JP6094319B2 - 摩擦ローラ式減速機 - Google Patents

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Description

この発明は、例えば電気自動車の駆動系に組み込んだ状態で、電動モータから駆動輪にトルクを伝達する、摩擦ローラ式減速機の改良に関する。
例えば特許文献1、2には、電気自動車の駆動源となる電動モータの効率を向上させて充電1回当りの走行可能距離を長くすべく、高速回転する小型の電動モータの出力軸の回転を減速してから駆動輪に伝達する為に、摩擦ローラ式減速機を使用する事が記載されている。図9〜14は、前記特許文献2に記載された摩擦ローラ式減速機を示している。
この摩擦ローラ式減速機1は、入力軸2により太陽ローラ3を回転駆動し、この太陽ローラ3の回転を、複数個の中間ローラ4、4を介して環状ローラ5に伝達し、この環状ローラ5の回転を出力軸6から取り出す様にしている。前記各中間ローラ4、4は、それぞれの中心部に設けた自転軸7、7を中心として自転するのみで、前記太陽ローラ3の周囲で公転する事はない。この太陽ローラ3は、互いに同じ形状を有する1対の太陽ローラ素子8、8を互いに同心に組み合わせて成り、これら両太陽ローラ素子8、8を軸方向両側から挟む位置に、特許請求の範囲に記載した押圧装置である、1対のローディングカム装置9、9を設置している。これら各要素は、軸方向中間部の径が大きく、両端部の径が小さくなった、段付円筒状のハウジング10内に収納している。
前記入力軸2の基半部(図9の右半部)は前記ハウジング10の入力側小径円筒部11の内側に、入力側玉軸受ユニット12により、前記出力軸6は同じく出力側小径円筒部13の内側に出力側玉軸受ユニット14により、それぞれ回転自在に支持している。前記入力軸2と前記出力軸6とは互いに同心に配置しており、このうちの入力軸2の先端部を、この出力軸6の基端面中央部に形成した円形凹部15の内側に、ラジアル転がり軸受16により支持している。又、前記出力軸6の基端部は、断面L字形の連結部17により、前記環状ローラ5と連結している。
前記両太陽ローラ素子8、8は、前記入力軸2の先半部の周囲に、この入力軸2と同心に、この入力軸2に対する相対回転を可能に、且つ、互いの先端面(互いに対向する面)同士の間に隙間を介在させた状態で配置している。又、前記両ローディングカム装置9、9を構成する1対のカム板18、18は、前記入力軸2の中間部と先端部との2箇所位置で、前記両太陽ローラ素子8、8を軸方向両側から挟む位置に外嵌固定して、前記入力軸2と同期して回転する様にしている。そして、互いに対向する、前記両太陽ローラ素子8、8の基端面と前記両カム板18、18の片側面との、それぞれ円周方向複数箇所ずつに、被駆動側カム面19、19と駆動側カム面20、20とを設け、これら各カム面19、20同士の間にそれぞれ玉21、21を挟持して、前記両ローディングカム装置9、9を構成している。前記各カム面19、20は、軸方向に関する深さが円周方向に関して漸次変化するもので、円周方向中央部で最も深く、同じく両端部に向かうに従って浅くなる。
前記入力軸2にトルクが入力されると、次の様にして、前記各ローラ3〜5の周面同士の転がり接触部である、各トラクション部の面圧を上昇させる。先ず、前記入力軸2にトルクが入力されていない状態では、図10の(A)に示す様に、前記両ローディングカム装置9、9を構成する前記各玉21、21が、前記各カム面19、20の底部若しくは底部に近い側に存在する。この状態では、前記両ローディングカム装置9、9の厚さ寸法が小さく、前記両太陽ローラ素子8、8同士の間隔が拡がっている。そして、前記各中間ローラ4、4が、前記太陽ローラ3及び前記環状ローラ5の径方向に関して外方に押される事はないか、仮に予圧ばねの弾力等により押されたとしても、押される力は小さい。
この状態から、前記入力軸2にトルクが入力される(前記摩擦ローラ式減速機1が起動する)と、前記各玉21、21と前記各カム面19、20との係合に基づき、図10の(B)に示す様に、前記両ローディングカム装置9、9の軸方向厚さが増大する。そして、前記両太陽ローラ素子8、8が、前記摩擦ローラ式減速機1の径方向に関して、前記各中間ローラ4の内側に食い込み、これら各中間ローラ4を、この径方向に関して外方に押す。この結果、前記各トラクション部の面圧が上昇して、これら各トラクション部に過大な滑りを発生させる事なく、前記太陽ローラ3から前記環状ローラ5に動力を伝達できる。尚、前記摩擦ローラ式減速機1に組み込む、前記両ローディングカム装置9、9は、それぞれを構成する太陽ローラ素子8とカム板18との間に、これら両部材8、18を周方向に相対変位させる方向の弾力を付与するばねを設けている。これら両部材8、18がこのばねの弾力に基づいて周方向に相対変位する事で、前記各玉21、21が、前記各カム面19、20の浅い側に乗り上げる傾向になり、前記両ローディングカム装置9、9により前記各トラクション部に予圧を付与できる。
前記摩擦ローラ式減速機1の運転時に前記各中間ローラ4、4は、それぞれの自転軸7、7を中心として回転すると同時に、伝達トルクの変動に伴って前記摩擦ローラ式減速機1の径方向に変位する。この理由は、前記両ローディングカム装置9、9が発生する押圧力が大きくなる程、これら両ローディングカム装置9、9が前記各中間ローラ4、4を、前記環状ローラ5の内周面に向けて押圧する力が大きくなる為である。この様な、前記各中間ローラ4、4の自転及び径方向変位を円滑に行わせる為、前記摩擦ローラ式減速機1では、次の様な構造により前記各中間ローラ4、4を、前記環状ローラ5の内周面と前記太陽ローラ3との間の環状空間22内に設置している。前記各中間ローラ4、4を支持する為に、前記ハウジング10の大径円筒部23の軸方向片側を塞ぐ端板24の内側面に、図11〜12に示す様な支持フレーム25を支持固定している。この支持フレーム25は遊星歯車機構を構成するキャリアの如き構造を有するもので、それぞれが円環状として互いに同心に配置した1対のリム部26a、26bの円周方向等間隔複数箇所同士を、ステー27、27により結合固定して成る。この様な支持フレーム25は、前記リム部26aを前記端板24の内面にねじ止めする事により、前記大径円筒部23の内側に、前記太陽ローラ3と同心に支持固定している。
一方、前記各中間ローラ4、4は、それぞれ揺動フレーム28、28の先端部に、回転自在に支持している。これら各揺動フレーム28、28はそれぞれ、互いに平行な1対の支持板部29、29の基端縁同士を基部30で連結する事により、径方向に見た形状をコ字形としている。前記各中間ローラ4、4の自転軸7、7の端部は、それぞれ前記各揺動フレーム28、28の支持板部29、29の先端部に、玉軸受31、31により、回転自在に支持している。又、前記各揺動フレーム28、28の基端部両側面に互いに同心に突設した揺動軸32、32を、前記両リム部26a、26bの互いに整合する部分に形成した支持孔33、33にがたつきなく挿入している。
前記各揺動軸32、32と前記各自転軸7、7とは、互いに平行で、前記支持フレーム25の円周方向に関する位相が大きくずれている。具体的には、前記各揺動軸32、32と前記各自転軸7、7との円周方向に関するずれを可能な限り大きくすべく、これら各揺動軸32、32とこれら各自転軸7、7とを結ぶ仮想直線の方向を、前記支持フレーム25の中心をその中心とする仮想円弧に関する接線の方向に近くしている。この様な構成により前記各揺動フレーム28、28を前記支持フレーム25に対し、それぞれ揺動軸32、32を中心とする揺動変位を可能にして、前記各中間ローラ4、4を前記支持フレーム25に対し、ほぼこの支持フレーム25の径方向に、円滑に変位できる様に支持している。
前記各中間ローラ4、4の外周面は、軸方向中間部を単なる円筒面とし、両側部分を、前記両太陽ローラ素子8、8の外周面と同方向に同一角度傾斜した、部分円すい凸面状の傾斜面としている。従って、前記各ローラ3〜5の周面同士は互いに線接触し、前記各トラクション部の接触面積を確保できる。又、前記両ローディングカム装置9、9が発生する押圧力の差等に起因して前記各中間ローラ4、4が軸方向に変位する場合に、この変位が円滑に行われる様にしている。即ち、前記環状ローラ5の内周面を単なる円筒面とすると共に、前記各揺動フレーム28、28の支持板部29、29の内側面と前記各中間ローラ4、4の軸方向両端面との間、並びに、これら両支持板部29、29の外側面と前記両リム部26a、26bの内側面との間に、多少の隙間を存在させている。
更に、前記両太陽ローラ素子8、8の基端部外周面に、それぞれ外向フランジ状の鍔部34、34を設けている。即ち、これら両太陽ローラ素子8、8の外周面のうち、前記各中間ローラ4、4の外周面と転がり接触する部分は、先端面に向かうに従って外径が小さくなる方向に傾斜した傾斜面となっており、前記両鍔部34、34は、この傾斜面の基端部から、全周に亙り径方向外方に突出している。そして、これら両鍔部34、34を含む、前記両太陽ローラ素子8、8の基端面に、それぞれ前記各被駆動側カム面19、19を形成している。
上述の様に構成する従来の摩擦ローラ式減速機1は、次の様に作用して、前記入力軸2から前記出力軸6に動力を、減速すると同時にトルクを増大させつつ伝達する。
即ち、電動モータにより前記入力軸2を回転駆動すると、この入力軸2に外嵌した前記両カム板18、18が回転し、前記両太陽ローラ素子8、8が、前記各玉21、21と前記各カム面19、20との係合に基づき、互いに近づく方向に押圧されつつ、前記入力軸2と同方向に同じ速度で回転する。そして、前記両太陽ローラ素子8、8により構成される前記太陽ローラ3の回転が、前記各中間ローラ4、4を介して前記環状ローラ5に伝わり、前記出力軸6から取り出される。前記各トラクション部の面圧は、前記両部材8、18同士の間に設けられたばねに基づく、これら両部材8、18を互いに逆方向に相対変位させる弾力に基づいて発生するカム部押圧力により、前記摩擦ローラ式減速機1の起動の瞬間から或る程度確保される。従って、この起動の瞬間から、前記各トラクション部で過大な滑りを発生させる事なく、動力伝達が開始される。
前記入力軸2に加わるトルクが増大すると、前記両ローディングカム装置9、9を構成する前記各玉21、21の、前記各カム面19、20への乗り上げ量が増大し、これら両ローディングカム装置9、9の軸方向厚さがより一層増大する。この結果、前記各トラクション部の面圧がより一層増大し、これら各トラクション部で、過大な滑りを発生する事なく、大きなトルクの伝達が行われる。これら各トラクション部の面圧は、前記入力軸2と前記出力軸6との間で伝達すべきトルクに応じた適正な値、具体的には必要最小限の値に適切な安全率を乗じた値に、自動的に調整される。この結果、前記両軸2、6同士の間で伝達されるトルクの変動に拘らず、前記各トラクション部で過大な滑りが発生したり、逆に、これら各トラクション部の転がり抵抗が徒に大きくなる事を防止できて、前記摩擦ローラ式減速機1の伝達効率を良好にできる。
しかも、前記各揺動フレーム28、28の揺動変位に基づいて前記各中間ローラ4、4が、前記太陽ローラ3及び前記環状ローラ5の径方向外方に、円滑に変位する。従って、前記各トラクション部の面圧が不均一になる事を防止できて、前記各トラクション部の面圧を適正にし、前記摩擦ローラ式減速機1の伝達効率を、より一層良好にできる。
上述の様な摩擦ローラ式減速機は、耐久性の確保及び伝達効率の向上の面から改良の余地がある。即ち、前記各トラクション部で、グロススリップと呼ばれる有害な滑りを発生させる事なく、動力を伝達できるトラクション係数の限界値(限界トラクション係数μmax)は、前記入力軸2と前記出力軸6との間で伝達すべきトルク以外の条件の影響を受けて変化する。例えば、後述する本発明に関連する参考例の1例に係る図5に実線aで示す様に、トラクション部の周速(前記太陽ローラ3及び前記各中間ローラ4、4の外周面の回転速度)vが速くなる程前記限界トラクション係数μmaxは小さくなる(必要とされる押圧力が大きくなる)。これに対し、前記従来構造の摩擦ローラ式減速機の場合、前記図5に破線bで示す様に、前記各トラクション部に於けるトラクション係数は、周速vに拘らず一定の値となる。この為、周速vが遅い場合には、前記各トラクション部の押し付け力が過度に大きくなり(過押し付け状態となり)、耐久性の低下や伝達効率の低下に繋がる可能性がある。これに対して周速vが遅い場合の押し付け力を適正にすると、周速vが速い場合に、前記各トラクション部でグロススリップが発生し易くなる。
特開2012−197930号公報 特開2012−207778号公報
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、耐久性の確保及び伝達効率の向上を図れる摩擦ローラ式減速機を実現すべく発明したものである。
本発明の摩擦ローラ式減速機は、前述した従来から知られている摩擦ローラ式減速機と同様に、入力軸と、出力軸と、太陽ローラと、環状ローラと、複数個の中間ローラと、押圧装置とを備える。
このうちの太陽ローラは、軸方向に分割された1対の太陽ローラ素子を前記入力軸の周囲に、互いの先端面同士の間に隙間を介在させた状態で互いに同心に配置して成る。そして、前記両太陽ローラ素子の外周面を、それぞれの先端面に向かうに従って外径が小さくなる方向に傾斜した傾斜面とし、これら両傾斜面を転がり接触面としている。
又、前記環状ローラは、前記太陽ローラの周囲にこの太陽ローラと同心に配置されたもので、内周面を転がり接触面としている。
又、前記各中間ローラは、前記太陽ローラの外周面と前記環状ローラの内周面との間の環状空間の円周方向複数箇所に、それぞれが前記入力軸と平行に配置された自転軸を中心とする回転自在に支持されている。そして、この状態で、それぞれの外周面を前記太陽ローラの外周面と前記環状ローラの内周面とに転がり接触させている。
又、前記押圧装置は、前記両太陽ローラ素子のうちの少なくとも一方の太陽ローラ素子であり、前記入力軸に対する相対回転を可能とされた可動太陽ローラ素子とこの入力軸との間に設けられ、この入力軸の回転に伴ってこの可動太陽ローラ素子を相手方の太陽ローラ素子に向けて軸方向に押圧しつつ回転させるものである。この為に、前記押圧装置を、前記可動太陽ローラ素子の基端面の円周方向複数箇所に設けられた被駆動側カム面と、前記入力軸の一部に固定されてこの入力軸と共に回転するカム板のうちで前記可動太陽ローラ素子の基端面に対向する片側面の円周方向複数箇所に設けられた駆動側カム面との間に転動体を挟持して成るものとする。そして、これら各駆動側カム面及び前記各被駆動側カム面をそれぞれ、軸方向に関する深さが円周方向に関して漸次変化して端部に向かうに従って浅くなる形状を有するものとする。
更に、前記環状ローラと前記各自転軸を支持した部材とのうちの一方の部材を、前記太陽ローラを中心とする回転を阻止した状態とし、他方の部材を前記出力軸に結合して、この他方の部材によりこの出力軸を回転駆動自在としている。
特に、本発明の摩擦ローラ式減速機に於いては、前記可動太陽ローラ素子と前記カム板との間に油圧室を設け、この油圧室に、前記入力軸の回転に伴い発生する遠心力に基づいて油圧を立ち上げ自在とする。そして、前記押圧装置が発生する軸方向の押圧力を、前記各転動体が前記駆動側、被駆動側各カム面に乗り上げる事で発生する力と、前記油圧の立ち上がりに伴って発生する力とを合計した力とする。
又、前記各転動体を玉とし、前記各駆動側カム面と前記各被駆動側カム面との間に、これら各玉を保持する円輪状の保持器を装着する。そして、この保持器の軸方向両側面のうちで、それぞれ円周方向に関する位相が前記各玉を保持する為のポケットから外れた部分である複数箇所に、前記カム板及び前記可動太陽ローラ素子に向け突出した突起を設ける。又、このカム板の片側面及びこの可動太陽ローラ素子の基端面のうち、これら各突起と対向する部分に、軸方向に関する深さが、円周方向中央部で最も深く、同じく両端部に向かうに従って浅くなる凹部を形成する。
上述の様な本発明の摩擦ローラ式減速機を実施する場合に、具体的には請求項2に記載した発明の様に、前記可動太陽ローラ素子の内周面を、先端面に向かう程内径が小さくなる方向に傾斜した、部分円すい凹面状の傾斜面とする。そして、前記可動太陽ローラ素子の先端部開口から潤滑油(トラクションオイル)を供給し、この潤滑油を、この可動側太陽ローラ素子の内周面に沿って前記油圧室に送り込む。
上述の様な請求項2に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項3に記載した発明の様に、前記可動太陽ローラ素子の基端部外周面に外向フランジ状の鍔部を、前記カム板の外周面に、この可動太陽ローラ素子を設置した側に向かって突出した円筒部を、それぞれ設ける。そして、前記鍔部の外周面とこの円筒部の内周面とを近接対向させる。
上述の様な請求項3に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項4に記載した発明の様に、前記鍔部の外周面と前記円筒部の内周面との間にオイルシールを設ける。
上述の様な本発明の摩擦ローラ式減速機を実施する場合に好ましくは、請求項に記載した発明の様に、前記各突起を、円周方向に関する位相が、隣り合う前記各ポケット同士の中間部となる部分に形成する。
又、請求項に記載した発明の様に、前記各凹部の円周方向両端部の傾斜角度をθとし、前記入力軸の回転中心とこの凹部の径方向中央部との間の距離をRとし、前記第一、第二の両カム面の傾斜角度φとし、前記入力軸の回転中心とこれら第一、第二の両カム面の径方向中央部との間の距離をrとした場合に、(不可避的な製造誤差等、実用上問題を生じない程度の誤差を除き、)Rtanθ=rtanφの関係を満たすものとする。
又、請求項に記載した発明の様に、前記各突起の軸方向高さを、前記カム板と前記可動太陽ローラ素子との間の隙間の軸方向厚さの最大値と最小値との差の1/2よりも大きくする。
上述の様に構成する本発明の摩擦ローラ式減速機によれば、耐久性の確保及び伝達効率の向上を図れる。即ち、押圧装置が発生する軸方向の押圧力を、各転動体が各カム面に乗り上げる事で発生する力と、入力軸の回転に伴い発生する遠心力に基づいて、カム板と可動太陽ローラ素子との間に設けた油圧室で油圧を立ち上げる事により発生する力との合計としている。従って、前記押圧装置が発生する軸方向の押圧力を、前記入力軸の回転が速くなる程大きくできる。この結果、前記摩擦ローラ式減速機の各トラクション部のトラクション係数を、これら各トラクション部の周速が速くなる程小さく(押圧力を大きく)できる。
本発明に関連する参考例の1例の摩擦ローラ式減速機を、一部を取り出して示す分解斜視図。 同じく組み立てた状態で示す断面図。 図2のX部拡大図。 カム板を取り出して示す端面図。 本発明の効果を説明する為の線図。 本発明の実施の形態の1例を示す、図1と同様の図。 同じく組み立てた状態で示す側面図。 駆動側、被駆動側各カム面と玉との係合状態を説明する為の模式図(a)と、突起と凹部との係合状態を説明する為の模式図(b)。 従来構造の1例を示す断面図。 予圧付与の為の機構を説明する為の模式図。 中間ローラの自転軸を、太陽ローラ及び環状ローラの径方向に変位可能に支持する部分の構造を示す斜視図。 同じく分解斜視図。 揺動フレームと中間ローラとを組み合わせたユニットを1個だけ取り出して示す斜視図。 更にこのユニットを揺動フレームと中間ローラとに分けた状態で示す分解斜視図。
本発明に関連する参考例の1例
図1〜5は、本発明に関連する参考例の1例を示している。本参考例を含め、本発明の摩擦ローラ式減速機の特徴は、各トラクション部の周速vに応じこれら各トラクション部のトラクション係数μを調整する(周速vが速くなる程、法線力を大きくする)事で、グロススリップの発生を抑えつつ、耐久性の確保及び伝達効率の向上を図る為の構造にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図9〜14に示した従来構造の場合と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本参考例の特徴部分を中心に説明する。又、本参考例の摩擦ローラ式減速機は、太陽ローラ3aを構成する1対の太陽ローラ素子8a、8aを軸方向両側から挟む位置に、1対の押圧装置35を設置している。これら両押圧装置35の構造は、(前記両太陽ローラ素子8a、8aに予圧を付与する部分の構造が対称である等、本発明の要旨とは関係しない部分を除き、)同一であるので、以下の説明は、前記両押圧装置35のうちの一方(図1〜3の右方)の押圧装置35に就いてのみ行う。
本参考例の場合、押圧装置35は、太陽ローラ素子8aと、カム板18aと、複数の玉21、21とを備える。このうちの太陽ローラ素子8aは、入力軸2aの中間部に、この入力軸2aと同心に、且つ、この入力軸2aに対する相対回転及び軸方向変位を可能に支持している。前記太陽ローラ素子8aの基端部外周面には、外向フランジ状の鍔部34aを設け、この鍔部34aを含むこの太陽ローラ素子8aの基端面の円周方向複数箇所に、被駆動側カム面19、19を設けている。この太陽ローラ素子8aのうちで、中間ローラ4、4(図9〜14参照)の外周面と転がり接触する先端部外周面は、先端面に向かうに従って外径が小さくなる方向に傾斜した、部分円すい凸面状の傾斜面としている。又、前記太陽ローラ素子8aの内周面は、先端面に向かう程内径が小さくなる方向に傾斜した、部分円すい凹面状の傾斜面としている。この為、前記摩擦ローラ式減速機の運転時に、前記太陽ローラ素子8aの先端部開口から供給された(入り込んだ)潤滑油(トラクションオイル)は、この太陽ローラ素子8aの内周面に沿ってこの太陽ローラ素子8aの基端面側に送り込まれる。
又、前記カム板18aは、前記入力軸2aの基端寄り部分に、この入力軸2aと同心に、この入力軸2aと同期した回転を可能、且つ、この入力軸2aに対する軸方向変位を阻止した状態で支持している。この為に、この入力軸2aの基端部に、外向フランジ部36を設け、この外向フランジ部36の片側面(図1〜3の左側面)に、前記カム板18aの他側面を突き当てている。このカム板18aの片側面の円周方向複数箇所には、駆動側カム面20、20を設けている。又、このカム板18aの片側面の外周縁部に、前記太陽ローラ素子8aを設置した側(図1〜3の左側)に向かって突出した円筒部37を設け、この円筒部37の内周面と前記太陽ローラ素子8aの鍔部34aの外周面とを近接対向させている。これら円筒部37の内周面と鍔部34aの外周面との間には、オイルシールであるOリング38を設け、これら両面同士の間の油密を保持しつつ、前記太陽ローラ素子8aと前記カム板18aとの相対回転、及び、このカム板18aに対するこの太陽ローラ素子8aの軸方向変位を可能としている。この様な構造により、前記カム板18aの片側面とこの太陽ローラ素子8aの基端面との間に油圧室39を設けている。
又、前記各玉21、21は、前記被駆動側、駆動側各カム面19、20同士の間に挟持している。
上述の様な本参考例の摩擦ローラ式減速機は、前記入力軸2aにトルクが入力される(この摩擦ローラ式減速機が起動する)と、前記各玉21、21と前記各カム面19、20との係合に基づき、前記押圧装置35の軸方向厚さが増大する。又、前記太陽ローラ素子8aの先端部開口から取り込まれた潤滑油が、この太陽ローラ素子8aが回転する事で発生する遠心力によりこの太陽ローラ素子8aの内周面に沿って、前記各玉21、21の設置空間である前記油圧室39内に送り込まれる(入り込む)。これにより、これら各玉21、21と前記各カム面19、20との転がり接触部を潤滑し、これら各転がり接触部でフレッチングが発生するのを防止すると共に、前記潤滑油が前記油圧室39の外径寄り部分に押し付けられて、この油圧室39内に油圧を立ち上げる。従って、前記押圧装置35が発生する押圧力は、前記各玉21、21と前記各カム面19、20との係合に基づいて、この押圧装置35の軸方向厚さが増大する事に基づく力と、前記油圧室39内で立ち上がった油圧に基づく力とを合計した力となる。そして、この合計した力により前記両太陽ローラ8a、8aが互いに近付く方向に押圧され、前記各トラクション部の面圧が増大する。
上述の様な本参考例の摩擦ローラ式減速機によれば、耐久性の確保及び伝達効率の向上を図れる。即ち、前記押圧装置35が発生する押圧力は、前記各玉21、21と前記各カム面19、20との係合に基づいて、この押圧装置35の軸方向厚さが増大する事に基づく力と、前記太陽ローラ素子8aの回転に伴い発生する遠心力に基づいて前記油圧室39内で立ち上がった油圧による力とを合計した力となる。このうちの遠心力に基づく力は、前記太陽ローラ素子8aの回転速度が速くなり、前記油圧室39内に取り込まれた潤滑油がこの油圧室39の外径寄り部分に押し付けられる遠心力が大きくなる程、大きくなる。従って、前記各トラクション部の周速vが速くなる程前記押圧装置35が発生する押圧力を増大させられ、図5に鎖点cで示す様に、これら各トラクション部に於けるトラクション係数μを小さくできる。この結果、トラクション係数μと周速vとの関係を、前述の図9〜14に示した従来構造と比較して、前記図5に実線aで示した限界トラクション係数μmaxと周速vとの関係に近付けられる。この為、周速vが遅い場合に、前記各トラクション部の押し付け力が過度に大きくなるのを抑えられつつ、周速vが速い場合に必要とされる押し付け力を確保できて、耐久性の確保や伝達効率の向上を図れる。
又、本参考例の場合、前記太陽ローラ素子8aの回転に伴い発生する遠心力に基づいて、前記油圧室39内で油圧を立ち上げる様にしている。即ち、この油圧室39内で油圧を立ち上げるのにポンプ等を設ける必要がなく、摩擦ローラ式減速機が大型化したり、ポンプロスを生じる事はない。又、前記油圧室39を、前記各玉21、21の設置空間である、前記太陽ローラ素子8aの基端面と前記カム板18aの片側面との間に設けている。即ち、前記各玉21、21と前記カム面19、20とから成るローディングカム機構と直列に、新たに油圧室を設ける場合の様に、摩擦ローラ式減速機全体の軸方向長さが増大する事はない。この面からも摩擦ローラ式減速機の大型化を防止できる。
又、前記太陽ローラ素子8aの先端部開口から取り込んだ潤滑油を、この太陽ローラ素子8aの回転に伴い発生する遠心力によりこの太陽ローラ素子8aの内周面に沿って、前記油圧室39内に送り込む様にしている。太陽ローラ素子とカム板との間に設けた油圧室内に潤滑油を送り込む方法としては、入力軸内に潤滑油流路を設け、この潤滑油流路を通じて前記油圧室内に潤滑油を送り込む事が考えられる。しかし、電気自動車用駆動装置に組み込む電動モータは、30000[min−1]以上の速さで回転する電動モータを使用する。摩擦ローラ式減速機の運転時にも回転しないハウジングから、高速回転する入力軸内に設けた潤滑油流路に潤滑油を供給する為には、前記油圧室に潤滑油を送り込む部分の構造が複雑化する可能性がある。これに対し、本参考例の場合、潤滑油を、前記太陽ローラ素子8aの先端部開口から取り込み、この太陽ローラ素子8aの内周面に沿って前記油圧室39内に送り込む為、当該部分の構造が徒に複雑となる事はない。
尚、本参考例の場合、前記遠心力に基づいて前記油圧室39内に潤滑油を取り込み可能にする為、前記太陽ローラ素子8aの内周面を、先端面に向かう程内径が小さくなる方向に傾斜した、部分円すい凹面状の傾斜面としている。これに対し、前記太陽ローラ素子8aの先端部外周面は、先端面に向かうに従って外径が小さくなる方向に傾斜した、部分円すい凸面状の傾斜面としている。この為、前記太陽ローラ素子8aの内周面を部分円すい凹面状の傾斜面とする事で、この太陽ローラ素子8aのうち、外周面が前記各中間ローラ4、4と転がり接触する部分の径方向厚さが過度に薄くなる事がない為、前記太陽ローラ素子8aの強度及び剛性を確保できると共に、軽量化の面からも有利になる。
[実施の形態の1例
図6〜8は、総ての請求項に対応する、本発明の実施の形態の1例を示している。本例の摩擦ローラ式減速機を構成する押圧装置35aは、この押圧装置35aを構成する玉21a、21aに加わる遠心力を支承し、これら各玉21a、21aの径方向位置を適正な状態に規制する為の保持器40を備える。この保持器40は、円周方向複数箇所(図示の例の場合は3箇所)に、前記各玉21a、21aを転動自在に保持する為のポケット41、41を、互いに等間隔に形成している。更に、本例の場合、前記保持器40の軸方向両側面のうち、円周方向に関する位相が、前記各ポケット41、41から外れた部分である、隣り合うこれら各ポケット41、41同士の円周方向中間部の径方向内寄り部分に、太陽ローラ素子8bの基端面及びカム板18bの片側面に向けて突出する突起42を、前記保持器40と一体に設けている。これら各突起42、42の軸方向高さhは、前記押圧装置35aの軸方向厚さdの最大値と最小値との差Δdの1/2よりも大きくしている(h>Δd/2)。
又、前記太陽ローラ素子8bの基端面及び前記カム板18bの片側面のうちで前記各突起42と対向する径方向内寄り部分に、軸方向に関する深さが、円周方向中央部で最も深く、同じく両端部に向かうに従って浅くなる凹部43、43を設けている。これら各凹部43、43の円周方向に関する傾斜角度θは、被駆動側、駆動側各カム面19、20の同方向に関する傾斜角度をφとし、前記押圧装置35aの中心軸と前記各凹部43、43の径方向中央部との間の距離をRとし、この中心軸と前記各カム面19、20の径方向中央部との距離をrとした場合に、(不可避的な製造誤差等、実用上問題を生じない程度の誤差を除き、)Rtanθ=rtanφの関係を満たす様に規制している。これにより、前記各玉21a、21aの、前記各カム面19、20への乗り上げ量の増大に伴う前記太陽ローラ素子8bの基端面と前記カム板18bの片側面との間の隙間の増大に拘らず、前記各突起42、42の先端部と前記各凹部43、43の底面とを近接対向させたままにできる。即ち、前記回転軸が停止している状態では、前記各玉21a、21aが、図8の(a)(A)に示す様に、前記各カム面19、20の最も深くなった部分に位置する。この状態では、前記各突起42、42の先端部は、図8の(b)(A)に示す様に、前記各凹部43、43のうち、軸方向に関する深さが最も深くなった円周方向中央部の底面に近接対向する。これに対して、前記回転軸が回転すると、前記各玉21a、21aが、図8の(a)(B)に示す様に、前記各カム面19、20の浅くなった部分に移動する。そして、前記太陽ローラ素子8bと前記カム板18bとの間隔を拡げる。この状態では、前記各突起42、42の先端部は、図8の(b)(B)に示す様に、前記各凹部43、43の端部寄り部分の底面に近接対向する。又、本例の場合、前記各突起42、42の軸方向高さhを、前記押圧装置35aの軸方向厚さdの最大値と最小値との差Δdの1/2よりも大きくしている為、前記太陽ローラ素子8bの基端面と前記カム板18bの片側面との間の隙間の軸方向厚さが最大となった場合でも、前記各突起42、42と前記各凹部43、43との係合が外れる事はない。
尚、本例の場合、前記各玉21a、21aを、セラミックス(例えば窒化珪素、炭化珪素、アルミナ、ジルコニア)製としている。この為、前記各玉21a、21aを鉄系金属(高炭素クロム軸受鋼、ステンレス鋼等)により造った場合と比較して、前記回転軸が回転運動する際に、前記各玉21a、21aに加わる遠心力を小さく抑えられる。
上述の様な押圧装置35aを備えた本例の摩擦ローラ式減速機によれば、この押圧装置35aの作動に伴う前記太陽ローラ素子8bの基端面と前記カム板18bの片側面との間の隙間の増大に拘らず、前記保持器40が倒れたり、軸方向にがたつくのを防止できる。即ち、前記隙間の増大に拘らず、前記各突起42、42の先端部と前記各凹部43、43の底面とが近接対向したままとなる。この為、前記保持器40が軸方向に変位する傾向となった場合、前記各突起42、42の先端部と前記各凹部43、43の底面とが当接して、前記保持器40が倒れたり、軸方向にがたつくのが防止される。又、本例の場合、前記各突起42、42を、前記保持器40の軸方向両側面のうち、円周方向に関する位相が、前記各ポケット41、41から外れた部分に形成している。この為、前記各玉21a、21aに加わる遠心力に基づいて、前記各ポケット41、41の内面から前記保持器40に加わる力の作用位置と、前記各突起42、42の存在に基づいてこの保持器40に加わる力の作用位置とが、円周方向にずれる。この結果、前記各ポケット41、41を形成した部分に応力が過度に集中するのを防止して、前記保持器40の耐久性を確保できる。
その他の部分の構成及び作用は、上述した参考例の1例と同様であるから、重複する図示並びに説明は省略する。
本発明を実施する場合に、出力軸と共に回転するローラは、必ずしも環状ローラである必要はない。即ち、遊星ローラ式の摩擦ローラ式減速機で、本発明を実施する事もできる。この場合には、各中間ローラを、太陽ローラの周囲で自転しつつ公転する遊星ローラとし、これら各遊星ローラを支持しているキャリアに、出力軸の基端部を、トルクの伝達を可能に結合する。又、環状ローラをハウジングの内面に回転を阻止した状態で組み付ける。
1 摩擦ローラ式減速機
2、2a 入力軸
3、3a 太陽ローラ
4 中間ローラ
5 環状ローラ
6 出力軸
7 自転軸
8、8a、8b 太陽ローラ素子
9 ローディングカム装置
10 ハウジング
11 入力側小径円筒部
12 入力側玉軸受ユニット
13 出力側小径円筒部
14 出力側玉軸受ユニット
15 円形凹部
16 ラジアル転がり軸受
17 連結部
18、18a、18b カム板
19 被駆動側カム面
20 駆動側カム面
21、21a 玉
22 環状空間
23 大径円筒部
24 端板
25 支持フレーム
26a、26b リム部
27 ステー
28 揺動フレーム
29 支持板部
30 基部
31 玉軸受
32 揺動軸
33 支持孔
34、34a 鍔部
35、35a 押圧装置
36 外向フランジ部
37 円筒部
38 油圧室
39 Oリング
40 保持器
41 ポケット
42 突起
43 凹部

Claims (7)

  1. 入力軸と、出力軸と、太陽ローラと、環状ローラと、複数個の中間ローラと、押圧装置とを備え、
    このうちの太陽ローラは、軸方向に分割された1対の太陽ローラ素子を前記入力軸の周囲に、互いの先端面同士の間に隙間を介在させた状態で互いに同心に配置して成るもので、前記両太陽ローラ素子の外周面は、それぞれの先端面に向かうに従って外径が小さくなる方向に傾斜した傾斜面とし、これら両傾斜面を転がり接触面としており、
    前記環状ローラは、前記太陽ローラの周囲にこの太陽ローラと同心に配置されたもので、内周面を転がり接触面としており、
    前記各中間ローラは、前記太陽ローラの外周面と前記環状ローラの内周面との間の環状空間の円周方向複数箇所に、それぞれが前記入力軸と平行に配置された自転軸を中心とする回転自在に支持された状態で、それぞれの外周面を前記太陽ローラの外周面と前記環状ローラの内周面とに転がり接触させており、
    前記押圧装置は、前記両太陽ローラ素子のうちの少なくとも一方の太陽ローラ素子であり、前記入力軸に対する相対回転を可能とされた可動太陽ローラ素子とこの入力軸との間に設けられて、この入力軸の回転に伴ってこの可動太陽ローラ素子を相手方の太陽ローラ素子に向けて軸方向に押圧しつつ回転させるものであって、この可動太陽ローラ素子の基端面の円周方向複数箇所に設けられた被駆動側カム面と、前記入力軸の一部に固定されてこの入力軸と共に回転するカム板のうちで前記可動太陽ローラ素子の基端面に対向する片側面の円周方向複数箇所に設けられた駆動側カム面との間に転動体を挟持して成るもので、これら各駆動側カム面及び前記各被駆動側カム面はそれぞれ、軸方向に関する深さが円周方向に関して漸次変化して端部に向かうに従って浅くなる形状を有するものであり、
    前記環状ローラと前記各自転軸を支持した部材とのうちの一方の部材を、前記太陽ローラを中心とする回転を阻止した状態とし、他方の部材を前記出力軸に結合して、この他方の部材によりこの出力軸を回転駆動自在とした摩擦ローラ式減速機に於いて、
    前記可動太陽ローラ素子と前記カム板との間に油圧室を設け、この油圧室に、前記入力軸の回転に伴い発生する遠心力に基づいて油圧を立ち上げ自在としており、前記押圧装置が発生する軸方向の押圧力を、前記各転動体が前記駆動側、被駆動側各カム面に乗り上げる事で発生する力と、前記油圧の立ち上がりに伴って発生する力との合計としており、
    前記各転動体が玉であり、前記各駆動側カム面と前記各被駆動側カム面との間に、これら各玉を保持する円輪状の保持器を装着し、この保持器の軸方向両側面のうちで、円周方向に関する位相が前記各玉を保持する為のポケットから外れた部分の円周方向複数箇所に、前記カム板及び前記可動太陽ローラ素子に向け突出した突起を設けると共に、このカム板の片側面及びこの可動太陽ローラ素子の基端面のうち、これら各突起と対向する部分に、軸方向に関する深さが、円周方向中央部で最も深く、同じく両端部に向かうに従って浅くなる凹部を形成している事を特徴とする摩擦ローラ式減速機。
  2. 前記可動太陽ローラ素子の内周面が、先端面に向かう程内径が小さくなる方向に傾斜した、部分円すい凹面状の傾斜面であり、前記可動太陽ローラ素子の先端部開口から潤滑油を供給し、この潤滑油を、この可動側太陽ローラ素子の内周面に沿って前記油圧室に送り込む、請求項1に記載した摩擦ローラ式減速機。
  3. 前記可動太陽ローラ素子の基端部外周面に外向フランジ状の鍔部を、前記カム板の外周面に、この可動太陽ローラ素子を設置した側に向かって突出した円筒部を、それぞれ設けており、前記鍔部の外周面とこの円筒部の内周面とを近接対向させている、請求項2に記載した摩擦ローラ式減速機。
  4. 前記鍔部の外周面と前記円筒部の内周面との間にオイルシールを設けている、請求項3に記載した摩擦ローラ式減速機。
  5. 前記各突起を、円周方向に関する位相が、隣り合う前記各ポケット同士の中間部となる部分に形成している、請求項1〜4のうちの何れか1項に記載した摩擦ローラ式減速機。
  6. 前記各凹部の円周方向両端部の傾斜角度をθとし、前記入力軸の回転中心とこれら各凹部の径方向中央部との間の距離をRとし、前記第一、第二の両カム面の傾斜角度φとし、前記入力軸の回転中心とこれら第一、第二の両カム面の径方向中央部との間の距離をrとした場合に、Rtanθ=rtanφの関係を満たす、請求項1〜5のうちの何れか1項に記載した摩擦ローラ式減速機。
  7. 前記各突起の軸方向高さを、前記カム板と前記可動太陽ローラ素子との間の隙間の軸方向厚さの最大値と最小値との差の1/2よりも大きくしている、請求項1〜6のうちの何れか1項に記載した摩擦ローラ式減速機。
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