JP2007107626A - トロイダル型無段変速機 - Google Patents
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Abstract
【課題】トラクション部のトラクションオイルの温度変化に確実に対応して押圧装置の押圧力を決められるようにすることで押圧力不足が発生するのを防止する。
【解決手段】トロイダル型無段変速機は、互いに同心に、且つ相対回転自在に配置された入力側および出力側ディスク3,5と、これらの間に挟持されて動力を伝達する複数のパワーローラ4とを備える。さらに、入力側ディスク3を出力側ディスクに向け押圧する油圧式の押圧装置12を備える。また、入力側および出力側ディスク3,5のうちの少なくとも一方とパワーローラ4とのトラクション部近傍で、トラクション部から排出されるトラクションオイルの温度を測定する温度センサ21を備える。この温度センサ21に測定されたトラクション部から排出されたばかりのトラクションオイルの温度に基づいてトラクション係数を決めるようにして押圧装置の押圧力を制御する。
【選択図】図1
【解決手段】トロイダル型無段変速機は、互いに同心に、且つ相対回転自在に配置された入力側および出力側ディスク3,5と、これらの間に挟持されて動力を伝達する複数のパワーローラ4とを備える。さらに、入力側ディスク3を出力側ディスクに向け押圧する油圧式の押圧装置12を備える。また、入力側および出力側ディスク3,5のうちの少なくとも一方とパワーローラ4とのトラクション部近傍で、トラクション部から排出されるトラクションオイルの温度を測定する温度センサ21を備える。この温度センサ21に測定されたトラクション部から排出されたばかりのトラクションオイルの温度に基づいてトラクション係数を決めるようにして押圧装置の押圧力を制御する。
【選択図】図1
Description
本発明は、自動車や各種産業機械の変速機などに利用可能なトロイダル型無段変速機に関する。
例えば、自動車用変速機として使用されるトロイダル型無段変速機が、一部で実施されていて周知である。
このトロイダル型無段変速機は、互いに対向する軸方向側面(内側面)をトロイド曲面とした入力側ディスクと出力側ディスクとの間に複数個のパワーローラを挟持して成る。運転時には、この入力側ディスクの回転が、これら各パワーローラを介して前記出力側ディスクに伝達される。これら各パワーローラは、それぞれトラニオン等の支持部材に回転自在に支持されており、これら各支持部材は、それぞれ前記両ディスクの中心軸に対し捩れの位置にある枢軸を中心とする揺動変位を自在に支持されている。前記両ディスク同士の間の変速比を変える場合、前記各支持部材を前記枢軸を中心に揺動変位させる。前記各パワーローラの周面を、前記入力側ディスクの側面の径方向外寄り部分と、前記出力側ディスクの側面の径方向内寄り部分とに転がり接触させれば、前記両ディスク同士の間の変速比が増速側になる。これに対して、前記各パワーローラの周面を、前記入力側ディスクの側面の径方向内寄り部分と、前記出力側ディスクの側面の径方向外寄り部分とに転がり接触させれば、前記両ディスク同士の間の変速比が減速側になる。
このトロイダル型無段変速機は、互いに対向する軸方向側面(内側面)をトロイド曲面とした入力側ディスクと出力側ディスクとの間に複数個のパワーローラを挟持して成る。運転時には、この入力側ディスクの回転が、これら各パワーローラを介して前記出力側ディスクに伝達される。これら各パワーローラは、それぞれトラニオン等の支持部材に回転自在に支持されており、これら各支持部材は、それぞれ前記両ディスクの中心軸に対し捩れの位置にある枢軸を中心とする揺動変位を自在に支持されている。前記両ディスク同士の間の変速比を変える場合、前記各支持部材を前記枢軸を中心に揺動変位させる。前記各パワーローラの周面を、前記入力側ディスクの側面の径方向外寄り部分と、前記出力側ディスクの側面の径方向内寄り部分とに転がり接触させれば、前記両ディスク同士の間の変速比が増速側になる。これに対して、前記各パワーローラの周面を、前記入力側ディスクの側面の径方向内寄り部分と、前記出力側ディスクの側面の径方向外寄り部分とに転がり接触させれば、前記両ディスク同士の間の変速比が減速側になる。
上述の様なトロイダル型無段変速機の運転時、すなわち、前記入力側ディスクから前記出力側ディスクに動力を伝達する際には、これら両ディスクの軸方向側面と前記各パワーローラの周面とが転がり接触する部分(トラクション部)の面圧を適切にする事が必要である。この部分の面圧が過小の場合には、このトラクション部でグロススリップと呼ばれる著しい滑りが発生し、前記入力側ディスクから前記出力側ディスクに動力を伝達できなくなるだけでなく、動力伝達に供する各面に、著しい摩耗が発生する原因となる。反対に、前記部分の面圧が過大である場合には、前記トラクション部での転がり摩擦が大きくなり、トロイダル型無段変速機の伝達効率が悪化する他、前記各面の転がり疲れ寿命が低下する。
一方、前記トラクション部に必要とされる面圧は、トロイダル型無段変速機により伝達すべき動力に応じて異なる。具体的には、大きなトルクを伝達する場合には前記面圧を高くする必要がある反面、小さなトルクしか伝達しない場合には、この面圧は低くて済む。従って、トロイダル型無段変速機には、伝達すべきトルクの大きさに応じて、前記トラクション部の面圧を調節できる押圧装置が必要になる。
この様な押圧装置として従来一般的には、トロイダル型無段変速機がハーフトロイダルの場合に、既に実施されている構造も含めて、駆動源であるエンジンにより回転駆動される駆動軸と入力側ディスクとの間に、ローディングカム式の押圧装置を設けていた。この様なローディングカム式の押圧装置は、前記駆動軸の回転に伴って前記入力側ディスクを、出力側ディスクに押圧しつつ回転させる。この際に、この入力側ディスクを出力側ディスクに向けて押圧する力の大きさは、カム面の形状に応じて、前記駆動軸に加えられる駆動力のトルクに比例する等、伝達すべきトルクの大きさに応じて増減する。
この様な押圧装置として従来一般的には、トロイダル型無段変速機がハーフトロイダルの場合に、既に実施されている構造も含めて、駆動源であるエンジンにより回転駆動される駆動軸と入力側ディスクとの間に、ローディングカム式の押圧装置を設けていた。この様なローディングカム式の押圧装置は、前記駆動軸の回転に伴って前記入力側ディスクを、出力側ディスクに押圧しつつ回転させる。この際に、この入力側ディスクを出力側ディスクに向けて押圧する力の大きさは、カム面の形状に応じて、前記駆動軸に加えられる駆動力のトルクに比例する等、伝達すべきトルクの大きさに応じて増減する。
上述の様なローディングカム式の押圧装置の場合、ヒステリシスが大きい他、変速比や温度等、駆動力のトルク以外の要件で押圧力を調節する事はできない。この為、カム面の形状等を、所定のトルクを伝達すると仮定した場合で最も大きな押圧力を発生できるものとして、短時間に著しい損傷を発生させる原因となる、グロススリップの発生を抑えるようにしている。従って、変速比や温度等、駆動力のトルク以外の要件によっては、前記ローディングカム式の押圧装置が発生する押圧力が適切な値よりある程度大きくなる。この様に、押圧力が適切な値より明らかに大きくなっている状態は、トロイダル型無段変速機の効率及び耐久性確保の面からは好ましくない。
これに対して、油圧式の押圧装置を、単独で使用したトロイダル型無段変速機、あるいはローディングカム式の押圧装置と組み合わせて使用したトロイダル型無段変速機、すなわち、油圧により押圧力を制御可能な押圧装置が知られている(例えば、特許文献1,2,3参照)。これらのトロイダル型無段変速機においては、押圧装置の少なくとも一部の押圧力を油圧で発生するようにすることで、押圧力を、駆動力のトルク以外の要件でも調節できる様にしている。図5,6は、これらのうちの特許文献1に記載されたトロイダル型無段変速機を示している。
この従来構造では、駆動源であるエンジン1から入力軸2に伝わった動力は、この入力軸2の両端部にそれぞれ支持した一対の入力側ディスク3、3からパワーローラ4、4を介して一対の出力側ディスク5、5に伝わり、出力歯車6から取り出される。
前記各パワーローラ4、4は、それぞれトラニオン7、7の内側面に、支持軸8、8及び複数の転がり軸受を介して、回転自在に支持されている。また、前記各トラニオン7、7は、それぞれの長さ方向(図6の上下方向)両端部に、これら各トラニオン7、7毎に互いに同心に設けられた、それぞれ1対ずつの枢軸9、9を中心として、揺動変位自在である。また、前記各トラニオン7、7は、それぞれ油圧式のアクチュエータ10、10により、前記各枢軸9、9の軸方向に変位自在としている。
前記各パワーローラ4、4は、それぞれトラニオン7、7の内側面に、支持軸8、8及び複数の転がり軸受を介して、回転自在に支持されている。また、前記各トラニオン7、7は、それぞれの長さ方向(図6の上下方向)両端部に、これら各トラニオン7、7毎に互いに同心に設けられた、それぞれ1対ずつの枢軸9、9を中心として、揺動変位自在である。また、前記各トラニオン7、7は、それぞれ油圧式のアクチュエータ10、10により、前記各枢軸9、9の軸方向に変位自在としている。
上述の様なトロイダル型無段変速ユニットの運転時には、エンジン1等の動力源に繋がる駆動軸11により一方(図5の左方)の入力側ディスク3を、油圧式の押圧装置12を介して回転駆動する。尚、この押圧装置12は、スプライン係合部等を設ける事により、回転力の伝達を行いつつ前記入力側ディスク3を押圧自在としている。また、他方(図5の右方)の入力側ディスク3は、前記入力軸2の端部に結合されて、前記押圧装置12の作動時(押圧力の発生時)に、一方の入力側ディスク3に向けて引っ張られる様にしている。
前記1対の入力側ディスク3、3が、互いに近づく方向に押圧されつつ同期して回転すると、この回転が、前記各パワーローラ4、4を介して前記各出力側ディスク5、5に伝わり、前記出力歯車6から取り出される。この様にトロイダル型無段変速機が前記各入力側ディスク3、3から前記各出力側ディスク5、5に動力を伝達する際に、前記各トラニオン7、7には、前記各枢軸9、9の軸方向にスラスト荷重が加わる。このスラスト荷重は、前記各トラニオン7、7に支持したパワーローラ4、4の周面と前記各ディスク3、5の内側面との転がり接触部(トラクション部)で発生し、前記各パワーローラ4、4を介して前記各トラニオン7、7に加わる。
前記入力軸2と前記出力歯車6との回転速度の比を変える場合には、前記各アクチュエータ10、10への圧油の給排により、前記各トラニオン7、7を前記各枢軸9、9の軸方向に変位させる。この結果、前記各パワーローラ4、4の周面と前記入力側、出力側各ディスク3、5の内側面との接触部の接線方向に作用する力の方向が変化するので、前記各トラニオン7、7が前記各枢軸9、9を中心として揺動変位する。
さらに、特許文献1に記載されたトロイダル型無段変速機に於いては、トロイダル型無段変速機を通過する動力、すなわち、トルクT0と回転速度Sとの積(T0×S)を検知する動力検知手段と、この動力検知手段が検知したトロイダル型無段変速機を通過する動力に応じて前記押圧装置12に送り込む油圧を制御する為の油圧制御手段18とを備える。この為に、図5に示した構造の場合には、前記エンジン1の出力を前記押圧装置12に伝達する為の駆動軸11の途中に、この駆動軸11を伝わるトルクを測定する為のトルクセンサ15と、この駆動軸11の回転速度を測定する為の回転速度センサ16とを設けている。そして、これら両センサ15、16の測定信号を、前記押圧装置12の油圧室17内に送り込む油圧を制御する為の油圧制御手段18に入力している。この油圧制御手段18は、マイクロコンピュータを内蔵しており、前記両センサ15、16の測定信号に基づいて、前記駆動軸11から前記押圧装置12に伝えられる動力を求める。そして、この動力が大きい程、この押圧装置12に送り込む油圧を高くする。
上述の様に構成される、特許文献1に記載されたトロイダル型無段変速機の場合には、前記駆動軸11から送り込まれ、このトロイダル型無段変速機を通過する動力により前記押圧装置12が発生する押圧力を調節するので、このトロイダル型無段変速機の運転状態の如何に拘らず、この押圧力を最適値に規制できる。すなわち、前記油圧制御手段18に内蔵したマイクロコンピュータが、トルクT0と回転速度Sとの積(T0×S)である動力からこの動力を伝達する為に最適なトラクション係数を決定し、この決定したトラクション係数を得る為の押圧力を求める。そして、この押圧力を得る為に必要な油圧を前記押圧装置12に送り込む。従って、この押圧力を常に最適値若しくはそれに近い値にできる。
この結果、前記トロイダル型無段変速機の伝達効率及び耐久性の確保を図れる。この際、必要に応じて、前記両入力側ディスク3、3と前記両出力側ディスク5、5との間の変速比や、アクセル開度、アクセルの踏み込み速度等を、前記動力と合わせて前記油圧制御手段18に送り込み、前記押圧力の微調節を行わせる事もできる。この場合に、前記変速比は、前記入力軸2と前記出力歯車6との回転速度の比として求める等、従来から測定している状態値に基づいて容易に求められる。また、前記アクセル開度、アクセルの踏み込み速度等を表す信号も、アクセルに付属したセンサ、あるいはエンジン制御用のコンピュータ等から、容易に得られる。
なお、トロイダル型無段変速機を通過する動力のうちのトルクT0の値は、図6に示す様に、前記アクチュエータ10、10毎に1対ずつ存在する油圧室14a、14b内の油圧により算出する事もできる。すなわち、前述した様に、転がり接触部(トラクション部)で発生した力は、前記各パワーローラ4、4を介して前記各トラニオン7、7に、前記各枢軸9、9の軸方向のスラスト荷重として加わる。そして、このスラスト荷重の大きさは、前記動力のトルクT0に比例する。従って、前記各アクチュエータ10、10内にピストン13、13を挟んで設けた1対の油圧室14a、14b間の圧力差は、前記トルクT0に比例する。そして、このトルクT0は、前記各ピストン13、13の受圧面積Aと、高圧側の油圧室の油圧PHと、低圧側の油圧室の油圧PLとから、T0∝2Ft=(PH−PL)Aなる式で求める事ができる(2Ftは前記スラスト荷重に対応する)。前記油圧室14a、14b内の油圧は、簡単な油圧センサにより容易に求められる為、前記トルク測定の為の構造を簡略にできる。そして、この様にして求めたトルクT0の値と、何れかの部分、すなわち、トロイダル型無段変速機を構成する、あるいはこのトロイダル型無段変速機と接続される動力伝達部品の回転速度Sとの積により、前記動力の大きさを求められる。
また、トロイダル型無段変速機内に存在するトラクションオイルの温度を測定する為の油温センサを設け、前記油圧制御手段18が、この油温センサが検出する前記トラクションオイルの温度が高い程、前記押圧装置12に送り込む油圧を高くする事も、特許文献1に記載されている。前記トラクションオイルは、温度が高い程限界せん断応力が低下し、必要とするトラクション係数を得にくくなる。従って、低温時には押圧力を低くして、トラクション部の面圧を低く抑えても十分に動力伝達を行える反面、温度上昇時には前記押圧装置12による押圧力を高くし、前記限界せん断応力の低下分を補う事で、トロイダル型無段変速機の伝達効率や構成各部品の耐久性が低下する事を防止できる。
なお、前記トラクション部で必要な面圧とは、このトラクション部のトラクション係数μt(接線力Ft/法線力Fc)を、十分な動力伝達を行える範囲に収める為に必要な法線力Fcを得られる値である。この様な面圧と、トルク、変速比、温度、回転速度等の運転状態との関係は、予め行った実験に基づき、実験式あるいはマップとして、前記油圧制御手段18を構成するマイクロコンピュータにインストールするソフトウェア中に組み込んでおく。
また、特許文献2においては、特許文献1に示されるような押圧装置にける押圧力の制御において、押圧力が前記トラクション部で必要とする面圧を下回らないようにするために、押圧力に余裕代となる押圧力を付加するように設定し、さらに、余裕代となる押圧力を必要最小限度のものとなるようにすることが提案されている。
また、特許文献3においては、上述の機械式の押圧装置と、油圧式の押圧装置とを組み合わせた押圧装置が提案されているとともに、トラクションオイルの油温に基づいて油圧式の押圧装置を作動させるための油圧を制御することが提案されている。
特開2004−36804号公報
特開2005−221018号公報
特開平10−281269号公報
また、特許文献3においては、上述の機械式の押圧装置と、油圧式の押圧装置とを組み合わせた押圧装置が提案されているとともに、トラクションオイルの油温に基づいて油圧式の押圧装置を作動させるための油圧を制御することが提案されている。
ところで、上記特許文献1〜3では、トラクションオイルの温度に基づいて押圧装置を制御する際に、特にトラクションオイル温度の測定部位が記載されていないが、一般的に、潤滑油を用いる機械において潤滑油の温度を測定する場合には、機械の各所に供給された潤滑油を回収して再び供給するオイルパンで潤滑油の温度を測定している。
ここで、トロイダル型無段変速機においては、トラクションオイルが、入力側ディスク及び出力側ディスクの軸方向側面と前記各パワーローラの周面とが転がり接触するトラクション部だけではなく、潤滑油としてトロイダル型無段変速機の各所に供給されるようになっており、トラクション部に供給されるのは、全ての供給潤滑油のうちの一部に過ぎない。
そして、動力伝達を行うトラクション部では、トロイダル型無段変速機の他の部位に比較して極めて発熱が大きく、条件によってはトラクション部から排出されるトラクションオイルの温度は、供給油温(オイルパンからトラクション部に供給されたトラクションオイルの温度)よりも40〜80℃以上も上昇する場合がある。
したがって、限界トラクション係数μは高温になるほど低下するという関係があることから、単にトラクションオイルの温度を測定して、測定油温から押圧装置の押圧力(ローディング圧)を決定しようとすると、実際に必要とされるローディング圧よりも低く見積もってしまうため、最適なローディング圧より低くなってしまい、グロススリップが生じる可能性が高まってしまう。
ここで、トロイダル型無段変速機においては、トラクションオイルが、入力側ディスク及び出力側ディスクの軸方向側面と前記各パワーローラの周面とが転がり接触するトラクション部だけではなく、潤滑油としてトロイダル型無段変速機の各所に供給されるようになっており、トラクション部に供給されるのは、全ての供給潤滑油のうちの一部に過ぎない。
そして、動力伝達を行うトラクション部では、トロイダル型無段変速機の他の部位に比較して極めて発熱が大きく、条件によってはトラクション部から排出されるトラクションオイルの温度は、供給油温(オイルパンからトラクション部に供給されたトラクションオイルの温度)よりも40〜80℃以上も上昇する場合がある。
したがって、限界トラクション係数μは高温になるほど低下するという関係があることから、単にトラクションオイルの温度を測定して、測定油温から押圧装置の押圧力(ローディング圧)を決定しようとすると、実際に必要とされるローディング圧よりも低く見積もってしまうため、最適なローディング圧より低くなってしまい、グロススリップが生じる可能性が高まってしまう。
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、トラクションオイルのトラクション部における実際の温度にできるだけ近い温度に基づいて押圧装置の押圧力を制御できるトロイダル型無段変速機を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、請求項1に記載のトロイダル型無段変速機は、互いに同心に、且つ相対回転自在に配置された第1、第2のディスクと、互いに対向するこれら第1、第2のディスクの内側面同士の間に挟持されてこれら第1、第2のディスク同士の間で動力を伝達する複数のパワーローラと、前記第1のディスクを前記第2のディスクに向け押圧する油圧式の押圧装置とを備えたトロイダル型無段変速機において、
前記第1、第2のディスクのうちの少なくとも一方とパワーローラとの転がり接触部分近傍で、当該転がり接触部分から排出されるトラクションオイルの温度を測定するトラクションオイル排出温度測定手段と、
前記パワーローラを介して第1のディスクと第2のディスクとの間で伝達される伝達トルクに対応する値を測定する伝達トルク測定手段と、
トラクションオイルの温度とトラクション係数との関係を示すデータを記憶している記憶手段と、
少なくとも、前記トラクションオイルの温度とトラクション係数との関係を示すデータ、前記トラクションオイル排出温度測定手段で測定された測定値、前記伝達トルク測定手段で測定された測定値に基づいて前記押圧装置により発生される押圧力を制御する押圧装置制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
前記第1、第2のディスクのうちの少なくとも一方とパワーローラとの転がり接触部分近傍で、当該転がり接触部分から排出されるトラクションオイルの温度を測定するトラクションオイル排出温度測定手段と、
前記パワーローラを介して第1のディスクと第2のディスクとの間で伝達される伝達トルクに対応する値を測定する伝達トルク測定手段と、
トラクションオイルの温度とトラクション係数との関係を示すデータを記憶している記憶手段と、
少なくとも、前記トラクションオイルの温度とトラクション係数との関係を示すデータ、前記トラクションオイル排出温度測定手段で測定された測定値、前記伝達トルク測定手段で測定された測定値に基づいて前記押圧装置により発生される押圧力を制御する押圧装置制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
また、請求項2に記載のトロイダル型無段変速機は、請求項1に記載の発明において、前記パワーローラを回転自在に支持し、第1、第2のディスクの中心軸に対して捩れの位置にある枢軸を中心として揺動変位するトラニオンに、前記トラクションオイル排出温度測定手段が固定されていることを特徴とする。
本発明のトロイダル型無段変速機において、トラクションオイルの温度によって変化するトラクション係数と、伝達トルクとに対応して押圧装置の押圧力を制御するためにトラクションオイルの温度を測定する際に、前記第1、第2のディスクの少なくとも一方とパワーローラとの転がり接触部分(トラクション部)近傍で、当該転がり接触部分から排出されるトラクションオイルの温度を測定しているので、測定温度が転がり接触部分におけるトラクションオイルの実際の温度とほとんど差が無く、より正確に制御が可能となる。これにより、トラクションオイルの温度を実際より低く測定してしまうことで必要とされる押圧装置の押圧力を低く見積もってしまい、グロススリップが生じる可能性が高まってしまうような事態を防止し、確実にグロススリップを防止することができる。
さらに、トラクションオイル排出温度測定手段をトラニオンに固定することにより、トラニオンが傾転することでパワーローラが揺動してディスクとパワーローラとの転がり接触部分の位置が変化しても、トラクションオイル排出温度測定手段がトラニオンとともに移動するので、トラクションオイル排出温度測定手段による温度測定位置を前記転がり接触部分の位置の変化に追随させることができる。
さらに、トラクションオイル排出温度測定手段をトラニオンに固定することにより、トラニオンが傾転することでパワーローラが揺動してディスクとパワーローラとの転がり接触部分の位置が変化しても、トラクションオイル排出温度測定手段がトラニオンとともに移動するので、トラクションオイル排出温度測定手段による温度測定位置を前記転がり接触部分の位置の変化に追随させることができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明の特徴は、トラクションオイルの温度に基づいてトラクション部の面圧を調節する際に、トラクション部の近傍でトラクション部から排出されたばかりのトラクションオイルの温度を測定することにあり、その他の構成および作用は前述した従来の構成および作用と同様であるため、以下においては、本発明の特徴部分についてのみ言及し、それ以外の部分については、図5,6と同一の符号を付して簡潔に説明するに留める。
図1,2は本発明の実施形態を示している。なお、図1は入力側ディスク3(もしくは出力側ディスク5)とパワーローラ4とのトラクション部とパワーローラ4を支持するトラニオン7に固定された温度センサ21とを示し、図2はこの実施形態のトロイダル型無段変速機の概略構成を示している。また、温度センサ21及びその測定値に基づく押圧装置12の制御を除く構成は、上述のように従来と同様のものであり、この実施形態のトロイダル型無段変速機は、互いに同心に、且つ相対回転自在に配置された第1、第2のディスク(入力側および出力側ディスク3,5)と、互いに対向するこれら入力側および出力側ディスク3,5の内側面同士の間に挟持されてこれら入力側および出力側ディスク3,5同士の間で動力を伝達する複数のパワーローラ4と、前記入力側ディスク3を前記出力側ディスク5に向け押圧する油圧式の押圧装置12とを備えたものである。
図1に示すように、この実施形態のトロイダル型無段変速機においては、第一ディスクとしての入力側ディスク3(もしくは第2のディスクとしての出力側ディスク5)とパワーローラ4とが転がり接触分部としてのトラクション部近傍で、トラクション部から排出されるトラクションオイルの温度を測定するトラクションオイル排出温度測定手段としての温度センサ21が設けられている。
図1に示すように、温度センサ21は、例えば、パワーローラ4を回転自在に支持し、入力側、出力側のディスク3,5の中心軸に対して捩れの位置にある枢軸9を中心として揺動変位するトラニオン7に固定されている。
また、温度センサ21は、非接触型の赤外線温度センサであり、トラニオン7に固定された状態で測定方向がパワーローラ4と入力側ディスク3(もしくは出力側ディスク5)とのトラクション部(もしくはその近傍)に向かっている。
そして、温度センサ21の測定対象は、トラクション部から排出されたばかりのトラクションオイルとなっている。すなわり、温度センサ21の測定方向をトラクション部に向けることで、トラクション部近傍でトラクション部から排出されたばかりのトラクションオイルの温度を測定するようになっている。
図1に示すように、温度センサ21は、例えば、パワーローラ4を回転自在に支持し、入力側、出力側のディスク3,5の中心軸に対して捩れの位置にある枢軸9を中心として揺動変位するトラニオン7に固定されている。
また、温度センサ21は、非接触型の赤外線温度センサであり、トラニオン7に固定された状態で測定方向がパワーローラ4と入力側ディスク3(もしくは出力側ディスク5)とのトラクション部(もしくはその近傍)に向かっている。
そして、温度センサ21の測定対象は、トラクション部から排出されたばかりのトラクションオイルとなっている。すなわり、温度センサ21の測定方向をトラクション部に向けることで、トラクション部近傍でトラクション部から排出されたばかりのトラクションオイルの温度を測定するようになっている。
また、図2に示すように、温度センサ21からトラクションオイルのトラクション部からの排出温度を示す信号が押圧装置制御手段としての油圧制御手段18に入力されるようになっている。
油圧制御手段18は、押圧装置12の油圧室内に送り込む油圧を制御するものであり、例えば、油圧制御弁を備えるものである。そして、押圧装置12の油圧室17内に送り込む油圧を制御することで、押圧装置12によって発生させられる入力側ディスク3および出力側ディスク5の軸方向力、すなわち、押圧力を決定するようになっている。
油圧制御手段18は、押圧装置12の油圧室内に送り込む油圧を制御するものであり、例えば、油圧制御弁を備えるものである。そして、押圧装置12の油圧室17内に送り込む油圧を制御することで、押圧装置12によって発生させられる入力側ディスク3および出力側ディスク5の軸方向力、すなわち、押圧力を決定するようになっている。
また、従来と同様に前記エンジン1の出力を前記押圧装置12に伝達する為の駆動軸11の途中に、この駆動軸11を伝わるトルクを測定する為のトルクセンサ15と、この駆動軸11の回転速度を測定する為の回転速度センサ16とを設けている。そして、これら両センサ15、16の測定信号を、前記押圧装置12の油圧室17内に送り込む油圧を制御する為の油圧制御手段18に入力している。
油圧制御手段18は、マイクロコンピュータを内蔵しており、前記両センサ15、16の測定信号に基づいて、前記駆動軸11から前記押圧装置12に伝えられる動力を求める。そして、この動力が大きい程、この押圧装置12に送り込む油圧を高くする。
すなわち、従来と同様に、前記駆動軸11から送り込まれ、このトロイダル型無段変速機を通過する動力により前記押圧装置12が発生する押圧力を調節するようになっているが、さらにこの実施形態では、後述するようにトラクションオイルの温度変化に応じて変化するトラクション係数も考慮して押圧力を調節するようになっている。
油圧制御手段18は、マイクロコンピュータを内蔵しており、前記両センサ15、16の測定信号に基づいて、前記駆動軸11から前記押圧装置12に伝えられる動力を求める。そして、この動力が大きい程、この押圧装置12に送り込む油圧を高くする。
すなわち、従来と同様に、前記駆動軸11から送り込まれ、このトロイダル型無段変速機を通過する動力により前記押圧装置12が発生する押圧力を調節するようになっているが、さらにこの実施形態では、後述するようにトラクションオイルの温度変化に応じて変化するトラクション係数も考慮して押圧力を調節するようになっている。
また、上述の動力を求めるためのトルクセンサ15及び回転速度センサ16がパワーローラ4を介して第1のディスクと第2のディスクとの間で伝達される伝達トルクに対応する値を測定する伝達トルク測定手段となるが、伝達トルク測定手段は、これらに限られるものではなく、背景技術に記載したようにトロイダル型無段変速機を通過する動力のうちのトルクT0の値は、前記アクチュエータ10、10毎に1対ずつ存在する油圧室14a、14b内の油圧により算出する事もでき、この油圧を測定する手段を伝達トルク測定手段の一部としてもよい。また、駆動源からトロイダル型無段変速機を経て駆動される部材にいたるまでの間で伝達トルクにほぼ比例する値を測定できるものならば、その値を測定する手段を伝達トルク測定手段とすることができる。
ここで、トラクション係数は、図3のトラクションオイルの温度と限界トラクション係数との関係を示すグラフに示すように、温度によって変化することになる。
また、前記動力を伝達する場合に必要な入力側ディスク3及び出力側ディスク5とパワーローラ4との間の押し付け力Fcn(押圧装置12の押圧力に依存)は、前記動力を入力側ディスク3及び出力側ディスク5とパワーローラ4との間で伝達される伝達トルクT0とした場合に、Fcn=T0/(n・R1・μ)という式で表されることが知られている。
ここで、nはパワーローラ4の数であり、R1は入力側ディスク3の回転中心からパワーローラ4との接触点までの距離となる接触点までの回転半径であり、μはトラクション係数である。
また、前記動力を伝達する場合に必要な入力側ディスク3及び出力側ディスク5とパワーローラ4との間の押し付け力Fcn(押圧装置12の押圧力に依存)は、前記動力を入力側ディスク3及び出力側ディスク5とパワーローラ4との間で伝達される伝達トルクT0とした場合に、Fcn=T0/(n・R1・μ)という式で表されることが知られている。
ここで、nはパワーローラ4の数であり、R1は入力側ディスク3の回転中心からパワーローラ4との接触点までの距離となる接触点までの回転半径であり、μはトラクション係数である。
以上のことから、伝達トルクが高くなった場合に押圧装置12の押圧力を高くするとともに、トラクション係数μが低くなった場合に押圧装置12の押圧力を高くする必要がある。したがって、油圧制御手段18は、例えば、図3に示されるようなトラクションオイルの温度とトラクション係数μとの関係を示す曲線に基づいて、温度センサ21で測定された温度に基づいてトラクション係数μを求めることで、前記伝達トルクT0とともに、上述の式からトラクション係数μの変化に対応して変化する押し付け力Fcnを求め、さらに押し付け力に対応する押圧装置12の押圧力を発生させるための油圧を押圧装置12の油圧室17に供給する。
また、油圧制御手段18は、上述のようにマイクロコンピュータを内蔵しており、マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAMや外部とのインタフェース用のチップ等を備えている。
そして、上述のトラクションオイルの温度とトラクション係数μとの関係を示す曲線がプログラムの一部もしくはプログラムで使用されるデータとしてROMに記憶されている。なお、前記曲線は、たとえば、曲線を表す近似式や、トラクションオイルの温度と、トラクション係数とを対応させたマップとしてROMに記憶され、ROMがトラクションオイルの温度とトラクション係数との関係を示すデータを記憶している記憶手段となる。なお、トラクションオイルにおけるトラクション係数やトラクション係数の温度による変化は、トラクションオイルやトラクションオイルに添加される添加剤等により異なるものとなる。
そして、上述のトラクションオイルの温度とトラクション係数μとの関係を示す曲線がプログラムの一部もしくはプログラムで使用されるデータとしてROMに記憶されている。なお、前記曲線は、たとえば、曲線を表す近似式や、トラクションオイルの温度と、トラクション係数とを対応させたマップとしてROMに記憶され、ROMがトラクションオイルの温度とトラクション係数との関係を示すデータを記憶している記憶手段となる。なお、トラクションオイルにおけるトラクション係数やトラクション係数の温度による変化は、トラクションオイルやトラクションオイルに添加される添加剤等により異なるものとなる。
また、押圧装置制御手段としての油圧制御手段18が、少なくとも、前記トラクションオイルの温度とトラクション係数との関係を示すデータ、前記トラクションオイル排出温度測定手段としての温度センサ21で測定された測定値、前記伝達トルク測定手段としてのトルクセンサ15および回転速度センサ16で測定された測定値に基づいて前記押圧装置により発生される押圧力を制御することになる。
ここで、図3に示すように、温度センサ21により測定されたトラクション部から排出されたばかりのトラクションオイルの温度と、オイルパン等のトラクション部から離れた部位で測定されたトラクションオイルの温度とには大きな差がある。
例えば、図4に示すように、パワーローラ4(P/R)と、入力側及び出力側ディスク3,5(Disk)とのトラクション部に供給されたトラクションオイルは、トラクション部がトロイダル型無段変速機内でトラクションオイルが潤滑油として供給される他の部位に比較して高温となっていることにより、ΔTだけ大きく温度上昇する。
例えば、図4に示すように、パワーローラ4(P/R)と、入力側及び出力側ディスク3,5(Disk)とのトラクション部に供給されたトラクションオイルは、トラクション部がトロイダル型無段変速機内でトラクションオイルが潤滑油として供給される他の部位に比較して高温となっていることにより、ΔTだけ大きく温度上昇する。
また、トラクション部から排出されたトラクションオイルはオイルパンに回収された際に、他の部位に供給されて回収された比較的低温のトラクションオイルと混ざることと、オイルパンがトラクション部に比較して低温であることとから冷却されることになる。したがって、上述のようにトラクション部とオイルパンとではトラクションオイルの温度に大きな差が生じることになる。
ここで、仮に例えばオイルパンで測定されたトラクションオイルの温度で上述のようにトラクション係数μを求めてしまうと、実際のトラクション部におけるトラクションオイルの温度に対応した実際のトラクション係数μよりも高い値となり、これを前記式に代入して押し付け力Fcnを求めると、押し付け力Fcnが不足し、グロススリップが発生する可能性が高まってしまう。
ここで、仮に例えばオイルパンで測定されたトラクションオイルの温度で上述のようにトラクション係数μを求めてしまうと、実際のトラクション部におけるトラクションオイルの温度に対応した実際のトラクション係数μよりも高い値となり、これを前記式に代入して押し付け力Fcnを求めると、押し付け力Fcnが不足し、グロススリップが発生する可能性が高まってしまう。
実際の制御において、オイルパン等のトラクション部の近傍以外で測定されたトラクションオイルの温度に基づいて直接的にトラクション係数μを求めて押圧装置12の制御を行うことはなく、例えば、実際のトロイダル型無段変速機において実験的に各種パラメータとして求められた各種測定結果(伝達トルクを含む)とともに、オイルパンで測定されたトラクションオイルの温度の測定結果に基づいて、これら測定結果と押圧装置12で必要とされる押圧力を発生させるための油圧との関係を示す実験式やマップを作成し、これに基づいて押圧装置12の油圧室17に供給する油圧を制御することになる。
したがって、オイルパン等のトラクション部近傍以外で計測されたトラクションオイルの温度に基づいて押圧装置12を制御することにより、常時押圧装置12の押圧力が不足した状態となるようなことはないが、トラクション部におけるトラクションオイルの温度に変動があった場合に、これに対応してオイルパン等のトラクション部近傍以外で計測されたトラクションオイルの温度がリアルタイムで変動するようなことはなく、トラクション部近傍以外で測定されたトラクションオイルの温度は、トラクション部でのトラクションオイルの温度の変動に対して、変動にタイムラグが生じるとともに変動幅が極めて小さくなる可能性が高い。また、また、オイルパンにおけるトラクションオイルの温度は、トラクション部以外の他の部位でのトラクションオイルの温度変化の影響を受ける可能性が高く、さらに、トラクション部での温度変化の傾向と、トラクション部以外の他の場所での温度変化の傾向とが異なるものとなる可能性もある。
したがって、トラクションオイルの測定温度の変動に応じてリアルタイムで押圧装置12の押圧力を変動させるような制御を行うものとしても、実際にはトラクション部のトラクションオイルの温度変化が反映されず、トラクション部でトラクションオイルの温度が急激に上昇することによりトラクション係数が急激に低下したような場合に、グロススリップが発生する可能性が高まってしまう。
それに対して、この実施形態においては、トラクション部の近傍でトラクション部から排出されたばかりのトラクションオイルの温度を測定しているので、測定された温度がトラクション部でのトラクションオイルの温度に極めて近時しているとともに、トラクション部でのトラクションオイルの温度変化をリアルタイムで正確に測定することが可能となり、正確なトラクション係数に基づいて押圧装置12の押圧力を制御可能となる。
なお、実際の制御においては、この実施形態のトロイダル型無段変速機においても、温度センサ21によるトラクションオイルの温度の測定結果に基づいてトラクション係数を求める必要はなく、上述のように実際のトロイダル型無段変速機において実験的に各種パラメータとして求められた各種測定結果(伝達トルクを示す測定値を含む)とともに、トラクション部近傍で測定されたトラクション部から排出されたばかりのトラクションオイルの温度の測定結果に基づいて、これら測定結果と押圧装置12で必要とされる押圧力を発生させるための油圧との関係を示す実験式やマップを作成し、これに基づいて押圧装置12の油圧室17に供給する油圧を制御することになる。
また、油圧の制御を油圧制御弁で行う場合に、実際の制御は、油圧制御弁の制御となる。なお、上述の実験式やマップに基づいて制御を行う場合も、実験式やマップを作成する際の実験で、トラクションオイルの温度変化を想定した実験を行うことで、結果的に、トラクションオイルの温度変化に対応する油圧の制御は、上述のトラクション部におけるトラクションオイルの温度とトラクション係数との関係を示すデータに対応したものとなり、実験的に求められた実験式もしくはマップの一部がトラクション部におけるトラクションオイルの温度とトラクション係数との関係を示すものとなっており、これが油圧制御手段のマイクロコンピュータのROM等の不揮発性の記憶手段に記憶されていることになる。
また、各種パラメータとしては、上述の伝達トルクに対応するトルクセンサ15及び回転速度センサ16の検出値と、温度センサ21の検出値だけではなく、従来のように、前記両入力側ディスク3、3と前記両出力側ディスク5、5との間の変速比や、アクセル開度、アクセルの踏み込み速度等を、前記動力と合わせて前記油圧制御手段18に送り込み、前記押圧力の微調節を行わせる事もできる。
なお、この実施形態では、ハーフトロイダルの無段変速機を例にとったが、本発明はフルトロイダルの無段変速機にも適用可能であり、この場合にフルトロイダルでは、変速比によって押圧装置12で必要とされる押圧力が大きく異なるので、変速比に基づいて押圧力を制御できるようになっている必要がある。なお、ハーフトロイダルにおいても、フルトロイダルほどではないが、変速比により押圧装置12で必要とされる押圧力が変化するので、変速比に基づいて押圧装置12を制御することが好ましい。
また、アクセル開度が瞬間的に広くなった場合、すなわち、アクセルの踏み込み速度が極めて速い場合には、その後、伝達トルクが急上昇する可能性があり、この場合に伝達トルクの上昇に対応する押圧装置12の押圧力の上昇が遅れてしまい押圧力不足となってグロススリップが発生する可能性が高まってしまうので、アクセル開度が瞬間的に広くなった場合には、伝達トルクの上昇が検知される前に押圧装置12の押圧力を上昇させるように制御することが好ましい。
また、上述のように、温度センサ21をトラニオン7に固定した場合に、温度センサ21は、トラニオン7が揺動した際にトラニオン7とともに移動することになる。また、トラニオン7がパワーローラ4を支持しており、トラニオン7が揺動することで変速比を変更するようにパワーローラ4が揺動し、パワーローラ4と入力側および出力側ディスク3,5とのトラクション部が入力側および出力側ディスク3,5の内側面上で径方向に移動することになる。
この場合に、トラニオン7に固定された温度センサ21の測定方向がパワーローラ4の入力側ディスク3(もしくは出力側ディスク5)との接触分部もしくはその近傍を向いていれば、温度センサ21は、パワーローラ4およびトラニオン7の揺動によりトラクション部が移動しても常にパワーローラ4の入力側ディスク3(もしくは出力側ディスク5)との接触分部もしくはその近傍のトラクションオイルの温度を測定していることになる。
なお、トラクション部もしくはその近傍を向いた温度センサ21は、トラクション部もしくはその近傍でパワーローラ4や入力側ディスク3(もしくは出力側ディスク5)の表面温度を測定することになるが、これらの表面はトラクションオイルで覆われているとともに、これらの表面のトラクションオイルは、トラクション部に供給されたトラクションオイルが常時排出されていることや回転による遠心力から、少なくとも一部が常に新たにトラクション部から排出されたトラクションオイルに入れ替わった状態となっており、トラクション部から排出されたばかりのトラクションオイルの温度を測定することになる。
なお、トラクション部もしくはその近傍を向いた温度センサ21は、トラクション部もしくはその近傍でパワーローラ4や入力側ディスク3(もしくは出力側ディスク5)の表面温度を測定することになるが、これらの表面はトラクションオイルで覆われているとともに、これらの表面のトラクションオイルは、トラクション部に供給されたトラクションオイルが常時排出されていることや回転による遠心力から、少なくとも一部が常に新たにトラクション部から排出されたトラクションオイルに入れ替わった状態となっており、トラクション部から排出されたばかりのトラクションオイルの温度を測定することになる。
なお、本発明は、前記実施形態で示されたタブルキャビティ型でハーフトロイダル型のトロイダル型無段変速機だけではなく、上述のようにフルトロイダル型にも適用可能であり、さらに、シングルキャビティ型にも適用可能である。
また、トロイダル型無段変速機と遊星歯車機構とを組み合わせた無段変速装置が知られているが、このような無段変速装置にも適用可能である。しかし、このような無段変速装置においては、例えば、低速時と高速時等でモードを切り替えることにより、トロイダル型無段変速機での伝達トルクが大きく変化するようになっており、モードの切り替えに対応して押圧装置の押圧力を制御するようになっている必要がある。
また、トロイダル型無段変速機と遊星歯車機構とを組み合わせた無段変速装置が知られているが、このような無段変速装置にも適用可能である。しかし、このような無段変速装置においては、例えば、低速時と高速時等でモードを切り替えることにより、トロイダル型無段変速機での伝達トルクが大きく変化するようになっており、モードの切り替えに対応して押圧装置の押圧力を制御するようになっている必要がある。
また、前記実施形態では、温度センサ21として、赤外線温度センサを用いるものとしたが、例えば、熱電対を用いた温度センサを用いてもよい。なお、温度センサ21は、トロイダル型無段変速機の他の部品と干渉しないようになっている必要があり、温度センサ21を強固に固定するとともに、温度センサ21の一部が大きく変位することがないような構造となっていることが好ましい。また、他の部品への干渉を考慮した場合に、温度センサ21は非接触型のものであることが好ましい。
本発明は、様々な形態のトロイダル型無段変速機に適用することができる。
3 入力側ディスク(第1のディスク)
4 パワーローラ
5 出力側ディスク(第2のディスク)
7 トラニオン
9 枢軸
12 押圧装置
15 トルクセンサ(伝達トルク測定手段)
16 回転速度センサ(伝達トルク測定手段)
18 油圧制御手段(押圧装置制御手段、記憶手段)
21 温度センサ(トラクションオイル排出温度測定手段)
4 パワーローラ
5 出力側ディスク(第2のディスク)
7 トラニオン
9 枢軸
12 押圧装置
15 トルクセンサ(伝達トルク測定手段)
16 回転速度センサ(伝達トルク測定手段)
18 油圧制御手段(押圧装置制御手段、記憶手段)
21 温度センサ(トラクションオイル排出温度測定手段)
Claims (2)
- 互いに同心に、且つ相対回転自在に配置された第1、第2のディスクと、互いに対向するこれら第1、第2のディスクの内側面同士の間に挟持されてこれら第1、第2のディスク同士の間で動力を伝達する複数のパワーローラと、前記第1のディスクを前記第2のディスクに向け押圧する油圧式の押圧装置とを備えたトロイダル型無段変速機において、
前記第1、第2のディスクのうちの少なくとも一方とパワーローラとの転がり接触部分近傍で、当該転がり接触部分から排出されるトラクションオイルの温度を測定するトラクションオイル排出温度測定手段と、
前記パワーローラを介して第1のディスクと第2のディスクとの間で伝達される伝達トルクに対応する値を測定する伝達トルク測定手段と、
トラクションオイルの温度とトラクション係数との関係を示すデータを記憶している記憶手段と、
少なくとも、前記トラクションオイルの温度とトラクション係数との関係を示すデータ、前記トラクションオイル排出温度測定手段で測定された測定値、前記伝達トルク測定手段で測定された測定値に基づいて前記押圧装置により発生される押圧力を制御する押圧装置制御手段と、
を備えたことを特徴とするトロイダル型無段変速機。 - 前記パワーローラを回転自在に支持し、第1、第2のディスクの中心軸に対して捩れの位置にある枢軸を中心として揺動変位するトラニオンに、前記トラクションオイル排出温度測定手段が固定されていることを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005299692A JP2007107626A (ja) | 2005-10-14 | 2005-10-14 | トロイダル型無段変速機 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005299692A JP2007107626A (ja) | 2005-10-14 | 2005-10-14 | トロイダル型無段変速機 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2007107626A true JP2007107626A (ja) | 2007-04-26 |
Family
ID=38033645
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2005299692A Withdrawn JP2007107626A (ja) | 2005-10-14 | 2005-10-14 | トロイダル型無段変速機 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2007107626A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010185489A (ja) * | 2009-02-10 | 2010-08-26 | Toyota Motor Corp | トロイダル型cvtの押圧油圧制御装置 |
WO2013183503A1 (ja) * | 2012-06-04 | 2013-12-12 | 日産自動車株式会社 | 駆動力配分装置 |
JP2018197594A (ja) * | 2017-05-24 | 2018-12-13 | 日本精工株式会社 | 摩擦ローラ式減速機及びこれを用いた減速機ユニット |
JP2018197595A (ja) * | 2017-05-24 | 2018-12-13 | 日本精工株式会社 | 摩擦ローラ式減速機及びこれを用いた減速機ユニット |
-
2005
- 2005-10-14 JP JP2005299692A patent/JP2007107626A/ja not_active Withdrawn
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WO2013183503A1 (ja) * | 2012-06-04 | 2013-12-12 | 日産自動車株式会社 | 駆動力配分装置 |
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Legal Events
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A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
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