JP2018197594A - 摩擦ローラ式減速機及びこれを用いた減速機ユニット - Google Patents

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宏樹 濱田
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Abstract

【課題】遠心油圧の影響を受けずに高い動力伝達効率が得られ、しかも減速機自体の軸方向長さを短縮して小型軽量化が図れる摩擦ローラ式減速機及びこれを用いた減速機ユニットを提供する。【解決手段】摩擦ローラ式減速機は、サンローラ15が、入力軸11の軸方向に並設された一対のサンローラ素子35,37を有する。サンローラ素子35,37の転がり接触面37a,37aと中間ローラ19の転がり接触面19a,19bは、サンローラ素子同士が互いに対向する対向側端面41,43から軸方向反対側の外側端面45,47に向かって、入力軸11の中心線Axまでの半径距離が短くなる傾斜面である。サンローラ素子35,37の対向側端面の間には、サンローラ素子同士を軸方向に離反させる軸方向力を発生させるピストン室89と、遠心油圧を低減させるキャンセラ室91とが形成されている。【選択図】図2

Description

本発明は、摩擦ローラ式減速機及びこれを用いた減速機ユニットに関する。
電気自動車の駆動源となる電動モータの出力軸に接続され、モータ出力軸の回転を減速して駆動輪に伝達する摩擦ローラ式減速機が知られている(例えば特許文献1,2)。この摩擦ローラ式減速機は、図9(A),(B)に一例として示すように、モータ出力軸に接続される入力軸301に取り付けられたサンローラ303と、サンローラ303の外周面に転がり接触する複数の中間ローラ305と、サンローラ303と同心に配置され内周面に中間ローラ305が転がり接触するリングローラ307と、ローディングカム機構309と、を有する。リングローラ307は減速機の出力軸に接続される。上記構成の摩擦ローラ式減速機は、サンローラ303が、電動モータからの回転トルクを、中間ローラ305を介してリングローラ307に伝達する。このリングローラ307の回転トルクが減速機の出力軸から取り出される。
図示例のサンローラ303は、一対のサンローラ素子311,313からなる。一方のサンローラ素子311は、入力軸301に固定される。他方のサンローラ素子313は、入力軸301に回転方向に関して固定され、軸方向に関して移動可能に支持される。サンローラ素子313のサンローラ素子311と反対側の背面には、ローディングディスク315が配置される。このローディングディスク315は、入力軸301に固定される。サンローラ素子313の背面と、この背面に対面するローディングディスク315の片側端面には、それぞれカム溝317,319が形成され、カム溝317,319の間に玉321が配置される。このローディングカム機構309により、入力軸301からの回転トルクが増大するほど、サンローラ素子313の軸方向移動に伴う中間ローラ305へのトラクション面法線方向の法線力が高められる。
上記のローディングカム機構309は、サンローラ303の軸方向片側のみに配置されているが、図10に示すように、カム溝317が形成されたサンローラ素子314に対面してローディングカム機構309Aが配置され、サンローラ素子313に対面してローディングカム機構309Bが配置された構成、つまり、サンローラ素子313,314からなるサンローラ303Aの軸方向両側にローディングカム機構309A,309Bが配置された構成にもできる。
特開2012−207778号公報 特開2014−190537号公報
サンローラ素子に軸方向力を付与する機構としては、上記した図9(A),(B)や図10に示すローディングカム機構のようなトルク感応式や、バネによる固定押付式の機構が多く採用される。ローディングカム機構の場合、伝達トルクの低トルク領域における最低限の軸方向力を確保するために、バネとローディングカムとを組み合わせて用いる形式が多い。
このローディングカム機構は、いかなる運転条件であっても、設計時に決められたトラクション係数に基づいて通過トルクに比例した軸方向力を発生させるため、ロバスト性が高い。しかし、ローディングカム機構のような機械式ローディングデバイスにおいては、使用温度や通過トルク等の運転条件の変化に応じてトラクション係数の変更ができない不利がある。
自動車用途の摩擦ローラ式減速機は,使用温度や通過トルク等の運転条件が常に変化し、トラクション面のグロススリップ発生限界となる限界トラクション係数も常に変化する。トラクション係数が限界トラクション係数を超えた場合、トラクション面にはグロススリップが発生し、特に通過動力等が過酷となる条件下では、焼付き等の破損を生ずるおそれがある。
そこで、上記の機械式ローディングデバイスにおいては、運転時のトラクション係数が、常に変化する限界トラクション係数を超えないように、相当の余裕を見込んで設計トラクション係数を決定している。
一般に、トラクション油のトラクションカーブ(横軸をクリープ、縦軸をトラクション係数とした特性カーブ)において、設計トラクション係数をトラクションカーブが比例関係にある領域内に定めている場合が多い。この比例領域内では、トラクション係数が高いほど軸方向力が減少するため、動力伝達効率が向上する。そのため、トルク感応型の機械式ローディングデバイスにおいては、上記の通りグロススリップ発生限界に対して十分な余裕を見込む必要があるため、動力伝達効率の向上には改善の余地があった。
また、動力伝達効率を改善するためには、運転条件に応じて、伝達トルクだけでなく、運転時のトラクション油の温度や、その他の要因を加味して軸方向力を任意に調整できる油圧式を採用することが好ましい。
しかしながら、油圧式ローディングデバイスを採用した場合、回転速度に依存した遠心油圧が発生し、油圧駆動されるピストンの動きを阻害したり、必要以上の軸方向力を付与したりして、動力伝達効率が低下するおそれがある。また、機械式だけでなく油圧式も含めたローディングデバイスは、2個のサンローラ素子同士の軸方向外側に配置される構成が一般的である。そのため、摩擦ローラ式減速機の軸方向長さが大きくなることが避けられず、小型軽量化には改善の余地があった。
そこで本発明は、油圧式ローディングデバイスを採用した場合でも遠心油圧の影響を受けずに高い動力伝達効率が得られ、しかも減速機自体の軸方向長さを短縮して小型軽量化が図れる摩擦ローラ式減速機及びこれを用いた減速機ユニットの提供を目的とする。
本発明は下記構成からなる。
(1) 入力軸と同心に配置されるサンローラと、前記サンローラの外周側に前記サンローラと同心に配置され、出力軸に連結されるリングローラと、前記サンローラの外周面と前記リングローラの内周面に転がり接触する複数の中間ローラと、を備える摩擦ローラ式減速機であって、
前記サンローラは、前記入力軸の軸方向に並設された一対のサンローラ素子を有し、前記サンローラ素子は、前記入力軸の軸方向に移動可能、且つ回転方向に固定された状態で前記入力軸にそれぞれ支持され、
前記サンローラ素子の転がり接触面と前記中間ローラの転がり接触面は、前記サンローラ素子同士の対向側端面から軸方向反対側の外側端面に向かって、前記入力軸の中心線までの半径距離が短くなる傾斜面であり、
一対の前記サンローラ素子の間に、それぞれトラクション油が供給されるピストン室とキャンセラ室とが設けられ、
前記ピストン室は、前記サンローラ素子同士を前記軸方向に離反させる軸方向力を発生し、
前記キャンセラ室は、前記入力軸の回転によって前記ピストン室に発生する遠心油圧を低減させる軸方向力を発生する摩擦ローラ式減速機。
(2) (1)に記載の摩擦ローラ式減速機と、
前記ピストン室と前記キャンセラ室のそれぞれにトラクション油を個別に供給する油圧供給部と、
前記摩擦ローラ式減速機の運転条件を検出する運転条件検出部と、
検出された前記運転条件に応じて前記ピストン室の油圧を増減させる圧力制御部と、
を備える減速機ユニット。
本発明は、油圧式ローディングデバイスを採用した場合でも遠心油圧の影響を受けずに高い動力伝達効率が得られ、しかも減速機自体の軸方向長さを短縮して小型軽量化が図れる。
本発明の摩擦ローラ式減速機の一部断面斜視図である。 図1に示す摩擦ローラ式減速機の要部拡大図である。 図2のサンローラ素子のA−A線断面図である。 ピストン室とキャンセラ室の部分拡大断面図である。 (A),(B)はサンローラ素子の軸方向位置をピストン室の油圧によって変更する様子を示す説明図である。 駆動ローラと従動ローラに作用する法線力と接線力との関係を示す説明図である。 トラクション油の温度に対するトラクション係数の特性カーブを示すグラフである。 減速機ユニットの概略的なブロック構成図である。 (A),(B)は従来のローディングカム機構の模式的な動作説明図である。 従来の他のローディングカム機構の模式的な動作説明図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<摩擦ローラ式減速機の基本構成>
図1は本発明の摩擦ローラ式減速機の一部断面斜視図、図2は図1に示す摩擦ローラ式減速機の要部拡大図である。
摩擦ローラ式減速機100は、動力を発生するモータ(不図示)に接続される入力軸11と、出力軸13とが同心に配置され、入力軸11から入力される回転動力を出力軸13に減速しながら伝達する。この摩擦ローラ式減速機100は、入力軸11と同軸上に配置されるサンローラ15と、リングローラ17と、複数の中間ローラ19とを備える。リングローラ17は、リングローラホルダ21によって出力軸13と連結される。また、中間ローラ19は、サンローラ15の外周面とリングローラ17の内周面に転がり接触し、揺動ホルダ25、キャリア27を介してハウジング20に支持される。
中間ローラ19は、中間ローラ19の中心軸上に延設される支持軸22の両端部が、転がり軸受23を介して揺動ホルダ25に支持される。揺動ホルダ25は、詳細な説明を省略するが、支持軸22を入力軸11と平行にした状態でキャリア27に支持される。キャリア27は、上記構成の中間ローラ19を支持する複数の揺動ホルダ25を、円周方向に沿って等間隔の配置位置で支持する。
リングローラ17は、リングローラホルダ21に対して軸方向に関して相対移動不能に支持される。ただし、わずかな隙間は許容され、相対移動不能にするための軸方向寸法の調整手段や部材は不要となる。また、中間ローラ19も同様に,揺動ホルダ25に軸方向に関して相対移動不能に支持される。ただし、わずかな隙間は許容され、相対移動不能にするための軸方向寸法の調整手段や部材は不要となる。一方で、リングローラ17の転がり接触面17a、及び後述するサンローラ15のリングローラ17との転がり接触面19cは、それぞれ軸方向と平行な円筒面形状である。そのため、リングローラ17と中間ローラ19とは、相互の軸方向位置が拘束されない。よって、本構成の摩擦ローラ式減速機100においては、リングローラ17と中間ローラ19の相対的な軸方向位置を調整する調整手段は不要となる。
<摩擦ローラ式減速機の各部の詳細>
次に、摩擦ローラ式減速機100の各部の構成を順次説明する。
サンローラ15は、図2に示すように、入力軸11の中心線Axに沿った方向(以下、軸方向とも称する)に並設された一対のサンローラ素子35,37を有する。サンローラ素子35,37は、軸方向に対面し合う対向側端面41,43の間に隙間を設けた状態で、互いに入力軸11と同心に配置される。
サンローラ素子35,37の転がり接触面35a,37aは、サンローラ素子同士の互いに対向する対向側端面41,43から軸方向反対側の外側端面45,47に向かって、入力軸11の中心線Axまでの半径距離が短くなる傾斜面にされている。また、中間ローラ19のサンローラ素子35,37との転がり接触面も同様の形状を有する。
中間ローラ19の外周面には、第1転がり接触面19a、第2転がり接触面19b、第3転がり接触面19cが形成される。第1転がり接触面19aは、一方のサンローラ素子35の転がり接触面35aに転がり接触し、第2転がり接触面19bは、他方のサンローラ素子37の転がり接触面37aに転がり接触する。また、第3転がり接触面19cは、第1転がり接触面19aと第2転がり接触面19bとの間に形成される。また、前述したように、リングローラ17の転がり接触面17a(図1参照)に転がり接触する。上記した第3転がり接触面19cと、リングローラ17の転がり接触面17aは、いずれも軸方向と平行な円筒面形状である。
ここで、図3に図2のサンローラ素子35のA−A線断面図を示す。なお、図3は図2のサンローラ素子37のB−B線断面図と同一であるので、ここではサンローラ素子35,37について纏めて説明する。
サンローラ素子35,37は、軸方向外側の内周面35b,37bにスプライン溝を有し、入力軸11は、内周面35b,37bに対面する外周面51,53にスプライン溝を有する。サンローラ素子35,37は、これらスプライン溝の係合によって、回転方向に固定された状態で入力軸11に支持される。これにより、入力軸11からの回転トルクは、スプライン溝によってサンローラ素子35,37に伝達される。また、サンローラ素子35,37の軸方向内側の内周面には、図示しない凹部と凸部とが係合するいんろう部を有する。これらスプライン溝といんろう部とが協働して、サンローラ素子35,37と入力軸11との高精度な同軸が確保される。
図2に示すように、入力軸11は、サンローラ素子35の軸方向外側に段付き部49が形成される。この段付き部49よりも更に軸方向外側は、サンローラ素子35を支持する外周面51よりも大径となっている。
また、入力軸11には、サンローラ素子37の軸方向外側に円環溝50が形成され、円環溝50に止め輪48が係止される。止め輪48は、入力軸11のサンローラ素子37を支持する外周面53よりも径方向外側に突出し、サンローラ素子35,37の入力軸11からの抜け止めとして機能する。
サンローラ素子37は、対向側端面43の外周部からサンローラ素子35に向けて軸方向に突出する外周側円筒部55が形成される。サンローラ素子35は、対向側端面41の内周部からサンローラ素子37に向けて軸方向に突出する内周側円筒部56が形成される。
内周側円筒部56の先端部56aには、外周側円筒部55の内周面55aと入力軸11の外周面11aとに液密に摺動する円環状のピストンリング85が設けられる。また、外周側円筒部55のピストンリング85よりも軸方向外側の先端部55cには、外周側円筒部55の内周面55aと内周側円筒部56の外周面56bとに液密に摺動する円環状のキャンセラリング87が設けられる。ピストンリング85とは反対側の外周側円筒部55の内周面55aに凹溝55dが形成される。凹溝55dには止め輪88が装着される。この止め輪88によって、キャンセラリング87は軸方向外側への移動が規制される。
外周側円筒部55の内周面55a、内周側円筒部56の外周面56b、及び入力軸11の外周面11aは、それぞれ滑らかな円筒面で形成され、ピストンリング85とキャンセラリング87の軸方向への円滑な相対移動が可能となっている。
なお、外周側円筒部55の外周面55bは、サンローラ素子37の転がり接触面37aの最大径部39よりも小径な円筒面であり、中間ローラ19の第3転がり接触面19cとは常に非接触となる。
ピストンリング85とキャンセラリング87が配置されることで、サンローラ素子37の対向側端面43と、外周側円筒部55と、ピストンリング85と、入力軸11の外周面11aとに囲まれて、ピストン室89が画成される。また、外周側円筒部55と、内周側円筒部56と、ピストンリング85と、キャンセラリング87とに囲まれてキャンセラ室91が画成される。
入力軸11は、ピストン室89に連通する第1油路93と、キャンセラ室91に連通する第2油路95とが個別に設けられる。図1に示すように、入力軸11のハウジング20側(図1の左側)となる基端側において、第1油路93に第1油圧供給部97が接続され、第2油路95に第2油圧供給部99が接続される。第1油圧供給部97と第2油圧供給部99は、それぞれ油圧ポンプ等により構成される。油圧ポンプは電動式でもよく、ポンプ軸と駆動ユニットのいずれかの回転軸とを、本構成の摩擦ローラ式減速機100と機械的に結合させた機械式であってもよい。第1油圧供給部97は、第1油路93を通じてピストン室89にトラクション油を供給してピストン室89の油圧を調整する。第2油圧供給部99は、第2油路95を通じてキャンセラ室91の油圧を調整する。
また、入力軸11の出力軸13側における他端側は、第1油路93と第2油路95とが栓体34により塞がれている。
第1油圧供給部97は、ピストン室89の油圧を増減制御することで、サンローラ素子35,37同士を軸方向に離反させる軸方向力を発生させる。
図4はピストン室89とキャンセラ室91の部分拡大断面図である。
ピストン室89に充填されるトラクション油には、入力軸11の回転速度に依存した遠心油圧CFが生じる。この遠心油圧CFは径方向外側ほど大きくなる。ピストン室89に生じる遠心油圧CFは、ピストンリング85の動きを阻害したり、サンローラ素子35,37に必要以上の軸方向力を付与したりして、動力伝達効率を低下させる要因となる。
本構成の遊星ローラ式減速機においては、ピストン室89と同様に、トラクション油が充填され、遠心油圧CFが発生するキャンセラ室91を設けてある。このキャンセラ室91のトラクション油は、入力軸11の回転によって遠心油圧を生じ、ピストン室89から発生する遠心油圧を相殺する。これにより、完全ではないがピストン室89の遠心油圧をゼロに近い状態にしている(キャンセルさせる)。これらピストン室89とキャンセラ室91は、入力軸11の径方向外側に画成された円環状の空間である。したがって、ピストン室89とキャンセラ室91とが円周方向に連続した空間であるため、バランス良く軸方向力を発生でき、円周方向に分散配置された場合よりも大きな軸方向力が得られる。
ピストン室89とキャンセラ室91は、オイルシール等のシール部材69によって外部と仕切られている。したがって、ピストン室89への油圧力の付与時にトラクション油が漏洩することはない。また、キャンセラ室91からもトラクション油が漏洩することはない。
ピストン室89には、図1に示す第1油圧供給部97から、第1油路93を通じて油圧が付与される。キャンセラ室91には、第2油圧供給部99から、第2油路95を通じて油圧が付与される。第1油路93は、入力軸11の中心線Axに沿った油路から径方向に延びる分岐油路93aを有し、分岐油路93aを通じてピストン室89に油圧が付与される。また、第2油路95は、入力軸11の中心線Axに沿った油路から径方向に延びる分岐油路95aと、サンローラ素子35の内周側円筒部56に径方向内外を貫通する傾斜油路95bを有し、分岐油路95aと傾斜油路95bを通じてキャンセラ室91と連通している。
サンローラ素子35,37への軸方向力は、ピストン室89の油圧をキャンセラ室91の油圧より大きくし、ピストン室89の油圧とキャンセラ室91の油圧との差を生じさせることで付与される。
つまり、サンローラ素子37には、対向側端面43に軸方向力が付与され、サンローラ素子35にはピストンリング85を介して軸方向力が付与される。また、キャンセラ室91から発生する遠心油圧は、ピストンリング85に付与される。ピストン室89の遠心油圧とキャンセラ室91の遠心油圧は逆向きの力として作用するため、ピストン室89で発生した遠心油圧は、キャンセラ室91で発生した遠心油圧によってキャンセルされる。
図5(A),(B)はサンローラ素子35,37の軸方向位置をピストン室89の油圧によって変更する様子を示す説明図である。
図5(A)に示すように、ピストン室89の油圧が低い場合には、サンローラ素子35,37には、互いに離間する向きに必要最小限の軸方向力が作用する。そのため、サンローラ素子35,37の転がり接触面35a,37aと、中間ローラ19の第1転がり接触面19a及び第2転がり接触面19bと、にそれぞれ作用する法線力は、転がり接触面間に存在するトラクション油をガラス遷移圧力以上にする最低限の力にされる。
つまり、この場合のピストン室89の油圧は、後述するトラクション面の面圧がガラス遷移圧力を超えるのに必要な最低限の力をサンローラ素子35,37に付与する。ここで、ガラス遷移圧力とは、加圧流体のせん断応力が急激に上昇する圧力である。一対のローラ間の動力をトラクション面で伝達するためには、ローラ間に存在するトラクション油の圧力をガラス遷移圧力以上にする必要がある。一般に、このガラス遷移圧力は、ローラ間の接触点平均圧力で、概ね0.8GPa以上となる。
一方、図5(B)に示すように、第1油圧供給部97(図1参照)が第1油路93を通じてピストン室89の油圧を増加させると、サンローラ素子35,37同士を軸方向に離間させる軸方向力Fが発生する。この軸方向力Fによってサンローラ15、中間ローラ19、リングローラ17がそれぞれ弾性変形して、サンローラ素子35,37が互いに離間する方向に移動する。
つまり、この状態では、傾斜面からなる第1転がり接触面19a、第2転がり接触面19b、及び転がり接触面35a,37aの当接面が、中間ローラ19の軸方向外側、つまり、サンローラ素子35,37の径方向外側に移動して、各転がり接触面19a,19b,35a,37aにおける法線力が増加した状態となる。
この場合、ピストン室89の油圧の大きさに応じて、サンローラ15と中間ローラ19とリングローラ17はそれぞれ弾性変形する。そして、2つのサンローラ素子35,37は、その弾性変形に追従するために、互いに離間する方向、即ち、ピストン室89が広がる方向に変位する。
また、ピストンリング85の軸方向変位に応じて、キャンセラ室91の容積変化分のトラクション油が第2油圧供給部99の駆動により調整される。この調整により、キャンセラ室91の静的な油圧が一定に維持される。
ここで、キャンセラ室91は、ピストン室89と共に回転するため、キャンセラ室91に、ピストン室89と同程度の遠心油圧が発生する。キャンセラ室91に発生した遠心油圧は、ピストンリング85を介してピストン室89に伝達される。このようにして、キャンセラ室91に作用する遠心油圧は、ピストン室89に作用する遠心油圧の殆どをキャンセルする。そのため、サンローラ素子35,37は、ピストン室89に発生する遠心油圧に影響されずに、正確に軸方向に位置決めされる。
また、第1油圧供給部97によってピストン室89の油圧を減少させると、再び図5(A)に示すようにサンローラ素子35,37が互いに接近する方向に変位し、各転がり接触面19a,19b,35a,37aの法線力が減少する。
ピストン室89の油圧を増減調整することで、各転がり接触面19a,19b,35a,37aの法線力が増減し、これにより、各転がり接触面19a,19b,35a,37aにおけるトラクション係数を、より限界トラクション係数に近づけることができる。
ピストンリング85は、図5(B)に示すサンローラ素子35側(図中左側)に軸方向力を受けるため、常にサンローラ素子35と一体となって移動する。そのため、サンローラ素子35とピストンリング85とをボルトや止め輪等によって入力軸11に固定する必要はない。キャンセラリング87は、サンローラ素子37に取り付けられた止め輪88により、軸方向移動が規制される。そのため、サンローラ素子37と一体となって移動する。
また、サンローラ素子37とキャンセラリング87との固定には、止め輪88を使用せず、例えばボルト等の締結部材によって固定してもよい。
上記構成の摩擦ローラ式減速機100によれば、ピストン室89に供給する油圧力を、動力を発生するモータ(不図示)からの伝達動力、摩擦ローラ式減速機100が伝達する伝達トルク、軸の回転速度、トラクション油の温度等、各種の運転条件に応じて適宜調整できる。このため、各ローラのトラクション係数を、動的に限界トラクション係数に近づけられ、その結果、各ローラに過剰な法線力が生じにくくなり、動力伝達効率の向上と、耐久寿命の向上が図れる。
また、上記構成の摩擦ローラ式減速機100は、第1油圧供給部97からトラクション油の圧力がピストン室89に供給されることで、一対のサンローラ素子35,37がそれぞれ軸方向に離反する方向の軸方向力が発生する。そして、ピストン室89に発生する遠心油圧が、キャンセラ室91からの軸方向力によってキャンセルされる。つまり、サンローラ素子35,37を離反させる軸方向力を、ピストン室89に生じる遠心油圧の影響をキャンセルしつつ発生させることで、サンローラ素子35,37に適切な法線力が生じる。更に、前述の図9(A),(B)や図10に示すような、従前から用いられていたローディングカム機構を不要にできる。
本構成の摩擦ローラ式減速機100によれば、ローディングカム機構を用いず、しかも、サンローラ素子35,37同士の間の隙間をピストン室89とキャンセラ室91として利用して、遠心油圧の影響を受けずに軸方向力を発生させている。これにより、摩擦ローラ式減速機100を、動力伝達効率の高い構成にでき、しかも、従来よりも軸方向サイズを短縮でき、よりコンパクトで軽量な構成にできる。
<減速機ユニットの構成と作用>
次に、上記構成のサンローラ素子35,37を、ピストン室89からの軸方向力により駆動し、トラクション面の法線方向の法線力を、遠心油圧の影響を受けることなく、伝達トルクに比例して増減させる減速機ユニットの構成とその作用について説明する。
一般に、本構成の摩擦ローラ式減速機100のようなトラクションドライブにおいては、トラクション面にグロススリップが発生することは、動力伝達面の損傷を伴うため回避する必要がある。トラクションドライブに使用されるトラクション油は、動力伝達点の温度、伝達トルク等に依存して、伝達可能なトルクの大きさが決定される。
ここで、伝達可能な最大トルクは、トルク作用点までの半径距離によらない接線力として考えると、下記(1)式で表現される。
Figure 2018197594
Ftmax:伝達可能な最大接線力
Fc:法線力
μmax:限界トラクション係数
図6は駆動ローラと従動ローラに作用する法線力と接線力との関係を示す説明図である。
駆動ローラ71から従動ローラ73へ負荷される法線力Faは、その反力として従動ローラ73から法線力Fcを生じさせる。この法線力Fcに応じたトラクション面の接線力Ftは、トラクション係数μと法線力Fcの積として求められる。そこで、各ローラを駆動制御する場合には、伝達したいトルク(接線力Ft)に対して、運転時のトラクション係数μが限界トラクション係数μmaxを超えないように法線力Fcを調整する。しかし、限界トラクション係数μmaxは、上記したように、動力伝達点の温度、伝達トルク等の運転条件によって変動する。
図7はトラクション油の温度に対するトラクション係数の特性カーブを示すグラフである。図中に実線で示すように、限界トラクション係数はトラクション油の温度に応じて増減する。従前のローディングカム機構のような機械式ローディングデバイスにおいては、トラクション係数が常に一定値となるため、トラクション油の温度が変化しても、設計トラクション係数が限界トラクション係数を超えないように設定される(破線参照)。しかし、トラクション油の温度によっては、設計トラクション係数と限界トラクション係数との差Δμが特に大きくなる領域がある。差Δμが大きい場合、法線力Fcを過剰に発生させることになり、動力伝達効率の低下や耐久寿命の低下を招くことになる。
そこで、本構成の摩擦ローラ式減速機100は、運転条件の変動に応じて、ピストン室89からサンローラ素子35,37への軸方向力を発生させ、法線力Fcの増減調整を可能としている。そのため、一点鎖線で示すように調整後(修正後)のトラクション係数を、常に限界トラクション係数μmax近くに設定でき、動力伝達効率の向上や耐久寿命の向上に寄与できる。
より詳しくは、本構成の摩擦ローラ式減速機100は、常温時(例えば0℃〜100℃の範囲)では、最低限必要な押付力を付与して一定のトラクション係数μcを得、高温時(例えば100℃を超える温度)と低温時(例えば0℃未満の温度)では、ピストン室89からサンローラ素子35,37への軸方向力を発生させてトラクション係数を低減させ(低減されたトラクション係数をμ1,μ2で示す)、グロススリップの発生を抑制すると共に,特に常温領域での効率向上を実現する。上記の常温限界(高温、低温)の各温度は、油種、運転条件、装置構成に応じて予め定めておけばよい。
次に、ピストン室89の油圧を制御する具体的な減速機ユニットの構成とその作用について説明する。
図8は減速機ユニットの概略的なブロック構成図である。
減速機ユニット200は、前述した第1油圧供給部97、第2油圧供給部99を含む摩擦ローラ式減速機100と、トラクション油の温度を検出する油温センサ75と、コントローラ79と、記憶部81と、を備える。
第1油圧供給部97、第2油圧供給部99は、コントローラ79からの指令に基づいて、図1に示す入力軸11に形成された第1油路93、第2油路95にトラクション油を供給する。これにより、ピストン室89の油圧が増減駆動されると共に、キャンセラ室91に生じる遠心油圧によって、ピストン室89に生じる遠心油圧がキャンセルされる。
油温センサ75は、図示はしないが、図1に示すサンローラ15の近傍に配置され、トラクション面付近のトラクション油の温度を検出する。油温センサ75は、好ましくは、サンローラ素子35,37の転がり接触面35a,37aに近い外表面に配置される。また、油温センサ75は中間ローラ19側に配置してもよい。
油温センサ75からの出力信号は、コントローラ79に入力される。また、コントローラ79には、摩擦ローラ式減速機100に接続される不図示のモータの駆動状況を表す信号(例えば、回転速度信号、モータ駆動電流やモータ駆動電圧を表す駆動信号等)の伝達トルク情報が入力されてもよい。油温センサ75や各種の伝達トルク情報を出力する情報出力手段は、摩擦ローラ式減速機100の運転条件を検出する運転条件検出部として機能する。
なお、トラクション面の面圧を、トラクション油の油圧を測定する適宜な油圧測定手段から推定し、推定されたトラクション面の面圧を、上記した運転条件の一つして扱うことも可能である。
コントローラ79に接続される記憶部81は、検出された運転条件に対応するピストン室89の油圧設定値が登録された駆動テーブルを記憶する。コントローラ79は、入力された運転条件に基づいて記憶部81の駆動テーブルを参照して、限界トラクション係数に近いトラクション係数が得られる油圧設定値を求める。コントローラ79は、ピストン室89の油圧が、求めた油圧設定値となるように、サンローラ素子35,37を軸方向に駆動させる駆動信号を第1油圧供給部97に出力する。
第1油圧供給部97は、コントローラ79からの駆動信号に基づき、図示しない油圧モータを駆動して、トラクション油をピストン室89に供給する。これにより、ピストン室89の油圧が所望の圧力に調整され、トラクション面の法線力Fcが過剰にならず、且つ、限界トラクション係数を超えない範囲に設定される。このように、上記の第1油圧供給部97と、コントローラ79は、ピストン室89の油圧を増減させる圧力制御部として機能する。また、ピストン室89に生じる遠心油圧は、キャンセラ室91に生じる遠心油圧によってキャンセルされる。
本構成の減速機ユニット200によれば、経時的に変動する運転条件に応じて、限界トラクション係数を超えず、且つ、限界トラクション係数にできるだけ近いトラクション係数となるように、ピストン室89の油圧が調整される。このピストン室89の油圧は、遠心油圧に影響されることはない。これにより、摩擦ローラ式減速機の動力伝達効率を向上させ、小型化軽量化が図れる。
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
例えば、サンローラと入力軸との間の動力伝達手段は、角スプライン、ボールスプライン、インボリュートスプライン以外にも、キーとキー溝等、入力軸とサンローラとの同軸確保しつつ、動力伝達も可能で、且つ軸方向の相対移動を妨げないものであれば、任意の手段が適用可能である。
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 入力軸と同心に配置されるサンローラと、前記サンローラの外周側に前記サンローラと同心に配置され、出力軸に連結されるリングローラと、前記サンローラの外周面と前記リングローラの内周面に転がり接触する複数の中間ローラと、を備える摩擦ローラ式減速機であって、
前記サンローラは、前記入力軸の軸方向に並設された一対のサンローラ素子を有し、前記サンローラ素子は、前記入力軸の軸方向に移動可能、且つ回転方向に固定された状態で前記入力軸にそれぞれ支持され、
前記サンローラ素子の転がり接触面と前記中間ローラの転がり接触面は、前記サンローラ素子同士の対向側端面から軸方向反対側の外側端面に向かって、前記入力軸の中心線までの半径距離が短くなる傾斜面であり、
一対の前記サンローラ素子の間に、それぞれトラクション油が供給されるピストン室とキャンセラ室とが設けられ、
前記ピストン室は、前記サンローラ素子同士を前記軸方向に離反させる軸方向力を発生し、
前記キャンセラ室は、前記入力軸の回転によって前記ピストン室に発生する遠心油圧を低減させる軸方向力を発生する摩擦ローラ式減速機。
この摩擦ローラ式減速機によれば、一対のサンローラ素子の間にピストン室とキャンセラ室とを形成し、ピストン室の油圧の増減により、一対のサンローラ素子への軸方向力を増減でき、キャンセラ室に生じる遠心油圧により、ピストン室に生じる遠心油圧を低減できる。これにより、サンローラ素子、中間ローラ、リングローラの各転がり接触面に作用する法線力を遠心油圧の影響を受けることなく変更でき、運転時のトラクション係数を限界トラクション係数に正確に近づけることができる。
(2) 前記ピストン室と前記キャンセラ室は、前記入力軸の径方向外側に画成された円環状の空間である(1)に記載の摩擦ローラ式減速機。
この摩擦ローラ式減速機によれば、ピストン室とキャンセラ室とが円周方向に連続した空間であるため、バランス良く軸方向力を発生でき、円周方向に分散配置された場合よりも大きな軸方向力が得られる。
(3) 前記中間ローラの転がり接触面は、一対の前記サンローラ素子の一方に転がり接触する第1転がり接触面と、他方に転がり接触する第2転がり接触面と、前記第1転がり接触面と前記第2転がり接触面との間に形成され、前記リングローラに転がり接触する第3転がり接触面と、を有する(1)又は(2)に記載の摩擦ローラ式減速機。
この摩擦ローラ式減速機によれば、第1転がり接触面と第2転がり接触面が各サンローラ素子と転がり接触し、第3転がり接触面がリングローラの転がり接触面と転がり接触するため、サンローラ素子が軸方向に移動しても、中間ローラの軸方向位置が変動しない。
(4) 前記入力軸は、前記ピストン室に連通する第1油路と、前記キャンセラ室に連通する第2油路とが個別に設けられている(1)〜(3)のいずれか一つに記載の摩擦ローラ式減速機。
この摩擦ローラ式減速機によれば、入力軸を通じてピストン室とキャンセラ室に油圧が付与されるため、油圧力を供給する油路が煩雑化しない。また、第1油路と第2油路が個別に設けられているため、第1油路の油圧によらず、キャンセラ室の油圧を調整できる。
(5) 一対の前記サンローラ素子の一方は、前記対向側端面の外周部から他方の前記サンローラ素子に向けて円筒状の外周側円筒部が前記軸方向に突出して形成され、
一対の前記サンローラ素子の他方は、前記対向側端面の内周部から一方の前記サンローラ素子に向けて前記外周側円筒部よりも小径な内周側円筒部が前記軸方向に突出して形成され、
前記内周側円筒部の先端部には、前記外周側円筒部の内周面と前記入力軸の外周面とに液密に摺動するピストンリングが設けられ、
前記外周側円筒部の前記ピストンリングよりも外側の先端部には、前記外周側円筒部の内周面と前記内周側円筒部の外周面とに液密に摺動するキャンセラリングが設けられ、
前記ピストン室は、一対の前記サンローラ素子の一方の前記対向側端面と、前記外周側円筒部と、前記ピストンリングと、前記入力軸の外周面とに囲まれて画成され、
前記キャンセラ室は、前記外周側円筒部と、前記内周側円筒部と、前記ピストンリングと、前記キャンセラリングとに囲まれて画成された(1)〜(4)のいずれか一つに記載の摩擦ローラ式減速機。
この摩擦ローラ式減速機によれば、サンローラ素子同士の間にピストン室とキャンセラ室が画成されるため、スペース効率を高めた構成にでき、軸方向長さを短縮できる。
(6) (1)〜(5)のいずれか一つに記載の摩擦ローラ式減速機と、
前記ピストン室と前記キャンセラ室のそれぞれにトラクション油を個別に供給する油圧供給部と、
前記摩擦ローラ式減速機の運転条件を検出する運転条件検出部と、
検出された前記運転条件に応じて前記ピストン室の油圧を増減させる圧力制御部と、
を備える減速機ユニット。
この減速機ユニットによれば、ローラの軸方向移動に遠心油圧による影響が及ぶことを防止でき、また、運転条件によって限界トラクション係数が変化しても、この限界トラクション係数に運転時のトラクション係数を近づけることができる。これにより、動力伝達効率と耐久寿命を共に向上させることができる。
(7) 前記運転条件は、前記転がり接触面におけるトラクション油の温度、前記摩擦ローラ式減速機を通過する伝達トルクのいずれかを含む(6)に記載の減速機ユニット。
この減速機ユニットによれば、トラクション油の温度や伝達トルクの変動に応じて、常に適正なトラクション係数に調整できる。
11 入力軸
13 出力軸
15 サンローラ
17 リングローラ
19 中間ローラ
19a 第1転がり接触面
19b 第2転がり接触面
19c 第3転がり接触面
35 サンローラ素子
35a 転がり接触面
37 サンローラ素子
37a 転がり接触面
41,43 対向側端面
55 外周側円筒部
56 内周側円筒部
75 油温センサ
85 ピストンリング
87 キャンセラリング
89 ピストン室
91 キャンセラ室
93 第1油路
95 第2油路
97 第1油圧供給部
99 第2油圧供給部
100 摩擦ローラ式減速機
200 減速機ユニット

Claims (7)

  1. 入力軸と同心に配置されるサンローラと、前記サンローラの外周側に前記サンローラと同心に配置され、出力軸に連結されるリングローラと、前記サンローラの外周面と前記リングローラの内周面に転がり接触する複数の中間ローラと、を備える摩擦ローラ式減速機であって、
    前記サンローラは、前記入力軸の軸方向に並設された一対のサンローラ素子を有し、前記サンローラ素子は、前記入力軸の軸方向に移動可能、且つ回転方向に固定された状態で前記入力軸にそれぞれ支持され、
    前記サンローラ素子の転がり接触面と前記中間ローラの転がり接触面は、前記サンローラ素子同士の対向側端面から軸方向反対側の外側端面に向かって、前記入力軸の中心線までの半径距離が短くなる傾斜面であり、
    一対の前記サンローラ素子の間に、それぞれトラクション油が供給されるピストン室とキャンセラ室とが設けられ、
    前記ピストン室は、前記サンローラ素子同士を前記軸方向に離反させる軸方向力を発生し、
    前記キャンセラ室は、前記入力軸の回転によって前記ピストン室に発生する遠心油圧を低減させる軸方向力を発生する摩擦ローラ式減速機。
  2. 前記ピストン室と前記キャンセラ室は、前記入力軸の径方向外側に画成された円環状の空間である請求項1に記載の摩擦ローラ式減速機。
  3. 前記中間ローラの転がり接触面は、一対の前記サンローラ素子の一方に転がり接触する第1転がり接触面と、他方に転がり接触する第2転がり接触面と、前記第1転がり接触面と前記第2転がり接触面との間に形成され、前記リングローラに転がり接触する第3転がり接触面と、を有する請求項1又は請求項2に記載の摩擦ローラ式減速機。
  4. 前記入力軸は、前記ピストン室に連通する第1油路と、前記キャンセラ室に連通する第2油路とが個別に設けられている請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の摩擦ローラ式減速機。
  5. 一対の前記サンローラ素子の一方は、前記対向側端面の外周部から他方の前記サンローラ素子に向けて円筒状の外周側円筒部が前記軸方向に突出して形成され、
    一対の前記サンローラ素子の他方は、前記対向側端面の内周部から一方の前記サンローラ素子に向けて前記外周側円筒部よりも小径な内周側円筒部が前記軸方向に突出して形成され、
    前記内周側円筒部の先端部には、前記外周側円筒部の内周面と前記入力軸の外周面とに液密に摺動するピストンリングが設けられ、
    前記外周側円筒部の前記ピストンリングよりも外側の先端部には、前記外周側円筒部の内周面と前記内周側円筒部の外周面とに液密に摺動するキャンセラリングが設けられ、
    前記ピストン室は、一対の前記サンローラ素子の一方の前記対向側端面と、前記外周側円筒部と、前記ピストンリングと、前記入力軸の外周面とに囲まれて画成され、
    前記キャンセラ室は、前記外周側円筒部と、前記内周側円筒部と、前記ピストンリングと、前記キャンセラリングとに囲まれて画成された請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の摩擦ローラ式減速機。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の摩擦ローラ式減速機と、
    前記ピストン室と前記キャンセラ室のそれぞれにトラクション油を個別に供給する油圧供給部と、
    前記摩擦ローラ式減速機の運転条件を検出する運転条件検出部と、
    検出された前記運転条件に応じて前記ピストン室の油圧を増減させる圧力制御部と、
    を備える減速機ユニット。
  7. 前記運転条件は、前記転がり接触面におけるトラクション油の温度、前記摩擦ローラ式減速機を通過する伝達トルクのいずれかを含む請求項6に記載の減速機ユニット。
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