JP2003331719A - 電界放射型電子源の製造方法 - Google Patents

電界放射型電子源の製造方法

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JP2003331719A
JP2003331719A JP2002132352A JP2002132352A JP2003331719A JP 2003331719 A JP2003331719 A JP 2003331719A JP 2002132352 A JP2002132352 A JP 2002132352A JP 2002132352 A JP2002132352 A JP 2002132352A JP 2003331719 A JP2003331719 A JP 2003331719A
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lower electrode
electrode
surface electrode
electric field
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JP2002132352A
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Takashi Hatai
崇 幡井
Yoshifumi Watabe
祥文 渡部
Koichi Aizawa
浩一 相澤
Takuya Komoda
卓哉 菰田
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Panasonic Electric Works Co Ltd
Original Assignee
Matsushita Electric Works Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】従来に比べてエミッション電流および電子放出
効率の経時安定性を向上できる電界放射型電子源の製造
方法を提供する。 【解決手段】下部電極2と表面電極7との間に強電界ド
リフト層6が介在する電界放射型電子源10の製造方法
において、強電界ドリフト層6は、多結晶シリコンのグ
レインおよび多数のシリコン微結晶を含む複合ナノ結晶
層4を酸化する酸化プロセスを行った後に、洗浄プロセ
スを行うことにより形成されている。洗浄プロセスで
は、酸性溶液を用いて酸化した複合ナノ結晶層中の残留
不純物を除去する洗浄工程を行ってから、水洗工程を行
っている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電界放射により電
子線を放射するようにした電界放射型電子源の製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、下部電極と、下部電極に対向
する導電性薄膜よりなる表面電極と、下部電極と表面電
極との間に介在し下部電極と表面電極との間に表面電極
を高電位側として電圧を印加したときに下部電極から注
入された電子がドリフトする強電界ドリフト層とを備え
た電界放射型電子源が提案されている(例えば、特許第
2987140号公報、特許第2966842号公報、
特許第3079086号公報など参照)。ここに、強電
界ドリフト層は、酸化した多孔質半導体層たる多孔質多
結晶シリコン層により構成されている。この種の電界放
射型電子源は、表面電極を真空中に配置するとともに表
面電極に対向してコレクタ電極を配置し、表面電極と下
部電極との間に表面電極を高電位側として直流電圧を印
加するとともに、コレクタ電極と表面電極との間にコレ
クタ電極を高電位側として直流電圧を印加することによ
り、強電界ドリフト層をドリフトした電子が表面電極を
通して放出されるものである。したがって、表面電極に
は仕事関数の小さな金属材料(例えば、金)が採用さ
れ、表面電極の膜厚は10〜15nm程度に設定されて
いる。また、この種の電界放射型電子源においては、抵
抗率が導体の抵抗率に比較的近い半導体基板と当該半導
体基板の裏面に形成したオーミック電極とで下部電極を
構成したものや、絶縁性基板(ガラス基板、セラミック
基板など)の一表面側に形成された導電性層により下部
電極を構成したものなどがある。
【0003】上述の電界放射型電子源において、表面電
極と下部電極との間に流れる電流をダイオード電流Ips
と呼び、コレクタ電極と表面電極との間に流れる電流を
エミッション電流(放出電子電流)Ieと呼ぶことにす
れば、ダイオード電流Ipsに対するエミッション電流I
eの比率(=Ie/Ips)が大きいほど電子放出効率(=
(Ie/Ips)×100〔%〕)が高くなるが、上述の
電界放射型電子源では、表面電極と下部電極との間に印
加する直流電圧を10〜20V程度の低電圧としても電
子を放出させることができ、電子放出特性の真空度依存
性が小さく且つ電子放出時にポッピング現象が発生せず
安定して電子を高い電子放出効率で放出することができ
る。
【0004】ところで、上記従来構成を有する電界放射
型電子源における強電界ドリフト層は、多孔質多結晶シ
リコン層を酸化することで、多孔質多結晶シリコン層に
含まれていた多数のシリコン微結晶および多数のグレイ
ンそれぞれの表面に薄いシリコン酸化膜が形成されてい
るものと考えられ、全てのシリコン微結晶およびグレイ
ンの表面に良好な膜質のシリコン酸化膜を形成すること
を目的として、強電界ドリフト層を形成するにあたっ
て、例えば、1mol/lの硫酸、硝酸などの水溶液か
らなる電解液中にて多孔質多結晶シリコン層を電気化学
的に酸化する方法が提案されている。ここにおける電解
液は、質量分率で90%(90wt%)以上の水を含ん
でいる。なお、多孔質多結晶シリコン層を電気化学的に
酸化する方法を採用することにより、多孔質多結晶シリ
コン層を急速熱酸化して強電界ドリフト層を形成する場
合に比べてプロセス温度を低温化することができ、基板
の材料の制約が少なくなり、電界放射型電子源の大面積
化および低コスト化を図れるという利点もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
ように多孔質多結晶シリコン層を酸化することで強電界
ドリフト層を形成した電界放射型電子源では、駆動電圧
(表面電極と下部電極との間に表面電極を高電位側とし
て印加する直流電圧)を定電圧として駆動した場合にエ
ミッション電流Ieが経時的に低下し結果的に電子放出
効率が低下してしまうという不具合があり、また、定電
流で駆動する場合(ダイオード電流Ipsの電流値を一定
として駆動する場合)には駆動電圧を時間経過とともに
徐々に増加していかなければエミッション電流Ieの電
流値を略一定値に維持するすることができず、消費電力
が増加してしまうという不具合があった。これらの不具
合が起こる一因としては、強電界ドリフト層中に可動イ
オン(ナトリウムイオン、カリウムイオンなど)や重金
属などの不純物(残留不純物)が残留しており、電界放
射型電子源を駆動した場合に残留不純物が強電界ドリフ
ト層中を移動することによって強電界ドリフト層にかか
る電界が緩和されることが考えられ、このような電界緩
和が起こることでエミッション電流Ieが経時的に低下
してしまうものと考えられる。また、強電界ドリフト層
中に残留不純物が存在することでシリコン酸化膜の絶縁
耐圧が低下してエミッション電流Ieが低下することも
考えられる。
【0006】本発明は上記事由に鑑みて為されたもので
あり、その目的は、従来に比べてエミッション電流およ
び電子放出効率の経時安定性を向上できる電界放射型電
子源の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、上記
目的を達成するために、下部電極と、下部電極に対向す
る表面電極と、下部電極と表面電極との間に介在しナノ
メータオーダの多数の半導体微結晶および各半導体微結
晶それぞれの表面に形成され半導体微結晶の結晶粒径よ
りも小さな膜厚の酸化膜よりなる多数の絶縁膜を有する
強電界ドリフト層とを備え、下部電極と表面電極との間
に表面電極を高電位側として電圧を印加することにより
下部電極から注入された電子が強電界ドリフト層をドリ
フトし表面電極を通して放出される電界放射型電子源で
あって、強電界ドリフト層を形成するにあたっては、ナ
ノメータオーダの多数の半導体微結晶を有する結晶層を
酸化した後に酸性溶液により残留不純物を除去する洗浄
工程を含むことを特徴とし、強電界ドリフト層中に混入
している可動イオンや重金属などの残留不純物の濃度を
低減することができ、従来に比べてエミッション電流お
よび電子放出効率の経時安定性が向上した電界放射型電
子源を提供できる。
【0008】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て、前記酸性溶液は、塩酸と過酸化水素水とを含む混合
溶液、硫酸と過酸化水素水とを含む混合溶液、王水から
選択されるので、前記酸性溶液を一般的な半導体製造プ
ロセスで用いられる薬品から得ることができるから、前
記酸性溶液を比較的低コストで得ることができ、結果的
に電界放射型電子源の製造コストを低減することができ
る。
【0009】
【発明の実施の形態】本実施形態の電界放射型電子源1
0は、図2に示すように、絶縁性基板(例えば、絶縁性
を有するガラス基板、絶縁性を有するセラミック基板な
ど)よりなる基板1の一表面側に電子源素子10aが形
成されている。ここにおいて、電子源素子10aは、基
板1の上記一表面側に形成された下部電極2と、下部電
極2上に形成された半導体層としてノンドープの多結晶
シリコン層3と、多結晶シリコン層3上に形成された強
電界ドリフト層6と、強電界ドリフト層6上に形成され
た表面電極7とで構成されている。つまり、電子源素子
10aは、表面電極7と下部電極2とが対向しており、
表面電極7と下部電極2との間に強電界ドリフト層6が
介在している。なお、本実施形態では、基板1として絶
縁性基板を用いているが、基板1としてシリコン基板な
どの半導体基板を用い、半導体基板と当該半導体基板の
裏面に積層した導電性層(例えば、オーミック電極)と
で下部電極2を構成するようにしてもよい。また、強電
界ドリフト層6と下部電極2との間に多結晶シリコン層
3を介在させてあるが、多結晶シリコン層3を介在させ
ずに下部電極2上に強電界ドリフト層6を形成した構成
を採用してもよい。
【0010】ところで、下部電極2は金属材料からなる
単層(例えば、Mo,Cr,W,Ti,Ta,Ni,A
l,Cu,Au,Ptなどの金属あるいは合金あるいは
シリサイドなど金属間化合物からなる単層)の薄膜によ
り構成されているが、多層(例えば、Mo,Cr,W,
Ti,Ta,Ni,Al,Cu,Au,Ptなどの金属
あるいは合金あるいはシリサイドなど金属間化合物から
なる多層)の薄膜により構成してもよいし、不純物をド
ープした多結晶シリコンなどの半導体材料により形成し
てもよい。なお、下部電極2の厚さは300nm程度に
設定されている。
【0011】また、表面電極7の材料には仕事関数の小
さな材料(例えば、金)が採用されているが、表面電極
7の材料は金に限定されるものではなく、また、単層構
造に限らず、多層構造としてもよい。なお、表面電極7
の厚さは強電界ドリフト層6を通ってきた電子がトンネ
ルできる厚さであればよく、10〜15nm程度に設定
すればよい。
【0012】図2に示す構成の電界放射型電子源10か
ら電子を放出させるには、例えば、図3に示すように、
表面電極7に対向配置されたコレクタ電極21を設け、
表面電極7とコレクタ電極21との間を真空とした状態
で、表面電極7が下部電極2に対して高電位側となるよ
うに表面電極7と下部電極2との間に直流電圧Vpsを印
加するとともに、コレクタ電極21が表面電極7に対し
て高電位側となるようにコレクタ電極21と表面電極7
との間に直流電圧Vcを印加する。各直流電圧Vps,V
cを適宜に設定すれば、下部電極2から注入された電子
が強電界ドリフト層6をドリフトし表面電極7を通して
放出される(図3中の一点鎖線は表面電極7を通して放
出された電子eの流れを示す)。なお、強電界ドリフ
ト層6の表面に到達した電子はホットエレクトロンであ
ると考えられ、表面電極7を容易にトンネルし真空中に
放出される。
【0013】本実施形態の電界放射型電子源10では、
表面電極7と下部電極2との間に流れる電流をダイオー
ド電流Ipsと呼び、コレクタ電極21と表面電極7との
間に流れる電流をエミッション電流(放出電子電流)I
eと呼ぶことにすれば(図3参照)、ダイオード電流Ip
sに対するエミッション電流Ieの比率(=Ie/Ips)
が大きいほど電子放出効率(=(Ie/Ips)×100
〔%〕)が高くなる。
【0014】強電界ドリフト層6は、後述のナノ結晶化
プロセスおよび酸化プロセスを行うことにより形成され
ており、図4に示すように、少なくとも、下部電極2の
上記一表面側に列設された柱状の多結晶シリコンのグレ
イン(半導体結晶)51と、グレイン51の表面に形成
された薄いシリコン酸化膜52と、グレイン51間に介
在する多数のナノメータオーダのシリコン微結晶(半導
体微結晶)63と、各シリコン微結晶63の表面に形成
され当該シリコン微結晶63の結晶粒径よりも小さな膜
厚の酸化膜である多数のシリコン酸化膜(絶縁膜)64
とから構成されると考えられる。なお、各グレイン51
は、下部電極2の厚み方向に延びている。
【0015】本実施形態の電界放射型電子源10では、
次のようなモデルで電子放出が起こると考えられる。す
なわち、表面電極7と下部電極2との間に表面電極7を
高電位側として直流電圧Vpsを印加するとともに、コレ
クタ電極21と表面電極7との間にコレクタ電極21を
高電位側として直流電圧Vcを印加することにより、直
流電圧Vpsが所定値(臨界値)に達すると、下部電極2
から強電界ドリフト層6へ熱的励起された電子eが注
入される。一方、強電界ドリフト層6に印加された電界
の大部分はシリコン酸化膜64にかかるから、注入され
た電子eはシリコン酸化膜64にかかっている強電界
により加速され、強電界ドリフト層6におけるグレイン
51の間の領域を表面に向かって図4中の矢印の向き
(図4における上向き)へドリフトし、表面電極7をト
ンネルし真空中に放出される。しかして、強電界ドリフ
ト層6では下部電極2から注入された電子がシリコン微
結晶63でほとんど散乱されることなくシリコン酸化膜
64にかかっている電界で加速されてドリフトし、表面
電極7を通して放出され、強電界ドリフト層6で発生し
た熱がグレイン51を通して放熱されるから、電子放出
時にポッピング現象が発生せず、安定して電子を放出す
ることができる。なお、強電界ドリフト層6の表面に到
達した電子はホットエレクトロンであると考えられ、表
面電極7を容易にトンネルし真空中に放出される。
【0016】以下、本実施形態の電界放射型電子源10
の製造方法について図1を参照しながら説明する。
【0017】まず、絶縁性を有するガラス基板からなる
基板1の一表面上に所定膜厚(例えば、300nm程
度)の金属膜(例えば、タングステン膜)からなる下部
電極2をスパッタ法によって形成した後、基板1の一表
面側の全面に所定膜厚(例えば、1.5μm)のノンド
ープの多結晶シリコン層3を例えばプラズマCVD法に
よって形成することにより、図1(a)に示すような構
造が得られる。なお、多結晶シリコン層3の成膜方法
は、プラズマCVD法に限らず、LPCVD法、触媒C
VD法、スパッタ法、CGS(Continuous Grain Sil
icon)法などを採用すればよい。
【0018】ノンドープの多結晶シリコン層3を形成し
た後、上述のナノ結晶化プロセスを行うことにより、多
結晶シリコンの多数のグレイン51(図4参照)と多数
のシリコン微結晶63(図4参照)とが混在する複合ナ
ノ結晶層4が形成され、図1(b)に示すような構造が
得られる。ここにおいて、ナノ結晶化プロセスでは、5
5wt%のフッ化水素水溶液とエタノールとを略1:1
で混合した混合液よりなる電解液の入った処理槽を利用
し、白金電極(図示せず)を陰極、下部電極2を陽極と
して、多結晶シリコン層3に光照射を行いながら所定の
電流(例えば、電流密度が12mA/cmの電流)を
所定時間(例えば、10秒)だけ流すことによって複合
ナノ結晶層4が形成される。このようにして形成された
複合ナノ結晶層4は、多結晶シリコンのグレイン51お
よびシリコン微結晶63を含んでいる。なお、本実施形
態では、複合ナノ結晶層4が結晶層を構成している。
【0019】上述のナノ結晶化プロセスが終了し複合ナ
ノ結晶層4に残留している電解液を流水で洗浄した後
に、上述の酸化プロセスを行い、続いて洗浄プロセスを
行うことによって図4のような構成の複合ナノ結晶層か
らなる強電界ドリフト層6が形成され、図1(c)に示
すような構造が得られる。ここに、酸化プロセスでは、
例えばエチレングリコールからなる有機溶媒中に0.0
4mol/l(以下、「mol/l」は「M」と記載す
る)の硝酸カリウムからなる溶質を溶かした電解液の入
った処理槽を利用し、白金電極(図示せず)を陰極、下
部電極2を陽極として、陽極と陰極との間の電圧が所定
電圧(例えば、20V)だけ上昇するまで定電流(例え
ば、電流密度が0.1mA/cmの電流)を流し複合
ナノ結晶層4を電気化学的に酸化する酸化処理工程を行
うことによって上述のグレイン51、シリコン微結晶6
3、各シリコン酸化膜52,64を含む強電界ドリフト
層6を形成するようになっている。また、洗浄プロセス
では、酸性溶液(例えば、塩酸と過酸化水素水と水の混
合液)を用いて酸化した複合ナノ結晶層の残留不純物を
除去する洗浄工程を行い、続いて、純水を用いて酸化し
た複合ナノ結晶層を水洗する水洗工程を行ってから、酸
化した複合ナノ結晶層を乾燥させる。なお、本実施形態
では、上述のナノ結晶化プロセスを行うことによって形
成される複合ナノ結晶層4においてグレイン51、シリ
コン微結晶63以外の領域はアモルファスシリコンから
なるアモルファス領域となっており、強電界ドリフト層
6においてグレイン51、シリコン微結晶63、各シリ
コン酸化膜52,64以外の領域がアモルファスシリコ
ン若しくは一部が酸化したアモルファスシリコンからな
るアモルファス領域65となっているが、ナノ結晶化プ
ロセスの条件によってはアモルファス領域65が孔とな
り、このような場合の複合ナノ結晶層4は従来例と同様
に多孔質多結晶シリコン層とみなすことができる。
【0020】強電界ドリフト層6を形成した後は、例え
ば蒸着法などによって金薄膜からなる表面電極7を強電
界ドリフト層6上に形成することにより、図1(d)に
示す構造の電界放射型電子源10が得られる。
【0021】以上説明した製造方法によれば、強電界ド
リフト層6を形成するにあたっては、結晶層たる複合ナ
ノ結晶層4を電気化学的に酸化した後に酸性溶液により
残留不純物を除去する洗浄工程を行っているので、強電
界ドリフト層6中に混入している可動イオン(ナトリウ
ムイオン、カリウムイオンなど)や重金属などの残留不
純物の濃度を低減することができ、従来に比べてエミッ
ション電流Ieおよび電子放出効率の経時安定性が向上
した電界放射型電子源10を提供できる。本実施形態に
おける洗浄工程は、複合ナノ結晶層4を上述のように有
機溶媒中に溶質を溶かした電解液を用いて電気化学的に
酸化した場合に限らず、複合ナノ結晶層4を塩酸や硫酸
などの酸からなる電解液を用いて電気化学的に酸化した
場合や、複合ナノ結晶層4を急速熱酸化した場合でも残
留不純物を除去する工程として有効である。ここにおい
て、複合ナノ結晶層4はナノメータオーダの微細構造を
有しているので、洗浄プロセスとして上述の水洗工程だ
けを採用した場合には、複合ナノ結晶層4の形成時に用
いた電解液に含まれているカリウムなどの可動イオンを
十分に除去することが難しく結果的にエミッション電流
Ieが低下してしまうが、本実施形態では、水洗工程の
前に酸性溶液を用いた洗浄工程を設けているので、カリ
ウムなどの可動イオンを十分に除去する(電界放射型電
子源10の電子放出特性に影響を与えない程度の濃度ま
で低下させる)ことができる。
【0022】なお、上述の製造方法では、洗浄工程にお
いて酸性溶液として塩酸と過酸化水素水と水との混合液
を用いているが、酸性溶液は塩酸と過酸化水素水と水と
の混合液に限定されるものではなく、例えば、塩酸と過
酸化水素水との混合液、硫酸と過酸化水素水とを含む混
合液、王水などを採用してもよい。このように、酸性溶
液として、塩酸と過酸化水素水とを含む混合溶液、硫酸
と過酸化水素水とを含む混合溶液、王水などを採用する
ことにより、酸性溶液を一般的な半導体製造プロセスで
用いられる薬品から得ることができるから、酸性溶液を
比較的低コストで得ることができ、結果的に電界放射型
電子源10の製造コストを低減することができる。
【0023】ところで、本実施形態の電界放射型電子源
10をディスプレイの電子源として利用する場合には、
下部電極2、表面電極7、強電界ドリフト層6などを適
宜にパターニングして多数の電子源素子10aを基板1
の上記一表面側にマトリクス状に配列すればよい。
【0024】(実施例)実施形態にて説明した電界放射
型電子源10の製造方法を基本として洗浄プロセスの条
件を変化させて電界放射型電子源10を作成して電子放
出特性を測定した結果について図5および図6を参照し
て説明するが、その前にまず、各電界放射型電子源10
の製造方法に関して共通の条件について簡単に説明す
る。
【0025】基板1としては、厚さが0.7mmのガラ
ス基板を用いた。基板1の上記一表面側に成膜する多結
晶シリコン層3(図1(a)参照)の膜厚は1.5μm
とし、多結晶シリコン層3の成膜は、プラズマCVD法
により行った。ナノ結晶化プロセスでは電解液として、
55wt%のフッ化水素水溶液とエタノールとを略1:
1で混合した電解液を用い、光源として500Wのタン
グステンランプを用い、下部電極2からなる陽極と白金
電極からなる陰極との間に電流密度が12mA/cm
の電流を10秒間流した。酸化プロセスでは、エチレン
グリコール中に0.04Mの硝酸カリウムを溶かした電
解液を用い、下部電極2を陽極、白金電極を陰極として
陽極と陰極との間の電圧が20Vだけ上昇するまで0.
1mA/cmの定電流を流して複合ナノ結晶層4の酸
化を行った。表面電極7としては、蒸着法によって膜厚
が10nmの金薄膜を形成した。
【0026】図5は、洗浄プロセスにおいて、塩酸と過
酸化水素水と水とを1:1:5で混合した混合溶液を7
0℃に加熱した酸性溶液中に酸化した複合ナノ結晶層を
10分間だけ浸す洗浄工程を行ってから、水洗工程を行
った場合の電界放射型電子源(以下、実施例の電界放射
型電子源と称す)、図6は、洗浄プロセスにおいて洗浄
工程を行わずに水洗工程のみを行った場合の電界放射型
電子源(以下、比較例の電界放射型電子源と称す)、そ
れぞれの測定結果を示している。
【0027】各電界放射型電子源の電子放出特性の測定
は、真空チャンバ(図示せず)内に電界放射型電子源を
導入して、上述の図3のように、表面電極7に対向して
コレクタ電極21を配置し、表面電極7を下部電極2に
対して高電位側として直流電圧(駆動電圧)Vpsを印加
するとともに、コレクタ電極21を表面電極7に対して
高電位側として直流電圧Vcを印加することによって行
った。図5および図6は上述の直流電圧Vcを100V
一定、直流電圧(駆動電圧)Vpsを18V一定とし、真
空チャンバ内の真空度を5×10−5Paとしたときの
電子放出特性の測定結果を示したものであって、各図の
横軸は駆動開始からの経過時間、左側の縦軸は電流密
度、右側の縦軸は電子放出効率であり、イはダイオード
電流Ipsの電流密度、ロはエミッション電流Ieの電流
密度、ハは電子放出効率を示している。
【0028】図5および図6から、実施例と比較例とを
比較すれば、従来例の電界放射型電子源ではエミッショ
ン電流Ieの電流密度および電子放出効率が比較的短時
間で減少しているのに対して、実施例の電界放射型電子
源ではエミッション電流Ieの電流密度および電子放出
効率の減少はほとんどみられず、実施例の電界放射型電
子源の方が比較例に比べてエミッション電流Ieおよび
電子放出効率の経時安定性が向上していることが分か
る。
【0029】
【発明の効果】請求項1の発明は、下部電極と、下部電
極に対向する表面電極と、下部電極と表面電極との間に
介在しナノメータオーダの多数の半導体微結晶および各
半導体微結晶それぞれの表面に形成され半導体微結晶の
結晶粒径よりも小さな膜厚の酸化膜よりなる多数の絶縁
膜を有する強電界ドリフト層とを備え、下部電極と表面
電極との間に表面電極を高電位側として電圧を印加する
ことにより下部電極から注入された電子が強電界ドリフ
ト層をドリフトし表面電極を通して放出される電界放射
型電子源であって、強電界ドリフト層を形成するにあた
っては、ナノメータオーダの多数の半導体微結晶を有す
る結晶層を酸化した後に酸性溶液により残留不純物を除
去する洗浄工程を含むので、強電界ドリフト層中に混入
している可動イオンや重金属などの残留不純物の濃度を
低減することができ、従来に比べてエミッション電流お
よび電子放出効率の経時安定性が向上した電界放射型電
子源を提供できるという効果がある。
【0030】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て、前記酸性溶液は、塩酸と過酸化水素水とを含む混合
溶液、硫酸と過酸化水素水とを含む混合溶液、王水から
選択されるので、前記酸性溶液を一般的な半導体製造プ
ロセスで用いられる薬品から得ることができるから、前
記酸性溶液を比較的低コストで得ることができ、結果的
に電界放射型電子源の製造コストを低減することができ
るという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の電界放射型電子源の製造方法を説明
するための主要工程断面図である。
【図2】同上の電界放射型電子源の概略断面図である。
【図3】同上の動作説明図である。
【図4】同上の動作説明図である。
【図5】実施例の電界放射型電子源の電子放出特性図で
ある。
【図6】比較例の電界放射型電子源の電子放出特性図で
ある。
【符号の説明】
1 基板 2 下部電極 3 多結晶シリコン層 4 複合ナノ結晶層 6 強電界ドリフト層 7 表面電極 10 電界放射型電子源 10a 電子源素子
フロントページの続き (72)発明者 相澤 浩一 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 (72)発明者 菰田 卓哉 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 Fターム(参考) 5C127 CC18 CC21 CC22 DD99 EE03

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下部電極と、下部電極に対向する表面電
    極と、下部電極と表面電極との間に介在しナノメータオ
    ーダの多数の半導体微結晶および各半導体微結晶それぞ
    れの表面に形成され半導体微結晶の結晶粒径よりも小さ
    な膜厚の酸化膜よりなる多数の絶縁膜を有する強電界ド
    リフト層とを備え、下部電極と表面電極との間に表面電
    極を高電位側として電圧を印加することにより下部電極
    から注入された電子が強電界ドリフト層をドリフトし表
    面電極を通して放出される電界放射型電子源であって、
    強電界ドリフト層を形成するにあたっては、ナノメータ
    オーダの多数の半導体微結晶を有する結晶層を酸化した
    後に酸性溶液により残留不純物を除去する洗浄工程を含
    むことを特徴とする電界放射型電子源の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記酸性溶液は、塩酸と過酸化水素水と
    を含む混合溶液、硫酸と過酸化水素水とを含む混合溶
    液、王水から選択されることを特徴とする請求項1記載
    の電界放射型電子源の製造方法。
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