JP3886011B2 - 磁気記録媒体及びその記録方法、並びに磁気記録装置 - Google Patents

磁気記録媒体及びその記録方法、並びに磁気記録装置 Download PDF

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Description

本発明は、高密度の情報を記録可能な垂直磁気記録媒体及びその記録方法、並びにその磁気記録媒体を備える磁気記録装置に関する。
情報ネットワークの進展及びマルチメディアの普及に伴い、これを支える主要な情報記録装置である磁気ディスク装置においては、小型化、低価格化、大容量化及び信頼性の向上が重要な課題となっている。そのような状況の中で、垂直磁気記録媒体は面内磁気記録媒体に比べて熱揺らぎに強く、高密度記録が可能である。垂直磁気記録媒体には、記録層としてCoCr系多結晶膜や、CoとPdを交互に多層積層したいわゆる人工格子膜や、規則格子合金膜等が提案されている。
垂直磁気記録媒体に関し、本出願人は、特許文献1において、微小な磁区を形成するために、記録層に接して面内磁化層を付加する構造を開示している。記録層と面内磁化層は交換結合しており、両層の界面近傍における磁化は膜面に対してわずかに傾いて安定化するので、記録層の磁化は面内成分を含む。ここで、記録層の磁化と逆方向の外部磁界を印加すると、記録層の磁化は面内成分を含むために外部磁界により一層容易に反転し、これにより磁化反転開始磁界を低下することが開示されている。
しかしながら、100ギガビット/平方インチ(Gb/in)以上、特に500ギガビット/平方インチ以上という高密度記録の領域では、記録磁区の熱的な安定性を一層向上させる必要がある。上記特許文献1には、このような高密度記録時の熱擾乱に対して記録磁化の安定性を高めることについて、開示していない。すなわち、高密度化に伴ない本質的に必要とされる記録を補助し、且つ保存において記録された磁化を安定化させ、情報を消去されにくくする機能を同時に発揮するような条件及び媒体構造、特に磁気記録媒体の垂直方向の残留磁化と面内方向の保磁力の関係は教示も示唆もされていない。
特開2002−216333号公報
本発明は、垂直磁気記録媒体における熱的な安定性の問題を解決するためになされたものであり、記録層に微小磁区を安定して保持可能であり、優れた熱擾乱耐性を備えた垂直磁気記録媒体及びその記録方法、並びに当該磁気記録媒体を備える磁気記録装置を提供することを目的とする。本発明は、特に100ギガビット/平方インチ以上の高密度記録を行なう磁気記録媒体及びそれを備える磁気記録装置において有効である。
本発明の第1の態様に従えば、基板と、該基板上に設けられた磁気機能層と、垂直磁気異方性を有する磁気記録層とを有する磁気記録媒体であって、
該磁気機能層の垂直磁気異方性定数をKu、飽和磁化をMsとしたとき、
−4×2πMs≦Ku≦6×2πMs …(1)
であって、
前記磁気機能層が面内方向に保磁力を有することを特徴とする磁気記録媒体が提供される。式(1)を満足することにより、記録に際して、磁気機能層の磁気モーメントは印加磁界方向に回転し、該磁気モーメントが記録層の磁化に対して、印加磁界を補助する形で作用する。それゆえ、高密度記録を行ったときの再生信号のS/Nを向上することができる。また、記録に必要な磁界を低下することができる。
本発明の第2の態様に従えば、基板と、該基板上に直接または間接的に設けられた、基板面に垂直な方向に磁化容易軸を有する磁気記録層とを備えた磁気記録媒体であって、
前記磁気記録媒体の面内方向の記録トラックに垂直な方向の保磁力をHc(Oe)、基板面に垂直な方向の残留磁化をMr(emu/cc)としたとき、
0.05≦Hc/Mr≦2.5 …(2)
の関係式を満足することを特徴とする磁気記録媒体が提供される。Hc/Mrは、記録磁化の安定性を表わす指標(以下、「磁化安定因子」または「第1磁化安定因子」という)である。本発明者は、後に説明するように、記録磁化の安定性が磁化安定因子Hc/Mrに大きく依存していることを見出した。そして、磁化安定因子Hc/Mrが、図16に示すように、式(2)の範囲内にある場合には、磁気記録媒体において良好な熱安定性が得られることを見出した。それゆえ、情報記録媒体の製造時に磁化安定因子Hc/Mrを上記範囲内に調整することで、良好なS/Nの磁気記録媒体を得ることに成功した。本発明の磁気記録媒体では、上記Mrが
50≦Mr≦500 …(3)
を満足することが望ましい。
本発明の第3の態様に従えば、基板と、該基板上に直接または間接的に設けられた、基板面に垂直な方向に磁化容易軸を有する磁気記録層とを備えた磁気記録媒体であって、
前記磁気記録媒体の面内方向の記録トラックに垂直な方向の保磁力をHc(Oe)、基板面に垂直な方向に測定された単位面積当りの残留磁気モーメントをM(emu/cm)としたとき、
0.8×10≦Hc/M≦0.5×10 …(4)
の関係式を満足することを特徴とする磁気記録媒体が提供される。Hc/Mは、本発明者によって見出された記録磁化の安定性を表わす指標(以下、適宜、「磁化安定因子」または「第2磁化安定因子」という)であり、第2磁化安定因子が上記範囲内にある場合には、磁気記録媒体において良好な熱安定性が得られる。これにより、良好なS/Nの磁気記録媒体を得ることができる。なお、本発明の磁気記録媒体では、上記Mが
0.03×10−3≦M≦3×10−3 …(5)
を満足することが望ましい。
第2及び第3の態様の磁気記録媒体は、上記記録層とともに設けられた磁気機能層を含み得る。本発明において、上記磁気機能層は、例えば、少なくともCoと、PtまたはPdとを含む合金層、あるいはCoを含む層とPtまたはPdを含む層との交互積層多層膜にし得る。上記磁気機能層は、酸素を5〜20at%含み得る。上記記録層と上記磁気機能層が同一の成分の多層膜から形成されている場合には、記録層と上記磁気機能層との間に、多層膜の膜厚が変化する境界部が存在し得る。上記記録層は、Pdを含む層とCoを含む層が交互積層された多層膜にし得る。さらに、本発明の磁気記録媒体は下地層としてCoCrRu層を備え得る。
また、本発明においては、基板と、該基板上に設けられた磁気機能層と、該磁気機能層上に積層されている、垂直磁気異方性を有する磁気記録層とを有する磁気記録媒体であって、
前記磁気機能層の垂直磁気異方性エネルギーと形状磁気異方性エネルギーとが略等しく、
前記磁気機能層が面内方向に保磁力を有することを特徴とする磁気記録媒体が提供される。本発明では、磁気機能層の垂直磁気異方性エネルギーと形状磁気異方性エネルギーとが略等しいので、記録に際して当該磁気機能層の磁気モーメントは印加磁界方向に回転しやすくなる。ここで、「形状磁気異方性エネルギー」とは、磁性体の形状に依存して当該磁性体内部に発生する反磁界によって生じる、見かけ上の磁気異方性のエネルギーをいう。飽和磁化がMsである薄膜状の磁性体が膜面に垂直方向に磁化している場合は、面内に磁化している状態に対して2πMsに相当する形状磁気異方性エネルギーが付加された状態となる。
本発明の第4の態様に従えば、上記態様の磁気記録媒体の記録方法であって、
記録時に上記磁気記録媒体の記録部分を加熱して記録磁界を印加することを特徴とする磁気記録媒体の記録方法が提供される。
本発明の第5の態様に従えば、上記態様の磁気記録媒体を備える磁気記録装置であって、
情報を記録及び/または再生するための磁気ヘッドと;
前記磁気記録媒体を前記磁気ヘッドに対して駆動するための駆動装置と;を備えることを特徴とする磁気記録装置が提供される。
本発明の第6の態様に従えば、上記態様の磁気記録媒体を備える磁気記録装置であって、
情報を記録及び/または再生するための装置と、記録を行なう部分の温度を上昇させるための光照射装置とを備えた磁気ヘッドと;
前記磁気記録媒体を前記磁気ヘッドに対して駆動するための駆動装置と;を備えることを特徴とする磁気記録装置が提供される。
以下、本発明の磁気記録媒体の記録再生原理及び作用について、主に、記録に関する作用と情報保持に関する作用に分けて説明する。
[記録に関する作用]
少なくとも基板と、該基板上に担持された磁気機能層と、該磁気機能層と垂直磁気異方性を有する磁気記録層とを有し、該磁気機能層の垂直磁気異方性定数をKu、飽和磁化をMsとしたとき、
−4×2πMs≦Ku≦6×2πMs …(1)
であるように構成すると、記録に際して、該磁気機能層の磁気モーメントは印加磁界方向に回転し、該磁気モーメントが記録層の磁化に対して、印加磁界を補助する形で作用する。
磁気機能層は、その磁気モーメントが記録磁界の方向に回転しやすいように、その磁気特性を設定する。磁気機能層は、記録層の磁気モーメントに対して、磁気機能層の磁気モーメントと平行になるような交換結合力を及ぼす。その結果、磁気機能層の磁気モーメントが記録磁界方向に回転するとき、その交換結合力によって記録層の磁気モーメントも記録磁界方向に回転するように作用する。記録磁界によって記録磁界の方向に回転した磁気機能層の磁気モーメントは、記録層の磁気モーメントに対して記録磁界に付加された磁界、いわゆるバイアス磁界として作用する。このバイアス磁界は、記録層に対して磁気機能層の磁気モーメントの方向に作用する。すなわち、記録磁界が上向きの時には上方向に、下向きの時には下方向にバイアス作用を生じる。この記録磁界のバイアス作用により、微小な磁区に磁化情報を確実に記録することができる。
本発明者は、「磁気機能層の磁気モーメントが記録磁界方向に回転しやすい」条件を定量的に分析・調査した。一般に磁性体は、薄膜形状を採る場合、その面内方向に磁気モーメントが向くような作用が働く。このような作用をする磁界を反磁界と呼ぶ。磁性薄膜の飽和磁化をMsとした場合、この反磁界によって、磁気モーメントが面内方向に向く場合と垂直方向に向く場合とでは2πMsに相当するエネルギー差が発生する。そこで、その反磁界のエネルギーに対して、垂直に印加した磁界の方向に磁性薄膜を磁化回転しやすくするような垂直磁気異方性エネルギーの範囲を規定した。その範囲が上式(1)に示されている範囲である。
Ku−2πMsが負である場合、上記磁気機能層は面内磁化層となり、Ku−2πMsが正である場合、上記磁気機能層は垂直磁化層となる。Kuが式(1)の範囲にある限り、磁性薄膜は垂直方向に磁界が印加された際にその方向に磁気モーメントが回転しやすい状態となる。磁気機能層の磁気モーメントが記録磁界方向に回転し、記録層に対して交換結合等の磁気的な結合力が作用し、これにより記録磁界を補助するよう作用する。Kuが式(1)の条件を充足すれば、後述する実施例に示すように、高密度記録を行ったときの再生信号S/Nが良好な値を示す。それは、記録時に印加される磁界の大きさが実効的に増大した効果と同様であり、すなわち、磁界の印加方向の切り替え時間が実質的に短縮されることとなり、記録磁界の切り替え時間に対する記録媒体の走行距離が短縮され、上向き磁区と下向き磁区との遷移領域のトラック方向の長さ(幅)が短くなる(遷移領域が明確になる)。遷移領域内では、通常、磁壁の蛇行等が発生して、信号におけるノイズの発生原因の一つになる。遷移領域は、記録密度が高い程、磁化方向の反転サイクルに対する相対的長さが長くなるので、遷移領域の長さが短くなることが信号のS/N上有効となる。
[情報保持に関する作用]
記録情報の保存に際して、磁気機能層の磁化は、記録層において隣接する磁化方向が互いに逆向きの2つのビットの磁化との間にU字型の磁化配列を形成し、その磁気機能層の磁化が有する面内方向の保磁力により記録層の磁化が安定化され、高密度記録に伴う記録磁化の熱的不安定性を回避する作用を有する(図6(a)参照)。
本発明の磁気記録媒体における熱擾乱に対する安定性確保の作用について説明する。
垂直磁気記録媒体においては、膜面に垂直な方向の磁化により記録を行なうため、各記録磁化によって生じる磁界は相互に磁化を安定化させる作用を持っている。一方、図5に示すように、隣接する磁区間には相互の磁化を平行方向に向けようとする作用が交換相互作用(交換結合力)によって生ずる。この作用が垂直磁気異方性と比較して強力な場合、時間経過とともに磁区の反転や磁壁の移動が生じる。このような現象により、熱擾乱による記録磁区の経時変化が生じ、記録情報の保持性能上の問題となる。
この問題を解決するための手段として、本発明では、基板と記録層との間に少なくとも面内方向に保磁力を有する磁気機能層を積層した。この構造には、以下に示すように、隣接磁区間の交換相互作用による記録磁区の反転作用を抑制する効果がある。これにより、記録磁区の熱安定性を向上させることができる。
基板上に積層した磁気機能層と記録層の構造の一例を、図6に模式的に示す。磁気機能層3の保磁力がある程度低い場合、図6(a)に示すように、記録層4に磁化情報が矢印の向きに記録された状態における磁気機能層3には、記録層4に記録された磁化パターンに応じて面内方向の磁化パターンが発生する。
一般に、垂直磁化膜と面内磁化膜とが交換結合あるいは静磁結合により磁気的に結合して形成されている場合、両層の界面近傍の磁気モーメントが互いに平行になることにより安定化する。磁気機能層3と垂直磁化膜である記録層4とを磁気的に結合させると、図6(d)に示すように、両層の界面近傍における磁化は膜面に対して傾き連続的に角度を変化させながら垂直磁化膜の磁化と面内磁化膜の磁化とを連結する。
垂直磁化膜と面内磁化膜との連結は、記録磁区の磁化の閉磁路を構成するように配列される。図6(a)中に、その閉磁路を点線で示す。この状態において、例えば図6(a)中、下向きの記録磁区Aが隣接の磁区と同じ上向きに磁化反転する場合を考える。記録磁区Aが図6(b)に示すように上向きに反転した場合、磁気機能層3の磁化の方向Bは、右向き状態では不安定であり、図6(c)に示すような左向き状態に変化した方がエネルギー的に安定となる。このエネルギーの安定性を逆に利用すると、記録層4の磁化が図6(a)の磁区Aのように下向き状態であるときに、磁気機能層3の磁化の方向Bを右向きから左方向に向きにくくすることにより、逆に記録層4の磁化を下向き状態で安定化させる働きを持たせることが可能となる。そのために、磁気機能層3にある程度の保磁力を持たせることにより、記録層の磁区の熱安定性に寄与する作用を持たせる。これが、本発明における「面内方向に保磁力を有する磁気機能層」の作用である。
さらには、該磁気機能層の磁化容易軸は、面内方向で且つ記録トラックに対して垂直な方向、すなわち円板状の媒体においては半径方向にあることが好適である。この場合、磁気機能層の磁気モーメントは記録トラックに垂直な方向を向きやすいので、相互に隣接するトラックの記録層の磁気モーメント同士を連結する方向に配列する(すなわち、図6及び7は半径方向の断面を示すこととなる)。この場合、記録層の表面から発する磁束の方向は、再生用磁気ヘッドにGMR素子を用いた場合、GMR素子の薄膜に対してその面内方向となる。そのため記録磁区の磁束がより効率的に検出され、高い再生信号出力を得ることができる。
以上のように、本発明では、磁気機能層を付加して、その作用により磁気記録媒体全体としてその面内方向に保磁力を持たせている。保磁力の大きさに関しては、上記作用を得るために所定の値以上であることが必要であるが、その値があまりに大きい場合には、記録層の磁化に応じて磁化反転できなくなり、磁気機能層に図6(a)のような磁化パターンを形成して閉磁路を構成することができなくなる。この状態は、却って記録層の記録磁区を不安定にしてしまう。よって、磁気機能層は、記録層からの漏洩磁界で磁化反転する程度以下の保磁力を有することが望ましい。以下に、本発明の磁気記録媒体における面内方向保磁力の大きさの好適な範囲を特定化した実験結果について、説明する。
記録層の残留磁化により発生する磁界によって磁気機能層の磁化の方向を変える必要があるため、一般に、磁気機能層の面内方向の保磁力は記録層の垂直方向の残留磁化に比例した所定の大きさ以下であることが必要となる(上限の存在)。一方、媒体の熱安定性自身も磁気記録媒体の垂直方向の残留磁化と相関を持つ。なぜなら、一般的に記録層の磁化が大きいほど隣接磁化との交換結合も強いため、熱的に不安定になる。よって、熱的に安定化させるために、磁気機能層の面内保磁力に起因する媒体の面内方向の保磁力も、記録層の垂直方向の残留磁化に対応した所定値以上を必要とする(下限の存在)。そこで、本発明の有効範囲を特定するにあたっては、磁気記録媒体を構成した状態において面内方向保磁力の有効な範囲を確認するため、磁気記録媒体を構成した状態で面内方向保磁力のみならず垂直方向残留磁化を測定評価した。
種々の値の面内方向保磁力を有する磁気機能層と、CoとPdの人工格子膜の記録層とを数種類の組合せで積層して磁気記録媒体を構成し、それらの熱安定性について評価した。評価方法としては、媒体に記録を行って、その後の時間経過による再生信号の規格化出力の変化(熱減磁率特性という)を測定した。一般に、熱的に安定性の高い磁気記録媒体では、1,000秒経過後もその出力は低下しないことが分っている。図9は、後述する実施例で行った各磁気記録媒体の面内方向の保磁力に対する、1,000秒経過後の規格化出力の変化をプロットしたグラフである。
本発明者は、図9に示した実験結果に基づいて、記録の容易性及び記録情報の安定性の両面から、磁気記録媒体を構成している状態における(磁気記録媒体の)面内方向の保磁力Hcと垂直方向の残留磁化Mrとの関係を一般化することに成功した。
すなわち、後述する実施例の分析結果より、第1磁化安定因子Hc/Mrが式(2)の範囲にあれば、1,000秒経過後の規格化出力の変化が1%以内に収まる程度の安定性を得ることができることが分った。
0.05≦Hc/Mr≦2.5 …(2)
さらには、
0.05≦Hc/Mr≦1.2 …(6)
の範囲であれば、出力変化は誤差範囲内にあって、殆ど変化しないので、より好適な範囲となる。
前記式(2)及び(6)の形で、本発明の好適な磁気特性(第1磁化安定因子)の範囲を表したが、本発明の効果を発揮する構成としては、記録層と磁気機能層とが明確な境界面を有して独立に存在する必要はない。例えば、記録層と磁気機能層の間を、両者の磁気特性が連続的に変化するように遷移領域を設ける方法を採ることも可能である。また、記録層または磁化対応層自体に、膜厚方向に磁気特性の傾斜を有するように、膜厚方向に組成勾配を設けたり、製膜プロセスを変化させながら積層することも可能である。このような構造にした場合、各層の磁気モーメントの結合力が膜厚方向に連続的に変化する構成となるため、記録層から磁気機能層にかけての磁気モーメントの配列が滑らかな曲線を描く。これにより、記録時には、外部磁界によってその方向に回転した磁気機能層の磁気モーメントからの交換結合力が記録層の磁気モーメントを効率的に回転する作用を発揮する。また、情報保存時には、上記の滑らかな磁気モーメントの配列により磁束の閉じ込め効果が向上し、熱安定性を向上させることができる。
実際の構成例としては、例えば、後述の実施例2のような場合が挙げられる。実施例2では、記録層と磁気機能層の両方にCo/Pdの人工格子膜を用い、それぞれCo層、Pd層の膜厚を調整することにより各層の磁気特性を調整した。また、両層の間に遷移領域を設け、積層周期及びCo層、Pd層の膜厚を両層の間で連続的に変化させた。その概略構成図を図3に示す。後述するように、記録層に相当する部分においては垂直磁気異方性を有するように積層構造を選択し、磁気機能層に相当する部分においては面内磁気異方性を有するような積層構造を選択した。記録層と磁気機能層の間において、積層構造を連続的に変化させることにより、磁気特性としても垂直磁気異方性から面内磁気異方性へと連続的に変化する。その間、磁気モーメントは膜厚方向に連続的に角度をなす構成とすることができた。
上述のように、本発明においては両層間あるいは両層内でも、任意の設計要素にて連続的に磁気特性を変化させる構造とすることも可能である。この場合は、残留磁化Mrの値が膜厚方向に変化する構造となる。そこで、このように磁気記録媒体の膜厚方向でMrの値が変化している場合に、上式(2)の面内保磁力Hcの範囲がどのように表されるかを以下に説明する。
磁気記録媒体の厚さ方向の位置をzとすると、各位置zに応じてMrの値が変化するので、これをMr(z)とする。これをzで積分したものをMと置く。
Figure 0003886011
本式のzについての積分範囲は、磁気記録媒体の基板上の薄膜積層部の最下部から最上部までであるが、実質的に記録膜の膜厚範囲となる。すなわち、記録膜の下面位置をt0、上面位置をt1とすると、積分範囲は実質的にz=t0からz=t1となる(記録膜の膜厚をtと置くと、t1−t0=tとなる)。このときのM値は、単位面積当たりの残留磁気モーメントの値に相当する。すなわち、試料振動式磁化測定装置(VSM)等の磁化測定によって検出される測定試料の残留磁気モーメントの値を、その試料の面積で割った値がこのMの値となる。
次に、式(2)を、上記積分が適用可能な形式に変形する。
一般的に残留磁化Mrは、単位体積当たりの残留磁気モーメントである。よって、測定されるMrはMr(z)の膜厚方向の平均値であるから、
Figure 0003886011
すると、第1磁化安定因子の条件を示す式(2)は、
0.05≦Hc/(M/t)≦2.5 …(2A)
となる。この右側の不等式は、
t≦2.5×M/Hc …(2AR)
となる。また、左側の不等式は、
0.05×M/Hc≦t …(2AL)
となる。後述の通り、tの好適な範囲は
5≦t≦60 (nm)
となる。単位を(cm)に変換すると
5×10−7≦t≦60×10−7 (cm) …(12)
であるから、式(2AR)より、
5×10−7≦t≦2.5×M/Hc …(13)
となる。よって、
Hc≦0.5×10×M
が得られる。
また、式(12)及び式(2AL)より、
0.05×M/Hc≦t≦60×10−7
である。よって、
0.8×10×M≦Hc
が得られる。以上より、M(単位面積当たりの残留磁気モーメント値)とHcとの関係(面内保磁力Hcの範囲)
0.8×10×M≦Hc≦0.5×10×M
が得られる。これを変形すると、Hc/Mの範囲
0.8×10≦Hc/M≦0.5×10 …(4)
が得られる。Hc/Mは本発明における第2磁化安定化因子である。
さらに好適な範囲を示した式(6)は、以下のように書き換えられる。
0.05≦Hc/(M/t)≦1.2
この右側の不等式は、
t≦1.2×M/Hc
と変形することができる。また左側の不等式は、
0.05×M/Hc≦t
と置くことができる。tの好適な範囲は、単位を(cm)に変換すると、
5×10−7≦t≦60×10−7(cm)
であるから、
5×10−7≦t≦1.2×M/Hc
となる。よって、
Hc≦0.24×10×M
となる。また、
0.05×M/Hc≦t≦60×10−7
となる。よって、
0.8×10×M≦Hc
となる。以上より、
0.8×10×M≦Hc≦0.24×10×M
すなわち、
0.8×10≦Hc/M≦0.24×10 …(7)
が得られる。こうして第2磁化安定因子の条件式(4)のさらに好適な範囲が得られた。
なお、単位に関して、残留磁化Mrは(emu/cm)を用いたので、膜厚tについても(cm)で取り扱うこととした。この場合、Mの単位は(emu/cm)となる。このMの値は、積層された磁気記録媒体を検体化して、VSM等の磁化測定によって測定された膜面垂直方向の残留磁気モーメントMr×V(emu、G−cm)の値を、上記検体の面積(cm)で割った値となる。なお、Hcは既述の通り、磁気記録媒体の面内方向の保磁力であり、単位は(Oe)である。なお、その保磁力の方向は、上記面内方向のうち記録トラックに垂直な方向(すなわち、円板状媒体においては、半径方向)であることが好ましい。
また、複数の磁性層を積層した媒体におけるMの値については、i番目の磁性層の残留磁化をMri、その厚さをtiとすると、
Figure 0003886011
であり、上述の範疇に包含される。
M値は、主に記録膜の磁気特性に依存する数値であり、上述の式(2)、式(4)、式(6)及び式(7)は、上述の情報保存の観点から規定された適正範囲を示している。
[MrとS/Nの関係]
一方、記録に関する要件からも、M値の適正範囲が存在する。記録性能について好適なM値の範囲、すなわち本発明の効果を有効に発揮可能なM値の範囲を規定する。一般に、残留磁化Mrが大きい場合、再生信号出力が増大するが、併せてノイズも増大する。この信号とノイズの両者の増大については、概してノイズの影響の方が強く、S/NはMrが所定の範囲を超えると低下していく。後述する実施例で行った記録層のMrに対するS/Nの変化の測定例を図14に示す。測定条件及び記録膜の詳細については後述の実施例に述べる。この実験結果から、本発明の記録層の残留磁化Mrが、下記式(3)を満たす場合、20dB以上のS/Nを得ることができ、好適な範囲であることが分かった。
50≦Mr≦500(emu/cc) …(3)
記録層の膜厚については、後述の実施例から、膜厚5nm〜60nmの記録層において、20dB以上のS/Nを得ることができ、好適な範囲であることが分っている。
残留磁化Mrと膜厚tに適正な範囲が存在するので、M値としても好適な範囲が存在することになる。本発明の各種磁気記録媒体について、その記録再生特性を、M値についてまとめた結果を図15に示す。20dB以上のS/Nを得るためには、M値として下記式(5)を満たすことが好適であることが分かった。この結果は、上述のMr及びtの結果と一致する。
0.03×10−3≦M≦3×10−3(emu/cm) …(5)
Ku−2πMsが負である場合、磁気機能層は面内磁化層となり、Ku−2πMsが正である場合、磁気機能層は垂直磁化膜となる。負である場合、すなわち磁気機能層が面内磁化膜である場合、その磁化容易軸が面内方向で且つ記録トラックに垂直な方向であることが好適である。すなわち、磁気機能層の保磁力は、面内方向で且つ記録トラックに垂直な方向に有する磁気特性であることが必要である。一方、正の場合、すなわち磁気機能層が垂直磁化膜であり、且つ面内方向に測定した場合に保磁力を有することが必要である。このような磁気特性を実現するためには、磁気機能層は垂直磁気異方性の分散を有することが好適である。分散の方向を、面内の各方向のうち記録トラックに垂直な方向により偏在させるとより好適である。一方、上述の記録性能と情報保持性能はそれぞれ独立に機能を満たすことが可能である。すなわち、式(1)、(3)及び(5)と式(2)、(4)、(6)及び(7)とを、それぞれ独立な性質として磁気記録媒体が満たすことにより、磁気記録媒体の記録性能及び情報保持性能をそれぞれ向上させることも可能である。
本発明によれば、記録層に容易に微小磁区を記録することが可能であり、しかも優れた熱擾乱耐性を有する垂直磁気記録媒体及びその記録方法、並びに当該磁気記録媒体を備える磁気記録装置が提供される。
以下、本発明に従う磁気記録媒体及びそれを用いた磁気記録装置の実施例について、具体的に説明する。以下の実施例では、磁気記録媒体として、磁気ディスク(ハードディスク)を作製したが、本発明は、フレキシブルディスク、磁気テープ、磁気カード等、他の形態の磁気記録媒体や磁気記録装置にも適用可能である。
本発明の磁気記録媒体において、記録層の材質として種々の垂直磁化膜を用いることが可能であるが、CoCr系多結晶膜や、CoとPdを交互に多層積層したいわゆる人工格子膜を用いた場合に特に有効である。これらの結晶系の記録層を用いた場合、記録層の面内方向の交換結合力は、後述するように記録層の結晶粒子の大きさや面内方向の連続性等の結晶粒構造により制御することができる。これにより、微細磁区を記録できる性能と、磁気機能層で担う記録の補助及び情報保存時の熱安定化との相乗効果を得ることができる。
なお、本明細書において、用語「人工格子」とは、複数の異なる物質を単原子あるいは数原子の厚さで、一方向に互いに周期的に積層して得られる構造を意味する。かかる人工格子構造を有する膜のことを、人工格子膜あるいは交互積層多層膜とも呼ぶ。この膜の構成を、本明細書では「Co/Pd」のように表記する。
記録層に人工格子膜を用いる例としては、主として白金族元素と遷移金属元素とを数原子または単原子程度の厚みで交互に積層した人工格子膜が好適である。白金族元素は、例えばPt及びPdの少なくとも一方を用い得る。また、遷移金属元素は、例えばCo、Fe等を用い得る。かかる膜は室温または比較的低い基板温度で成膜することができ、しかも大きな磁気異方性を有するので高密度記録用の記録層として最適である。
さらに詳細には、記録層としては、0.05nm〜0.5nmの範囲から選択された膜厚を有するCo層と、0.5nm〜2nmの範囲内から選択された膜厚を有するPd層とを交互に積層したCo/Pd人工格子膜、あるいは、0.05nm〜0.5nmの範囲内から選択された膜厚を有するCo層と、0.1nm〜2nmの範囲内から選択された膜厚を有するPt層とを交互に積層したCo/Pt人工格子膜であることが望ましい。かかる構造の人工格子膜は最も垂直磁気異方性が発現しやすい。
これらの人工格子層を用いて記録層を形成した場合、いずれかの層に添加元素を含んでもよい。添加元素を含ませることによって組成の揺らぎが発生し、記録層の面内方向の磁気的交換結合力を低減することができる。添加元素は、Si、Zr、CまたはBが望ましく、特にBが好ましい。
本発明において、記録層は、通常のスパッタ装置を用いて製膜することが可能であり、例えば、異なる材料から構成された2つ以上のターゲットを並設し、それぞれのターゲットに対して基板キャリアを交互に相対移動させることによっても形成することができる。あるいは、直径の異なる少なくとも2種類のリング型ターゲットを同一平面で且つ同軸上に配置し、それらターゲットに対向するように基板を配置させ、リング型ターゲットを交互に放電させることにより製膜することも可能である。
記録膜の膜厚としては、記録再生特性の点などから好適な範囲が存在する。記録層の膜厚を厚くすると、記録磁区の境界が乱れやすく、ノイズの原因となる。また、微小磁区の形成も困難となる。一方、記録層が非常に薄くなると、再生信号出力が低下し、また、記録磁区の熱安定性が低下し、室温においても時間の経過に伴って再生出力が低下する問題が生じる。記録層の膜厚として適正な範囲を選択する場合、記録層の材質や磁気特性が規定要因となる。本発明においては、特にCoCr系多結晶膜、Co/Pd人工格子膜、Co/Pt人工格子膜を用いて種々の磁気記録媒体を構成し、その膜厚によるS/N値の変化を調査した。後述する実施例の結果(図13参照)から分るように記録層の膜厚が5nm〜60nmの場合、20dB以上のS/Nを得ることができ、好適な範囲であることが分かっている。この膜厚の範囲が、後述のtの範囲である。また、記録層は、記録性能の観点から、基板表面に対して垂直な方向で測定したときの保磁力が1.5〔kOe〕〜10〔kOe(キロエルステッド)〕であることが望ましい。
本発明における磁気記録媒体の記録層を構成する別の材料としては、CoCr系の多結晶膜等が好適である。この材料系も結晶粒子の大きさや面内方向の連続性等、結晶粒構造により記録層の面内方向の交換結合力を制御することが可能である。CoCr系材料としては、CoCrPt、CoNiCr、CoCrTa等が挙げられるが、高い保磁力が得られるという点でCoCrPtが特に好ましい。
更に、酸素を添加することにより、記録層は磁性結晶粒子が酸化物に囲まれた構造を有して結晶粒間の磁気的相互作用が低減され、低ノイズの磁気記録媒体となる。この場合、記録膜中の酸素含有率は5〜20at%とすることが好ましい。酸素含有量が5at%より少ない場合、磁性粒子間の分離が不十分で媒体ノイズの低減も不十分となる。また、酸素含有量が20at%より多い場合には、酸素が磁性結晶粒内に取り込まれるために、磁気特性の低下によりS/N比が低下する。酸素含有量を5at%以上にすると、磁性粒子間の分離が進み媒体ノイズの低減が図れ、また、酸素含有量を20at%以下にすると、酸素が磁性結晶粒内に取り込まれること無く、良好なS/N比を得られる。
酸素を含有するCoPtCr合金磁性膜は、酸素を含有するCoPtCr合金をターゲット材としてスパッタリングにより形成することができる。また、スパッタガスとしてアルゴン酸素の混合ガスを用い、この混合比を適宣調節することにより、CoPtCr合金磁性膜中に酸素を導入することもできる。
更に、酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜中に3〜15at%のSiまたはMgを含むことが好ましい。酸素を含有したCoCrPt合金磁性膜中に、SiまたはMgを3〜15at%の含有量で混入させることにより、磁気記録媒体の保磁力の向上及び低ノイズ化が可能になる。
酸素を含有するCoPtCr合金磁性膜中にSiまたはMgを混入させる方法としては、CoPtCrターゲット中に数%〜数十%の比率でSiOやMgOを混入させたターゲットを用いてスパッタする方法がある。この方法では、SiまたはMgの含有量だけでなく酸素の含有量も調整可能であり、形成されたCoCrPt合金磁性膜は、Co磁性結晶粒の周りにSiOやMgOが存在する構造になる。
CoPtCr合金磁性膜である記録層の磁化容易軸方向を膜面に対して垂直方向に向けて、記録層をいわゆる垂直磁化膜とするために、結晶配向性を制御するための下地層を設けることもできる。例えば、下地層として、CoCrRuを主体とする合金膜を用いることができる。CoCrRu膜の結晶構造は記録層と同じhcp構造を有するため、その配向膜を下地層として用いることにより、記録層の磁化容易軸であるc軸を面内に対して垂直方向に結晶配向させることが可能になる。
なお、このCoCrRuは記録層の結晶配向性を制御する作用に加えて、記録層と磁気機能層の磁気的結合状態を制御する作用も有する。例えば、磁気機能層の保磁力が比較的大きい場合(例えば、後述の実施例3の場合)、磁気機能層と記録層の磁気的結合として交換結合が好適である。この例において、交換結合は、主にCoCrRu膜が磁性を有する場合、あるいは記録層ないし磁気機能層との接触によってCoCrRu膜の磁性が誘起される場合に発現させることができる。CoCrRu膜の組成比による条件としては、Co対Crの組成比率において、Crが50原子%以下であればよいことが分かった。膜厚としては、50nm以下で上記効果を発揮することができる。一方、5nmより薄くすると記録層の結晶配向性が低下する。また、膜厚が20nmより厚くすると第2下地層の結晶粒が粗大化してしまい、媒体ノイズが増大して記録特性が低下するという他の問題の要因が生じる。よって、第2下地層の膜厚としては5〜20nmであることが好適である。このような形態で記録層と磁気機能層を交換結合させることにより、さらに本発明の作用効果を好適に得ることができる。
本発明において「面内方向に保磁力を有する磁気機能層」は、磁気記録媒体を構成した状態での面内方向の保磁力が式(2)、好適には式(6)(または式(4)、好適には式(7))で示される範囲となるように、擬似軟磁性体で構成する。磁気機能層に用いる材料としては、第一にはPt、Pd、Rh、Au、Ag、Cuのうちの少なくとも一つの貴金属と、Fe、Co、Niうちの少なくとも一つの遷移金属とを含む合金により構成し得る。特に、PtまたはPdとCoまたはFeとを含む合金層が適している。
これらの合金膜は、磁化容易軸が面内にあり且つ面内方向に保磁力を有する擬似軟磁気特性を有する。例えば、PtCo合金においては、PtとCoの組成比及び製膜条件により、保磁力等の磁気特性を制御することが可能である。後述する実施例の実験よりPtCo合金の組成比をCo10〜70原子%及び85〜100原子%の範囲にすると、保磁力は約10〜600Oeに調整可能であることが分っている。この範囲の保磁力Hcにおいて、式(6)に従って残留磁化Mrの好適な範囲を逆算すると200〜500(emu/cc)となる。
さらに、上記PtCo合金において、面内方向の磁気異方性を付加するため下地層を設けることもできる。この下地層は、磁気機能層を下地層に対してエピタキシャル成長させることにより、面内方向の磁気異方性を付加する。結晶格子の整合性という観点から、CrやCrTi、CrV等のCr合金、あるいはMo、W等の材料を用い得る。
また、磁気機能層を構成する第2の材料としては人工格子膜が好適である。例えば0.8nm〜3.0nmの範囲から選択された膜厚を有する少なくともCoを含む層と、1.0nm〜10.0nmの範囲内から選択された膜厚を有する、Pt及びPdの少なくとも一方の白金族を含む層とを交互に積層して形成したCo/PdやCo/Ptなどの人工格子膜を用いることができる。人工格子膜は一般的に、その積層周期あるいは白金族層の厚さやCo層の厚さを調整することにより所定の磁気特性を得ることができるが、上記の積層構造にした場合、人工格子膜が磁気機能層となる。
磁気機能層を構成する第3の材料として、Fe中にTa、Nb、Zrのうちより選ばれる少なくとも1種類の元素の窒化物あるいは炭化物を均一に分散させた微結晶構造を有する磁性膜、例えばFeTaC等も好適である。また、CoZrを主体とし、これにTa、Nb、Tiのうちより選ばれる少なくとも1種類の元素を含んだ非晶質合金であってもよい。具体的な材料としては、高透磁率を有するCoTaZr、CoNbZr等を用いることができる。
磁気機能層を構成するその他の材料として、例えば、NiFe、ErFeCo、GdFeCo、Co、Fe、TmFeCo、あるいはCoCr系多結晶膜等の材料を用いることもできる。また、磁気機能層の材料として膜面に垂直な方向に高い透磁率を有する物質を用いることも好適である。
上記CoCr系の多結晶膜には、更に酸素を添加することもできる。例えば、CoCrPt膜は酸素を添加することによって、その面内方向の保磁力を制御することができる。後述の実施例3の組成の面内磁化膜(磁気機能層)においては、酸素を添加しない膜で約2.1(kOe)の保磁力を有するが、酸素を添加した場合、その添加量の増加に伴って面内方向の保磁力は低下する。このようなCoCrPt系の面内磁化膜においては、全般的に酸素の添加により保磁力が低下する。そして、酸素添加量が約40原子%を超えると非磁性になる。よって40原子%以下の範囲で酸素を添加して面内方向の保磁力を制御し、磁気記録媒体として構成したときの磁気特性が式(2)、好適には式(6)、または式(4)、好適には式(7)を満たすように調整することができる。
いずれの材料を用いる場合にも、磁気機能層の機能を持たせるために、その組成比や積層構造を制御する。すなわち、磁気特性として磁気機能層の垂直磁気異方性定数Kuが式(1)を満たし、且つ/または、磁気記録媒体構成時の面内方向の保磁力が式(2)、好適には式(6)、若しくは式(4)、好適には式(7)を満たすように調整して使用する。保磁力の制御方法として、磁気機能層に用いられる上述の材料に対して、酸素あるいは窒素を微量に添加して調整する方法が好ましい。
磁気機能層の材料として挙げた、上述のような系に対して酸素や窒素を微量に添加すると、それらの金属の酸化物あるいは窒化物の相が合金相の中に混在する状態となる。それら酸化物相や窒化物相の点が、面内方向に磁壁が移動する際あるいは磁化回転時のピンニングポイントとなり、保磁力を発生させる要因になる。よって、酸素や窒素の添加の度合いによって保磁力の大きさを制御することが可能である。
適正な保磁力を得るための酸素または窒素の添加量については、以下の通りである。まず、適当な保磁力を発生させるのにあたって、0.1原子パーセント以上の酸素または窒素を添加する。次いで、30原子パーセント以下の酸素や窒素を添加すると、磁気機能層と記録層との交換結合が強くなり、本発明の目的である磁化の安定化効果が十分に得られる。よって、酸素及び窒素を合わせて0.1原子パーセント以上30原子パーセント以下の添加が好適である。これは上述の磁気機能層の材料について全般的に有効であることが分かった。各系において、この濃度の範囲で酸素または窒素の添加を行なって磁気特性を調整し、Kuが式(1)を満たし、且つ/または、磁気記録媒体構成時の面内方向の保磁力が式(2)、好適には式(6)、若しくは式(4)、好適には式(7)を満たすような所定値となるように、個々に調整を行なうことができる。また、磁気機能層の膜厚としては、全般的に20〜150nmの範囲で調整することが、好適な特性を得る上で適当であった。
上記磁気機能層の製造方法としては、アルゴンと酸素の混合ガスをスパッタガスとして用い、アルゴンと酸素の比を適宜調節する。これにより、面内磁性層中に酸素を分散した状態で導入することができる。
記録層に人工格子膜を用い、磁気機能層にも同じ材料系の人工格子膜を用いた場合には、記録層と磁気機能層とで、各層の厚さや積層周期が異なる積層構造となる。磁気機能層は面内に磁化容易軸を有し、その面内方向の保磁力等を調整することが可能である。磁気機能層上に積層される記録層は膜面に垂直な方向に磁化容易軸を有し、その垂直方向に1.5kOe〜10kOeの保磁力を有する垂直磁化膜となるように積層構造を制御する。そして、磁気記録媒体構成時の面内方向の保磁力と垂直方向の残留磁化等が式(2)、好適には式(6)、または式(4)、好適には式(7)を満たすように総合的に調整する。
なお、このように記録層と磁気機能層にともに人工格子膜を用いた場合には、その積層周期や各層の膜厚等を、図3に示すように、記録層と磁気機能層との間に設けた遷移領域によって連続的に変化させることにより、磁束の密閉性等を向上させることができるので、さらに熱安定性の向上効果を得ることができる。
図11に、後述の実施例で行ったCo/Pd人工格子膜のCo膜厚に対する磁気異方性の変化の測定例を示す。図11に示すように、人工格子膜は一般的にCo層が薄い領域で垂直磁気異方性を示す。よって、Co層が0.8nm以下の人工格子膜を記録層の構造の基礎とし、それよりCo層が厚い0.8nm以上の範囲の人工格子膜を磁気機能層の構造の基礎として、それぞれに適正な磁気特性となるように制御することが好適である。
その他の磁気特性の必要性から、本発明において磁気機能層としては、例えば0.8nm〜3.0nmの範囲から選択された膜厚を有する少なくともCoを含む層と、1.0nm〜10.0nmの範囲内から選択された膜厚を有する、Pt及びPdの少なくとも一方の白金族を含む層とを交互に積層して形成したCo/PdやCo/Ptなどの人工格子膜が好適である。
なお、磁気機能層及び記録層にそれぞれ異なる元素を適宜添加することにより、磁気特性の調整を行なうことも可能である。このように磁気機能層に記録層と同じ系の人工格子膜を用いることにより、磁気機能層の下に積層したシード層の効果、すなわち結晶配向性や粒径を制御し適正化する効果が両層にもたらされ、記録性能的に良好な状態を実現することができる。
シード層の材料として、例えば、Pd元素と、Si、B、C及びZrからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を用い得る。特に、PdとSi、または、PdとBで構成することが好適である。膜厚は1nm〜30nmの範囲内にあることが望ましい。
さらに、本発明において、上記磁気機能層の下に軟磁性下地層を設けてもよい。この軟磁性下地層は、垂直磁気記録媒体において単磁極ヘッドを用いて記録を行なう際に、記録用磁気ヘッドの主磁極から発せられる磁束が記録層を通過した後に軟磁性下地層内を面内方向に通過させ、記録用磁気ヘッドの補助磁極へと還流して閉磁界ループを形成させる。これにより、磁束還流の損失を低減し、記録層に強磁界を効率よく印加できるようにすることにより、記録特性を向上させる。軟磁性下地層は面内方向の保磁力及び垂直方向の残留磁化を生じないため、本発明の効果範囲を示す式(2)並びに式(6)、式(4)、式(7)に関する測定に影響を与えないので、この層を積層した状態で評価することができる。なお、軟磁性下地層に本発明の磁気機能層の磁気特性を持たせることにより、上述の磁気機能層と同様の効果を発揮させることが可能である。
本発明の磁気記録媒体の基板は、例えば、アルミニウム・マグネシウム合金基板、ガラス基板、グラファイト基板等の非磁性基板を用い得る。アルミニウム・マグネシウム合金基板には、表面をニッケル・リンでメッキしてもよい。基板を回転させながら基板表面にダイヤモンド砥粒や研磨用テープを押し当てることにより基板表面を平坦に処理してもよい。
基板上には、基板とその上に積層される磁性薄膜との密着性を向上させるために、Ti、Si、Crなどの接着層を形成しても良い。
記録層の上には、保護層を備えることができる。保護層としては、例えば、非晶質炭素、ケイ素含有非晶質炭素、窒素含有非晶質炭素、ホウ素含有非晶質炭素、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム及び立方晶窒化ホウ素のうちのいずれか一種を好適に用いることができる。
保護層の上には、耐摺動特性を良好なものにするために潤滑剤を塗布することができる。潤滑剤としては、主鎖構造が炭素、フッ素、酸素の3つの元素からなるパーフルオロポリエーテル系高分子潤滑剤を用いる。あるいは、フッ素置換アルキル化合物を潤滑剤として用いることもできる。安定な摺動と耐久性を有する材料であれば、他の有機系潤滑剤や無機系潤滑剤を用いてもよい。潤滑剤層の膜厚としては、平均値として0.5nm〜3nmが好適である。
図1に、磁気記録媒体100の概略断面図を示す。磁気記録媒体100は、基板1上に接着層2、磁気機能層3、記録層4、保護層5及び潤滑剤層6をこの順で有する。磁気機能層3には酸素添加PtCo合金を、記録層4にはCo/Pd人工格子膜を用いた。かかる積層構造を有する垂直磁気記録媒体100を、主にマグネトロンスパッタ法により形成した。スパッタ時の到達真空度は、各層とも5×10−6Paよりも高真空に設定し、スパッタガスには主として純度6N以上のArガス、Krガスまたはそれらのガスをベースとした混合ガスを用いた。また、製膜時の基板温度は室温とした。以下に各層の製造方法について説明する。
(接着層)
まず、直径65mmのガラス基板1を用意し、ガラス基板1上に連続スパッタ装置により、接着層2として厚さ5nmのTiを製膜した。
(磁気機能層)
次いで、接着層2上に、磁気機能層3として、酸素を添加したPtCo合金膜を形成した。
本実施例において、酸素添加PtCo合金の磁気機能層3は、PtとCoの二つのターゲットを同時に放電させる、いわゆるコスパッタ法により製膜した。スパッタガスとして分圧比1.5%の酸素を含むArを導入して製膜を行ない、膜中への酸素添加を行なった。その結果、原子組成比としてPt:Co:O=63:35:2の酸素添加PtCo合金を得た。その膜厚は、50nmとした。なお、磁気機能層3の製膜時には、媒体基板の半径方向に放射状に約50〜150Oeの磁界を印加した。これにより、磁気機能層3を、面内方向のうち記録トラックに垂直な方向、即ち、媒体半径方向に磁化容易軸を有する磁性膜とすることができる。
(記録層)
磁気機能層3上に、CoとPdの人工格子構造の記録層4を製膜した。記録層4の製膜では、Arガス中でCoターゲットとPdターゲットのシャッターを交互に開閉しながらスパッタ製膜を行った。これにより、Co層とPd層とが交互に積層された人工格子構造の記録層4を形成した。Co層の1層あたりの膜厚を0.11nm、Pd層の1層あたりの膜厚を0.92nmとし、Pd層とCo層の積層数は、Pd層を26層とし、Co層を25層とした。
(保護層)
次いで、記録層4上に、アモルファスカーボンからなる保護層5を、DCマグネトロンスパッタ法により膜厚3nmにて形成した。
(潤滑剤層)
次いで、保護層5上に、潤滑剤層6としてパーフロロポリエーテル系潤滑剤層を、ディップ法により膜厚1nmで形成した。こうして、図1に示す積層構造を有する磁気記録媒体100を作製した。
本実施例のように、記録層4と磁気機能層3とが直接接触している積層構造では、両者の間に交換結合力が作用する。その様子を図7に模式的に示した。記録が行なわれた後、この交換相互作用によって磁気機能層3の表面の磁気モーメントが記録層4の磁化方向に揃う。さらに、記録層4の磁化から発生する磁束に沿って磁気モーメントが整列し、記録層4の磁区間を結ぶミクロな閉磁路が磁気機能層3内に形成される。このような磁気構造においては、記録層4の表面の磁極から発生する磁束が効果的に再生用磁気ヘッドによって検出されるため、高出力化が図られる。
[MrとHcの関係]
磁気機能層の面内方向保磁力Hcと記録層の垂直方向の残留磁化Mrとの好適な関係を調べるために以下のような実験を行った。各実施例にて述べる記録層及び磁気機能層の積層構造や組成比を制御して、MrとHcが様々な組み合わせとなる各種磁気記録媒体を作製して熱安定性を評価した。実施例1の磁気記録媒体を製造する際、記録層を構成するPd層とCo層の多層膜構成におけるCo層の膜厚を変化させることにより、記録層の残留磁化Mrの値を調製した。また、酸素を添加したPtCo合金の組成比及び酸素添加量を変更することによって磁気機能層が種々の面内方向保磁力Hcを有するように調製した。また、CoCr系多結晶膜の記録層においては、Co組成比を調整して残留磁化Mrを制御した。また、Pd/Co人工格子膜を用いた磁気機能層においては、成膜時のスパッタガス圧等のプロセスパラメータを調整して面内方向保磁力Hcの制御を行った。こうして、種々の面内方向保磁力Hcを有する磁気機能層と種々の残留磁化Mrを有する記録層を組み合わせた磁気記録媒体を調製し、それらの熱安定性について評価した。作製した媒体のMrは、50,210,330,420及び500(emu/cc)である。評価方法としては、媒体に記録を行って、その後の時間経過による再生信号の規格化出力の変化(熱減磁率特性という)を測定した。測定環境を70℃として、より厳しい条件で測定を行った。一般に、熱的に安定性の高い磁気記録媒体では、1,000秒経過後もその出力は低下しない。この測定は、後述の実施例5に述べる装置及び方法を用いて行った。
図9に、各磁気記録媒体の面内方向の保磁力に対する、1,000秒経過後の規格化出力の変化をプロットしたグラフを示す。また、これらのデータを第1磁化安定因子Hc/Mrを基準に再度プロットしたグラフを図16に示す。本検証は、種々の磁気特性(Mr=50、210、330、420、500)を有する多くの磁気記録媒体に対してなされたものであるが、このグラフからグラフ上のデータが一連の傾向を示していることが分かる。すなわち、記録磁化の安定性は、本発明者の見出した磁化安定因子Hc/Mrに依存しており、磁化安定因子Hc/Mrを限定された範囲に調整することにより記録磁化を極めて安定に保つことができる。具体的には、このグラフは、1,000秒経過後の規格化出力の変化が1%以内に収まる(第1)磁化安定因子Hc/Mrは0.05≦Hc/Mr≦2.5であることを示している。図16の結果により、磁化安定因子Hc/Mrが極めて小さい媒体よりも、ある程度の大きい値を持つ媒体の方が熱安定性が高くなっていることが分かる。そして、磁化安定因子Hc/Mrの高い側では、再度熱安定性が劣化することが分かる。これは、磁気機能層の保磁力が大き過ぎるため、記録時に記録磁区の磁化方向に従って磁気機能層が磁化反転できなくなり、磁化の安定化に必要となる閉磁路を構成できなくなったことによる。この閉磁路が形成されないと、逆に記録磁区を動かす方向に作用してしまうため、結果として熱安定性が劣化する。また、この状態では記録の際にも記録磁区に所定の大きさの磁区を記録できないため、他と比較してS/Nも劣ってしまう。
[磁気機能層の保磁力と組成の関係]
実施例1の媒体において、磁気機能層のPtCo合金薄膜の組成を種々変更した場合に、面内方向の保磁力(Hc)がどのように変化するかについて調査した。図10に、PtCo合金薄膜の、組成比による面内方向の保磁力(Hc)の変化を示す。この結果から、PtCo合金の組成比をCo10〜70原子%及び85〜100原子%の範囲にすると、保磁力は約10〜600Oeとなる。この範囲の保磁力Hcにおいて、式(6)に従って残留磁化Mrの好適な範囲を逆算すると200〜500(emu/cc)となる。基本的に本発明では、式(2)、好適には式(6)、または式(4)、好適には式(7)に従って記録層と磁気機能層の磁気特性を設定するが、垂直磁気記録媒体においては記録層の残留磁化Mrは典型値として200〜500(emu/cc)の範囲となる。上記のような材料を用いることにより、保磁力Hcを約10〜600Oeの好適範囲に容易に調整し得るので、特に本発明の磁気機能層に適していることが分る。
次に、記録層と磁気機能層の両方にCoとPdの人工格子膜を用いた磁気記録媒体の実施形態を示す。その磁気記録媒体20の概略断面図を、図2に示す。
(接着層)
実施例1と同様に、ガラス基板21上に接着層22を製膜した。
(軟磁性下地層)
次いで、接着層22上に軟磁性下地層23を積層した。材料としてFe79Ta12を用い、膜厚200nmで製膜した。更に、製膜したFe79Ta12を、真空中でカーボンヒーターにより450℃の温度で30秒間加熱した後、徐冷した。
(シード層)
次に、記録層27の結晶配向性を最適に制御する層としてシード層24を形成した。本実施例では、軟磁性下地層23上にシード層24としてPd6040を、膜厚5nmにて形成した。製膜は、スパッタチャンバー内にアルゴンガスを導入して、PdターゲットにDC電力を印加し、BターゲットにRF電力を印加して、コスパッタ法により行った。
(磁気機能層)
人工格子膜の磁気機能層25は、CoターゲットとPdターゲットを用いてシャッターを交互に開閉しながらスパッタ製膜して、Co層とPd層とを交互に積層した。なお、スパッタガスとしてArを導入し、その圧力を4mTorrとした。この系の人工格子膜を面内磁化膜とするためには、スパッタArガス圧として5mTorr以下が好適である。Co層の1層あたりの膜厚を1.2nm、Pd層の1層あたりの膜厚を5.7nmとし、積層数はPd層を11層とし、Co層を10層とした。また、磁気機能層25の製膜時には実施例1と同様に、媒体基板の半径方向に放射状に約50〜150Oeの磁界を印加して、磁気機能層25の磁化容易軸の方向が面内方向で且つ記録トラックに垂直な方向(媒体半径方向)となるようにした。
(記録層)
本実施例において、人工格子膜の記録層27を、実施例1と同様の方法により製膜した。Co層とPd層とが交互に積層された人工格子構造の記録層27の、Co層の1層あたりの膜厚は0.11nm、Pd層の1層あたりの膜厚は0.92nmであり、Pd層とCo層の積層数は、Pd層を26層とし、Co層を25層とした。
なお、本実施例では、記録層25と磁気機能層27の間に遷移領域26を設けた。遷移領域26を設けることにより、記録層25と磁気機能層27との間の積層構造を連続的に変化させた。遷移領域26は、図3に示すように、Co/Pdを5周期積層した構造を有しており、遷移領域のCo層とPd層の膜厚は磁化対応層25におけるCo層とPd層の膜厚から記録層27のCo層とPd層の膜厚に近づくように連続的に変化している。これにより、記録層25と磁気機能層27は、膜厚が線形的に変化する遷移領域26を介して接続される。
記録層27上に形成される保護層28及び潤滑剤層29(図2参照)の製造プロセス及び材料等は、実施例1と同様に構成した。
[Co/Pd人工格子膜におけるCo膜厚と磁気異方性の関係]
この実施例で作製したCo/Pd人工格子膜のCo膜厚を種々の値に変化させて垂直磁気異方性エネルギーの変化を調査した。このときのPd層の厚みは、0.8mm、1.6mm、3.2mm、6.4mmの各膜厚とし、それぞれ各膜厚のCo層と組み合わせて作製した。図11に、Co/Pd人工格子膜のCo膜厚に対する磁気異方性の変化の測定結果を示す。図11に示すように、Co層が薄い領域で垂直磁気異方性を示している。なお、垂直磁気異方性エネルギーは基本的にPd層の厚みに依存せず、ほぼ図11のグラフの直線上に存在することも分った。
本発明における更に異なる実施形態を、図4を用いて説明する。本実施例で作製した磁気記録媒体の概略断面図を、図4に示す。図4に示すように、磁気記録媒体40は、基板41上に第1下地層42、磁気機能層43、第2下地層44、記録層45、保護層46及び潤滑材層47を順次積層した構造を有する。磁気機能層43及び記録層45には、ともにCoCr系多結晶膜、具体的には酸素を添加したCoCrPtを用いた。磁気機能層43は面内方向に磁化容易軸を有し、記録層45は膜面に垂直な方向に磁化容易軸を有する。第1下地層42及び第2下地層44によって磁気機能層43と記録層45の結晶配向性をそれぞれ制御することにより、磁気機能層43と記録層45の磁化容易軸方向を制御した。なお、基板41、保護層46及び潤滑材層47は、上記実施例と同様に形成した。
(第1下地層)
直径65mmの円板状のガラス基板41を用い、その上に第1下地層42としてCrを厚さ10nmで積層した。
(磁気機能層)
本実施例では、CoCr系材料の磁気機能層43として、酸素を添加したCoCrPt膜を用いた。CoCrPt膜は酸素を添加することにより、その面内方向の保磁力を制御することができる。例えば、酸素を添加しない面内磁性層(磁気機能層)の場合、面内方向の保磁力は約2.1(kOe)であるのに対し、酸素を添加した面内磁性層(磁気機能層)の場合は、酸素の添加量の増加に伴って面内方向の保磁力が低下する。
本実施例では、DCマグネトロンスパッタ装置により、スパッタリングターゲットとしてCo74Cr14Pt12を用いて、第1下地層42上にCoCrPt−Oの磁気機能層43を形成した。製膜時にスパッタガスとしてアルゴンと酸素の混合ガスを用い、混合ガスの全圧が10mTorrとなるように調節した。酸素は、分圧を0〜15×10−5Torrの圧力範囲内で適宜調節することにより、磁性層中に所定の量を添加することができる。本実施例では、酸素分圧を4.5×10−5Torrとして製膜し、膜中に酸素を約22原子%含むCoCrPt−Oの面内磁性層(磁気機能層)43を得た。その膜厚は30nmとした。また、磁気機能層43の製膜時に、媒体基板の半径方向に放射状に約50〜150Oeの磁界を印加し、磁気機能層43の磁化容易軸の方向を面内方向で且つ記録トラックに垂直な方向(媒体半径方向)となるようにした。
(第2下地層)
本実施例の磁気記録媒体では、酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜である記録層45の結晶配向性を制御するために、第2下地層44として、CoCrRuを主体とする合金膜を用いた。
ターゲットの組成はCo60Cr20Ru20(at%)とし、スパッタリング条件は、ガス圧3.0Pa、投入電力500Wとした。第2下地層44の膜厚は、10nmとした。
(記録層)
本実施例の磁気記録媒体では、記録層45として、酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜を用いた。
本実施例では、第2下地層44上に、記録層45として、酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜をRFスパッタリングにより形成した。スパッタリング条件は、アルゴンガス圧3.0Pa、投入電力500Wとし、ターゲットの組成はCo66Pt20Cr14(at%)−O(CoPtCr:O=91:9mol%)とした。記録層45の膜厚は、20nmとした。
(保護層および潤滑材層)
記録層45上に、上記実施例と同様に、C(カーボン)膜の保護層46をDCスパッタリングにより形成し、さらに保護層46上に潤滑剤を塗布して潤滑剤層47を形成した。こうして得られた磁気記録媒体40を、上記実施例と同様に、磁気記録装置内に装着して記録再生特性を評価した。
上記実施例1〜3で製造した各磁気記録媒体について、基板面に垂直方向の残留磁化Mr、基板面内方向の記録トラックに垂直な方向の保磁力Hc0、基板面に垂直な方向の保磁力Hc1及び基板面に垂直な方向の単位面積当たりの残留磁気モーメントMをそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
Figure 0003886011
実施例1及び実施例2の磁気記録媒体は、式(2),(6),(4)及び(7)を満足し、実施例3の磁気記録媒体は、式(2),(4)及び(7)を満足することが分る。
以上、本発明に従う磁気記録媒体の実施例について説明したが、記録層や磁気機能層等の各層の構成や組合せは、上述の実施例に限定されるものではなく、任意に選択して磁気記録媒体として構成した状態で、式(2)、好ましくは式(6)、または式(4)、好ましくは式(7)を満足するように、適宜磁気特性を調整して本発明を実施し得る。
磁気機能層を、Co層とPt層とが交互に積されたCo/Ptの人工格子膜とし、Co層の1層あたりの膜厚を0.4nm、Pt層の1層あたりの膜厚を1.1nmとし、Pt層とCo層の積層数は、Pt層を15層とし、Co層を15層とした以外は、実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製した。
(比較例1)
実施例2において、磁気機能層と遷移領域を設けなかった以外は、実施例2と同様にして磁気記録媒体を作製した。
(比較例2)
実施例1において、磁気機能層をCo/Pdの人工格子膜とし、Co層の1層あたりの膜厚を1.5nm、Pd層の1層あたりの膜厚を5.7nmとし、Pd層とCo層の積層数をPd層を9層とし、Co層を9層とした以外は、実施例1と同様にして磁気記録媒体を製造した。
(比較例3)
実施例1において、磁気機能層をCo/Ptの人工格子膜とし、Co層の1層当たりの膜厚を0.4nm、Pt層の1層あたりの膜厚を0.6nmとして、Pt層とCo層の積層数はPt層を65層とし、Co層を65層とした以外は、以外は、実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製した。
実施例1〜4及び比較例1〜3で作製した磁気記録媒体の磁気特性及び記録再生特性(S/N値)を、表2に示す。
Figure 0003886011
この結果から、該磁気異方性エネルギーKuの範囲を具体的な数値としてまとめた。表2の実験結果において、S/N値が20dBを超える範囲となるKuの範囲を、反磁界エネルギーである2πMsを用いて表すと、
−4×2πMs≦Ku≦6×2πMs …(1)
の関係を満たすように磁気特性を調整した媒体は、高密度記録時のS/N値としていずれも20dB以上の良好な記録再生特性を示していることが確認できる。
[記録層のMrとS/Nの関係]
上記実施例で製造した各磁気記録媒体を用いて、記録に好適な残留磁化MrとS/Nの関係を調査した。残留磁化Mrの調整にあたっては、記録層の組成比や成膜条件を制御した。Pd/Co人工格子膜の記録層においては、主にCo層の膜厚を変化させた。また、CoCr系多結晶膜の記録層においては、Coの組成比を変化させた。その結果を図14に示す。S/Nの測定条件は、後述する実施例5と同様にした。この結果、S/N値は各材質の記録層に対して概ね同様の変化を示しているのが分かる。また、記録層の残留磁化Mrが、50≦Mr≦500(emu/cc)を満たす場合、20dB以上のS/Nを得ることができることが分かる。
[記録層のMrと膜厚の関係]
また、記録層の膜厚の好適な範囲についても、上記実施例で製造した磁気記録媒体を用いて、S/Nとの関係を調査した。記録層としてPd/Co人工格子膜及びCoCr系多結晶膜を用い、それぞれの膜厚を変えて媒体を作製した。S/Nは、後述する実施例5と同様の測定条件で調査した。その結果、S/N値は各材質の記録層に対して概ね同様の変化を示し、図13に示すように膜厚5nm〜60nmの記録層において、20dB以上のS/Nを得ることができることが分った。
〔磁気記録装置〕
以下に、本発明の磁気記録装置について説明する。
本発明の磁気記録装置は、上記の磁気記録媒体を備えるので、情報を高い面記録密度で記録可能であり、且つ熱的に安定性に優れた情報保持能力を備えている。
本発明の磁気記録装置において、磁気ヘッドは、磁気記録媒体に情報を記録するための記録用磁気ヘッドと、磁気記録媒体に記録された情報を再生するための再生用磁気ヘッドとから構成され得る。記録用磁気ヘッドのギャップ長は、0.2μm〜0.02μmが望ましい。ギャップ長が0.2μmを越えると、400kFCI以上の高い線記録密度で記録することが困難になる。
再生用磁気ヘッドは、磁気抵抗効果素子を用いて構成することができる。再生用磁気ヘッドの再生シールド間隔は、0.2μm〜0.02μmが望ましい。再生シールド間隔は再生分解能に直接関係し、短いほど分解能が高くなる。再生シールド間隔の下限値は、素子の安定性、信頼性、耐電気特性、出力等に応じて前記範囲内で適宜選択することが望ましい。
本発明の磁気記録装置において、駆動装置は、磁気記録媒体を回転駆動させるスピンドルを用いて構成することができ、スピンドルの回転速度は毎分3000回転〜20000回転が望ましい。毎分3000回転より遅いとデータ転送速度が低くなるため好ましくない。また、毎分20000回転を越えると、スピンドルの騒音や発熱が大きくなるため望ましくない。これらの回転速度を勘案すると、磁気記録媒体と磁気ヘッドの最適な相対速度は2m/秒〜30m/秒となる。
上述の各磁気記録媒体の製造工程により、複数枚の磁気記録媒体を作製した。図12に示すように、その磁気記録媒体200を、磁気記録装置500に組み込んだ。本実施例においては、磁気記録媒体200として、上述の実施例1〜実施例4に係る磁気記録媒体をそれぞれ採用した4種の磁気記録装置500を作製した。
磁気記録装置500は、磁気記録媒体200と、磁気記録媒体200を回転駆動するための回転駆動部89と、磁気ヘッド82と、磁気ヘッド82を磁気記録媒体上で所望の位置に移動させるヘッド駆動装置90と、記録再生回路86とを備える。ヘッド駆動装置88は、アクチュエーター84及び駆動回路85で構成されている。さらに、磁気記録装置500は、サスペンション83、記録再生回路86、位置決め回路87、インターフェース制御回路88等を備える。
磁気ヘッド82は、記録用磁気ヘッド(不図示)及び再生用磁気ヘッド(不図示)が一体化された磁気ヘッドである。記録用ヘッドは、2.1Tの高飽和磁束密度を有する軟磁性層を用いた単磁極型書き込み素子を有する薄膜磁気ヘッドであり、再生用磁気ヘッドは、巨大磁気抵抗効果を有するデュアルスピンバルブ型のGMR(Giant Magneto-Resistive)磁気ヘッドである。
この一体型の磁気ヘッド82は、サスペンション83により保持されており、サスペンション83はアクチュエータ84と駆動回路85とからなる磁気ヘッド駆動装置90により制御される。サスペンション83及び駆動回路85は、位置決め回路87にそれぞれ接続されている。位置決め回路87はインターフェース制御回路88に接続されており、インターフェース制御回路88は記録再生回路86に接続されている。また、記録再生回路86はサスペンション83を介して磁気ヘッド82に接続されている。
磁気ヘッド82の単磁極型書き込み素子は、情報記録時に磁気記録媒体に記録するデータに応じた磁界を印加して磁気記録媒体に情報を記録することができる。磁気ヘッド82のGMR読み込み素子は、磁気記録媒体からの漏洩磁界の変化を検出して磁気記録媒体に記録されている情報を再生することができる。記録再生回路86は、磁気記録媒体200に記録するデータを符号化して磁気ヘッド82の単磁極型書き込み素子に記録信号を送信することができる。また、記録再生回路86は、磁気ヘッド82のGMR読み込み素子により検出された磁気記録媒体200からの再生信号を復号することができる。
かかる構成の磁気記録装置500において、複数の磁気記録媒体200は回転駆動部89により同軸回転されており、磁気記録媒体200の回転時には、磁気ヘッド82の底面と磁気記録媒体200の表面との距離が13nmになるように制御される。
かかる磁気記録装置500を駆動し、磁気的スペーシング(磁気ヘッド82の主磁極表面と磁気記録媒体200の記録層表面との距離)を13nmに維持しながら、線記録密度1000kBPI、トラック密度150kTPIの条件にて情報を記録し、記録した情報を再生して記録再生特性を評価したところ、トータルS/Nとして実施例1の媒体で26.3dB、実施例2の媒体で25.7dB、そして実施例3の媒体で25.3dBをそれぞれ得た。更に、面記録密度100〜500ギガビット/平方インチの記録密度にて記録再生することができた。
また、基本的な性能試験として、磁気ヘッドを磁気記録媒体上の内周から外周まで10万回シークさせ、かかるヘッドシーク試験後に磁気記録媒体のビットエラーを測定したところ、ビットエラー数は10ビット/面以下であり、30万時間の平均故障間隔を達成することができた。
なお、前記S/Nは下記式を用いて求めた。
S/N=20log(S0−p/Nrms)
式中、S0−pは、ゼロ点からピークまで(zero to peak)の再生信号振幅の半分の値であり、Nrmsはスペクトルアナライザーにより測定したノイズの振幅の平方自乗平均値である。
〔熱アシスト記録〕
本発明の媒体は、記録に際して、少なくとも記録を行なう部分の温度を上昇させて磁界を印加することにより、さらに高密度な記録において高い信号品質を得ることが可能である。
実施例1の構造の磁気記録媒体を用いて、記録磁界を印加する位置を含む直径約0.76μmの領域に、集光したレーザー光を照射して、当該領域の温度を最高点で200℃以上となるように上昇させた。レーザー光は波長650nm、レンズNA0.85の対物レンズを用いた光学系により照射した。そして、線記録密度1000kBPI、トラック密度700kTPIで記録を試行した。再生時にはレーザー光を照射せず、常温状態で上述のGMRヘッドを用いて再生を行なった。その結果、上記記録密度での記録再生信号として、S/N値23.2dBを得た。同じ媒体に対して同様な記録を、温度を上昇させずに行なったところ、記録再生信号のS/Nは20.7dBであった。温度を上昇させて記録を行なうことにより、記録再生信号のS/Nが向上するのが確認できる。
これは、磁気機能層の磁気モーメントの記録磁界方向への回転が、温度とともにより小さい磁界で発生し易くなることに起因すると考えられる。一般的に磁気異方性エネルギーは、垂直、面内ともに温度の上昇とともに飽和磁化の指数関数的に減少していく。これに伴い、単位あたりの外部磁界に対する磁気モーメントの回転角が温度上昇とともに増大し、特にキュリー温度近傍で急峻に増加することが確認されている。この作用により、温度が上昇した状態においては、磁気機能層の磁化が印加磁界方向を向き、その磁化が磁気記録層の磁化に対して印加磁界を補助する作用がより効果的に発揮され、高S/Nでの記録再生出力が可能となると考えられる。
〔熱減磁率の測定〕
次いで、磁気記録媒体について熱減磁率の測定を行なった。この測定は、上述の通り、磁気記録媒体の熱的な安定性を評価する手段である。熱減磁率の具体的な測定方法としては、70℃の環境下において、線記録密度100kFCIにて記録した信号を再生したときの再生信号振幅の時間に対する変化の割合を調べた。図8にその測定結果を示した。比較のため、従来の磁気記録媒体として、磁気機能層(及び遷移領域)を持たない比較例1の磁気記録媒体において、同様の熱減磁率の測定を行なった結果を示した。図8に示すように、比較例1の磁気記録媒体では時間の経過とともに規格化出力が低下するのに対し、上記実施例1〜3の磁気記録媒体では時間が経過しても規格化出力は殆ど低下せず熱減磁がない。すなわち、熱安定性が大きく改善されていることが分かる。
本発明の磁気記録媒体においては、磁気機能層が軟磁性下地層の作用を効果的に兼ねるため、実施例1や実施例3のように軟磁性下地層を省略して磁気機能層を構成することが可能である。しかしながら、更なる記録特性改善の効果を得るために、基板と記録層の間に軟磁性下地層を付加することも可能である。実施例2は、典型的にその構成例を示しているが、公知の種々材料を用いて構成することも可能である。いずれにしても、本発明における磁気記録媒体の構成と組み合わせる場合には、軟磁性下地層の膜厚は薄くて構わない。従来、膜厚200〜500nm程度を必要としていたが、本発明の磁気記録媒体では150〜200nmの膜厚で十分にその効果を得ることができる。これにより、優れた記録再生特性を確保することができた。
また、垂直磁気記録媒体に積層した軟磁性下地層において、面内方向に保磁力が発現するよう調整し、式(1)、好ましくは式(3)、または式(2)、好ましくは式(6)を満たすように磁気特性を調整することによって、本発明の作用効果を得ることも可能である。
なお、本発明の磁気記録装置に関する構成は上記実施例に限定されるものではなく、適宜選択、調整して構成し得る。
なお、本明細書における垂直方向の残留磁化Mr、面内方向の保磁力Hc等は、基本的に磁気記録媒体として積層を完了した状態で測定を行なった結果である。しかしながら、磁気記録媒体においては垂直方向の残留磁化に関しては記録層の磁化が主であり、一方、面内方向の保磁力は主に面内磁化膜(磁気機能層)によって発生する。よって、それらの層を各々単独の状態で測定した数値をもって、磁気記録媒体の評価とすることも可能である。測定に際しては、垂直方向、面内方向ともに、VSMを用いて、最大10〜15kOeの外部磁界を印加して測定する。
また、一般に記録トラックに平行な方向の記録密度(線記録密度)のほうが、記録トラックに垂直な方向の記録密度(トラック記録密度)より高いので、面内方向の磁気測定は、記録トラック方向に対して平行に測定することが重要である。
一方、本発明の実施に当たり、面内方向に保磁力を有する面内磁化膜(磁気機能層)の付加が典型的な手段であり、磁気機能層の磁化容易軸は面内方向で且つ記録トラックに対して垂直な方向、すなわち、円板状の媒体では半径方向にあることが好適である。よって、本発明の効果を確認し、または発揮させる上で、面内方向の磁気の測定を行う際に、記録トラック方向に対して垂直に測定することも重要である。上記実施例では、面内方向の保磁力は記録トラックに垂直な方向(媒体半径方向)で測定した。
本発明の磁気記録媒体は、少なくとも基板上に直接または間接的に設けられた、基板面に垂直な方向に磁化容易軸を有する記録層とを備えた磁気記録媒体であって、上記式(1)、(2)及び(3)、または式(4)及び(5)の関係式を満足することにより、高密度記録を行なった際のS/N値が高く、且つ記録情報の熱的安定性の高い磁気記録媒体及び磁気記録装置を実現することができる。従って、本発明の磁気記録媒体及びそれを含む磁気記録再生装置は、100ギガビット/平方インチ以上の高密度記録に極めて有効である。
本発明の実施例1における磁気記録媒体の概略断面図である。 本発明の実施例2における磁気記録媒体の概略断面図である。 実施例2における磁気記録媒体の一部の断面を示した図である。 本発明の実施例3における磁気記録媒体の概略断面図である。 垂直磁気記録膜の熱的な不安定性の要因を説明する模式図である。 本発明に従う磁気記録媒体による、熱的安定性を改善する作用を説明する模式図である。 本発明に従う磁気記録媒体の典型的な積層構造の概略断面を模式的に示す図である。 本発明に従う磁気記録媒体と比較例における熱減磁率の測定結果である。 本発明に係る磁気記録媒体に用いる磁気機能層の保磁力を変化させた時の熱減磁率の測定結果である。 PtCo合金薄膜の組成比に対する面内保磁力の変化を表す図である。 Co/Pd人工格子膜におけるCo膜厚に対する磁気異方性の変化を表す図である。 本発明に係る磁気記録装置の概略構成図である。 記録層の膜厚に対するS/Nの変化を示したグラフである。 記録層のMrに対するS/Nの変化を示したグラフである。 記録層のM値に対するS/N値の変化を示したグラフである。 本発明に係る磁気記録媒体の、磁化安定因子Hc/Mrに対する1,000秒経過後の規格化出力の変化を示したグラフである。
符号の説明
82 磁気ヘッド
83 サスペンション
84 アクチュエータ
85 駆動回路
86 記録再生回路
87 位置決め回路
88 インターフェース制御回路
89 回転駆動部
200 磁気記録媒体
500 磁気記録装置

Claims (7)

  1. 基板と、該基板上に設けられた磁気機能層と、垂直磁気異方性を有する磁気記録層とを有する磁気記録媒体であって、
    前記磁気機能層の膜厚が20〜150nmであり、前記磁気記録層の膜厚が5〜60nmであり、
    該磁気機能層の垂直磁気異方性定数をKu、飽和磁化をMsとしたとき、
    −4×2πMs≦Ku≦6×2πMs
    であって、
    前記磁気機能層が面内方向で且つ記録トラックに垂直な方向に保磁力を有し、
    前記磁気記録媒体の面内方向で且つ記録トラックに垂直な方向の保磁力をHc(Oe)、前記基板面に垂直な方向の残留磁化をMr(emu/cc)としたとき、Mrが50≦Mr≦500であり、
    0.05≦Hc/Mr≦2.5
    の関係式を満足し、
    前記磁気機能層の前記基板面に垂直な方向の保磁力が、前記磁気記録層の前記基板面に垂直な方向の保磁力よりも小さいことを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 上記磁気機能層が、少なくともCoと、PtまたはPdとを含む合金層、あるいはCoを含む層とPtまたはPdを含む層との交互積層多層膜であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 上記磁気記録層が、Pdを含む層とCoを含む層が交互積層された多層膜であることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
  4. 上記磁気記録層が、少なくともCoCrを含む合金層であることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁気記録媒体の記録方法であって、
    記録時に上記磁気記録媒体の記録部分を加熱して記録磁界を印加することを特徴とする磁気記録媒体の記録方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁気記録媒体を備える磁気記録装置であって、
    情報を記録及び/または再生するための磁気ヘッドと;
    前記磁気記録媒体を前記磁気ヘッドに対して駆動するための駆動装置と;を備えることを特徴とする磁気記録装置。
  7. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁気記録媒体を備える磁気記録装置であって、
    情報を記録及び/または再生するための装置と、記録を行なう部分の温度を上昇させるための光照射装置とを備えた磁気ヘッドと;
    前記磁気記録媒体を前記磁気ヘッドに対して駆動するための駆動装置と;を備えることを特徴とする磁気記録装置。
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