JP2003518489A - ヒドロゲル駆動の薬物剤形 - Google Patents

ヒドロゲル駆動の薬物剤形

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Abstract

(57)【要約】 制御放出剤形は、薬物含有組成物と水膨潤性組成物とを含んだコアを有していて、前記コアが被覆されている。薬物含有組成物と水膨潤性組成物はそれぞれ、コア内において別個の区域を占めている。薬物含有組成物は、低溶解性薬物と薬物連行剤とを含む。コアを取り囲んでいるコーティングは水透過性且つ水不溶性であり、コーティングを貫く少なくとも1つの供給ポートを有している。特定の薬物放出プロフィールを有する種々の製剤が開示されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 発明の背景 本発明は、低溶解性の有用薬剤(すなわち薬物)の使用環境への制御された放出
を可能にする剤形に関する。
【0002】 薬物を放出するための浸透圧駆動およびヒドロゲル駆動の薬物供給デバイスが
最近当業界において知られている。代表的な剤形としては、薬物を含有する区画
を取り囲む半透性壁体と膨潤性ヒドロゲルの層とを含んだ錠剤 − ヒドロゲル
が膨潤することにより、半透性壁体中の通路を通して薬物が供給される(米国特
許4,327,725に開示); 外部の液体に対しては透過性であるが薬物に対しては不透
過性である壁体(2種の浸透剤を含有する区画をこの壁体が取り囲んでいる)、2種
の膨張性ポリマー、および薬物を含んだ錠剤(米国特許4,612,008に開示); 膨潤
性のヒドロゲルマトリックスコア中に分散された薬物 − このコアが薬物を拡
散によって使用環境中に放出する(米国特許4,624,848に開示); 多数の小さな丸
剤を含有するヒドロゲルリザーバーであって、それぞれの小さな丸剤が薬物コア
を取り囲む壁体を含む(米国特許4,851,232に開示); ならびに二層錠剤であって
、一方の層には薬物がヒドロゲルと共に混合され、他方の層はヒドロゲルである
(米国特許5,516,527に開示); などがある。
【0003】 上記した従来の剤形は機能的ではあるが、それでもなおこのような剤形は種々
の欠点を有している。制御放出剤形は、理想的には、薬物の実質的に全てを剤形
から使用環境に供給するはずである。しかしながら、浸透圧駆動およびヒドロゲ
ル駆動の剤形においてよく見られる問題(特に、薬物の水溶性が低い場合)は、ヒ
ドロゲルまたは他の膨潤性物質が完全に膨潤した後に、残留薬物が錠剤内部に留
まるということである。こうした残留薬物は吸収に対して有効に利用されず、従
ってこのような剤形では、薬物の全てを使用環境中に放出させるべく、系の不足
を補うためにより多くの量の薬物を必要とする。
【0004】 制御放出剤形はさらに、特定のサイズ上の制約内で機能しなければならず、ま
た薬物の殆どまたは全部を使用環境に供給できるものでなければならない。剤形
は、特にヒトに対してはサイズが限定され、一般には1グラム未満であり、さら
に好ましくは700mg未満である。しかしながら、幾つかのタイプの薬物の場合、
その用量が剤形の重量の1/2以上を構成することがある。薬物の供給をもたらす
水膨潤性物質は、用量が多い場合には、薬物のかなり効率的な供給ができるもの
でなければならない。なぜなら、剤形の殆どが膨潤性物質または他の賦形剤に対
して利用できないからである。
【0005】 さらに、剤形は、使用環境に入ったら比較的速やかに薬物を追い出し始めるの
が望ましいことが多い。しかしながら、供給システムの多くは、薬物を追い出す
前にある時間的ずれを示す。こうしたことは、薬物の水溶性が低いか又は薬物が
疎水性であるときにとりわけ問題となる。この時間的ずれを少なくするよう幾つ
かの方法が提唱されているが、それぞれ方法は特有の欠点を有している。剤形を
取り囲む薄い高い透過性のコーティングを使用という方法が提唱されている。こ
の方法は、液体のより速やかな取り込みが可能となるが、コーティングが薄いた
めに強度が不足し、使用時にしばしば破裂するか、又は剤形に対する保護が不充
分であって、このため取り扱い中に損傷を受けやすくなる。さらに他の方法では
、水膨潤性物質と連通した孔または1つ以上の通路を組み込むことを提唱してい
るが、この方法は、残留薬物の量が許容しえない量になることが多い。さらに他
の方法は、剤形を中間放出薬物配合物でコーティングすることを含むが、この方
法はさらなる処理工程を必要とし、2つの異なった放出速度を有する剤形が得ら
れ、従って望ましくない。
【0006】 従来の浸透圧駆動およびヒドロゲル駆動の薬物供給システムにおいて見られる
さらに他の問題は、このような剤形はオスマジェント(osmagent)の存在を必要と
することが多い、という点である。オスマジェントは、周囲コーティングのバリ
ヤーを横切って浸透圧勾配を生じるように選択される。浸透圧勾配により錠剤中
に水が透過進入し、この結果充分な静水圧が生じ、この圧力によって薬物が供給
ポートを介して追い出される。これらのオスマジェントを使用すると剤形の重量
が増えるので、剤形中に組み込むことのできる薬物の量が制限される。さらに、
剤形中に追加成分(たとえばオスマジェント)が存在すると、剤形全体にわたって
均一な濃度を得ることが必要となるために製造コストが増し、また他の欠点(た
とえば、圧縮特性や薬物安定性に対する悪影響)を有するようになることがある
【0007】 従って当業界では、残留薬物がほとんど残らない状態で使用環境への極めて効
率的な薬物供給が得られ、そして用量サイズができるだけ小さくなるよう薬物の
多量組み込みが可能となり、使用環境に入ったらすぐに薬物の放出を開始し、そ
して必要な成分数が抑えられるような制御放出剤形が求められている。上記のよ
うなニーズおよび当業者にとって明らかとなる他のニーズは、本発明によって満
たされる。以下に本発明を簡単に総括し、次いで詳細に説明する。
【0008】 発明の簡単な総括 本発明の種々の態様はそれぞれ、薬物含有組成物と水膨潤性組成物とを含んだ
コアを有する制御放出薬物剤形を提供する。薬物含有組成物と水膨潤性組成物は
、コア内において別個の部分を占めている。薬物含有組成物は、低溶解性薬物と
薬物連行剤(a drug-entraining agent)とを含む。コアを取り囲むコーティング
は水透過性且つ水不溶性であって、それを貫く少なくとも1つの供給ポートを有
する。
【0009】 本発明の第1の態様においては、薬物含有組成物が少なくとも3.5の膨潤比を有
する膨潤剤をさらに含み、薬物連行剤が薬物含有組成物の少なくとも15重量%を
構成する。
【0010】 本発明の第2の態様においては、薬物含有組成物と水膨潤性組成物との質量比
の値が少なくとも1.5であり、水膨潤性組成物が水膨潤剤と錠剤化用助剤(a tabl
eting aid)を含んでいて、水膨潤性組成物が、少なくとも3.5の膨潤比と少なく
とも3Kp/cm2(Kpはキロポンドである)の強度を有する。
【0011】 本発明の第3の態様においては、水膨潤性組成物が膨潤剤を含む。コアを取り
囲むコーティングは、少なくとも1Kp/cm2の耐久性および少なくとも1.0×10-3gm
/cm2-hrの水フラックス(40/75)を有する。
【0012】 本発明の第4の態様においては、コーティングが多孔質であって、溶媒、親水
性のセルロース系ポリマー、および非溶媒を含んだ実質的に均一な溶液から形成
されている。
【0013】 本発明の第5の態様においては、薬物含有組成物が流動化剤をさらに含む。使
用環境中への導入後、剤形は、約12時間以内に低溶解性薬物の少なくとも約70重
量%を放出する。
【0014】 本発明の第6の態様においては、薬物含有組成物が可溶化剤をさらに含む。薬
物が塩基性薬物である場合、可溶化剤は有機酸であってよい。 本発明の第7の態様においては、低溶解性薬物が非晶質分散液の形態をとって
いる。
【0015】 本発明の第8の態様においては、治療学的に有効量の薬物を本発明の剤形にて
投与することによって薬物を必要とする患者を処置するための方法が提供される
【0016】 1つの実施態様においては、剤形は、濃度増大用ポリマー(a concentration-en
hancing polymer)を含む。 本発明の種々の態様は、下記の利点の1つ以上を有する。本発明の剤形は、よ
り少量の膨潤性物質を使用して、より高い効率にてより多量の薬物を所望の使用
環境に供給することができ、さらに、従来の組成物に比べて残留薬物の量がより
少ない。本発明の組成物はさらに、従来組成物と比較してより多くの薬物を組み
込むことができる。本発明の組成物はさらに、従来の浸透圧制御放出剤形より速
やかに、薬物を使用環境に供給し始める。本発明の剤形は、剤形が使用環境中に
導入されたときに、コア内の過剰な圧力によるコーティング破裂を起こすことな
く、低溶解性薬物を速やかに供給することができる。本発明の剤形はさらに、低
溶解性薬物を可溶化された形態にて供給することもできる。
【0017】 本発明の上記の目的、特徴、および利点、ならびに本発明の他の目的、特徴、
および利点は、添付図面を参照しつつ下記の本発明の詳細な記述を考察すれば、
容易に理解できるであろう。
【0018】 発明の詳細な記述 本発明は、主として、水の吸収と、拡散ではなく剤形からの薬物の押し出しに
よって、低溶解性薬物の制御された放出をもたらす制御放出剤形を提供する。図
1は、薬物含有組成物14と水膨潤性組成物16とを含んだコア12を有する典型的な
剤形10を示す。薬物含有組成物と水膨潤性組成物は、コア内において別個の部分
を占めている。“別個の部分”とは、2つの組成物が実質的に混ざり合わないよ
う別々の体積を占めている、ということを意味している。当然のことながら、組
成物が、たとえば二層の界面において互いに接触すると、組成物のある程度の混
合が起こることがある。コア12を取り囲んでいるコーティング18は水透過性且つ
水不溶性であって、それを貫く1つ以上の供給ポート20を有する。使用時、コア1
2が使用環境〔たとえば、胃腸("GI")管〕からコーティング18を通して水を吸収
する。吸収された水が水膨潤性組成物16の膨潤を引き起こし、これによってコア
12内の圧力が増大する。吸収された水はさらに、薬物含有組成物の流動性を増大
させる。コア12と使用環境との間の圧力差が、流動化された薬物含有組成物14の
放出を促す。コーティング18は完全な状態のままであるので、薬物含有組成物14
が、コア12から供給ポート20を介して使用環境に押し出される。水膨潤性組成物
16は薬物を含有していないので、薬物の殆ど全てが供給ポート20を介して押し出
され、残留薬物はほとんど残らない。
【0019】 本発明の剤形は、拡散よりむしろ主として“押し出し”によって、薬物を使用
環境に放出する。本明細書で使用している“押し出し”とは、コーティングにお
ける1つ以上の供給ポートまたは孔を介しての、薬物の一部もしくは全部の、剤
形の外部への静水圧による排除または強制的追い出しを意味しており、拡散メカ
ニズムあるいはデバイス本体の侵食による供給とは区別すべきである。薬物は、
水溶液中固体懸濁液の形で主として押し出しによって放出させることもできるし
、あるいは薬物は、コア12内において溶解が起こる程度にて溶液であってもよい
【0020】 本明細書で使用している薬物の“放出”とは、(1)供給後に哺乳動物のGI管内
にて薬物が体液と接触するよう、薬物を剤形の内部からその外部へ移送すること
、あるいは(b)インビトロ試験(後述)による剤形の評価のために、薬物が試験媒
体と接触するよう、薬物を剤形の内部からその外部へ移送すること、を意味して
いる。従って“使用環境”とは、インビボのGI体液を表わしている場合もあるし
、あるいはインビトロの試験媒体を表わしている場合もある。使用環境への“導
入”は、経口摂取もしくは飲み下しによるものか、又はインプラントもしくは座
剤の使用によるものを含み(この場合、使用環境はインビボである)、あるいは試
験媒体中に配置される(この場合、使用環境はインビトロである)。
【0021】 放出特性 本発明の剤形の重要な特性は、薬物を制御された仕方で使用環境に供給するこ
とである。本発明の剤形は、下記の基準に適合した薬物濃縮放出プロフィールを
もたらす。
【0022】 第一に、本発明の幾つかの態様においては、剤形は、使用環境へ導入されると
すぐに薬物を放出し始める。速やかな供給開始が求められる場合、剤形は、使用
環境への導入後2時間以内に、薬物の少なくとも5重量%を放出するのが好ましく
、そして薬物の少なくとも10重量%を放出するのがさらに好ましく、このときこ
れらのパーセント値は、最初にコア中に存在する薬物の全質量を基準としたとき
のコアから放出される薬物の質量に対応している。薬物の放出を速やかに開始さ
せることによって、剤形は、ある使用環境における最大薬物濃度を達成するのに
必要とされる時間が短くなり、また薬物が使用環境に存在するトータル時間がが
増大し、この結果、吸収量が増え、バイオアベイラビリティがより高くなる。
【0023】 第二に、本発明の剤形は、薬物を制御された仕方で、好ましくは実質的に一定
の速度で放出する。したがって本発明の剤形は、使用環境への導入後の2時間以
内に、薬物の約60重量%以下を、好ましくは薬物の約50重量%以下を使用環境中に
放出する。
【0024】 第三に、剤形からの薬物放出速度は、供給される薬物の実質的なフラクション
が血流中に吸収されうる時間内にて薬物の放出が可能となるよう充分に高くなけ
ればならない。具体的に言えば、本発明の剤形は、使用環境への導入後の16時間
以内に薬物の少なくとも60重量%を、好ましくは薬物の少なくとも70重量%を使用
環境に放出する。薬物含有組成物中に流動化剤を組み込むことは、使用環境への
薬物のより速やかな供給が要求される場合は特に有用である。とりわけ、使用環
境への導入後の12時間以内に薬物の少なくとも70重量%を使用環境に供給するの
が望ましい場合、本発明は、作用中において剤形コーティングの破裂または損傷
を起こすことなく速やかな薬物放出を可能にする。
【0025】 第四に、本発明の剤形は、剤形中に含まれている薬物の実質的な量を放出し、
24時間後においては比較的少量の薬物が残留するだけである。高用量の低溶解性
薬物を供給することが要求されるときは、残留薬物の量を少なくすることは特に
困難である。本発明の剤形は、剤形を使用環境に導入した後の24時間以内に、薬
物の少なくとも80重量%を、好ましくは薬物の少なくとも90重量%を、そしてさら
に好ましくは薬物の少なくとも95重量%を使用環境に放出する。
【0026】 インビトロ試験を使用して、ある剤形が本発明の範囲内の放出プロフィールを
示すかどうかを調べることができる。インビトロ試験は当業界においてよく知ら
れている。1つの例は“残留試験”であり、これについては塩酸セルトラリンに
関して後述する。先ず最初に、胃の環境をシミュレートしている900mlの緩衝液(
10mMのHCl, 100mMのNaCl, pH2.0, 261mOsm/kg)を収容した撹拌状態のUSPタイプ2
ディソエッテ・フラスコ(dissoette flask)中に剤形を37℃で2時間置き、次いで
取り出し、脱イオン水ですすぎ洗いし、小腸の内容物をシミュレートしている90
0mlの緩衝液(6mMのKH2PO4, 64mMのKCl, 35mMのNaCl, pH7.2, 210mOsm/kg)を収容
する撹拌状態のタイプ2ディソエッテ・フラスコに移す。いずれのフラスコにお
いても、剤形をワイヤ支持体中に入れて剤形をフラスコ底部から離れた状態に保
持し、これによって移動しつつある放出溶液に全ての表面をさらし、50rpmの速
度で回転するパドルを使用して放出溶液を撹拌する。それぞれの時間間隔にて、
溶液から1個の剤形を取り出し、放出された物質を表面から取り除き、剤形を半
分にカットして100mlの回収液〔水:エタノール(1:1 wt/wt), 0.1NのHClでpHを3
に調節〕中に置き、周囲温度にて一晩激しく撹拌して、剤形中に残存している薬
物を溶解する。溶解した薬物を含有する回収溶液のサンプルをゲルマン・ナイロ
ン・アクロディスク(Gelman Nylon Acrodisc)(登録商標)13(孔サイズが0.45μm
の濾紙)を使用して濾過し、バイアル中に入れて蓋をする。残留薬物をHPLCによ
って分析する。サンプルのUV吸光度を標準薬物の吸光度と比較することによって
薬物の濃度を算出する。薬物のトータル量から錠剤中に残存している量を引いて
、各時間間隔において放出された量を得る。
【0027】 他のインビトロ試験は直接試験(a direct test)であり、この試験では、900ml
の受容体溶液〔たとえば、USP酢酸ナトリウム緩衝液(27mMの酢酸と36mMの酢酸ナ
トリウム, pH4.5)や88mMのNaCl〕を収容する撹拌状態のUSPタイプ2ディソエッテ
・フラスコ中に剤形のサンプルを入れる。自動受容体溶液リプレースメントの付
いたバンケル(VanKel)VK8000自動サンプリング・ディソエッテを使用して、定期
的な間隔にてサンプルを採取する。上記のように錠剤をワイヤ支持体中に入れ、
パドルの高さを調節し、ディソエッテ・フラスコを37℃にて50rpmで撹拌する。
自動サンプラー・ディソエッテ装置を、受容体溶液のサンプルを定期的に取り出
すようプログラムし、前記の手順に従ってHPLCにより薬物濃度を分析する。薬物
は通常、剤形から連行ポリマー(a entraining polymer)中懸濁液として押し出さ
れるので、薬物が放出された時点と、薬物が試験媒体中に溶解する時点との間に
時間的ずれがあることが多く、従って直接試験にて測定される。この時間的ずれ
は、薬物の溶解性、試験媒体の種類、薬物含有組成物の成分に依存するが、一般
には30〜90分のオーダーである。
【0028】 これとは別に、インビボ試験を使用して、ある剤形が本発明の範囲内の薬物放
出プロフィールを示すかどうかを調べることができる。しかしながら、インビボ
手順の特有の困難さと複雑さのために、たとえ最終的な使用環境がヒトGI管であ
る場合が多いとしても、剤形の評価に対してはインビトロ手順を使用するのが好
ましい。薬物の剤形を一群のヒトまたは犬に投与し、薬物の放出と薬物の吸収を
、(1)血液を定期的に抜き取って、薬物の血清濃度または血漿濃度を測定するこ
とによって、あるいは(2)肛門から出た後の剤形中に残存している薬物(残留薬物
)の量を測定することによって、あるいは(3) (1)と(2)の両方によってモニター
する。別の方法においては、被験者の肛門から出た錠剤を回収し、インビトロの
残留試験に関して前述したのと同じ手順を使用して、剤形中に残存している薬物
の量を測定することによって、残留薬物を調べる。最初の剤形中の薬物の量と残
留薬物の量との差は、口から肛門への通過時間中に放出された薬物の量の目安で
ある。この試験では、1個の薬物の放出時間ポイントだけが得られるので有用性
に限度がある。しかしながら、インビトロの放出とインビボの放出との間の相関
性を示すのに有用である。
【0029】 薬物の放出と吸収をモニターする1つのインビボ法においては、横軸(x軸)に沿
った血液サンプル時間に対して、血清薬物濃度または血漿薬物濃度を縦軸(y軸)
に沿ってプロットする。次いでデータを、従来の解析法(たとえば、Wagner-Nels
on法やLoo-Riegelman法)を使用して解析して、薬物の放出速度を求めることがで
きる。Wellingによる「“Pharmacokinetics: Process and Mathematics”(ACS M
onograph 185, Amer. Chem. Soc., Washington, D.C., 1986」を参照のこと。こ
の方法でデータを処理すると、見かけのインビボ薬物放出プロフィールが得られ
る。
【0030】 薬物含有組成物 再び図1を参照すると、剤形10のコア12の薬物含有組成物14は、少なくとも低
溶解性薬物と連行剤(a entraining agent)を、そして好ましくは追加の賦形剤を
含む。薬物含有組成物は、水膨潤性組成物とは別個の、実質的に区別された部分
を占めており、コアの約50〜90重量%を構成し、好ましくはコアの約60〜85重量%
を構成し、そしてさらに好ましくはコアの70重量%以上を構成する。薬物含有組
成物14は、剤形を取り囲んでいるコーティング18と接触しているのが好ましい。
【0031】 薬物は、いかなる有益な治療剤であってもよく、また薬物含有組成物14の0.1
〜65重量%を構成してよい。供給すべき用量が多い場合、薬物は、薬物含有組成
物14の少なくとも35重量%を構成するのが好ましい。薬物は、結晶質であっても
非晶質であってもよい。薬物はさらに、固体分散液の形態であってもよい。本発
明は、薬物が“低溶解性薬物”である場合に特に有用である。この点に関して、
“低溶解性薬物”とは一般に、使用環境内での作用時において、薬物の少なくと
も一部が未溶解のままであって、従って懸濁液として供給される、という程度に
溶解性が充分に低いことを意味している。被覆錠剤の体積が小さい場合、薬物の
全てが溶解して溶液として供給されるためには、薬物の溶解性および用量対水溶
解度比(a dose-to-aqueous solubility ratio)がかなり高くなければならない。
具体的に説明すると、“低溶解度薬物”とは、薬物が“実質的に水不溶性”〔生
理学的に関連したpH(たとえばpH1〜8)において、薬物が0.01mg/ml未満という極
めて低い水溶解度を有するということを意味している〕であるか、あるいは“幾
らか水溶性”(すなわち、生理学的に関連したpHにおいて約1〜2mg/mlという低い
水溶性を有する)であるか、あるいは低〜中程度の水溶性(生理学的に関連したpH
において約20〜40mg/mlという水溶性を有する)を有するということを意味してい
る。一般には、薬物は、10mlより大きい、そしてより典型的には100mlより大き
い用量対水溶解度比を有しているといってよく、この場合、薬物の溶解度は、US
Pシミュレートした胃腸緩衝液を含む生理学的に関連したあらゆる水溶液(たとえ
ば、1〜8のpH値を有する水溶液)において観察されるmg/ml表示の最小値であり、
そして用量はmg表示の最小値である。薬物は、その中性形(neutral form)(たと
えば、遊離酸、遊離塩基、または両性イオン)にて使用することもできるし、医
薬用として許容しうる塩として使用することもできるし、また無水形、水和形、
溶媒和形、およびブロドラッグとして使用することもできる。
【0032】 好ましい種類の薬物としては、降圧剤、抗うつ剤、抗不安薬、抗凝固薬、抗痙
攣薬、血糖低下剤、充血除去剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳薬、抗炎症薬、抗精神病
薬、認識エンハンサー(cognitive enhancer)、コレステロール低下薬、コレステ
ロールエステル転送蛋白質阻害剤、高密度リポ蛋白質エンハンサー、肥満抑制薬
、自己免疫疾患薬、抗インポテンス薬、抗菌・抗真菌剤、抗パーキンソン病薬、
抗生物質、抗ウイルス薬、抗新生物薬、バルビツール酸系催眠薬、鎮静剤、栄養
剤、ベータ遮断薬、催吐薬、制吐薬、利尿薬、抗凝血薬、強心剤、アンドロゲン
、コルチコイド、同化促進剤、成長ホルモン分泌促進薬、抗感染薬、冠拡張薬、
炭酸脱水酵素阻害薬、抗原虫薬、胃腸薬、セロトニン拮抗薬、麻酔薬、低血糖薬
、ドーパミン作動薬、抗アルツハイマー病薬、抗潰瘍薬、抗血小板薬、およびグ
リコーゲンホスホリラーゼ阻害薬などがあるが、これらに限定されない。
【0033】 本発明によって供給可能な上記の薬物と治療剤および他の薬物と治療剤の特定
の例を以下に記載する。降圧剤の特定の例としては、プラゾシン、ニフェジピン
、トリマゾシン(trimazosin)、アムロジピン、およびメシル酸ドキサゾシンなど
があり; 抗不安薬の特定の例としてはヒドロキシジンがあり; 血糖低下剤の特定
の例としてはグリピジドがあり; 抗インポテンス薬の特定の例としてはクエン酸
シルデナフィルがあり; 抗新生物薬の特定の例としては、クロラムブシル、ロム
スチン、およびエチノマイシン(echinomycin)があり; 抗炎症薬の特定の例とし
ては、ベタメタゾン、プレドニソロン、ピロキシカム、アスピリン、フルルビプ
ロフェン、および(+)-N-[4-[3-(4-フルオロフノキシ)フェノキシ]-2-シクロペン
テン-1-イル]-N-ヒドロキシウレアなどがあり; バルビツール酸系催眠薬の特定
の例としてはフェノバルビタールがあり; 抗ウイルス薬の特定の例としては、ア
シクロビル、ネルフィナビル、およびビラゾールなどがあり; ビタミン/栄養剤
の特定の例としては、レチノールやビタミンEなどがあり; β-遮断薬の特定の例
としては、チモロールやナドロールなどがあり; 催吐薬の特定の例としてはアポ
モルフィンがあり; 利尿薬の特定の例としては、クロルタリドンやスピロノラク
トンがあり; 抗凝血薬の特定の例としてはジクマロールがあり; 強心剤の特定の
例としては、ジゴキシンやジギトキシンがあり; アンドロゲンの特定の例として
は、17-メチルテストステロンやテストステロンなどがあり; 鉱質コルチコイド
の特定の例としてはデソキシコルチコステロンがあり; ステロイド催眠薬/麻酔
薬の特定の例としてはアルファキサロンがあり; 同化促進剤の特定の例としては
、フルオキシステロンやメタンステノロン(mthanstenolone)などがあり; 抗うつ
剤の特定の例としては、フルオキセチン、ピロキシジン(pyroxidine)、ベンラフ
ァキシン、セルトラリン、パロキセチン、スルピリド、[3,6-ジメチル-2-(2,4,6
-トリメチル-フェノキシ)-ピリジン-4-イル]-(エチルプロピル)-アミン、および
3,5-ジメチル-4-(3'-ペントキシ)-2-(2',4',6'-トリメチルフェノキシ)ピリジン
などがあり; 抗生物質の特定の例としては、アンピシリンやペニシリンGなどが
あり; 抗感染薬の特定の例としては、塩化ベンザルコニウムやクロルヘキシジン
などがあり; 冠拡張薬の特定の例としては、ニトログリセリンやミオフラジン(m
ioflazine)などがあり; 催眠剤の特定の例としてはエトミデートがあり; 炭酸脱
水酵素阻害薬の特定の例としては、アセタゾールアミドやクロルゾールアミド(c
hlorzolamide)などがあり; 抗真菌剤の特定の例としては、エコナゾール、テル
コナゾール、フルコナゾール、ボリコナゾール、およびグリセオフルビンなどが
あり; 抗原虫薬の特定の例としてはメトロニダゾールがあり; イミダゾールタイ
プの抗新生物薬の特定の例としてはチューブラゾール(tubulazole)があり; 駆虫
薬の特定の例としては、チアベンダゾール、オクスフェンダゾール、およびモラ
ンテルなどがあり; 抗ヒスタミン薬の特定の例としては、アステミゾール、レボ
カバスチン、セチリジン、およびシンナリジンなどがあり; 鬱血除去薬の特定の
例としては偽エフェドリンがあり; 抗精神病薬の特定の例としては、フルスピリ
レン、ペンフルリドール(penfluridole)、リスペリドン、およびジプラシドンな
どがあり; 胃腸薬の特定の例としては、ロペラミドやシサプリドなどがあり; セ
ロトニン拮抗薬の特定の例としては、ケタンセリンやミアンセリンなどがあり;
麻酔薬の特定の例としてはリドカインがあり; 低血糖薬の特定の例としてはアセ
トヘキサミドがあり; 制吐剤の特定の例としてはジメンヒドリネートがあり; 抗
菌剤の特定の例としてはコトリモキサゾールがあり; ドーパミン作動薬の特定の
例としてはL-DOPAがあり; 抗アルツハイマー薬の特定の例としては、THAやドネ
ペジルなどがあり; 抗潰瘍薬/H2拮抗薬の特定の例としてはファモチジンがあり;
鎮静剤/催眠剤の特定の例としては、クロルジアゼポキシドやトリアゾラムなど
があり; 血管拡張薬の特定の例としてはアルプロスタジルがあり; 抗血小板薬の
特定の例としてはプロスタサイクリンがあり; ACE阻害剤/降圧剤の特定の例とし
ては、エナラプリル酸(enalaprilic acid)やリシノプリルなどがあり; テトラサ
イクリン抗生物質の特定の例としては、オキシテトラサイクリンやミノサイクリ
ンなどがあり; マクロライド抗生物質の特定の例としては、アジスロマイシン、
クラリスロマイシン、エリスロマイシン、およびスピラマイシンなどがあり; グ
リコーゲンホスホリラーゼ阻害薬の特定の例としては、[R-(R*S*)]-5-クロロ-N-
[2-ヒドロキシ-3-[メトキシメチルアミノ]-3-オキソ-1-(フェニルメチル)-プロ
ピル]-1H-インドール-2-カルボキサミドや5-クロロ-1H-インドール-2-カルボン
酸-[(1S)-ベンジル-(2R)-ヒドロキシ-3-((3R,4S)-ジヒドロキシ-ピロリジン-1-
イル)-オキシプロピル]アミドなどがある。
【0034】 本発明によって供給可能な薬物のさらなる例としては、血糖低下剤であるクロ
ルプロパミド; 抗真菌剤であるフルコナゾール; 高コレステロール症治療薬であ
るアトルバスタチン; 抗精神病薬であるチオチキセン; 抗不安薬であるヒドロキ
シジンとドキセピン; 降圧剤であるアムロジピン; 抗炎症薬であるピロキシカム
、セレコキシブ、バルジコキシブ(valdicoxib)、およびカルプロフェン; ならび
に抗生物質であるカルベニシリン・インダニル、バカンピシリン、トロレアンド
マイシン、およびドキシサイクリン; などがある。
【0035】 他の実施態様においては、薬物が非晶質固体分散液(a solid, amorphous disp
ersion)の形態にて存在する。非晶質固体分散液とは、薬物の大部分が実質的に
非晶質すなわち非結晶質の状態になるように、そしてその非結晶質特性がx線回
折分析または示差走査熱量測定法によって明らかにできるように薬物がポリマー
中に分散されていることを意味している。分散液は、約5〜90重量%(好ましくは1
0〜70重量%)の薬物を含有してよい。ポリマーは水溶性且つ不活性であって、濃
度増大性(concentration-enhancing)であるのが好ましい。非晶質固体分散液を
を作製するための適切なポリマーと方法が、本発明の譲受人に譲渡された米国特
許出願09/459,059および09/495,061(これら特許文献の開示内容を参照により本
明細書に含める)に開示されている。適切な分散ポリマーとしては、イオン性お
よび非イオン性のセルロース系ポリマー(たとえば、セルロースエステル、セル
ロースエーテル、およびセルロースエステル/エーテル); ならびにヒドロキシル
、アルキルアシルオキシ、および環状アミドからなる群から選択される置換基を
有するビニルポリマーとビニルコポリマー(たとえば、ポリビニルピロリドン、
ポリビニルアルコール、およびポリビニルピロリドンとポリ酢酸ビニルとのコポ
リマー); などがある。特に好ましいポリマーとしては、酢酸コハク酸ヒドロキ
シプロピルメチルセルロース(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(H
PMC)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、酢酸フタル酸セル
ロース(CAP)、酢酸トリメリット酸セルロース(CAT)、およびポリビニルピロリド
ン(PVP)がある。最も好ましいのは、HPMCAS、HPMCP、CAP、およびCATである。
【0036】 薬物含有組成物14は連行剤を含んでいなければならない。低溶解性薬物の場合
には連行剤を使用する必要がある。なぜなら、溶解性が低いために、連行剤が存
在しないと押し出そうとするコア内にて充分に溶解しないからである。供給ポー
ト20を介して使用環境へ薬物を供給しやすくするよう、連行剤が薬物を懸濁もし
くは連行する。特定の理論で拘束されるつもりはないけれども、水が剤形中に吸
収されると、連行剤が薬物含有組成物に充分な粘度を付与し、このため連行剤が
薬物を懸濁もしくは連行することが可能となり、このとき同時に、充分な流動性
を保持したままであるので、連行剤が薬物を伴って供給ポート20を通過すること
が可能となる、と考えられる。ある物質の連行剤としての有用性と当該物質の水
溶液の粘度との間には良好な相関性があることが見出された。連行剤は一般には
、高い水溶性を有していて、その作用時に少なくとも50センチポイズ(cp)の粘度
の水溶液を、好ましくは200cp以上の粘度の水溶液を形成するような物質である
【0037】 薬物含有組成物中に存在する連行剤の量は、薬物含有組成物の約20重量%〜約9
8重量%の範囲であってよい。連行剤は、単一物質であっても、あるいは複数種の
物質の混合物であってもよい。このような物質の例としては、ポリオールおよび
ポリエーテルのオリゴマー(たとえば、エチレングリコールオリゴマーやプロピ
レングリコールオリゴマー)などがある。さらに、多官能性有機酸とカチオン性
物質(たとえばアミノ酸)もしくは多価塩(たとえばカルシウム塩)との混合物も使
用することができる。特に有用なのは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニ
ルアルコール、およびPVP等のポリマー; ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒ
ドロキシプロピルセルロース(HPC)、HPMC、メチルセルロース(MC)、カルボキシ
メチルセルロース(CMC)、およびカルボキシエチルセルロース(CEC)等のセルロー
ス系誘導体; ゼラチン; キサンタン・ガム; あるいは上記ポリマーの場合と類似
の粘度を有する水溶液を形成する他のあらゆる水溶性ポリマー; である。特に好
ましい連行剤は、非架橋のPEOまたはPEOと上記した他の物質との混合物である。
【0038】 低溶解性薬物とポリマー連行剤が薬物含有組成物の約80重量%以上を構成する
場合は、薬物と連行剤の両方が剤形から速やかに押出されるよう、連行剤は、膨
潤して、剤形を取り囲んでいる水透過性コーティングを破裂させることなく、充
分に流動性となるだけの充分に低い分子量を有していなければならない。従って
、たとえばPEOが薬物連行剤である場合、PEOは一般に、約100,000〜約300,000の
分子量を有するのが好ましい。(本明細書および特許請求の範囲で言及している
ポリマーの分子量は平均分子量である。) 低溶解性薬物と連行剤が薬物含有組成物の約80重量%未満を構成する場合は、
より高粘度の連行剤をより少ない量にて使用するのが好ましい。たとえば、連行
剤がPEOである場合、約500,000〜800,000ダルトンというより高い分子量のPEOを
より少ない分率にて使用することができる。したがって、好ましいPEO分子量と
薬物含有組成物(すなわち、薬物と連行剤)の重量分率(weight fraction)との間
には逆の関係がある。したがって、重量分率が約0.9から約0.8、約0.7、そして
約0.6に減少するにつれて、好ましいPEO分子量は、約200,000ダルトンからそれ
ぞれ約400,000ダルトン、約600,000ダルトン、そして約800,000ダルトンに増大
し、これに応じて連行剤の重量分率が減少する(薬物の重量分率は比較的一定で
ある)。留意しておくべきことは、製剤の種類に応じて、連行剤のための最適PEO
分子量は、20%〜50%の範囲でより高くなっても低くなってもよいということであ
る。同様に、他のポリマー連行剤(たとえば、HEC、HPC、HPMC、またはMC)の適切
な分子量を選定する場合、薬物含有組成物中の連行剤の重量分率が減少するにつ
れて、一般には、連行剤に対してはより高い分子量が好ましい。
【0039】 本発明の1つの実施態様においては、薬物含有組成物は、低溶解性薬物と薬物
連行剤のほかに膨潤剤を含む。この膨潤剤は通常、水の存在下にて実質的に膨張
する水膨潤性ポリマーである。こうした膨潤性ポリマーをごく少量組み込むと、
薬物供給の開始、速度、および完全性を大幅に高めることができる。膨潤剤の膨
潤度は、膨潤剤の粒子をプレスにて圧縮して、3〜16Kp/cm2の範囲の“強度”を
有する物質のコンパクトを形成することによって評価することができる。このと
き強度は、コンパクトの硬度〔シゥレウニガー(Schleuniger)錠剤硬度試験器モ
デル6Dにより測定、Kpにて表示〕を、力の方向に対して垂直な最大断面積(cm2
表示)で除して得られる商である。たとえば、約500mgの膨潤剤は、“fプレス”
を使用して13/32-インチのダイにて圧縮することができる。コンパクトの膨潤は
、コンパクトをガラスシリンダー中の2つの多孔質ガラスフリット間に配置し、
これを生理学的に関連した試験媒体(たとえば、胃もしくは腸のシミュレートし
た緩衝液または水)と接触させることによって測定する。試験媒体と16〜24時間
接触させた後の水膨潤コンパクトの体積をその初期体積で除して得られる商を、
当該膨潤剤の“膨潤比”と呼ぶ。一般には、薬物層への組み込みに適した膨潤剤
は、水が試験媒体であるときに、少なくとも3.5の、好ましくは5以上の膨潤比を
有する水膨潤性ポリマーである。
【0040】 好ましい種類の膨潤剤はイオン性ポリマーを含む。イオン性ポリマーは通常、
生理学的に関連したpH範囲1〜8の少なくとも一部にわたって水溶液中にて実質的
にイオン化される相当数の官能基をもったポリマーである。このようなイオン化
可能な官能基としては、カルボン酸とそれらの塩、スルホン酸とそれらの塩、ア
ミンとそれらの塩、およびピリジン塩などがある。イオン性ポリマーと見なされ
るためには、該ポリマーが、1g当たり少なくとも0.5ミリ当量のイオン化可能官
能基を有していなければならない。このようなイオン性ポリマー膨潤剤としては
、EXPLOTABの商品名で市販されているスターチグリコール酸ナトリウム(sodium
starch glycolate)、およびAC-DI-SOLの商品名で市販されているクロスカルメロ
ースナトリウムなどがある。
【0041】 薬物含有組成物が、低溶解性薬物、薬物連行剤、および膨潤剤を含む本発明の
1つの実施態様においては、膨潤剤は、薬物含有組成物14の約2重量%〜約20重量%
の範囲の量にて存在する。本発明の他の実施態様においては、膨潤剤は、必要に
応じて0重量%〜約20重量%の量にて存在する。
【0042】 本発明の他の実施態様においては、薬物含有組成物は流動化剤をさらに含む。
本明細書で使用している“流動化剤”とは、剤形が使用環境中に導入されたとき
に、水を吸収して、薬物含有組成物が速やかに流動性になるのを可能にするよう
な水溶性化合物である。薬物含有組成物を速やかに流動化させることにより、過
剰な圧力を発生させることなく、組成物を剤形から押し出すことが可能となる。
この結果、時間的ずれは比較的短くなる。すなわち、使用環境中への剤形の導入
と薬物供給開始との間の時間は比較的短い。さらに、流動化剤を組み込むと、コ
ア内の圧力が低下し、従って剤形のコアを取り囲んでいるコーティングが破損さ
れる恐れが少なくなる。このことは、比較的高い速度の薬物放出が要求される場
合〔水透過性の高いコーティング(従来は比較的薄くて弱い)を使用する必要があ
る〕には特に重要である。(高速の放出とは一般に、最初に剤形中に存在してい
る低溶解性薬物の70重量%以上が、剤形が使用環境に導入された時点から12時間
以内に放出される、ということを意味している。) 流動化剤は、コア中に水が吸収されたときに、薬物含有組成物の流動性を速や
かに増大させる本質的にいかなる水溶性化合物であってもよい。このような化合
物は、一般には少なくとも30mg/mlの水溶解度を有していて、一般には比較的低
い分子量(10,000ダルトン以下)を有する。したがって薬物含有組成物は、ある量
の水を吸収すると、流動化剤を含んでいない類似の薬物含有組成物と比較して速
やかにより高い流動性になる。より高い流動性とは、供給ポートを介して薬物を
押し出すのに必要とされる圧力が、流動化剤を含まない類似組成物の場合より低
いということを意味している。この増大した流動性は一時的なものであってもよ
いし〔すなわち、増大した流動性が、剤形を使用環境に導入した後のわずかな時
間だけ(たとえば2時間)起こる、ということを意味する〕、あるいは増大した流
動性が、剤形が使用環境にある時間全体にわたって起こってもよい。代表的な流
動化剤は、糖、有機酸、アミノ酸、ポリオール、塩、および水溶性ポリマーの低
分子量オリゴマーである。代表的な糖は、グルコース、スクロース、キシリトー
ル、フルクトース、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、およびマルチト
ールなどである。代表的な有機酸は、クエン酸、乳酸、アスコルビン酸、酒石酸
、リンゴ酸、フマル酸、およびコハク酸である。代表的なアミノ酸はアラニンと
グリシンである。代表的なポリオールはプロピレングリコールとソルビトールで
ある。低分子量ポリマーの代表的なオリゴマーは、10,000ダルトン以下の分子量
を有するポリエチレングリコールである。特に好ましい流動化剤は、糖と有機酸
である。このような流動化剤は、他の流動化剤(たとえば、無機塩や低分子量ポ
リマー)と比較して、薬物含有組成物の錠剤化特性と圧縮特性を向上させること
が多いので好ましい。
【0043】 流動化剤が、剤形のコア12中にて、低い水レベルで薬物含有組成物の流動性を
速やかに増大させるためには、一般には流動化剤が、薬物含有組成物14の少なく
とも約10重量%を構成するような量にて存在しなければならない。薬物含有組成
物14が、特に、剤形が使用環境に導入されてから長時間後にて(12時間以上)、薬
物連行剤が薬物を適切に連行もしくは懸濁することができないほどに流動性にな
らないようにするために、流動化剤の量は通常、薬物含有組成物の約60重量%を
越えてはならない。さらに、前述したように、流動化剤を組み込む場合は、一般
にはより高い分子量(したがってより高い粘度)を有する薬物連行剤を、薬物含有
組成物中に低レベルにて組み込む。したがって、たとえば、薬物含有組成物が約
20〜30重量%の低溶解性薬物と約30重量%の流動化剤(たとえば糖)とを含む場合、
低分子量のPEOより約500,000〜800,000ダルトンの分子量を有する高分子量ポリ
マー(たとえばPEO)を約20〜50重量%組み込むのが好ましい。
【0044】 薬物含有組成物14はさらに、薬物の水溶性を高める溶解性増大剤(solubility-
enhancing agents)を、薬物含有組成物14の約0重量%〜約30重量%の範囲の量にて
含んでよい。適切な溶解性増大剤の例としては、界面活性剤; pH調整剤(たとえ
ば、緩衝液、有機酸と有機酸塩、および有機塩基と無機塩基); グリセリド; 部
分グリセリド; グリセリド誘導体; 多価アルコールエステル; PEGエステルとPPG
エステル; ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシプロピレンエーテル、およ
びこれらのコポリマー; ソルビタンエステル; ポリオキシエチレンソルビタンエ
ステル; 炭酸塩; ならびにシクロデキストリン; などがある。
【0045】 薬物のための適切な可溶化剤を選択する際には、考慮すべき種々のファクター
がある。可溶化剤は、薬物と好ましくない形で相互作用してはならない。可溶化
剤はさらに、極めて効率の高いものでなければならず、したがって改良された溶
解性をもたらすに必要な量ができるだけ少なくて済むものでなければならない。
さらに、可溶化剤は使用環境において高い溶解性を有しているのが望ましい。酸
性薬物、塩基性薬物、および両性イオン薬剤に対して、有機酸、有機酸塩、有機
塩基、無機塩基、有機塩基塩、および無機塩基塩が、有用な可溶化剤であること
が知られている。これらの化合物は、1グラム当たり酸もしくは塩基の高い当量
数を有しているのが望ましい。したがって、可溶化剤の選択は薬物の特性に強く
依存する。
【0046】 塩基性薬物に対する好ましい種類の可溶化剤は有機酸である。塩基性薬物はプ
ロトン化によって可溶化されるので、またpH5以上の水性環境中では塩基性薬物
の溶解性が低下し、しばしばpH7.5という極めて低い値に達することがあるので(
結腸中におけるように)、こうした薬物と共に使用環境に供給するための剤形に
有機酸を加えると、可溶化が促進され、したがって薬物の吸収が促進されると考
えられる。代表的な塩基性薬物はセルトラリンであり、低いpH値にて中程度の溶
解性を、5より高いpH値にて低い溶解性を、そして約7.5のpH値にて極めて低い溶
解性を有する。酸性可溶化剤が有用となる塩基性薬物の他の例はジプラシドンで
ある。高いpHにおいて水溶液のpHがわずかでも低下すると、塩基性薬物の溶解性
が大幅に増大することがある。単にpHを下げるだけでなく、有機酸とそれらの共
役塩基を存在させると、塩基性薬物の共役塩基塩が、該薬物の中性形もしくは塩
化物塩より高い溶解性を有していれば、与えられたpHでの溶解性が上昇する。こ
のような基準を満たす好ましいサブセットの有機酸は、クエン酸、コハク酸、フ
マル酸、アジピン酸、リンゴ酸、および酒石酸からなる。下記の表には、これら
有機酸の性質が記載されている。1グラム当たり高い比の酸当量が要望される場
合は、これらのうちフマル酸とコハク酸が特に好ましい。さらに、クエン酸、リ
ンゴ酸、および酒石酸は、水溶性が極めて高いという利点を有する。コハク酸は
、適度な溶解性と1グラム当たり高い酸当量とを併せもっている。したがって、
溶解性の高い有機酸を使用すると、複数の目的に適う: 特に、使用環境が約5〜6
のpHであるとき、塩基性薬物の溶解性を向上させる; 薬物含有組成物の親水性を
高め、したがって湿潤が容易になる; 溶解して層の粘度を速やかに低下させ、流
動化剤として作用する。このように、単一の成分で複数の機能を果たさせること
によって、薬物含有組成物内の低溶解性薬物のためのさらなるスペースが得られ
る。
【0047】
【表1】 酸性薬物の場合、pHが増大するにつれて溶解度が増大する。代表的な種類の酸
性薬物用可溶化剤としては、アルキル化剤もしくは緩衝剤、および有機塩基があ
る。剤形にアルキル化剤または有機塩基を組み込むと、可溶化が促進され、した
がって薬物の吸収が促進されると考えられる。アルキル化剤もしくは緩衝剤の例
としては、クエン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、第二リ
ン酸ナトリウム、および第一リン酸ナトリウムなどがある。有機塩基の例として
は、メグラミン、エグラミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、お
よびトリエタノールアミンなどがある。
【0048】 薬物含有組成物14は、濃度増大用ポリマーを含まない対照標準組成物に比較し
て、使用環境における薬物の濃度を高める濃度増大用ポリマーを必要に応じて含
んでよい。濃度増大用ポリマーは、薬物と好ましくない仕方で化学的に反応しな
いという意味で不活性でなければならず、また生理学的に関連したpH(たとえばp
H1〜8)にて、水溶液に対して少なくともある程度の溶解性を有していなければな
らない。1〜8のpH範囲の少なくとも一部に対して少なくとも0.1mg/mlの水溶解度
を有するほとんど全ての中性ポリマーまたはイオン化可能ポリマーが適している
。特に有用なポリマーは、薬物とポリマーとの非晶質固体分散液の形成に関して
前述したものである。好ましいポリマーとしては、酢酸コハク酸ヒドロキシプロ
ピルメチルセルロース(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、
フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、酢酸フタル酸セルロース
(CAP)、酢酸トリメリット酸セルロース(CAT)、およびポリビニルピロリドン(PVP
)がある。より好ましいポリマーは、HPMCAS、HPMCP、CAP、およびCATである。
【0049】 特定の理論または特定の作用メカニズムで拘束されるつもりはないけれども、
剤形から供給されて、使用環境中にその平衡値より高い濃度で存在する薬物がそ
の平衡濃度に近づく速度を、濃度増大用ポリマーが抑制または遅くする、と考え
られる。したがって、剤形を、濃度増大用ポリマーが存在しないこと以外は同一
である対照標準剤形と比較すると、濃度増大用ポリマーを含有する剤形は、少な
くともある短い時間にわたって、使用環境中により高い濃度の溶解薬物を供給す
る。適切な剤形と濃度増大用ポリマーが、本発明の譲受人に譲渡された係属中の
特許出願“Pharmaceutical Compositions Providing Enhanced Drug Concentrat
ions”(1999年12月23日付けで本出願と同時に出願)および米国仮特許出願60/171
,841(これら特許文献の関連部分を参照により本明細書に含める)に説明されてい
る。
【0050】 薬物含有組成物14は、薬物の安定性を促進する賦形剤を所望により含んでもよ
い。このような安定剤の例としては、緩衝剤、有機酸、有機酸塩、有機塩基、無
機塩基、有機塩基塩、および無機塩基塩等のpH調整剤がある。これらの賦形剤は
、可溶化剤または流動化剤としての使用に関して前記したのと同じ物質であって
よい。他の種類の安定剤としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル
化ヒドロキシアニソール(BHA)、ビタミンE、およびアスコルビン酸パルミテート
等の酸化防止剤がある。薬物含有組成物中に使用する安定剤の量は、低溶解性薬
物を安定化するのに充分な量でなければならない。有機酸等のpH調整剤の場合、
安定剤(存在する場合)は薬物含有組成物の0.1重量%〜20重量%の範囲である。留
意しなければならないことは、BHT等の酸化防止剤を使用すると、剤形の変色を
引き起こすことがあるという点である。このような場合、酸化防止剤の使用量は
、変色を防止するようできるだけ少なく抑えなければならない。薬物含有組成物
中に使用する酸化防止剤の量は一般に、薬物含有組成物の0〜1重量%の範囲であ
る。
【0051】 最後に、薬物含有組成物14はさらに、他の従来の賦形剤(たとえば、剤形の性
能、錠剤化、またはプロセシングを促進する物質)を含んでよい。このような賦
形剤としては、錠剤化用助剤、界面活性剤、水溶性ポリマー、pH調整剤、充填剤
、結合剤、顔料、オスマジェント、崩壊剤、および滑剤などがある。代表的な賦
形剤としては、微晶質セルロース; 酸の金属塩(たとえば、ステアリン酸アルミ
ニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナ
トリウム、およびステアリン酸亜鉛など); 脂肪酸、炭化水素、および脂肪アル
コール(たとえば、ステアリン酸、パルミチン酸、流動パラフィン、ステアリル
アルコール、およびパルミトールなど); 脂肪酸エステル(たとえば、ステアリン
酸モノグリセリル、ステアリン酸ジグリセリル、トリグリセリド、パルミチン酸
グリセリル、ステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸ソルビタン、モノステ
アリン酸サッカロース、モノパルミチン酸サッカロース、およびステアリルフマ
ル酸ナトリウム(sodium stearyl fumarate)など); アルキル硫酸塩(たとえば、
ラウリル硫酸ナトリウムやラウリル硫酸マグネシウムなど); ポリマー(たとえば
、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、およびポリテトラ
フルオロエチレンなど); ならびに無機物質(たとえば、タルクやリン酸二カルシ
ウムなど); がある。好ましい実施態様においては、薬物含有組成物14は、ステ
アリン酸マグネシウム等の滑剤を含有する。
【0052】 水膨潤性組成物 再び図1を参照すると、剤形はさらに水膨潤性組成物16含む。水膨潤性組成物
は、使用環境からコーティング18を介して水を吸収すると大幅に膨張する。膨張
するにつれて、水膨潤性組成物がコア12内の圧力を増大させ、これにより、ポー
ト20を介して使用環境中への流動化した薬物含有組成物の押し出しが起こる。剤
形中に存在する薬物の量をできるだけ多くするために、また残留薬物ができるだ
け少なくなるよう、剤形からできるだけ多量の薬物が確実に放出されるために、
水膨潤性組成物は、少なくとも約2(好ましくは少なくとも3.5、さらに好ましく
は少なくとも5)の膨潤比を有していなければならない。
【0053】 水膨潤性組成物16は、膨潤剤を、水膨潤性組成物16の約30〜100重量%の範囲の
量にて含む。膨潤剤は通常、水の存在下で大幅に膨張する水膨潤性のポリマーで
ある。薬物含有組成物の膨潤剤に関連して前述したように、膨潤剤または水膨潤
性組成物自体の膨潤の程度は、その膨潤比を測定することによって評価すること
ができる。
【0054】 水膨潤性組成物のための適切な膨潤剤は通常、約2.0以上の膨潤比を有する親
水性ポリマーである。代表的な親水性ポリマーとしては、ポリオキシマー(たと
えばPEO)、セルロース系誘導体(たとえば、HPMCやHEC)、およびイオン性ポリマ
ーがある。一般に、膨潤剤用に選定される水膨潤性ポリマーの分子量は、薬物放
出中の所定時間において、水を吸収した後の水膨潤性組成物16が、薬物含有組成
物14と比較してより粘稠に、より低い流動性に、そしてより高い弾性になりやす
いように、連行剤として使用される類似ポリマーの分子量より高い。場合によっ
ては、膨潤剤は、作用時にある程度水膨潤したときに、水膨潤した弾性粒子の集
まり(mass)を構成するように、実質的に又は殆ど完全に水不溶性であってもよい
。膨潤剤は一般に、作用時において、少なくとも薬物含有組成物14の大部分が押
し出される前に、水膨潤性組成物16が一般には薬物含有組成物14と実質的に混ざ
り合わないように選択される。したがって、たとえば、PEOが水膨潤性組成物16
中に使用される膨潤剤である場合、分子量は約800,000ダルトン以上であるのが
好ましく、3,000,000〜8,000,000ダルトンであるのがさらに好ましい。
【0055】 好ましい種類の膨潤剤は、薬物含有組成物14の種々の実施態様での使用に関し
て前述したイオン性ポリマーである。代表的なイオン性ポリマー膨潤剤としては
、EXPLOTABの商品名で市販されているスターチグリコール酸ナトリウム、AC-DI-
SOLの商品名で市販されているクロスカルメロースナトリウム、およびKELTONEの
商品名で市販されているアルギン酸ナトリウムなどがある。
【0056】 水膨潤性組成物は、浸透圧作用的に有効な試剤〔しばしば“オスモジェン(osm
ogen)”または“オスマジェント(osmagent)”と呼ばれる〕を必要に応じてさら
に含んでよい。水膨潤性組成物中に存在するオスマジェントの量は、水膨潤性組
成物の約0重量%〜約40重量%の範囲であってよい。代表的な種類の適切なオスマ
ジェントは、水を吸収して周囲コーティングのバリヤーの両端間に浸透圧の勾配
を生じさせることのできる水溶性の塩および糖である。ある物質の浸透圧はファ
ントホッフの式を使用して算出することができる(たとえば、LewisとRandallに
よる“Thermodynamics”を参照のこと)。“浸透圧作用的に有効な試剤(osmotica
lly effective agent)”とは、充分に低い分子量、充分に高い溶解性、および充
分な質量を有するある物質を水膨潤性組成物中に組み込むと、使用環境から水を
吸収したときに、錠剤の内部に水溶液を形成し、したがってその浸透圧が使用環
境の浸透圧を越え、これによって使用環境から錠剤コア中へ水が透過するための
浸透圧駆動力をもたらす、ということを意味している。代表的な有用オスマジェ
ントとしては、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナ
トリウム、塩化リチウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、
硫酸リチウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、d-マンニトール、ウレア、ソル
ビトール、イノシトール、ラフィノース、スクロース、グルコース、フルクトー
ス、ラクトース、およびこれらの混合物などがある。
【0057】 本発明の1つの実施態様においては、水膨潤性組成物16が浸透圧作用的に有効
な試剤を実質的に含まない。このことは、オスマジェントの量が充分に少ないか
、あるいは水膨潤性組成物16の浸透圧を、使用環境の浸透圧を越えて上昇させな
いよう、存在するオスマジェントが充分に低い溶解性を有しているということを
意味している。水膨潤性組成物16中にオスマジェントが存在しない状態で、剤形
が薬物の満足できる放出をもたらすためには、そして水膨潤性ポリマーがイオン
性ポリマーではない場合、剤形は、水に対する透過性の高いコーティングを有し
ていなければならない。このような高透過性コーティングについては後述する。
水膨潤性組成物16が浸透圧作用的に有効な試剤を実質的に含まない場合、水膨潤
性組成物は、実質的な量(一般には少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも50
重量%)の高膨潤性ポリマー(たとえば、スターチグリコール酸ナトリウムやクロ
スカルメロースナトリウムなど)を含有するのが好ましい。前述したように、高
膨潤性物質は、前記の方法を使用して形成したコンパクト物質の“膨潤比”を測
定することによって識別することができる。
【0058】 水膨潤性組成物中にオスマジェントを組み込まずに低溶解性薬物を比較的速や
かに放出できるのは驚くべき結果である。なぜなら、当業界における従来の知見
によれば、良好な性能を得るためには水膨潤性組成物中にオスマジェントを組み
込まなければならない、と考えられているからである。オスマジェントを組み込
む必要性が回避されると、幾つかの利点がもたらされる。1つの利点は、もしオ
スマジェントを組み込んでいればそれによって占められたであろうスペースと重
量が薬物に対して振り向けられ、したがって剤形中の薬物の量を増やすことがで
きる。これとは別に、剤形全体としてのサイズを小さくすることができる。さら
に、オスマジェントを組み込む必要がなくなれば、剤形の製造プロセスが単純化
される。なぜなら、水膨潤性組成物16にオスマジェントを組み込む工程を省くこ
とができるからである。
【0059】 本発明の1つの実施態様においては、水膨潤性組成物16が膨潤剤と錠剤化用助
剤とを含む。好ましい膨潤剤(たとえば、膨潤性の高い物質)は、剤形での使用に
適した硬度に圧縮するのが難しい。しかしながら、錠剤化用助剤を水膨潤性組成
物に、水膨潤性組成物16の5〜50重量%の量にて加えると、剤形での使用に適した
硬度に圧縮できる物質が得られる。同時に、錠剤化用助剤を組み込むと、水膨潤
性組成物16の膨潤比に悪影響を及ぼすことがある。したがって、使用する錠剤化
用助剤の量と種類を慎重に選定しなければならない。一般には、良好な圧縮特性
を有する親水性物質を使用しなければならない。代表的な錠剤化用助剤としては
、ラクトース等の糖(特に、FASTFLOW LACTOSEの商品名で市販されている噴霧乾
燥品); キシリトール; および、たとえば微晶質セルロース、HPC、MC、またはHP
MC等のポリマー; がある。好ましい錠剤化用助剤は、微晶質セルロース(AVICEL
の商品名で市販されている標準グレード品とPROSOLVの商品名で市販されている
ケイ素化品)およびHPCである。錠剤化用助剤の量は、コア12がかなり低く圧縮さ
れても、水膨潤性組成物16が少なくとも2(好ましくは3.5、さらに好ましくは5以
上)の膨潤比を有するような充分に高レベルの量となるように選定される。一般
には、この量は、20重量%以上で60重量%以下である。
【0060】 さらに、膨潤剤と錠剤化用助剤との混合物が、少なくとも3キロポンド(Kp)/cm 2 (好ましくは少なくとも5Kp/cm2)の“強度”を有する物質となるのが望ましい。
ここで言う“強度”とは、物質から形成されたコア12を破砕するのに必要な破砕
力(コア“硬度”としても知られている)を、前記破砕力に垂直なコア12の最大断
面積で除して得られる商を表わしている。この試験においては、破砕力は、シュ
レウニガー錠剤硬度試験器モデル6Dを使用して測定する。圧縮された水膨潤性組
成物16と得られるコア12は、少なくとも3Kp/cm2(好ましくは少なくとも5Kp/cm2)
の強度を有していなければならない。
【0061】 好ましい実施態様においては、水膨潤性組成物16が、錠剤化用助剤のほかに膨
潤剤の混合物を含む。たとえば、クロスカルメロースナトリウム膨潤剤は、スタ
ーチグリコール酸ナトリウム膨潤剤より高い強度を有するコンパクトに圧縮する
ことができる。しかしながら、クロスカルメロースナトリウムの膨潤比は、スタ
ーチグリコール酸ナトリウムのそれより低い。高い膨潤比と高い強度の望ましい
組合わせを有する水膨潤性組成物16は、15〜40重量%のスターチグリコール酸ナ
トリウム、50〜70重量%のクロスカルメロースナトリウム、および5〜20重量%の
微晶質セルロース錠剤化用助剤を含んだ混合物を使用して形成することができる
【0062】 水膨潤性組成物16は、薬物含有組成物に関して前述したのと同タイプの剤形の
安定性、錠剤化、またはプロセシングを促進する溶解性増大剤または賦形剤をさ
らに含んでよい。しかしながら一般には、このような賦形剤は、水膨潤性組成物
16の少量部分を構成するのが好ましい。1つの好ましい実施態様においては、水
膨潤性組成物16はステアリン酸マグネシウム等の滑剤を含有する。
【0063】 コア コア12は、押出法または圧縮法によって形成することができるいかなる公知の
錠剤であってもよく、また引き続き被覆を施して、哺乳動物への薬物の供給に対
して使用することができる。錠剤のサイズは一般に、約1mm〜約10cm(最も長い寸
法に対して)の範囲である。錠剤の最大サイズは、動物に種類によって異なる。
錠剤は本質的に、そのアスペクト比(錠剤の最長寸法を錠剤の最短寸法で除して
得られる商と定義される)が約1〜約5の範囲であるようないかなる形状を有して
いてもよい。剤形から押し出されるプロセスにおいて、薬物含有層14のマスの中
心が移動する方向の錠剤寸法を、移動方向に垂直な最長寸法で除して得られる商
が約0.5以上であるのが一般には好ましい。剤形はさらに、2つ以上の比較的小さ
な錠剤を比較的大きな容器(たとえばカプセル)中に収容して含んでもよい。
【0064】 コア12の代表的な形状は、球形、楕円形、円筒形、カプセル形状、カプレット
(caplet)形状、および他のあらゆる公知の形状である。コア12は、コーティング
の後に、剤形の全体を構成してもよいし、あるいは剤形の一部を構成してもよい
。最終的な剤形は、経口投与、直腸投与、膣内投与、皮下投与、または使用環境
に供給する他の公知の投与法向けのいずれであってもよい。剤形10がヒトに対す
る経口投与用として意図されている場合、コア12は一般に、約3以下のアスペク
ト比、約2cm以下の最長寸法、および約1.5g以下の総重量(好ましくは約1.0g以下
の総重量)を有する。
【0065】 剤形を形成するためには、先ず最初に、薬物含有組成物14を含んだ成分、およ
び水膨潤性組成物16を含んだ成分を、当業界に公知の方法を使用して混合または
ブレンドする。たとえば、Lachmanらによる“The Theory and Practice of Indu
strial Pharmacy”(Lea & Febiger, 1986)を参照のこと。たとえば、薬物含有組
成物14の成分の一部を先ず最初にブレンドし、次いで湿潤粒状化し、乾燥し、粉
砕し、そして錠剤化する前に追加の賦形剤とブレンドすることができる。同様の
プロセスを使用して、水膨潤性組成物を形成することができる。
【0066】 物質を適切に混合した後、当業界に公知の手順(たとえば、圧縮または押出)を
使用してコア12が形成される。たとえば、錠剤の形態のコアを形成するためには
、所望量の薬物含有組成物14を錠剤プレス中に置き、プレスで軽くタンピングす
ることによって平らにする。次いで、所望量の水膨潤性組成物16を加え、圧縮す
ることによって錠剤を形成する。これとは別に、最初に水膨潤性組成物を錠剤プ
レスに加え、次いで薬物含有組成物を加えてもよい。錠剤コアを圧縮するのに使
用される力の量は、剤形のサイズだけでなく、組成物の圧縮性と流動特性に依存
する。一般には、3〜20Kp/cm2の強度を有する錠剤が得られるような圧力が使用
される。
【0067】 コーティング コア12を形成した後にコーティング18を施す。コーティング18は、薬物を所望
の時間枠内に供給しうるような充分に高い水透過性と高い強度とを有するととも
に、簡単に製造できるものでなければならない。水透過性は、水がコアに入る速
度を、従って薬物が使用環境に供給される速度を調節するように選定される。低
溶解性薬物を高用量にて供給することが要求される場合、錠剤を許容しうる程度
に小さく保ちながら所望の薬物放出プロフィールを達成するためには、低溶解性
と高用量とが相俟って、高透過性のコーティングを使用することが必要となる。
コアが水を吸収して膨潤するときにコーティングが破裂しないようにするために
は高い強度が必要とされる(コーティングが破裂すると、使用環境へのコア内容
物の供給が調節不能となる)。コーティングは、剤形に簡単に施すことができて
、高い再現性と高い収率が得られるものでなければならない。コーティングはさ
らに、薬物含有組成物の放出時においては非溶解性で非腐食性でなければならず
、このことは一般には、薬物が、コーティング18を通しての透過によって供給さ
れるのではなく、供給ポート20を介して実質的に完全に供給される程度に充分に
水不溶性でなければならない、ということを意味している。
【0068】 前述したように、コーティング18は、コア12中への水の速やかな吸収を、そし
てその結果としての薬物含有組成物14の速やかな放出を可能にするよう、水に対
する透過性が高い。コーティングの水透過性の相対的尺度は、下記のような実験
を行うことによって決定することができる。最終的に仕上がった剤形を開放容器
中に入れ、次いでこれを、40℃の一定温度および75%の一定相対湿度に保持され
た環境チャンバー中に配置する。乾燥剤形の重量増加の初期速度(剤形の重量を
時間に対してプロットすることによって求められる)を剤形の表面積で割ると、
“水フラックス(40/75)”と呼ぶ値が得られる。剤形に対する水フラックス(40/7
5)は、コーティングの水透過性の有用な相対的尺度であることが見出されている
。本発明の1つの実施態様の剤形の場合、特に薬物の速やかな放出が要求される
場合、コーティングは、少なくとも1.0×10-3gm/hr・cm2(好ましくは少なくとも
1.3×10-3gm/hr・cm2)の水フラックス(40/75)値を有していなければならない。
【0069】 前述したように、コーティング18はさらに、使用環境からの水の吸収によって
コアが膨潤するときに破裂しないよう、高い強度を有していなければならない。
コーティング強度の相対的尺度は、コーティングの“耐久性”を測定する下記の
実験を行うことによって決定することができる。最終的に仕上げた錠剤を水性媒
体中に10〜24時間置いて、コアに水を吸収させ、膨潤させ、そして薬物を媒体中
に放出させる。次いで、膨潤した剤形を硬度試験器(たとえば、シュレウニガー
・ファーマトロン社製造のモデル6D錠剤試験器)にて試験することができる。供
給ポート20が圧縮プレートの一方の側に対向するように、剤形を試験器中に配置
する。次いで、コーティングを破裂させるのに必要とされる力(Kpにて表示)を測
定する。コーティングの耐久性は、測定された破裂力を、加えた力に垂直な剤形
の最大断面積で割ることによって算出する。本発明の1つの実施態様においては
、コーティングは、少なくとも1Kp/cm2(好ましくは少なくとも2Kp/cm2、最も好
ましくは少なくとも3Kp/cm2)の耐久性を有していなければならない。こうした値
以上の耐久性をもつコーティングを使用すると、剤形がインビボで試験される場
合でも錠剤は実質的に破裂しない。
【0070】 これらの特性を有するコーティングは、可塑化および非可塑化のセルロースエ
ステル、セルロースエーテル、およびセルロースエステルエーテル等の親水性ポ
リマーを使用して得ることができる。特に適したポリマーとしては、酢酸セルロ
ース("CA")、酢酸酪酸セルロース、およびエチルセルロースなどがある。特に好
ましいセットのポリマーは、25〜42%のアセチル含量を有する酢酸セルロースで
ある。好ましいポリマーは39.8%のアセチル含量を有するCAであり、具体的にはC
A398-10(テネシー州キングスポートのイーストマン社製造の商品、約40,000ダル
トンの平均分子量を有する)が挙げられる。39.8%のアセチル含量を有する他の好
ましいCAは、約45,000以上の平均分子量を有する高分子量CAであり、具体的には
CA398-30(イーストマン社、50,000ダルトンの平均分子量を有するとされている)
が挙げられる。この高分子量CAは優れたコーティング強度をもたらし、このため
より薄いコーティングが可能となり、したがってより高い透過性が得られるよう
になる。
【0071】 従来法でのコーティングは、先ず最初にコーティング溶液を形成し、次いで浸
漬、流動床コーティング、または好ましくはパン・コーティングにより塗被する
ことによって行われる。コーティングを実施するには、コーティングポリマーと
溶媒とを含んだコーティング溶液を形成する。上記のセルロース系ポリマーに対
して有用な代表的な溶媒としては、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イ
ソプロピル、酢酸n-ブチル、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、
エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルアセテ
ート、二塩化メチレン、二塩化エチレン、二塩化プロピレン、ニトロエタン、ニ
トロプロパン、テトラクロロエタン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジ
グライム、およびこれらの混合物などがある。特に好ましい溶媒はアセトンであ
る。コーティング溶液は通常、ポリマーを3〜15重量%(好ましくは5〜10重量%、
最も好ましくは7〜10重量%)含有する。
【0072】 コーティング溶液はさらに、コーティングを形成するのに使用される条件にお
いてポリマーが実質的に可溶性の状態を保持する限り、またコーティングが水透
過性を保持して充分な強度を有する限り、孔形成剤(pore-former)、非溶媒、ま
たは可塑剤をいかなる量においても含んでよい。孔形成剤とコーテイングの作製
におけるそれらの使用が、米国特許第5,612,059号と第5,698,220号に記載されて
いる(これら特許の開示内容を参照により本明細書に含める)。本明細書で使用し
ている“孔形成剤”とは、コーティングプロセスの後にコーティングの一部とし
て残るよう、溶媒と比較して揮発性が低いか又は不揮発性であるが、しかし水性
の使用環境において水充填もしくは水膨潤した流路または“孔”をもたらして水
の通過を可能とし、これによってコーティングの水透過性を高めるよう、充分に
水膨潤性または水溶解性である、コーティング溶液に加える物質を表わしている
。適切な孔形成剤としては、ポリエチレングリコール(PEG)、PVP、PEO、HEC、HP
MC、他の水溶性のセルロース系誘導体、水溶性アクリレートエステル、水溶性メ
タクリレートエステル、ポリアクリル酸と種々のコポリマー、およびこれらの水
溶性ポリマーもしくは水膨潤性ポリマーの混合物がある。酢酸フタル酸セルロー
ス(CAP)やHPMCAS等の腸溶性ポリマーも、この種類のポリマー中に含まれる。特
に好ましい孔形成剤は、1000〜8000ダルトンの平均分子量を有するPEGである。
特に好ましいPEGは、3350ダルトンの分子量を有するPEGである。PEGを孔形成剤
として使用したときに、高い水透過性と高い強度とを併せもたせるには、CA:PEG
の重量比が約6.5:3.5〜約9:1の範囲でなければならない、ということを本発明者
らは見出した。
【0073】 コーティング溶液に非溶媒を加えると、極めて優れた性能が得られる。“非溶
媒”とは、コーティング溶液中に実質的に溶解し、溶媒中のコーティングポリマ
ーの溶解性を低下させる、コーテング溶液に加える物質を意味している。一般に
は、非溶媒の機能は、得られるコーティングに多孔性を付与することである。後
述するように、多孔質コーティングは、同じ組成物から得られる同等重量の非多
孔質コーティングより高い水透過性を有し、孔に気体が充填されると(非溶媒が
揮発性であるときに一般的に起こる)、この多孔性は、コーティングの密度(質量
/体積)の減少という形で示される。孔の形成については特定のメカニズムで拘束
されるつもりはないけれども、一般には、非溶媒を加えると、固化の前にコーテ
ィング溶液に液相-液相分離が起こることによって、溶媒の蒸発時にコーティン
グに多孔性が付与されるものと考えられる。水を酢酸セルロースのアセトン溶液
における非溶媒として使用する場合については後述するが、特定の有望物質の非
溶媒としての適性と量は、コーティング溶液が曇るようになるまで、コーティン
グ溶液に有望な非溶媒を少しずつ加えることによって評価することができる。コ
ーティング溶液の最大約50重量%までの付加量にて曇りが生じない場合、該物質
は一般に、非溶媒として使用するのは適切ではない。曇りが観察される場合(“
曇り点”と呼ばれる)、最大多孔度を得るための非溶媒の適切なレベルは、曇り
点が生じる直前の量である。より低い多孔度が求められる場合は、非溶媒の量を
必要に応じて少なくすることができる。コーティング溶液中の非溶媒の濃度が、
曇り点を生じる非溶媒濃度の約20%以上であるときに適切なコーティングを得る
ことができる、ということが見出された。
【0074】 適切な非溶媒は、溶媒に対してかなりの溶解性を有していて、溶媒に対するコ
ーティングポリマーの溶解性を低下させる物質である。好ましい非溶媒は、選択
される溶媒とコーティングポリマーに依存する。揮発性で極性のコーティング溶
媒(たとえば、アセトンやメチルエチルケトン)を使用する場合、適切な非溶媒と
しては、水、グリセロール、エチレングリコールとその低分子量オリゴマー(た
とえば約1,000ダルトン以下)、プロピレングリコールとその低分子量オリゴマー
(たとえば約1,000ダルトン以下)、C1-C4アルコール(たとえば、メタノールやエ
タノール)、酢酸エチル、およびアセトニトリル等がある。
【0075】 一般には、非溶媒の効果(たとえば、孔の形成)を最大にするためには、コーテ
ィングプロセスにおける溶媒の初期蒸発時に、充分な量の非溶媒が残って相分離
を起こさせるよう、非溶媒は、コーティング溶液の溶媒と同等以下の揮発性を有
していなければならない。アセトン等のコーティング溶液溶媒が使用される多く
の場合においては、水が適切な非溶媒である。7重量%のCAと3重量%のPEGを含ん
だアセトン溶液の場合、室温での曇り点は約23重量%の水において生じる。した
がって、水の濃度を曇り点またはその付近まで変えることによって多孔性を、し
たがって水透過性(多孔性の増大と共に増大する)を調節することができる。CAと
PEGを約10重量%のトータル濃度にて含んだアセトン溶液の場合、適切なコーティ
ングを得るためには、コーティング溶液が少なくとも4重量%の水を含有するのが
望ましい。より高い多孔性が、したがってより高い透過性が要求される場合(よ
り速やかな放出速度を得るために)、コーティング溶液は少なくとも約15重量%の
水を含有していなければならない。
【0076】 本発明の1つの実施態様においては、コーティング溶液は、ポリマー、溶媒、
および孔形成剤もしくは非溶媒を混合したときに、溶液が単一の相を形成すると
いう点において均一である。一般には、均一溶液は透明であり、前述したように
曇らない。
【0077】 CA398-10を使用する場合、CA:PEG3350:水の代表的なコーティング溶液重量比
は7:3:5、8:2:5、および9:1:5であり、このとき溶液の残部はアセトン等の溶媒
を含む。したがって、たとえば、CA:PEG3350:水の重量比が7:3:5である溶液にお
いては、CAが溶液の7重量%を構成し、PEG3350が溶液の3重量%を構成し、水が溶
液の5重量%を構成し、そしてアセトンが残りの85重量%を構成する。
【0078】 好ましいコーティングは一般に、乾燥状態(水性の使用環境に供給される前)に
おいても多孔質である。“多孔質”とは、該コーティングが、非多孔質のコーテ
ィング物質の密度より低い乾燥状態密度を有している、ということを意味してい
る。“非多孔質のコーティング物質”とは、非溶媒を含有していないか、あるい
は均一なコーティング溶液を生成させるのに必要なできるだけ少ない量の非溶媒
を含有しているコーティング溶液を使用することによって形成されるコーティン
グ物質を意味している。乾燥状態のコーティングは、非多孔質コーティング物質
の密度の0.9倍未満の、さらに好ましくは0.75倍未満の密度を有する。コーティ
ングの乾燥状態密度は、コーティングの重量(コーティングの前と後の錠剤の重
量増加から求められる)をコーティングの体積〔コーティングの厚さ(光学電子顕
微鏡法または走査電子顕微鏡法によって測定)と錠剤の表面積とを掛けることに
よって算出される〕で割ることによって算出することができる。コーティングの
多孔質特性は、コーティングの高い水透過性と高い強度の組合わせをもたらすフ
ァクターの1つである。
【0079】 さらに、コーティングは非対称であってもよく、このことは、コーティングの
厚さの両端間に密度の勾配があるということを意味している。一般には、コーテ
ィングの外側表面のほうが、コアに最も近いコーティングより高い密度を有する
【0080】 コーティングは、所望により可塑剤を含んでもよい。可塑剤は一般にコーティ
ングポリマーを膨潤させ、したがってポリマーのガラス転移温度が低下し、ポリ
マーのフレキシビリティと靭性が増し、そしてポリマーの透過性が幾らか変わる
。可塑剤が親水性である場合(たとえば、ポリエチレングリコール)、一般にはコ
ーティングの水透過性が増大する。可塑剤が疎水性である場合(たとえば、フタ
ル酸ジエチルやセバシン酸ジブチル)、一般にはコーティングの水透過性が減少
する。
【0081】 理解しておかなければならないことは、添加剤は、コーティング溶液に加えた
ときに二通り以上の仕方で機能することできる、という点である。たとえば、PE
Gは、低レベルにおいては可塑剤として機能することができ、より高いレベルに
おいては別個の相を形成し、孔形成剤として作用することができる。さらに、非
溶媒を加えた場合、いったん液-液相分離が起こると、PEGが非溶媒高含量相中に
分配されることによって、PEGが孔の形成を容易にすることができる。
【0082】 コアを取り囲むコーティングの重量は、コーティングの組成と多孔性、剤形の
表面対体積比、および所望する薬物放出速度に依存するが、一般には、被覆され
ていないコアの重量を基準として約3〜30重量%、好ましくは8〜25重量%の範囲の
量である。しかしながら、信頼性の高い性能を発揮するための充分な強度が確実
に得られるよう、コーティングの重量は、一般には約8重量%以上であるのが好ま
しく、約13重量%以上であるのがさらに好ましい。
【0083】 CA、PEG、および水をベースとした多孔質コーティングが優れた結果をもたら
すけれども、高い水透過性、高い強度、および製造しやすさの必要な組合わせを
コーティングが有する限り、他の医薬用として許容しうる物質も使用することが
できる。さらに、このようなコーティングは、緻密であっても非対称であっても
よく、1つ以上の緻密層を有していても、あるいは1つ以上の多孔質層を有してい
てもよい(米国特許第5,612,059号と第5,698,220号に記載)。
【0084】 コーティング18はさらに、薬物含有組成物の剤形外側への放出を可能にするた
めの、コーティングの内側および外側と連通している少なくとも1つの供給ポー
ト20を含んでいなければならない。供給ポートのサイズは、ほぼ薬物粒子のサイ
ズ(したがって直径1〜100ミクロンという小さなサイズで、孔と呼ぶこともでき
る)から最大で直径約5000ミクロンまでの範囲であってよい。ポートの形状は、
スリットの形態にて実質的に円形であっても、あるいは製造とプロセシングを容
易にする他の適切な形状であってもよい。供給ポートは、ポスト-コーティング
・メカニカル(post-coating mechanical)もしくは他の方法によって、または光
線(たとえばレーザー光線)、粒子線、もしくは他の高エネルギー源を使用して形
成することもできるし、あるいはコーティングの小部分をその場で破裂させるこ
とによって形成することもできる。このような破裂は、コーティング中に比較的
小さくて弱い部分を意図的に導入することによって制御することができる。供給
ポートはさらに、水溶性物質のプラグのその場での侵食によっても、あるいはコ
アのへこみ上にてコーティングのより薄い部分を破裂させることによっても形成
することができる。供給ポートはさらに、1つ以上の小さな区域が被覆されない
ままの状態になるようにコアを被覆することによって形成することもできる。供
給ポートはさらに、米国特許第5,612,059号と第5,698,220号に開示されているタ
イプの非対称膜コーティングの場合のように、コーティング中に形成することの
できる多数の穴(hole)もしくは孔(pore)であってもよい。供給通路が孔である場
合、サイズが1μm〜100μm以上の範囲のこうした孔が多数存在してよい。作用中
、このような孔の1つ以上が、作用中に生じる静水圧の影響で広がってもよい。
供給ポート20の数は、1個〜10個またはそれ以上の数であってもよい。少なくと
も1つの供給ポートが、薬物含有組成物に隣接したコーティングの側に形成され
なければならない。これによって薬物含有組成物が、水膨潤性組成物の膨潤作用
によって供給ポートから押し出される。理解しておかなければならないことは、
供給ポートを形成するための幾つかのプロセスは、水膨潤性組成物に隣接したコ
ーティング中に穴もしくは孔を形成することがある、ということである。大まか
にいえば、供給ポートによって露出されるコアのトータル表面積は5%未満であり
、さらに一般的には1%未満である。
【0085】 本発明の他の特徴と実施態様は下記の実施例から明らかとなろう。これらの実
施例は本発明を例示するためのものであって、これらの実施例によって本発明の
範囲が限定されることはない。
【0086】 実施例1 本発明の代表的な剤形を、図1に示すタイプの二層コア形状体として作製した
。この二層コアは、薬物含有組成物と水膨潤性組成物で構成された。
【0087】 薬物含有組成物を作製するために、下記の物質をブレンドした(表Aを参照): 陰茎勃起不全を処置するための、1-[4-エトキシ-3-(6,7-ジヒドロ-1-メチル-7-
オキソ-3-プロピル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-5-イル)フェニルスルホニル
]-4-メチルピペラジンのクエン酸塩〔クエン酸シルデナフィルとしても知られて
おり(以後、ドラッグ1と呼ぶ)、pH6において約20μg/mlの溶解度を有する〕を35
重量%; キシリトール〔商品名キシリタブ(XYLITAB200)〕を30重量%; 平均分子量
が600,000のPEOを29重量%; スターチグリコール酸ナトリウム〔商品名エクスプ
ロタブ(EXPLOTAB)〕を5重量%; およびステアリン酸マグネシウムを1重量%。ステ
アリン酸マグネシウム以外の薬物含有組成物成分を先ず最初に混ぜ、チューブラ
・ミキサー(TURBULA mixer)中で20分ブレンドした。このブレンド物をスクリー
ン(0.065インチのスクリーンサイズ)に押し通し、次いで再び同じミキサー中で2
0分ブレンドした。次いでステアリン酸マグネシウムを加え、薬物含有組成物を
再び同じミキサー中で4分ブレンドした。水膨潤性組成物を作製するために、下
記の物質をブレンドした: 74.5重量%のエクスプロタブ; 25重量%の錠剤化用助剤
〔ケイ素化微晶質セルロース(商品名プロソルブ(PROSOLV)90)〕; および0.5重量
%のステアリン酸マグネシウム。水膨潤性組成物は、薬物含有組成物の場合と同
じ手順で作製した。
【0088】 錠剤コアは、400mgの薬物含有組成物を標準的な13/32インチダイ中に入れ、プ
レスで穏やかに水平化することによって形成した。次いで100mgの水膨潤性組成
物を、ダイ中の薬物含有組成物の上に配置した。次いで錠剤コアを、約11Kpの硬
度になるよう圧縮した。このようにして得られた二層錠剤コアは総重量が50mgで
あり、トータル28重量%のドラッグ1(140mg)、24重量%のキシリタブ200、23重量%
のPEO600,000、18.9重量%のエクスプロタブ、5重量%のプロソルブ90、および1.1
重量%のステアリン酸マグネシウムを含有した。
【0089】 コーティングは、ベクター(Vector)LDCS-20パンコーターによって施した。コ
ーティング溶液は、CA(テネシー州キングスポートのイーストマン・ファインケ
ミカル社から市販のCA398-10)、ポリエチレングリコール(ユニオン・カーバイド
社から市販のPEG3350)、水、およびアセトンを7/3/5/85(重量%)の重量比にて含
有した。パンコーターの入口の加熱乾燥空気の流量を40ft3/分に設定し、出口の
温度を25℃に設定した。ノズル-ベッドの距離を2インチにした状態で、20psiの
窒素を使用して噴霧ノズルからのコーティング溶液を霧化した。パンの回転を20
rpmに設定した。このように被覆した錠剤を対流式オーブン中にて50℃で乾燥し
た。最終的な乾燥コーティング重量は40.5mg、すなわち錠剤コアの8.1重量%とな
った。直径900μmの5個の穴を薬物含有組成物側上のコーティング中に機械的に
あけて、錠剤1個当たり5個の供給ポートを設けた。表Cには、剤形の特徴がま
とめられている。
【0090】 インビボの薬物溶解をシミュレートするために、錠剤を900mlのシミュレート
した胃液(10mMのHCl、100mMのNaCl、pH2.0、261mOsm/kg)中に2時間置き、次いで
900mlのシミュレートした腸環境液(6mMのKH2PO4、64mMのKCl、35mMのNaCl、pH7.
2、210mOsm/kg)に移した(どちらの溶液も50rpmで撹拌した)。残留物溶解試験を
、詳細な記述のセクションに記載のように行った。残留薬物を、ウォーターズ・
シンメトリー(Waters Symmetry) C18カラムを使用してHPLCにより分析した。移
動相は、0.05Mトリエタノールアミン(pH3)/メタノール/アセトニトリルを58/25/
17の体積比にて含んだ。290nmでのUV吸光度とドラッグ1標準の吸光度とを比較す
ることによって薬物濃度を算出した。錠剤中の薬物の初期トータル量から錠剤中
に残っている薬物の量を引いて、各時間間隔にて放出された量を算出した。得ら
れた結果が表1に示され、表Dにまとめてある。
【0091】
【表2】 上記のデータは、25重量%の薬物が2時間以内に、74重量%の薬物が8時間以内に
、そして98重量%の薬物が20時間以内に放出されたことを示している。したがっ
て本発明は、比較的低い質量(540mg)の剤形における比較的高い用量(140mg)低溶
解性薬物について、8時間以内に70重量%を越える速やかな放出を、そして20時間
の時点において極めて少ない残留値を可能にした。
【0092】 実施例2 本実施例は、薬物含有組成物中の薬物の量を増やすことによって、二層錠剤か
ら高用量のドラッグ1を供給することを示している。実施例2の錠剤の場合、薬物
含有組成物は、56重量%のドラッグ1、20重量%のキシリタブ200、19重量%のPEO(
平均分子量600,000)、4重量%のエクスプロタブ、および1重量%のステアリン酸マ
グネシウムを含んだ。水膨潤性組成物は、74.5重量%のエクスプロタブ、25重量%
のプロソルブ、および0.5重量%のステアリン酸マグネシウムを含んだ。錠剤を作
製するのに500mgの薬物含有組成物を使用したこと以外は、実施例1の場合と同様
にこれらの錠剤を作製した。錠剤作製のさらなる詳細については表Cを参照のこ
と。薬物含有組成物と水膨潤性組成物とを83.3重量%(薬物含有組成物)対16.7重
量%(水膨潤性組成物)の比にて混合した。溶解試験は実施例1に記載のように行っ
た。得られた結果が表2に示され、表Dにまとめてある。
【0093】
【表3】 上記のデータは、16重量%の薬物が2時間以内に、そして86重量%の薬物がが20
時間以内に放出されたことを示している。したがって本発明の剤形は、薬物含有
組成物中に高用量を組み込んでも高い性能を発揮した。
【0094】 実施例3A〜3B これらの実施例は、本発明による、二層錠剤からの種々の薬物の供給を示して
いる。実施例3Aの錠剤の場合、薬物含有組成物は、35重量%のセルトラリンHCl(
ドラッグ2)(pH7にて0.2mg/mlの溶解度を有する)、30重量%のキシリタブ200、28.
75重量%のPEO(平均分子量600,000)、5重量%のエクスプロタブ、および1.25重量%
のステアリン酸マグネシウムを含んだ。水膨潤性組成物は、74.5重量%のエクス
プロタブ、25重量%のプロソルブ、および0.5重量%のステアリン酸マグネシウム
を含んだ。これらの錠剤を実施例1の場合と同様に作製した。これらの錠剤に対
し、フェノメネックス・ウルトラカーブ(Phenomenex Ultracarb)5 ODS 20カラム
を使用するHPLCによって残留薬物を分析したこと以外は、実施例1の場合と同様
の手順で溶解試験を行った。移動相は、アセトニトリル中35容量%のTEA-アセテ
ート緩衝液(3.48mlのトリエタノールアミンと2.86mlの氷酢酸を1リットルのHPLC
H2O中に溶解して得られる)で構成した。薬物の濃度は、230nmでのUV吸光度とセ
ルトラリン対照標準の吸光度とを比較することによって算出した。得られた結果
が表3に示され、表Dにまとめてある。
【0095】 実施例3Bの錠剤の場合、薬物含有組成物は、慢性的な炎症性疾患(たとえば喘
息)を処置するための5-リポキシゲナーゼ阻害剤である、4-[3-[4-(2-メチルイミ
ダゾール-1-イル)フェニルチオ]フェニル]-3,4,5,6-テトラヒドロ-2H-ピラン-4-
カルボキサミドヘミフマレートのメシラート塩(ドラッグ3)(pH4において3.7mgA/
mlの溶解度を有する)を32.4重量%、キシリタブ200を31.2重量%、600,000の分子
量を有するPEOを29.9重量%、エクスプロタブを5.2重量%、およびステアリン酸マ
グネシウムを1.3重量%含んだ(表Aを参照)。水膨潤性組成物は、74.5重量%のエク
スプロタブ、24.5重量%のプロソルブ、および1重量%のステアリン酸マグネシウ
ムを含んだ。これらの錠剤を、実施例1に記載の手順にしたがって作製した。こ
れらの錠剤に対し、錠剤を0.1NのHCl中に溶解し、258nmにてUV吸光度を測定する
ことによって残留薬物を分析したこと以外は、実施例1にしたがって溶解試験を
行った。得られた結果が表3に示され、表Dにまとめてある。
【0096】
【表4】 実施例3Aと3Bは、24時間後において残留薬物が少なく、時間的ずれは実質的に
ないことを示している。実施例1の場合と同様に、これらの実施例は、低溶解性
の異なった薬物を本発明の剤形から適切に供給できることを示している。
【0097】 実施例4 本実施例では、水膨潤性組成物中にイオン性膨潤剤を使用することなく、二層
錠剤から本発明にしたがって薬物2を供給することを示す。実施例4の錠剤の場合
、薬物含有組成物は、35重量%のドラッグ2、30重量%のキシリタブ200、29重量%
のPEO(平均分子量600,000)、5重量%のエクスプロタブ、および1重量%のステアリ
ン酸マグネシウムを含んだ(表Aを参照)。水膨潤性組成物は、65重量%のPEO(平均
分子量5,000,000)、29.4重量%のNaCl、5重量%の錠剤化用助剤ヒドロキシメチル
セルロース(メトセル)、および0.6重量%のステアリン酸マグネシウムを含んだ(
表Bを参照)。錠剤を作製するのに490mgの薬物含有組成物と245mgの水膨潤性組成
物を使用したこと以外は、実施例1の場合と同様にこれらの錠剤を作製した(表C
を参照)。これらの錠剤に対し、実施例3Aに記載の手順にしたがって溶解試験を
行った。得られた結果が表4に示され、表Dにまとめてある。
【0098】
【表5】 上記のデータは、水膨潤性組成物中にイオン性膨潤剤が存在しない場合には、
2時間以内に15重量%の薬物が、そして24時間以内に87重量%の薬物が放出された
ことを示している。
【0099】 実施例5A〜5C これらの実施例は、種々の量のイオン性膨潤剤と錠剤化用助剤を使用して、所
望の放出プロフィールを有する剤形を作製できることを示す。
【0100】 実施例5A、5B、および5Cの錠剤の場合、薬物含有組成物は、35重量%のドラッ
グ1、30重量%のキシリタブ200、29重量%のPEO(平均分子量600,000)、5重量%のエ
クスプロタブ、および1重量%のステアリン酸マグネシウムを含んだ。脱イオン水
を使用して薬物含有組成物を湿潤粒状化し、40℃のオーブン中で一晩乾燥した。
実施例5Aの錠剤の場合、水膨潤性組成物は、74.35重量%のエクスプロタブ、24.8
5重量%のプロソルブ、0.3重量%のレッド・レーキ(Red Lake)#40、および0.3重量
%のステアリン酸マグネシウムを含んだ。水を溶媒として使用してエクスプロタ
ブとプロソルブ90を湿潤粒状化し、本混合物を乾燥し、次いで他の成分とブレン
ドすることによって水膨潤性組成物を作製した。
【0101】 実施例5Bの錠剤の場合、水膨潤性組成物は、49.4重量%のエクスプロタブ、49.
4重量%のプロソルブ90、0.2重量%のレッド・レーキ#40、および1重量%のステア
リン酸マグネシウムを含んだ。この水膨潤性組成物を、実施例5Aの場合と同様の
手順にしたがって湿潤粒状化した。
【0102】 実施例5Cの錠剤の場合、水膨潤性組成物は、59.35重量%のエクスプロタブ、39
.4重量%のプロソルブ、0.25重量%のレッド・レーキ#40、および1重量%のステア
リン酸マグネシウムを含んだ。この水膨潤性組成物を、実施例5Aの場合と同様の
手順にしたがって湿潤粒状化した。
【0103】 400mgの薬物含有組成物を標準的な13/32インチのダイ中に入れ、軽くタンピン
グすることによって錠剤を作製した。次いで、100mgの水膨潤性組成物を、ダイ
中にて薬物含有組成物の上に配置した。次いで錠剤を、約12Kpの硬度になるよう
に圧縮した。各実施例に対する最終的な乾燥コーティング重量がそれぞれ、5Aに
対しては40.5mg(8.1重量%)、5Bに対しては46.5mg(9.3重量%)、および5Cに対して
は43.5mg(8.7重量%)になったこと以外は、全てのコアを実施例1の場合と同様の
手順にしたがって被覆した。
【0104】 これらの錠剤に対し、実施例1に記載の手順にしたがって溶解試験を行った。
得られた結果が表5に示され、表Dにまとめてある。
【0105】
【表6】 上記のデータは、所望の薬物放出プロフィールにいかなる悪影響も及ぼすこと
なく、エクスプロタブ対プロソルブ90の重量比を約75/25から約50/50まで変える
ことができる、ということを示している。
【0106】 実施例6 本実施例は、本発明の剤形を使用すると、薬物組み込み量が多くても低い残留
薬物値が得られる、ということを示す。実施例6の錠剤の場合、薬物含有組成物
と水膨潤性組成物は、錠剤を作製するのに200mgの水膨潤性組成物を使用したこ
と(71.4%の薬物含有組成物/28.6%の水膨潤性組成物)、および錠剤が77.7mg(11.1
重量%)のコーティングを有したこと以外は、実施例2の場合と同じであった。実
施例1に記載の手順にしたがって溶解試験を行った。得られた結果を表6に示す。
【0107】
【表7】 これらのデータと実施例2のデータとを比較することにより、初期の薬物放出
速度が同じである(2時間以内に16重量%の薬物を放出する)ことがわかる。実施
例2と比較すると、これらのデータからさらに、コア中の水膨潤性組成物の量を
増やすと(実施例6)、20時間後においてより高いパーセント(86%に対して94%)の
薬物が放出され、これにより残留薬物の量はより少なくなる、ということがわか
る。
【0108】 実施例7A〜7D これらの実施例は、薬物放出プロフィールとコーティングの水透過性との間の
関係を示す。実施例7A、7B、7C、および7Dの錠剤の場合、薬物含有組成物は、35
重量%のドラッグ1、30重量%のキシリタブ200、29重量%のPEO(平均分子量600,000
)、5重量%のエクスプロタブ、および1重量%のステアリン酸マグネシウムを含ん
だ。水膨潤性組成物は、74.35重量%のエクスプロタブ、24.85重量%のプロソルブ
90、0.3重量%のレッド・レーキ#40、および0.3重量%のステアリン酸マグネシウ
ムを含んだ。
【0109】 錠剤が異なった量のコーティングを有すること以外は、実施例1に記載の手順
にしたがってこれらの錠剤を作製した。実施例7Aの錠剤の場合、コーティングの
最終的な乾燥重量は29mg(5.8重量%)であった。実施例7Bの錠剤の場合、コーティ
ングの最終的な乾燥重量は56.5mg(11.3重量%)であった。実施例7Cの錠剤の場合
、コーティングの最終的な乾燥重量は89.5mg(17.9重量%)であった。実施例7Dの
錠剤の場合、コーティングの最終的な乾燥重量は124.5mg(24.9重量%)であった。
一般には、コーティングが厚くなるほど、予想される水透過性は低くなる。これ
らの錠剤に対し、実施例1に記載のように溶解試験を行った。得られた結果が表7
に示され、表Dにまとめてある。
【0110】
【表8】 実施例7A〜7Dは、水の透過性が低下するにつれて、すなわちコーティングの重
量が増大するにつれて、薬物の放出量が減少したことを示している。上記のデー
タは、コーティングの厚さが増大するにつれて、0時間と2時間との間に供給され
る薬物のフラクションが減少し、一方、8時間から20時間までに供給される薬物
のフラクションが増大したことを示している。
【0111】 実施例8 本実施例は、ドラッグ2の濃度増大用ポリマー中非晶質分散液を本発明の剤形
から供給することを示す。0.65重量%のセルトラリン遊離塩基、0.65重量%のフタ
ル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP55)、49.35重量%のメタノール
、および49.35重量%のアセトンを含有する溶液を噴霧乾燥することによって、ド
ラッグ2のHPMCP中非晶質固体分散液を調製した。薬物をメタノール中に溶解し、
そしてポリマーをアセトン中に溶解してから、これらの溶液を混合した。この溶
液を、二液化型外部混合噴霧ノズルを使用して、ニロ(Niro)噴霧乾燥器のステン
レス鋼製チャンバー(入口が230℃の温度に、そして出口が72℃の温度に保持され
ている)中に1.8バールにて187〜211g/分の供給速度で供給して噴霧乾燥した。
【0112】 薬物含有組成物を作製するために、以下の物質をブレンドした: 41.15重量%の
セルトラリン分散液(セルトラリン遊離塩基:HPMCP=1:1)、26.75重量%のPEO(平均
分子量600,000)、26.75重量%のキシリタブ200、4.33重量%のエクスプロタブ、お
よび1.02重量%のスイアリン酸マグネシウム。薬物含有組成物の成分を混合し、
予備圧縮し、次いで0.075インチの開口を有するスクリーンサイズのコミル(co-m
ill)中にて1100rpmで粉砕した。
【0113】 水膨潤性組成物を作製するために、以下の物質をブレンドした: 74.66重量%の
エクスプロタブ、24.73重量%のプロソルブ90、0.47重量%のステアリン酸マグネ
シウム、および0.14重量%のレッド・レーキ#40。ステアリン酸マグネシウム以外
の水膨潤性組成物の成分を混合し、チューブラ・ミキサー中で20分ブレンドし、
次いでステアリン酸マグネシウムを加えて再び4分ブレンドした。これら錠剤の
アッセイにより、112mgの活性セルトラリン(mgA)が組み込まれていることが確認
された。
【0114】 二層錠剤からシミュレートされた腸緩衝液(intestinal buffer)中へのセルト
ラリン分散液の放出は、実施例3Aに記載のようにHPLCによって測定した。得られ
た結果が表8に示され、表Dにまとめてある。
【0115】
【表9】 上記のデータは、本発明の剤形からのセルトラリン分散液の供給が満足できる
ものであることを示している。
【0116】 実施例9 本実施例は、二層錠剤からの他の薬物分散液の供給を示す。この薬物の形態は
、50重量%の5-クロロ-1H-インドール-2-カルボン酸[(1S)-ベンジル-3-((3R,4S)-
ジヒドロキシピロリジン-1-イル-)-(2R)-ヒドロキシ-3-オキシプロピル]アミド(
グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤)(ドラッグ4)(80μg/mlの水溶解度を有する)
と50重量%の酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS MFグレ
ード)とを含む固体非晶質分散液であった。この固体分散液は、7.5重量%のドラ
ッグ4、7.5重量%のポリマー、および85重量%のアセトン/H2O(95/5重量比)で構成
されること以外は、実施例8に記載の手順と実質的に同じ手順で作製した。二液
化型外部混合噴霧器を使用し、460g/分の噴霧ガス供給速度および200g/分の分散
液供給速度にて、195℃の入口温度および70℃の出口温度で、この分散液を噴霧
乾燥した。
【0117】 こうして得られた固体粒子の平均直径は約50μmであった。薬物含有組成物は
、44.4重量%の固体分散液、26.1重量%のキシリタブ200、25.2重量%のPEO(平均分
子量600,000)、3.5重量%のエクスプロタブ、および0.8重量%のステアリン酸マグ
ネシウムを含んだ。水膨潤性組成物は、74.8重量%のエクスプロタブ、24.8重量%
のプロソルブ90、および0.4重量%のステアリン酸マグネシウムを含んだ(表Bを参
照)。
【0118】 薬物含有組成物の成分を実質的に均一になるまで機械的に混合し、それほど堅
くない錠剤に圧縮し、次いで得られた錠剤を16メッシュ未満のサイズの粒子にな
るよう粉砕した。次いで水膨潤性組成物の成分を実質的に均一になるまで混合し
た。450mgの粉砕した薬物含有組成物を標準的な15/32-インチダイのf-プレス(f-
press)中に配置し、軽くタンピングすることによって錠剤を作製した。150mgの
水膨潤性組成物混合物を、ダイ中にて薬物含有組成物の上に配置した。錠剤を15
Kpの硬度になるよう圧縮した。
【0119】 こうして得られた二層錠剤コアは、総重量が600mgで、199.8mgの固体分散液(
このうち99.9mgがドラッグ4であった)を含んだ。次いでこのコアを実施例1に記
載のように被覆して8.9%のコーティング重量を得、錠剤の薬物側だけに900μmの
穴を5つあけた。
【0120】 二層錠剤を腸緩衝液中に入れ、50rpmで撹拌することによって、薬物の溶解を
調べた。残留物の分析を行うために、錠剤をメタノール/水(75/25)中に溶解した
。ゾルバックス(Zorbax) SB C18カラムを使用して(移動相は水中35容量%のアセ
トニトリル、UV吸光度は297nmにて測定)、時間の経過に対する薬物濃度を調べた
。得られた結果が表9に示され、表Dにまとめてある。
【0121】 これらのデータは、二層錠剤からのドラッグ4の分散液の放出が満足できるも
のであることを示している。
【0122】
【表10】 実施例10 本実施例は、二層錠剤からの5-(2-(4-(3-ベンゾイソチアゾリル)-ピペラジニ
ル)エチル-6-クロロオキシインドール(ドラッグ5)の供給を示す。この薬物の形
態は、10重量%のドラッグ5(絶食状態の十二指腸液に対して3μg/mlの溶解度を有
する)と90重量%のHPMCAS(HFグレード)とを含んだ固体分散液であった。この固体
分散液は、0.3重量%のドラッグ5、2.7重量%のHPMCAS、および97重量%のMeOHで構
成したこと以外は、実施例8の場合と実質的に同じ手順で作製した。この分散液
を、19psiの圧力、140g/分の供給速度、264℃の入口温度、および62℃の出口温
度にて噴霧乾燥した。
【0123】 薬物含有組成物は、45.1重量%の固体分散液、25重量%のキシリタブ200、25重
量%のPEO(平均分子量600,000)、3.9重量%のエクスプロタブ、および1重量%のス
テアリン酸マグネシウムを含んだ。水膨潤性組成物は、74.8重量%のエクスプロ
タブ、24.7重量%のプロソルブ90、および0.5重量%のステアリン酸マグネシウム
を含んだ。上記の薬物含有組成物の成分を均一になるまで機械的に混合し、10〜
20Kpの錠剤が得られるよう圧縮し、得られた錠剤を粉砕して粒子にした。上記の
水膨潤性組成物の成分を均一になるまで混合した。薬物含有組成物粒子と水膨潤
性組成物から、実施例9に記載のように二層錠剤を作製した。
【0124】 得られた二層コアは、総重量が700mgで247.8mgの固体分散液(このうち22.84mg
がドラッグ5)を含んだ。次いでこの二層コアを、実施例1に記載のように被覆し
て11.3重量%のコーティング重量を得、2mMの穴を5つあけた。
【0125】 二層錠剤を腸緩衝液中に入れ、50rpmで撹拌することによって、薬物の溶解を
調べた。残留薬物の含量を分析すべく、錠剤をメタノール/水(75/25(w/w))中に
溶解した。移動相を60容量%の0.02M KH2PO4とし、ACN中pH3.0にて、254nmでのダ
イオード・アレー検出により、HPLCを使用して薬物の濃度を測定した。得られた
結果が表10に示され、表Dにまとめてある。
【0126】
【表11】 上記のデータは、二層錠剤からのドラッグ5の分散液の放出が満足できるもの
であることを示している。
【0127】 実施例11 本実施例は、薬物含有組成物中に膨潤剤を含まない二層錠剤からの、本発明に
よるドラッグ2の供給を示す。実施例11の錠剤の場合、薬物含有組成物は、22.8
重量のドラッグ2、71.7重量%のPEO(平均分子量200,000)、5重量%のメトセル(Met
hocel)、および0.5重量%のステアリン酸マグネシウムを含んだ。水膨潤性組成物
は、74.5重量%のエクスプロタブ、25.0重量%のプロソルブ90、および0.5重量%の
ステアリン酸マグネシウムを含んだ。490mgの薬物含有組成物と245mgの水膨潤性
組成物を使用して錠剤を作製したこと以外は、実施例1に記載のようにこれらの
錠剤を作製した。これらの錠剤に対し、実施例1に記載のように溶解試験を行っ
た。得られた結果が表11に示され、表Dにまとめられている。
【0128】
【表12】 上記のデータは、薬物含有組成物中に膨潤剤を含まない本発明の剤形を使用し
て、満足できる薬物供給が得られたことを示している。
【0129】 実施例12 本実施例は、水膨潤性組成物の処方において使用できる膨潤剤の膨潤体積を求
める試験の結果について説明する。
【0130】 物質の膨潤比を求めるために下記のような実験を行った。先ず最初に物質をブ
レンドし、次いで13/32-インチのダイを使用して500mgの物質を圧縮して錠剤と
した。錠剤の強度は3〜16Kp/cm2の範囲であった。この圧縮された物質を、錠剤
とほぼ同じ内径のガラスシリンダー中にいれた。次いで錠剤の高さを測定した。
この高さと錠剤の直径を使用して、乾燥物質の体積を求めた。次いでガラスシリ
ンダーに、脱イオン水の試験媒体、シミュレートした腸緩衝液の試験媒体、また
はシミュレートした胃緩衝液(gastric buffer)の試験媒体を充填した。ガラスシ
リンダーと試験媒体をすべて、37℃の一定温度で平衡化した。錠剤中の物質が水
を吸収するにつれて、錠剤の高さが増大した。各時間間隔にて錠剤の高さを測定
し、これから膨潤した錠剤の体積を求めた。一定の高さに達した後の錠剤の体積
と乾燥錠剤の体積との比が、該物質の膨潤比である。これらの試験の結果を表12
に示す。
【0131】
【表13】
【0132】
【表14】 実施例13 図1に示されているタイプの二層コア形状物を使用して、本発明の代表的な剤
形を作製した。本実施例では、耐久性のある高透過性コーティングを使用して短
い持続時間にて薬物を放出する本発明の剤形について説明する。薬物含有組成物
は以下の物質を含んだ: 22.8重量%のドラッグ2、71.7重量%のPEO〔平均分子量20
0,000(ポリオックスWSR N80)〕、5.0重量%のメトセルK3 LV Prem(錠剤結合剤)、
および0.5重量%の滑剤(ステアリン酸マグネシウム)。
【0133】 薬物含有組成物を作製するために、成分(ステアリン酸マグネシウムを除く)を
チューブラ・ミキサー中で20分ブレンドした。このブレンド物を0.065インチの
ふるいにかけ、再び20分ブレンドした。次いでステアリン酸マグネシウムを加え
、再び4分ブレンドした。水膨潤性組成物は以下の物質を含んだ: 65.0重量%のPE
O〔平均分子量5,000,000(ポリオックスWSR凝集剤)〕、29.3重量%の塩化ナトリウ
ム、5.1重量%のメトセルK3 LV Prem.、および0.6重量%のステアリン酸マグネシ
ウム。
【0134】 水膨潤性組成物を作製するために、成分(ステアリン酸マグネシウムを除く)を
チューブラ・ミキサー中で20分ブレンドし、次いでステアリン酸マグネシウムを
加えて再び4分ブレンドした。
【0135】 薬物含有組成物と水膨潤性組成物を合わせて、直接圧縮により錠剤化した。薬
物含有組成物の一部(490mg)を、標準的な丸い凹形の15/32-インチダイを備えたf
-プレス中に配置し、アッパー・パンチで軽く平らにした。この上に、245mgの水
膨潤性組成物を置き、錠剤を圧縮した。f-プレス上のアッパー・パンチとロアー
・パンチとの間の圧縮距離を、得られる錠剤の硬度が15Kpになるまで調節した。
得られた二層錠剤は、トータルで15.2重量%のセルトラリン塩酸塩、47.8重量%の
PEO200,000、5.0重量%のメトセル、0.5重量%のステアリン酸マグネシウム、21.7
重量%のPEO5,000,000、および9.8重量%の塩化ナトリウムを含んだ。これらの錠
剤のアッセイにより、112mgのセルトラリン塩酸塩または100mgの活性セルトラリ
ン(mgA)が確認された。
【0136】 ベクターLDCS-20パンコーターを使用して、実施例1に記載のように、錠剤に高
水透過性のコーティングを施した。コーティング溶液は、酢酸セルロース(CA398
-10)、ポリエチレングリコール(PEG3350)、水、およびアセトンを7/3/5/85の重
量比にて含有した。パンコーターの出口温度が25℃に保持されるよう、加熱乾燥
空気(40cfm)を調節した。20psiでの窒素を使用して、コーティング溶液を噴霧ノ
ズル(ノズル-ベッドの距離は2インチ)から霧化した。パンを20rpmにてタンブル
した。最終的な乾燥コーティングの重量は、錠剤コアの重量の12.9重量%となっ
た。錠剤の表面に、900μmの穴を1つ手であけた。被覆された錠剤の総重量は830
mgであった。
【0137】 インビトロの残留試験を実施例3Aに記載のように行った。得られた結果が表13
に示され、表Dにまとめられている。これらのデータは、19%の薬物が2時間以内
に、そして98%の薬物が8時間以内に放出されたことを示している。放出試験時の
錠剤を観察することにより、PEOベースのコアの膨潤にコーティングが耐えられ
るということがわかり、また試験の継続時間中にわたって完全性を保持した。
【0138】
【表15】 実施例14 本実施例は、薬物含有組成物中の薬物のパーセントを35重量%にまで増大させ
た場合の、本発明の錠剤からのドラッグ2の供給を示す。実施例14のための錠剤
は実施例13に記載のように作製した(成分は、表A、B、Cに記載されている)。溶
解試験は実施例3Aに記載のように行った。得られた結果が表14に示され、表Dに
まとめられている。
【0139】
【表16】 上記のデータから、薬物含有組成物中の薬物のパーセントが高くても、薬物放
出速度は高いままであり、2時間後に25%が放出されていることがわかる。さらに
、97%の薬物が8時間以内に放出されている。多量の薬物(薬物含有組成物のパー
セントとしての)の供給に対しても、本発明の剤形から薬物を適切に供給できる
、ということが本実施例からわかる。このような高い薬物組み込み量は、錠剤の
サイズを許容しうる程度に小さく保持しつつ、高用量の薬物の供給が要求される
場合に望ましい。
【0140】 実施例15A〜C これらの実施例は、水フラックス(40/75)(コーティングを比較する際に有用な
、コーティングの水透過性の相対的尺度)を測定することによる、コーティング
の水透過性に及ぼすコーティング物質の処方の影響を示す。錠剤を実施例13に記
載のように作製した(異なる点は、表A、B、およびCに記載されているとおりであ
る)。15/32-インチのツーリング(tooling)を使用し、13.4Kpにて圧縮して錠剤を
作製した。各錠剤の表面積は約4.35cm2であった。
【0141】 実施例1に記載のように、これらの錠剤にコーティングを施した。表15.1は、
使用したコーティング溶液の組成を示している。全ての場合において、アセトン
を溶媒として使用した。
【0142】
【表17】 水フラックス(40/75)値を求めるために、40℃の一定温度と75%の一定相対湿度
とを有する環境チャンバー中のウェイボート(a weigh boat)中に、各実施例から
の5個の錠剤を入れた。一定時間ごとに錠剤を取り出して計量した。この実験か
ら得られたデータを表15.2に示す。
【0143】
【表18】 コーテイングの水フラックス(40/75)値は、5個の錠剤に関して、重量を時間
に対してプロットすることによって得られる初期勾配を錠剤の表面積で割ること
によって求めた。表15.3は、これらの算出結果を示している(最初の3つのデータ
ポイントの線形回帰適合を使用して初期勾配を求めた)。これらのデータは、コ
ーティング溶液中に含まれているPEGの量が、CAの量と比較して増大するにつれ
て、水フラックス(40/75)値が増大したことを示している。
【0144】
【表19】 実施例16A〜16U 本実施例では、コーティングの“耐久性”(コーティングを比較する際に有用
である、コーティングの強度の相対的な尺度)を測定する。実施例16A〜16Gの場
合、錠剤は実施例1に記載のように作製した(異なる点は、表AとBに記載されてい
る)。表Cに示されているように、2つの異なった種類のコーティングを使用し、
種々のコーティング重量にてこれらの錠剤を被覆した。13/32-インチのツーリン
グを使用して錠剤を作製し、0.84cm2の最大断面積を有する錠剤が得られた。実
施例16H〜16Uの場合、錠剤は実施例14に記載のように作製した(異なる点は、表A
とBに記載されている)。これらの錠剤を、表Cに示すように、種々のコーティン
グ重量で被覆した。7/16-インチのツーリングを使用して錠剤を作製し、0.97cm2 の最大断面積を有する錠剤が得られた。表16.1には、実施例16の錠剤に対する組
成とコーティング重量が記載されている。全ての場合においてアセトンを溶媒と
して使用した。
【0145】 コーティングの耐久性を調べるために、錠剤を脱イオン水中に37℃で16〜24時
間置いた。錠剤を取り出し、脱イオン水ですすぎ洗いし、シュレウニガー錠剤硬
度試験器モデル6Dにより硬度の試験を行った。力を加えるときに供給ポートが試
験器プレートに突き当たって塞がれるように、錠剤を試験器中に配置した。これ
らの試験から、各錠剤に対する耐久性〔錠剤の硬度(Kpにて表示)を最大断面積(c
m2にて表示)で除して得られる商であると定義される〕を算出した。結果を表16.
2に示す。
【0146】
【表20】
【表21】 上記のデータから、本発明の高透過性コーティングの耐久性が高いこと、また
錠剤に塗被されるコーティングの量が増大するにつれてコーティングの耐久性が
増すことがわかる。これらのデータはさらに、コーティングの量が同じ場合は、
高いCA/PEG比にて作製したコーティング(実施例16A〜16C)のほうが、低いCA/PEG
比にて作製したコーティング(実施例16D〜16U)より高い耐久性を有する、という
ことを示している。これらの結果と実施例15の結果とを合わせると、本発明のコ
ーティングが高い水透過性と高い強度を有していることがわかる。
【0147】 実施例17A〜17C 薬物含有組成物中に可溶化剤を組み込むと、薬物のバイオアベイラビリティが
高まることがある。本実施例は、ドラッグ2(セルトラリン)と共に有機酸を放出
するという本発明の本発明の有用性を示す。使用環境におけるセルトラリンの溶
解性を増大させるよう(したがって、バイオアベイラビリティを高めるよう)、可
溶化剤をセルトラリンと共に放出させるのが望ましい。
【0148】 実施例17A〜17Cにおいては、薬物含有組成物または水膨潤性組成物が、クエン
酸とフマル酸から選択される可溶化剤を含むようにして、本発明の剤形を作製し
た。これらの錠剤は実施例3Aに記載のように作製した(異なる点が、表A、B、お
よびCに記載されている)。実施例17Aにおいては、薬物含有組成物が15重量%のク
エン酸を含有した。実施例17Bにおいては、薬物含有組成物が7重量%のフマル酸
を含有した。実施例17Cにおいては、薬物含有組成物と水膨潤性組成物の両方が1
5重量%のクエン酸を含有した。
【0149】 USP酢酸ナトリウム緩衝液中にて直接試験法を使用して、錠剤の溶解試験をお
こなった。実施例17A〜Cに対する結果が表17.1と表17.2に示され、表Dにまとめ
られている。
【0150】
【表22】
【0151】
【表23】 実施例17Aと17Bの結果から、剤形中に可溶化剤を組み込むと、高い割合のセル
トラリン放出(それぞれ、12時間以内に91%および96%)が得られることがわかる。
可溶化剤を含有しない剤形(たとえば実施例14)と比較することにより、可溶化剤
は、薬物の放出プロフィールに悪影響を及ぼさないことがわかる。
【0152】 実施例17Cの結果は、クエン酸がセルトラリンとほぼ同じ速度で放出されたこ
とを示している(84%のクエン酸と94%のセルトラリンが12時間以内に放出)。さら
に、セルトラリンが放出されているときには常にクエン酸が放出されている。実
施例17A〜Cの放出試験時、錠剤付近の受容体溶液のpHは約3であり、このことは
、剤形中に有機酸を組み込むとpHが局所的に低くなるということを示している。
この試験から、薬物が放出される付近において使用環境が充分な量の可溶化剤を
含有していると、局所的に低いpHが得られ、したがって溶解薬物のより高い濃度
がもたらされ、このためバイオアベイラビリティが高まる、ということがわかる
【0153】 実施例18 本実施例は、二層錠剤からのカルプロフェン(ドラッグ6)のインビボ放出を示
す。ドラッグ6の溶解度はpH5.9において約0.015mg/mlである。実施例18の錠剤の
場合、薬物含有組成物は、12.6重量%のドラッグ6、52.4重量%のキシリタブ200、
28.8重量%のPEO(平均分子量600,000)、5.0重量%のエクスプロタブ、および1.2重
量%のステアリン酸マグネシウムを含み、水膨潤性組成物は、74.4重量%のエクス
プロタブ、24.6重量%の微晶質セルロース(アビセルpH200)、および1.0重量%のス
テアリン酸マグネシウムを含んだ。これらの錠剤は、13/32インチの標準的な丸
い凹形ツーリングを備えた、単一ステーションのマネスティf-プレス(Manesty f
-press)を使用して、直接的なブレンド・圧縮法によって作製した。これらの錠
剤に対し、薬物含有組成物が400mgを構成し、水膨潤性組成物が100mgを構成した
。これらの錠剤は50mgの活性薬物を含有した。次いで、7重量%の酢酸セルロース
、3重量%のPEG3350、5重量%の水、および85重量%のアセトンからなるコーティン
グ溶液で二層コアを被覆して11重量%(wt/wtコア)のコーティング重量を得、錠剤
のエッジに4つの1mMスリットを作製した。5匹の犬に対し、下記のようにインビ
ボ残留試験を行った: 錠剤1個を各犬に対して経口投与し、次いで50mlをチュー
ブ投与した。錠剤に対する糞便を排除し、リカバリタイム(recovery time)を記
録した。供給されていない残留薬物を残留物試験によって決定し、錠剤中に存在
する既知の初期薬物量から残留量を引くことによって薬物放出量を算出した。得
られた結果を表18.1に示す。
【0154】
【表24】 これらの錠剤に対し、さらに、残留溶解試験を使用してインビトロにて試験し
た。これらの試験は、USPタイプ2ディソエッテ中にて下記のような条件を使用し
て行った: 37℃, 100rpm, 0.05Mリン酸塩緩衝液, pH7.5。得られた結果を表18.2
に示す。
【0155】
【表25】 上記のデータは、本発明の剤形によるインビボ薬物の供給が満足できるもので
あることを示している。インビトロのデータとインビボのデータとの間に良好な
関係があることがわかる。
【0156】 実施例19 本実施例は、二層錠剤からのテニダップ(ドラッグ7)のインビボ供給を示す。
ドラッグ7の溶解度はpH7.4において約0.2mg/mlであり、pH3.7において0.002mg/m
lである。実施例19の錠剤の場合、薬物含有組成物は、12.5重量%のドラッグ7、3
7.5重量%のキシリタブ200、36.15重量%のPEO(平均分子量600,000)、12.5重量%の
エクスプロタブ、および1.25重量%のステアリン酸マグネシウムを含み、水膨潤
性組成物は、74.0重量%のエクスプロタブ、24.5重量%の微晶質セルロース(アビ
セルpH200)、0.5重量%のFD&Cレッド、および1.0重量%のステアリン酸マグネシウ
ムを含んだ。これらの錠剤は、単一ステーションのマネスティf-プレスにより、
直接的なブレンド・圧縮製造法を使用して作製した。これらの錠剤に対し、薬物
含有組成物が400mgを構成し、水膨潤性組成物が100mgを構成した。これらの錠剤
は50mgの活性ドラッグ7を含有した。次いで、7重量%の酢酸セルロース、3重量%
のPEG、5重量%の水、および85重量%のアセトンからなる噴霧溶液を使用して、フ
ロイント(Freund)HCT-30EPコーティングパンによって二層コアを被覆して10重量
%(wt/wtコア)のコーティング重量を得た。供給ポートを穴あけする代わりに、各
錠剤のエッジに4つのスリットを作製した。
【0157】 犬に対して、下記のようにインビボ残留試験を行った: 5匹の犬のそれぞれに
対し、後で識別できるように、6時間にわたって錠剤を(すなわち、2時間ごとに
1個の錠剤を)投与し、このとき50mlの水をチューブ投与した。錠剤に対する糞
便を排除し、リカバリタイムを記録した。錠剤は全て完全な状態で回収された(
すなわち、コーティング中にスプリットは認められなかった)。放出されていな
い薬物を錠剤から抽出することによって非供給薬物の量を求め、錠剤中に存在す
る既知の初期薬物量からこの非放出量を引くことによって放出された薬物量を決
定した。得られた結果を表19.1に示す。
【0158】
【表26】 上記のインビボ試験のほかに、薬物動力学的(PK)研究から残留物回収試験を下
記のように行った: それぞれの犬に錠剤1個を投与し、一定時間ごとに血液サン
プルを抜き取った。錠剤に対する糞便を排除し、リカバリタイムを記録した。供
給されなかった残留薬物を抽出によって求め、放出された薬物を前述のように算
出した。残量物のPK研究からの結果は前記の結果と一致しており、これらの結果
を表19.2に示す。
【0159】
【表27】 これらの錠剤をさらに、残留物溶解試験を使用してインビトロにて調べた。比
較のため、錠剤表面上の1つのスリットによる錠剤の溶解を示す。これらの試験
は、USPタイプ2ディソエッテを使用して下記の条件で行った: 900ml、pH7.5、リ
ン酸塩緩衝液、100rpm、37℃。得られた結果を表19.3に示す。
【0160】
【表28】 上記のデータは、本発明の剤形によるインビボの薬物供給が満足できるもので
あることを示している。インビトロのデータとインビボのデータとの間に良好な
関係が認められる。
【0161】 実施例20 本実施例は、薬物含有組成物中に、濃度増大用ポリマー、可溶化剤、および流
動化剤を含むことの有用性を示す。薬物含有組成物は、20重量%のドラッグ2、15
重量%の酒石酸(可溶化剤)、20重量%のHPMCAS(HPMCAS-LGグレード)(濃度増大用ポ
リマー)、29重量%のPEO(平均分子量600,000; ポリオックスWSR-205)(ポリマー連
行剤)、15重量%のキシリトール(キシリタブ200)(流動化剤)、および1重量%のス
テアリン酸マグネシウム(滑剤)を含んだ。薬物含有組成物を作製するために、ス
テアリン酸マグネシウム以外の成分を、チューブラ・ミキサー中で10分間ブレン
ドした。このブレンド物を、乳鉢と乳棒を使用して、イソプロピルアルコール/
水(85/15; v/v)の混合物と共に湿潤粒状化した。この湿潤粒状化物質を40℃のオ
ーブン中で一晩乾燥した。乾燥粒状物をフィッツパトリック・ハンマー・ミル(F
itzpatrick hammer mill)(モデルL1A)に3000rpmにて通し、0.065インチのスクリ
ーンを通して篩い分けした。この物質を再び、チューブラ・ミキサー中にて10分
ブレンドした。次いでステアリン酸マグネシウムを加え、さらに4分ブレンドし
た。
【0162】 水膨潤性組成物は、64.4重量%のPEO(平均分子量5百万; ポリオックスWSR凝集
剤)、30重量%の塩化ナトリウム、5重量%のHPMC(メトセルE5 LV Prem; 錠剤結合
剤)、0.1重量%の着色剤(レッドレーキ#40)、および0.5重量%のステアリン酸マグ
ネシウムを含んだ。水膨潤性組成物を作製するために、着色剤とステアリン酸マ
グネシウム以外の成分をツインシェル・ミキサー(twinshell mixer)中で20分ブ
レンドし、ハンマーミルを使用して粉砕し、0.098インチのスクリーンに通した
。得られた物質を再び、ツインシェル・ミキサー中で20分ブレンドした。着色剤
とステアリン酸マグネシウムを1分混合し、次いでこれをブレンド物に加えた。
これらの成分を、さらに4分ブレンドした。
【0163】 薬物含有組成物と水膨潤性組成物とを一緒にし、直接圧縮法を使用して錠剤化
してコアを作成した。薬物含有組成物の一部(441.5mg)を、標準的な丸い凹形の7
/16-インチダイを備えたf-プレス中に配置し、次いでアッパーパンチで穏やかに
平らにした。水膨潤性組成物の一部(227.5mg)を薬物含有組成物の層の上に置き
、圧縮した。f-プレス上のアッパーパンチとロアーパンチとの間の圧縮距離を、
得られるコアの硬度が11.4Kpになるまで調節した。こうして得られた二層コアは
、重量が669mgであり、トータルで13.2重量%のセルトラリン塩酸塩、9.9重量%の
酒石酸、13.2重量%のHPMCAS-LG、19.1重量%のPEO 600,000、9.9重量%のキシリト
ール、0.9重量%のステアリン酸マグネシウム、21.9重量%のPEO 5,000,000、10.2
重量%の塩化ナトリウム、1.7重量%のHPMC、および0.03重量%の着色剤を含んだ。
これら錠剤のアッセイにより、セルトラリン塩酸塩が82mgであること、すなわち
活性セルトラリンが73mgAであることがわかった。
【0164】 これらの錠剤を、ベクターLDCS-20パンコーターにて高水透過性コーティング
で被覆した。コーティング溶液は、CA 398-10、ポリエチレングリコール(PEG335
0)、水、およびアセトンを7/3/5/85の重量比にて含有した。加熱乾燥空気(40cfm
)を、パンコーターの出口温度が25℃に保持されるように調節した。20psiの窒素
を使用して噴霧ノズルからのコーティング溶液を霧化した(ノズル-ベッドの距離
は2インチ)。パンを20rpmにてタンブルした。最終的な乾燥コーティング重量は
、錠剤コアの重量の20.4重量%となった。錠剤の表面に2mMのポートを1つ、レー
ザー光線で穴あけした。被覆された錠剤の総重量は805mgであった。
【0165】 インビトロの残留薬物放出試験を行った。胃緩衝液(10mMのHCl、100mMのNaCl
、pH2.0、261mOsm/kg)を収容する撹拌状態のUSPタイプ2ディソエッテ・フラスコ
中に錠剤を2時間置き、次いで腸緩衝液(6mMのKH2PO4、64mMのKCl、35mMのNaCl、
pH7.2、210mOsm/kg)に移した。両方のフラスコにおいて、全ての表面が溶液にさ
らされるよう、剤形をワイヤ支持体中に入れて錠剤をフラスコの底部から離れた
状態に保持し、50rpmで回転するパドルを使用して溶液を撹拌した。ある時間間
隔にて1個の錠剤を取り出し、回収溶液〔エタノール/水(50/50(wt/wt)〕の中に
入れて、錠剤中に残量している薬物を溶解した。残留薬物を、フェノメネックス
・ウルトラカーブ5 ODS 20カラムを使用するHPLCによって分析した。移動相は、
アセトニトリル中35容量%のTEA-酢酸緩衝液(3.48mlのトリエタノールアミンと2.
86mlの氷酢酸を1リットルのHPLCグレードのH2O中に溶解して得られる溶液)を含
んだ。230nmでの吸光度と既知薬物標準の吸光度とを比較することによって薬物
の濃度を算出した。錠剤中の初期薬物量(73mgA)から錠剤中の残留量を引いて、
各時間間隔における放出量を求めた。得られた結果が表20に示され、表Dにまと
められている。
【0166】
【表29】 上記のデータから、4重量%Aの薬物が2時間以内に放出されること、そして74重
量%の薬物が8時間以内に放出されることがわかる。20時間後には、錠剤中に含ま
れている薬物の89%が放出された。放出試験時の錠剤の観察から、試験の継続時
間中にわたってコーティングが完全性を保持したままであることがわかった。
【0167】 比較のため、流動化剤キシリトールを含まないこと以外は同一の錠剤を作製し
た。これら錠剤の溶解試験時に、4個の錠剤のうちの1つのコーティングが割裂
していることが観察された。このように、製剤中に流動化剤を組み込むと(実施
例20のように)、薬物含有組成物が供給ポートを介して供給される圧力が低下し
た。
【0168】
【表30】
【0169】
【表31】
【0170】
【表32】
【0171】
【表33】
【0172】
【表34】
【0173】
【表35】
【0174】
【表36】
【0175】
【表37】
【0176】
【表38】 明細書中に使用されている用語や表現は説明のためのものであって、これらの
用語や表現によって本発明が限定されることはない。またこうした用語や表現が
使用されていても、開示説明されている特徴を有する等価物またはそれらの一部
が除外されることはない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ規定さ
れ、そして限定されることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の剤形の代表的な実施態様の断面を示している概略図である。
【手続補正書】
【提出日】平成14年8月8日(2002.8.8)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE,TR),OA(BF ,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW, ML,MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,G M,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ, MD,RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM, AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,B Z,CA,CH,CN,CR,CU,CZ,DE,DK ,DM,DZ,EE,ES,FI,GB,GD,GE, GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,J P,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR ,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK, MN,MW,MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,R O,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ ,TM,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ, VN,YU,ZA,ZW (72)発明者 チドロー,マーク・ブライアン アメリカ合衆国オレゴン州97701,ベンド, チェロキー・レイン 63274 (72)発明者 キュラトロ,ウィリアム・ジョン アメリカ合衆国コネチカット州06340,グ ロトン,イースタン・ポイント・ロード, ファイザー・グローバル・リサーチ・アン ド・ディベロプメント (72)発明者 フリーセン,ドウェイン・トーマス アメリカ合衆国オレゴン州97702,ベンド, カーラント・ウェイ 60779 (72)発明者 スミス,ケリー・リンカーン アメリカ合衆国オレゴン州97701,ベンド, ジョンソン・ロード 63570 (72)発明者 ソンブレ,アヴィナシュ・ゴーヴィンド アメリカ合衆国コネチカット州06340,グ ロトン,イースタン・ポイント・ロード, ファイザー・グローバル・リサーチ・アン ド・ディベロプメント Fターム(参考) 4C076 AA42 AA96 BB01 CC17 EE23H EE32 EE33H EE38 FF31

Claims (35)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コアと前記コアを取り囲むコーティングとを含む制御放出薬
    物剤形であって、 (a) 前記コアが薬物含有組成物と水膨潤性組成物とを含んでいて、前記コア
    内においてそれぞれが別個の部分を占めており; (b) 前記薬物含有組成物が、薬物と膨潤剤と薬物連行剤とを含み; (c) 前記コーティングが水透過性且つ水不溶性であって、それを貫く少なく
    とも1つの供給ポートを有し; (d) 前記膨潤剤が少なくとも3.5の膨潤比を有し; そして (e) 前記薬物連行剤が、前記薬物含有組成物の少なくとも15重量%を構成する
    ; 前記制御放出薬物剤形。
  2. 【請求項2】 コアと前記コアを取り囲むコーティングとを含む制御放出薬
    物剤形であって、 (a) 前記コアが薬物含有組成物と水膨潤性組成物とを含んでいて、前記コア
    内においてそれぞれが別個の部分を占めており; (b) 前記薬物含有組成物が薬物と薬物連行剤とを含み; (c) 前記水膨潤性組成物が膨潤剤と錠剤化用助剤とを含み; (d) 前記コーティングが水透過性且つ水不溶性であって、それを貫く少なく
    とも1つの供給ポートを有し; (e) 前記薬物含有組成物と前記水膨潤性組成物との質量比が少なくとも1.5の
    値を有し; (f) 前記水膨潤性組成物が少なくとも3.5の膨潤比を有し; そして (g) 前記コアが、錠剤化の後にて少なくとも3Kp/cm2の強度を有する; 前記制御放出薬物剤形。
  3. 【請求項3】 コアと前記コアを取り囲むコーティングとを含む制御放出薬
    物剤形であって、 (a) 前記コアが薬物含有組成物と水膨潤性組成物とを含んでいて、前記コア
    内においてそれぞれが別個の部分を占めており; (b) 前記薬物含有組成物が薬物と薬物連行剤とを含み; そして (c) 前記コーティングが水透過性且つ水不溶性であって、それを貫く少なく
    とも1つの供給ポートを有しており、少なくとも1.0×10-3gm/cm2・hrの水フラッ
    クス(40/75)と少なくとも1Kp/cm2の耐久性とを有する; 前記制御放出薬物剤形。
  4. 【請求項4】 コアと前記コアを取り囲むコーティングとを含む制御放出薬
    物剤形であって、 (a) 前記コアが薬物含有組成物と水膨潤性組成物とを含んでいて、前記コア
    内においてそれぞれが別個の部分を占めており; (b) 前記薬物含有組成物が薬物と薬物連行剤とを含み; そして (c) 前記コーティングが水透過性且つ水不溶性であって、それを貫く少なく
    とも1つの供給ポートを有しており、多孔質であり、そして溶媒、セルロース系
    ポリマー、および非溶媒を含む実質的に均一な溶液から形成されている; 前記制御放出薬物剤形。
  5. 【請求項5】 コアと前記コアを取り囲むコーティングとを含む制御放出薬
    物剤形であって、 (a) 前記コアが薬物含有組成物と水膨潤性組成物とを含んでいて、前記コア
    内においてそれぞれが別個の部分を占めており; (b) 前記薬物含有組成物が薬物、薬物連行剤、および流動化剤を含み、前記
    流動化剤が少なくとも30mg/mlの溶解度を有していて、前記薬物含有組成物を少
    なくとも10重量%含み; そして (c) 前記コーティングが水透過性且つ水不溶性であって、それを貫く少なく
    とも1つの供給ポートを有しており; 前記低溶解性薬物の少なくとも約70重量%が、使用環境に導入された後の約12時
    間以内に前記使用環境に放出される、前記制御放出薬物剤形。
  6. 【請求項6】 コアと前記コアを取り囲むコーティングとを含む制御放出薬
    物剤形であって、 (a) 前記コアが薬物含有組成物と水膨潤性組成物とを含んでいて、前記コア
    内においてそれぞれが別個の部分を占めており; (b) 前記薬物含有組成物が薬物、可溶化剤、および薬物連行剤を含み; そし
    て (c) 前記コーティングが水透過性且つ水不溶性であって、それを貫く少なく
    とも1つの供給ポートを有している; 前記制御放出薬物剤形。
  7. 【請求項7】 前記膨潤剤が、クロスカルメロースナトリウムとスターチグ
    リコール酸ナトリウムからなる群から選択されるイオン性膨潤剤である、請求項
    1記載の剤形。
  8. 【請求項8】 前記薬物含有組成物が、クロスカルメロースナトリウムとス
    ターチグリコール酸ナトリウムからなる群から選択されるイオン性膨潤剤をさら
    に含む、請求項2〜6のいずれか一項に記載の剤形。
  9. 【請求項9】 前記コアが可溶化剤を含み、前記薬物含有組成物が濃度増大
    用ポリマーをさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の剤形。
  10. 【請求項10】 前記薬物含有組成物が濃度増大用ポリマーをさらに含む、
    請求項6記載の剤形。
  11. 【請求項11】 前記薬物含有組成物が可溶化剤をさらに含む、請求項1〜5
    のいずれか一項に記載の剤形。
  12. 【請求項12】 前記可溶化剤が有機酸であり、前記有機酸が存在すると前
    記薬物の溶解性が増大する、請求項11記載の剤形。
  13. 【請求項13】 前記可溶化剤が有機酸であり、前記有機酸が存在すると前
    記薬物の溶解性が増大する、請求項6記載の剤形。
  14. 【請求項14】 前記薬物含有組成物が流動化剤をさらに含む、請求項1〜4
    および6のいずれか一項に記載の剤形。
  15. 【請求項15】 前記流動化剤が有機酸と糖からなる群から選択される、請
    求項14記載の剤形。
  16. 【請求項16】 前記流動化剤が有機酸と糖からなる群から選択される、請
    求項5記載の剤形。
  17. 【請求項17】 前記水膨潤性組成物の前記膨潤剤が、スターチグリコール
    酸ナトリウムとクロスカルメロースナトリウムからなる群から選択される、請求
    項2記載の剤形。
  18. 【請求項18】 前記水膨潤性組成物が、スターチグリコール酸ナトリウム
    とクロスカルメロースナトリウムからなる群から選択される膨潤剤をさらに含む
    、請求項1および請求項3〜6のいずれか一項に記載の剤形。
  19. 【請求項19】 前記水膨潤性組成物が少なくとも3.5の膨潤比を有する、
    請求項1、3、4、5、または6のいずれか一項に記載の剤形。
  20. 【請求項20】 前記薬物含有組成物と前記水膨潤性組成物との質量比が少
    なくとも1.5である、請求項1、3、4、5、または6のいずれか一項に記載の剤形。
  21. 【請求項21】 前記薬物が、1〜8のpH値を有する水溶液中にて20mg/mlの
    最大溶解度を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の剤形。
  22. 【請求項22】 前記コーティングが少なくとも1.0×10-3gm/cm2-hrの水フ
    ラックスを有する、請求項1、2、4、5、または6のいずれか一項に記載の剤形。
  23. 【請求項23】 前記コーティングが多孔質であって、溶媒、親水性のセル
    ロース系ポリマー、および非溶媒を含んだ均一溶液から形成される、請求項1〜3
    および請求項5〜6のいずれか一項に記載の剤形。
  24. 【請求項24】 前記コーティングが多孔質であって、無孔質形態での同じ
    コーティング物質における乾燥状態密度の0.9倍未満の乾燥状態密度を有する、
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の剤形。
  25. 【請求項25】 前記剤形を使用環境に導入した後に、前記薬物の少なくと
    も約70重量%が、約12時間以内に前記使用環境に放出される、請求項1、2、3、4
    、または6のいずれか一項に記載の剤形。
  26. 【請求項26】 前記薬物含有組成物が、 (a) イオン化可能なセルロース系ポリマー; (b) イオン化不能なセルロース系ポリマー; および (c) ヒドロキシル、アルキルアシルオキシ、および環状アミドからなる群か
    ら選択される置換基を有するビニルポリマーとビニルコポリマー; からなる群から選択される濃度増大用ポリマーをさらに含む、請求項1〜6のいず
    れか一項に記載の剤形。
  27. 【請求項27】 前記低溶解性薬物が非晶質分散液の形態をとっており、前
    記非晶質分散液は、低溶解性薬物を濃度増大用ポリマー中に混合して得られる固
    体分散液である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の剤形。
  28. 【請求項28】 コアと前記コアを取り囲むコーティングとを含む制御放出
    薬物剤形であって、 (a) 前記コアが薬物含有組成物と水膨潤性組成物とを含んでいて、前記コア
    内においてそれぞれが別個の部分を占めており; (b) 前記薬物含有組成物が、低溶解性薬物と薬物連行剤とを含み; (c) 前記コーティングが水透過性且つ水不溶性であって、それを貫く少なく
    とも1つの供給ポートを有し; そして (d) 前記低溶解性薬物が非晶質分散液の形態をとっている; 前記制御放出薬物剤形。
  29. 【請求項29】 ヒト患者を含めて、障害に対する処置を必要とする哺乳動
    物に、治療学的に有効量の薬物を、請求項1に記載の剤形にて投与することを含
    む、障害を処置するための方法。
  30. 【請求項30】 ヒト患者を含めて、障害に対する処置を必要とする哺乳動
    物に、治療学的に有効量の薬物を、請求項2に記載の剤形にて投与することを含
    む、障害を処置するための方法。
  31. 【請求項31】 ヒト患者を含めて、障害に対する処置を必要とする哺乳動
    物に、治療学的に有効量の薬物を、請求項3に記載の剤形にて投与することを含
    む、障害を処置するための方法。
  32. 【請求項32】 ヒト患者を含めて、障害に対する処置を必要とする哺乳動
    物に、治療学的に有効量の薬物を、請求項4に記載の剤形にて投与することを含
    む、障害を処置するための方法。
  33. 【請求項33】 ヒト患者を含めて、障害に対する処置を必要とする哺乳動
    物に、治療学的に有効量の薬物を、請求項5に記載の剤形にて投与することを含
    む、障害を処置するための方法。
  34. 【請求項34】 ヒト患者を含めて、障害に対する処置を必要とする哺乳動
    物に、治療学的に有効量の薬物を、請求項6に記載の剤形にて投与することを含
    む、障害を処置するための方法。
  35. 【請求項35】 ヒト患者を含めて、障害に対する処置を必要とする哺乳動
    物に、治療学的に有効量の薬物を、請求項28に記載の剤形にて投与することを含
    む、障害を処置するための方法。
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