JP3932104B2 - 車両用交流発電機装置及びその製造方法 - Google Patents

車両用交流発電機装置及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転数に応じて発電制御を行う車両用発電機装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
年々増大する車両の電力需要に応じて発電機の容量が大きくなる傾向にあるが、それに反してエンジンルーム内の高密度化により発電機自体の大型化はもはや非常に困難となっている。この問題を解決するために、車両用交流発電機の全体体格を増大することなく。回転子の界磁極数を従来の12)から14更には16に変更することにより、出力増大をはかることが企画されつつある。この界磁極数増大による出力増加方式は、車両用交流発電機を構成する種々の構成部品や製造設備を大幅に共用化することができるので、製造コストの増大を抑制することができる利点をもち、更に補修部品の共通化によりメンテナンスが容易であるという利点を有している。
【0003】
また、従来の車両用交流発電機の制御装置において、検出した発電機の回転数に応じて発電を制御することが一般に行われている。以下、この方式の車両用交流発電機を回転数制御方式の車両用交流発電機ともいうものとする。
【0004】
この場合、わざわざ回転数センサを設けることは装置構成が複雑、高価となってしまうため電機子巻線から出力される1相発電電圧(交流電圧)を信号処理が簡単なパルス信号に変換し、このパルス信号により回転数による発電制御を行う方式が一般に採用されている。
【0005】
この回転数制御方式の発電制御の例を挙げると、例えば界磁極の残留磁化に起因した微小誘起電圧をパルス信号に変換して界磁電流通電開始のための回転開始時期を判定したり、回転数に応じて界磁電流を調整して発電機の出力電圧を調整したり、電気負荷投入時に界磁電流を漸増させる場合において高回転域においてこの漸増制御を中止する場合などがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の回転数制御方式の12極型車両用交流発電機を出力アップのために14極型又は16極型の車両用交流発電機に変更する場合、入力されるパルス信号周波数と回転数との比率が変化してしまうため、12極型の車両用交流発電機に装備された制御装置を14極型又は16極型の車両用交流発電機に流用すると、検出回転数を6/7倍又は3/4倍に誤認識してしまうため、界磁極数変更に応じてそれぞれ別々に設計、製造された制御装置を採用しなければならないという不便があった。この結果、上記した界磁極数増加方式の利点としての構成部品の共用化の効果を制御装置にまで及ぼすことができないという不満があった。
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、回転数制御方式の車両用交流発電機の界磁極数変更による出力変更を部品点数及び体格の増大又は製造工程の変更を抑止しつつ可能とした車両用交流発電機装置を提供することをその目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の車両用交流発電機装置は、所定極数の界磁極の回転により三相電機子巻線に誘起される交流電圧を整流してバッテリに出力する発電機と、前記バッテリ電圧を所定範囲に制御するとともに、前記交流電圧の周波数に基づいて前記車両用交流発電機の回転数を検出する制御部を有する制御装置とを備え、前記制御装置は、入力される前記三相電機子巻線の1相発電電圧の周波数に対してN倍(Nは2以上の整数)の周波数をもつパルス信号を発生する周波数ーパルス変換部を有し、前記制御部は、前記周波数ーパルス変換部から入力される前記パルス信号に基づいて前記回転数検出を実施する車両用交流発電機装置に適用される。
【0009】
この回転数検出方式の車両用交流発電機装置によれば、1相発電電圧の周波数をN倍する周波数ーパルス変換部を発電機と制御部との間に増設することにより、制御部がこの周波数増倍されたパルス信号に基づいて回転数を検出し所望の制御を行うことができる
【0010】
このようにすれば、界磁極対数が異なる種々の形式の発電機に対して、この周波数ーパルス変換部の周波数変換率すなわち倍率を調整することにより、同一構成の制御部を用いて所望の回転数制御を実行できる。その結果、界磁極対数が異なる種々の発電機に対していちいち異なる制御部(通常レギュレータとも呼ばれる)をなす制御ICを製造する手間がなく、製造が非常に簡単となる。もちろん、この場合、周波数ーパルス変換部の上記倍率の変更の手間は増えるが、この周波数ーパルス変換部の倍率変更はそれに対して格段に複雑である制御部の変更よりも格段に容易であるので、全体として製造が簡単となり、製造コストや保守が容易となる。
【0011】
好適な態様において、周波数増倍比率である倍率Nは7に設定され、前記周波数ーパルス変換部は、前記1相発電電圧を矩形波電圧に変換する波形整形部と、前記矩形波電圧の周波数の所定整数倍の数のパルス電圧を発生するパルス数増倍部とを備え、前記パルス数増倍部は、それぞれ入力されるパルス電圧のエッジから段ごとに段数×所定遅延時間だけ遅延したエッジを加えることにより、段ごとにパルス数を1だけ増加させるパルス追加段を6段縦続接続して構成されている。
【0012】
本構成によれば、パルス追加段を6段全部有効とすることにより界磁極対数6の発電機に装備することができるとともに、パルス数増倍部のどれか一つのパルス追加段の段、好適には最終段を機能不能として、界磁極対数7の発電機に装備することにより、制御部を変更することなく、回転数検出方式の制御装置を簡単に実現することができる。
【0013】
好適な態様において、周波数増倍比率であるNは4に設定され、前記周波数ーパルス変換部は、前記1相発電電圧を矩形波電圧に変換する波形整形部と、前記矩形波電圧の周波数の所定整数倍の数のパルス電圧を発生するパルス数増倍部とを備え、前記パルス数増倍部は、それぞれ入力されるパルス電圧のエッジから段ごとに段数×所定遅延時間だけ遅延したエッジを加えることにより、段ごとにパルス数を1だけ増加させるパルス追加段を3段縦続接続して構成されている。
【0014】
本構成によれば、パルス追加段を3段全部有効とすることにより界磁極対数6の発電機に装備することができるとともに、パルス数増倍部のどれか一つのパルス追加段の段、好適には最終段を機能不能として、界磁極対数8の発電機に装備することにより、制御部を変更することなく、回転数制御方式の制御装置を簡単に実現することができる。
【0015】
好適な態様において、前記周波数ーパルス変換部は、基準クロック信号を発生する基準クロック回路と、前記基準クロック信号を分周して前記遅延時間に相当するタイミングで前記エッジを発生する所定段数の分周回路とを有し、前記パルス数増倍部の最終段を構成する前記パルス追加段が出力する前記エッジの累計遅延時間(前記所定遅延時間×パルス追加段の段数)が前記1相発電電圧の想定最大周波数値においても前記1相発電電圧の半周期未満となるように、前記基準クロック信号の周波数を設定する。
【0016】
本構成によれば、上記パルス数増倍部において追加パルスが重なることによる誤動作を防止して、検出精度を向上することができる。
【0017】
好適な態様において、前記周波数ーパルス変換部は、 前記周波数ーパルス変換部は、前記制御部からの倍数指令に基づいて決定されたパルス周期で前記パルス信号を形成し、前記制御部は、入力されるパルス周波数に基づいて決定される回転数に応じて前記周波数ーパルス変換部の前記パルス周期を決定することにより、前記発電機の回転数が高い場合におけるパルス周期を短縮し、前記発電機の回転数が低い場合におけるパルス周期を延長する。
【0018】
本構成によれば、高回転時におけるパルス誤出力を防止しつつ、低回転時におけるパルス周期を延長してパルス信号処理の耐ノイズ性を向上することができる。
【0019】
好適な態様において、前記周波数ーパルス変換部は、前記制御部と異なるICチップに集積される。このようにすれば、上記界磁極対数が異なる各発電機に対して制御部を構成するICを完全に共通化することができる。また、周波数ーパルス変換部の倍率変更は、周波数ーパルス変換部を構成するIC(車両用交流発電機制御用の特殊な仕様の制御部を構成するICに対して格段に安価で製造も簡単であり、市販品を容易に得ることができる)の倍率変更自体は、異なる倍率の周波数ーパルス変換部用ICを必要種類準備して行ってもよい。又は、ICパッケージから突出するジャンパーピンの切断やICを搭載する配線基板複数層の導体をホールへの短絡ピンの挿入などにより実施してもよい。
【0020】
なお、周波数ーパルス変換部と制御部とは同一のICチップに集積されることもできる。この場合においても、制御部として機能するチップ上の領域に対する製造プロセスやマスクを変更する必要はなく、ただ周波数ーパルス変換部の最大倍率を減少させる配線マスクを用いて倍率が小さい周波数ーパルス変換部を製造すればよく、配線マスクを余分に一枚形成すればよい。
【0021】
本発明では特に、界磁極対数P1をもつ第1の前記発電機用の前記制御装置の前記周波数ーパルス変換部を、第一の半導体集積回路製造プロセスにより製造して、Nを所定の倍数であるN1とし、P1より大きい界磁極対数P2をもつ第2の前記発電機用の前記制御装置の少なくとも前記周波数ーパルス変換部を、前記第一の半導体集積回路製造プロセスに対して配線マスクのみを変更することにより又はボンディングワイヤのボンディング箇所の変更により前記第一の前記発電機用の前記制御装置の前記周波数ーパルス変換部の一部回路を無効化して、NをP1×N1/P2に等しいN2に設定することをその特徴としている。
【0022】
この構成によれば、配線マスク変更又はボンディングワイヤの配線パターンの変更を行った周波数ーパルス変換部を採用することにより、複雑な制御部の回路変更なしに簡単に界磁極対数P1用の制御装置と界磁極対数P2用の制御装置とをもつ回転数制御方式の車両用交流発電機装置を製造することができる。
【0023】
このようにすれば、IC製造プロセスにおいて用いる配線マスクの変更などによる配線の切断や短絡により実現することができるので、製造工程をほとんど変更することなく実施することができる。また、IC製造プロセスにおけるボンディングワイヤの配線パターンの変更により上記配線変更を行う場合には制御部及び周波数ーパルス変換部を構成するICチップ製造プロセスは全く変更する必要がなく、このICチップのボンディングメタル領域とICパッケージの端子とを接続するボンディングワイヤの配線作業を行うボンディングマシンの動作プログラムを変更するだけであるので、製造工程変更を一層簡素化することができる。
【0024】
上記した本発明の好適な態様において、P1×N1=P2×N2を、前記P1とP2との最小公倍数に設定する。これにより、制御部に入力されるパルス信号の周波数を低減することができるので、制御部の動作を高速化することが不要となる。
【0025】
上記した本発明の好適な態様において、前記周波数ーパルス変換部は、前記制御部と同じICチップに集積されている。これにより、制御装置の構成を簡素化することができる。なお、この場合、界磁極対数が異なる二つの制御装置のために最終的には2種類のICチップを製造する必要があるが、上記したようにこれら2つのICチップの制御部に相当する領域の回路変更は不要であり、かつ、周波数ーパルス変換部の倍率変更もボンディングパターンの変更や配線マスクの変更により簡単に対応することができるので、異なる界磁極対数の二つの発電機のために全く異なる2種類の制御装置用ICを製造するのに比較すれば、製造費用の増大を最小限に抑えることができる。
【0026】
上記した本発明の好適な態様において、前記周波数ーパルス変換部は、前記1相発電電圧を矩形波電圧に変換する波形整形部と、前記矩形波電圧の周波数の所定整数倍の数のパルス電圧を発生するパルス数増倍部と、前記パルス信号の数の所定整数分の1のパルス電圧を発生するパルス数減少部とを備え、前記配線マスク又はボンディングワイヤのボンディング箇所の変更により、前記パルス数増倍部の出力を前記制御部に出力する第一の前記周波数ーパルス変換部と、前記パルス数減少部もしくは前記波形成形部の出力を前記制御部に出力する第二の周波数ーパルス変換部とを製造し、前記第一の発電機に装備する前記制御装置に前記第一の周波数ーパルス変換部を実装し、前記第二の発電機に装備する前記制御装置に前記第二の周波数ーパルス変換部を実装する。
【0027】
すなわち、この構成によればパルス数増倍部で増倍されたパルス周波数の減少の有無もしくは発電周波数の変換の有無により、周波数ーパルス変換部の2種類の倍率を設定可能としているので、周波数ーパルス変換部の構成を簡素化することができる。
【0028】
上記した本発明の好適な態様において、前記周波数ーパルス変換部は、前記1相発電電圧を矩形波電圧に変換する波形整形部と、前記矩形波電圧の周波数の所定整数倍の数のパルス電圧を発生するパルス数増倍部とを備え、前記パルス数増倍部は、それぞれ入力されるパルス電圧のエッジから段ごとに段数×所定遅延時間だけ遅延したエッジを加えることにより、段ごとにパルス数を1だけ増加させるパルス追加段を、多段縦続接続して構成され、前記配線マスクの変更により、前記パルス追加段の段数を変更して、第一の前記周波数ーパルス変換部と、第二の周波数ーパルス変換部とを製造し、前記第一の発電機に装備する前記制御装置に前記第一の周波数ーパルス変換部を実装し、前記第二の発電機に装備する前記制御装置に前記第二の周波数ーパルス変換部を実装する。
【0029】
すなわち、この構成によればパルス数増倍部を構成する所定段数のパルス追加段の追加段数を変更することにより、周波数ーパルス変換部の2種類の倍率を設定可能としているので、周波数ーパルス変換部の構成を簡素化することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明の好適な実施態様を以下に説明する。
【0031】
〔第1の実施例〕
(全体構成)
図1は第1実施例の構成を示すブロック図である。
【0032】
1は、車両用交流発電機装置(オルタネータ)であり、車両用交流発電機からなる発電機2と、発電機2に装備されて発電機2を制御する制御装置3とからなる。
【0033】
発電機2は、3相電機子巻線4、3相電機子巻線4に接続されるダイオードブリッジで構成された全波整流回路5、3相電機子巻線4に鎖交させる交番磁界を発生させるランデルポール型鉄心(図示せず)に巻装される界磁巻線6を有している。ランデルポール型鉄心には、合計P極の界磁極が形成されている。なお、発電機2は、上記したランデルポール型鉄心をもつ回転子に限定されるものではなく、通常の永久磁石型又は界磁巻線型又はリラクタンス型の三相同期発電機により構成されることができる。
【0034】
制御装置3は、界磁巻線6に通電する界磁電流を調整してオルタネータの出力電圧を所定範囲内に制御する電圧制御装置であり、定電圧電源回路7、周波数ーパルス変換回路8、電圧制御回路(本発明で言う制御部)9からなる。制御装置3は、キースイッチ10を通じて車載のバッテリ11の正極端子に接続されるIG端子、ランプ12を通じて車載のバッテリ11の正極端子に接続されるL端子、車載のバッテリ11の正極端子に接続されるB端子、三相電機子巻線4の一相出力端子に接続されるP端子、界磁巻線6の一端に接続されるF端子を有している。
【0035】
定電圧電源回路7は、制御装置3の定電源電圧Vccを形成する電源回路であり、車載のキースイッチ10の投入を検出してB端子の電圧から所望の定電源電圧Vccを出力する。周波数ーパルス変換回路8は、周波数ーパルス変換部81と、パルス数増倍部82とをからなる。周波数ーパルス変換部81は、P端子電圧をパルス化する回路であり、抵抗811とコンパレータ812とで構成され、発電中は1相発電電圧(P電圧)を波形整形してデュ−ティ比が略50%である矩形波信号(パルス信号)P0を出力する。
【0036】
パルス数増倍部82は、周波数ーパルス変換部81から出力される矩形波電圧(パルス信号)のパルス頻度(パルス信号周波数ともいうものとする)を増加させるパルス周波数増倍回路である。
【0037】
電圧制御回路9は、パルス数増倍部82から出力されるパルス数に比例する回転数情報に基づいて界磁電流を断続制御したり、発電機2の異常を検出して車載の警報灯12を点灯したりする回路であって、更に、バッテリ11の電圧を所定の目標電圧範囲に調整するために界磁電流を断続制御する機能を有している。このような界磁電流制御や警報灯点灯制御等は本発明の主旨ではなくかつ従来周知の動作を実行するものであるため詳細説明は省略する。
(パルス数増倍部82)
パルス数増倍部82の回路構成例を図2に示す。この実施態様ではそれぞれ回転数制御方式を採用する磁極数12(界磁極対数6)の発電機と磁極数14(界磁極対数7)の発電機とに、ほとんど同じ構成の制御装置3を用いる場合を説明する。なお、図2は、界磁極対数6の発電機に用いる場合を説明する。
【0038】
このパルス数増倍部82は、Dフリップフロップ820を6段縦続接続してなる遅延型シフトレジスタ821と、所定基本周波数のクロックパルスを出力するクロック回路822と、クロック回路822から出力されるクロックパルスを分周する分周する分周回路823と、6段縦続接続接続された6個の排他論理和回路(イクスクルッシブオア(EXーOR)回路)824とからなる。
【0039】
初段のEXーOR回路824は、初段と二段目のDフリップフロップ820の排他オア信号P1を出力し、残りのEXーOR回路824は前段のEXーOR回路824の出力信号と自己と同一段のDフリップフロップ820の出力信号の排他論理和信号P2〜P6を出力する。
【0040】
これにより、図3に示すように、最終段のEXーOR回路824からは元のパルス信号P0の7倍の周波数のパルス信号P6が出力され、5段目のEXーOR回路824からは元のパルス信号P0の6倍の周波数のパルス信号P5が出力される。
【0041】
この実施態様では、磁極数12(界磁極対数6)の発電機に本回路を適用する場合にはパルス信号P6を用い、磁極数14(界磁極対数7)の発電機に本回路を適用する場合にはパルス信号P5を用いる。
【0042】
この実施態様では、パルス数増倍部82をを構成するICチップ製造プロセスにおける配線マスクの変更により、パルス数増倍部82の倍数を7から6に変更する。図2で説明すれば、実線825は界磁極対数6の発電機用の周波数ーパルス変換回路8をなすICチップ製造プロセスに用いる配線マスクにおける周波数ーパルス変換回路8の出力端子826と最終段のEXーOR回路824の出力端子とを接続する配線を示す。
【0043】
また、破線827は界磁極対数7の発電機用の周波数ーパルス変換回路8をなすICチップ製造プロセスに用いる配線マスクにおける周波数ーパルス変換回路8の出力端子826と最終段から二番目のEXーOR回路824の出力端子とを接続する配線を示す。
【0044】
配線マスクの変更により、周波数ーパルス変換回路8の出力端子を、実線825により最終段のEXーOR回路824の出力端子に接続するか、又は、破線827により最終段から二番目のEXーOR回路824の出力端子に接続するかにより、周波数ーパルス変換回路8の倍率を7と6とのどちらかに設定することができる。なお、破線827をもつ配線マスクを採用する場合には、最終段のEXーOR回路824と最終段のDフリップフロップ820とは不要であるので、それらに電源電圧を印加する配線を同様に切断してもよい。
【0045】
周波数ーパルス変換回路8の倍率変更を、その他の配線変更を行う配線マスクの変更によっても当然行うことができる他、周波数ーパルス変換回路8が集積されたICチップの各ボンディングエリアとそれが実装されるICパッケージの各リード端子との間のボンディングパターンの変更により行うことができる。また、リードフレームから上記リード端子を製造する場合に、このICパッケージに密閉される短絡用金属領域をこのリード端子と同時に作成し、この短絡領域へのボンディングワイヤの接続を行うか否かにより、配線を行うか、行わないかを決定するようにしてもよい。
【0046】
周波数ーパルス変換回路8を構成するICチップが搭載されるリードフレームの配線パターンを変更することにより上記配線を実施してもよい。なお、このリードフレームの配線パターンの変更は、銅シートのパンチングに用いるダイの形状により簡単に行うことができ、上記した倍数変更程度の簡単な配線変更自体はこのリードフレームの配線パターンの変更によりなんら問題なく対応することができる。
【0047】
このように構成すれば、磁極数12の発電機の場合には発電電圧の1周期中に7パルスのパルス信号P6を得ることができ、磁極数14の発電機の場合には6パルスのパルス信号P5を得ることができる。したがって、界磁極数がいずれの場合でも発電機の1回転子あたり両界磁極対数P1、P2の最小公倍数である42パルスのパルス信号を得ることができ、電圧制御回路8はの内部を全く変更することなく、回転数制御方式の発電制御、たとえば電圧制御、負荷応答制御、警報制御等を実行することができるので、製造と保守の両面において簡素化、コスト低減を実現することができる。
【0048】
なお、好適には、倍数すなわちパルス数増倍倍率をnとした場合に、Dフリップフロップ820の遅延時間T2(図3参照)が1相交流電圧の半周期の1/nを超えないないように設定することが望ましい。このように設定することで回転数が急変した際にも回転数情報形成遅れを最小限に抑えることができる。
【0049】
つまり、この実施例によれば、磁極数2P1 の発電機と磁極数2P2 の発電機との両方に共通の制御部9を利用可能にすべく、パルス数増倍部82が、P1 とP2との最小公倍数mに相当するパルス頻度のパルス信号を出力するように二つの倍数を設定し、配線変更によりそのどちらかを選択しているので。磁極数が2P1 個の発電機と磁極数が2P2個の発電機の制御装置3をほぼ共通部品化することができるので、部品点数の低減を実現することができる。
【0050】
(変形態様1)
変形態様を図4に示す。
【0051】
この変形態様では、最終段のEXーOR回路824の一方の入力端子を実線828で示される配線により最終段のDフリップフロップ820の出力端子に接続するか、又は、そうではなく破線829で示される配線829により設置するかを、配線マスクの変更により行う。なお、破線829を採用する場合には、最終段のDフリップフロップ820への電源電圧を印加する配線は省略する。これによっても、同様の回路機能を実現することができる。
【0052】
(変形態様2)
12極(界磁極対数6)と16極(界磁極対数8)の発電機を共用化する場合のパルス数増倍部82の回路例を図5に示す。なお、配線変更部の図示は省略する。この場合には、6極対(12極)と8極対(16極)との最小公倍数が24であるので、Dフリップフロップ824とEXーOR回路824とをそれぞれ3個で実現することができる。すなわち、12極発電機に適用する場合には3段全部使用し、16極発電機の場合には2段のみを使用して、上記実施例同様に最終段のEXーOR回路824の機能を無効化すればよい。
【0053】
(変形態様3)
変形態様を図6に示す。
【0054】
この変形態様は、所定段のパルス数増倍部82出力を周波数ーパルス変換回路8の出力端子826に直接出力する(破線表示)か又は所定段の分周回路で間引いて(実線表示)出力するかで周波数ーパルス変換回路8の倍数を変更する。この場合にも、簡単な配線変更により、周波数ーパルス変換回路8の倍数変更が可能となる。
【0055】
(変形態様4)
上記実施例では、周波数ーパルス変換回路8におけるパルス数増倍部82の倍数を配線切り替えにより変更したが、パルス数増倍部82自体を複数設け、そのどちらかを選択駆動することも可能である。
【0056】
(変形態様5)
上記実施例では、シフトレジスタとEXーOR回路とで周波数ーパルス変換回路8のパルス数増倍部82を構成したが、ラッチ回路や周知のディジタル回路にて同様の動作を実現してもよいことは当然である。更に、パルス数増倍部82の回路機能をソフトウエア処理により代替してもよい。この場合、あらゆる磁極数の発電機に対しても装置規模を大きくすることなく容易に対応が可能となる。
【0057】
【実施例2】
他の実施例を図7〜図9を参照して説明する。
【0058】
図7は、図2に示す周波数ーパルス変換部において、分周回路823を可変周期分周回路823’に変更し、この可変周期分周回路823’のパルス周期を制御部9からの倍数指令Snにより制御すること構成を採用している。
【0059】
なお、この可変周期分周回路823’はたとえば基準クロックパルスを累算して得たカウント値がXに達するごとに最終段がパルス電圧を出力するカウンタ又はシフトレジスタにより構成され、このXは電圧制御回路9からの制御信号(倍数指令)により設定されるように構成されている。
【0060】
電圧制御回路9の制御動作を図8を参照して以下に説明する。
【0061】
まず、所定周期あたりのパルス信号入力回数をカウントし(S100)、それに基づいて回転数を演算する(S102)。
【0062】
次に、演算した回転数と、あらかじめ記憶するテーブル(回転数ー倍数関係を示す)から好適な倍数X(X=6〜10)を設定し(S104)、この倍数Xに相当する3ビットの倍数指令を形成し、この倍数指令を可変周期分周回路823’に出力する(S106)。なお、この倍数Xは、基準クロックパルス周期(又はこの基準クロックパルス周期を所定段数分周して形成した分周パルス周期)のX倍の周期を示す。
【0063】
上記テーブルの一例を図9に示す。これにより、電圧制御回路9に入力されるパルス信号のパルス周期が低回転域にて短くなりすぎることがないように、かつ、高回転域にて長くなりすぎることがないように調整することができる。これにより、回転数が急変した場合にでも回転数情報の精度を保ったまま追従性を高める事ができるのでより一層正確な回転数情報が得られる。
【0064】
なお、好適には発電機最高回転数における発電周波数の100倍以上の基準クロック周波数がよい。16極発電機を例にとると、最高回転数20000rpmでの発電周波数は2.67〔kHz〕であり必要なクロック基準クロック周波数は267〔kHz〕以上、好適には1〔MHz〕とすればよい。また、前述したように、倍数をXとした場合に、Dフリップフロップ820の遅延時間T2(図2参照)が1相交流電圧の1周期長の1/2nを越えないように上記テーブルを設定することが好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1を示す車両用交流発電機装置のブロック回路図である。
【図2】 図1の周波数ーパルス変換部を示すブロック回路図である。
【図3】 図2の周波数ーパルス変換部の動作を示すタイミングチャートである。
【図4】 実施例1の変形態様を示す部分回路図である。
【図5】 実施例1の変形態様を示す部分回路図である。
【図6】 実施例1の変形態様を示す部分回路図である。
【図7】 実施例2を示す車両用交流発電機装置の要部ブロック回路図である。
【図8】 図7における電圧制御回路の制御動作を示すフローチャートである。
【図9】 実施例2における回転数とクロック周期倍率との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
2 発電機
3 制御装置
8 周波数ーパルス変換部
9 電圧制御回路(制御部)
81 周波数ーパルス変換部
82 パルス数増倍部
822 基準クロック回路
823 分周回路

Claims (5)

  1. 所定極対数Pの界磁極の回転により三相電機子巻線に誘起される交流電圧を整流してバッテリに出力する発電機と、
    前記バッテリ電圧を所定範囲に制御するとともに、前記交流電圧の周波数に基づいて前記車両用交流発電機の回転数を検出する制御部を有する制御装置と、
    を備え
    前記制御装置は、入力される前記三相電機子巻線の1相発電電圧の周波数に対してN倍(Nは2以上の整数)の周波数をもつパルス信号を発生する周波数ーパルス変換部を有し、
    前記制御部は、前記周波数ーパルス変換部から入力される前記パルス信号に基づいて前記回転数検出を実施する車両用交流発電機装置において、
    界磁極対数P1をもつ第1の前記発電機用の前記制御装置の前記周波数ーパルス変換部を第一の半導体集積回路製造プロセスによる製造により、Nを所定の倍数であるN1とし、
    P1より大きい界磁極対数P2をもつ第2の前記発電機用の前記制御装置の少なくとも前記周波数ーパルス変換部を前記第一の半導体集積回路製造プロセスに対して配線マスクのみを変更することにより又はボンディングワイヤのボンディング箇所の変更により前記第一の前記発電機用の前記制御装置の前記周波数ーパルス変換部の一部回路を無効化して、NをP1×N1/P2に等しいN2に設定してなることを特徴とする車両用交流発電機装置。
  2. P1×N1=P2×N2を、前記P1とP2との最小公倍数に設定することを特徴とする請求項記載の車両用交流発電機装置の製造方法。
  3. 前記周波数ーパルス変換部は、前記制御部と同じICチップに集積されていることを特徴とする請求項記載の車両用交流発電機装置。
  4. 前記周波数ーパルス変換部は、
    前記1相発電電圧を矩形波電圧に変換する波形整形部と、
    前記矩形波電圧の周波数の所定整数倍の数のパルス電圧を発生するパルス数増倍部と、
    前記パルス信号の数の所定整数分の1のパルス電圧を発生するパルス数減少部と、
    を備え、
    前記配線マスク又はボンディングワイヤのボンディング箇所の変更により、前記パルス数増倍部の出力を前記制御部に出力する第一の前記周波数ーパルス変換部と、前記パルス数減少部もしくは前記波形整形部の出力を前記制御部に出力する第二の周波数ーパルス変換部とを製造し、
    前記第一の発電機に装備する前記制御装置に前記第一の周波数ーパルス変換部を実装し、
    前記第二の発電機に装備する前記制御装置に前記第二の周波数ーパルス変換部を実装してなることを特徴とする請求項記載の車両用交流発電機装置。
  5. 前記周波数ーパルス変換部は、前記1相発電電圧を矩形波電圧に変換する波形整形部と、前記矩形波電圧の周波数の所定整数倍の数のパルス電圧を発生するパルス数増倍部とを備え、
    前記パルス数増倍部は、それぞれ入力されるパルス電圧のエッジから段ごとに段数×所定遅延時間だけ遅延したエッジを加えることにより、段ごとにパルス数を1だけ増加させるパルス追加段を、多段縦続接続して構成され、
    前記配線マスク又はボンディングワイヤのボンディング箇所の変更により、前記パルス追加段の段数を変更して、第一の前記周波数ーパルス変換部と、第二の周波数ーパルス変換部とを製造し、
    前記第一の発電機に装備する前記制御装置に前記第一の周波数ーパルス変換部を実装し、
    前記第二の発電機に装備する前記制御装置に前記第二の周波数ーパルス変換部を実装してなることを特徴とする請求項記載の車両用交流発電機装置。
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