JP2003296923A - 磁気記録媒体及びその製造方法並びに磁気記憶装置 - Google Patents

磁気記録媒体及びその製造方法並びに磁気記憶装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 記録層の面内方向の磁気的交換結合力が低
く、遷移ノイズが低減され、高S/Nで情報を再生でき
る磁気記録媒体及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 磁気記録媒体600は、基板1上に軟磁
性層63、シード層64及びCo/Pd交互積層構造を
有する記録層65を備える。シード層64はFe酸化物
を含む。かかるシード層64により、記録層65の面内
方向の磁気的交換結合力は弱められる。これにより記録
層65に微細な記録磁区が形成できるとともに磁化遷移
領域も明瞭となり、情報再生時のノイズが低減する。す
なわち、高密度に情報を記録しても低ノイズで再生でき
る。かかる磁気記録媒体を備える磁気記憶装置は150
Gb/inchの面記録密度を達成できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録媒体及び
その製造方法並びに磁気記憶装置に関し、更に詳細に
は、ハードディスク、フロッピーディスク(登録商標)
のようにヘッドが一時的または定常的に接触するタイプ
の磁気記録媒体及びその製造方法並びに磁気記憶装置に
関する。
【0002】
【従来の技術】近年の高度情報化社会の進展に対応し
て、情報記録装置の大容量化・高密度化に対するニーズ
は高まる一方である。かかるニーズに応える情報記録装
置の一つとして磁気記憶装置が知られている。磁気記憶
装置は、例えば、大型サーバー、並列型コンピュータ、
パーソナルコンピュータ、ネットワークサーバー、ムー
ビーサーバー、モバイルPC等の大容量記憶装置として
使用されている。磁気記憶装置は、情報が記録される磁
気記録媒体と、磁気記録媒体の情報を記録再生するため
の磁気ヘッドを備える。磁気記録媒体は、円板状の基板
の上に記録層としてコバルト合金などの強磁性薄膜がス
パッタ法などにより形成されており、記録層上には、耐
摺動性、耐食性を高めるために、保護膜と潤滑膜が形成
されている。
【0003】磁気記憶装置の大容量化に伴って、磁気記
録媒体の記録層に微細な記録磁区を記録することによる
磁気記録媒体の記録密度の向上が進められており、記録
磁区を微細に記録するための方法として垂直磁気記録方
式が注目されている。垂直磁気記録方式では、垂直磁化
を示す記録層を有する磁気記録媒体を用いて、記録層に
垂直磁化を有する磁区を形成することによって磁気記録
を行なう。かかる垂直磁気記録方式では記録層に微細な
磁区を形成できるため磁気記録媒体の記録密度を高める
ことができる。
【0004】かかる垂直磁気記録方式に従う磁気記録媒
体の記録層の材料としては、従来、Co−Cr系の多結
晶膜が用いられてきた。この多結晶膜は、強磁性を有す
るCoリッチな領域と非磁性のCrリッチな領域とが互
いに分離された構造を有し、非磁性領域が、隣り合う強
磁性領域の間で働く磁気的相互作用を断ち切っている。
これにより高密度化と低ノイズを実現している。
【0005】また、垂直磁気記録方式においては、磁気
ヘッドからの磁界を効率よく記録層に印加させるため
に、軟磁性材料からなる軟磁性層と、硬磁性材料からな
り、情報を記録するための記録層とを組み合わせた2層
の磁性膜を備える磁気記録媒体が提案されている。
【0006】磁気記録媒体の面記録密度を更に向上させ
るためには、媒体ノイズを低減させる必要がある。その
ためには、磁化反転単位の微細化や読み取りヘッドの高
感度化が有効なことがわかっている。このうち、磁化反
転単位を微細化するには、磁性結晶粒を微細化すればよ
いことがわかっている。しかし、磁性結晶粒をあまり微
細化してしまうと、磁性結晶粒の磁化状態が熱的に不安
定になる、いわゆる熱減磁を起こしてしまう。これを防
ぐために、例えば、特開平8−30951号公報には、
非磁性基板上に、軟磁性層、炭素からなる第1中間層、
第2中間層及び人工格子構造を持つ記録膜を順に積層し
た磁気記録媒体が開示されている。
【0007】ところで、磁気記録媒体の記録層として、
上述のCo−Cr系の多結晶膜よりも高い磁気異方性を
有し、熱擾乱に対する耐性に優れる磁性層の研究が進め
られており、かかる磁性層として、例えば、CoとPd
もしくはCoとPtを交互に積層した人工格子多層膜
(交互積層多層膜ともいう)や、FeとPtもしくはC
oとPtなどの合金膜を高温で熱処理することによって
得られる規則格子合金膜などが知られている。これら人
工格子多層膜や規則格子合金膜は、高い磁気異方性を有
するため、熱擾乱に対しては高い耐性が期待される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の膜はCo−Cr系多結晶膜と異なり、面内方向(基板
表面に対して平行な方向)の磁気的相互作用が強いため
に小さな磁区が形成できず、転移性の媒体ノイズが大き
いという欠点があった。前述の特開平8−30951号
公報に開示されている磁気記録媒体では、軟磁性層上に
形成した炭素からなる第1中間層の上にPtまたはPd
からなる第2中間層を設け、その上にCo/Ptあるい
はCo/Pd人工格子膜を形成することにより、人工格
子膜の結晶配向を向上させ、垂直磁気異方性を高くして
保磁力を向上させている。しかしながら、かかる磁気記
録媒体では、記録層の面内方向の磁気的交換結合力が強
くなり、線記録密度が高くなったときにジッターとして
現れる遷移ノイズが高くなってしまい、高記録密度の記
録再生は困難であった。また、第1中間層と第2中間層
の2つの中間層を用いているため、磁気ヘッドからの書
き込み磁界が軟磁性層まで有効に到達せず、飽和記録特
性が劣るという問題があった。
【0009】特許公報第2727582号には、耐蝕
性、耐久性等の実用特性に優れるとともに、垂直磁気特
性、磁気光学特性に優れる垂直磁気記録膜として、F
e、Co、Niのいずれかの酸化物あるいは任意の組み
合わせによる複合酸化物からなる下地膜の上にCo−P
t人工格子膜が積層されてなる垂直磁化膜が開示されて
いる。
【0010】本発明は、上記従来技術の問題を解決する
ためになされたものであり、その目的は、記録層の面内
方向の磁気的交換結合力が低く、遷移ノイズが低減さ
れ、高S/Nで情報を再生できる磁気記録媒体及びその
製造方法を提供することにある。
【0011】本発明の別の目的は、優れた耐熱擾乱特性
を備え、高い面記録密度で情報を記録してもその情報を
高S/Nで再生できる磁気記憶装置を提供することにあ
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の態様に従
えば、磁気記録媒体であって、基板と;該基板上に直接
または間接的に形成された、Fe酸化物を含むシード層
と;該シード層上に直接形成された、Pd及びPtの少
なくとも一方の白金族元素層とCo層とを交互に積層し
て形成された記録層と;を備えた磁気記録媒体が提供さ
れる。
【0013】本発明の磁気記録媒体は、基板と、Pd及
びPtの少なくとも一方の白金族元素層とCo層とを交
互に積層して形成され、情報を記録するための記録層
と、Fe酸化物を含むシード層とを備える。シード層
は、その表面に記録層を構成する磁性粒子の核を所定の
間隔で成長させることができる。記録層は、人工格子構
造で垂直磁化を示す硬磁性材料から形成されていること
が好ましい。また、上記基板と上記シード層との間に軟
磁性材料から形成された軟磁性層が形成されていること
が好ましい。かかる記録層の下地として、Fe酸化物を
含むシード層を形成することにより、微小な磁性粒子の
集合体からなる記録層を形成することができる。その理
由を以下に説明する。
【0014】シード層に含まれるFe酸化物は、記録層
を構成する白金族元素、例えば、PtやPdに対して濡
れ性が低い。それゆえ、かかるシード層上に、Ptまた
はPdを例えばスパッタ法を用いて堆積すると、Ptま
たはPdは、その表面張力によりシード層上で面内方向
に微細に分散して形成される。このように、シード層上
で微細に分散して存在するPtまたはPdは、記録層の
磁性粒子が成長する核となるため、その上にCoとPt
またはPdとを交互に堆積させることにより、それらの
核から磁性粒子は個別に且つ孤立した状態で成長する。
こうして成長した磁性粒子は、かかる微細に分散した核
を単位としているので比較的微小な磁性粒子がシード層
上に得られることになる。記録層は、このような微小な
磁性粒子の集合体から構成されるので、微小な記録磁区
を形成することができるとともに、記録層の磁性粒子の
磁気的相互作用も低減され、しかも記録磁区同士の境界
部分が明瞭になるため、ノイズを低減することができ
る。
【0015】本発明の磁気記録媒体において、シード層
はFe酸化物に加え、金属として存在するFe(Fe金
属)を含むことが好ましく、かかるシード層を備える磁
気記録媒体は媒体ノイズを一層低減することができる。
その理由について以下に説明する。
【0016】Fe酸化物に加えてFe金属を含んでいる
シード層は、Fe酸化物中に極めて微小なFe金属粒子
が分散した状態であると考えられる。上述したように、
Fe酸化物は、例えば記録層を構成する元素である白金
族元素例えばPdやPtとの濡れ性が低い。一方、Fe
金属はPdやPtと濡れ性が高い。そのため、Fe金属
粒子がFe酸化物中で分散して存在するシード層上にP
dまたはPtを堆積すると、PdまたはPtはFe金属
に選択的に吸着する。このとき、シード層中のFe金属
は極めて微小であるため、Fe金属に吸着したPdまた
はPtは、前述のFe酸化物からなるシード層上に形成
した場合よりも一層微小となる。しかも、Fe金属の周
囲には、PdまたはPtに対して濡れ性の悪いFe酸化
物が存在するため、シード層上に堆積されたPdまたは
Ptは、二次元的に、すなわち面内方向に広がることが
制限され、微小な状態を維持したまま所定の間隔で個別
に分散すると考えられる。このように、極めて微小に分
散したPdまたはPtは、記録層の磁性粒子が成長する
核となるため、その上にCoとPdまたはPtとを交互
に堆積させることにより、それら微小な核から、記録層
の磁性粒子が成長する。すなわち、Fe酸化物とFe金
属とを含むシード層を記録層の下地として用いた場合
は、シード層中のFe金属が、記録層に極めて微細な磁
性粒子を成長させるための核としての役割を果たしてい
る。そして、かかる微小な核を単位に磁性粒子が成長す
るため、微小な磁性粒子から形成された記録層が得られ
る。これにより、記録層に形成される磁区もまた微細化
し、ノイズを一層低減することが可能となる。
【0017】また、本発明の磁気記録媒体においては、
シード層中に金属として存在するFeの原子数をFe
Metとし、酸化物として存在するFeの原子数をFe
Oxiとしたときに、それらの原子数比(FeMet
FeOxi)が0.02<(FeMet/FeOxi
<0.2を満足することが好ましい。後述する実施例に
示すように、上記原子数比が0.02よりも大きいとき
に、記録層に高密度に情報を記録することができるとと
もに高S/Nでその情報を再生することができる。しか
し、上記原子数比が0.2よりも大きくなると、シード
層中のFe金属が多くなりすぎて白金族元素の吸着に選
択性がなくなって記録層に微小な磁性粒子を形成できな
くなるおそれがある。
【0018】本発明の磁気記録媒体において、Fe酸化
物を含むシード層は、全体として80vol%以上のFe
酸化物を含むことが好ましく、後述するように軟磁性層
を高温で酸化させることによりシード層を形成した場合
には、Fe酸化物或いはFe金属以外に不純物を10at
%程度含んでいてもよい。
【0019】本発明の磁気記録媒体において、シード層
の膜厚は、磁気スペーシングとなって記録効率が低下し
ないようにするために30nm以下であることが好まし
い。
【0020】本発明の磁気記録媒体において、硬磁性材
料を用いて形成される記録層は膜面に対して垂直方向に
磁化を有する垂直磁化膜にし得る。かかる記録層には、
人工格子多層膜(交互積層多層膜)に加えて、規則格子
合金膜を用いることができる。硬磁性材料としては、主
として白金族元素とCoとから構成される材料であるこ
とが好ましい。白金族元素はPt及びPdの少なくとも
一方の元素が好適であり、かかる白金族元素とCoとを
交互に積層した交互積層多層膜を用いて記録層を形成す
ることが好ましい。交互積層多層膜や規則格子合金膜
は、室温または比較的低い基板温度で成膜することがで
きるため生産性に優れ、しかも、高い磁気異方性を有す
るため耐熱擾乱特性に優れている。それゆえ、高密度記
録用の記録層として極めて最適である。
【0021】本発明の磁気記録媒体において、軟磁性層
は、磁気ヘッドからの磁界を記録層に効率的に印加する
という観点から、Fe中にTa、Nb、Zrのうちより
選ばれる少なくとも1種類の元素の窒化物あるいは炭化
物を均一に分散させた微結晶構造を有する軟磁性膜が好
適である。また、かかる材料以外に、例えば、Co−Z
rを主体とし、これにTa、Nb、Tiのうちより選ば
れる少なくとも1種類の元素を含んだ非晶質合金であっ
てもよい。これらの軟磁性膜は1.5T以上の大きな飽
和磁束密度を有するため高密度記録に適している。具体
的な材料としては、高透磁率を有するNiFe、CoT
aZr、CoNbZr、FeTaC等を用いることがで
き、これらの材料からなるな磁性層は、膜厚1000n
m以下でスパッタ法や蒸着法等によって形成することが
できる。
【0022】本発明では、軟磁性層の表面が平坦である
ことが好ましく、軟磁性層の表面の表面粗さRaは0.
20nm〜0.40nmであることが好ましい。このよ
うに、表面が平坦な軟磁性層を用いると、後述する実施
例に示すように、記録層の磁性結晶粒子の境界すなわち
結晶粒界は極めて明瞭となり、記録層の磁性結晶粒子の
孤立化が一層促進される。かかる記録層の磁性結晶粒子
は結晶粒界によって磁気的に分断されているため、面内
方向の磁気的交換結合力が低減している。これにより記
録層には微小な磁区を形成することが可能となるととも
に磁化遷移領域の直線性が高くなる。軟磁性層の表面を
平坦にすることにより、記録層の結晶粒界が明瞭となる
のは以下の原理によるものと考えられる。
【0023】軟磁性層上にシード層を成膜するとき、軟
磁性層表面に凹凸が存在すると、スパッタ粒子が凹凸部
に捕獲されてしまうと考えられる。このため、軟磁性層
上には、シード層を構成する粒子が十分な間隔で隔てら
れることなく成長した初期成長層が形成されると考えら
れる。一方、軟磁性層の表面が平坦であると、軟磁性層
表面に到達したスパッタ粒子はその面方向に十分拡散す
るため、シード層を形成する粒子が互いに十分に隔てら
れた状態で成長した初期成長層が成膜される。このよう
に十分な間隔で隔てられた初期成長層に基づいて形成さ
れたシード層は、SiN(或いはSiN網構造)中にお
いて微結晶或いは部分的非晶質構造として存在するPd
またはPtも十分な間隔で隔てられ、分散が一層促進さ
れているものと考えられる。このようにPdまたはPt
の分散が一層促進されたシード層上に記録層を成膜する
ことにより、記録層に極めて明瞭な結晶粒界が得られて
いると考えられる。軟磁性層の表面を平坦にするには、
例えば、軟磁性層の成膜後、表面をドライエッチングす
ればよい。
【0024】本発明の磁気記録媒体において、基板に
は、例えば、アルミニウム・マグネシウム合金基板、ガ
ラス基板、グラファイト基板などの非磁性基板を用い得
る。アルミニウム・マグネシウム合金基板には、表面を
ニッケル・リンでメッキしてもよい。基板を回転させな
がら、基板表面にダイヤモンド砥粒や研磨用テープを押
し当てることにより基板表面を平坦に処理してもよい。
これにより、磁気記録媒体上を磁気ヘッドを浮上させた
ときに、磁気ヘッドの走行特性を向上させることができ
る。基板表面の中心線粗さRaは、基板上に形成される
保護膜の中心線粗さが1nm以下となるように望まし
い。ガラス基板においては、強酸などの薬品により表面
を化学的にエッチングして平坦化してもよい。また、化
学的に表面に微細な高さ、例えば、1nm以下の突起を
形成することにより、負圧スライダーを用いた場合に安
定な低浮上量を実現することができる。
【0025】磁気記録媒体の基板上には、上記軟磁性層
を成膜する前に密着性を向上させるためにTiなどの接
着層を形成しても良い。
【0026】本発明の磁気記録媒体は記録層上に保護層
を備え得る。保護膜としては、例えば、非晶質炭素、ケ
イ素含有非晶質炭素、窒素含有非晶質炭素、ホウ素含有
非晶質炭素、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム及び立方晶
窒化ホウ素のうちのいずれか一種を好適に用いることが
できる。これら非晶質炭素保護膜の形成方法としては、
例えば、グラファイトをターゲットとした不活性ガス
中、あるいは不活性ガスとメタンなどの炭化水素ガスの
混合ガス中のスパッタリングによって形成する方法や、
炭化水素ガス、アルコール、アセトン、アダマンタンな
どの有機化合物を単独あるいは水素ガス、不活性ガスな
どを混合してプラズマCVDにより形成する方法、ある
いは有機化合物をイオン化して電圧をかけて加速し、基
板に衝突させて形成する方法などがある。更には、高出
力のレーザー光をレンズで集光し、グラファイト等のタ
ーゲットに照射するアブレーション法によって保護膜を
形成してもよい。
【0027】保護膜の上には、耐摺動特性を良好なもの
にするために、潤滑剤を塗布することができる。潤滑剤
としては、主鎖構造が炭素、フッ素、酸素の3つの元素
からなるパーフルオロポリエーテル系高分子潤滑剤が用
いられる。或いは、フッ素置換アルキル化合物を潤滑剤
として用いることもできる。安定な摺動と耐久性を有す
る材料であれば、他の有機系潤滑剤や無機系潤滑剤を用
いてもよい。
【0028】これらの潤滑剤の形成方法としては溶液塗
布法が一般的である。また、地球温暖化を防ぐため、あ
るいは工程を簡略化するために、溶剤を使わない光CV
D法によって潤滑膜を形成してもよい。光CVD法は、
フッ化オレフィンと酸素の気体原料に紫外光を照射する
ことによって行われる。
【0029】潤滑剤の膜厚としては、平均値として0.
5nm〜3nmが適当である。0.5nmより薄いと潤
滑特性が低下し、3nmよりも厚くなるとメニスカス力
が大きくなり、磁気ヘッドと磁気ディスクの静摩擦力
(スティクション)が大きくなるため好ましくない。こ
れら潤滑膜を形成した後に100℃前後の熱を1〜2時
間窒素中あるいは空気中で与えてもよい。これにより、
余分な溶剤や低分子量成分を飛ばして潤滑膜と保護膜の
密着性を向上させることができる。かかる後処理以外
に、例えば、潤滑膜形成後に紫外線ランプにより紫外線
を短時間照射させる方法を用いてもよく、かかる方法に
よっても同様の効果が得られる。
【0030】本発明の第2の態様に従えば、磁気記録媒
体の製造方法であって、基板を用意する工程と;上記基
板上に軟磁性層を形成する工程と;上記軟磁性層上に、
Fe酸化物を含むシード層を形成する工程と;上記シー
ド層上に直接Pd及びPtの少なくとも一方の白金族元
素とCoとを交互に供給して成膜することにより記録層
を形成する工程と;を含む磁気記録媒体の製造方法が提
供される。
【0031】本発明の製造方法においては、例えば、F
eを主体とするターゲットを、酸素を含むスパッタガス
を用いて反応性スパッタすることによってシード層を形
成することができる。かかる方法により形成されたシー
ド層はFe酸化物を含んでいる。
【0032】また、本発明の製造方法では、スパッタガ
ス中の酸素ガスの流量を制御することによって、Fe酸
化物に加えてFe金属を含んだシード層を形成すること
ができる。Fe酸化物とFe金属とを含むシード層は、
前述したように、記録層の下地として用いた場合に、記
録層に微小な磁性粒子の集合体を形成することができる
ので、かかるシード層を備える磁気記録媒体は媒体ノイ
ズを一層低減することができる。また、上述のように、
酸素ガスの流量を制御してシード層中にFe金属を形成
する場合は、シード層を形成してからシード層上に記録
層を形成するまでの間に、シード層の表面をスパッタエ
ッチングすることが望ましい。その理由について以下に
説明する。
【0033】酸素ガスを含有するスパッタガスを用いて
反応性スパッタによりシード層を形成した後は、成膜チ
ャンバー内には酸素ガスが残留している。この酸素ガス
を完全に排気するには一定の時間を要するため、その
間、チャンバー内に残留する酸素ガスによってシード層
中のFe金属の表面に酸化皮膜が薄く形成されてしま
う。かかる酸化被膜は、例えばシード層上に白金族元素
を含む記録層を形成するときに、記録層中の白金族元素
がFe金属に吸着することを阻害するため、白金族元素
の吸着選択性が低下するおそれがある。そこで、上述の
ように、シード層の成膜後に、シード層の表面をスパッ
タエッチングしてFe金属の表面に形成された酸化皮膜
を除去することにより、記録層を構成するPdやPtな
どの白金族元素をシード層表面のFe金属に確実に吸着
させることができるため、記録層に微小な磁性粒子を形
成することができる。スパッタエッチングに用いるガス
はAr,Kr,Xeなどの不活性ガス、もしくはこれら
の不活性ガスと水素ガスとの混合ガスが好適である。
【0034】また、本発明の製造方法において、例え
ば、軟磁性層としてFeを含む軟磁性層を用いた場合に
は、Feを含む軟磁性層を形成した後に、軟磁性層の表
面を高温で酸化させることによってもFe酸化物を含む
シード層を形成することができる。
【0035】本発明の製造方法において、軟磁性層、第
1シード層、第2シード層及び記録層の形成方法として
は、例えば、真空蒸着法、MBE法、スパッタ法、イオ
ンビーム法、分子層エピタキシー法、プラズマCVD等
を用いることができる。スパッタ法としては、例えば、
ECRスパッタ法、DCスパッタ法、RFスパッタ法な
ど既に知られたスパッタ法を用いることができる。
【0036】本発明の第3の態様に従えば、第1の態様
の磁気記録媒体と;情報を記録または再生するための磁
気ヘッドと;上記磁気記録媒体を上記磁気ヘッドに対し
て駆動するための駆動装置と;を備える磁気記憶装置が
提供される。
【0037】本発明の磁気記憶装置は、本発明の第1の
態様の磁気記録媒体を備えるので、高い面記録密度で情
報を記録してもその情報を高S/Nで再生できるととも
に、優れた耐熱擾乱特性を備えている。
【0038】本発明の磁気記憶装置において、磁気ヘッ
ドは、磁気記録媒体に情報を記録するための記録用磁気
ヘッドと、磁気記録媒体に記録された情報を再生するた
めの再生用磁気ヘッドとから構成され得る。記録用磁気
ヘッドのギャップ長は、0.2μm〜0.02μmが望
ましい。ギャップ長が0.2μmを越えると、400k
FCI以上の高い線記録密度で記録することが困難にな
る。また、ギャップ長が0.02μmより小さい記録ヘ
ッドは製造が困難であり、静電気誘起による素子破壊が
起こりやすくなる。
【0039】再生用磁気ヘッドは、磁気抵抗効果素子を
用いて構成することができる。再生用磁気ヘッドの再生
シールド間隔は、0.2μm〜0.02μmが望まし
い。再生シールド間隔は、再生分解能に直接関係し、短
いほど分解能が高くなる。再生シールド間隔の下限値
は、素子の安定性、信頼性、耐電気特性、出力等に応じ
て上記範囲内で適宜選択することが望ましい。
【0040】本発明の磁気記憶装置において、駆動装置
は、磁気記録媒体を回転駆動させるスピンドルを用いて
構成することができ、スピンドルの回転速度は毎分30
00回転〜20000回転が望ましい。スピンドルの回
転速度が毎分3000回転より遅いとデータ転送速度が
低くなるため好ましくない。また、毎分20000回転
を越えると、スピンドルの騒音や発熱が大きくなるため
望ましくない。これらの回転速度を勘案すると、磁気記
録媒体と磁気ヘッドの最適な相対速度は2m/秒〜30
m/秒となる。
【0041】
【発明の実施の形態】以下、本発明に従う磁気記録媒体
及びそれを用いた磁気記憶装置の実施例について図面を
用いて具体的に説明する。以下の実施例では、磁気記録
媒体として、磁気ディスク(ハードディスク)を作製し
たが、本発明は、フロッピーディスク(登録商標)、磁
気テープ、磁気カードなどのように、記録または再生時
に磁気ヘッドと磁気記録媒体が接触するタイプの記録媒
体にも適用できる。
【0042】
【実施例1】図1に、本発明の磁気記録媒体の概略断面
図を示す。磁気記録媒体100は、密着層2を有する基
板1上に、軟磁性層3、シード層4、記録層5、保護層
6及び潤滑層7を備える。かかる積層構造を有する磁気
記録媒体100の製造方法を以下に説明する。
【0043】まず、直径65mmのガラス基板1を用意
し、ガラス基板1上に連続スパッタ装置により、密着層
2として厚さ5nmのTiを成膜した。
【0044】次いで、密着層2上に、軟磁性層3とし
て、Fe79Ta12を膜厚400nmにて成膜し
た。更に、成膜されたFe79Ta12を真空中で
カーボンヒーターにより450℃の温度で30秒間加熱
した後、徐冷した。こうしてFeの微結晶を含有する軟
磁性層3を形成した。
【0045】次いで、基板1を交互スパッタ装置のチャ
ンバーに移送し、軟磁性層3上にシード層4を成膜し
た。シード層4の成膜では、チャンバー内にアルゴンガ
スを導入しながら、PdターゲットをDCスパッタし、
SiNターゲットをRFスパッタすることにより、軟磁
性層3上に、73at%のPdと、26at%のSiと、1
at%のNからなるシード層4を膜厚5nmで成膜した。
【0046】つぎに、シード層4上に人工格子構造の記
録層5を成膜した。記録層5の成膜では、Arガス中
で、CoターゲットとPdターゲットのシャッターを交
互に開閉しながらDCスパッタして、Co層とPd層と
が交互に積層された人工格子構造の記録層5を形成し
た。Co層の1層あたりの膜厚は0.12nm、Pd層
の1層あたりの膜厚は0.85nmであり、Pd層とC
o層の積層数はそれぞれ26層であった。
【0047】次いで、記録層5上に、アモルファスカー
ボンからなる保護層6をプラズマCVD法により膜厚3
nmにて形成した。保護層6の形成後、基板を成膜装置
から取り出した。最後に、保護層6上にパーフルオロポ
リエーテル系潤滑剤を1nmの厚さで塗布して潤滑層7
を形成した。
【0048】こうして図1に示す積層構造を有する磁気
記録媒体100を作製した。
【0049】
【実施例2】シード層に更にCoを含有させた以外は、
実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製した。シード
層の成膜では、Arガスをチャンバー内に導入しながら
CoターゲットとPdターゲットをDCスパッタし、S
iNターゲットをRFスパッタした。これにより、軟磁
性層上に、6at%のCoと、70at%のPdと、23at
%のSiと、1at%のNからなるシード層を成膜した。
【0050】
【実施例3】本実施例では、人工格子構造の記録層を、
交互スパッタ法により、膜厚0.15nmのCo層と膜
厚0.85nmのPt層とを15周期繰り返して成膜し
た。また、かかる人工格子構造の記録層の結晶成長を良
好に制御するために、シード層として73at%のPt、
26at%のSi、1at%のNからなるシード層を膜厚5
nmにて形成した。これ以外は、実施例1と同様にして
磁気記録媒体を作製した。
【0051】
【実施例4】図3に、本発明に従う磁気記憶装置200
の概略構成図を示す。磁気記憶装置200は、磁気記録
媒体100と、磁気記録媒体100を回転駆動するため
の回転駆動部18と、磁気ヘッド10と、磁気ヘッド1
0を磁気記録媒体上で所望の位置に移動させるヘッド駆
動装置11と、記録再生信号処理装置12を備える。磁
気記録媒体100には実施例1で作製した磁気記録媒体
を用いた。磁気ヘッド10は、単磁極型書き込み素子と
GMR(Giant Magneto-Resistive)読み込み素子を備
え、ヘッド駆動装置11のアームの先端に設けられてい
る。磁気ヘッド10の単磁極型書き込み素子は、情報記
録時に磁気記録媒体に記録するデータに応じた磁界を印
加して磁気記録媒体に情報を記録することができる。磁
気ヘッド10のGMR読み込み素子は、磁気記録媒体か
らの漏洩磁界の変化を検出して磁気記録媒体に記録され
ている情報を再生することができる。記録再生信号処理
装置12は、磁気記録媒体100に記録するデータを符
号化して磁気ヘッド10の単磁極型書き込み素子に記録
信号を送信することができる。また、記録再生信号処理
装置12は、磁気ヘッド10のGMR読み込み素子によ
り検出された磁気記録媒体100からの再生信号を復号
することができる。
【0052】かかる磁気記憶装置200を駆動し、磁気
的スペーシング(磁気ヘッド10の主磁極表面と磁気記
録媒体100の記録層表面との距離)を13nmに維持
しながら、線記録密度1000kBPI、トラック密度
150kTPIの条件にて情報を記録し、記録した情報
を再生して記録再生特性を評価したところ、トータルS
/Nとして24.5dBを得た。更に、面記録密度15
0ギガビット/平方インチの記録密度にて記録再生する
ことができた。また、ヘッドシーク試験として、磁気ヘ
ッドを磁気記録媒体上の内周から外周まで10万回シー
クさせ、かかるヘッドシーク試験後に磁気記録媒体のビ
ットエラーを測定したところビットエラー数は10ビッ
ト/面以下であり、30万時間の平均故障間隔を達成す
ることができた。なお、上記S/Nは下記式を用いて求
めた。 S/N=20log(S0−p/Nrms) 式中、S0−pは、ゼロ点からピークまで(zero to pe
ak)の再生信号振幅の半分の値であり、Nrmsはスペ
クトルアナライザーにより測定したノイズの振幅の平方
自乗平均値である。
【0053】
【比較例1】シード層としてPdからなる層を膜厚5n
mで形成した以外は、実施例1と同様にして磁気記録媒
体を作製した。
【0054】
【比較例2】シード層としてPtからなる層を膜厚5n
mで形成した以外は、実施例3と同様にして磁気記録媒
体を作製した。
【0055】
【比較例3】比較例1の磁気記録媒体を実施例4に示し
た磁気記憶装置200に搭載して記録再生特性を評価し
た。磁気的スペーシング13nm、線記録密度1000
kBPI、トラック密度150kTPIの条件で記録再
生特性を評価したところ、トータルS/Nは18.5d
Bであり、十分な記録再生を行なうことができなかっ
た。更に、面記録密度50ギガビット/平方インチの記
録密度で記録した後、ヘッドシーク試験として、磁気ヘ
ッドを磁気記録媒体上の内周から外周まで10万回シー
クさせ、かかるヘッドシーク試験後に磁気記録媒体のビ
ットエラーを測定したところビットエラー数は150ビ
ット/面以下であり、19万時間の平均故障間隔であっ
た。
【0056】〔電磁変換特性の測定〕つぎに、実施例1
〜3及び比較例1、2の磁気記録媒体の電磁変換特性
を、スピンスタンドの記録再生試験機を用いて測定し
た。記録再生試験機の磁気ヘッドとしては単磁極型書き
込み素子とGMR読み取り素子の複合型ヘッドを使用し
た。単磁極型書き込み素子のメインポール(主磁極)の
実効書き込みトラック幅は110nm、Bsは2.1T
であった。また、GMR素子の実効トラック幅は97n
m、シールド間隔は45nmであった。記録再生試験の
際、磁気ヘッドの単磁極型書き込み素子の主磁極表面と
磁気記録媒体の記録層表面との間隔を13nmとした。
電磁変換特性の測定結果を図4に示す。図4において、
S/Ndは500kFCIにおけるS/Nであり、Re
は孤立波出力で割った出力分解能である。また、熱減磁
率は、24℃の環境下において、線記録密度100kF
CIにて記録した信号を再生したときの再生信号振幅の
時間に対する変化の割合とした。図4から明らかなよう
に、実施例1〜3で作製した磁気記録媒体は、良好なS
/Nが得られており、分解能も18%以上と高いのに対
し、比較例の磁気記録媒体では10%に満たなかった。
このことから、実施例1〜3の磁気記録媒体は、高域で
も遷移性ノイズが低減しており、高分解能と高S/Nが
両立されていることがわかる。
【0057】〔記録層の断面構造の観察〕つぎに、実施
例1〜3の磁気記録媒体の記録層の断面構造を、高分解
能透過型電子顕微鏡を用いて観察した。図2に、人工格
子構造の記録層5の断面構造の観察結果を模式的に示し
た。図2に示すように、記録層5は、円柱形状の結晶粒
子31の集合体から構成されており、それぞれの結晶粒
子31の上面は半球状であった。円柱形状の結晶粒子の
回転軸に対して垂直な断面の直径dは約8nmであり、
結晶粒子の表面の半球の最上部Aと最下部Bの差hは2
nmであった。記録層5は、かかる円柱形状の結晶粒子
から構成されているために面内方向の磁気的結合力が低
減され、微細な記録ビットが安定になり、磁化遷移領域
の直線性がよくなると考えられる。
【0058】更に、図4の24℃における熱減磁率の結
果からわかるように、実施例1〜3の磁気記録媒体にお
いては熱減磁が認められなかったのに対し、比較例1及
び2の磁気記録媒体においては熱揺らぎによる減磁が顕
著に見られた。この結果は、実施例1〜3の磁気記録媒
体においては記録層の磁化遷移領域が明瞭で直線性が高
いのに対し、比較例1及び2の磁気記録媒体においては
磁化遷移領域が乱れて熱的に外乱を受けやすいことを示
していると考えられる。また、オントラックで1000
kBPIにてエラーレートを測定したところ、実施例1
〜3の磁気記録媒体はいずれも1×10−5以下であっ
たのに対し、比較例1及び2の磁気記録媒体は1×10
−4以上であった。
【0059】
【実施例5】この実施例では、シード層の組成を下記表
に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして9種
類の磁気記録媒体(試料1〜9)を作製した。得られた
9種類の磁気記録媒体について、前述の電磁変換特性の
測定と同様にスピンスタンドの記録再生試験機を用い
て、S/Nd、Re及び熱減磁率を測定した。下記表に
測定結果を示した。
【0060】
【表1】
【0061】上記表1からわかるように、試料1〜7の
磁気記録媒体において14.6%以上の極めて良好なS
/Ndが得られており、分解能も19%以上と極めて高
かった。すなわち、高S/Nと高分解能が実現されてい
た。また、試料1〜7のいずれの磁気記録媒体も熱減磁
は認められておらず、熱的安定性が高いことがわかる。
一方、試料8及び9の磁気記録媒体は、S/Ndと分解
能のどちらも低かった。また熱減磁が認められていた。
以上の結果からすると、磁気記録媒体のPdSiNのシ
ード層の組成が、Pdが50at%〜80at%、Siが1
0at%〜35at%、Nが0.1at〜10at%のときに、
比較的高いS/Nと分解能が得られ、熱的安定性に優れ
ると考えられる。
【0062】
【実施例6】この実施例では、シード層の組成を下記表
2に示す値に変更した以外は、実施例3と同様にして9
種類の磁気記録媒体(試料10〜18)を作製した。得
られた9種類の磁気記録媒体について、前述の電磁変換
特性の測定と同様にスピンスタンドの記録再生試験機を
用いて、S/Nd、Re及び熱減磁率を測定した。下記
表2に測定結果を示した。
【0063】
【表2】
【0064】表2からわかるように、試料10〜16の
磁気記録媒体では14.6%以上の極めて良好なS/N
dが得られており、分解能も19%以上と極めて高かっ
た。すなわち、高S/Nと高分解能が実現されていた。
また、試料10〜16の磁気記録媒体では熱減磁は認め
られておらず、熱的安定性が高いことがわかる。一方、
試料17及び18の磁気記録媒体は、S/Ndと分解能
のどちらも低かった。また熱減磁が認められていた。以
上の結果からすると、磁気記録媒体のPtSiNのシー
ド層の組成が、Ptが50at%〜80at%、Siが10
at%〜35at%、Nが0.1at〜10at%のときに、比
較的高いS/Nと分解能が得られ、熱的安定性に優れる
ことがわかる。
【0065】
【実施例7】図5に、本実施例の磁気記録媒体の概略断
面図を示す。磁気記録媒体500は、基板上1に、軟磁
性層53、シード層54、記録層55、保護層56及び
潤滑層57を備える。かかる磁気記録媒体を以下のよう
にして製造した。
【0066】まず、直径65mmのガラス基板1を用意
し、ガラス基板1上に、軟磁性層53として、Fe79
Ta12を膜厚400nmで成膜した。更に、成膜
されたFe79Ta12の飽和磁化を高めるため
に、真空中でカーボンヒーターにより400℃の温度で
30秒間加熱した後、徐冷した。かかる加熱処理後、軟
磁性層53の表面をプラズマエッチング処理した。プラ
ズマエッチング処理は、Arガス圧0.9Pa、パワー
500Wで120秒間行なった。
【0067】次いで、基板1を交互スパッタ装置のスパ
ッタチャンバーに移送し、軟磁性層53上にシード層5
4を成膜した。シード層54の成膜では、チャンバー内
にアルゴンガスを導入しながら、PdターゲットをDC
スパッタし、SiNターゲットをRFスパッタすること
により、軟磁性層53上に、70at%のPdと、20at
%のSiと、10at%のNからなるシード層54を膜厚
3nmで成膜した。
【0068】つぎに、シード層54上に人工格子構造の
記録層55を成膜した。記録層55の成膜では、Arガ
ス中で、CoターゲットとPdターゲットのシャッター
を交互に開閉しながらDCスパッタして、Co層とPd
層とが交互に積層された人工格子構造の記録層55を形
成した。Co層の1層あたりの膜厚は0.2nm、Pd
層の1層あたりの膜厚は0.8nmであり、Pd層とC
o層の積層数はそれぞれ26層であった。
【0069】次いで、記録層55上に、アモルファスカ
ーボンからなる保護層56をプラズマCVD法により膜
厚3nmにて形成した。保護層56の形成後、基板を成
膜装置から取り出した。最後に、保護層56上にパーフ
ルオロポリエーテル系潤滑剤を1nmの厚さで溶液塗布
して潤滑層57を形成した。
【0070】こうして図5に示す積層構造を有する磁気
記録媒体500を作製した。また、軟磁性層の表面をプ
ラズマエッチングすることによる効果を調べるために、
軟磁性層の表面をプラズマエッチングしなかった以外
は、上記と同様に磁気記録媒体を作製した。
【0071】軟磁性層の表面をエッチング処理した磁気
記録媒体とエッチング処理しない磁気記録媒体につい
て、膜面に対して垂直方向に外部磁界を印加しながら記
録層のカー回転角の変化を測定した。図6に、エッチン
グ処理した磁気記録媒体の外部磁界に対するカー回転角
曲線を示す。記録層のカー回転角は、記録層の磁化の大
きさに比例するので、カー回転角と外部磁界との関係を
表すカー回転角曲線は、通常の磁化測定で求めた磁化曲
線と実質的に同等の形状であり、ヒステリシスを示す。
本実施例では、カー回転角曲線から記録層の保磁力、ニ
ュークリエーション磁界、外部磁界H=Hcにおける曲
線の傾き4π(dM/dH)H=Hcを見積もった。こ
こで、ニュークリエーション磁界とは、所定の方向に外
部磁界を印加して磁化を一旦飽和させた後に、逆方向の
外部磁界を印加させ、逆磁区(飽和された磁区の磁化に
対して逆方向に向いた磁区)が発生するときの磁界であ
る。図6のグラフにおいては、カー回転角曲線の第2象
限の肩の部分(降下開始点)に相当する。
【0072】エッチング処理した磁気記録媒体では、保
磁力Hcは3.9kOe、負のニュークリエーション磁
界は−2.1kOe、外部磁界H=Hcにおける曲線の
傾き4π(dM/dH)H=Hcは1.4であった。一
方、エッチング処理しない磁気記録媒体は、保磁力Hc
は2.6kOe、ニュークリエーション磁界は−1.6
kOe、外部磁界H=Hcにおける曲線の傾き4π(d
M/dH)H=Hcは1.8であった。
【0073】つぎに、軟磁性層にエッチング処理した磁
気記録媒体とエッチング処理しない磁気記録媒体の記録
層の表面を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察し
た。図7(a)及び(b)に、それぞれ、エッチング処
理した磁気記録媒体とエッチング処理しない磁気記録媒
体の記録層の表面のTEMによる観察像を示す。図7
(a)に示すように、エッチング処理した磁気記録媒体
の記録層は、孤立した円柱状の結晶粒子の集合体が形成
され、結晶粒子同士の境界すなわち結晶粒界は極めて明
瞭であることがわかる。一方、図7(b)に示すよう
に、エッチング処理しない磁気記録媒体の記録層は、エ
ッチング処理した磁気記録媒体の記録層に比べて、結晶
粒界は不明瞭であった。
【0074】また、記録層の表面のTEM像から結晶粒
子の平均粒径と分散度(標準偏差を平均値で割った値)
を求めた。図8に、記録層の610個の結晶粒子の直径
と結晶粒子の個数との関係をヒストグラムにして示し
た。図8(a)は、エッチング処理した磁気記録媒体の
ヒストグラムであり、図8(b)はエッチング処理しな
い磁気記録媒体のヒストグラムである。エッチング処理
した磁気記録媒体では、平均粒子径は13.7nmであ
り、分散度は21.7%であった。一方、エッチング処
理しない磁気記録媒体では、平均粒子径は11.3nm
であり、分散度は21.0%であった。
【0075】ここで、エッチング処理した磁気記録媒体
のシード層の断面をTEMにより観察したところ、シー
ド層は無秩序構造を有していた。このような無秩序構造
を有するシード層は、その表面上に、Co/Pd初期化
層を分散して形成することができ、かかるCo/Pd初
期化層を単位に柱状の結晶粒子が孤立した状態で成長す
るものと考えられる。
【0076】つぎに、エッチング処理した磁気記録媒体
とエッチング処理しない磁気記録媒体について、実施例
1で用いたスピンスタンドの記録再生試験機を用いて記
録再生試験を行なったところ、エッチング処理した磁気
記録媒体のほうがエッチング処理しない磁気記録媒体よ
りもS/Nが1.6dBだけ高かった。
【0077】原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、軟磁
性層の成膜直後の表面粗さと、プラズマエッチング後の
表面粗さを測定した。図9(a)及び(b)に、軟磁性
層の成膜直後の表面と、プラズマエッチング後の表面の
AFMによる観察像をそれぞれ示す。かかる観察像か
ら、軟磁性層の表面粗さを見積もったところ、軟磁性層
の成膜直後の表面粗さは0.46nmであったのに対
し、プラズマエッチングを行なった軟磁性層の表面粗さ
は0.39nmであり、プラズマエッチングを行なうこ
とによって軟磁性層の表面が平坦になっていることがわ
かる。このような軟磁性層の表面のプラズマエッチング
による平坦化が、記録再生特性におけるS/Nの向上に
寄与しているものと考えられる。
【0078】つぎに、エッチング処理した磁気記録媒体
に100kFCI、200kFCI、300kFCI及
び400kFCIの線記録密度で繰り返しパターンを記
録し、記録層に記録された記録マークを磁気力顕微鏡
(MFM)を用いて観察した。図10に、MFMによる
観察像を示す。図10からわかるように、線記録密度が
400kFCIであっても磁化遷移領域は極めて明瞭で
ある。
【0079】次いで、記録層に250kFCIの線記録
密度で繰り返しパターンを記録した後、かかる繰り返し
パターンに隣接するように、記録ヘッドをヘッド幅の分
だけオフトラックして同じ線記録密度で繰り返しパター
ンを記録した。そして、得られた2列の繰り返しパター
ンのトラック幅方向のほぼ中央に、100kFCIの線
記録密度で繰り返しパターンを重ね書きした。また、同
様に、記録層に100kFCIの線記録密度で繰り返し
パターンを記録した後、かかる繰り返しパターンに隣接
するように、記録ヘッドをヘッド幅の分だけオフトラッ
クして同じ線記録密度で繰り返しパターンを記録し、得
られた2列の繰り返しパターンのトラック幅方向のほぼ
中央に、250kFCIの線記録密度で繰り返しパター
ンを重ね書きした。このように、繰り返しパターン上に
異なる線記録密度で繰り返しパターンを重ね書きした記
録層のMFMによる観察像を図11に示す。図11から
わかるように、重ね書きした繰り返しパターン(オーバ
ーライトパターン)は明瞭であり、このオーバーライト
パターンのすぐ両側に存在する重ね書き前の繰り返しパ
ターンは消去されずに残っており、いわゆる、イレース
バンドは殆ど認められていない。このことから、本発明
の磁気記録媒体は、トラックピッチを狭めて記録するこ
とが可能であり、高トラック密度に対応した記録媒体で
あることがわかる。
【0080】以上の結果から、軟磁性層の表面をプラズ
マエッチングして平坦化し、平坦化された軟磁性層上に
Pd−SiNのシード層を形成することにより、シード
層上に、結晶粒子の境界すなわち結晶粒界は極めて明瞭
な記録層を形成することができる。かかる明瞭な結晶粒
界により、結晶粒子は、面内方向の磁気的結合力がより
一層低減されるため、微小な記録ビットを形成すること
が可能となるとともに磁化遷移領域の直線性が高くな
る。これにより高密度記録が可能になるとともに、高密
度記録された情報を低ノイズで再生することが可能とな
る。
【0081】
【実施例8】この実施例では、軟磁性層の表面のプラズ
マエッチング処理として、Arガス圧0.9Pa、パワ
ー400W、エッチング時間10秒間でプラズマエッチ
ングした以外は、実施例5と同様にして磁気記録媒体を
作製した。プラズマエッチング後の軟磁性層の表面粗さ
を実施例5と同様にAFMにより測定したところ、0.
40nmであった。また、実施例1と同様にスピンスタ
ンドで記録再生試験を行なったところ、エッチング処理
しないで作製した磁気記録媒体に比べてS/Nが0.5
dB高くなっていた。
【0082】
【実施例9】この実施例では、軟磁性層の表面のプラズ
マエッチング処理として、Arガス圧0.9Pa、パワ
ー600W、エッチング時間300秒間でプラズマエッ
チングした以外は、実施例5と同様にして磁気記録媒体
を作製した。プラズマエッチング後の軟磁性層の表面粗
さを実施例5と同様にAFMにより測定したところ、
0.20nmであった。また、実施例1と同様にスピン
スタンドで記録再生試験を行なったところ、エッチング
処理しないで作製した磁気記録媒体に比べてS/Nが
2.0dB高くなっていた。上述の実施例7及び8の結
果とあわせて考えると、軟磁性層の表面が平坦化される
ほどS/Nが向上することがわかる。
【0083】
【実施例10】図12に、本発明に従う磁気ディスクの
概略断面図を示す。磁気ディスク600は、基板1上
に、軟磁性材料から形成された軟磁性層63、Fe酸化
物からなるシード層64、硬磁性材料から形成された記
録層65及び保護層66を備える。本実施例の磁気記録
媒体600は、軟磁性層63としてFeTaC膜を用
い、記録層65としてCoとPdを交互に積層したCo
/Pd交互積層膜(人工格子膜)を用い、Fe酸化物か
らなるシード層64を反応性スパッタ法により形成した
場合である。磁気ディスク600を以下のような方法に
より製造した。
【0084】[軟磁性層の成膜]磁気ディスク用の基板
1として2.5インチ(約6.25cm)直径のガラス
基板を用いた。このガラス基板1上に、軟磁性層63と
してFeTaC膜をDCマグネトロンスパッタ法により
形成した。ターゲットにはFe79Ta12組成の
合金を用いた。膜厚は400nmとした。成膜後の膜に
真空中でランプ加熱処理を施した。加熱温度は450℃
とした。この加熱処理によって、FeTaC膜中にFe
微結晶が析出し、軟磁気特性が出現する。
【0085】[シード層の成膜]次いで、軟磁性層63
の上にシード層64を反応性スパッタ法により形成し
た。シード層64の成膜では、Arと酸素の混合ガス
(Arに対する酸素の流量比=20%)を導入しながら
FeターゲットをDCスパッタすることによって、膜厚
5nmでFe酸化物を堆積させた。
【0086】[記録層の成膜]つぎに、記録層65とし
てCo/Pd交互多層膜をDCスパッタ法により作製し
た。まず、シード層上にPdを5nmの厚さで堆積さ
せ、その上にCoとPdを交互に堆積した。Co/Pd
交互多層膜の成膜では、PdターゲットとCoターゲッ
トのシャッターを開閉することによって、0.11nm
厚のCoと0.76nm厚のPdを交互に積層し、Co
層とPd層の積層数は各26層とした。Co/Pd交互
多層膜の成膜時には基板加熱は行わなかった。
【0087】[保護層の成膜]最後に保護層66として
C(カーボン)膜をRFスパッタ法により膜厚8nmに
て形成して磁気ディスクとした。
【0088】
【実施例11】この実施例では、シード層を高温酸化法
により形成した以外は、実施例10と同様にして磁気デ
ィスクを作製した。以下に、高温酸化法によるシード層
の形成方法を説明する。なお、シード層以外の層の成膜
方法は、実施例10と同様であるので、その説明につい
ては省略する。
【0089】実施例10と同様に、ガラス基板上に、F
eTaCからなる軟磁性層を形成し、ランプ加熱処理を
施した。加熱終了後、そのまま真空中で1分間保持し、
その後、酸素ガスを流量200sccmで3分間導入し
た。このようにFeTaC膜が加熱処理の余熱でまだ高
温状態にあるうちに酸素ガスに曝すことによってFeT
aC膜表面にFe酸化物の膜、すなわちシード層を形成
した。シード層の膜厚は5nmとした。
【0090】かかるシード層上に記録層及び保護層を実
施例10と同様に形成することにより磁気ディスクを作
製した。
【0091】
【実施例12】この実施例では、軟磁性層をCoZrT
a膜を用いて形成した以外は、実施例10と同様にして
磁気ディスクを作製した。軟磁性層の成膜では、DCマ
グネトロンスパッタ法を用い、ターゲットにはCo80
Zr12Ta組成の合金を用いた。層厚は400nm
とした。軟磁性層以外の層の形成方法は実施例10と同
様である。
【0092】
【実施例13】この実施例では、記録層としてCoとP
tを交互に積層したCo/Pt交互多層膜を用いた以外
は、実施例10と同様にして磁気ディスクを作製した。
Co/Pt交互多層膜の成膜にはDCスパッタ法を用
い、シード層上に、まずPtを5nmの厚さで堆積さ
せ、その上に0.12nm厚のCoと0.80nm厚の
Ptを交互に積層した。Pt層とCo層の積層数はとも
に23層とした。Co/Pt交互多層膜の成膜時の基板
温度は250℃とした。記録層以外の層の形成方法は実
施例10と同様である。
【0093】
【実施例14】この実施例では、シード層の膜厚を30
nmとした以外は、実施例10と同様にして磁気ディス
クを作製した。
【0094】
【参考例1】ここでは、シード層の膜厚を40nmとし
た以外は、実施例10と同様にして磁気ディスクを作製
した。
【0095】
【参考例2】ここでは、シード層の膜厚を50nmとし
た以外は、実施例10と同様にして磁気ディスクを作製
した。
【0096】
【比較例4】シード層を設けなかった以外は、実施例1
0と同様にして磁気ディスクを作製した。
【0097】
【比較例5】シード層を設けなかった以外は、実施例1
2と同様にして磁気ディスクを作製した。
【0098】
【比較例6】シード層を設けなかった以外は、実施例1
3と同様にして磁気ディスクを作製した。
【0099】
【比較例7】軟磁性層を設けなかった以外は、実施例1
0と同様にして磁気ディスクを作製した。
【0100】[媒体の評価]上記実施例10〜14、比
較例4〜7及び参考例1、2の磁気ディスクの保護層上
に潤滑剤を塗布した後、各磁気ディスクの記録再生特性
を評価した。記録再生特性の評価にはスピンスタンド式
の記録再生装置を用いた。記録には1.6Tの飽和磁束
密度を有する軟磁性膜を用いた薄膜磁気ヘッドを用い、
再生にはスピンバルブ型GMR磁気ヘッドを用いた。磁
気ヘッドのギャップ長は0.12μmである。ヘッド面
とディスク面との距離は20nmに保った。
【0101】実施例、参考例及び比較例の磁気ディスク
の評価結果を図13の表に示す。ここでLFop/Nd
は、線記録密度10kFCIの信号を記録したとき再生
出力LFopと、400kFCIを記録した時のノイズ
であるNdとの比であり、媒体のS/Nの指標とした。
また、D50は再生出力がLFopの1/2に低下する
線記録密度であり、記録分解能の指標とした。
【0102】シード層を膜厚5nmで反応性スパッタで
形成した実施例10、12及び13の磁気ディスクで
は、高いLFop/Ndと良好なD50が得られている
ことがわかる。またシード層を高温酸化法によって形成
した実施例11の磁気ディスクにおいても優れたLFo
p/NdとD50が得られている。シード層の膜厚を3
0nmとした実施例14の磁気ディスクにおいては、高
いLFop/Ndが得られているもののD50の低下が
見られた。これに対し、シード層を設けなかった比較例
4〜7の磁気ディスクでは、D50は若干高いものの、
LFop/Ndが明らかに低い。特に軟磁性層を設けて
いない比較例7の磁気ディスクではLFop/Ndが極
端に低かった。参考例1及び2の磁気ディスクにおいて
は、LFop/Ndが20dB以上で良好であったが、
D50が若干低下していた。これは、シード層を厚くし
たことにより、磁気ヘッドと軟磁性層との距離が増した
ためであると考えられる。
【0103】作製した磁気ディスクの構造と組成を、高
分解能透過型電子顕微鏡(TEM)およびオージェ電子
分光法(AES)によって分析したところ、実施例10
〜13および比較例7のそれぞれの磁気ディスクにおい
て、軟磁性層上またはガラス基板の上に、Feと酸素を
主成分とするFe酸化物からなる層が約5nmの厚さで
形成されていることを確認した。また、実施例14の磁
気ディスクにおいて、Fe酸化物からなる層が約30n
mの膜厚で形成されていることを確認した。
【0104】つぎに、実施例11の磁気ディスクを、実
施例4と同様に図3に示す磁気ディスク装置に組み込ん
で記録再生特性を評価した。
【0105】実施例11で作製した磁気ディスクに面密
度40Gb/inchに相当する信号(700kFC
I)を記録してディスクのS/Nを評価したところ、3
4dBの値を得た。またエラーレートを測定したとこ
ろ、信号処理を行わない場合の値で1×10−5以下で
あった。
【0106】
【実施例15】この実施例では、Fe酸化物及びFe金
属が含まれるようにシード層を形成した以外は、実施例
10と同様にして磁気ディスクを作製した。シード層の
成膜には、反応性スパッタ法を用い、Arガスに対して
6%の流量比の酸素ガスを導入しながらFeターゲット
をDCスパッタした。かかるスパッタによりFe酸化物
とFe金属とを含むシード層を膜厚5nmにて形成し
た。
【0107】
【実施例16】この実施例では、シード層を反応性スパ
ッタ法により形成する際に、Arガスに対する酸素ガス
の流量比を2.5%とした以外は、実施例15と同様に
して磁気ディスクを作製した。
【0108】
【実施例17】記録層としてCoとPtを交互に積層し
たCo/Pt多層膜を用いた以外は、実施例15と同様
にして磁気ディスクを作製した。Co/Pt交互多層膜
の成膜にはDCスパッタ法を用い、シード層上に、まず
Ptを5nmの厚さで堆積させ、その上に0.12nm
厚のCoと0.80nm厚のPtを交互に積層した。C
o層とPt層の積層数はともに23層とした。Co/P
t交互多層膜の成膜時の基板温度は200℃とした。
【0109】
【実施例18】この実施例では、シード層を形成した
後、シード層の表面をスパッタエッチングした以外は、
実施例15と同様にして磁気ディスクを作製した。シー
ド層表面のエッチング処理として、実施例10と同じ方
法でシード層を形成した後、真空度が0.9Paになる
流量のArガスを導入してシード層の表面をRFスパッ
タエッチングした。スパッタエッチング時間は30秒と
した。かかるスパッタエッチング後、実施例15と同じ
方法で記録層と保護層を形成して磁気ディスクを作製し
た。
【0110】
【実施例19】この実施例では、シード層を反応性スパ
ッタ法により形成する際に、Arガスに対する酸素ガス
の流量比を8%とした以外は、実施例15と同様にして
磁気ディスクを作製した。
【0111】
【実施例20】この実施例では、シード層を反応性スパ
ッタ法により形成する際に、Arガスに対する酸素ガス
の流量比を1.5%とした以外は、実施例15と同様に
して磁気ディスクを作製した。
【0112】
【実施例21】この実施例では、シード層を膜厚30n
mで形成した以外は、実施例15と同様にして磁気ディ
スクを作製した。
【0113】
【実施例22】この実施例では、シード層を反応性スパ
ッタ法により形成する際に、Arガスに対する酸素ガス
の流量比を8%とした以外は、実施例17と同様にして
磁気ディスクを作製した。
【0114】
【実施例23】この実施例では、シード層を反応性スパ
ッタ法により形成する際に、Arガスに対する酸素ガス
の流量比を1.5%とした以外は、実施例17と同様に
して磁気ディスクを作製した。
【0115】以上のようにして作製した磁気ディスクの
保護層上に潤滑剤を塗布した後、各磁気ディスクの記録
再生特性を上述の「媒体の評価」と同様の方法により評
価した。図14に、実施例15〜23のそれぞれの磁気
ディスクの記録再生特性を示す。
【0116】また、図14には、シード層中に酸化物と
して存在するFeの原子数FeOx と、金属として存
在するFeの原子数FeMetの原子数との比(Fe
Met/FeOxi)を示した。原子数比(FeMet
/FeOxi)は、作製した磁気ディスクのシード層の
化学状態をX線光電子分光法(XPS)を用いた深さ方
向分析により分析し、Fe酸化物とFe金属からなるシ
ード層のFeスペクトルを、酸化物由来のピークと金属
由来のピークの2種類のピークに分離することにより求
めた。
【0117】実施例15〜19、22及び23の磁気デ
ィスクでは、21.5〜27.1dBの高いLFop/
Ndが得られている。特に、実施例15〜19の磁気デ
ィスクは、LFop/Nd及びD50ともに良好である
ことがわかる。これら実施例15〜19の磁気ディスク
のFeMet/FeOxiの値は、0.02<Fe
et/FeOxi<0.2の範囲内にあった。シード層
の表面をスパッタエッチングした実施例18の磁気ディ
スクにおいては、LFop/Ndの値が27.1と極め
て高かった。また、シード層成膜時の酸素ガスを1.5
%とした実施例20と実施例24の磁気ディスクは、L
Fop/Ndはそれぞれ15.7dB、14.8dBと
低くなっていた。実施例20及び24の磁気ディスクの
シード層のFeMet/FeOxi値はそれぞれ0.2
2、0.21であった。すなわち、実施例20及び24
の磁気ディスクは、他の実施例の磁気ディスクに比べて
シード層中にFe金属が多く含まれていた。このことか
ら、シード層中にFe金属を比較的多く含むために、シ
ード層上に記録層を形成したときに、記録層を構成する
白金族元素のFe金属への吸着が増大し、微小な磁性粒
子が形成されにくくなっていたものと考えられる。ま
た、シード層の厚さを30nmとした実施例22の磁気
ディスクではD50が144kFCIと低くなってい
た。これは、シード層の膜厚を厚くしたために磁気ヘッ
ドと軟磁性層との間隔が厚くなり、磁気ヘッドからの磁
界が記録層に十分な磁界強度で印加されなかったものと
考えられる。
【0118】つぎに、実施例15の磁気ディスクを、実
施例4と同様に、図3に示す磁気ディスク装置に組み込
んで記録再生特性を評価した。実施例15の磁気ディス
クに面密度40Gb/inchに相当する信号(70
0kFCI)を記録して磁気ディスクのS/Nを評価し
たところ、36dBの値を得た。またエラーレートを測
定したところ、信号処理を行わない場合の値で1×10
−5以下であった。
【0119】
【実施例24】図15に、本実施例の磁気記録媒体の概
略断面図を示す。磁気記録媒体700は、基板1上に、
軟磁性材料から形成された軟磁性層73、Fe酸化物か
らなる第1シード層74、Pd−SiNからなる第2シ
ード層75、硬磁性材料から形成された記録層76及び
保護層77を備える。磁気記録媒体700の製造方法を
以下に説明する。
【0120】[基板の準備]まず、直径65mmのガラ
ス基板1を用意し、ガラス基板1上に連続スパッタ装置
により、密着層72として厚さ5nmのTiを成膜し
た。
【0121】[軟磁性層の成膜]次いで、密着層72上
に、軟磁性層73としてFeTaC膜をDCマグネトロ
ンスパッタ法により形成した。ターゲットにはFe79
Ta12組成の合金を用いた。膜厚は400nmと
した。更に、成膜されたFe79Ta12を真空中
でカーボンヒーターにより450℃の温度で30秒間加
熱した後、徐冷した。こうしてFeの微結晶を含有する
軟磁性層73を形成した。
【0122】[第1シード層の成膜]次いで、軟磁性層
73の上に第1シード層74を反応性スパッタ法により
形成した。第1シード層74の成膜では、Arと酸素の
混合ガス(Arに対する酸素の流量比=20%)を導入
しながらFeターゲットをDCスパッタすることによっ
て、膜厚5nmでFe酸化物を堆積させた。
【0123】[第2シード層の成膜]次いで、基板1を
交互スパッタ装置のチャンバーに移送し、第1シード層
74上に第2シード層75を成膜した。第2シード層7
5の成膜では、チャンバー内にアルゴンガスを導入しな
がら、PdターゲットをDCスパッタし、SiNターゲ
ットをRFスパッタした。これにより、第1シード層7
4上に、73at%のPdと、26at%のSiと、1at%
のNからなる第2シード層75を膜厚5nmで成膜し
た。
【0124】[記録層の成膜]つぎに、記録層76とし
てCo/Pd交互多層膜をDCスパッタ法により作製し
た。Co/Pd交互多層膜の成膜では、Pdターゲット
とCoターゲットのシャッターを開閉することによっ
て、0.12nm厚のCoと0.85nm厚のPdを交
互に積層した。Co層とPd層の積層数は各26層とし
た。
【0125】[保護層及び潤滑層の成膜]次いで、記録
層76上に、アモルファスカーボンからなる保護層77
をプラズマCVD法により膜厚3nmにて形成した。保
護層77の形成後、基板を成膜装置から取り出した。最
後に、保護層77上にパーフルオロポリエーテル系潤滑
剤を1nmの厚さで塗布して潤滑層78を形成した。
【0126】こうして図15に示す積層構造を有する磁
気記録媒体700を作製した。
【0127】かかる磁気記録媒体700を実施例4と同
様に図3に示す磁気記憶装置に装着した。そして、磁気
記憶装置を駆動して、実施例4と同様の条件で記録再生
特性を評価したところ、トータルS/Nとして24.5
dBを得た。更に、面記録密度150Gb/inch
の記録密度にて記録再生することができた。また、ヘッ
ドシーク試験として、磁気ヘッドを磁気記録媒体上の内
周から外周まで10万回シークさせ、かかるヘッドシー
ク試験後に磁気記録媒体のビットエラーを測定したとこ
ろビットエラー数は10ビット/面以下であり、30万
時間の平均故障間隔を達成することができた。
【0128】つぎに、磁気記録媒体700について、前
述の電磁変換特性の測定と同様の条件にてスピンスタン
ドの記録再生試験機を用いて電磁変換特性を測定した。
測定結果を下記表3に示す。表3において、S/Ndは
500kFCIにおけるS/Nであり、Reは孤立波出
力で割った出力分解能である。また、熱減磁率は、24
℃の環境下において、線記録密度100kFCIにて記
録した信号を再生したときの再生信号振幅の時間に対す
る変化の割合とした。
【0129】
【表3】
【0130】表3からわかるように、本実施例において
は良好なS/Nが得られている。また、分解能も18%
以上と極めて高い。このことから、本実施例の磁気ディ
スクは、高域でも遷移性ノイズが低減しており、高分解
能と高S/Nが両立されていることがわかる。
【0131】また、磁気ディスクの記録層の断面構造
を、高分解能透過型電子顕微鏡を用いて観察したとこ
ろ、前述の実施例1〜3の磁気記録媒体と同様に図2に
示すような構造を有していた。図2における円柱形状の
結晶粒子の回転軸に対して垂直な断面の直径dは約8n
mであり、結晶粒子の表面の半球の最上部Aと最下部B
の差hは2nmであった。本実施例の磁気記録媒体の記
録層は、かかる円柱形状の結晶粒子から構成されている
ために面内方向の磁気的結合力が低減され、微細な記録
ビットが安定になり、磁化遷移領域の直線性がよくなる
と考えられる。
【0132】また、上記表3の熱減磁率の結果からわか
るように、本実施例の磁気記録媒体においては熱減磁が
認められなかった。このように、本実施例の磁気記録媒
体において熱減磁が認められなかったのは、記録層の磁
化遷移領域が明瞭で直線性が高くなっていることに起因
すると考えられる。また、オントラックで1000kB
PIにてエラーレートを測定したところ、本実施例の磁
気記録媒体はいずれも1×10−5以下であった。
【0133】
【実施例25】この実施例では、図15に示す磁気記録
媒体と同様の積層構造を有する磁気記録媒体を作製し
た。第1シード層74として、実施例18で用いたFe
酸化物とFe金属を含むシード層を用い、第2シード層
75として、実施例1で用いたPdSiNから構成され
たシード層を用いた。基板1上の軟磁性層73と第1シ
ード層74は実施例18と同様の方法を用いて形成し
た。第2シード層75、記録層76、保護層77及び潤
滑層78は、実施例1と同様の方法を用いて形成した。
本実施例では、第2シード層を種々の組成に変更して7
種類の磁気記録媒体(試料15〜21)を作製した。そ
れぞれの磁気記録媒体の第2シード層の組成を下記表4
に示した。作製したそれぞれの磁気記録媒体について、
前述の電磁変換特性の測定と同様にスピンスタンドの記
録再生試験機を用いて、S/Nd、Re及び熱減磁率を
測定した。下記表4に測定結果を示した。
【0134】
【表4】
【0135】上記表からわかるように、全てに試料にお
いて14.7dB以上の良好なS/Ndが得られた。ま
たReも19%以上と極めて高かった。すなわち、本実
施例の磁気記録媒体は高分解能と高S/Nが実現されて
いることがわかる。また熱減磁も認められなかったこと
から、熱的安定性に優れていることがわかる。
【0136】以上、本発明の磁気記録媒体について具体
的に説明したが、本発明はこれらに限定されるものでは
なく、種々の変形例及び改良例を含み得る。
【0137】
【発明の効果】本発明の磁気記録媒体は、Fe酸化物を
含む第1シード層を、Pd及びPtの一方と、SiとN
とを含む第2シード層の下地として用いているので、第
2シード層のPdまたはPtのSiN中の分散が促進さ
れている。更に、PdまたはPtの分散が促進された第
2シード層上に記録層を備えるので、記録層には粒界の
明瞭な微細な結晶粒子が形成される。このため記録層の
面内方向の磁気的結合力が低減されるので、線記録密度
を高めても低ノイズで情報を再生することができる。
【0138】また、本発明の磁気記録媒体は、人工格子
構造を有する記録層の下地として、Pd及びPtの一方
と、SiとNとを含むシード層を用いているので、記録
層の面内方向の磁気的結合力を低減することができる。
これにより、記録層の磁化遷移領域の乱れが低減するた
め、線記録密度を高めても低ノイズで情報を再生するこ
とができる。また。磁気異方性の高い人工格子膜を記録
層として用いているため、高い熱安定性を有している。
【0139】さらに、本発明の磁気記録媒体は、Fe酸
化物を主成分とするシード層を、軟磁性材料からなる軟
磁性層と硬磁性材料からなる記録層との間に備えるの
で、例えば、記録層として高い磁気異方性を有するCo
/Pt人工格子膜を用いた場合であっても、記録層の磁
性粒子を微小化することができ、記録層に微小な磁区を
形成することが可能である。このため、媒体ノイズが低
減され、高S/Nで情報を再生することができる。ま
た、高い磁気異方性を有する人工格子膜を用いて記録層
を形成することができるので、熱擾乱に対して高い耐性
を有し、高密度に情報を記録することができる。
【0140】本発明の製造方法によれば、面内方向の磁
気的交換結合力が低減された記録層を備える磁気記録媒
体を製造することができるので、高密度記録された情報
を低ノイズで再生可能な磁気記録媒体を提供することが
できる。
【0141】本発明の磁気記憶装置は、本発明の磁気記
録媒体を備えるため、150Gb/inch(約2
3.25Gb/cm)の高い面記録密度で情報を記録
しても高S/Nで情報を再生することができるととも
に、高い耐熱減磁特性を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、実施例1で製造した本発明に従う磁
気記録媒体の概略断面図である。
【図2】 図2は、磁気記録媒体の記録層の断面構造を
模式的に示した図である。
【図3】 図3は、本発明に従う磁気記憶装置の平面模
式図である。
【図4】 図4は、実施例1で製造した磁気記録媒体の
電磁変換特性の測定結果である。
【図5】 図5は、実施例7で製造した磁気記録媒体の
概略断面図である。
【図6】 図6は、軟磁性層の表面をプラズマエッチン
グして作製した磁気記録媒体の外部磁界に対するカー回
転角曲線である。
【図7】 図7は、磁気記録媒体の記録層のTEMによ
る観察像を示し、図7(a)は、軟磁性層の表面をプラ
ズマエッチングして作製した磁気記録媒体の記録層のT
EMによる観察像であり、図7(b)は、軟磁性層の表
面のプラズマエッチングを行なわずに作製した磁気記録
媒体の記録層のTEMによる観察像である。
【図8】 図8は、磁気記録媒体の記録層の結晶粒子の
直径と粒子数のヒストグラムであり、図8(a)は、軟
磁性層の表面をプラズマエッチングして作製した磁気記
録媒体の場合であり、図8(b)は軟磁性層の表面のプ
ラズマエッチングを行なわずに作製した磁気記録媒体の
場合である。
【図9】 図9は、AFMによる観察像を示し、図9
(a)は、プラズマエッチングする前の軟磁性層表面の
AFMによる観察像であり、図9(b)は、プラズマエ
ッチングした後の軟磁性層表面のAFMによる観察像で
ある。
【図10】 図10は、軟磁性層をプラズマエッチング
して作製した磁気記録媒体の記録層に記録した繰り返し
パターンのMFMによる観察像である。
【図11】 図11は、軟磁性層をプラズマエッチング
して作製した磁気記録媒体の記録層に互いに異なる線記
録密度で繰り返しパターンを重ね書きしたときのMFM
による観察像である。
【図12】 図12は、実施例10で作製した本発明に
従う磁気ディスクの断面構造を模式的に示す図である。
【図13】 図13は、実施例10〜14及び比較例4
〜7の磁気ディスクの記録再生特性の結果を示す表であ
る。
【図14】 図14は、実施例15〜23の磁気ディス
クの記録再生特性の結果を示す表である。
【図15】 図15は、実施例24で製造した本発明に
従う磁気記録媒体の概略断面図である。
【符号の説明】
1 基板 2 密着層 3,53,63,73 軟磁性層 4,54,64 シード層 5,55,65,76 記録層 6,56,66,77 保護層 7,57,78 潤滑層 10 磁気ヘッド 74 第1シード層 75 第2シード層 100,500,600,700 磁気記録媒体 200 磁気記憶装置
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G11B 5/851 G11B 5/851 (72)発明者 小沼 剛 日本国茨城県北相馬郡守谷町松前台四丁目 2番1号 (72)発明者 高山 孝信 日本国茨城県取手市戸頭二丁目16番16号 (72)発明者 日永田 晴美 日本国茨城県北相馬郡守谷町久保ヶ丘一丁 目7番2号ガーデンFUJI 1−201号 (72)発明者 若林 康一郎 日本国茨城県取手市戸頭三丁目34−3− 204 Fターム(参考) 5D006 BB01 BB06 BB08 CA01 CA03 CA04 CA05 CA06 DA08 5D112 AA03 AA04 AA05 AA06 BB05 BD02 FA02 FA04 FB20 GA20 GB01

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁気記録媒体であって、 基板と;該基板上に直接または間接的に形成された、F
    e酸化物を含むシード層と;該シード層上に直接形成さ
    れた、Pd及びPtの少なくとも一方の白金族元素層と
    Co層とを交互に積層して形成された記録層と;を備え
    た磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 上記記録層が人工格子構造で垂直磁化を
    示し、上記基板と上記シード層との間に軟磁性層が形成
    されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録
    媒体。
  3. 【請求項3】 上記シード層は、金属として存在するF
    eを含む請求項1に記載の磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】 上記シード層中に金属として存在するF
    eの原子数をFe etとし、酸化物として存在するF
    eの原子数をFeOxiとするとき、それらの原子数比
    FeMet/FeOxiが、0.02<(FeMet
    FeOxi)<0.2の関係を満たすことを特徴とする
    請求項3に記載の磁気記録媒体。
  5. 【請求項5】 上記シード層の厚さが30nm以下であ
    る請求項1に記載の磁気記録媒体。
  6. 【請求項6】 上記軟磁性層は、Fe中に、Ta、Nb
    及びZrからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素
    の窒化物または炭化物を分散させてなる構造を有する請
    求項2に記載の磁気記録媒体。
  7. 【請求項7】 上記軟磁性層は、Co−Zrを主体と
    し、これにTa、Nb及びTiからなる群から選ばれる
    少なくとも一種の元素を含む非晶質合金から形成されて
    いる請求項2に記載の磁気記録媒体。
  8. 【請求項8】 上記シード層は、上記軟磁性層の表面を
    酸化させることによって形成されることを特徴とする請
    求項6に記載の磁気記録媒体。
  9. 【請求項9】 磁気記録媒体の製造方法であって、 基板を用意する工程と;上記基板上に軟磁性層を形成す
    る工程と;上記軟磁性層上に、Fe酸化物を含むシード
    層を形成する工程と;上記シード層上に直接Pd及びP
    tの少なくとも一方の白金族元素とCoとを交互に供給
    して成膜することにより記録層を形成する工程と;を含
    む磁気記録媒体の製造方法。
  10. 【請求項10】 上記シード層を、酸素を含むスパッタ
    ガスを用いてFeを含むターゲットを反応性スパッタす
    ることにより形成することを含む請求項9に記載の磁気
    記録媒体の製造方法。
  11. 【請求項11】 上記スパッタガス中の酸素の量を制御
    して、上記シード層中に金属として存在するFeを含有
    させることを含む請求項10に記載の磁気記録媒体の製
    造方法。
  12. 【請求項12】 更に、上記シード層の表面をスパッタ
    エッチングすることを含む請求項11に記載の磁気記録
    媒体の製造方法。
  13. 【請求項13】 上記軟磁性層はFeを含み、 Feを含む軟磁性層を形成した後、該軟磁性層の表面を
    高温で酸化させることによって上記シード層を形成する
    ことを含む請求項9に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  14. 【請求項14】 請求項1の磁気記録媒体と;情報を記
    録または再生するための磁気ヘッドと;上記磁気記録媒
    体を上記磁気ヘッドに対して駆動するための駆動装置
    と;を備える磁気記憶装置。
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