JP2004028010A - エンジン始動装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】速度判定部36は、始動後にモータ回転速度がクランキング回転数を超えた場合に連れ回りが生じているとして信号s1を出力する。通電停止部38は、信号s1に応答してモータ3aに対する通電停止を指示する。通電停止後、回転速度がクランキング回転数近くまで低下したときに速度判定部36は信号s2を出力する。信号s2により通電停止部38からの通電停止指示は解除される。モータの回転速度検出は着火後も続けられ、さらに高い速度になれば、信号s4によって回転速度検出も停止される。回転速度が完爆を示す値になれば、速度判定部36から信号s3が出力されてリレー制御部39はリレー19,26を発電機側に切り換える。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエンジン始動装置に関し、特にエンジン着火開始後のエンジン回転数上昇に伴って始動用電動機(以下、「スタータモータ」という)がエンジンから駆動力を受けるのを抑制するのに好適なエンジン始動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジン始動装置においてエンジンのクランキングに用いられるスタータモータは、回転数をほぼ一定の目標回転数に収斂するように制御されてエンジン着火のためにエンジンを駆動する。したがって、着火開始後は、エンジン回転数の上昇に伴って前記目標回転数が相対的にエンジン回転数より低くなるため、スタータモータがエンジンに連結されたままの状態にあると、エンジンから駆動力を得てスタータモータが回転する、いわゆる連れ回りを生ずる。この結果、スタータモータが負荷となってエンジンの回転を妨げる。
【0003】
したがって、この連れ回りを防止するために、着火開始後は、スタータモータとエンジンとを連結するギヤの噛み合わせを外すとか、スタータモータとエンジンとの間に設けたクラッチを切り離すとかすることが行われている。ところが、始動後にはスタータモータをエンジンで駆動される発電機として使用する、いわゆる発電電動機を使用するシステムにおいては、着火開始後であってもエンジンとスタータモータつまり発電機とを機械的に分離することができない。そこで、特開平3−3969号公報に開示されているように、着火開始後の適当な時期にはスタータモータの励磁電流の供給を停止することが行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、エンジンが確実に自立運転に移ったと判別できる回転数はクランキング回転数よりもずっと高い。したがって、エンジン着火開始後の回転数上昇中の早期にスタータモータの励磁を停止してしまった場合、完爆状態になっていなくて結果的に起動が失敗することがある。この場合、エンジン回転数が低下して回転が停止するまで次の始動操作ができない。
【0005】
またスタータモータとして、回転子の位置検出センサを有していないブラシレスモータを使用する場合がある。この場合、通常は固定子巻線に誘起される電圧と位相信号等から回転子の位置を推定しているので、一旦、通電を止めてしまうとそれ以降は回転速度や回転位置の検出ができなくなってしまう。したがって、一旦起動を失敗すると、回転数が低下してエンジンが停止するまで次の始動操作を行えない。このように、従来の始動装置では、一旦起動に失敗すると再始動に時間がかかってしまうという問題点がある。
【0006】
本発明の目的は、上記課題を解消し、エンジン着火開始後にスタータモータがエンジン回転の負荷とならないようにして、始動をすみやかに、かつ円滑に行えるようにしたエンジン始動装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、エンジンを始動するブラシレスモータと、前記モータの固定子巻線に誘起される電圧に基づいて該モータの回転速度を検出する速度検出手段と、前記回転速度が前記エンジンの始動目安として予め設定された第1速度を超えたときに前記モータに対する通電を停止する通電停止手段と、前記回転速度が前記第1速度より高い第2速度を超えたときに前記速度検出手段による検出動作を停止させる検出停止手段とを具備した点に第1の特徴がある。
【0008】
第1の特徴によれば、エンジン始動時にモータの回転速度が第1速度を超えた場合にエンジンが始動されたと判断してモータは停止される。しかし、その後に失速した場合を考慮して、さらに高い第2速度を超えるまでモータの速度検出動作が継続される。
【0009】
また、本発明は、前記通電停止手段により通電が停止された後、前記回転速度が失火目安として予め設定された第3速度以下に低下したときに前記通電停止手段による通電停止を解除して前記モータに対する通電を再開する手段を具備した点に第2の特徴がある。
【0010】
第2の特徴によれば、始動失敗した場合に、モータの回転速度が失火目安以下に低下したことから失速を認識することができ、迅速に再始動動作に移ることができる。
【0011】
また、前記第3速度は第1速度より低い値とする点に第3の特徴がある。第3の特徴により、失速したことを確実に認識することができる。
【0012】
さらに、本発明は、前記モータが、3相固定巻線のうち、2相に駆動用通電をしたときに通電されていない巻線に誘起される電圧信号に基づいて回転子の回転位置信号および回転速度信号を形成するように構成され、前記速度検出手段が、前記回転速度信号に基づいてモータの回転速度を検出する点に第4の特徴がある。
【0013】
第4の特徴によれば、巻線の誘起電圧に基づいてモータの回転速度が検出され、モータやエンジンの回転位置センサを使用せずに、通電タイミングを間違いなく検出して再始動することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明の一実施形態を詳細に説明する。図2はスタータモータとしてブラシレスモータを使用したエンジン発電装置の側面図、図3は図2のV−V断面図である。エンジン発電装置1は4サイクル内燃エンジン(以下、単に「エンジン」という)2と磁石式多極発電機である発電機3とを備える。発電機3は発電電動機であり、後述するように電動機としても動作する。エンジン2のクランク軸4は、クランクケース5の側壁5aに設けられる軸受6等で支持された状態でエンジン2の外部に引き出される。クランク軸4を囲むクランクケース5の側壁5aの周縁ボス部には環状星型鉄心7がボルト80によって固着される。鉄心7は環状の継鉄部7aとそれから放射状に突出せられる27個の突極部7bとからなる。前記突極部7bには、3相の巻線が順次交互に巻回されてステータ8を構成する。
【0015】
クランク軸4の先端には鍛造品のハブ9が嵌着され、このハブ9にロータヨークを兼ねるフライホイール10が結合される。フライホイール10は高張力鋼板をカップ状にプレス成形して形成されたディスク部10aと円筒部10bとからなる。ディスク部10aがハブ9に固着され、円筒部10bが鉄心7の突極部7b外側を覆うように取り付けられる。
【0016】
フライホイール10の円筒部10bの内周面には高い磁力を有するネオジウム系の磁石11が周方向に亘って18個固着されてアウタロータ型磁石ロータ12を構成する。このようなロータ12は磁石11を円筒部10bの内周面に敷き詰めてあることで十分なマス(質量)を確保してフライホイールとしての機能を果たすことができる。
【0017】
フライホイール10のディスク部10aには冷却ファン13が取り付けられる。冷却ファン13は、円環状の基板13aの一方の側面に複数の羽根13bが周方向に亘り立設されたもので、基板13aはフライホイール10のディスク部10aの外表面に固着される。冷却ファン13を覆うファンカバー14は、フライホイール10の側方からエンジン2に至る冷却風の導風路14aを形成する。
【0018】
図4は、エンジン発電装置1のシステム図である。発電機3はエンジン2で駆動されて3相交流を発生する。発電機3の出力交流は半導体整流素子をブリッジに組んだ整流回路からなるコンバータ15で全波整流されて直流に変換される。コンバータ15から出力される直流はコンデンサ平滑回路16で平滑化されてインバータ17に入力され、インバータ17を構成するFETのブリッジ回路で所定周波数の交流に変換される。インバータ17から出力される交流は復調フィルタ18に入力され、低周波成分(例えば商用周波数)のみが通過する。復調フィルタ18を通過した交流は、リレー19およびヒューズ20を介して出力端子21に接続される。リレー19はエンジン2の始動時には「開」になり、エンジン2が所定程度まで始動された後は「閉」になる。
【0019】
エンジン発電装置1の発電機3は、前述のように発電電動機であって、エンジン2を始動するためのスタータモータとして使用することができる。以下、スタータモータとして使用する場合は、発電機3をスタータモータ3aとして説明する。スタータモータ3aのためのスタータドライバ22が設けられる。スタータドライバ22にエンジン2の始動のための電流を供給するため、整流回路23と平滑回路24とが設けられる。整流回路23には高調波フィルタ231およびコンバータ232が設けられる。高調波フィルタ231は出力端子21に接続される。
【0020】
発電機3の出力側は、例えば、交流200Vの単相電源25に接続され、エンジン始動時にはこの電源25から交流が供給される。この交流は高調波フィルタ231に入力されて高調波が除去され、コンバータ232で直流に変換された後、さらに平滑回路24を介してスタータドライバ22に制御用電源として供給される。
【0021】
スタータドライバ22の出力側は、リレー26を介して発電機3の3相巻線の各相に接続される。リレー26はエンジン2の始動時には「閉」になり、エンジン2が所定程度まで始動された後は「開」になる。エンジン2の始動のため、発電機3の3相巻線の各相に予定の順序で順次電流を供給する。各相の巻線に電流を順次供給するためのスイッチング素子(FET)221と、CPU222と、ロータ12の位置を検出するためのセンサを使用しないセンサレス駆動部223とが設けられる。
【0022】
図5は、センサレス駆動部223の要部機能を示すブロック図である。同図において、誘起電圧検出部27は、インバータ回路つまりスイッチング素子221によってステータ8の2相間に通電されてロータが回転したときに残りの1相と中点との間に誘起される電圧信号の波形を検出する。位置検出部28は、検出された電圧波形に基づいてステータ8の各相とロータ12の各磁石との位置関係つまり回転位置を判別する。駆動演算回路29は、ステータ8の各相とロータ12の各磁石との位置関係に基づき、スイッチング素子221を駆動するための周期を演算する。駆動部30は駆動演算回路29で算出された周期に基づいてインバータ回路221に通電信号を供給する。
【0023】
図6は、エンジン発電装置1の始動制御の全体動作を示すタイムチャートである。タイミングt1でエンジン始動指令が入力されて、制御装置(ECU)のスタート信号がオンとなり、待機時間(例えば1秒)の後、リレー19,26をスタータモータ3a制御用に切り換えて、タイミングt2でスタータモータ3aを正回転させる。高負荷域に達するタイミングt3でスタータモータ3aを逆回転させる。この正回転および逆回転では、スタータモータ3aは定常運転時に供給される電流よりも低い初期励磁電流で駆動される。低い電流によって回転速度を抑制することにより、正回転および逆回転時に、高負荷位置つまり反転時に十分な始動トルクが期待できる位置で容易にスタータモータ3aを停止できるし、高負荷位置を乗り越えられないときの反作用力(回転速度が大きいと反作用力も大きい)を抑制することができる。
【0024】
スタータモータ3aを正・逆回転させて、十分な始動トルクが期待できる位置にクランク軸4を位置決めしたときに、タイミングt4で正回転方向に加速を開始する。この正回転では、初期励磁電流よりも高い始動電流をスタータモータ3aに供給する。
【0025】
タイミングt5でスタータモータ3aがクランキングの目標回転速度になると、クランキング中はこの回転速度が維持される。そして、所定の点火タイミングt6でエンジンが点火される。タイミングt7でリレー19を閉じ、リレー26を開いて発電機3の制御に切り換える。タイミングt8まで(例えばタイミングt1から10秒)はスタート信号は維持されるが、タイミングt8までに規定回転数(例えば1500rpm)に達しない場合は、始動失敗であり、予定時間(例えば10秒)をおいて、再びスタート信号をオンにする。
【0026】
上記十分な始動トルクが期待できる位置にスタータモータ3aを動かすための正回転および逆回転の停止位置は、スタータモータ3aの回転速度が予定値以下になったことで判断する。スタータモータ3aの回転速度は、例えば、前記誘起電圧波形の周期に基づいて算出することができる。
【0027】
図7、図8はエンジン発電装置1の始動制御のフローチャートであり、図9は始動制御のタイムチャートである。図7のステップS1では、エンジン始動指令の有無を判別する。エンジン始動指令が入力されたならばステップS2に進み、スタータモータ3aを正回転つまりエンジン2の正回転方向に駆動する。ステップS3では、ステップS2の正回転動作開始から時間T1(例えば0.3秒)が経過したか否かが判断される。時間T1は正回転方向への駆動の可否を判断する時間である。ステップS4では、スタータモータ3aの回転速度が始動完了速度(例えば、33rpm)以上か否かが判断される。これによって、スタータモータ3aが回転し始めたかどうかが判断される。時間T1が経過するまでに回転速度が始動完了速度以上にならない場合はステップS11に進んで逆回転を開始させる(図9▲1▼)。
【0028】
スタータモータ3aが始動完了速度以上になると、ステップS4は肯定となってステップS5に進み、位置合わせのための正回転目標速度(例えば230rpm)に収斂するよう速度制御を伴う正回転が行われる。ステップS6では、ステップS5の正回転動作開始から時間T2(例えば0.5秒)が経過したか否かが判断される。時間T2は、位置合わせの必要性と逆転動作への移行とを判断する時間である。時間T2が経過するまではステップS7に進む。
【0029】
ステップS7では、スタータモータ3aの回転速度が反転判定速度(例えば、そこまでの最高速度の75%)まで低下したか否かが判断される。これによって、クランク角が上死点前の高負荷位置の近くで減速してしまったかどうかが判断される。時間T2が経過しても(ステップS6が肯定)、回転速度が低下しない場合(ステップS7が否定)は、エンジンが上死点後の軽負荷域にあると判断されるので、逆回転には移らず、加速正回転のためステップS23(図8)に進む(図9▲2▼)。
【0030】
回転速度が反転判定速度まで低下したならばステップS7は肯定となり、ステップS8に進んでブレーキ制御によりスタータモータ3aの正回転を停止させる。停止判断のための時間T3(例えば0.2秒)が経過する(ステップS9肯定)か、回転停止とみなされる速度(例えば23rpm(図9▲4▼))以下になる(ステップS10肯定)と、スタータモータ3aはそれ以上正回転しないと判断してステップS11に進む。
【0031】
ステップS11では、スタータモータ3aを逆回転させてエンジン2を逆回転させる。ステップS12では、ステップS11の逆回転動作開始から時間T4(例えば0.3秒)が経過したか否かが判断される。時間T4は速度制御を伴う逆回転動作に移るための判断時間である。時間T4が経過するまでに始動完了速度(例えば、33rpm)に達した場合は、ステップS13が肯定となりステップS14に進む。時間T4が経過しても始動完了速度以上にならない場合はステップS20に進む(図9▲3▼)。
【0032】
ステップS14では、速度制御を伴う逆回転動作が行われる。ステップS15では、ステップS14の逆回転動作開始から時間T5(例えば0.5秒)が経過したか否かが判断される。時間T5は逆回転停止判断のための時間である。時間T5が経過するまではステップS16に進む。ステップS16では、スタータモータ3aの回転速度が反転判定速度(例えば、そこまでの最高速度の75%)まで低下したか否かが判断される。これによって、エンジン負荷が大きくなり、クランク角が上死点前(正回転方向の上死点後に対応)の高負荷位置に到達したかどうかが判断される。
【0033】
時間T5が経過した場合(ステップS15が肯定)、または回転速度が低下した場合(ステップS16が肯定)は、ステップS17に進んでブレーキ制御によりスタータモータ3aの逆回転を停止させる。停止判断のための時間T6(例えば0.2秒)が経過した場合(ステップS18肯定)、または回転停止とみなされる速度(例えば23rpm(図9▲5▼))以下になる(ステップS19肯定)と、スタータモータ3aを加速正回転させるため、ステップS20(図8)に進む。
【0034】
図8のステップS20では、加速正回転を行う。位置決め後の正回転では、まず、速度制御を行わないで、電流値を固定して加速正回転させる。スタータモータ3aの回転速度が制御開始速度(例えば、198rpm(図9▲6▼))になると、速度制御を伴う正回転に切り換える。初期の制御目標値は、例えば、331pmとする。そして、この制御目標値を予定の加速度(例えば3300rpm/sec)で変化させていく。
【0035】
すなわち、ステップS21では、一定電流での加速制限時間T7が経過したか否かが判断される。ステップS22では、制御開始速度以上になったか否かが判断される。時間T6が経過するかスタータモータ3aの回転速度が制御開始速度以上になると、ステップS23に進み、制御目標値に従って速度制御を行う。制御目標値は徐々に増大させていくので、実際の回転速度も増大していく。ステップS24では、回転速度がクランキング速度(例えば、800rpm)に到達したか否かが判断される。回転速度が増大してステップS24が肯定となれば、回転速度をクランキング速度に維持するため、制御目標値をクランキング回転数に対応する値に維持して、始動のシーケンスは終了される。
【0036】
図10は、クランキング開始制御の要部機能ブロック図である。誘起電圧検出部27で検出された誘起電圧の波形はモータ回転速度算出部31に入力される。モータ回転速度算出部31は誘起電圧の周期に基づいてスタータモータ3aの回転速度を算出する。最大速度記憶部32は始動制御でそれまでに検出されたスタータモータ3aの最大速度をラッチする。最大速度は回転方向が変わるとクリアされる。速度低下判定部33は、現在のスタータモータ3aの回転速度と予定の反転判定速度(例えば、前記最大速度の75%)とを比較し、現在の回転速度が反転判定速度以下になっていれば、速度低下検出信号を正・逆転制御部34に出力する。
【0037】
正・逆転制御部34は該速度低下検出信号に応答して、スタータモータ3aを停止させて反転させる反転指示を駆動部30に供給する。正・逆転制御部34は、前記反転指示とともに正回転および逆回転時の制御目標値を駆動演算回路29に入力し、駆動演算回路29はスタータモータの回転速度をこの制御目標値に制御すべくスイッチング素子221を駆動するための周期を演算する。スタータモータ3aは、スイッチング素子221の駆動周期で決定される速度で回転するよう制御される。電流供給部35は、位置決め時およびその後の加速正回転時に初期励磁電流および始動電流をそれぞれスタータモータ3aに供給する。
【0038】
本実施形態によれば、最初にエンジン負荷が大きくなる位置まで正回転させ、その後、逆回転させて再びエンジン負荷が大きくなる位置で停止させる。そして、その位置から一気にクランキング可能な速度まで加速する。このように、エンジン負荷が大きくなる位置で停止させることによって、続く反転時には軽負荷になるので、加速が容易である。したがって、正・逆回転による位置決め後に始動電流を供給することにより慣性力を使用でき、圧縮行程を容易に乗り越えてクランキング動作をさせることができる。
【0039】
続いて、クランキング開始後のスタータモータ切り離し制御について説明する。エンジン回転速度がクランキング速度に達した後、スタータモータ3aによるエンジンの駆動を終了するための制御、つまりスタータモータ切り離し制御に移行する。図11は、スタータモータ切り離し制御のタイムチャートである。図11において、タイミングt5でスタータモータ3aの回転速度が目標速度(800rpm)に到達した後は、制御目標値を800rpmに維持してクランキングが開始される。タイミングt6でエンジンが点火されると徐々にエンジン回転数は増大し、それに伴ってスタータモータ3aの回転速度が増大する。このままの制御を継続すると、エンジン回転数が制御目標値を超えた時点からスタータモータ3aがエンジン2の負荷となる。そこで、スタータモータ3aの回転速度が第1速度に対応する制御開放目標値(1000rpm)に到達した時点(t6’)でスタータモータ3aに対する通電を停止させる。タイミングt7でスタータモータ3aの回転速度がリレー切換目標値(1250rpm)に到達したら、発電機制御側にリレー19,26を切り換える。さらにスタータモータ3aの回転速度が完全に始動したと判断される第2速度としての始動完了速度(1500rpm)に到達したタイミングt8でモータ回転速度の検出を停止し、ECUスタート信号をオフにする。
【0040】
一方、タイミングt6’でスタータモータ3aに対する通電を停止した後、エンジン2が失速して回転速度が低下してきたときは再び速度制御を行ってクランキングを続ける。すなわち、回転速度が第3速度に対応する失火判断速度(900rpm)まで低下したタイミングt9で制御目標値をクランキング速度(800rpm)に設定して速度制御を伴うクランキングを再開する。
【0041】
上記切り離し制御を、図12のフローチャートを参照して説明する。ステップS30では制御目標値を維持してクランキングが行われる。ステップS31ではエラー判断のための時間T8が経過したか否かが判断される。ステップS32ではスタータモータ3aの回転速度がエンジン2の始動目安として設定された第1速度としての初爆開始速度(制御開放目標値)以上になったか否かが判断される。初爆開始速度以上であれば、ステップS33に進む。時間T8が経過してもスタータモータ3aの回転速度が初爆開始速度以上にならない場合は、ステップS31からステップS38に進んでECUスタート信号を停止する。
【0042】
ステップS33では、スタータモータ3aに対する通電を停止する。すなわち、スタータモータ3aのPWM制御を停止させる。スタータモータ3aの回転速度検出は継続して行われる。ステップS34ではエラー判断のための時間T9が経過したか否かが判断される。ステップS35ではスタータモータ3aの回転速度がエンジン2の失火判断速度(第3速度)以下に低下したか否かで失火の有無が判断される。
【0043】
失火していなければステップS36に進んでスタータモータ3aの回転速度がエンジン2の完爆速度以上になったか否かが判断される。完爆速度以上になったならばステップS37に進んで、スタータモータ3aの回転速度検出を停止するとともにリレー19,26が発電回路側に切り換えられる。
【0044】
ステップS34で時間T9が経過したときはステップS38に進んでECUスタート信号を停止する。ステップS35で失火と判断されればステップS39に進んでスタータモータ3aに対して通電が再開される。通電が再開されると、ステップS30に進んで再びクランキングが開始される。
【0045】
ステップS37で発電回路側への切り換えが行われたならば、ステップS38に進み、スタータモータ3aの駆動を停止してこの切り離し制御を終了する。
【0046】
図1はスタータモータ切り離し制御の要部機能を示すブロック図であり、図10と同符号は同一または同等部分を示す。速度判定部36は、モータ回転速度算出部31で算出されたスタータモータの回転速度を監視し、モータ回転速度が制御開放目標値以上か、失火判断速度以下に低下したか、リレー切換速度以上か、およびスタータモータの回転速度検出不要域か等を判定し、それぞれの判定結果に従って制御開放信号s1、失火信号s2、リレー切換信号s3、および速度測定停止信号s4を出力する。駆動演算回路29は、スタータモータ3aの実回転速度が制御目標値設定部37に設定された制御目標値に収斂するように、スイッチング素子221の駆動周期を演算する。
【0047】
制御目標値設定部37には、クランキング速度が制御目標値として記憶されていて、速度制御中(タイミングt5〜t6’の間)はこの制御目標値が駆動演算回路29に入力される。通電停止部38は、制御開放信号s1に応答して駆動部30に通電停止指示を出力する。駆動部30は通電停止指示が入力されると、スイッチング素子つまりインバータ回路221に対する周期信号の供給を停止する。これによりインバータ回路221は動作停止し、スタータモータ3aは付勢されない。
【0048】
また、速度制御を行わない速度領域(始動完了速度、例えば1500rpm)までエンジン回転数が上昇したときに速度判定部36に含まれる検出停止機能により速度測定停止信号s4が出力される。信号s4はモータ回転速度算出部31に入力され、モータ回転速度算出部31はこの信号s4に応答してステータモータ3aの回転速度検出を停止する。
【0049】
一方、通電停止部38は、始動失敗を示す失火信号s2が入力されると、通電停止指示の出力を停止する。これによって、スタータモータ3aの付勢禁止は解除され、制御目標値設定部37の制御目標値を再クランキングのため再びクランキング速度に再び戻す。リレー制御部39はリレー切換信号s3に応答してリレー19を発電機側に接続し、リレー26を開放する。
【0050】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、請求項1〜請求項4の発明によれば、エンジン始動後も継続してブラシレスモータをエンジンに接続しているシステムにおいて、エンジン始動後は該モータに対する通電が停止されるので、エンジンの回転に対してブレーキとして作用することを抑制することができる。一方、始動後も、さらに高い速度に至るまでモータの回転速度の検出動作が持続され、エンジンの回転状態を監視することができる。
【0051】
そして、請求項2の発明によれば、失速を検出して速やかに再始動させることができ、請求項3の発明では、エンジンの失速を正確に認識することができる。
【0052】
また、請求項4の発明によれば、回転子の位置検出用センサを使用しないで、巻線の誘起電圧に基づいてモータの制御を行う場合であっても、通電タイミングを間違うことなく、エンジンを再始動させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るエンジン始動装置の要部であるモータ切り離し制御の機能ブロック図である。
【図2】スタータモータとしてブラシレスモータを使用したエンジン発電装置の側面図である。
【図3】図2のV−V断面図である。
【図4】エンジン発電装置のシステム図である。
【図5】センサレス駆動部の要部機能を示すブロック図である。
【図6】エンジン発電装置の始動制御の全体動作を示すタイムチャートである。
【図7】エンジン発電装置の始動制御のフローチャート(その1)である。
【図8】エンジン発電装置の始動制御のフローチャート(その2)である。
【図9】始動制御の要部タイムチャートである。
【図10】エンジン始動時の始動位置決め制御の機能ブロック図である。
【図11】モータ切り離し制御のタイムチャートである。
【図12】モータ切り離し制御のフローチャートである。
【符号の説明】
3…発電機、 3a…モータ、 4…クランク軸、 8…ステータ、 19,26…リレー、 22…スタータドライバ、 23…整流回路、 27…誘起電圧検出部、 28…位置検出部、 29…駆動演算回路、 30…駆動部、 31…モータ回転速度算出部、 36…速度判定部、 37…制御目標値設定部、
38…通電停止部、 221…スイッチング素子(インバータ)
Claims (4)
- エンジンを始動するブラシレスモータと、
前記モータの固定子巻線に誘起される電圧に基づいて該モータの回転速度を検出する速度検出手段と、
前記回転速度が前記エンジンの始動目安として予め設定された第1速度を超えたときに前記モータに対する通電を停止する通電停止手段と、
前記回転速度が前記第1速度より高い第2速度を超えたときに前記速度検出手段による検出動作を停止させる検出停止手段とを具備したことを特徴とするエンジン始動装置。 - 前記通電停止手段により通電が停止された後、前記回転速度が失火目安として予め設定された第3速度以下に低下したときに前記通電停止手段による通電停止を解除して前記モータに対する通電を再開する手段を具備したことを特徴とする請求項1記載のエンジン始動装置。
- 前記第3速度は第1速度より低い値とすることを特徴とする請求項2記載のエンジン始動装置。
- 前記モータが、3相固定巻線のうち、2相に駆動用通電をしたときに通電されていない巻線に誘起される電圧信号に基づいて回転子の回転位置信号および回転速度信号を形成するように構成され、
前記速度検出手段が、前記回転速度信号に基づいてモータの回転速度を検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエンジン始動装置。
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