明 細 書 無段変速装置 技術分野
本発明は、 入力軸の回転速度を連続的に変化させて出力軸に伝達する無段変速 装置に関し、 特に、 自動車、 二輪車等に搭載され得る無段変速装置 (CVT) に 関する。 背景技術
比較的小排気量の自動車等に搭載される従来の無段変速装置としては、 金属べ ノレ卜で一対のプーリを連動させるベルト式 CVTが知られている。 この CVTは
、 入力軸に連結された入力プーリ、 出力軸に連結された出力プーリ、 両プーリ間 に巻回された無端状のベルト等を備え、 両プーリの V溝の幅寸法を可変制御する ことでベノレトが接触する回転径を変化させて、 入力軸から出力軸に伝達される回 転速度を連続的に変化させるものである (例えば、 日経メカニカル (1992年
3月 2日、 P 34〜P 46参照)。
また、 比較的大排気量の自動車等に搭載される従来の無段変速装置としては、 球面状の接触面をもつパワーローラで一対のディスクを連動させるトロイダル式 CVTが知られている。 この CVTは、 入力軸に連結された入力ディスク、 出力 軸に連結された出力ディスク、 両ディスクの間に介在するパワーローラ等を備え
、 パワーローラの回転軸の傾きを可変制御することでパワーローラが接触する両 ディスクの回転径を変化させて、 入力軸から出力軸に伝達される回転速度を連続 的に変化させるものである (例えば、 日経メカニカル (1 992年 3月 2日、 P 34〜P 46、 及び、 NSK Te c h n i c a l J o u r n a l No. 6 71 (2001年、 P 5~P 13参照)。
ところで、 上記従来のベルト式 C V Tにおいては、 変速レンジ 1を中心として 増速及び減速するが、 変速比が大きく (又は小さく) なると、 一方側のプーリに 巻回するベルトの曲率が大きくなり (又は曲率半径が小さくなり)、 ベルトを形 成する金属コマの滑りが多くなって駆動力の伝達効率が低下する。 したがって、 これを避ける範囲で駆動すると、 変速レンジを広く設定することができない。 また、 変速比を無限にできないので、 停止状態を設定するにはクラッチ機構が 必要になり、 入力プーリと出力プーリとは同一方向にのみ回転するので、 逆回転 を行わせるには逆転ギヤ等が必要になり、 プーリの溝幅を変化させるための油圧 駆動機構等が必要になる。 さらに、 一対のプーリは比較的径が大きく、 油圧駆動 機構等も備えるため、 装置全体が大きくなり、 又、 金属ベルトのコマがプーリに 接触及び離脱する際に、 高周波の金属音を生じる。
上記従来のトロイダル式 C V Tにおいては、 変速レンジ 1を中心として増速及 び減速し、 この中心付近ではパワーローラのディスクに対するスピンロスが多く なって駆動力の伝達効率が低下する。 また、 変速比を無限にできないので、 停止 状態を設定するにはクラッチ機構が必要になり、 逆回転を行わせるには逆転ギヤ 等が必要になる。 さらに、 パワーローラをディスクに押圧するために、 1 . 5〜 2 . 2 G P aという超高圧の押付荷重を発生する機構及び構造が必要になる。 発明の開示
本発明は、 上記従来の装置の事情に鑑みて成されたものであり、 その目的とす るところは、 装置の簡素化、 小型化、 低コスト化等を図りつつ、 変速レンジを比 較的広く設定することができ、 又、 トラクシヨン係数の上昇により、 フリクショ ンが増加するスラストベアリングの軸受部に大きな荷重が印加されないようにし て、 スラストベアリング軸受部でのトラクションオイルによるトラクシヨン係数 の上昇を抑え、 回転抵抗を低減してフリクションロスを低減でき、 大きな駆動ト ルクを伝達できる、 無段変速装置を提供することにある。
上記目的を達成する本発明の第 1の観点に係る無段変速装置は、 入力軸と一体 的に回転するように形成されたキヤリャと、 出力軸と一体的に回転するように形 成された太陽ギヤと、 太陽ギヤに嚙合した状態でキヤリャに対して回動自在に支 持され, かつ, 入力軸の回転に伴って太陽ギヤの周りを公転し得る複数の遊星ギ ャと、 複数の遊星ギヤに嚙合する内歯をもつリングギヤと、 キヤリャとリングギ ャとの相対的な回転速度を連続的に変化させるベく転がり接触するロータを含む ロータ式連続可変機構と、 を有する、 構成となっている。
この構成によれば、 太陽ギヤ、 遊星ギヤ、 リングギヤ等により差動歯車列が形 成されているため、 遊星ギヤの公転と一体的に回転するキヤリャとリングギヤと の相対的な回転速度を、 ロータ式連続可変機構により連続的に変化させることで
、 増減速を伴う正回転、 停止状態、 逆回転を連続的に生じるように、 入力軸の回 転が出力軸に伝達される。
このように、 クラッチ機構、 逆転切替え機構等が不要で、 入力軸と出力軸とを 同軸上に配置することができるため、 構造が簡略化され、 安価で小型の無段変速 装置を提供することができる。
上記第 1の観点に係る装置において、 ロータ式連続可変機構は、 キヤリャと一 体的に回転すると共に入力軸の軸線方向に往復動自在に形成され, かつ, その外 周に円筒状の接触面をもつ可動ディスクと、 リングギヤの外周に形成された円錐 状の接触面と、 入力軸又は出力軸の軸線に対して傾斜した軸線周りに回動自在に 支持され, かつ, リングギヤの接触面と接触する第 1円錐面及び可動ディスクの 接触面と接触する第 2円錐面をもつ二段円錐状のトラクシヨンロータと、 リング ギヤ及び可動ディスクと協働して外側から挟み込むようにトラクシヨンロータに 接触する トラクシヨンリングと、 を含む、 構成を採用することができる。
この構成によれば、 可動ディスクの接触面がトラクシヨンロータの第 2円錐面 に接触し、 リングギヤの接触面がトラクシヨンロータの第 1円錐面に接触し、 さ らに、 トラクシヨンロータを可動ディスクとリングギヤに押し付けるようにトラ
クシヨンリングがトラクシヨンロータ (の例えば第 1円錐面) に接触する。 そし て、 可動ディスクが入力軸の軸線方向に移動することで、 接触する第 2円錐面上 の回転半径が変化し、 キヤリャの回転速度 (遊星ギヤの公転速度) とリングギヤ の回転速度とが相対的に変化する。 例えば、 可動ディスクを所定の位置に移動さ せて、 可動ディスク (キヤリャ) の回転に対してリングギヤを遅れずに同時に回 転させることで正回転 (例えば、 変速比 1 ) に設定でき、 リングギヤの回転を所 定量だけ先行させることで停止状態 (すなわち、 変速比 0 ) に設定でき、 リング ギヤの回転をさらに所定量だけ先行させることで逆回転 (例えば、 変速比一 0 . 2 ) に設定でき、 変速比を比較的広く設定することができる。
上記第 1の観点に係る装置において、 トラクシヨンリングは、 入力軸又は出力 軸の軸線方向において, リングギヤの接触面と可動ディスクの接触面との間に配 置されている、 構成を採用することができる。
この構成によれば、 トラクシヨンリングの押圧力が、 トラクシヨンロータをリ ングギヤと可動ディスクとにバランス良く押し付けるように作用するため、 トラ クシヨン力が確実に得られて、 より安定した変速動作が行われる。
上記第 1の観点に係る装置において、 可動ディスクを入力軸の軸線方向の一方 側に向けて付勢する付勢部材と、 付勢部材の付勢力に抗して可動デイスクを移動 させるべく押圧する押圧部材と、 を含む、 構成を採用することができる。
この構成によれば、 押圧部材の位置を適宜調整することで、 可動ディスクの位 置を変化させることができる。 したがって、 押圧部材に連動する駆動機構等を装 置の内部及び外部に容易に設定することができる。
上記第 1の観点に係る装置において、 トラクシヨンロータの第 1円錐面は、 そ の回転中心線が入力軸又は出力軸の軸線と交わる点に頂点をもつように形成され ている、 構成を採用することができる。
この構成によれば、 トラクシヨンロータとリングギヤ及びトラクシヨンリング との接触領域でのスピンロスが防止され、 トラクシヨンドライブの効率 (転がり
接触によるトラクシヨン力の伝達効率) が向上する。
上記第 1の観点に係る装置において、 トラクシヨンリングは、 その中心が入力 軸又は出力軸の軸線から所定量だけ偏倚した状態で, その径方向に移動自在にか つ入力軸又は出力軸の軸線回りに回動不能に支持され、 トラクシヨンロータは、 トラクシヨンリングと可動ディスク及びリングギヤとの間において公転可能に周 方向に配列された複数のトラクシヨンロータからなり、 複数のトラクシヨンロー タの少なくとも一つは、 他に対して独立して公転し得るように支持されている、 構成を採用することができる。
この構成によれば、 入力軸が回転すると、 可動ディスク (の接触面) と トラク シヨンロータ (の第 2円錐面) との間にフリクションが生じる。 すると、 独立し て公転し得るトラクシヨンロータが可動ディスクに引き摺られて、 トラクシヨン リングと可動ディスクとの間に食い込むと、 その楔作用により、 トラクシヨンリ ングが適宜径方向に移動しつつ、 他のトラクシヨンロータが可動ディスクとトラ クシヨンリングとの間に締め付けられ (強く挟持され) る。 これにより、 トラク シヨンロータとリングギヤとの間にも大きなトラクシヨン力が発生し、 確実なト ラタシヨンドライブが行われる。
さらに、 出力軸に負荷が印加された場合、 出力軸の回転が遅くなってリングギ ャの回転が遅くなると、 独立して公転し得るトラクシヨンロータが狭い隙間の方 向に移動し、 他のトラクシヨンロータの締め付け力を増加させる。 これにより、 伝達トルクが増加して遅れが解消され、 所望のトルク伝達が行われる。
上記構成において、 トラクシヨンロータは、 トラクシヨンリングと可動ディス ク及びリングギヤとの間において周方向に配列された三個のトラクションロータ からなり、 トラクシヨンロータの二つは、 出力軸回りに回動自在に設けられた第 1リンクに回動自在に支持され、 トラクシヨンロータの残りの一つは、 出力軸回 りに回動自在に設けられた第 2リンクに回動自在に支持されている、 構成を採用 することができる。
この構成によれば、 部品点数を削減しつつも、 安定したトラクシヨンドライブ を確保することができる。
また、 上記第 1の観点に係る装置において、 トラクシヨンリングは、 その中心 が入力軸又は出力軸の軸線と同軸上に位置した状態で, 入力軸又は出力軸の軸線 回りに回動自在に支持され、 トラクシヨンロータは、 トラクシヨンリングと可動 ディスク及びリングギヤとの間において公転不能に周方向に配列された固定ロー タと、 固定ロータに対し相対的に移動可能に支持された可動ロータと、 を含む、 構成を採用することができる。
この構成によれば、 入力軸が回転すると、 可動ディスク (の接触面) と トラク シヨンロータ (の第 2円錐面) との間にフリクションが生じる。 すると、 トラク シヨンリングが回転しつつ可動ロータが可動ディスクに引き摺られて、 トラクシ ヨンリングと可動ディスクとの間に食い込むと、 その楔作用により、 固定ロータ も可動ディスクとトラクシヨンリングとの間に締め付けられ (強く挟持され) る 。 これにより、 大きなトラクシヨン力が発生し、 確実なトラクシヨンドライブが 行われる。
上記構成において、 トラクシヨンロータは、 二つの固定ロータと、 出力軸回り の所定角度範囲において移動自在に設けられたリンクに回動自在に支持された一 つの可動ロータと、 を含む、 構成を採用することができる。
この構成によれば、 部品点数を削減しつつも、 安定したトラクシヨンドライブ を確保することができる。 すなわち、 出力軸に負荷が印加されると、 リングギヤ 力 トラクションロータの回転に対し遅れを生じるが、 一つの可動ロータがその遅 れ分だけ周方向に移動し、 二つの固定ロータの締め付け力を増加させる。 これに より、 伝達トルクが増加して遅れが解消され、 所望のトルク伝達が行われる。 上記目的を達成する本発明の第 2の観点に係る無段変速装置は、 入力軸と一体 的に回転するように形成されたキヤリャと、 出力軸と一体的に回転するように形 成された太陽ギヤと、 出力軸の回りに回動自在に設けられた回転体と、 太陽ギヤ
に嚙合した状態で回転体に対して回動自在に支持され, 力つ, 回転体の回転に伴 つて太陽ギヤの周りを公転し得る複数の遊星ギヤと、 入力軸と一体的に回転する ようにキヤリャに連結され, 複数の遊星ギヤに嚙合する内歯をもつリングギヤと 、 キヤリャと回転体との相対的な回転速度を連続的に変化させるべく転がり接触 するロータを含むロータ式連続可変機構と、 を有する、 構成となっている。
この構成によれば、 太陽ギヤ、 遊星ギヤ、 リングギヤ等により差動歯車列が形 成されているため、 リングギヤと一体的に回転するキヤリャと遊星ギヤの公転と 一体的に回転する回転体との相対的な回転速度を、 ロータ式連続可変機構により 連続的に変化させることで、 增減速を伴う正回転、 停止状態、 逆回転を連続的に 生じるように、 入力軸の回転が出力軸に伝達される。 このように、 クラッチ機構、 逆転切替え機構等が不要で、 入力軸と出力軸とを同軸上に配置することができる ため、 構造が簡略化され、 安価で小型の無段変速装置を提供することができる。 上記第 2の観点に係る装置において、 ロータ式連続可変機構は、 キヤリャと一 体的に回転すると共に入力軸の軸線方向に往復動自在に形成され, かつ, その外 周に円筒状の接触面をもつ可動体と、 回転体の外周に形成された円錐状の接触面 と、 入力軸又は出力軸の軸線に対して傾斜した軸線周りに回動自在に支持され, 力つ, 回転体の接触面と接触する第 1円錐面及び可動体の接触面と接触する第 2 円錐面をもつ二段円錐状のトラクションロータと、 回転体及び可動体と協働して 外側から挟み込むようにトラクシヨンロータに接触するトラクシヨンリングと、 を含む、 構成を採用することができる。
この構成によれば、 可動体の接触面がトラクシヨンロータの第 2円錐面に接触 し、 回転体の接触面がトラクシヨンロータの第 1円錐面に接触し、 さらに、 トラ クシヨンロータを可動体と回転体に押し付けるようにトラクシヨンリングがトラ クシヨンロータ (の例えば第 1円錐面) に接触する。 そして、 可動体が入力軸の 軸線方向に移動することで、 接触する第 2円錐面上の回転半径が変化し、 キヤリ ャの回転速度 (リングギヤの回転速度) と回転体の回転速度 (遊星ギヤの公転速
度) とが相対的に変化する。 すなわち、 可動体を適宜移動させて、 可動体 (リン グギヤ) の回転速度に対して回転体の回転速度を適宜変化させることで、 変速比 を幅広いレンジで変化させて、 正回転、 停止、 逆回転を連続的に設定することが できる。
上記第 2の観点に係る装置のロータ式連続可変機構において、 トラクシヨンリ ングは、 入力軸又は出力軸の軸線方向において, 回転体の接触面と可動体の接触 面との間に配置されている、 構成を採用することができる。
この構成によれば、 トラクシヨンリングの押圧力が、 トラクシヨンロータを回 転体と可動体とにバランス良く押し付けるように作用するため、 トラクシヨン力 が確実に得られて、 より安定した変速動作が行われる。
上記第 2の観点に係る装置において、 ロータ式連続可変機構は、 回転体と一体 的に回転すると共に出力軸の軸線方向に往復動自在に形成され, かつ, その外周 に円筒状の接触面をもつ可動体と、 キヤリャに形成された円錐状の接触面と、 入 力軸又は出力軸の軸線に対して傾斜した軸線周りに回動自在に支持され, かつ, キヤリャの接触面と接触する第 1円錐面及び可動体の接触面と接触する第 2円錐 面をもつ二段円錐状のトラクションロータと、 キヤリャ及び可動体と協働して外 側から挟み込むようにトラクシヨンロータに接触するトラクシヨンリングと、 を 含む、 構成を採用することができる。
この構成によれば、 可動体の接触面がトラクシヨンロータの第 2円錐面に接触 し、 キヤリャの接触面がトラクシヨンロータの第 1円錐面に接触し、 さらに、 ト ラクシヨンロータを可動体と回転体に押し付けるようにトラクシヨンリングがト ラタシヨンロータ (の例えばベアリング) に接触する。 そして、 可動体が出力軸 の軸線方向に移動することで、 接触する第 2円錐面上の回転半径が変化し、 キヤ リャの回転速度 (リングギヤの回転速度) と回転体の回転速度 (遊星ギヤの公転 速度) とが相対的に変化する。 すなわち、 可動体を適宜移動させて、 キヤリャ ( リングギヤ) の回転速度に対して回転体の回転速度を適宜変化させることで、 変
速比を幅広いレンジで変化させて、 正回転、 停止、 逆回転を連続的に設定するこ とができる。 特に、 トラクシヨンロータの変速比を小さくできるため、 トラクシ ヨン伝達領域のスピンロスを少なくでき、 それ故に、 トラクシヨン係数、 伝達効 率で有利となる。
また、 この構成によれば、 キヤリャに設けた円錐状の接触面を出力軸の近傍に 形成することで、 トラクシヨンロータを出力軸の軸線寄りに近づけて配置するこ とができ、 部品の集約化による装置の小型化を達成することができる。
上記第 2の観点に係る装置のロータ式連続可変機構において、 トラクシヨンリ ングは、 入力軸又は出力軸の軸線方向において, キヤリャの接触面と可動体の接 触面との間に配置されている、 構成を採用することができる。
この構成によれば、 トラクシヨンリングの押圧力が、 トラクシヨンロータをキ ャリャと可動体とにバランス良く押し付けるように作用するため、 トラクシヨン 力が確実に得られて、 より安定した変速動作が行われる。
上記第 2の観点に係る装置において、 可動体を入力軸の軸線方向の一方側に向 けて付勢する付勢部材と、 付勢部材の付勢力に杭して可動体を移動させるベく押 圧する押圧部材と、 を含む、 構成を採用することができる。
この構成によれば、 押圧部材の位置を適宜調整することで、 可動体の位置を変 化させることができる。 したがって、 押圧部材に連動する駆動機構等を装置の内 部及び外部に容易に設定することができる。
上記第 2の観点に係る装置において、 トラクシヨンロータの第 1円錐面は、 そ の回転中心線が入力軸又は出力軸の軸線と交わる点に頂点をもつように形成され ている、 構成を採用することができる。
この構成によれば、 トラクシヨンロータと回転ディスク及びトラクシヨンリン グとの接触領域でのスピンロスが防止され、 トラクシヨンドライブの効率 (転が り接触によるトラクシヨン力の伝達効率) が向上する。
上記第 2の観点に係る装置において、 トラクシヨンリングは、 その中心が入力
軸又は出力軸の軸線と同軸上に位置した状態で, 入力軸又は出力軸の軸線回りに 回動自在に支持され、 トラクシヨンロータは、 トラクシヨンリングと可動体及び 回転体との間におレ、て公転不能に周方向に配列された固定ロータと、 固定ロータ に対し相対的に移動可能に支持された可動ロータと、 を含む、 構成を採用するこ とができる。
この構成によれば、 入力軸が回転すると、 可動体 (の接触面) とトラクシヨン ロータ (の第 2円錐面) との間にフリクションが生じる。 すると、 トラクシヨン リングが回転しつつ可動ロータが可動体に引き摺られて、 トラクシヨンリングと 可動体との間に食い込むと、 その楔作用により、 固定ロータも可動体とトラクシ ヨンリングとの間に締め付けられ (強く挟持され) る。 これにより、 大きなトラ クシヨン力が発生し、 確実なトラクシヨンドライブが行われる。
さらに、 出力軸に負荷が印加された場合、 出力軸の回転が遅くなつてリングギ ャの回転が遅くなると、 可動ロータが狭い隙間の方向に移動し、 他の固定ロータ の締め付け力を増加させる。 これにより、 伝達トルクが増加して遅れが解消され 、 所望のトルク伝達が行われる。
上記第 2の観点に係る装置において、 トラクシヨンロータは、 二つの固定ロー タと、 出力軸回りの所定角度範囲において移動自在に設けられたリンクに回動自 在に支持された一つの可動ロータと、 を含む、 構成を採用することができる。 この構成によれば、 部品点数を削減しつつも、 安定したトラクシヨンドライブ を確保することができる。 すなわち、 出力軸に負荷が印加されると、 リングギヤ がトラクションロータの回転に対し遅れを生じるが、 一つの可動ロータがその遅 れ分だけ周方向に移動し、 二つの固定ロータの締め付け力を増加させる。 これに より、 伝達トルクが増加して遅れが解消され、 所望のトルク伝達が行われる。 上記第 2の観点に係る装置において、 トラクシヨンリングは、 その中心が径方 向に移動自在にかつ入力軸又は出力軸の軸線回りに回動不能に支持され, かつ, トラクシヨンロータを内接させると共に法線荷重を増加させるようにカム作用を
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及ぼすカム面を有し、 トラクシヨンロータは、 所定の角度範囲を公転可能に支持 されると共に、 第 1円錐面及び第 2円錐面に対して相対的に回転し得ると、共に力 ム面に接触するベアリングを有する、 構成を採用することができる。
この構成によれば、 出力軸の負荷トルクが増加して、 ロータ式連続可変機構に より設定される所定速度よりも遅くなると、 この回転遅れが解消されるまで、 ト ラクシヨンロータのベアリングが自転しつつトラクシヨンリングのカム面に沿つ て所定の角度範囲を公転し、 カム面がトラクシヨンロータ (ベアリング) にカム 作用を及ぼして、 法線荷重を必要最小限だけ自動的に増加させるように作用する 。 このように、 出力軸の負荷変動に応じて、 必要とされる法線荷重がフィードバ ック制御されて、 安定したトラクシヨン力が得られ、 回転力の伝達が確実に行わ れる。
以上述べたように、 上記の構成をなす無段変速装置によれば、 従来のようなク ラッチ機構、 逆転ギヤ、 油圧機構等を設けることなく、 増減速を伴う正回転、 停 止、 逆回転を連続的に生じるように、 入力軸の回転を出力軸に伝達させることが でき、 しかも変速レンジを幅広く設定でき、 騒音等を極力防止でき、 大きな駆動 トルクを伝達することができる、 小型化で安価な無段変速装置が得られる。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明の第 1の観点に係る無段変速装置の一実施形態を示す断面図で ある。
図 2は、 図 1に示す無段変速装置の模式図である。
図 3は、 図 1に示す無段変速装置の一部を示す模式図である。
図 4 A及び図 4 Bは、 図 1に示す無段変速装置の一部を示す模式図である。 図 5は、 図 1に示す無段変速装置の一部を示す模式図である。
図 6 A、 図 6 B、 及び図 6 Cは、 図 1に示す無段変速装置の動作を説明する模 式図である。
図 Ίは、 本発明の第 1の観点に係る無段変速装置の他の実施形態を示す断面図 である。
図 8は、 本発明の第 1の観点に係る無段変速装置のさらに他の実施形態を示す 断面図である。
図 9は、 図 8に示す無段変速装置の模式図である。
図 1 0は、 図 8に示す無段変速装置の一部を示す模式図である。
図 1 1は、 本発明の第 1の観点に係る無段変速装置のさらに他の実施形態を示 す断面図である。
図 1 2は、 本発明の第 2の観点に係る無段変速装置の一実施形態を示す断面図 である。
図 1 3は、 図 1 2に示す無段変速装置の模式図である。
図 1 4は、 本発明の第 2の観点に係る無段変速装置の他の実施形態を示す断面 図である。
図 1 5は、 図 1 4に示す無段変速装置の一部を示す断面図である。
図 1 6は、 図 1 4に示す無段変速装置の模式図である。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明の最良の実施形態について、 添付図面を参照しつつ説明する。 図 1ないし図 6は、 本発明の第 1の観点に係る無段変速装置の一実施形態を示 すものであり、 図 1は装置の断面図、 図 2ないし図 6は装置の模式図である。 この無段変速装置は、 図 1に示すように、 ハウジング 1 0、 ハウジング 1 0に 対して回動自在に支持された入力軸 2 0、 入力軸 2 0に対して一体的に回転する ように結合されたキヤリャ 3 0、 ハウジング 1 0に対して回動自在に支持された 出力軸 4 0、 出力軸 4 0に対して一体的に回転するように結合された太陽ギヤ 5 0、 太陽ギヤ 5 0に嚙合した状態でキヤリャ 3 0に対して回動自在に支持された 3つの遊星ギヤ 6 0、 遊星ギヤ 6 0に嚙合するリングギヤ 7 0、 キヤリャ 3 0と
2
一体的に回転するようにかつ入力軸 2 0の軸線方向に移動可能に支持された可動 ディスク 8 0、 リングギヤ 7 0及び可動ディスク 8 0の外周に配列された 3つの トラクションロータ 9 0、 トラクションロータ 9 0の外側に配置されたトラクシ ヨンリング 1 0 0等を備えている。
そして、 可動ディスク 8 0、 リングギヤ 7 0の後述する接触面 7 2、 トラクシ ヨンロータ 9 0、 トラクシヨンリング 1 0 0等により、 キヤリャ 3 0とリングギ ャ 7 0との相対的な回転速度を連続的に変化させるロータ式連続可変機構が構成 されている。
ハウジング 1 0は、 アルミニウム材料等を用いて型成形されたものであり、 図 1に示すように、 入力軸 2 0を支持するための軸受 1 1 a及びシール 1 1 b等が 取り付けられたハウジング半体 1 1、 出力軸 4 0を支持するための軸受 1 2 a及 びシール 1 2 b等が取り付けられたハウジング半体 1 2等により構成されている。 そして、 ハウジング 1 0は、 ハウジング半体 1 1とハウジング半体 1 2とをボ ノレ卜等により締結することにより画定され、 入力軸 2 0と出力軸 4 0とを同一の 軸線上に回動自在に支持している。
入力軸 2 0は、 図 1に示すように、 その端部において板状のフランジ 2 1を有 し、 このフランジ 2 1に対して、 略 1 2 0度の間隔で配置され軸線 Lと平行に伸 長する円柱状の 3本のピン 2 2が結合されている。 すなわち、 フランジ 2 1及び 3本のピン 2 2により、 キヤリャ 3 0が構成されている。
各々のキヤリャ 3 0 (ピン 2 2 ) は、 その先端部において、 遊星ギヤ 6 0を回 動自在に支持すると共に、 太陽ギヤ 5 0に嚙合させた状態に保持している。 すな わち、 入力軸 2 0が回転すると、 キヤリャ 3 0がー体的に回転し、 遊星ギヤ 6 0 を太陽ギヤ 5 0の周りに公転 (遊星運動) させるようになつている。
リングギヤ 7 0は、 図 1及び図 4 Bに示すように、 3つの遊星ギヤ 6 0に嚙合 する内歯 7 1を有し、 その外周には、 後述するトラクシヨンロータ 9 0の第 1円 錐面 9 1と接触する円錐状の接触面 7 2を有する。
可動ディスク 8 0は、 図 1に示すように、 キヤリャ 3 0 (ピン 2 2 ) に摺動自 在に外嵌される 3つの円孔 8 1を有し、 その外周には、 後述するトラクシヨン口 ータ 9 0の第 2円錐面 9 2と接触する円筒状の接触面 8 2を有する。 そして、 可 動ディスク 8 0は、 ピン 2 2に沿って軸線 L方向に往復動自在に支持されている。 また、 可動ディスク 8 0は、 図 1に示すように、 付勢部材としてのコイルバネ 8 3により入力軸 2 0側に向けて付勢されており、 一方、 コイルバネ 8 3の付勢 力に対向する側に押圧部材 8 4が配置されている。 押圧部材 8 4は、 ウォームギ ャ 8 5及びウォームホイール 8 6、 ウォームホイール 8 6の内周に形成された送 り雌ネジと嚙合すると共に回転が規制されたネジ部材 8 7を介して、 コイルパネ 8 3の付勢力に抗しつつ軸線 L方向に移動させられるようになつている。 ここで 、 ウォームギヤ 8 5の上流側には、 操作用の駆動モータが連結されており、 操作 者の操作信号に応じて駆動制御されるようになっている。
尚、 押圧部材 8 4の駆動機構としては、 ハウジング 1 0の外側に設けられたシ フトレバ一等を介して駆動される構成を採用してもよい。
3つのトラクシヨンロータ 9 0は、 図 1ないし図 3、 図 5に示すように、 それ ぞれの回転中心線 Sが出力軸 4 0の軸線 Lと同一点 Pで交わるように傾斜した状 態で回転 (自転) 及び公転し得るように支持されている。 すなわち、 2つのトラ クシヨンロータ 9 0は、 出力軸 4 0回りに回動自在に設けられた第 1リンク 9 3 に対して回動自在に支持されており、 1つのトラクシヨンロータ 9 0は、 第 1リ ンク 9 3とは独立して出力軸 4 0回りに回動自在に設けられた第 2リンク 9 4に 対して回動自在に支持されて、 先の 2つのトラクシヨンロータ 9 0とは別個に独 立して公転し得るようになつている。 トラクシヨンロータ 9 0の回転中心線 Sの 軸線 Lに対する傾斜角度は、 設定する変速比の範囲に応じて適宜選定される。 ま た、 第 1 リンク 9 3と第 2リンク 9 4との間には、 お互いを引き寄せるバネ 9 5 が設けられている。
ここで、 3つのトラクシヨンロータ 9 0は、 図 5に示すように、 大径、 中径、
小径となるようにお互いの外径が異なるように形成され、 例えば、 第 1リンク 9 3に支持された 2つのトラクシヨンロータ 9 0が大径と中径で、 第 2リンク 9 4 に支持された 1つのトラクシヨンロータ 9 0が小径となるように形成されていて もよレ、。 尚、 1つのトラクシヨンロータ 9 0のみが他に比べて小径となるように 形成されていてもよい。
また、 3つのトラクシヨンロータ 9 0は、 図 1ないし図 3に示すように、 リン グギヤ 7 0の接触面 Ί 2及び後述するトラクシヨンリング 1 0 0の接触面 1 0 1 と接触する第 1円錐面 9 1、 可動ディスク 8 0の接触面 8 2と接触する第 2円錐 面 9 2を有する。
第 1円錐面 9 1は、 トラクシヨンロータ 9 0の回転中心線 Sが出力軸 4 0の軸 線 Lと交わる点 Pに、 その頂点をもつように形成されている。 第 2円錐面 9 2は 、 可動ディスク 8 0の接触面 8 2が接触する位置でのその母線 Mが、 入力軸 2 0 の軸線 Lと平行になるように形成されている。 尚、 第 2円錐面 9 2のブロフィー ノレ、 すなわち、 回転中心線 Sに対する母線 Mの傾斜角度は、 変速比を如何に設定 するかによつて、 母線 Mを軸線 Lと平行に保ちつつ回転中心線 Sの傾斜角度を選 定することによって決定される。
したがって、 上記の第 1円錐面 9 1を採用することで、 トラクシヨンロータ 9 0とリングギヤ 7 0及びトラクシヨンリング 1 0 0との間の接触領域では、 スピ ンロスが防止され、 転がり接触によるトラクシヨン力の伝達効率、 すなわち、 ト ラクシヨンドライブの効率が向上する。 また、 第 2円錐面 9 2を採用することで 、 トラクシヨンロータ 9 0と可動ディスク 8 0との間では、 可動ディスク 8 0の 軸線方向 Lへの移動を許容しつつ転がり接触するようになつている。
トラクシヨンリング 1 0 0は、 図 1ないし図 3、 図 5に示すように、 トラクシ ヨンロータ 9 0の第 1円錐面 9 1に接触し得る円錐状の接触面 1 0 1を有し、 そ の回転中心線 L 'は、 出力軸 4 0の軸線 Lから所定量だけ偏倚した位置に位置 付けられている。 そして、 ハウジング半体 1 2の環状溝 1 2 cに挿入されて径方
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向に所定量だけ移動自在に支持されると共に、 ピン 1 2 dにより回転しないよう に規制されている。
また、 トラクシヨンリング 1 0 0は、 図 1ないし図 3に示すように、 入力軸 2 0及び出力軸 4 0の軸線 L方向において、 可動リング 8 0とリングギヤ 7 0との 間に位置するように配置されている。 したがって、 トラクシヨンリング 1 0 0の 押圧力が、 トラクシヨンロータ 9 0の第 1円錐面 9 1と第 2円錐面 9 2を、 リン グギヤ 7 0の接触面 7 2と可動ディスク 8 0の接触面 8 2とに、 それぞれバラン ス良く押し付けるように作用するため、 トラクシヨン力が確実に得られて、 より 安定した変速動作が行われる。
ここで、 3つのトラクシヨンロータ 9 0、 可動ディスク 8 0 (及びリングギヤ 7 0 ) の相互関係について説明する。
先ず、 出力軸 4 0に一定の負荷が加わっている場合、 入力軸 2 0及び可動ディ スク 8 0が回転すると、 トラクシヨンロータ 9 0が回転 (自転及び公転) して、 リングギヤ 7 0を回転させ、 所定のトルクが伝達されて出力軸 4 0が回転する。 一方、 図 5に示すように、 入力軸 2 0及び可動ディスク 8 0が C 3方向に回転 する状態において、 出力軸 4 0の負荷が増加すると、 出力軸 4 0の回転が遅くな り、 リングギヤ 7 0はトラクシヨンロータ 9 0の回転に対して遅れ (C 3 '方 向) を生じる。 この遅れは、 トラクシヨンロータ 9 0の法線荷重により生じるト ラクシヨントルクが不足するためである。 そして、 独立して公転し得る最小のト ラクシヨンロータ 9 0は、 C 2方向に回転 (自転) しつつ狭い隙間の方向 (C 1 方向) に移動して、 トラクシヨンリング 1 0 0と可動ディスク 8 0及びリングギ ャ 7 0との間に食い込んで楔作用を生じる。
この楔作用により、 トラクシヨンリング 1 0 0が適宜径方向に移動 (変心運動 ) しつつ、 中径及び大径の 2つのトラクシヨンロータ 9 0は、 可動ディスク 8 0 及びリングギヤ 7 0と トラクシヨンリング 1 0 0との間により強く締め付けられ (強く挟持され)、 トラクシヨンロータ 9 0の法線荷重が増加してトラクション
係数が大きくなり、 トラクシヨントルクが増加する。 これにより、 伝達トルクが 増加して、 リングギヤ 7 0の遅れも解消され、 3つのトラクシヨンロータ 9 0は 一緒に回転してトルク伝達を確実に行レ、、 確実なトラクションドライブが行われ る。
また、 トラクシヨンロータ 9 0は、 リングギヤ 7 0の外周に配置されて入力軸
2 0及び出力軸 4 0から所定の距離だけ隔てた位置でトルクの伝達を行うので、 小型でも大きなトルクを伝達することができる。
次に、 上記無段変速装置の動作及び原理について、 図 6 Aないし図 6 Cを参照 しつつ説明する。 尚、 ここでは、 入力軸 2 0の所定方向の回転に対して、 車両等 の前進方向に出力軸 4 0が回転する場合を正回転、 後退方向に回転する場合を逆 回転として説明する。
先ず、 入力軸 2 0が所定の速度で回転すると、 可動ディスク 8 0及びキヤリャ
3 0も一体となって同一方向に回転する。 そして、 キヤリャ 3 0の回転に伴って 、 3つの遊星ギヤ 6 0も回転 (自転) しつつ入力軸 2 0と同一方向に同一速度で 公転する。
ここで、 遊星ギヤ 6 0から太陽ギヤ 5 0への回転トルクの伝達は、 リングギヤ
7 0がどのような状態にあるかに応じて変化する。 すなわち、 リングギヤ 7 0が 、 停止、 可動ディスク 8 0 (及び入力軸 2 0 ) と同一速度で回転、 可動ディスク
8 0に先行して回転 (より速い速度で回転)、 可動ディスク 8 0に遅れて回転 ( より遅い速度で回転) 等のいずれの状態にあるかによって、 遊星ギヤ 6 0から太 陽ギヤ 5 0及び出力軸 4 0に伝達される回転速度は変化する。
そこで、 トラクシヨンロータ 9 0の第 2円錐面 9 2に接触する可動ディスク 8 0の軸線方向 Lにおける位置を適宜変化させることにより、 キヤリャ 3 0 (及び 可動ディスク 8 0 ) とリングギヤ 7 0との間に相対的な回転速度の変化 (回転差 ) を生じさせることで、 入力軸 2 0から出力軸 4 0に伝達される回転速度を連続 的に変化させる (増減速を伴う正回転、 停止、 逆回転等を連続的に生じさせる)
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ことができる。
すなわち、 リングギヤ 7 0とキヤリャ 3 0との回転差は、 可動ディスク 8 0が 第 2円錐面 9 2に接触する位置に応じて変化する。 したがって、 第 1円錐面 9 1 の母線 Nと可動ディスク 8 0の法線 Vとの交点におけるトラクシヨンロータ 9 0 の回転半径を R、 可動ディスク 8 0の接触面 8 2が接触する位置での第 2円錐面 9 2の回転半径を rとすると、 回転差は (r _ R ) /Rで表され、 この値がマイ ナス値になるとリングギヤ 7 0がキヤリャ 3 0 (及び可動ディスク 8 0 ) に対し て先行して回転 (速く回転) することになる。
例えば、 図 6 Aに示す状態では、 r > Rであり、 入力軸 2 0の回転は正回転で 出力軸 4 0に伝達され、 r値が小さくなる左側に向けて可動ディスク 8 0が移動 するにしたがって変速比が小さくなり、 図 6 Bに示すように、 r ' < R ' とな る所定の位置に可動ディスク 8 0が移動して、 リングギヤ 7 0がキヤリャ 3 0 ( 可動ディスク 8 0 ) に対して所定量だけ先行して回転するとき、 変速比が 0とな つて出力軸 4 0の回転は停止する。
そして、 さらに、 図 6 Cに示すように、 r値がさらに小さくなる r ' ' (く r ' < r ) の位置に可動ディスク 8 0が移動すると、 リングギヤ 7 0がキヤリ ャ 3 0 (可動ディスク 8 0 ) に対して所定量だけさらに先行して回転し、 変速比 がマイナス^ ί直となつて出力軸 4 0は逆回転する。
ここで、 可動ディスク 8 0は、 コイルバネ 8 3の付勢力に抗して押圧部材 8 4 を駆動機構 (ウォームギヤ 8 5、 ゥ; ί -ームホイール 8 6、 ネジ部材 8 7等) によ り適宜移動させることで、 上記の変速動作が行われる。
ここで、 例えば、 太陽ギヤ 5 0の歯数を 1 8、 遊星ギヤ 6 0の歯数を 2 7、 リ ングギヤ 7 0の歯数を 7 2とすると、 キヤリャ 3 0 (及び可動ディスク 8 0 ) の 回転に対するリングギヤ 7 0の回転が、 1 5回転遅れで変速比が 2となり、 回 転遅れなし (同一回転) で変速比は 1となり、 1ノ 5回転先行で変速比は 0 (停 止) となり、 2 Ζ 5回転遅れで変速比は一 1 (逆回転) となる。
一般的な自動車における変速比は、 停止状態で変速比 0 (減速比:無限大)、 オーバトップで変速比 1 . 2 (減速比: 0 . 8 3 3 3 )、 後退で変速比— 0 . 2 (減速比: 一 5 ) 程度であるため、 この場合は、 キヤリャ 3 0の回転に対するリ ングギヤ 7 0の回転が、 1 2 5回転遅れでオーバトップが設定され、 1 5回 転先行することで停止状態が設定され、 2 Z 5回転先行することで後退が設定さ れる。
上記構成の無段変速装置によれば、 トラクシヨンドライブ方式に基づく連続可 変機構を採用したことにより、 従来の C V Tで必要とされたクラッチ機構、 逆転 切替えギヤ等が不要になり、 又、 入力軸 2 0と出力軸 4 0とを同軸に配置できる ため、 小型かつ安価で、 スピンロスが少なく、 騒音の発生を極力防止でき、 変速 レンジを幅広く設定でき、 高効率のトルク伝達特性を得ることができる。
図 7は、 本発明の第 1の観点に係る無段変速装置の他の実施形態を示すもので あり、 前述の実施形態に対して、 トラクシヨンロータ 9 0 'の傾斜方向、 それ に伴う可動ディスク 8 0 '及びリングギヤ 7 0 '並びにトラクシヨンリング 1 0 0 'を変更したものであり、 それ以外の同一の構成については同一の符号を 付してその説明を省略する。
すなわち、 この実施形態に係る装置においては、 図 7に示すように、 第 1リン ク 9 3に対して 2つのトラクシヨンロータ 9 0 'が回動自在に支持され、 第 2 リンク 9 4に対して 1つのトラクシヨンロータ 9 0 'が回動自在に支持されて いる。
そして、 トラクシヨンロータ 9 0 'の回転中心線 S 'は、 入力軸 2 0の軸線 Lと交差するように傾斜して配置され、 第 1円錐面 9 1 'はリングギヤ 7 0 ' の円錐状の接触面 7 2 '及びトラクシヨンリング 1 0 0 'の円錐状の接触面 1 0 1 ' と接触し、 第 2円錐面 9 2 'は可動ディスク 8 0 'の円筒状の接触面 8 2 ' と接触するように形成されている。 また、 第 1円錐面 9 1 'は、 回転中心 線 S 'が入力軸 2 0の軸線 Lと交わる点に頂点をもつように形成されている。
この装置においても、 前述同様に連続的な変速動作を行うことができ、 スピン ロスを抑制でき、 騒音の発生を極力防止でき、 変速レンジを幅広く設定でき、 高 効率のトルク伝達特性を得ることができ、 特に、 トラクシヨンロータ 90 の 傾斜の向きを変更したことにより、 各部品をより集約化でき、 装置をより小型化 することができる。
図 8及び図 9は、 本発明の第 1の観点に係る無段変速装置のさらに他の実施形 態を示すものであり、 前述の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し てその説明を省略する。 この実施形態の装置においては、 図 8及び図 9に示すよ うに、 トラクシヨンリング 100 は、 ハウジング半体 1 2の環状溝 1 2 c 'に収容されて、 その中心が入力軸 20及び出力軸 40の軸線 Lに対して所定 量だけ偏倚した軸線 L '上に位置した状態で軸線 L '回りに回動自在に支持さ れている。
トラクシヨンロータ 90 ' 'は、 接触面 1 0 1 ' 'をもつトラクシヨンリン グ 1 00 ' ' と可動ディスク 80 (接触面 8 2 ) 及びリングギヤ 70 (接触面 72) との間において、 図 8ないし図 1 0に示すように、 周方向に配列されると 共にハウジング半体 1 2に回動自在に支持された 2つの固定ロータ 90 ' ( 90 a ' ' , 90 b ' ' )、 2つの固定ロータ 90 ' 'に対し相対的に移動可能 に出力軸 40の回りに配置された筒状部材 1 2 eに対して所定の角度範囲を可動 に設けられたリンク 94 'に対して回動自在に支持された 1つの可動ロータ 9 0 ' ' (90 c により形成されている。 尚、 リンク 94 'は、 捩りバネ
95により所定の向きに回転付勢されている。
これにより、 3つのトラクシヨンロータ 90 は公転不能であり、 1つの 可動ロータ 90 ' ' (9 0 c ' ' ) が捩りバネ 9 5の付勢力に抗しつつ 2つの 固定ロータ 9 0 ' ' (9 0 a ' ' , 90 b ' ' ) に対して相対的に移動できる ようになつている。
この装置によれば、 出力軸 40に一定の負荷が加わっている場合、 入力軸 20
及び可動ディスク 80が回転すると、 3つのトラクシヨ ンロータ 90 ' 'が回 転 (自転) して、 リングギヤ 70を回転させ、 所定のトルクが伝達されて出力軸 40が回転する。
一方、 図 10に示すように、 入力軸 20及び可動ディスク 80が C 3方向に回 転する状態において、 出力軸 40の負荷が増加すると、 出力軸 40の回転が遅く なり、 リングギヤ 70はトラクションロータ 90 ' 'の回転 (自転) に対して 遅れ (C 3 '方向) を生じる。 この遅れは、 トラクションロータ 90 ' 'の法 線荷重により生じるトラクシヨントルクが不足するためである。 それ故に、 リン グギヤ 70と固定ロータ 90 ' ' (90 a ' ', 90 b ' ' ) との間に微小な 滑りを生じ、 可動ロータ 90 ' ' (90 c ' ' ) は C 2方向に回転 (自転) し つつ狭い隙間の方向 (C 1方向) に移動して、 トラクシヨンリング 100 ' ' と可動ディスク 80及びリングギヤ 70との間に食い込んで楔作用を生じる。 この楔作用により、 2つの固定ロータ 90 ' ' (90 a ' ' , 90 b ' 一) は、 可動ディスク 80及びリングギヤ 70と トラクシヨンリング 1 00 ' ' と の間により強く締め付けられ (強く挟持され)、 トラクシヨンロータ 90 ' 一の 法線荷重が増加してトラクション係数が大きくなり、 トラクシヨントルクが増加 する。 これにより、 伝達トルクが増加して、 リングギヤ 70の遅れも解消され、 可動ロータ 90 ' (90 c ' ') の移動 (食い込み) も停止し、 トルク伝達 を確実に行い、 確実なトラクシヨンドライブが行われる。
また、 トラクシヨンロータ 90 は、 リングギヤ 70の外周に配置されて 入力軸 20及び出力軸 40から所定の距離だけ隔てた位置でトルクの伝達を行う ので、 小型でも大きなトルクを伝達することができる。
尚、 この装置では、 トラクシヨンリング 100 ' 'は回転するだけで変心運 動を行わないため、 その分だけハウジング 10の外径寸法を小径化することがで さる。
図 1 1は、 前述の図 8及び図 9に示す実施形態に対して、 トラクシヨンロータ
9 0 ' ' 'の傾斜方向、 それに伴う可動ディスク 8 0 '及びリングギヤ 7 0 ' 並びにトラクシヨンリング 1 0 0 ' ' 'を変更したものであり、 それ以外の同 一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
すなわち、 この実施形態に係る装置においては、 図 1 1に示すように、 卜ラタ シヨンロータ (固定ロータ及び可動ロータ) 9 0 ' ' 'の回転中心線 S 'は、 入力軸 2 0の軸線 Lと交差するように傾斜して配置され、 第 1円錐面 9 1 'は リングギヤ 7 0 'の円錐状の接触面 7 2 '及びトラクシヨンリング 1 0 0 ' ' 'の円錐状の接触面 1 0 1 ' ' と接触し、 第 2円錐面 9 2 'は可動ディスク 8 0 'の円筒状の接触面 8 2 ' と接触するように形成されている。 また、 第 1 円錐面 9 1 'は、 回転中心線 S 'が入力軸 2 0の軸線 Lと交わる点に頂点をも つように形成されている。
この装置においても、 前述同様に連続的な変速動作を行うことができ、 スピン ロスを抑制でき、 騒音の発生を極力防止でき、 変速レンジを幅広く設定でき、 高 効率のトルク伝達特性を得ることができ、 特に、 トラクシヨンロータ 9 0一 ' の傾斜の向きを変更したことにより、 各部品をより集約化でき、 装置をより 小型化することができる。
図 1 2及び図 1 3は、 本発明の第 2の観点に係る無段変速装置の一実施形態を 示すものであり、 前述の実施形態と同一の構成については同一の符号を付してそ の説明を省略する。 この実施形態に係る無段変速装置は、 図 1 2及び図 1 3に示 すように、 ハウジング 1 0、 ハウジング 1 0に対して回動自在に支持された入力 軸 2 0、 入力軸 2 0と一体的に回転するように形成されたキヤリャ 3 0 '、 ハ ウジング 1 0に対して回動自在に支持された出力軸 4 0、 出力軸 4 0と一体的に 回転するように形成された太陽ギヤ 5 0、 出力軸 4 0の回りに回動自在に設けら れた回転体としての回転ディスク 1 1 0、 太陽ギヤ 5 0に嚙合した状態で回転デ イスク 1 1 0に対して回動自在に支持されかつ回転ディスク 1 1 0の回転に伴つ て太陽ギヤ 5 0の周りを公転し得る複数 (3つ) の遊星ギヤ 6 0、 入力軸 2 0と
一体的に回転するようにキヤリャ 30 'に連結され複数の遊星ギヤ 60に嚙合 する内歯 7 1 ' 'をもつリングギヤ 70 ' '、 キヤリャ 30 ' と一体的に回転 するようにかつ入力軸 20の軸線 L方向に移動可能に支持された可動体としての 可動ディスク 80 ' '、 可動ディスク 80 ' '及び回転ディスク 1 10の外周 に配列された 3つのトラクシヨンロータ 90 ' ' (2つの固定ロータ及び 1つ の可動ロータ)、 トラクシヨンロータ 90 ' 'の外側に配置されたトラクシヨン リング 100 ' '等を備えている。
そして、 可動ディスク 80 ' '、 回転ディスク 1 10の後述する接触面 1 1 2、 トラクシヨンロータ 90 ' '、 トラクシヨンリング 100 ' '等により、 キヤリャ 30 ' と回転ディスク 1 10との相対的な回転速度を連続的に変化さ せるロータ式連続可変機構が構成されている。
入力軸 20は、 図 1 2に示すように、 その端部において板状のフランジ 21 'を有し、 このフランジ 2 1 'に対して、 略 1 20度の間隔で配置され軸線 L と平行に伸長する円柱状の 3本のピン 22 'が結合されている。 すなわち、 フ ランジ 2 1 '及び 3本のピン 22 'により、 キヤリャ 30 'が構成されている。 キヤリャ 30 ' (ピン 22 ') には、 その先端部において、 リングギヤ 70 ' 一が一体的に回転するように連結されている。 すなわち、 入力軸 20が回転 すると、 キヤリャ 30 '及びリングギヤ 70 'がー体的に回転するようになつ ている。
可動ディスク 80 ' 'は、 図 1 2及び図 1 3に示すように、 キヤリャ 30 ' (ピン 22 ' ) に摺動自在に外嵌される 3つの円孔 8 1 ' 'を有し、 その外周 には、 トラクシヨンロータ 90 ' 'の第 2円錐面 92と接触する円筒状の接触 面 82 ' 'を有する。 そして、 可動ディスク 80 ' ,は、 入力軸 20及びリン グギヤ 70 ' ' と一体的に回転すると共に、 ピン 22 'に沿って軸線 L方向に 往復動自在に支持されている。
回転ディスク 1 10は、 図 12及び図 13に示すように、 3つの遊星ギヤ 60
を回動自在に支持する 3つのピン 1 1 1を有し、 出力軸 40に対して回動自在に 外嵌 (支持) されている。 また、 回転ディスク 1 10は、 その外周において、 ト ラクションロータ 90 ' 'の第 1円錐面 91と接触する円錐状の接触面 1 1 2 を有する。
リングギヤ 70 ' 'は、 太陽ギヤ 50に嚙合した 3つの遊星ギヤ 60に嚙合 する内歯 7 1 ' 'を有し、 回転ディスク 1 10と隣接した位置に配置されてい る。
この装置においては、 可動ディスク 80 ' 'の接触面 82 ' 'が トラクショ ンロータ 90 ' 'の第 2円錐面 92に接触し、 回転ディスク 1 10の接触面 1 1 2がトラクシヨンロータ 90 の第 1円錐面 9 1に接触し、 さらに、 トラ クシヨンロータ 90 ' 'を可動ディスク 80 ' ' と回転ディスク 1 10に押し 付けるようにトラクシヨンリング 100 ' ' (の接触面 101 ' ' ) が第 1円 錐面 91に接触する。
そして、 可動ディスク 80 ' 'が入力軸 20の軸線 L方向に移動することで 、 接触する第 2円錐面 92上の回転半径 rが変化し、 キヤリャ 30 'の回転速 度 (リングギヤ 70 ' 'の回転速度) と回転ディスク 1 10の回転速度 (遊星 ギヤ 60の公転速度) とが相対的に変化する。 すなわち、 可動ディスク 80 ' 'を適宜移動させて、 可動ディスク 80 ' ' (リングギヤ 70 ' ' ) の回転速 度に対して回転ディスク 1 10の回転速度を適宜変化させることで、 変速比を幅 広いレンジで変化させて、 正回転、 停止、 逆回転を連続的に設定することができ る。
このように、 トラクシヨンドライブ方式に基づくロータ式連続可変機構を採用 したことにより、 従来の CVTで必要とされたクラッチ機構、 逆転切替えギヤ等 が不要になり、 又、 入力軸 20と出力軸 40とを同軸に配置できるため、 小型か つ安価で、 スピンロスが少なく、 騒音の発生を極力防止でき、 変速レンジを幅広 く設定でき、 高効率のトルク伝達特性を得ることができる。
図 1 4ないし図 1 6は、 本発明の第 2の観点に係る無段変速装置の他の実施形 態を示すものであり、 前述の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し てその説明を省略する。 この実施形態に係る無段変速装置は、 図 1 4ないし図 1 6に示すように、 ハウジング 1 0、 ハウジング 1 0に対して回動自在に支持され た入力軸 2 0、 入力軸 2 0と一体的に回転するように形成されたキヤリャ 1 3 0 、 ハウジング 1 0に対して回動自在に支持された出力軸 4 0、 出力軸 4 0と一体 的に回転するように形成された太陽ギヤ 5 0、 出力軸 4 0の回りに回動自在に設 けられた回転体としての回転スリーブ 2 1 0、 太陽ギヤ 5 0に嚙合した状態で回 転スリーブ 2 1 0に対して回動自在に支持されかつ回転スリーブ 2 1 0の回転に 伴って太陽ギヤ 5 0の周りを公転し得る複数 (3つ) の遊星ギヤ 6 0、 入力軸 2 0と一体的に回転するようにキヤリャ 1 3 0に連結され複数の遊星ギヤ 6 0に嚼 合する内歯 1 7 1をもつリングギヤ 1 7 0、 回転スリーブ 2 1 0と一体的に回転 するようにかつ出力軸 4 0の軸線方向 Lに移動可能に支持された可動体としての 可動スリーブ 1 8 0、 可動スリーブ 1 8 0及びキヤリャ 1 3 0 (後述するキヤッ プ 2 3 ' ) の外周に配列された 3つのトラクシヨンロータ 1 9 0、 トラクショ ンロータ 1 9 0の外側に配置されたトラクシヨンリング 2 0 0等を備えている。 そして、 後述する円筒状の接触面 1 8 1をもつ可動スリーブ 1 8 0、 キヤリャ 1 3 0の後述する接触面 2 3 a ' , 後述する第 1円錐面 1 9 1及び第 2円錐面 1 9 2をもつトラクシヨンロータ 1 9 0、 トラクシヨンリング 2 0 0等により、 キヤリャ 1 3 0と回転スリーブ (回転体) 2 1 0との相対的な回転速度を連続的 に変化させるベく転がり接触するロータ式連続可変機構が構成されている。 入力軸 2 0は、 図 1 4に示すように、 その端部において円板状に形成されたフ ランジ 2 1 '、 回転スリーブ 2 1 0の周りに回動自在に外嵌されると共にフラ ンジ 2 1 'に対向するように連結されたキャップ 2 3 'を有する。 そして、 フ ランジ 2 1 ' とキャップ 2 3 'によりリングギヤ 1 7 0が挟持された状態でボ ルトにより締結されている。 すなわち、 フランジ 2 1 '及びキヤップ 2 3 'に
より、 入力軸 2 0と一体的に回転するキヤリャ 1 3 0が構成されている。 したが つて、 入力軸 2 0が回転すると、 キヤリャ 1 3 0及びリングギヤ 1 7 0がー体的 に回転するようになっている。
ここで、 キヤリャ 1 3 0のキャップ 2 3 'には、 後述するトラクシヨンロー タ 1 9 0の第 1円錐面 1 9 1が転がり接触する円錐状の接触面 2 3 a 'が形成 されている。
回転スリーブ 2 1 0は、 3つの遊星ギヤ 6 0を回動自在に支持する 3つのピン 2 1 1、 可動スリーブ 1 8 0を軸線方向 Lに案内するためのガイド溝 2 1 2等を 有し、 出力軸 4 0に対して回動自在に外嵌 (支持) されている。
リングギヤ 1 7 0は、 太陽ギヤ 5 0に嚙合した 3つの遊星ギヤ 6 0に嚙合する 内歯 1 7 1を有し、 フランジ 2 1 '及びキャップ 2 3 'に挟持されると共にボ ルトにより締結されて、 入力軸 2 0と一体的に回転するようになっている。 可動スリーブ 1 8 0は、 その外周において、 トラクシヨンロータ 1 9 0の第 2 円錐面 1 9 2と転がり接触する円筒状の接触面 1 8 1、 軸線方向 Lに伸長するガ ィド溝 1 8 2等を有する。 そして、 可動スリーブ 1 8 0は、 ガイド溝 1 8 2 , 2 1 2に挿入されたボール 1 8 3により、 回転スリーブ 2 1 0と一体的に回転する と同時に、 回転スリーブ 2 1 0に対して出力軸 4 0の軸線方向 Lに摺動 (往復動 ) 自在に支持されている。
ここで、 可動スリーブ 1 8 0は、 付勢部材としてのコイルバネ 8 3により一方 側に付勢されており、 コイルバネ 8 3の付勢力に抗して可動スリーブ 1 8 0を移 動させる押圧部材 (不図示) により、 図 1 4中の実線で示す位置と二点鎖線で示 す位置との間を移動させられことで、 変速動作が行われるようになつている。
3つのトラクシヨンロータ 1 9 0は、 前述同様に、 それぞれの回転中心線 Sが 出力軸 4 0の軸線 Lと同一点 P (図 3参照) で交わるように傾斜した状態で回転 (自転) 及び所定の角度範囲を公転し得るように保持プレート 1 9 5に支持され ている。 また、 3つのトラクシヨンロータ 1 9 0は、 キヤリャ 1 3 0の一部をな
すキャップ 2 3 'の接触面 2 3 a ' と接触する第 1円錐面 1 9 1、 可動スリー ブ 1 8 0の接触面 1 8 1と接触する第 2円錐面 1 9 2、 トラクシヨンリング 2 0 0のカム面 2 0 1と接触するベアリング 1 9 3を有する。
尚、 第 1円錐面 1 9 1は、 トラクシヨンロータ 1 9 0の回転中心線 Sが出力軸 4 0の軸線 Lと交わる点 P (図 3参照) にその頂点をもつように形成され、 第 2 円錐面 1 9 2は、 可動スリーブ 1 8 0の接触面 1 8 1が接触する位置でのその母 線が出力軸 4 0の軸線 Lと平行になるように形成されている。
ベアリング 1 9 3は、 第 1円錐面 1 9 1及び第 2円錐面 1 9 2に対して相対的 に回転し得ると同時に、 トラクシヨンリング 2 0 0のカム面 2 0 1と転がり接触 するようになつている。
トラクシヨンリング 2 0 0は、 図 1 4ないし図 1 6に示すように、 軸線 L方向 において所定の厚さを有しかつ輪郭が円板状をなすように形成され、 又、 その内 側において周方向に略等間隔をおいて形成されかつベアリング 1 9 3がそれぞれ 内接して転がり接触する 3つのカム面 2 0 1を有するように形成されている。 そ して、 トラクシヨンリング 2 0 0は、 その中心が径方向に移動自在にかつ入力軸 2 0及び出力軸 4 0の軸線 L回りに回動不能にハウジング 1 0に支持されている。
3つのカム面 2 0 1は、 所定の領域ではベアリング 1 9 3を中心寄りに押し付 ける荷重を小さくし、 他の所定の領域ではベアリング 1 9 3を中心寄りに押し付 ける荷重を大きくする、 すなわち、 法線荷重を増加させるように作用する。
これによれば、 出力軸 4 0の回転速度が入力軸 2 0の回転速度により設定され る値 (所定値) よりも遅くなるとき、 その遅れ分を解消するように、 トラクショ ンロータ 1 9 0 (の接触面 1 9 1 , 1 9 2 ) を接触面 2 3 a ' , 1 8 1に対し て押し付ける法線荷重を自動的に増加させるようになつている。 すなわち、 常に 必要最小限の法線荷重を印加するようにフィードバック制御するため、 必要以上 の法線荷重が印加されることはなく、 入力軸 2 0から出力軸 4 0に対して回転力 が確実に伝達される。
この装置においては、 可動スリーブ 180の接触面 181がトラクシヨンロー タ 1 90の第 2円錐面 192に接触し、 キヤリャ 130の一部をなすキャップ 2 3 'の接触面 23 a '力 Sトラクシヨンロータ 1 90の第 1円錐面 9 1に接触し 、 さらに、 トラクシヨンロータ 1 90を可動スリーブ 180とキヤリャ 130 ( キャップ 23 ' ) に押し付けるようにトラクシヨンリング 200がベアリング 193に接 する。
そして、 可動スリーブ 180が出力軸 40の軸線 L方向に移動することで、 接 触する第 2円錐面 192上の回転半径が変化し、 キヤリャ 1 30の回転速度 (リ ングギヤ 1 70の回転速度) と回転スリーブ 210の回転速度 (遊星ギヤ 60の 公転速度) とが相対的に変化する。 すなわち、 可動スリーブ 180を適宜移動さ せて、 可動スリーブ 180 (回転スリーブ 210) の回転速度に対してリングギ ャ 1 70の回転速度を適宜変化させることで、 変速比を幅広いレンジで変化させ て、 正回転、 停止、 逆回転を連続的に設定することができる。 また、 トラクショ ンロー 1 90の変速比を小さくできるため、 トラクシヨン伝達領域でのスピン口 スを少なくすることができ、 トラクション係数、 伝達効率の点で有利になる。 このように、 トラクシヨンドライブ方式に基づくロータ式連続可変機構を採用 したことにより、 従来の CVTで必要とされたクラッチ機構、 逆転切替えギヤ等 が不要になり、 又、 入力軸 20と出力軸 40とを同軸に配置でき、 しかもトラク ションロータ 190を、 出力軸 40に近づけて配置できるため、 部品を集約化し て小型化でき、 安価で、 スピンロスが少なく、 騒音の発生を極力防止でき、 変速 レンジを幅広く設定でき、 高効率のトルク伝達特性を得ることができる。
上記実施形態においては、 ロータ式連続可変機構として、 可動ディスク 80, 80 ' , 80 ' 'あるいは可動スリーブ 180、 リングギヤ 70, 70 ' , 1 70、 トラクシヨンロータ 90, 90 ' , 90 ' ' , 1 90、 トラクシヨンリ ング 100, 100 ' , 100 ' ', 200等を含む構成を採用したが、 これ に限定されるものではなく、 トラクシヨンドライブ方式に基づくロータ式連続可
変機構であれば、 その他の機構を採用することができる。
上記実施形態においては、 トラクシヨンロータ 9 0 , 9 0 ' , 9 0 ' ' , 1 9 0の個数として 3個、 遊星ギヤ 6 0の個数として 3個を採用した場合を示した 力 これに限定されるものではなく、 その他の個数を採用してもよい。
上記実施形態においては、 太陽ギヤ 5 0、 遊星ギヤ 6 0、 リングギヤ 7 0, 7 0 ' , 7 0 ' ' との相互関係が、 お互いに嚙合するギヤにより トルクを伝達す るものとして示したが、 これに限定されず、 相互間でお互いに転がり接触してト ルクを伝達するトラクション伝達を行う構成を採用してもよい。 産業上の利用可能性
以上述べたように、 本発明の無段変速装置は、 構造が簡単で、 小型かつ安価に でき、 しかも騒音等の発生が極力防止され、 変速レンジを幅広く設定でき、 大き いトルクを伝達することができるため、 小排気量の二輪車、 自動車、 大排気量の 自動車等の変速装置として適用できるのは勿論のこと、 レジャービール等のその 他の車両、 あるいは、 変速装置を必要とする駆動機構等においても好ましく適用 することができる。