JP2003331718A - 電界放射型電子源の製造方法 - Google Patents

電界放射型電子源の製造方法

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JP2003331718A
JP2003331718A JP2002132351A JP2002132351A JP2003331718A JP 2003331718 A JP2003331718 A JP 2003331718A JP 2002132351 A JP2002132351 A JP 2002132351A JP 2002132351 A JP2002132351 A JP 2002132351A JP 2003331718 A JP2003331718 A JP 2003331718A
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JP2002132351A
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Takashi Hatai
崇 幡井
Yoshifumi Watabe
祥文 渡部
Koichi Aizawa
浩一 相澤
Takuya Komoda
卓哉 菰田
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Panasonic Electric Works Co Ltd
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Matsushita Electric Works Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】従来に比べてエミッション電流および電子放出
効率を向上できる電界放射型電子源の製造方法を提供す
る。 【解決手段】下部電極2と表面電極7との間に強電界ド
リフト層6が介在する電界放射型電子源10の製造方法
において、強電界ドリフト層6は、多結晶シリコンのグ
レインおよび多数のシリコン微結晶を含む複合ナノ結晶
層4を酸化する酸化プロセスにより形成されている。酸
化プロセスでは、電解液中にて複合ナノ結晶層4を電気
化学的に酸化する主酸化処理過程の前に、複合ナノ結晶
層4の表面側におけるシリコン微結晶の表面を酸化する
前酸化処理過程を行っている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電界放射により電
子線を放射するようにした電界放射型電子源の製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、下部電極と、下部電極に対向
する導電性薄膜よりなる表面電極と、下部電極と表面電
極との間に介在し下部電極と表面電極との間に表面電極
を高電位側として電圧を印加したときに下部電極から注
入された電子がドリフトする強電界ドリフト層とを備え
た電界放射型電子源が提案されている(例えば、特許第
2987140号公報、特許第2966842号公報、
特許第3079086号公報など参照)。ここに、強電
界ドリフト層は、酸化した多孔質半導体層たる多孔質多
結晶シリコン層により構成されている。この種の電界放
射型電子源は、表面電極を真空中に配置するとともに表
面電極に対向してコレクタ電極を配置し、表面電極と下
部電極との間に表面電極を高電位側として直流電圧を印
加するとともに、コレクタ電極と表面電極との間にコレ
クタ電極を高電位側として直流電圧を印加することによ
り、強電界ドリフト層をドリフトした電子が表面電極を
通して放出されるものである。したがって、表面電極に
は仕事関数の小さな金属材料(例えば、金)が採用さ
れ、表面電極の膜厚は10〜15nm程度に設定されて
いる。また、この種の電界放射型電子源においては、抵
抗率が導体の抵抗率に比較的近い半導体基板と当該半導
体基板の裏面に形成したオーミック電極とで下部電極を
構成したものや、絶縁性基板(ガラス基板、セラミック
基板など)の一表面側に形成された導電性層により下部
電極を構成したものなどがある。
【0003】上述の電界放射型電子源において、表面電
極と下部電極との間に流れる電流をダイオード電流Ips
と呼び、コレクタ電極と表面電極との間に流れる電流を
エミッション電流(放出電子電流)Ieと呼ぶことにす
れば、ダイオード電流Ipsに対するエミッション電流I
eの比率(=Ie/Ips)が大きいほど電子放出効率(=
(Ie/Ips)×100〔%〕)が高くなるが、上述の
電界放射型電子源では、表面電極と下部電極との間に印
加する直流電圧を10〜20V程度の低電圧としても電
子を放出させることができ、電子放出特性の真空度依存
性が小さく且つ電子放出時にポッピング現象が発生せず
安定して電子を高い電子放出効率で放出することができ
る。
【0004】ところで、上記従来構成を有する電界放射
型電子源における強電界ドリフト層は、多孔質多結晶シ
リコン層を酸化することで、多孔質多結晶シリコン層に
含まれていた多数のシリコン微結晶および多数のグレイ
ンそれぞれの表面に薄いシリコン酸化膜が形成されてい
るものと考えられ、全てのシリコン微結晶およびグレイ
ンの表面に良好な膜質のシリコン酸化膜を形成すること
を目的として、強電界ドリフト層を形成するにあたっ
て、例えば、1mol/lの硫酸、硝酸などの水溶液か
らなる電解液中にて多孔質多結晶シリコン層を電気化学
的に酸化する方法が提案されている。ここにおける電解
液は、質量分率で90%(90wt%)以上の水を含ん
でいる。なお、多孔質多結晶シリコン層を電気化学的に
酸化する方法を採用することにより、多孔質多結晶シリ
コン層を急速熱酸化して強電界ドリフト層を形成する場
合に比べてプロセス温度を低温化することができ、基板
の材料の制約が少なくなり、電界放射型電子源の大面積
化および低コスト化を図れるという利点もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、硫酸、
硝酸などの水溶液からなる電解液中にて多孔質多結晶シ
リコン層を電気化学的に酸化することで強電界ドリフト
層を形成した電界放射型電子源では、工業的な利用を考
えた場合にエミッション電流Ieや電子放出効率が小さ
い(不十分である)という不具合があった。このように
エミッション電流Ieや電子放出効率が小さいという不
具合の原因としては、多孔質多結晶シリコン層はナノメ
ータオーダの微細な構造を有しているので、電解液を用
いて多孔質多結晶シリコン層を電気化学的に酸化した場
合、多孔質多結晶シリコン層の表面側には常に新しい電
解液が供給される一方で、多孔質多結晶シリコン層の厚
み方向において表面から比較的離れた領域へは電解液が
侵入しにくく且つ電解液の入れ替わりが起こりにくく、
多孔質多結晶シリコン層の厚み方向において表面に比較
的近い領域でシリコン酸化膜の膜厚が厚くなるとともに
表面から比較的近い領域でシリコン酸化膜の膜厚が薄く
なり過ぎることが考えられる。このため、結果的に強電
界ドリフト層の厚み方向において表面電極に比較的近い
領域でシリコン酸化膜の膜厚が厚すぎるために電子の散
乱が起こりやすくなってエミッション電流Ieおよび電
子放出効率が低下し、また、強電界ドリフト層の厚み方
向において表面電極から比較的遠い領域でシリコン酸化
膜の膜厚が薄すぎるために絶縁耐圧が低くなり経時特性
が悪くなることが考えられる。
【0006】本発明は上記事由に鑑みて為されたもので
あり、その目的は、従来に比べてエミッション電流およ
び電子放出効率を向上できる電界放射型電子源の製造方
法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、上記
目的を達成するために、下部電極と、下部電極に対向す
る表面電極と、下部電極と表面電極との間に介在しナノ
メータオーダの多数の半導体微結晶および各半導体微結
晶それぞれの表面に形成され半導体微結晶の結晶粒径よ
りも小さな膜厚の酸化膜よりなる多数の絶縁膜を有する
強電界ドリフト層とを備え、下部電極と表面電極との間
に表面電極を高電位側として電圧を印加することにより
下部電極から注入された電子が強電界ドリフト層をドリ
フトし表面電極を通して放出される電界放射型電子源で
あって、強電界ドリフト層を形成するにあたっては、ナ
ノメータオーダの多数の半導体微結晶を有する結晶層を
電気化学的に酸化する主酸化処理過程の前に前記結晶層
における表面側の半導体微結晶の表面を酸化する前酸化
処理過程を設けてなることを特徴とし、強電界ドリフト
層の厚み方向において表面電極に比較的近い領域に存在
する絶縁膜の膜厚が表面電極から比較的遠い領域に存在
する絶縁膜の膜厚よりも大きくなるのを抑制することが
でき、従来に比べてエミッション電流および電子放出効
率が向上した電界放射型電子源を提供できる。
【0008】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て、前記前酸化処理過程では、酸化性溶液を用いて前記
半導体微結晶の表面を酸化するので、前記半導体微結晶
の表面に緻密な酸化膜を形成することができる。
【0009】請求項3の発明は、請求項1の発明におい
て、前記前酸化処理過程では、酸化性の気体を用いて前
記半導体微結晶の表面を酸化するので、前記半導体微結
晶の表面に緻密な酸化膜を形成することができる。
【0010】請求項4の発明は、請求項1の発明におい
て、前記前酸化処理過程では、大気により前記半導体微
結晶の表面を酸化するので、請求項2,3の発明に比べ
て容易に前記半導体微結晶の表面に酸化膜を形成するこ
とができる。
【0011】
【発明の実施の形態】本実施形態の電界放射型電子源1
0は、図2に示すように、絶縁性基板(例えば、絶縁性
を有するガラス基板、絶縁性を有するセラミック基板な
ど)よりなる基板1の一表面側に電子源素子10aが形
成されている。ここにおいて、電子源素子10aは、基
板1の上記一表面側に形成された下部電極2と、下部電
極2上に形成された半導体層としてノンドープの多結晶
シリコン層3と、多結晶シリコン層3上に形成された強
電界ドリフト層6と、強電界ドリフト層6上に形成され
た表面電極7とで構成されている。つまり、電子源素子
10aは、表面電極7と下部電極2とが対向しており、
表面電極7と下部電極2との間に強電界ドリフト層6が
介在している。なお、本実施形態では、基板1として絶
縁性基板を用いているが、基板1としてシリコン基板な
どの半導体基板を用い、半導体基板と当該半導体基板の
裏面に積層した導電性層(例えば、オーミック電極)と
で下部電極2を構成するようにしてもよい。また、強電
界ドリフト層6と下部電極2との間に多結晶シリコン層
3を介在させてあるが、多結晶シリコン層3を介在させ
ずに下部電極2上に強電界ドリフト層6を形成した構成
を採用してもよい。
【0012】ところで、下部電極2は金属材料からなる
単層(例えば、Mo,Cr,W,Ti,Ta,Ni,A
l,Cu,Au,Ptなどの金属あるいは合金あるいは
シリサイドなど金属間化合物からなる単層)の薄膜によ
り構成されているが、多層(例えば、Mo,Cr,W,
Ti,Ta,Ni,Al,Cu,Au,Ptなどの金属
あるいは合金あるいはシリサイドなど金属間化合物から
なる多層)の薄膜により構成してもよいし、不純物をド
ープした多結晶シリコンなどの半導体材料により形成し
てもよい。なお、下部電極2の厚さは300nm程度に
設定されている。
【0013】また、表面電極7の材料には仕事関数の小
さな材料(例えば、金)が採用されているが、表面電極
7の材料は金に限定されるものではなく、また、単層構
造に限らず、多層構造としてもよい。なお、表面電極7
の厚さは強電界ドリフト層6を通ってきた電子がトンネ
ルできる厚さであればよく、10〜15nm程度に設定
すればよい。
【0014】図2に示す構成の電界放射型電子源10か
ら電子を放出させるには、例えば、図3に示すように、
表面電極7に対向配置されたコレクタ電極21を設け、
表面電極7とコレクタ電極21との間を真空とした状態
で、表面電極7が下部電極2に対して高電位側となるよ
うに表面電極7と下部電極2との間に直流電圧Vpsを印
加するとともに、コレクタ電極21が表面電極7に対し
て高電位側となるようにコレクタ電極21と表面電極7
との間に直流電圧Vcを印加する。各直流電圧Vps,V
cを適宜に設定すれば、下部電極2から注入された電子
が強電界ドリフト層6をドリフトし表面電極7を通して
放出される(図3中の一点鎖線は表面電極7を通して放
出された電子eの流れを示す)。なお、強電界ドリフ
ト層6の表面に到達した電子はホットエレクトロンであ
ると考えられ、表面電極7を容易にトンネルし真空中に
放出される。
【0015】本実施形態の電界放射型電子源10では、
表面電極7と下部電極2との間に流れる電流をダイオー
ド電流Ipsと呼び、コレクタ電極21と表面電極7との
間に流れる電流をエミッション電流(放出電子電流)I
eと呼ぶことにすれば(図3参照)、ダイオード電流Ip
sに対するエミッション電流Ieの比率(=Ie/Ips)
が大きいほど電子放出効率(=(Ie/Ips)×100
〔%〕)が高くなる。
【0016】強電界ドリフト層6は、後述のナノ結晶化
プロセスおよび酸化プロセスを行うことにより形成され
ており、図4に示すように、少なくとも、下部電極2の
上記一表面側に列設された柱状の多結晶シリコンのグレ
イン(半導体結晶)51と、グレイン51の表面に形成
された薄いシリコン酸化膜52と、グレイン51間に介
在する多数のナノメータオーダのシリコン微結晶(半導
体微結晶)63と、各シリコン微結晶63の表面に形成
され当該シリコン微結晶63の結晶粒径よりも小さな膜
厚の酸化膜である多数のシリコン酸化膜(絶縁膜)64
とから構成されると考えられる。なお、各グレイン51
は、下部電極2の厚み方向に延びている。
【0017】本実施形態の電界放射型電子源10では、
次のようなモデルで電子放出が起こると考えられる。す
なわち、表面電極7と下部電極2との間に表面電極7を
高電位側として直流電圧Vpsを印加するとともに、コレ
クタ電極21と表面電極7との間にコレクタ電極21を
高電位側として直流電圧Vcを印加することにより、直
流電圧Vpsが所定値(臨界値)に達すると、下部電極2
から強電界ドリフト層6へ熱的励起された電子eが注
入される。一方、強電界ドリフト層6に印加された電界
の大部分はシリコン酸化膜64にかかるから、注入され
た電子eはシリコン酸化膜64にかかっている強電界
により加速され、強電界ドリフト層6におけるグレイン
51の間の領域を表面に向かって図4中の矢印の向き
(図4における上向き)へドリフトし、表面電極7をト
ンネルし真空中に放出される。しかして、強電界ドリフ
ト層6では下部電極2から注入された電子がシリコン微
結晶63でほとんど散乱されることなくシリコン酸化膜
64にかかっている電界で加速されてドリフトし、表面
電極7を通して放出され、強電界ドリフト層6で発生し
た熱がグレイン51を通して放熱されるから、電子放出
時にポッピング現象が発生せず、安定して電子を放出す
ることができる。なお、強電界ドリフト層6の表面に到
達した電子はホットエレクトロンであると考えられ、表
面電極7を容易にトンネルし真空中に放出される。
【0018】以下、本実施形態の電界放射型電子源10
の製造方法について図1を参照しながら説明する。
【0019】まず、絶縁性を有するガラス基板からなる
基板1の一表面上に所定膜厚(例えば、300nm程
度)の金属膜(例えば、タングステン膜)からなる下部
電極2をスパッタ法によって形成した後、基板1の一表
面側の全面に所定膜厚(例えば、1.5μm)のノンド
ープの多結晶シリコン層3を例えばプラズマCVD法に
よって形成することにより、図1(a)に示すような構
造が得られる。なお、多結晶シリコン層3の成膜方法
は、プラズマCVD法に限らず、LPCVD法、触媒C
VD法、スパッタ法、CGS(Continuous Grain Sil
icon)法などを採用すればよい。
【0020】ノンドープの多結晶シリコン層3を形成し
た後、上述のナノ結晶化プロセスを行うことにより、多
結晶シリコンの多数のグレイン51(図4参照)と多数
のシリコン微結晶63(図4参照)とが混在する複合ナ
ノ結晶層4が形成され、図1(b)に示すような構造が
得られる。ここにおいて、ナノ結晶化プロセスでは、5
5wt%のフッ化水素水溶液とエタノールとを略1:1
で混合した混合液よりなる電解液の入った処理槽を利用
し、白金電極(図示せず)を陰極、下部電極2を陽極と
して、多結晶シリコン層3に光照射を行いながら所定の
電流(例えば、電流密度が12mA/cmの電流)を
所定時間(例えば、10秒)だけ流すことによって複合
ナノ結晶層4が形成される。このようにして形成された
複合ナノ結晶層4は、多結晶シリコンのグレイン51お
よびシリコン微結晶63を含んでいる。なお、本実施形
態では、複合ナノ結晶層4が結晶層を構成している。
【0021】上述のナノ結晶化プロセスが終了し複合ナ
ノ結晶層4に残留している電解液を流水で洗浄した後
に、上述の酸化プロセスを行うことによって図4のよう
な構成の複合ナノ結晶層からなる強電界ドリフト層6が
形成され、図1(c)に示すような構造が得られる。酸
化プロセスでは、複合ナノ結晶層4を酸化性溶液(例え
ば、濃度が70%の硝酸)中に所定時間(例えば、5秒
程度)だけ浸すことにより、複合ナノ結晶層4の表面側
のシリコン微結晶63の表面を酸化する前酸化処理過程
を行い、続いて複合ナノ結晶層4に残留している酸化性
溶液を流水で洗浄した後、例えばエチレングリコールか
らなる有機溶媒中に0.04mol/l(以下、「mo
l/l」は「M」と記載する)の硝酸カリウムからなる
溶質を溶かした電解液の入った処理槽を利用し、白金電
極(図示せず)を陰極、下部電極2を陽極として、陽極
と陰極との間の電圧が所定電圧(例えば、20V)だけ
上昇するまで定電流(例えば、電流密度が0.1mA/
cmの電流)を流し複合ナノ結晶層4を電気化学的に
酸化する主酸化処理過程を行うことによって上述のグレ
イン51、シリコン微結晶63、各シリコン酸化膜5
2,64を含む強電界ドリフト層6を形成するようにな
っている。なお、本実施形態では、上述のナノ結晶化プ
ロセスを行うことによって形成される複合ナノ結晶層4
においてグレイン51、シリコン微結晶63以外の領域
はアモルファスシリコンからなるアモルファス領域とな
っており、強電界ドリフト層6においてグレイン51、
シリコン微結晶63、各シリコン酸化膜52,64以外
の領域がアモルファスシリコン若しくは一部が酸化した
アモルファスシリコンからなるアモルファス領域65と
なっているが、ナノ結晶化プロセスの条件によってはア
モルファス領域65が孔となり、このような場合の複合
ナノ結晶層4は従来例と同様に多孔質多結晶シリコン層
とみなすことができる。
【0022】強電界ドリフト層6を形成した後は、例え
ば蒸着法などによって金薄膜からなる表面電極7を強電
界ドリフト層6上に形成することにより、図1(d)に
示す構造の電界放射型電子源10が得られる。
【0023】以上説明した製造方法によれば、強電界ド
リフト層6を形成するにあたっては、有機溶媒中に溶質
を溶かした電解液中において結晶層たる複合ナノ結晶層
4を電気化学的に酸化する主酸化処理過程の前に、複合
ナノ結晶層4における表面側のシリコン微結晶63の表
面を酸化する前酸化処理過程を行っていることにより、
主酸化処理過程を開始する前に複合ナノ結晶層4の表面
側が既に酸化されているので、主酸化処理過程では、複
合ナノ結晶層4の厚み方向において表面に比較的近い領
域では電流が流れにくくて酸化反応が進行せず、表面か
ら比較的遠い領域で酸化が進行することになり、強電界
ドリフト層6の厚み方向において表面電極7に比較的近
い領域に存在するシリコン酸化膜52,64の膜厚が表
面電極7から比較的遠い領域に存在するシリコン酸化膜
52,64の膜厚よりも大きくなるのを抑制することが
できる。
【0024】しかして、強電界ドリフト層6中に多数存
在するシリコン酸化膜64の膜厚のばらつきを小さくす
ることができ、結果的に強電界ドリフト層6中での電子
散乱が抑制されてシリコン酸化膜64での散乱を少なく
することができるから、従来に比べてエミッション電流
Ieおよび電子放出効率および絶縁耐圧を向上した電界
放射型電子源10を提供できる。
【0025】なお、上述の製造方法では、前酸化処理過
程において酸化性溶液として硝酸を用いているが、酸化
性溶液は硝酸に限定されるものではなく、硝酸の他に、
例えば、硫酸、塩酸、過酸化水素水などの酸化剤を採用
してもよい。また、前酸化処理過程では、酸化性溶液を
用いる代わりに、酸化性の気体(例えば、酸素、オゾン
など)を用いてもよく、この場合にも、複合ナノ結晶層
4の表面側におけるシリコン微結晶63の表面に緻密な
シリコン酸化膜64を形成することができる。また、前
酸化処理過程では、単に複合ナノ結晶層4を所定時間
(例えば、10秒)だけ大気に曝すのみとしてもよい
が、この場合には、シリコン酸化膜52,64の膜質が
悪くなる可能性があるので、主酸化処理過程の後にアニ
ール処理を行ってシリコン酸化膜52,64の膜質を改
善することが望ましい。ここにおいて、アニール処理の
条件としては、例えば、窒素雰囲気中で所定のアニール
温度(例えば、550℃)を所定のアニール時間(例え
ば、1時間)だけ維持するような条件を採用すればよ
い。
【0026】また、上述の製造方法では、主酸化処理過
程の条件として、陽極と陰極との間の電圧が20Vだけ
上昇するまで0.1mA/cmの定電流を流すことに
より複合ナノ結晶層4の酸化を行ったが、この条件は適
宜変更してもよい。例えば、陽極と陰極との間の電圧が
所定電圧(例えば、20V)だけ上昇するまで定電流で
酸化を行った後に、陽極と陰極との間の電圧を上記所定
電圧に維持して化成電流密度が所定値(例えば、0.0
1mA/cm)まで減少したときに通電を停止するよ
うにしてもよく、このような条件で酸化を行うことによ
り、強電界ドリフト層6において下部電極2に近い領域
でのシリコン酸化膜52,64の緻密性を向上させるこ
とが可能になる。
【0027】ところで、本実施形態の電界放射型電子源
10をディスプレイの電子源として利用する場合には、
下部電極2、表面電極7、強電界ドリフト層6などを適
宜にパターニングして多数の電子源素子10aを基板1
の上記一表面側にマトリクス状に配列すればよい。
【0028】(実施例)実施形態にて説明した電界放射
型電子源10の製造方法を基本として酸化プロセスの条
件を種々変化させて電界放射型電子源10を作成して電
子放出特性を測定した結果について図5〜図7を参照し
て説明するが、その前にまず、各電界放射型電子源10
の製造方法に関して共通の条件について簡単に説明す
る。
【0029】基板1としては、厚さが0.7mmのガラ
ス基板を用いた。基板1の上記一表面側に成膜する多結
晶シリコン層3(図1(a)参照)の膜厚は1.5μm
とし、多結晶シリコン層3の成膜は、プラズマCVD法
により行った。ナノ結晶化プロセスでは電解液として、
55wt%のフッ化水素水溶液とエタノールとを略1:
1で混合した電解液を用い、光源として500Wのタン
グステンランプを用い、下部電極2からなる陽極と白金
電極からなる陰極との間に電流密度が12mA/cm
の電流を10秒間流した。酸化プロセスの主酸化処理過
程では、エチレングリコール中に0.04Mの硝酸カリ
ウムを溶かした電解液を用い、下部電極2を陽極、白金
電極を陰極として陽極と陰極との間の電圧が20Vだけ
上昇するまで0.1mA/cmの定電流を流して複合
ナノ結晶層4の酸化を行った。表面電極7としては、蒸
着法によって膜厚が10nmの金薄膜を形成した。
【0030】図5は、酸化プロセスの前酸化処理過程に
おいて、複合ナノ結晶層4を酸化性溶液である硝酸(濃
度70%)中に5秒間だけ浸した場合の電界放射型電子
源(以下、実施例1の電界放射型電子源と称す)、図6
は、ナノ結晶化プロセスの後で複合ナノ結晶層4を流水
で洗浄し、複合ナノ結晶層4を乾燥させた後に酸化プロ
セスの前酸化処理過程において、複合ナノ結晶層4を1
0秒間だけ大気に曝し、主酸化処理過程の後に、窒素雰
囲気中で550℃、1時間のアニール処理を行った場合
の電界放射型電子源(以下、実施例2の電界放射型電子
源と称す)、図7は、酸化プロセスにおいて前酸化処理
過程を行わずに主酸化処理過程を行った場合(つまり、
ナノ結晶化プロセスによって複合ナノ結晶層4を形成し
流水で洗浄した後に、直ちに電解液に浸して電気化学的
な酸化を行った場合)の電界放射型電子源(以下、比較
例の電界放射型電子源と称す)、それぞれの測定結果を
示している。
【0031】各電界放射型電子源の電子放出特性の測定
は、真空チャンバ(図示せず)内に電界放射型電子源を
導入して、上述の図3のように、表面電極7に対向して
コレクタ電極21を配置し、表面電極7を下部電極2に
対して高電位側として直流電圧(駆動電圧)Vpsを印加
するとともに、コレクタ電極21を表面電極7に対して
高電位側として直流電圧Vcを印加することによって行
った。図5〜図7は上述の直流電圧Vcを100V一定
とし、真空チャンバ内の真空度を5×10−5Paとし
たときの電子放出特性の測定結果を示したものであっ
て、各図の横軸は直流電圧Vps、左側の縦軸は電流密
度、右側の縦軸は電子放出効率であり、イはダイオード
電流Ipsの電流密度、ロはエミッション電流Ieの電流
密度、ハは電子放出効率を示している。
【0032】図5〜図7から、各実施例1,2と比較例
とを駆動電圧Vpsが20Vの時のエミッション電流Ie
および電子放出効率で比較すれば、従来例の電界放射型
電子源ではエミッション電流Ieの電流密度が100μ
A/cm未満であり電子放出効率が1%程度であるの
に対して、各実施例1,2の電界放射型電子源ではエミ
ッション電流Ieの電流密度が100μA/cmを超
え電子放出効率が1.5%以上となっており、各実施例
1,2の電界放射型電子源の方が比較例に比べてエミッ
ション電流Ieの電流密度および電子放出効率がそれぞ
れ向上していることが分かる。
【0033】
【発明の効果】請求項1の発明は、下部電極と、下部電
極に対向する表面電極と、下部電極と表面電極との間に
介在しナノメータオーダの多数の半導体微結晶および各
半導体微結晶それぞれの表面に形成され半導体微結晶の
結晶粒径よりも小さな膜厚の酸化膜よりなる多数の絶縁
膜を有する強電界ドリフト層とを備え、下部電極と表面
電極との間に表面電極を高電位側として電圧を印加する
ことにより下部電極から注入された電子が強電界ドリフ
ト層をドリフトし表面電極を通して放出される電界放射
型電子源であって、強電界ドリフト層を形成するにあた
っては、ナノメータオーダの多数の半導体微結晶を有す
る結晶層を電気化学的に酸化する主酸化処理過程の前に
前記結晶層における表面側の半導体微結晶の表面を酸化
する前酸化処理過程を設けてなるので、強電界ドリフト
層の厚み方向において表面電極に比較的近い領域に存在
する絶縁膜の膜厚が表面電極から比較的遠い領域に存在
する絶縁膜の膜厚よりも大きくなるのを抑制することが
でき、従来に比べてエミッション電流および電子放出効
率が向上した電界放射型電子源を提供できるという効果
がある。
【0034】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て、前記前酸化処理過程では、酸化性溶液を用いて前記
半導体微結晶の表面を酸化するので、前記半導体微結晶
の表面に緻密な酸化膜を形成することができるという効
果がある。
【0035】請求項3の発明は、請求項1の発明におい
て、前記前酸化処理過程では、酸化性の気体を用いて前
記半導体微結晶の表面を酸化するので、前記半導体微結
晶の表面に緻密な酸化膜を形成することができるという
効果がある。
【0036】請求項4の発明は、請求項1の発明におい
て、前記前酸化処理過程では、大気により前記半導体微
結晶の表面を酸化するので、請求項2,3の発明に比べ
て容易に前記半導体微結晶の表面に酸化膜を形成するこ
とができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の電界放射型電子源の製造方法を説明
するための主要工程断面図である。
【図2】同上の電界放射型電子源の概略断面図である。
【図3】同上の動作説明図である。
【図4】同上の動作説明図である。
【図5】実施例1の電界放射型電子源の電子放出特性図
である。
【図6】実施例2の電界放射型電子源の電子放出特性図
である。
【図7】比較例の電界放射型電子源の電子放出特性図で
ある。
【符号の説明】
1 基板 2 下部電極 3 多結晶シリコン層 4 複合ナノ結晶層 6 強電界ドリフト層 7 表面電極 10 電界放射型電子源 10a 電子源素子
フロントページの続き (72)発明者 相澤 浩一 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 (72)発明者 菰田 卓哉 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 Fターム(参考) 5C127 AA01 BA09 BB12 CC22 DD78 EE02 EE08

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下部電極と、下部電極に対向する表面電
    極と、下部電極と表面電極との間に介在しナノメータオ
    ーダの多数の半導体微結晶および各半導体微結晶それぞ
    れの表面に形成され半導体微結晶の結晶粒径よりも小さ
    な膜厚の酸化膜よりなる多数の絶縁膜を有する強電界ド
    リフト層とを備え、下部電極と表面電極との間に表面電
    極を高電位側として電圧を印加することにより下部電極
    から注入された電子が強電界ドリフト層をドリフトし表
    面電極を通して放出される電界放射型電子源であって、
    強電界ドリフト層を形成するにあたっては、ナノメータ
    オーダの多数の半導体微結晶を有する結晶層を電気化学
    的に酸化する主酸化処理過程の前に前記結晶層における
    表面側の半導体微結晶の表面を酸化する前酸化処理過程
    を設けてなることを特徴とする電界放射型電子源の製造
    方法。
  2. 【請求項2】 前記前酸化処理過程では、酸化性溶液を
    用いて前記半導体微結晶の表面を酸化することを特徴と
    する請求項1記載の電界放射型電子源の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記前酸化処理過程では、酸化性の気体
    を用いて前記半導体微結晶の表面を酸化することを特徴
    とする請求項1記載の電界放射型電子源の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記前酸化処理過程では、大気により前
    記半導体微結晶の表面を酸化することを特徴とする請求
    項1記載の電界放射型電子源の製造方法。
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