生する圧接力発生装置とを備え、複数の円錐形転子が第1の要素により囲まれ、第1の要素を入力軸および出力軸0の中心線方向に移動させることにより変速が行われ、圧接力発生装置が第3の要素に加える力により円錐形転子と第1〜第3の要素との間の圧接が行われるように構成され、上記円錐形転子に対し、円錐の底面方向またはこれに近い方向をとる平面または平面に近い円錐面とされた第1の環状伝動面と、断面形が凹または凸の円弧状とされた第2の環状伝動面と、断面形が凹または凸の円弧状とされた第3の環状伝動面とを、円錐面の底円に関して円錐面の頂点とは反対の側に設け、上記第1,第2の要素を、それぞれ第1,第2の環状面に摩擦係合させ、上記第1の要素と第2,第3の要素との位置関係を、第1の要素との第2の要素との間に円錐形転子における円錐面と上記第1の環状伝動面との間の部分が楔状に進入し、かつ上記第3の要素がこの楔状に進入する力を与えるように選定した摩擦式変速装置が知られている。
【0003】
すなわち、上記公報に記載された摩擦式変速装置は、例えば図17に示すように、入力軸41と一体に回転する伝動板42からなる第3の要素の駆動トルクを、基体43に回転自在に支持された円錐形転子44に伝達することにより、この転子44に設けられた母線の頂角が鈍角をなす円錐面45を、変速リング46からなる第1の要素に摺接させるとともに、上記円錐面45の底部に設けられた第1環状伝動面47を軌道リング48からなる第2の要素に摺接させつつ、転子軸49を支点に上記転子44を自転させるとともに、上記入力軸41周りに円錐形転子44を公転させるように構成されている。そして、上記円錐形転子44の公転力を上記変速リング46に伝達することにより、この変速リング46を回転させるとともに、この変速リング46および圧接力発生装置50を介して出力軸51に駆動トルクを伝達して、この出力軸51を回転させ、かつ上記円錐形転子44の円錐面47に対する変速リング46の当接位置を変化させることにより、上記出力軸51の回転速度が無段階に調節されるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように入力軸41と一体に回転する伝動板42の駆動トルクを、摩擦力により上記円錐形転子44等を介して出力軸51に伝達して、この出力軸51を回転駆動するように構成された摩擦式変速装置は、ギアまたはベルトを介して駆動トルクを伝達する変速装置に比べて騒音が小さいとともに、上記変速リング46を入力軸41の軸方向にスライド変位させて、変速リング46の回転速度を変化させることにより、入力軸41から出力軸51に伝達される回転の変速比を無段階で調節できるという利点を有している。
【0005】
この反面、上記円錐形転子44に、母線が鈍角をなす円錐面45を形成することにより、この円錐面45の母線と、この円錐面45の底部に設けられた第1の環状伝動面47とのなす角度を鋭角に形成し、この円錐面45と第1の環状伝達面47とを、上記変速リング46と軌道リング48との間に楔状に進入させるように構成されているため、第1に、上記転子44を支持する転子軸49の設置方向が、入力軸41の設置方向に対して大きく傾斜した状態となり易く、これに起因した駆動トルクの損失および回転速度の変動が生じることが避けられないという問題がある。また、転子軸49と円錐形転子44の遠心力が作用する方向がほぼ並行であるため、変速リング46との当接面が遠心力の影響を受け易く、自ずから入力の回転速度が制限されるという問題があり、さらに、個所の各当接面に与えられる圧接力が1個所の圧接力発生装置で付与されているため、圧接力の過不足が生じ易い等の問題がある。
【0006】
すなわち、上記第1の問題に関しては、図9に示すように、上記円錐形転子44の円錐面45に接触する変速リングの接触面Ta1,Ta2が長楕円形状となるとともに、この楕円の長軸方向と、円錐の頂点Oaを中心とした円錐面45の回転方向Na1,Na2とが大きくずれているため、変速リングおよび円錐面45の所定部位が上記接触面Ta1,Ta2に到達した時点から、この接触面Ta1,Ta2から離間するまでの間に、両者の接触位置が径方向にずれて、このずれに基づいた動力のスリップにより駆動トルクの伝達損失が発生するとともに、駆動トルクの伝達率が大きく変動することに起因して出力軸51の回転速度が不安定になることが避けられない。
【0007】
特に、上記円錐面45に対する変速リング46の当接位置を、円錐面45の底面側、つまり軌道リング48の当接位置の近傍側に設定した出力軸51の低速回転領域、つまり入力軸41の回転速度を大きく減速して出力軸51に伝達する高駆動トルク領域では、上記接触面Ta1を構成する長楕円の長軸距離と短軸距離との差が大きくなって、この接触面Ta1におけるスリップが極端に大きくなるため、所望の駆動トルクが得られないとともに、駆動トルクが変動することに起因した速度変化が顕著になるという問題があった。
【0008】
また、上記公報に開示された従来技術では、入力軸41と一体に回転する伝動板42の駆動トルクを、摩擦力により出力軸51に伝達する円錐形転子44の転子軸49が、その基端部のみにおいて片持ち状態で支持されているため、円錐形転子44に作用する荷重に応じて転子軸49が傾斜状態となり易く、転子軸49が傾斜状態となることに起因した駆動トルクの伝達損失および回転速度の変動が、上記問題に加えてさらに顕著に発生していた。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、駆動トルクの伝達損失を抑制しつつ、出力軸の回転速度を高回転領域から低回転領域まで無段階でスムーズに変速することができる摩擦式変速装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、ケーシングに回転自在に支持された入力軸の駆動トルクを摩擦力によって出力軸に伝達するとともに、出力軸の回転速度を無段階に変速するように構成された摩擦式変速装置において、上記入力軸により回転駆動される駆動リングと、この駆動リングの外周部に沿って配設されて遊星回転する複数の円錐状ローラと、入力軸の軸方向への移動が規制された状態で入力軸によって回転自在に支持されたキャリアと、入力軸と同軸上に配設された変速リングと、この変速リングを上記入力軸の軸方向にスライド変位させる変速手段と、入力軸と同軸上に配設された軌道リングとを備え、上記円錐状ローラに、駆動リングの外周面が当接する被駆動部と、軌道リングの内周面が当接する頭部と、円錐台状部とを設け、この円錐台状部の外面側の母線を入力軸と平行に設置するとともに、その径方向への移動を規制した状態で、上記キャリアに円錐状ローラを回転自在に支持させ、かつ上記入力軸から駆動リングに伝達される駆動トルクに応じて駆動リングの外周面を円錐状ローラの被駆動部に圧接させる方向に付勢する第1付勢手段と、上記円錐状ローラから軌道リングに加えられる駆動トルクに応じて軌道リングの内周面を円錐状ローラの頭部に圧接させる方向に付勢する第2付勢手段と、上記円錐状ローラから変速リングに加えられる駆動トルクに応じて円錐状ローラをその軸方向に変位させて上記円錐台状部の外周面を変速リングの内周面に圧接させる方向に付勢する第3付勢手段とを備えたものである。
【0011】
上記構成によれば、入力軸の駆動トルクが摩擦力によって出力軸に伝達される際に、上記第1〜第3付勢手段から付与された付勢力に応じ、円錐状ローラの円錐台状部、頭部および被駆動部と、上記変速リング、軌道リングおよび駆動リングとが互いに圧接された状態で、入力軸から駆動リングに入力された駆動トルクが上記円錐状ローラに効率よく伝達されることにより、上記円錐状ローラが、キャリアに支持された状態で自転するとともに入力軸周りに公転し、この円錐状ローラの公転速度と自転速度との差に対応した駆動トルクが上記変速リングおよび軌道リングの一方を介して出力軸に効率よく伝達される。そして、上記変速リングを入力軸の軸方向にスライド変位させて上記円錐台状部に対する当接位置を変化させることにより、上記出力軸の回転速度を変化させることが可能となる。
【0012】
請求項2に係る発明は、上記請求項1記載の摩擦式変速装置において、第1付勢手段により、入力軸から駆動リングに伝達される駆動トルクを、駆動リングとキャリアとの間に作用するスラスト力に変換し、駆動リングを入力軸の軸方向にスライド変位させて駆動リングの外周面を円錐状ローラの被駆動部に圧接させる方向に付勢するように構成したものである。
【0013】
上記構成によれば、入力軸から駆動リングに入力された駆動トルクに対応したスラスト力が、上記駆動リングとキャリアとの間に作用し、このスラスト力に応じて駆動リングの外周面が上記円錐台状部の被駆動部に圧接されることにより、上記駆動リングの駆動トルクが円錐状ローラに対して効率よく伝達されることになる。
【0014】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2記載の摩擦式変速装置において、第2付勢手段により、円錐状ローラから軌道リングに加えられる駆動トルクを、キャリアと上記軌道リングとの間に作用するスラスト力に変換し、軌道リングを入力軸の軸方向にスライド変位させて、この軌道リングの内周面を円錐状ローラの頭部に圧接させる方向に付勢するように構成したものである。
【0015】
上記構成によれば、駆動リングから円錐状ローラを介して軌道リングに入力された駆動トルクに対応したスラスト力が上記軌道リングに作用し、このスラスト力に応じて軌道リングを入力軸の軸方向に移動させる付勢力が付与されることにより、軌道リングの内周面が円錐状ローラの頭部に圧接されるため、上記駆動リングから円錐状ローラに入力された駆動トルクに応じて円錐状ローラを自転させる際に、この円錐状ローラを確実に公転させることが可能となる。
【0016】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3の何れかに記載の摩擦式変速装置において、円錐状ローラに設けられた円錐台状部の底面に先端部が当接するように配設された推力リングを備えた第3付勢手段により、入力軸上に配設するとともに、上記円錐状ローラから変速リングに加えられる駆動トルクを、上記推力リングとキャリアとの間に作用するスラスト力に変換し、推力リングの先端部を円錐台状部の底面に圧接させる方向に付勢して、上記円錐状ローラをその軸方向にスライド変位させてその円錐台状部の外周面を変速リングの内周面に圧接させる方向に付勢するとともに、上記円錐状ローラから変速リングに入力される駆動トルクを出力軸に伝達するように構成したものである。
【0017】
上記構成によれば、駆動リングから円錐状ローラを介して変速リングに入力された駆動トルクに対応したスラスト力が、上記推力リングとキャリアとの間に作用し、このスラスト力に応じて推力リングの先端部が上記円錐台状部の底面に圧接されて円錐状ローラをその軸方向に移動させる付勢力が付与されることにより、上記円錐台状部の外周面に変速リングの内周面が強固に圧接されるため、上記駆動リングから円錐状ローラに入力された駆動トルクが上記変速リングを介して出力軸に効率よく伝達されることになる。
【0018】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜3の何れかに記載の摩擦式変速装置において、上記第2付勢手段により、円錐状ローラから軌道リングに加えられる駆動トルクを、キャリアと上記軌道リングとの間に作用するスラスト力に変換し、軌道リングを入力軸の軸方向にスライド変位させて、この軌道リングの内周面を円錐状ローラの頭部に圧接させる方向に付勢するとともに、上記円錐状ローラから軌道リングに入力される駆動トルクを出力軸に伝達するように構成したものである。
【0019】
上記構成によれば、駆動リングから円錐状ローラを介して変速リングに入力された駆動トルクに対応したスラスト力が、上記軌道リングとキャリアとの間に作用し、このスラスト力に応じて軌道リングの内周面を円錐状ローラの頭部に圧接させる方向に付勢力が付与されることにより、上記円錐状ローラの頭部に軌道リングの内周面が強固に圧接されるため、上記駆動リングから円錐状ローラに入力された駆動トルクが上記軌道リングを介して出力軸に効率よく伝達されることになる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1および図2は、本発明に係る摩擦式変速装置の実施形態を示している。この摩擦式変速装置は、エンジンまたは電動モータ等からなる駆動源により回転駆動される入力軸1と、この入力軸1により回転駆動される駆動リング2と、この駆動リング2の外周部に沿って配設された複数個(例えば三個)の円錐状ローラ3と、これらの円錐状ローラ3を回転自在に支持するキャリア4と、上記円錐状ローラ3に内周面が当接するように設置された変速リング5および軌道リング6と、変速リング5を入力軸1の軸方向にスライド変位させる変速手段7と、上記円錐状ローラ3をその軸方向にスライド変位させる方向に押圧する推力リング8と、上記変速リング5により回転駆動される出力軸9と、上記入力軸1および出力軸9を、その軸方向移動を規制した状態で回転自在に支持するケーシング10とを備えている。
【0021】
上記駆動リング2は、入力軸1にキー結合される等によって一体に連結された入力ボス11に外嵌された円盤状部材からなり、この入力ボス11に沿って入力軸1の軸方向にスライド可能に支持されている。そして、上記入力ボス11の一端部に設けられたフランジ部11aと、上記駆動リング2の基端部との間に第1付勢手段12が設けられ、この第1付勢手段12を介して入力軸1の駆動トルクが駆動リング2に伝達されることにより、この駆動リング2が回転駆動されるとともに、その駆動トルクが上記円錐状ローラ3に伝達されて、この円錐状ローラ3が回転駆動されるようになっている。
【0022】
上記円錐状ローラ3は、母線が鋭角をなす円錐台状部、つまり頂角が例えば10°〜45°程度の鋭角、好ましくは25°〜35°程度に設定された直円錐体の頂部を切除する等により形成された円錐台状部13と、この円錐台状部13の頂面と略等しい直径を有する被駆動部14と、この被駆動部14と上記円錐台状部13との間に設けられた頭部15と、上記被駆動部14の頂面および円錐台状部13の底面に連設された一対の支持軸16を有し、これらが同軸上に連設されている。
【0023】
そして、上記円錐台状部13の外面側の母線が入力軸1の軸方向と平行に設置されるとともに、上記被駆動部14が駆動リング2の外周部に当接するように上記円錐状ローラ3が設置された状態で、キャリア4に設けられたブッシュ等からなる一対のローラ支持部17に上記両支持軸16がそれぞれ挿入されることより、上記円錐状ローラ3が回転自在に支持されるとともに、その軸方向に移動可能な状態で支持されている。
【0024】
上記キャリア4は、円錐状ローラ3の被駆動部14側に配設された前面板18と、円錐状ローラ3の底面側に配設された後面板19と、上記前面板18と後面板19とを連結する連結部20とを有し、入力軸1上に設けられた軸受部21によって上記連結部20が回転自在に支持されることにより、上記前面板18と後面板19とが連結部20を介して一体に連結された状態で、上記入力軸1周りに回転自在に支持されている。また、上記キャリア4は、入力軸1上に設けられたスペーサ38、スラストベアリング39または上記入力ボス11等により、入力軸1の軸方向に移動しないように拘束されている。
【0025】
上記変速リング5は、変速手段7を介してケーシング10に回転可能に支持されたリング体からなり、その内周面が上記各円錐状ローラ3の円錐台状部13にそれぞれ当接するように内径が設置されている。そして、上記変速手段7により変速リング5が駆動されて入力軸1の軸方向にスライド変位するのに応じ、円錐状ローラ3の円錐台状部13に対する上記変速リング5の当接位置が変化するようになっている。
【0026】
上記変速手段7は、変速リング5の外周部を抱持する抱持部22と、変速リング5をスライド自在に支持するとともに、変速リング5と一体に回転する支持バー23を備えた支持部材24と、上記抱持部22に形成された係合孔に係合される係合ピン25を有する旋回レバー26と、この旋回レバー26を旋回駆動する駆動レバー27を備えた操作部とからなり、この操作部により旋回レバー26を旋回駆動することにより、上記抱持部22により保持された変速リング5を入力軸1の軸方向にスライド変位させるように構成されている。また、上記支持部材24の基端部と、出力軸9の基端部との間には、後述する第3付勢手段28が配設されている。
【0027】
上記軌道リング6は、円錐状ローラ3の各頭部15に内周面がそれぞれ当接するように内径が設置されたリング体29と、このリング体29と一体に連設された支持部材30とを有し、上記ケーシング10に連設された筒状体31により支持されている。この筒状体31には、フランジ部32が回転不能に支持されている。上記フランジ部32は、入力軸1の一端部側(出力軸9の設置部側)への移動が上記入力ボス11およびキャリア4の連結部20等により規制されるようになっている。そして、上記筒状体31の一端部側に配設されたフランジ部32と、上記支持部材30の基端部との間には、下記の第2付勢手段33が配設されている。
【0028】
第2付勢手段33は、図3および図4(a),(b)に示すように、支持部材30の基端部に設けられた放射方向に伸びる複数のV溝からなる第1カム34と、上記フランジ部32に設けられ放射方向に伸びる複数のV溝からなる第2カム35と、第1,第2カム34,35との間に配設されたボール体36と、このボール体36を保持するリテーナ37とにより構成されている。そして、上記支持部材30とフランジ部32との間に作用するねじりモーメントαが、第1,第2カム34,35の設置間隔を広げる方向のスラスト力βに変換されることにより、このスラスト力βに応じて上記軌道リング6の支持部材30をフランジ部32から離間させる方向、つまり後述するように軌道リング6の内周面を円錐状ローラ3の頭部15に圧接させる方向に付勢力が作用するようになっている。
【0029】
また、上記第1付勢手段12,第3付勢手段28は、第2付勢手段33と同様に、上記第1,第2カム34,35およびボール体36等を有している。そして、上記第1付勢手段12は、入力軸1と一体に回転する入力ボス11のフランジ部11aと、上記駆動リング2との間に作用するねじりモーメントαをスラスト力βに変換することにより、駆動リング2の外周面を円錐状ローラ3の被駆動部14に圧接させる方向に付勢するように構成されている。また、上記第3付勢手段28は、変速リング5と出力軸9との間に作用するねじりモーメントαをスラスト力βに変換することにより、上記円錐状ローラ3をその軸方向に押圧して円錐台状部13の外周面を変速リング5の内周面に圧接させる方向に付勢するように構成されている。
【0030】
上記第1付勢手段12の作用を図5に基づいて説明する。上記入力ボス11は入力軸1と一体に回転するようにキー結合されているので、上記フランジ部11aに設けられた第1付勢手段12の第1カム34は入力軸1と一体に回転する。これに対して上記駆動リング2は、第1付勢手段12から入力された駆動トルクを上記円錐状ローラ3の被駆動部14に伝達して、この円錐状ローラ3を回転駆動する際に発生する駆動抵抗に応じて停止方向の反力を受ける。このため、入力軸1と一体に回転する入力ボス11のフランジ部11aと、停止方向の反力を受ける上記駆動リング2の基端部との間に、ねじりモーメントαが発生し(図4参照)、このねじりモーメントαに応じて上記第1カム34と第2カム35とが相対回転することになる。
【0031】
上記第1,第2カム34,35が相対回転して両者の間に位置ずれが生じると、上記ボール体36を介して第1,第2カム部34,35の間隔を広げる方向に大きなスラスト力β1が発生し、このスラスト力β1が第1カム34を介して駆動リング2の基端部に伝達されることにより、駆動リング2を入力ボス11のフランジ部11aから離間させる方向のスラスト力β1が付与される。この結果、入力軸1の設置方向に対して傾斜した状態でキャリア4に支持された上記円錐状ローラ3の被駆動部14に、上記駆動リング2の外周面を圧接させる付勢力γ1が付与されることになる。
【0032】
上記スラスト力β1に対応して入力ボス11のフランジ部11aに作用するスラスト力(反力)δ1は、スペーサ38およびベアリング39等を介して入力軸1に入力されるとともに、この入力軸1に支持された上記キャリア4に伝達されるため、このキャリア4と上記駆動リング2との間において上記スラスト力β1,δ1が作用するとともに、上記キャリア4に作用するスラスト力δ1が、円錐状ローラ3の被駆動部14を駆動リング2の外周面に圧接させる方向に作用する。このため、上記両スラスト力β1,δ1は、互いにバランスしてその影響が他の部材に及ぶことが防止された状態で、上記駆動リング2の外周面と円錐状ローラ3の被駆動部14とを圧接させる方向に作用することになる。
【0033】
上記駆動リング2の外周面が円錐状ローラ3の被駆動部14に圧接されて駆動リング2の軸方向変位が規制されると、上記入力軸1とともに回転する入力ボス11と、駆動リング2とが第1付勢手段12を介して直結された状態となるため、上記入力軸1の駆動トルクに応じて駆動リング2が回転駆動されるとともに、その駆動トルクが上記円錐状ローラ3の被駆動部14に伝達されて、円錐状ローラ3が回転駆動される。
【0034】
次に、第2付勢手段33の作用を図6に基づいて説明する。上記のように駆動リング2の駆動トルクが円錐状ローラ3に伝達されて、この円錐状ローラ3が回転駆動されると、円錐状ローラ3の頭部15から軌道リング6に対して駆動トルクが加えられることにより、軌道リング6が回転しようとする。これに対応して上記軌道リング6の支持部材30と、ケーシング10に回転不能に支持された上記筒状体31のフランジ部32との間にねじりモーメントが発生するとともに、このねじりモーメントに応じて上記軌道リング6の支持部材30を上記フランジ部32から離間させる方向のスラスト力β2が作用し、このスラスト力β2に応じ、上記入力軸1の設置方向に対して傾斜した状態で設置された円錐状ローラ3の頭部15に、上記軌道リング6の内周面を圧接させる付勢力γ2が付与されることになる。
【0035】
また、上記スラスト力β2に対応して筒状体31のフランジ部32に作用するスラスト力(反力)δ2は、入力ボス等を介してキャリア4の連結部20に伝達されるため、このキャリア4と上記軌道リング6の支持部材30との間において上記スラスト力β2,δ2が作用するとともに、上記キャリア4に作用するスラスト力δ2が、円錐状ローラ3の頭部15を軌道リング6の内周面に圧接させる方向に作用する。このため、上記両スラスト力β2,δ2は、互いにバランスして、その影響が他の部材に及ぶことが防止された状態で、上記円錐状ローラ3の頭部15と軌道リング6の内周面とを圧接させる方向に作用することになる。
【0036】
上記軌道リング6の内周面が円錐状ローラ3の頭部15に圧接されて軌道リング6の軸方向変位が規制されると、ケーシング10に対して回転不能に支持された筒状体31と、上記軌道リング6とが第2付勢手段33を介して直結された状態となることにより、上記軌道リング6の回転が規制される。この結果、上記円錐状ローラ3の自転力が軌道リング6により公転力に変換されて円錐状ローラ3が公転する。
【0037】
図7は、上記変速リング5を支持する支持部材24の基端部と、出力軸9の基端部9bとの間に配設された第3付勢手段28の作用を示している。上記円錐状ローラ3の回転に応じ、この円錐状ローラ3の駆動トルクが上記変速リング5から支持バー23を介して支持部材24に加えられると、上記駆動トルクに応じて回転しようとする上記支持部材24と、外部負荷等に応じて静止状態に止まろうとする上記出力軸9との間にねじりモーメントが発生し、このねじりモーメントに応じて上記支持部材24を出力軸9から離間させる方向のスラスト力β3が作用する。
【0038】
上記支持部材24と円錐状ローラ3との間に配設された推力リング8が、上記スラスト力β3に応じて出力軸9から離間する方向に押圧されることにより、上記推力リング8の先端部が円錐台状部13の底面に圧接される。この結果、上記ローラ支持部17により径方向に移動不能な状態でキャリア4に支持された円錐状ローラ3を、その軸方向に沿ってキャリア4の前面板18側に押圧する付勢力γ3が上記推力リング8から付与される。
【0039】
上記スラスト力β3に対応して出力軸9の基端部9bに作用するスラスト力(反力)δ3は、入力軸1を介して上記キャリア4に伝達され、このキャリア4と上記推力リング8との間において上記両スラスト力β3,γ3が作用するとともに、上記キャリア4に作用するスラスト力δ3が、円錐台状部13の底面を推力リング8の先端部に圧接させる方向に作用する。このため、上記両スラスト力β3,δ3は、互いにバランスして、その影響が他の部材に及ぶことが防止された状態で、円錐状ローラ3の円錐状台部13と変速リング5の内周面とを圧接させる方向に作用し、円錐状ローラ3の駆動トルクが上記変速リング5に確実に伝達されることになる。
【0040】
また、上記推力リング8の先端部が円錐状台部13の底面に圧接されて上記支持部材24の軸方向変位が規制されると、この支持部材24と上記出力軸9とが第3付勢手段28を介して直結された状態となって、上記円錐状ローラ3から変速リング5に入力される駆動トルクが上記第3付勢手段28を介して出力軸9に伝達されることにより、この出力軸9が回転駆動される。
【0041】
上記円錐状ローラ3の被駆動部14および頭部15に対する駆動リング2および軌道リング6の当接面は、円錐状ローラ3の軸と平行に形成されているため、上記第3付勢部材28から円錐状ローラ3に入力される付勢力γ3に応じて円錐状ローラ3がその軸方向にスライド変位した場合においても、上記被駆動部14および頭部15と、駆動リング2および軌道リング6との当接状態に変化が生じることはない。また、上記円錐状ローラ3は、ブッシュ等からなるローラ支持部17により径方向に移動不能な状態でキャリア4に支持されるとともに、上記第3付勢部材28から入力される付勢力γ3に応じ、上記円錐状ローラ3がその軸方向に移動することが許容されるようになっている。
【0042】
上記構成において、入力軸1により駆動リング2が回転駆動されると、この駆動リング2の外周部が上記円錐状ローラ3の被駆動部14に当接しているために、この当接部に作用する摩擦力に応じて円錐状ローラ3が自転しようとする。この円錐状ローラ3の頭部15には、第2付勢手段33により回転が規制された状態でケーシング10に支持された上記軌道リング6の内周面が当接しているため、この当接部に作用する摩擦力に対応して上記駆動リング2から円錐状ローラ3に入力される駆動トルクに応じ、円錐状ローラ3が変速リング5および軌道リング6の内周面に沿って自転しつつ公転する。
【0043】
そして、上記円錐状ローラ3の駆動トルクが摩擦力を介して変速リング5に伝達されることにより、この変速リング5が回転駆動されるとともに、その駆動トルクが上記第3付勢手段28を介して出力軸9に伝達され、この出力軸9が回転駆動される。上記円錐状ローラ3の周速は、変速手段7により変速リング5を、図2に示す低速位置から矢印Aに示すように、円錐台状部13の底面部側に移動させるのに応じて速くなり、これに対応して上記円錐台状部13に当接した変速リング5の回転速度が速くなるため、出力軸9が高速で回転する。
【0044】
一方、上記変速手段7により、変速リング5を円錐台状部13の頂面側に移動させると、円錐状ローラ3の周速が次第に遅くなるとともに、これに対応して上記変速リング5の回転速度が遅くなるため、出力軸9が低速で回転する。そして、上記変速リング5が円錐台状部13の頂面部側に移動して、上記円錐状ローラ3の円錐台状部13における公転周速と自転周速とが等しくなると、この頭部15が軌道リング6の内周面に沿って転動するだけの状態となって変速リング5および出力軸9の回転速度が0になる。
【0045】
上記のように入力軸1から駆動リング2に伝達される駆動トルクに応じて駆動リング2の外周面を円錐状ローラ3の被駆動部14に圧接させる方向に付勢する第1付勢手段12と、円錐状ローラ3から軌道リング6に伝達される駆動トルクに応じて軌道リング6の内周面を円錐状ローラ3の頭部15に圧接させる方向に付勢する第2付勢手段33と、円錐状ローラ3から変速リング5に伝達される駆動トルクに応じて円錐状ローラ3をその軸方向に変位させて上記円錐台状部13の外周面を変速リング5の内周面に圧接させる方向に付勢する第3付勢手段28とを設けたため、駆動トルクの伝達損失を抑制して出力軸9を効率よく回転駆動することができるとともに、上記出力軸9の回転速度を高回転領域から低回転領域まで無段階でスムーズに変速することができる。
【0046】
すなわち、図5に示すように、上記入力軸1から駆動リング2に伝達される駆動トルクに応じ、上記第1付勢手段12によって駆動リング2の外周面を円錐状ローラ3の被駆動部14に圧接させる方向に付勢するように構成したため、上記駆動リング2に入力される駆動トルクに対応した圧接力で、この駆動リング2の外周面を円錐状ローラ3の被駆動部14に対して圧接させ、この圧接部に作用する摩擦力に応じて上記駆動リング2の駆動トルクを円錐状ローラ3に効率よく伝達することができる。したがって、上記駆動トルクの伝達部におけるスリップの発生を防止して円錐状ローラ3をスムーズに回転駆動することができる。
【0047】
また、図6に示すように、上記円錐状ローラ3から軌道リング6に加えられる駆動トルクに応じ、上記第2付勢手段33により軌道リング6の内周面を円錐状ローラ3の頭部15に圧接せる方向に付勢するように構成したため、上記軌道リング6に加えられた駆動トルクに対応した圧接力で、軌道リング6の内周面を円錐状ローラ3の頭部15に圧接させることにより、上記駆動リング2により円錐状ローラ3が回転駆動される際に、上記圧接部に作用する摩擦力に応じて円錐状ローラ3を効率よく公転させることができる。
【0048】
さらに、図7に示すように、上記円錐状ローラ3から変速リング5に加えられる駆動トルクに応じ、上記第3付勢手段28により円錐状ローラ3の円錐台状部13を変速リング5の内周面に圧接せる方向に付勢するように構成したため、上記変速リング5に加えられた駆動トルクに対応した圧接力で、円錐台状部13の外周面を変速リング5の内周面に圧接させることにより、上記駆動リング2から円錐状ローラ3に入力された駆動トルクを上記変速リング5に効率よく伝達することができるとともに、この変速リング5に伝達された駆動トルクを上記出力軸9に確実に伝達して、この出力軸9を効率よく回転駆動することができる。
【0049】
そして、上記のように駆動リング2、軌道リング6および円錐状ローラ3を、第1〜第3付勢手段12,33,28によりそれぞれ個別に付勢するとともに、この付勢力γ1〜γ3を生じさせる上記スラスト力β1〜β3と、その反力δ1〜δ3とをそれぞれ個別にバランスさせるように構成したため、上記各付勢手段12,33,28により付与される付勢力γ1〜γ3の影響が他の部材に及ぶのを防止することができる。したがって、簡単かつコンパクトな構成において、上記駆動リング2、変速リング5および軌道リング6が互いに干渉するのを防止しつつ、上記摩擦力により、駆動リング2の駆動トルクを、上記円錐状ローラ3から変速リング5に効率よく伝達して、出力軸9を回転駆動することができるとともに、上記変速手段7により変速リング5を入力軸1方向にスライド変位させて上記円錐台状部13に対する変速リング5の当接位置を変化させることにより、上記摩擦式変速装置の変速比を無段階に変化させて上記出力軸9の回転速度を調節することができる。
【0050】
さらに、上記のように一対のローラ支持部17により円錐状ローラ3の両端部をその径方向に移動不能な状態でキャリア4に支持するように構成したため、第1〜第3付勢手段12,33,28の付勢力に応じ、円錐状ローラ3が、その径方向に移動するという事態の発生を防止することができる。しかも、図17に示すように円錐形転子44の転子軸49を片持ち支持してなる従来装置に比べ、上記円錐状ローラ3の支持軸の変形を効果的に防止できるため、上記円錐状ローラ3が径方向に移動したり、支持軸が変形したりすることに起因した駆動トルクの伝達損失および回転速度の変動が発生するのを効果的に防止することができる。
【0051】
また、上記円錐台状部13の母線がなす角を鋭角に設定するとともに、この外面側の母線を入力軸1と平行に設置したため、上記円錐状ローラ3の軸線方向を、入力軸1の軸線方向に近付けることが可能となり、図8に示すように、上記円錐台状部13の外面に対する上記変速リング5の当接面T1〜T3が真円に近い楕円形状となるとともに、この楕円の長軸方向と、円錐の頂点Oを中心とした円錐台状部13の回転方向N1〜N3とが略一致することになる。このため、上記変速リング5および円錐台状部13の所定部位が上記当接面T1〜T3に到達した時点から、この当接面T1〜T3から離間するまでの間に生じる接触位置のずれ量を、図9に示す従来例に比べて極めて小さくすることができ、この接触位置のずれに基づく動力のスリップを効果的に抑制することができる。
【0052】
しかも、上記円錐状ローラ3の両端部に設けられた一対の支持軸16がキャリア4に設けられたローラ支持部17によりそれぞれ支持されているため、円錐台状部13の頂角鋭角に形成されていることと相まって、円錐状ローラ3の公転時に作用する遠心力が、円錐状台部13と変速リング5との当接力に影響を与えるという事態の発生を効果的に防止することができる。
【0053】
したがって、摩擦式変速装置の減速比が大きくなった出力軸9の低速回転領域で、上記駆動トルクの伝達損失が大きくなったり、駆動トルクの伝達率が大きく変動したりするのを効果的に防止して、出力軸9に高駆動トルクを生じさせることができるとともに、上記駆動トルクの伝達率が変動することに起因して出力軸9の回転速度が変化するのを効果的に防止できるという利点がある。
【0054】
上記実施形態のように構成された本発明に係る摩擦変速装置と、図17に示す従来例に係る摩擦変速装置とにおいて、変速比を0から1に変化させた場合において、入力軸から出力軸に伝達される駆動トルクの伝達比(出力トルク/入力トルク)と、トルクの伝達効率とを比較する実験を行ったところ、図10および図11に示すようなデータが得られた。このデータから、本発明例では、変速比を0.1以下に低下させた場合においても、出力軸に伝達される駆動トルクの伝達比の低下はみられなかった。これら対して従来例では、変速比を0.1以下に低下させた場合に、出力軸に伝達される駆動トルクの伝達比が顕著に低下し、必要な駆動トルクが得られないことが確認された。また、本発明例では、低速域から高速域までの広い範囲に亘って駆動トルクの伝達効率を高い値に維持できるのに対し、従来例では、本願発明例に比べて駆動トルクの伝達効率が低くなることが確認された。
【0055】
なお、上記実施形態では、軌道リング6の内周面が当接する円錐状ローラ3の頭部15の径を、円錐台状部13の頂面部よりもやや大きい値に設定し、変速リング5を円錐状ローラ3の頂面部側に移動させることにより低速側に変速するように構成した例について説明したが、図12に示すように、円錐状ローラ3の頭部15の径を、円錐台状部13の底面部に対応した大きな値に設定した構造としてもよい。この構成によれば、変速リング5を図12に示すように円錐台状部13の底面部側に位置させることにより、円錐状ローラ3の公転周速と自転周速とが等しくなって出力軸9の回転速度が0となり、変速手段7により、図12に示す低速位置から変速リング5を、矢印Bに示すように、円錐台状部13の頂面部側に移動させるのに応じて円錐台状部13の公転速度が速くなり、これに対応して上記円錐台状部13に当接した変速リング5の回転速度が速くなるため、出力軸9を入力軸1と逆方向に高速で回転させることができる。
【0056】
また、上記実施形態では、図1および図12に示すように、外部の駆動源から入力軸1に対して駆動力を入力する入力部1aと、出力軸9に伝達された駆動力を外部の被駆動部に出力する出力部9aとを同方向に設けた例について説明したが、図13および図14に示すように、外部の駆動源から入力軸1に対して駆動力を入力する入力部1aをケーシング10の一端部側に配設するとともに、出力軸9に伝達された駆動力を外部の被駆動部に出力する出力部9aをケーシング10の他端部側に配設した構造としてもよい。
【0057】
さらに上記第3付勢手段28により軌道リング6と出力軸9とが一体に回転するように連結してなる上記実施形態に代え、図15および図16に示すように、軌道リング6の支持部材30を、第2付勢部材33を介して出力軸9に連結して、これらを一体に回転させるとともに、上記変速リング5を支持する支持部材24を、第3付勢部材28および筒状体31等を介して変速装置のケーシング10に回転不能に支持させた構造としてもよい。
【0058】
上記構成によれば、入力軸1から駆動リング2に入力された駆動トルクが上記円錐状ローラ3に伝達されることにより、この円錐状ローラ3の円錐台状部13および頭部15,15aが、上記変速リング5および軌道リング6の内周面に当接しつつ、円錐状ローラ3が自転するとともに、入力軸1周りに公転することにより、この円錐状ローラ3の公転速度と自転速度との差に応じた駆動トルクが、上記軌道リング6から支持部材30を介して出力軸9に伝達されることになる。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、ケーシングに回転自在に支持された入力軸の駆動トルクを摩擦力によって出力軸に伝達するとともに、出力軸の回転速度を無段階に変速するように構成された摩擦式変速装置において、上記入力軸により回転駆動される駆動リングと、この駆動リングの外周部に沿って配設されて遊星回転する複数の円錐状ローラと、入力軸の軸方向への移動が規制された状態で入力軸によって回転自在に支持されたキャリアと、入力軸と同軸上に配設された変速リングと、この変速リングを上記入力軸の軸方向にスライド変位させる変速手段と、入力軸と同軸上に配設された軌道リングとを備え、上記円錐状ローラに、駆動リングの外周面が当接する被駆動部と、軌道リングの内周面が当接する頭部と、円錐台状部とを設け、この円錐台状部の外面側の母線を入力軸と平行に設置するとともに、その径方向への移動を規制した状態で、上記キャリアに円錐状ローラを回転自在に支持させ、かつ入力軸から駆動リングに伝達される駆動トルクに応じて駆動リングの外周面を円錐状ローラの被駆動部に圧接させる方向に付勢する第1付勢手段と、円錐状ローラから軌道リングに加えられる駆動トルクに応じて軌道リングの内周面を円錐状ローラの頭部に圧接させる方向に付勢する第2付勢手段と、円錐状ローラから変速リングに加えられる駆動トルクに応じて円錐状ローラをその軸方向に変位させて上記円錐台状部の外周面を変速リングの内周面に圧接させる方向に付勢する第3付勢手段とを設けたため、上記駆動リング、変速リングおよび軌道リングが互いに干渉するのを防止しつつ、駆動リングの駆動トルクを、上記円錐状ローラから軌道リングに効率よく伝達して、出力軸をスムーズに回転駆動することができるとともに、上記変速手段により変速リングを入力軸方向にスライド変位させることにより、上記摩擦式変速装置の変速比を無段階に変化させて上記出力軸の回転速度を調節することができる。また、摩擦式変速装置の減速比が大きくなった出力軸の低速回転領域で、上記駆動トルクの伝達損失が大きなくったり、駆動トルクの伝達率が大きく変動したりするのを効果的に防止して、出力軸に高駆動トルクを生じさせることができるとともに、上記駆動トルクの伝達率の変動に起因して出力軸の回転速度が変化するのを効果的に防止できる等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る摩擦式変速装置の実施形態を示す断面図である。
【図2】上記変速装置の要部の構成を示す断面図である。
【図3】付勢手段の具体的構成を示す斜視図である。
【図4】付勢手段の作用を示す説明図である。
【図5】駆動トルクの伝達状態を示す説明図である。
【図6】駆動トルクの伝達状態を示す説明図である。
【図7】駆動トルクの伝達状態を示す説明図である。
【図8】本発明に係る摩擦式変速装置の当接面の状態を示す説明図である。
【図9】従来例に係る摩擦式変速装置の当接面の状態を示す説明図である。
【図10】変速比と駆動トルクの伝達比との対応関係を示すグラフである。
【図11】変速比と駆動トルクの伝達効率との対応関係を示すグラフである。
【図12】本発明に係る摩擦式変速装置の別の実施形態を示す説明図である。
【図13】本発明に係る摩擦式変速装置のさらに別の実施形態を示す断面図である。
【図14】本発明に係る摩擦式変速装置のさらに別の実施形態を示す断面図である。
【図15】本発明に係る摩擦式変速装置のさらに別の実施形態を示す断面図である。
【図16】本発明に係る摩擦式変速装置のさらに別の実施形態を示す断面図である。
【図17】摩擦式変速装置に従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 入力軸
2 駆動リング
3 円錐状ローラ
4 キャリア
5 変速リング
6 軌道リング
7 変速手段
8 推力リング
9 出力軸
10 ケーシング
12 第1付勢手段
13 円錐台状部
14 被駆動部
15 頭部
17 ローラ支持部
28 第3付勢手段
33 第2付勢手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用または産業機械用等として使用される変速装置であって、入力軸の駆動トルクを摩擦力によって出力軸に伝達するとともに、出力軸の回転速度を無段階に変速するように構成された摩擦式変速装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば特公昭57−13221号公報に示されるように、同軸に設けられた入力軸(入力要素)および出力軸(出力要素)と、入力軸より出力軸に至る伝動系上に設けられた複数の円錐形転子と、各円錐形転子に共通に摩擦係合する第1の要素(変速リング)、第2の要素(軌道リング)および第3の要素(伝動板)と、負荷トルクに応じる大きさの推力を発生する圧接力発生装置とを備え、複数の円錐形転子が第1の要素により囲まれ、第1の要素を入力軸および出力軸0の中心線方向に移動させることにより変速が行われ、圧接力発生装置が第3の要素に加える力により円錐形転子と第1〜第3の要素との間の圧接が行われるように構成され、上記円錐形転子に対し、円錐の底面方向またはこれに近い方向をとる平面または平面に近い円錐面とされた第1の環状伝動面と、断面形が凹または凸の円弧状とされた第2の環状伝動面と、断面形が凹または凸の円弧状とされた第3の環状伝動面とを、円錐面の底円に関して円錐面の頂点とは反対の側に設け、上記第1,第2の要素を、それぞれ第1,第2の環状面に摩擦係合させ、上記第1の要素と第2,第3の要素との位置関係を、第1の要素との第2の要素との間に円錐形転子における円錐面と上記第1の環状伝動面との間の部分が楔状に進入し、かつ上記第3の要素がこの楔状に進入する力を与えるように選定した摩擦式変速装置が知られている。
【0003】
すなわち、上記公報に記載された摩擦式変速装置は、例えば図17に示すように、入力軸41と一体に回転する伝動板42からなる第3の要素の駆動トルクを、基体43に回転自在に支持された円錐形転子44に伝達することにより、この転子44に設けられた母線の頂角が鈍角をなす円錐面45を、変速リング46からなる第1の要素に摺接させるとともに、上記円錐面45の底部に設けられた第1環状伝動面47を軌道リング48からなる第2の要素に摺接させつつ、転子軸49を支点に上記転子44を自転させるとともに、上記入力軸41周りに円錐形転子44を公転させるように構成されている。そして、上記円錐形転子44の公転力を上記変速リング46に伝達することにより、この変速リング46を回転させるとともに、この変速リング46および圧接力発生装置50を介して出力軸51に駆動トルクを伝達して、この出力軸51を回転させ、かつ上記円錐形転子44の円錐面47に対する変速リング46の当接位置を変化させることにより、上記出力軸51の回転速度が無段階に調節されるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように入力軸41と一体に回転する伝動板42の駆動トルクを、摩擦力により上記円錐形転子44等を介して出力軸51に伝達して、この出力軸51を回転駆動するように構成された摩擦式変速装置は、ギアまたはベルトを介して駆動トルクを伝達する変速装置に比べて騒音が小さいとともに、上記変速リング46を入力軸41の軸方向にスライド変位させて、変速リング46の回転速度を変化させることにより、入力軸41から出力軸51に伝達される回転の変速比を無段階で調節できるという利点を有している。
【0005】
この反面、上記円錐形転子44に、母線が鈍角をなす円錐面45を形成することにより、この円錐面45の母線と、この円錐面45の底部に設けられた第1の環状伝動面47とのなす角度を鋭角に形成し、この円錐面45と第1の環状伝達面47とを、上記変速リング46と軌道リング48との間に楔状に進入させるように構成されているため、第1に、上記転子44を支持する転子軸49の設置方向が、入力軸41の設置方向に対して大きく傾斜した状態となり易く、これに起因した駆動トルクの損失および回転速度の変動が生じることが避けられないという問題がある。また、転子軸49と円錐形転子44の遠心力が作用する方向がほぼ並行であるため、変速リング46との当接面が遠心力の影響を受け易く、自ずから入力の回転速度が制限されるという問題があり、さらに、個所の各当接面に与えられる圧接力が1個所の圧接力発生装置で付与されているため、圧接力の過不足が生じ易い等の問題がある。
【0006】
すなわち、上記第1の問題に関しては、図9に示すように、上記円錐形転子44の円錐面45に接触する変速リングの接触面Ta1,Ta2が長楕円形状となるとともに、この楕円の長軸方向と、円錐の頂点Oaを中心とした円錐面45の回転方向Na1,Na2とが大きくずれているため、変速リングおよび円錐面45の所定部位が上記接触面Ta1,Ta2に到達した時点から、この接触面Ta1,Ta2から離間するまでの間に、両者の接触位置が径方向にずれて、このずれに基づいた動力のスリップにより駆動トルクの伝達損失が発生するとともに、駆動トルクの伝達率が大きく変動することに起因して出力軸51の回転速度が不安定になることが避けられない。
【0007】
特に、上記円錐面45に対する変速リング46の当接位置を、円錐面45の底面側、つまり軌道リング48の当接位置の近傍側に設定した出力軸51の低速回転領域、つまり入力軸41の回転速度を大きく減速して出力軸51に伝達する高駆動トルク領域では、上記接触面Ta1を構成する長楕円の長軸距離と短軸距離との差が大きくなって、この接触面Ta1におけるスリップが極端に大きくなるため、所望の駆動トルクが得られないとともに、駆動トルクが変動することに起因した速度変化が顕著になるという問題があった。
【0008】
また、上記公報に開示された従来技術では、入力軸41と一体に回転する伝動板42の駆動トルクを、摩擦力により出力軸51に伝達する円錐形転子44の転子軸49が、その基端部のみにおいて片持ち状態で支持されているため、円錐形転子44に作用する荷重に応じて転子軸49が傾斜状態となり易く、転子軸49が傾斜状態となることに起因した駆動トルクの伝達損失および回転速度の変動が、上記問題に加えてさらに顕著に発生していた。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、駆動トルクの伝達損失を抑制しつつ、出力軸の回転速度を高回転領域から低回転領域まで無段階でスムーズに変速することができる摩擦式変速装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、ケーシングに回転自在に支持された入力軸の駆動トルクを摩擦力によって出力軸に伝達するとともに、出力軸の回転速度を無段階に変速するように構成された摩擦式変速装置において、上記入力軸により回転駆動される駆動リングと、この駆動リングの外周部に沿って配設されて遊星回転する複数の円錐状ローラと、入力軸の軸方向への移動が規制された状態で入力軸によって回転自在に支持されたキャリアと、入力軸と同軸上に配設された変速リングと、この変速リングを上記入力軸の軸方向にスライド変位させる変速手段と、入力軸と同軸上に配設された軌道リングとを備え、上記円錐状ローラに、駆動リングの外周面が当接する被駆動部と、軌道リングの内周面が当接する頭部と、円錐台状部とを設け、この円錐台状部の外面側の母線を入力軸と平行に設置するとともに、その径方向への移動を規制した状態で、上記キャリアに円錐状ローラを回転自在に支持させ、かつ上記入力軸から駆動リングに伝達される駆動トルクに応じて駆動リングの外周面を円錐状ローラの被駆動部に圧接させる方向に付勢する第1付勢手段と、上記円錐状ローラから軌道リングに加えられる駆動トルクに応じて軌道リングの内周面を円錐状ローラの頭部に圧接させる方向に付勢する第2付勢手段と、上記円錐状ローラから変速リングに加えられる駆動トルクに応じて円錐状ローラをその軸方向に変位させて上記円錐台状部の外周面を変速リングの内周面に圧接させる方向に付勢する第3付勢手段とを備えたものである。
【0011】
上記構成によれば、入力軸の駆動トルクが摩擦力によって出力軸に伝達される際に、上記第1〜第3付勢手段から付与された付勢力に応じ、円錐状ローラの円錐台状部、頭部および被駆動部と、上記変速リング、軌道リングおよび駆動リングとが互いに圧接された状態で、入力軸から駆動リングに入力された駆動トルクが上記円錐状ローラに効率よく伝達されることにより、上記円錐状ローラが、キャリアに支持された状態で自転するとともに入力軸周りに公転し、この円錐状ローラの公転速度と自転速度との差に対応した駆動トルクが上記変速リングおよび軌道リングの一方を介して出力軸に効率よく伝達される。そして、上記変速リングを入力軸の軸方向にスライド変位させて上記円錐台状部に対する当接位置を変化させることにより、上記出力軸の回転速度を変化させることが可能となる。
【0012】
請求項2に係る発明は、上記請求項1記載の摩擦式変速装置において、第1付勢手段により、入力軸から駆動リングに伝達される駆動トルクを、駆動リングとキャリアとの間に作用するスラスト力に変換し、駆動リングを入力軸の軸方向にスライド変位させて駆動リングの外周面を円錐状ローラの被駆動部に圧接させる方向に付勢するように構成したものである。
【0013】
上記構成によれば、入力軸から駆動リングに入力された駆動トルクに対応したスラスト力が、上記駆動リングとキャリアとの間に作用し、このスラスト力に応じて駆動リングの外周面が上記円錐台状部の被駆動部に圧接されることにより、上記駆動リングの駆動トルクが円錐状ローラに対して効率よく伝達されることになる。
【0014】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2記載の摩擦式変速装置において、第2付勢手段により、円錐状ローラから軌道リングに加えられる駆動トルクを、キャリアと上記軌道リングとの間に作用するスラスト力に変換し、軌道リングを入力軸の軸方向にスライド変位させて、この軌道リングの内周面を円錐状ローラの頭部に圧接させる方向に付勢するように構成したものである。
【0015】
上記構成によれば、駆動リングから円錐状ローラを介して軌道リングに入力された駆動トルクに対応したスラスト力が上記軌道リングに作用し、このスラスト力に応じて軌道リングを入力軸の軸方向に移動させる付勢力が付与されることにより、軌道リングの内周面が円錐状ローラの頭部に圧接されるため、上記駆動リングから円錐状ローラに入力された駆動トルクに応じて円錐状ローラを自転させる際に、この円錐状ローラを確実に公転させることが可能となる。
【0016】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3の何れかに記載の摩擦式変速装置において、円錐状ローラに設けられた円錐台状部の底面に先端部が当接するように配設された推力リングを備えた第3付勢手段により、入力軸上に配設するとともに、上記円錐状ローラから変速リングに加えられる駆動トルクを、上記推力リングとキャリアとの間に作用するスラスト力に変換し、推力リングの先端部を円錐台状部の底面に圧接させる方向に付勢して、上記円錐状ローラをその軸方向にスライド変位させてその円錐台状部の外周面を変速リングの内周面に圧接させる方向に付勢するとともに、上記円錐状ローラから変速リングに入力される駆動トルクを出力軸に伝達するように構成したものである。
【0017】
上記構成によれば、駆動リングから円錐状ローラを介して変速リングに入力された駆動トルクに対応したスラスト力が、上記推力リングとキャリアとの間に作用し、このスラスト力に応じて推力リングの先端部が上記円錐台状部の底面に圧接されて円錐状ローラをその軸方向に移動させる付勢力が付与されることにより、上記円錐台状部の外周面に変速リングの内周面が強固に圧接されるため、上記駆動リングから円錐状ローラに入力された駆動トルクが上記変速リングを介して出力軸に効率よく伝達されることになる。
【0018】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜3の何れかに記載の摩擦式変速装置において、上記第2付勢手段により、円錐状ローラから軌道リングに加えられる駆動トルクを、キャリアと上記軌道リングとの間に作用するスラスト力に変換し、軌道リングを入力軸の軸方向にスライド変位させて、この軌道リングの内周面を円錐状ローラの頭部に圧接させる方向に付勢するとともに、上記円錐状ローラから軌道リングに入力される駆動トルクを出力軸に伝達するように構成したものである。
【0019】
上記構成によれば、駆動リングから円錐状ローラを介して変速リングに入力された駆動トルクに対応したスラスト力が、上記軌道リングとキャリアとの間に作用し、このスラスト力に応じて軌道リングの内周面を円錐状ローラの頭部に圧接させる方向に付勢力が付与されることにより、上記円錐状ローラの頭部に軌道リングの内周面が強固に圧接されるため、上記駆動リングから円錐状ローラに入力された駆動トルクが上記軌道リングを介して出力軸に効率よく伝達されることになる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1および図2は、本発明に係る摩擦式変速装置の実施形態を示している。この摩擦式変速装置は、エンジンまたは電動モータ等からなる駆動源により回転駆動される入力軸1と、この入力軸1により回転駆動される駆動リング2と、この駆動リング2の外周部に沿って配設された複数個(例えば三個)の円錐状ローラ3と、これらの円錐状ローラ3を回転自在に支持するキャリア4と、上記円錐状ローラ3に内周面が当接するように設置された変速リング5および軌道リング6と、変速リング5を入力軸1の軸方向にスライド変位させる変速手段7と、上記円錐状ローラ3をその軸方向にスライド変位させる方向に押圧する推力リング8と、上記変速リング5により回転駆動される出力軸9と、上記入力軸1および出力軸9を、その軸方向移動を規制した状態で回転自在に支持するケーシング10とを備えている。
【0021】
上記駆動リング2は、入力軸1にキー結合される等によって一体に連結された入力ボス11に外嵌された円盤状部材からなり、この入力ボス11に沿って入力軸1の軸方向にスライド可能に支持されている。そして、上記入力ボス11の一端部に設けられたフランジ部11aと、上記駆動リング2の基端部との間に第1付勢手段12が設けられ、この第1付勢手段12を介して入力軸1の駆動トルクが駆動リング2に伝達されることにより、この駆動リング2が回転駆動されるとともに、その駆動トルクが上記円錐状ローラ3に伝達されて、この円錐状ローラ3が回転駆動されるようになっている。
【0022】
上記円錐状ローラ3は、母線が鋭角をなす円錐台状部、つまり頂角が例えば10°〜45°程度の鋭角、好ましくは25°〜35°程度に設定された直円錐体の頂部を切除する等により形成された円錐台状部13と、この円錐台状部13の頂面と略等しい直径を有する被駆動部14と、この被駆動部14と上記円錐台状部13との間に設けられた頭部15と、上記被駆動部14の頂面および円錐台状部13の底面に連設された一対の支持軸16を有し、これらが同軸上に連設されている。
【0023】
そして、上記円錐台状部13の外面側の母線が入力軸1の軸方向と平行に設置されるとともに、上記被駆動部14が駆動リング2の外周部に当接するように上記円錐状ローラ3が設置された状態で、キャリア4に設けられたブッシュ等からなる一対のローラ支持部17に上記両支持軸16がそれぞれ挿入されることより、上記円錐状ローラ3が回転自在に支持されるとともに、その軸方向に移動可能な状態で支持されている。
【0024】
上記キャリア4は、円錐状ローラ3の被駆動部14側に配設された前面板18と、円錐状ローラ3の底面側に配設された後面板19と、上記前面板18と後面板19とを連結する連結部20とを有し、入力軸1上に設けられた軸受部21によって上記連結部20が回転自在に支持されることにより、上記前面板18と後面板19とが連結部20を介して一体に連結された状態で、上記入力軸1周りに回転自在に支持されている。また、上記キャリア4は、入力軸1上に設けられたスペーサ38、スラストベアリング39または上記入力ボス11等により、入力軸1の軸方向に移動しないように拘束されている。
【0025】
上記変速リング5は、変速手段7を介してケーシング10に回転可能に支持されたリング体からなり、その内周面が上記各円錐状ローラ3の円錐台状部13にそれぞれ当接するように内径が設置されている。そして、上記変速手段7により変速リング5が駆動されて入力軸1の軸方向にスライド変位するのに応じ、円錐状ローラ3の円錐台状部13に対する上記変速リング5の当接位置が変化するようになっている。
【0026】
上記変速手段7は、変速リング5の外周部を抱持する抱持部22と、変速リング5をスライド自在に支持するとともに、変速リング5と一体に回転する支持バー23を備えた支持部材24と、上記抱持部22に形成された係合孔に係合される係合ピン25を有する旋回レバー26と、この旋回レバー26を旋回駆動する駆動レバー27を備えた操作部とからなり、この操作部により旋回レバー26を旋回駆動することにより、上記抱持部22により保持された変速リング5を入力軸1の軸方向にスライド変位させるように構成されている。また、上記支持部材24の基端部と、出力軸9の基端部との間には、後述する第3付勢手段28が配設されている。
【0027】
上記軌道リング6は、円錐状ローラ3の各頭部15に内周面がそれぞれ当接するように内径が設置されたリング体29と、このリング体29と一体に連設された支持部材30とを有し、上記ケーシング10に連設された筒状体31により支持されている。この筒状体31には、フランジ部32が回転不能に支持されている。上記フランジ部32は、入力軸1の一端部側(出力軸9の設置部側)への移動が上記入力ボス11およびキャリア4の連結部20等により規制されるようになっている。そして、上記筒状体31の一端部側に配設されたフランジ部32と、上記支持部材30の基端部との間には、下記の第2付勢手段33が配設されている。
【0028】
第2付勢手段33は、図3および図4(a),(b)に示すように、支持部材30の基端部に設けられた放射方向に伸びる複数のV溝からなる第1カム34と、上記フランジ部32に設けられ放射方向に伸びる複数のV溝からなる第2カム35と、第1,第2カム34,35との間に配設されたボール体36と、このボール体36を保持するリテーナ37とにより構成されている。そして、上記支持部材30とフランジ部32との間に作用するねじりモーメントαが、第1,第2カム34,35の設置間隔を広げる方向のスラスト力βに変換されることにより、このスラスト力βに応じて上記軌道リング6の支持部材30をフランジ部32から離間させる方向、つまり後述するように軌道リング6の内周面を円錐状ローラ3の頭部15に圧接させる方向に付勢力が作用するようになっている。
【0029】
また、上記第1付勢手段12,第3付勢手段28は、第2付勢手段33と同様に、上記第1,第2カム34,35およびボール体36等を有している。そして、上記第1付勢手段12は、入力軸1と一体に回転する入力ボス11のフランジ部11aと、上記駆動リング2との間に作用するねじりモーメントαをスラスト力βに変換することにより、駆動リング2の外周面を円錐状ローラ3の被駆動部14に圧接させる方向に付勢するように構成されている。また、上記第3付勢手段28は、変速リング5と出力軸9との間に作用するねじりモーメントαをスラスト力βに変換することにより、上記円錐状ローラ3をその軸方向に押圧して円錐台状部13の外周面を変速リング5の内周面に圧接させる方向に付勢するように構成されている。
【0030】
上記第1付勢手段12の作用を図5に基づいて説明する。上記入力ボス11は入力軸1と一体に回転するようにキー結合されているので、上記フランジ部11aに設けられた第1付勢手段12の第1カム34は入力軸1と一体に回転する。これに対して上記駆動リング2は、第1付勢手段12から入力された駆動トルクを上記円錐状ローラ3の被駆動部14に伝達して、この円錐状ローラ3を回転駆動する際に発生する駆動抵抗に応じて停止方向の反力を受ける。このため、入力軸1と一体に回転する入力ボス11のフランジ部11aと、停止方向の反力を受ける上記駆動リング2の基端部との間に、ねじりモーメントαが発生し(図4参照)、このねじりモーメントαに応じて上記第1カム34と第2カム35とが相対回転することになる。
【0031】
上記第1,第2カム34,35が相対回転して両者の間に位置ずれが生じると、上記ボール体36を介して第1,第2カム部34,35の間隔を広げる方向に大きなスラスト力β1が発生し、このスラスト力β1が第1カム34を介して駆動リング2の基端部に伝達されることにより、駆動リング2を入力ボス11のフランジ部11aから離間させる方向のスラスト力β1が付与される。この結果、入力軸1の設置方向に対して傾斜した状態でキャリア4に支持された上記円錐状ローラ3の被駆動部14に、上記駆動リング2の外周面を圧接させる付勢力γ1が付与されることになる。
【0032】
上記スラスト力β1に対応して入力ボス11のフランジ部11aに作用するスラスト力(反力)δ1は、スペーサ38およびベアリング39等を介して入力軸1に入力されるとともに、この入力軸1に支持された上記キャリア4に伝達されるため、このキャリア4と上記駆動リング2との間において上記スラスト力β1,δ1が作用するとともに、上記キャリア4に作用するスラスト力δ1が、円錐状ローラ3の被駆動部14を駆動リング2の外周面に圧接させる方向に作用する。このため、上記両スラスト力β1,δ1は、互いにバランスしてその影響が他の部材に及ぶことが防止された状態で、上記駆動リング2の外周面と円錐状ローラ3の被駆動部14とを圧接させる方向に作用することになる。
【0033】
上記駆動リング2の外周面が円錐状ローラ3の被駆動部14に圧接されて駆動リング2の軸方向変位が規制されると、上記入力軸1とともに回転する入力ボス11と、駆動リング2とが第1付勢手段12を介して直結された状態となるため、上記入力軸1の駆動トルクに応じて駆動リング2が回転駆動されるとともに、その駆動トルクが上記円錐状ローラ3の被駆動部14に伝達されて、円錐状ローラ3が回転駆動される。
【0034】
次に、第2付勢手段33の作用を図6に基づいて説明する。上記のように駆動リング2の駆動トルクが円錐状ローラ3に伝達されて、この円錐状ローラ3が回転駆動されると、円錐状ローラ3の頭部15から軌道リング6に対して駆動トルクが加えられることにより、軌道リング6が回転しようとする。これに対応して上記軌道リング6の支持部材30と、ケーシング10に回転不能に支持された上記筒状体31のフランジ部32との間にねじりモーメントが発生するとともに、このねじりモーメントに応じて上記軌道リング6の支持部材30を上記フランジ部32から離間させる方向のスラスト力β2が作用し、このスラスト力β2に応じ、上記入力軸1の設置方向に対して傾斜した状態で設置された円錐状ローラ3の頭部15に、上記軌道リング6の内周面を圧接させる付勢力γ2が付与されることになる。
【0035】
また、上記スラスト力β2に対応して筒状体31のフランジ部32に作用するスラスト力(反力)δ2は、入力ボス等を介してキャリア4の連結部20に伝達されるため、このキャリア4と上記軌道リング6の支持部材30との間において上記スラスト力β2,δ2が作用するとともに、上記キャリア4に作用するスラスト力δ2が、円錐状ローラ3の頭部15を軌道リング6の内周面に圧接させる方向に作用する。このため、上記両スラスト力β2,δ2は、互いにバランスして、その影響が他の部材に及ぶことが防止された状態で、上記円錐状ローラ3の頭部15と軌道リング6の内周面とを圧接させる方向に作用することになる。
【0036】
上記軌道リング6の内周面が円錐状ローラ3の頭部15に圧接されて軌道リング6の軸方向変位が規制されると、ケーシング10に対して回転不能に支持された筒状体31と、上記軌道リング6とが第2付勢手段33を介して直結された状態となることにより、上記軌道リング6の回転が規制される。この結果、上記円錐状ローラ3の自転力が軌道リング6により公転力に変換されて円錐状ローラ3が公転する。
【0037】
図7は、上記変速リング5を支持する支持部材24の基端部と、出力軸9の基端部9bとの間に配設された第3付勢手段28の作用を示している。上記円錐状ローラ3の回転に応じ、この円錐状ローラ3の駆動トルクが上記変速リング5から支持バー23を介して支持部材24に加えられると、上記駆動トルクに応じて回転しようとする上記支持部材24と、外部負荷等に応じて静止状態に止まろうとする上記出力軸9との間にねじりモーメントが発生し、このねじりモーメントに応じて上記支持部材24を出力軸9から離間させる方向のスラスト力β3が作用する。
【0038】
上記支持部材24と円錐状ローラ3との間に配設された推力リング8が、上記スラスト力β3に応じて出力軸9から離間する方向に押圧されることにより、上記推力リング8の先端部が円錐台状部13の底面に圧接される。この結果、上記ローラ支持部17により径方向に移動不能な状態でキャリア4に支持された円錐状ローラ3を、その軸方向に沿ってキャリア4の前面板18側に押圧する付勢力γ3が上記推力リング8から付与される。
【0039】
上記スラスト力β3に対応して出力軸9の基端部9bに作用するスラスト力(反力)δ3は、入力軸1を介して上記キャリア4に伝達され、このキャリア4と上記推力リング8との間において上記両スラスト力β3,γ3が作用するとともに、上記キャリア4に作用するスラスト力δ3が、円錐台状部13の底面を推力リング8の先端部に圧接させる方向に作用する。このため、上記両スラスト力β3,δ3は、互いにバランスして、その影響が他の部材に及ぶことが防止された状態で、円錐状ローラ3の円錐状台部13と変速リング5の内周面とを圧接させる方向に作用し、円錐状ローラ3の駆動トルクが上記変速リング5に確実に伝達されることになる。
【0040】
また、上記推力リング8の先端部が円錐状台部13の底面に圧接されて上記支持部材24の軸方向変位が規制されると、この支持部材24と上記出力軸9とが第3付勢手段28を介して直結された状態となって、上記円錐状ローラ3から変速リング5に入力される駆動トルクが上記第3付勢手段28を介して出力軸9に伝達されることにより、この出力軸9が回転駆動される。
【0041】
上記円錐状ローラ3の被駆動部14および頭部15に対する駆動リング2および軌道リング6の当接面は、円錐状ローラ3の軸と平行に形成されているため、上記第3付勢部材28から円錐状ローラ3に入力される付勢力γ3に応じて円錐状ローラ3がその軸方向にスライド変位した場合においても、上記被駆動部14および頭部15と、駆動リング2および軌道リング6との当接状態に変化が生じることはない。また、上記円錐状ローラ3は、ブッシュ等からなるローラ支持部17により径方向に移動不能な状態でキャリア4に支持されるとともに、上記第3付勢部材28から入力される付勢力γ3に応じ、上記円錐状ローラ3がその軸方向に移動することが許容されるようになっている。
【0042】
上記構成において、入力軸1により駆動リング2が回転駆動されると、この駆動リング2の外周部が上記円錐状ローラ3の被駆動部14に当接しているために、この当接部に作用する摩擦力に応じて円錐状ローラ3が自転しようとする。この円錐状ローラ3の頭部15には、第2付勢手段33により回転が規制された状態でケーシング10に支持された上記軌道リング6の内周面が当接しているため、この当接部に作用する摩擦力に対応して上記駆動リング2から円錐状ローラ3に入力される駆動トルクに応じ、円錐状ローラ3が変速リング5および軌道リング6の内周面に沿って自転しつつ公転する。
【0043】
そして、上記円錐状ローラ3の駆動トルクが摩擦力を介して変速リング5に伝達されることにより、この変速リング5が回転駆動されるとともに、その駆動トルクが上記第3付勢手段28を介して出力軸9に伝達され、この出力軸9が回転駆動される。上記円錐状ローラ3の周速は、変速手段7により変速リング5を、図2に示す低速位置から矢印Aに示すように、円錐台状部13の底面部側に移動させるのに応じて速くなり、これに対応して上記円錐台状部13に当接した変速リング5の回転速度が速くなるため、出力軸9が高速で回転する。
【0044】
一方、上記変速手段7により、変速リング5を円錐台状部13の頂面側に移動させると、円錐状ローラ3の周速が次第に遅くなるとともに、これに対応して上記変速リング5の回転速度が遅くなるため、出力軸9が低速で回転する。そして、上記変速リング5が円錐台状部13の頂面部側に移動して、上記円錐状ローラ3の円錐台状部13における公転周速と自転周速とが等しくなると、この頭部15が軌道リング6の内周面に沿って転動するだけの状態となって変速リング5および出力軸9の回転速度が0になる。
【0045】
上記のように入力軸1から駆動リング2に伝達される駆動トルクに応じて駆動リング2の外周面を円錐状ローラ3の被駆動部14に圧接させる方向に付勢する第1付勢手段12と、円錐状ローラ3から軌道リング6に伝達される駆動トルクに応じて軌道リング6の内周面を円錐状ローラ3の頭部15に圧接させる方向に付勢する第2付勢手段33と、円錐状ローラ3から変速リング5に伝達される駆動トルクに応じて円錐状ローラ3をその軸方向に変位させて上記円錐台状部13の外周面を変速リング5の内周面に圧接させる方向に付勢する第3付勢手段28とを設けたため、駆動トルクの伝達損失を抑制して出力軸9を効率よく回転駆動することができるとともに、上記出力軸9の回転速度を高回転領域から低回転領域まで無段階でスムーズに変速することができる。
【0046】
すなわち、図5に示すように、上記入力軸1から駆動リング2に伝達される駆動トルクに応じ、上記第1付勢手段12によって駆動リング2の外周面を円錐状ローラ3の被駆動部14に圧接させる方向に付勢するように構成したため、上記駆動リング2に入力される駆動トルクに対応した圧接力で、この駆動リング2の外周面を円錐状ローラ3の被駆動部14に対して圧接させ、この圧接部に作用する摩擦力に応じて上記駆動リング2の駆動トルクを円錐状ローラ3に効率よく伝達することができる。したがって、上記駆動トルクの伝達部におけるスリップの発生を防止して円錐状ローラ3をスムーズに回転駆動することができる。
【0047】
また、図6に示すように、上記円錐状ローラ3から軌道リング6に加えられる駆動トルクに応じ、上記第2付勢手段33により軌道リング6の内周面を円錐状ローラ3の頭部15に圧接せる方向に付勢するように構成したため、上記軌道リング6に加えられた駆動トルクに対応した圧接力で、軌道リング6の内周面を円錐状ローラ3の頭部15に圧接させることにより、上記駆動リング2により円錐状ローラ3が回転駆動される際に、上記圧接部に作用する摩擦力に応じて円錐状ローラ3を効率よく公転させることができる。
【0048】
さらに、図7に示すように、上記円錐状ローラ3から変速リング5に加えられる駆動トルクに応じ、上記第3付勢手段28により円錐状ローラ3の円錐台状部13を変速リング5の内周面に圧接せる方向に付勢するように構成したため、上記変速リング5に加えられた駆動トルクに対応した圧接力で、円錐台状部13の外周面を変速リング5の内周面に圧接させることにより、上記駆動リング2から円錐状ローラ3に入力された駆動トルクを上記変速リング5に効率よく伝達することができるとともに、この変速リング5に伝達された駆動トルクを上記出力軸9に確実に伝達して、この出力軸9を効率よく回転駆動することができる。
【0049】
そして、上記のように駆動リング2、軌道リング6および円錐状ローラ3を、第1〜第3付勢手段12,33,28によりそれぞれ個別に付勢するとともに、この付勢力γ1〜γ3を生じさせる上記スラスト力β1〜β3と、その反力δ1〜δ3とをそれぞれ個別にバランスさせるように構成したため、上記各付勢手段12,33,28により付与される付勢力γ1〜γ3の影響が他の部材に及ぶのを防止することができる。したがって、簡単かつコンパクトな構成において、上記駆動リング2、変速リング5および軌道リング6が互いに干渉するのを防止しつつ、上記摩擦力により、駆動リング2の駆動トルクを、上記円錐状ローラ3から変速リング5に効率よく伝達して、出力軸9を回転駆動することができるとともに、上記変速手段7により変速リング5を入力軸1方向にスライド変位させて上記円錐台状部13に対する変速リング5の当接位置を変化させることにより、上記摩擦式変速装置の変速比を無段階に変化させて上記出力軸9の回転速度を調節することができる。
【0050】
さらに、上記のように一対のローラ支持部17により円錐状ローラ3の両端部をその径方向に移動不能な状態でキャリア4に支持するように構成したため、第1〜第3付勢手段12,33,28の付勢力に応じ、円錐状ローラ3が、その径方向に移動するという事態の発生を防止することができる。しかも、図17に示すように円錐形転子44の転子軸49を片持ち支持してなる従来装置に比べ、上記円錐状ローラ3の支持軸の変形を効果的に防止できるため、上記円錐状ローラ3が径方向に移動したり、支持軸が変形したりすることに起因した駆動トルクの伝達損失および回転速度の変動が発生するのを効果的に防止することができる。
【0051】
また、上記円錐台状部13の母線がなす角を鋭角に設定するとともに、この外面側の母線を入力軸1と平行に設置したため、上記円錐状ローラ3の軸線方向を、入力軸1の軸線方向に近付けることが可能となり、図8に示すように、上記円錐台状部13の外面に対する上記変速リング5の当接面T1〜T3が真円に近い楕円形状となるとともに、この楕円の長軸方向と、円錐の頂点Oを中心とした円錐台状部13の回転方向N1〜N3とが略一致することになる。このため、上記変速リング5および円錐台状部13の所定部位が上記当接面T1〜T3に到達した時点から、この当接面T1〜T3から離間するまでの間に生じる接触位置のずれ量を、図9に示す従来例に比べて極めて小さくすることができ、この接触位置のずれに基づく動力のスリップを効果的に抑制することができる。
【0052】
しかも、上記円錐状ローラ3の両端部に設けられた一対の支持軸16がキャリア4に設けられたローラ支持部17によりそれぞれ支持されているため、円錐台状部13の頂角鋭角に形成されていることと相まって、円錐状ローラ3の公転時に作用する遠心力が、円錐状台部13と変速リング5との当接力に影響を与えるという事態の発生を効果的に防止することができる。
【0053】
したがって、摩擦式変速装置の減速比が大きくなった出力軸9の低速回転領域で、上記駆動トルクの伝達損失が大きくなったり、駆動トルクの伝達率が大きく変動したりするのを効果的に防止して、出力軸9に高駆動トルクを生じさせることができるとともに、上記駆動トルクの伝達率が変動することに起因して出力軸9の回転速度が変化するのを効果的に防止できるという利点がある。
【0054】
上記実施形態のように構成された本発明に係る摩擦変速装置と、図17に示す従来例に係る摩擦変速装置とにおいて、変速比を0から1に変化させた場合において、入力軸から出力軸に伝達される駆動トルクの伝達比(出力トルク/入力トルク)と、トルクの伝達効率とを比較する実験を行ったところ、図10および図11に示すようなデータが得られた。このデータから、本発明例では、変速比を0.1以下に低下させた場合においても、出力軸に伝達される駆動トルクの伝達比の低下はみられなかった。これら対して従来例では、変速比を0.1以下に低下させた場合に、出力軸に伝達される駆動トルクの伝達比が顕著に低下し、必要な駆動トルクが得られないことが確認された。また、本発明例では、低速域から高速域までの広い範囲に亘って駆動トルクの伝達効率を高い値に維持できるのに対し、従来例では、本願発明例に比べて駆動トルクの伝達効率が低くなることが確認された。
【0055】
なお、上記実施形態では、軌道リング6の内周面が当接する円錐状ローラ3の頭部15の径を、円錐台状部13の頂面部よりもやや大きい値に設定し、変速リング5を円錐状ローラ3の頂面部側に移動させることにより低速側に変速するように構成した例について説明したが、図12に示すように、円錐状ローラ3の頭部15の径を、円錐台状部13の底面部に対応した大きな値に設定した構造としてもよい。この構成によれば、変速リング5を図12に示すように円錐台状部13の底面部側に位置させることにより、円錐状ローラ3の公転周速と自転周速とが等しくなって出力軸9の回転速度が0となり、変速手段7により、図12に示す低速位置から変速リング5を、矢印Bに示すように、円錐台状部13の頂面部側に移動させるのに応じて円錐台状部13の公転速度が速くなり、これに対応して上記円錐台状部13に当接した変速リング5の回転速度が速くなるため、出力軸9を入力軸1と逆方向に高速で回転させることができる。
【0056】
また、上記実施形態では、図1および図12に示すように、外部の駆動源から入力軸1に対して駆動力を入力する入力部1aと、出力軸9に伝達された駆動力を外部の被駆動部に出力する出力部9aとを同方向に設けた例について説明したが、図13および図14に示すように、外部の駆動源から入力軸1に対して駆動力を入力する入力部1aをケーシング10の一端部側に配設するとともに、出力軸9に伝達された駆動力を外部の被駆動部に出力する出力部9aをケーシング10の他端部側に配設した構造としてもよい。
【0057】
さらに上記第3付勢手段28により軌道リング6と出力軸9とが一体に回転するように連結してなる上記実施形態に代え、図15および図16に示すように、軌道リング6の支持部材30を、第2付勢部材33を介して出力軸9に連結して、これらを一体に回転させるとともに、上記変速リング5を支持する支持部材24を、第3付勢部材28および筒状体31等を介して変速装置のケーシング10に回転不能に支持させた構造としてもよい。
【0058】
上記構成によれば、入力軸1から駆動リング2に入力された駆動トルクが上記円錐状ローラ3に伝達されることにより、この円錐状ローラ3の円錐台状部13および頭部15,15aが、上記変速リング5および軌道リング6の内周面に当接しつつ、円錐状ローラ3が自転するとともに、入力軸1周りに公転することにより、この円錐状ローラ3の公転速度と自転速度との差に応じた駆動トルクが、上記軌道リング6から支持部材30を介して出力軸9に伝達されることになる。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、ケーシングに回転自在に支持された入力軸の駆動トルクを摩擦力によって出力軸に伝達するとともに、出力軸の回転速度を無段階に変速するように構成された摩擦式変速装置において、上記入力軸により回転駆動される駆動リングと、この駆動リングの外周部に沿って配設されて遊星回転する複数の円錐状ローラと、入力軸の軸方向への移動が規制された状態で入力軸によって回転自在に支持されたキャリアと、入力軸と同軸上に配設された変速リングと、この変速リングを上記入力軸の軸方向にスライド変位させる変速手段と、入力軸と同軸上に配設された軌道リングとを備え、上記円錐状ローラに、駆動リングの外周面が当接する被駆動部と、軌道リングの内周面が当接する頭部と、円錐台状部とを設け、この円錐台状部の外面側の母線を入力軸と平行に設置するとともに、その径方向への移動を規制した状態で、上記キャリアに円錐状ローラを回転自在に支持させ、かつ入力軸から駆動リングに伝達される駆動トルクに応じて駆動リングの外周面を円錐状ローラの被駆動部に圧接させる方向に付勢する第1付勢手段と、円錐状ローラから軌道リングに加えられる駆動トルクに応じて軌道リングの内周面を円錐状ローラの頭部に圧接させる方向に付勢する第2付勢手段と、円錐状ローラから変速リングに加えられる駆動トルクに応じて円錐状ローラをその軸方向に変位させて上記円錐台状部の外周面を変速リングの内周面に圧接させる方向に付勢する第3付勢手段とを設けたため、上記駆動リング、変速リングおよび軌道リングが互いに干渉するのを防止しつつ、駆動リングの駆動トルクを、上記円錐状ローラから軌道リングに効率よく伝達して、出力軸をスムーズに回転駆動することができるとともに、上記変速手段により変速リングを入力軸方向にスライド変位させることにより、上記摩擦式変速装置の変速比を無段階に変化させて上記出力軸の回転速度を調節することができる。また、摩擦式変速装置の減速比が大きくなった出力軸の低速回転領域で、上記駆動トルクの伝達損失が大きなくったり、駆動トルクの伝達率が大きく変動したりするのを効果的に防止して、出力軸に高駆動トルクを生じさせることができるとともに、上記駆動トルクの伝達率の変動に起因して出力軸の回転速度が変化するのを効果的に防止できる等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る摩擦式変速装置の実施形態を示す断面図である。
【図2】上記変速装置の要部の構成を示す断面図である。
【図3】付勢手段の具体的構成を示す斜視図である。
【図4】付勢手段の作用を示す説明図である。
【図5】駆動トルクの伝達状態を示す説明図である。
【図6】駆動トルクの伝達状態を示す説明図である。
【図7】駆動トルクの伝達状態を示す説明図である。
【図8】本発明に係る摩擦式変速装置の当接面の状態を示す説明図である。
【図9】従来例に係る摩擦式変速装置の当接面の状態を示す説明図である。
【図10】変速比と駆動トルクの伝達比との対応関係を示すグラフである。
【図11】変速比と駆動トルクの伝達効率との対応関係を示すグラフである。
【図12】本発明に係る摩擦式変速装置の別の実施形態を示す説明図である。
【図13】本発明に係る摩擦式変速装置のさらに別の実施形態を示す断面図である。
【図14】本発明に係る摩擦式変速装置のさらに別の実施形態を示す断面図である。
【図15】本発明に係る摩擦式変速装置のさらに別の実施形態を示す断面図である。
【図16】本発明に係る摩擦式変速装置のさらに別の実施形態を示す断面図である。
【図17】摩擦式変速装置に従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 入力軸
2 駆動リング
3 円錐状ローラ
4 キャリア
5 変速リング
6 軌道リング
7 変速手段
8 推力リング
9 出力軸
10 ケーシング
12 第1付勢手段
13 円錐台状部
14 被駆動部
15 頭部
17 ローラ支持部
28 第3付勢手段
33 第2付勢手段
Claims (5)
- ケーシングに回転自在に支持された入力軸の駆動トルクを摩擦力によって出力軸に伝達するとともに、出力軸の回転速度を無段階に変速するように構成された摩擦式変速装置において、上記入力軸により回転駆動される駆動リングと、この駆動リングの外周部に沿って配設されて遊星回転する複数の円錐状ローラと、入力軸の軸方向への移動が規制された状態で入力軸によって回転自在に支持されたキャリアと、入力軸と同軸上に配設された変速リングと、この変速リングを上記入力軸の軸方向にスライド変位させる変速手段と、入力軸と同軸上に配設された軌道リングとを備え、上記円錐状ローラに、駆動リングの外周面が当接する被駆動部と、軌道リングの内周面が当接する頭部と、円錐台状部とを設け、この円錐台状部の外面側の母線を入力軸と平行に設置するとともに、その径方向への移動を規制した状態で、上記キャリアに円錐状ローラを回転自在に支持させ、かつ上記入力軸から駆動リングに伝達される駆動トルクに応じて駆動リングの外周面を円錐状ローラの被駆動部に圧接させる方向に付勢する第1付勢手段と、上記円錐状ローラから軌道リングに加えられる駆動トルクに応じて軌道リングの内周面を円錐状ローラの頭部に圧接させる方向に付勢する第2付勢手段と、上記円錐状ローラから変速リングに加えられる駆動トルクに応じて円錐状ローラをその軸方向に変位させて上記円錐台状部の外周面を変速リングの内周面に圧接させる方向に付勢する第3付勢手段とを備えたことを特徴とする摩擦式変速装置。
- 請求項1記載の摩擦式変速装置において、第1付勢手段は、入力軸から駆動リングに伝達される駆動トルクを、駆動リングとキャリアとの間に作用するスラスト力に変換することにより、駆動リングを入力軸の軸方向にスライド変位させて、駆動リングの外周面を円錐状ローラの被駆動部に圧接させる方向に付勢するように構成されたことを特徴とする摩擦式変速装置。
- 請求項1または2記載の摩擦式変速装置において、第2付勢手段は、円錐状ローラから軌道リングに加えられる駆動トルクを、キャリアと上記軌道リングとの間に作用するスラスト力に変換することにより、軌道リングを入力軸の軸方向にスライド変位させて、この軌道リングの内周面を円錐状ローラの頭部に圧接させる方向に付勢するように構成されたことを特徴とする摩擦式変速装置。
- 請求項1〜3の何れかに記載の摩擦式変速装置において、第3付勢手段は、円錐状ローラに設けられた円錐台状部の底面に先端部が当接するように入力軸上に配設された推力リングを有し、上記円錐状ローラから変速リングに加えられる駆動トルクを、上記推力リングとキャリアとの間に作用するスラスト力に変換することにより、推力リングの先端部を円錐台状部の底面に圧接させて上記円錐状ローラをその軸方向にスライド変位させて、その円錐台状部の外周面を変速リングの内周面に圧接させる方向に付勢するとともに、上記円錐状ローラから変速リングに入力される駆動トルクを出力軸に伝達するように構成されたことを特徴とする摩擦式変速装置。
- 請求項1〜3の何れかに記載の摩擦式変速装置において、第2付勢手段は、円錐状ローラから軌道リングに加えられる駆動トルクを、キャリアと上記軌道リングとの間に作用するスラスト力に変換することにより、軌道リングを入力軸の軸方向にスライド変位させて、この軌道リングの内周面を円錐状ローラの頭部に圧接させる方向に付勢するとともに、上記円錐状ローラから軌道リングに入力される駆動トルクを出力軸に伝達するように構成されたことを特徴とする摩擦式変速装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002183484A JP2004028172A (ja) | 2002-06-24 | 2002-06-24 | 摩擦式変速装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2002183484A JP2004028172A (ja) | 2002-06-24 | 2002-06-24 | 摩擦式変速装置 |
Publications (1)
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JP2004028172A true JP2004028172A (ja) | 2004-01-29 |
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ID=31179694
Family Applications (1)
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JP2002183484A Withdrawn JP2004028172A (ja) | 2002-06-24 | 2002-06-24 | 摩擦式変速装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004028172A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
MD3545C2 (ro) * | 2004-12-28 | 2008-10-31 | Технический университет Молдовы | Variator planetar precesional |
JP2010112451A (ja) * | 2008-11-06 | 2010-05-20 | Mikuni Corp | 無段変速装置 |
JP7487630B2 (ja) | 2020-09-25 | 2024-05-21 | スズキ株式会社 | 無段変速機 |
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-
2002
- 2002-06-24 JP JP2002183484A patent/JP2004028172A/ja not_active Withdrawn
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