JP2003347565A - 光起電力素子 - Google Patents

光起電力素子

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carbon nanotubes
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遵 塚本
Junji Sanada
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Abstract

(57)【要約】 【課題】光起電力素子の光電変換効率の高い重合体を供
給する。 【解決手段】カーボンナノチューブと共役系重合体とか
らなり、該カーボンナノチューブを該共役系重合体に対
し0.01%以上1%以下の重量分率で含む共役系重合
体コンポジット層が、光透過性の第1の電極薄膜と第2
の電極薄膜に挟まれた構造からなる光起電力素子。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カーボンナノチュ
ーブと共役系重合体からなる共役系重合体コンポジット
を半導体素材として用いた光起電力素子に関する。
【0002】
【従来の技術】太陽電池は環境に優しい電気エネルギー
源として、現在深刻さを増すエネルギー問題に対して有
力なエネルギー源と注目されている。従来、太陽電池の
光起電力素子の半導体素材としては結晶シリコン、ガリ
ウムヒ素、非晶性シリコンなどの無機化合物が使用され
ている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの無機
半導体を用いて製造される太陽電池は火力発電や原子力
発電などの発電方式と比べて、コストが高いためにまだ
十分に普及されていない。コスト高の要因は主として、
真空かつ高温下で半導体薄膜を製造するというプロセス
にある。したがって、安価な製造方法が開発されれば大
幅なコスト低減が可能となり、太陽電池の市場が急激に
拡大できることが期待される。製造プロセスの大幅なコ
スト削減が期待される半導体素材として、共役系重合体
や有機結晶などの有機半導体や有機色素が検討されてい
る。
【0004】共役系重合体は半導体特性を有することか
ら従来のシリコンや化合物半導体に替わる有機半導体素
材として注目されている。このような共役系重合体が半
導体素材として使用できれば、素材の安価さに加えて、
素子の製造が真空プロセスを必要とせず常圧下での塗布
技術や印刷技術を用いて可能となるので、大幅なコスト
削減が期待される。また、有機半導体は塗布により半導
体素子ができるため大面積化が必要な光起電力素子には
有利である。しかし、共役系重合体に代表される有機太
陽電池では従来の無機半導体と比べて光電変換効率が低
いことが最大の課題であり、まだ実用化には至っていな
い。これは主として有機半導体ではキャリアを捕獲する
トラップが形成されやすく、このため生成したキャリア
がトラップに捕獲されやすいためキャリアの移動度が遅
いことと、入射光によって生成された電子と正孔が分離
しにくいエキシトンという束縛状態が形成されるためで
ある。
【0005】すなわち、半導体素材には一般にその素材
が有するキャリア(電子、正孔)に高い移動度μが要求
されるが、共役系重合体では従来の無機結晶半導体や非
晶質シリコンと比べて移動度が低いという欠点と生成し
た電子と正孔が分離しにくいという欠点がある。このた
め、共役系重合体の非晶領域や共役系重合体鎖間でのキ
ャリアの散乱やトラップによるキャリアの捕捉を抑制し
て移動度を向上できる手段と、生成した電子と正孔をエ
キシトンからうまく分離する手段を見出すことが、有機
半導体素材による太陽電池を実用化するための鍵とな
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成するため
に、本発明は基本的には下記の構成からなる。カーボン
ナノチューブと共役系重合体とからなり、該カーボンナ
ノチューブを該共役系重合体に対し0.01%以上1%
以下の重量分率で含む共役系重合体コンポジット層が、
光透過性の第1の電極薄膜と第2の電極薄膜に挟まれた
構造からなる光起電力素子。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明者らは共役系重合体を半導
体として用いた光起電力素子の変換効率を高める方法に
ついて鋭意検討した結果、本発明に到った。すなわち、
共役系重合体にカーボンナノチューブを添加することに
よって得られるカーボンナノチューブ共役系重合体コン
ポジットを半導体素材として利用することによって変換
効率が向上できることを見出した。以下、本発明につい
て詳述する。
【0008】1.カーボンナノチューブとその合成方法 カーボンナノチューブ(CNT)はアーク放電法、化学
気相成長法(CVD法)、レーザー・アブレーション法
等によって作製されるが、いずれの方法も本発明に使用
される。カーボンナノチューブには1枚の炭素膜(グラ
ッフェン・シート)が円筒筒状に巻かれた単層カーボン
ナノチューブ(SCTN)と、2枚以上の複数のグラッ
フェン・シートが同心円状に巻かれた多層カーボンナノ
チューブ(MWCNT)とがあるが、本発明にはSWC
NT、MWCNTのいずれも使用されるし、両者の混合
物であっても良い。なかでもSWCNTは直径が細いた
め(すなわちCNT1本当たりの体積が小さいため)、
微分散が良好にできればCNTのコンポジット中の体積
密度(コンポジット一定体積中に占めるCNTの体積)
が同じであっても、MWCNTよりもCNTのコンポジ
ット中の数密度(コンポジット一定体積中に含まれるC
NTの個数)を増やすことができ、本発明には好まし
い。SWCNTやMWCNTを上記の方法で作製する際
には、同時にフラーレンやグラファイト、非晶性炭素が
副生産物として生成され、またニッケル、鉄、コバル
ト、イットリウムなどの触媒金属も残存するので、これ
らの不純物を精製することが好ましい。
【0009】また、本発明では共役系重合体コンポジッ
ト半導体層を挟む電極間の短絡を防ぐために、短いCN
Tを使用することが望ましい。本発明で使用されるCN
Tの数平均長さは好ましくは2μm以下、より好ましく
は0.5μm以下で使用される。CNTは一般に紐状に
形成されるので、短繊維状にカットすることが望まし
い。以上の不純物の精製や短繊維へのカットには、硝
酸、硫酸などによる酸処理とともに超音波処理が有効で
あり、またフィルターによる分離を併用することは純度
を向上させる上でさらに好ましい。
【0010】なお、カットしたCNTだけではなく、あ
らかじめ短繊維状に作製したCNTも本発明により好ま
しく使用される。このような短繊維状CNTは、基板上
に鉄、コバルトなどの触媒金属を坦持させ、その表面に
CVD法により700〜900℃で炭素化合物を熱分解
してCNTを気相成長させることによって基板表面に垂
直方向に配向した形状で得られる。このようにして作製
された短繊維状CNTは基板から剥ぎ取るなどの方法で
取り出すことができる。また、短繊維状CNTはポーラ
スシリコンのようなポーラスな支持体や、アルミナの陽
極酸化膜上に触媒金属を担持させ、その表面にCNTを
CVD法にて成長させることもできる。触媒金属を分子
内に含む鉄フタロシアニンのような分子を原料とし、ア
ルゴン/水素のガス流中でCVDを行うことによって基
板上にCNTを作製する方法でも配向した短繊維状のC
NTを作製することもできる。さらには、SiC単結晶
表面にエピタキシャル成長法によって配向した短繊維状
CNTを得ることもできる。
【0011】本発明で用いられるCNTの直径は特に限
定されないが、数平均で1nm以上、100nm以下、
より好ましくは50nm以下が良好に使用される。
【0012】2.共役系重合体 本発明では共役系重合体コンポジットには共役系重合体
が用いられる。このような共役系重合体としてはポリチ
オフェン系重合体、ポリピロール系重合体、ポリアニリ
ン系重合体、ポリアセチレン系重合体、ポリフェニレン
系重合体、ポリフェニレンビニレン系重合体、ポリチエ
ニレンビニレン系重合体などが挙げられる。
【0013】上記の共役系重合体のなかでも本発明に
は、ポリチオフェン系重合体、ポリフェニレンビニレン
系重合体が特に好ましく使用される。又、前記共役系重
合体においては、フェニレン基はパラ位で、チオフェニ
レン基は2,5位で結合して共役系重合体を形成してい
る。
【0014】ポリチオフェン系重合体とはポリチオフェ
ン構造の骨格を持つ共役系重合体あるいはそれに側鎖が
付いた構造を有するものである。具体的にはポリ−3−
メチルチオフェン、ポリ−3−ブチルチオフェン、ポリ
−3−ヘキシルチオフェン、ポリ−3−オクチルチオフ
ェン、ポリ−3−デシルチオフェンなどのポリ−3−ア
ルキルチオフェン、ポリ−3−メトキシチオフェン、ポ
リ−3−エトキシチオフェン、ポリ−3−ドデシルオキ
シチオフェン、などのポリ−3−アルコキシチオフェ
ン、ポリ−3−メトキシ−4−メチルチオフェン、ポリ
−3−ドデシルオキシ−4−メチルチオフェン、などの
ポリ−3−アルコキシ−4−アルキルチオフェンが挙げ
られる。
【0015】ポリフェニレンビニレン系重合体とは、フ
ェニレン環とビニレン基が交互に連結したポリフェニレ
ンビニレン構造の骨格を持つ共役系重合体あるいは前者
の環および/または後者の基に置換基が付加したもので
あり、特にフェニレン環の2、5位に置換が付加したも
のが好ましく用いられる。例えば、ポリ(2−メトキシ
−5−ドデシルオキシ−p−フェニレンビニレン)、ポ
リ(2−メトキシ−5−(3’,7’−ジメチルオクチ
ルオキシ)−p−フェニレンビニレン)、ポリ(2−メ
トキシ−5−(2’−エチルヘキソキシ−p−フェニレ
ンビニレン)、ポリ(2,5−ビスオクチルオキシ−p
−フェニレンビニレン)などが挙げられる。
【0016】また、本発明の共役系重合体とは必ずしも
高分子量である必要はなく、共役系からなるオリゴマで
あっても良い。更には、本発明の効果に支障がない限
り、異なる共役系重合体を混合したものであっても、ラ
ンダム、ブロック、及び/又はグラフト共重合体として
も良い。
【0017】尚、前記共役系重合体コンポジットには本
発明の効果を妨げない限り、CNT製造時に使用される
金属触媒やCNT製造工程中に副生成物として生じるC
NT以外の炭素体等が含まれていても良い。
【0018】3.分散の状態と方法 本発明では共役系重合体にカーボンナノチューブを適当
な溶媒中で分散することによって共役系重合体コンポジ
ット溶液を調製し、該共役系重合体コンポジット溶液を
塗布することにより本発明の共役系重合体コンポジット
層を得ることができる。ここで使用される溶媒としては
メタノール、トルエン、キシレン、クロロホルムなど直
鎖状共役系重合体が可溶なものであれば好ましく使用さ
れる。このようにして得られた溶液に、好ましくは超音
波洗浄機等により超音波を数時間、好ましくは約20時
間照射した後、1日程度放置して塗液を得ることができ
る。上記の共役系重合体は溶液状態でCNTを良好に分
散するだけでなく、特にSWCNTでは束状に凝集した
CNTを解きながら分散させるという特長も備えてい
る。
【0019】一般にSWCNTは製造された状態では束
状に凝集しているが、本発明のコンポジットではCNT
がこの束状態から解かれて分散されることが移動度は向
上させる上で好ましい。一般にSWCNTを共役系重合
体に分散させる場合にはScience誌vol.282,p95(1998)
にも見られるように、SWCNTに官能基を付加させる
等の方法により化学修飾を施すことによって分散性を付
与している。しかし、CNTに化学修飾を施すとCNT
を構成するπ共役系が破壊されやすいので、CNT本来
の特性が損なわれるという課題がある。一方、共役系重
合体として共役系高分子を用いる本発明ではこのような
化学修飾を特に施さなくて重合体中に分散が可能であ
る。
【0020】本発明の共役系重合体コンポジットにおい
て使用されるカーボンナノチューブの量は、共役系重合
体に対しカーボンナノチューブを重量分率で0.01%
以上1%以下の範囲、より好ましくは0.01%以上
0.1%以下で混合することが重要である。この範囲の
添加によって移動度が大きく増大させることができる。
すなわち、共役系重合体分子間または結晶子(結晶化し
た部分のドメイン)などドメインの間をキャリアが移動
するに際し、共役系重合体間やドメイン間の構造の乱れ
によってキャリアがトラップされたり、散乱されるた
め、外部に観測される移動度は本来共役系重合体が有す
る移動度より大きく低下している、一方、カーボンナノ
チューブを適度に含む共役系重合体では、共役系重合体
間やドメイン間を移動度の高いカーボンナノチューブが
橋渡しするため、高移動度が得られると考えられる。
【0021】しかし、1%を越えてカーボンナノチュー
ブを混合すると、カーボンナノチューブ間の接触する割
合がふえ、共役系重合体の導電性が急激に増加して金属
状態に近づくため光起電力素子の電極間で短絡が生じる
ため半導体素材として利用することができない。一方、
0.01%より少ないと橋渡しする確率が少ないため移
動度を向上させる効果が少ない。従って本発明では共役
系重合体に対するカーボンナノチューブの量は重量分率
で0.01%以上1%以下、とくに0.01%以上0.
1%以下の範囲が好ましい。
【0022】特に、該共役系重合体コンポジットの励起
光により生成する蛍光スペクトルにおける最大強度P1
と、カーボンナノチューブを含まない場合の該共役系重
合体の蛍光スペクトルにおける最大強度P0との蛍光強
度比率(P1/P0)が0.5となる、該共役系重合体に
対するカーボンナノチューブの重量分率(蛍光強度1/
2減重量分率)があり、かつ該蛍光強度1/2減重量分
率以上の重量分率で、カーボンナノチューブを含むこと
が好ましい。言い換えれば、蛍光強度比率(P 1/P0
が0.5以下となる重量分率でカーボンナノチューブが
共役系重合体コンポジットに含まれることが好ましい。
但し、上記の蛍光強度比率の測定の際して、比較すべき
1とP0を測定する試料の厚みは同じ一定厚みの条件で
行う。なお、より好ましくは、蛍光強度比率(P1
0)が0.2となる蛍光強度4/5減重量分率を有す
ることである。
【0023】前記蛍光の減少は、励起光により生じた電
子と正孔がエキシトンを形成する割合が減少しているた
めであり、従って電荷分離が向上していることを示して
おり、蛍光強度は少ない方が好ましい。本発明では、分
散したカーボンナノチューブが励起光により生成した電
子や正孔を効率よく分離するものである。カーボンナノ
チューブの重量分率が共役系重合体に対し0.01%以
上1%以下の範囲内であるならば、カーボンナノチュー
ブの重量分率が大きいほど、蛍光強度比率(P 1/P0
が低く、従って電荷分離が良好となる。
【0024】4.蛍光強度の測定方法 上記の方法で調整された共役系重合体コンポジット溶液
をガラス基板に塗布して均一な膜厚の共役系重合体コン
ポジット薄膜を形成する。次に、この共役系重合体コン
ポジット薄膜の光吸収スペクトルを分光光度計で測定す
ることによって吸収極大を示す波長領域を設定する。蛍
光分光光度計を用いて上記共役系重合体コンポジット薄
膜をこの波長領域にある任意の波長を選んでもよいが、
この中で吸収極大となる付近の一定波長で励起して発光
する蛍光の強度スペクトルを測定することが、精度は高
く、好ましい。このようにして得られた蛍光強度スペク
トルにおいて、前記コンポジットの最大蛍光強度P
1と、カーボンナノチューブを含まない共役系重合体の
最大蛍光強度P0を測定して蛍光強度比率(P1/P0
を求める。
【0025】5.光起電力素子の作製方法と評価方法 上記の方法で合成された共役系重合体コンポジットを用
いた光起電力素子の製造方法を説明する。先ず、スパッ
タリング装置を用いてガラス基板上に酸化インジウムや
金などの電極膜を作製する。次に、この電極上にスピナ
ーなどを用いて上述の方法で調製した共役系重合体コン
ポジット溶液を塗布して均一な膜厚の共役系重合体コン
ポジット薄膜を形成する。共役系重合体コンポジット膜
の厚みは1μmから50nmが好ましい。共役系重合体
コンポジット膜形成後、該共役系重合体薄膜の上にでき
るだけ光が透過するように薄い金属アルミニウム薄膜を
スパッタリング装置で形成する。
【0026】このようにして作製された光起電力素子を
シールドボックス中に置き、先ず暗状態で電圧を印加し
ながらで電圧−電流特性を測定する。次に、該シールド
ボックス中にあらかじめ設置されていた光照射光源を灯
して、光起電力素子に光照射しながら電圧−電流(明電
流)特性を測定する。
【0027】6.電極薄膜とその設置方法 本発明の光起電力素子においては、前記共役系重合体コ
ンポジット層の一方の面に光透過性の第1の電極薄膜、
片方の面には第2の電極薄膜を有するものである。
【0028】光透過性の第1の電極薄膜の光透過性は、
共役系重合体コンポジット層に入射光が透過して起電力
が発生すれば特に限定されるものではない。又、電極薄
膜の厚さは、光透過性と導電性とを有する範囲で有れば
特に限定されず、電極薄膜素材によって異なるが、好ま
しくは20〜300nmである。第2の電極薄膜は導電
性が有れば必ずしも透明性は必要ではなく、従って厚み
も限定されない。
【0029】電極材料としては、第1又は第2の電極薄
膜のいずれか一方には、仕事関数の小さな導電性素材、
もう一方には仕事関数の大きな導電性素材を使用するこ
とが好ましい。仕事関数の小さな導電性素材としてはア
ルカリ金属やアルカリ土累金属、具体的には、リチウ
ム、マグネシウム、カルシウム等が使用される。又、錫
やアルミニウム等も好ましく用いられる。更に又、上記
の金属からなる合金や上記の金属の積層体からなる素材
も電極薄膜として好適である。もう一方の仕事関数の大
きな導電性素材としては、金、白金、クロム、ニッケ
ル、インジウム・錫酸化物等が好ましく用いられる。
【0030】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体
的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定さ
れるものではない。
【0031】実施例1 まず、100mLのフラスコの中にCNT(単層カーボ
ンナノチューブ:サイエンスラボラトリーズ製、純度9
5%)を1mg入れ、クロロホルム50mL加え、超音
波洗浄機を用いて1時間分散した。次に、共役系高分子
としてポリ−3−ヘキシル−2,5−チオフェン(アル
ドリッチ製、分子量:Mw20000)を1g加えてさ
らに超音波で5時間分散し、ポリチオフェン系重合体コ
ンポジット溶液(共役系重合体に対するCNTの比率
0.1重量%)とした。
【0032】一方、ガラス基板上に3mm×30mmス
トライプ状の酸化インジウム層を100nmの厚みで、
マスクを用いてスパッタリング法により形成した。次
に、この基板上に前記の共役系重合体コンポジット溶液
をスピナーを用いて塗布し0.2μm厚み(前記塗布し
た厚みは乾燥後の厚みである、以下も場合も同じ)の共
役系重合体コンポジット層を形成した。その後、該共役
系重合体コンポジット層上にアルミニウム層を40nm
の厚さでスパッタリングにより形成した。この時には、
あらかじめストライプ状に形成された酸化インジウム層
と直交するように、マスクをして上記インジウムのスト
ライプと同様の寸法・形状にアルミニウム層を形成し
た。これら上下の電極から電極を取り出し、光電変換素
子を作製した。
【0033】次に、このストライプ状の酸化インジウム
層とアルミニウム層が交差する3mm×3mm光電変換
素子の部分に光を照射しながら上下の電極からヒューレ
ット・パッカード社製ボルテージソース/ピコアンメー
ターを用いて電圧電流特性を評価した。光照射には顕微
鏡用の白色光源を用い、この時の照射強度は10mW/
cm2であった。この時、光照射時の短絡電流は4μA
/cm2の電流が認められた。また照射時の解放電圧は
約0.5Vであった。
【0034】つぎに、上記の0.1重量%カーボンナノ
チューブを含む共役系重合体コンポジット膜の蛍光強度
を評価するために、共役系重合体コンポジット溶液をガ
ラスに滴下し、スピナーを用いて厚さ1μmの薄膜を形
成した。また。比較のためにカーボンナノチューブを含
まないポリ−3−ヘキシルチオフェンのみの薄膜も同様
の方法でガラス基板上に作製した。これらの薄膜に45
0nmの励起光を照射し、蛍光スペクトルを蛍光分光光
度計計で測定した結果を図1に示す。図1から0.1%
重量%カーボンナノチューブで蛍光強度がカーボンナノ
チューブを含まない場合と比較して1/2以下になって
いた。
【0035】比較例1 ポリ−3−ヘキシル−2,5−チオフェンにカーボンナ
ノチューブを分散しなかった以外は実施例1と全く同様
の方法で光電変換素子を作製した。次に、実施例1と同
様にストライプ状の酸化インジウム層とアルミニウム層
が交差する3mm×3mm光電変換素子の部分に光を照
射しながら上下の電極からヒューレット・パッカード社
製ボルテージソース/ピコアンメーターを用いて電圧電
流特性を評価した。光照射には顕微鏡用の白色光源を用
い、この時の照射強度は10mW/cm2であった。こ
の時、 光照射時の短絡電流は30nA/cm2であり、
カーボンナノチューブを分散した実施例1と比較して約
100の1以下であった。また照射時の解放電圧は約
0.3Vであった。
【0036】実施例2 実施例1のポリ−3−ヘキシル−2,5−チオフェンの
代わりにポリ(2−メトキシ−5−(3’,7’−ジメ
チルオクチルオキシ)−p−フェニレンビニレン)(ア
ルドリッチ製)を用いて共役系重合体コンポジット溶液
を作製した。すなわち、まず、100mLのフラスコの
中にCNT(単層カーボンナノチューブ:サイエンスラ
ボラトリーズ製、純度95%)を1mg入れ、クロロホ
ルム50mL加え、超音波洗浄機を用いて1時間分散し
た。次に、共役系高分子としてポリ(2−メトキシ−5
−(3’,7’−ジメチルオクチルオキシ)−p−)を
1g加えてさらに超音波で5時間分散し、ポリフェニレ
ンビニレン系重合体コンポジット溶液(共役系重合体に
対するCNTの比率0.1重量%)とした。
【0037】上記の共役系重合体コンポジット溶液を用
いて実施例1と全く同様に光起電力素子を作製して、同
様の条件で光照射時の短絡電流と解放電圧を測定した。
この時、短絡電流は9μA/cm2、解放電圧は0.4
Vであった。
【0038】比較例2 ポリ(2−メトキシ−5−(3’,7’−ジメチルオク
チルオキシ)−p−フェニレンビニレン)にCNTを分
散しない以外は実施例2と同様な方法で光起電力素子を
作製し、短絡電流と解放電圧を測定した。この時、短絡
電流は0.1μA/cm2、解放電圧は0.3Vであっ
た。
【0039】比較例3 単層カーボンナノチューブのポリ−3−ヘキシル−2,
5−チオフェンに対する濃度を2重量%とした以外は実
施例1と全く同様の方法で光電変換素子を作製し、同様
の測定方法で性能を評価した。この場合には、上下の電
極が短絡したため、光照射時の解放電圧の発生はほとん
ど認められなかった。
【0040】
【発明の効果】本発明の構成からなる共役系重合体コン
ポジットを半導体素材として使用することにより、高性
能な太陽電池素子を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ポリチオフェン誘導体コンポジット膜の蛍光ス
ペクトル(励起光の波長:450nm)

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】カーボンナノチューブと共役系重合体とか
    らなり、該カーボンナノチューブを該共役系重合体に対
    し0.01%以上1%以下の重量分率で含む共役系重合
    体コンポジット層が、光透過性の第1の電極薄膜と第2
    の電極薄膜に挟まれた構造からなる光起電力素子。
  2. 【請求項2】該共役系重合体コンポジットにおいて、励
    起光により生成する蛍光スペクトルにおける最大強度P
    1と、該カーボンナノチューブを含まない場合の該共役
    系重合体の蛍光スペクトルにおける最大強度P0との蛍
    光強度比率(P1/P0)が0.5となる、該共役系重合
    体に対する該カーボンナノチューブの重量分率(蛍光強
    度1/2減重量分率)があり、かつ該蛍光強度1/2減
    重量分率以上の重量分率で、該カーボンナノチューブを
    含む共役系重合体コンポジット層を有する請求項1記載
    の光起電力素子。
  3. 【請求項3】該共役系重合体がポリチオフェン系重合体
    およびポリフェニレンビニレン系重合体よりなる群から
    選ばれる少なくとも1種の共役系重合体である請求項1
    または2記載の光起電力素子。
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