JP2003262930A - ハロゲン化銀乳剤の製造方法およびハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents

ハロゲン化銀乳剤の製造方法およびハロゲン化銀写真感光材料

Info

Publication number
JP2003262930A
JP2003262930A JP2002062984A JP2002062984A JP2003262930A JP 2003262930 A JP2003262930 A JP 2003262930A JP 2002062984 A JP2002062984 A JP 2002062984A JP 2002062984 A JP2002062984 A JP 2002062984A JP 2003262930 A JP2003262930 A JP 2003262930A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
silver halide
group
dispersion medium
gelatin
silver
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002062984A
Other languages
English (en)
Inventor
Naohiro Takeda
直弘 竹田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Photo Film Co Ltd filed Critical Fuji Photo Film Co Ltd
Priority to JP2002062984A priority Critical patent/JP2003262930A/ja
Publication of JP2003262930A publication Critical patent/JP2003262930A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】 高感度であるとともに、放射線吸収によるカ
ブリを低減し得るハロゲン化銀写真感光材料を提供す
る。 【解決手段】 支持体上に少なくとも1層の感光性ハロ
ゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料にお
いて、前記感光性ハロゲン化銀乳剤が所定の平板状ハロ
ゲン化銀粒子を含有するとともに、前記感光性ハロゲン
化銀乳剤が、a)分散媒の溶液中で双晶粒子核を含むハ
ロゲン化銀粒子核を形成する核形成工程と、b)分散媒
の溶液中で前記双晶粒子核を熟成して平板状粒子核を優
先的に残存させる物理熟成工程と、c)分散媒の溶液中
で前記平板状粒子核を成長させる成長工程とを含み、且
つ前記b)物理熟成工程およびc)成長工程にそれぞれ
用いられる分散媒の少なくとも一つが、コラーゲン様ト
リプルヘリックス構造を有するポリペプチトを含有する
製造方法により製造されてなることを特徴とするハロゲ
ン化銀写真感光材料である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はハロゲン化銀写真感
光材料、ならびにそれに用いられるハロゲン化銀乳剤お
よびその製造方法の技術分野に属する。特に、ハロゲン
化銀乳剤の製造工程において、全工程あるいは一部の工
程において、分散媒としてコラーゲン様トリプルヘリッ
クス構造を有するペプチドを用いた、感度が高く且つカ
ブリが低いハロゲン化銀写真感光材料ならびにそれに用
いられるハロゲン化銀乳剤およびその製造方法の技術分
野に属する。
【0002】
【従来の技術】平板状ハロゲン化銀粒子(以下「平板粒
子」という)は、その写真特性として、以下の1)〜
5)の利点を有する。 1. 体積に対する表面積の比率(以下「比表面積」と
いう)が大きく、多量の増感色素を表面に吸着させるこ
とができるため、固有感度に対して、色増感感度が相対
的に高い。 2. 平板粒子を含む乳剤を塗布し、乾燥した場合、そ
の粒子が支持体表面に平行に配列するため塗布層の厚み
を薄くでき、その写真感光材料のシャープネスが良い。 3. レントゲン写真システムでは、平板粒子に増感色
素を加えると、ハロゲン化銀クロスオーバー光を顕著に
減少させることができ、画質の劣化を防止できる。 4. 光散乱が少なく、解像力の高い画像が得られる。 5. ブルー光に対する感度が低いため、緑感光層また
は、赤感光層に用いた場合に乳剤中からイエローフィル
ターを除去できる。 このように多くの利点を有するため、従来、高感度の市
販感光材料にしばしば用いられている。
【0003】特公平6−44132号公報および同5−
16015号公報には、アスペクト比8以上の平板粒子
乳剤が開示されている。ここでいうアスペクト比とは、
平板粒子の厚みに対する直径の比率で示される。さらに
粒子の直径とは、乳剤を顕微鏡または電子顕微鏡で観察
した時、粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径
を示すものとする。また、厚みは平板状ハロゲン化銀を
構成する二つの平行な面の距離で示される。特公平4−
36374号公報には、緑感乳剤層、赤感乳剤層の少な
くとも一層に、厚み0.3μm未満、直径0.6μm以
上である平板粒子用いることにより、鮮鋭度と感度およ
び粒状性を向上させたカラー写真感光材料が記載されて
いる。しかしながら、近年、ハロゲン化銀感光材料の高
感度化および小フォーマット化が進み、より高感度で画
質の改良されたカラー感光材料が強く望まれている。そ
のため、より高感度で、より粒状性の優れたハロゲン化
銀粒子乳剤が要求されており、従来の平板状ハロゲン化
銀乳剤では、これらの要求に応えるには、不十分であ
り、より一層の性能向上が望まれていた。
【0004】アスペクト比の高い大きい平板粒子を用い
れば、平板粒子の比表面積が大きくなるので、上記の平
板粒子の利点を有効に活用することができる。即ち、よ
り大きい表面積に、より多くの増感色素を吸着させるこ
とができ、その結果、1粒子当たりの光の吸収量が増加
し、高感度を得ることが可能になる。そのために、従
来、より薄い平板粒子を調製する方法が種々研究されて
きた。特公平5−12696号公報には、ゼラチン中の
メチオニン基を過酸化水素等で酸化して無効化したゼラ
チンを分散媒として用いることにより厚みの薄い平板粒
子を調製する方法が開示されている。特開平8−828
83号公報には、アミノ基およびメチオニン基を無効化
したゼラチンを分散媒として用いることにより薄い平板
粒子を調製する方法が開示されている。また、特開平1
0−148897号公報、同10−293372号公報
および同11−143002号公報には、ゼラチン中の
アミノ基を化学修飾することにより、少なくとも2個以
上のカルボキシル基を導入したゼラチンを分散媒として
用いることによって、より厚みの薄い平板粒子を調製す
る方法が開示されている。
【0005】厚みの薄い平板粒子を調製する際に、上記
の化学修飾を施したゼラチン以外の天然高分子を分散媒
として利用する方法として、特開平9−106031号
公報および同9−106032号公報にカチオン化を施
したデンプンを用いることが、特開平9−120110
号公報には酸化処理とカチオン化を同時に施したデンプ
ンを用いることが開示されている。また、特開平7−2
53627号公報および同8−292505号公報に
は、水溶性合成高分子を分散媒として用いることにより
厚みの薄い平板粒子を調製する方法が開示されている。
従来の技術は、厚みの薄い平板粒子を調製する方法を検
討するに際して、分散媒として用いる新規な素材(主に
高分子化合物)の開発に主に着目したものであり、分散
媒の使用条件を最適化すること、または分散媒自体の規
則的な構造化によって、平板状ハロゲン化銀粒子の更な
る薄板化を追求する検討はほとんどなされていなかっ
た。
【0006】自然界に存在する放射線によってハロゲン
化銀乳剤は徐々に感光し、長い時間が経過すると、画像
記録のための露光以前に既に前記放射線によりカブリが
生じ、これが露光後に得られる画像を著しく悪化させる
ことは、当業界ではよく知られた事実である。ハロゲン
化銀乳剤においては、露光によってハロゲン化銀粒子に
潜像を形成せしめて画像として記録するが、高感度を達
成するには、ハロゲン化銀粒子のサイズを大きくして露
光の際の光吸収量を高める必要がある。一方、自然界に
存在する放射線の吸収は、ハロゲン化銀粒子の体積に比
例することはよく知られており、結局、ハロゲン化銀乳
剤の高感化と放射線カブリの増加は同時に起きてしまう
ことになり、これまで、この問題を解決するために多く
の努力がなされてきた。この難問を解決する有力な方法
として、ハロゲン化銀粒子の厚みが非常に薄く、且つ表
面積が非常に大きい粒子を実現することが有力である。
画像記録の際、ハロゲン化銀粒子に吸収される光の量
は、ハロゲン化銀粒子の表面に吸着した増感色素量に比
例するので、即ち、ハロゲン化銀粒子の表面積を大きく
すれば増感色素の吸着量が増加し、その結果、吸収され
る光の量も増加することになる。一方、放射線の吸収量
は、前述のようにハロゲン化銀粒子の体積に比例する。
厚みが非常に薄い平板状ハロゲン化銀粒子は、その粒子
体積に対する表面積の比が高くなっているので、露光の
際の光吸収量を高く維持しつつ、放射線の吸収を軽減し
得る。即ち、表面積が大きく且つ厚みが薄く平板状ハロ
ゲン化銀粒子は、高感度化と放射線吸収によるカブリの
低下とを同時に達成するのに有用である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高感度であ
るとともに、放射線吸収によるカブリを低減し得るハロ
ゲン化銀写真感光材料、ならびにその安定的な製造を可
能とするハロゲン化銀乳剤の製造方法を提供することを
課題とする。
【0008】
【課題を解決する為の手段】本発明者は鋭意検討を重ね
た結果、ハロゲン化銀乳剤の製造工程において、コラー
ゲン様トリプルへリックス構造を有するポリペプチドを
含有する分散媒を用いることによって、上記課題を解決
し得ることを見出し、本発明を完成するに到った。即
ち、上記課題を解決するための手段は以下の通りであ
る。 (1) 支持体上に少なくとも1層の感光性ハロゲン化
銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、
前記感光性ハロゲン化銀乳剤が少なくともハロゲン化銀
粒子と分散媒とを含み、前記ハロゲン化銀粒子は、その
全投影面積の50%以上が、円相当径が0.6μm以
上、粒子厚みが0.2μm未満で、且つ(111)面を
主表面とする平板状ハロゲン化銀粒子であるとともに、
前記感光性ハロゲン化銀乳剤が、 a)分散媒の溶液中で双晶粒子核を含むハロゲン化銀粒
子核を形成する核形成工程と、 b)分散媒の溶液中で前記双晶粒子核を熟成して平板状
粒子核を優先的に残存させる物理熟成工程と、 c)分散媒の溶液中で前記平板状粒子核を成長させる成
長工程と、を含み、且つ前記b)物理熟成工程および
c)成長工程にそれぞれ用いられる分散媒の少なくとも
一つが、コラーゲン様トリプルヘリックス構造を有する
ポリペプチト゛を含有する製造方法により製造されてなる
ことを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。なお、前
記a)核形成工程、b)物理熟成工程およびc)成長工
程にそれぞれ用いられる分散媒は同一であっても異なっ
ていてもよく、さらに、前記a)、b)およびc)工程
に用いられる分散媒溶液は共通であってもよいし、前記
a)工程、b)工程およびc)工程に移行する際に、同
種または異種の分散媒を新たに添加することもできる。 (2) 前記a)核形成工程、b)物理熟成工程および
c)成長工程を行う反応容器の外に混合容器を設け、前
記a)核形成工程および/またはc)成長工程におい
て、水溶性銀塩の水溶液と前記コラーゲン様トリプルヘ
リックス構造を有するポリペプチドを含む水溶性ハライ
ド塩の水溶液とをそれぞれ別々に前記混合容器に供給し
て、または水溶性銀塩、水溶性ハライドおよび前記コラ
ーゲン様トリプルヘリックス構造を有するポリペプチド
を各々含む水溶液をそれぞれ別々に前記混合容器に供給
して、混合することによりハロゲン化銀の微粒子を形成
し、前記微粒子を前記反応容器に供給して前記反応容器
中で前記ハロゲン化銀乳剤を製造することを特徴とする
(1)に記載のハロゲン化銀写真感光材料。 (3) さらに前記a)核形成工程に用いる分散媒が、
コラーゲン様トリプルヘリックス構造を有するポリペプ
チドを含有することを特徴とする(1)または(2)に
記載のハロゲン化銀写真感光材料。 (4) 前記b)物理熟成工程および/またはc)成長
工程に用いられる前記分散媒の溶液が、少なくとも1種
の(111)晶相制御剤を含有することを特徴とする
(1)〜(3)のいずれかに記載のハロゲン化銀写真感
光材料。 (5) 前記(111)晶相制御剤が、下記一般式
(I)、(II)または(III)で表わされる化合物であ
ることを特徴とする(4)に記載のロゲン化銀写真感光
材料。
【0009】
【化4】
【0010】一般式(I)中、R1はアルキル基、アル
ケニル基またはアラルキル基を表し、R2、R3、R4
5およびR6はそれぞれ水素原子または置換基を表し、
2とR3、R3とR4、R4とR5、R5とR6は縮環しても
よいが、R2、R3、R4、R5およびR6の少なくとも一
つはアリール基を表す。X-は対アニオンを表す。
【0011】
【化5】
【0012】
【化6】
【0013】一般式(II)および(III)中、A1
2、A3およびA4はそれぞれ含窒素ヘテロ環を完成さ
せるための非金属原子群を表し、Bは2価の連結基を表
し、mは0または1を表し、R1およびR2はそれぞれア
ルキル基を表し、X-はアニオンを表し、nは0、1ま
たは2を表し、分子内塩のときはnは0または1であ
る。
【0014】(6) ハロゲン化銀粒子と分散媒とを含
むハロゲン化銀乳剤の製造方法であって、 a)分散媒の溶液中で双晶粒子核を含むハロゲン化銀粒
子核を形成する核形成工程と、 b)分散媒の溶液中で前記双晶粒子核を熟成して平板状
粒子核を優先的に残存させる物理熟成工程と、 c)分散媒の溶液中で前記平板状粒子核を成長させる成
長工程と、を含み、且つ前記b)物理熟成工程および
c)成長工程にそれぞれ用いられる分散媒の少なくとも
一つが、コラーゲン様トリプルヘリックス構造を有する
ポリペプチト゛を含有することを特徴とするハロゲン化銀
乳剤の製造方法。なお、前記a)核形成工程、b)物理
熟成工程およびc)成長工程にそれぞれ用いられる分散
媒は同一であっても異なっていてもよく、さらに、前記
a)、b)およびc)工程に用いられる分散媒溶液は共
通であってもよいし、前記a)工程、b)工程および
c)工程に移行する際に、同種または異種の分散媒を新
たに添加することもできる。 (7) 前記a)核形成工程、b)物理熟成工程および
c)成長工程を行う反応容器の外に混合容器を設け、前
記a)核形成工程および/またはc)成長工程におい
て、水溶性銀塩の水溶液と前記コラーゲン様トリプルヘ
リックス構造を有するポリペプチドを含む水溶性ハライ
ド塩の水溶液とをそれぞれ別々に前記混合容器に供給し
て、または水溶性銀塩、水溶性ハライドおよび前記コラ
ーゲン様トリプルヘリックス構造を有するポリペプチド
を各々含む水溶液をそれぞれ別々に前記混合容器に供給
して、混合することによりハロゲン化銀の微粒子を形成
し、前記微粒子を前記反応容器に供給して前記反応容器
中で前記ハロゲン化銀乳剤を製造することを特徴とする
(6)に記載のハロゲン化銀乳剤の製造方法。 (8) さらに前記a)核形成工程に用いる分散媒がコ
ラーゲン様トリプルヘリックス構造を有するポリペプチ
ドを含有することを特徴とする(6)または(7)に記
載のハロゲン化銀乳剤の製造方法。 (9) 前記b)物理熟成工程および/または前記c)
成長工程に用いられる前記分散媒の溶液が、(111)
晶相制御剤の少なくとも1種を含有することを特徴とす
る(6)〜(8)のいずれかに記載のハロゲン化銀乳剤
の製造方法。 (10) 前記(111)晶相制御剤が、前記一般式
(I)、(II)または(III)で表わされる化合物であ
ることを特徴とする(9)に記載のロゲン化銀乳剤の製
造方法。 (11) (6)〜(10)のいずれかに記載の製造方
法により製造されたハロゲン化銀乳剤。 (12) 支持体上に少なくとも1層の感光性ハロゲン
化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料におい
て、前記感光性ハロゲン化銀乳剤が少なくともハロゲン
化銀粒子と分散媒とを含み、前記ハロゲン化銀粒子は、
その全投影面積の50%以上が、円相当径が0.6μm
以上、粒子厚みが0.2μm未満で、且つ(111)面
を主表面とする平板状ハロゲン化銀粒子であると共に、
前記感光性ハロゲン化銀乳剤が(6)〜(11)のいず
れかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とす
るハロゲン化銀写真感光材料。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。なお、本明細書において、「〜」はその前後に記
載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む
範囲を示す。
【0016】本発明では、コラーゲン様トリプルへリッ
クス構造を有するポリペプチドを含有する分散媒をハロ
ゲン化銀乳剤の製造に用いる。前記ポリペプチドは、ハ
ロゲン化銀乳剤の製造工程の所定の段階で、分散媒中に
おいてコラーゲン様トリプルへリックス構造を有してい
ればよく、常時、前記構造にあることが要求されるもの
ではない。ここで、T. H. Jamse編 The Theory of the
PhotographIc Process第4版(MacmIllan刊、1977年)
に記載されているように、濃度1%以上の濃厚なゼラチ
ン水溶液(ゾル状態)は、温度を下げることにより、可
逆的な架橋を引き起こしゲル状態に転移する。この理由
は、一般的には、互いに浸透した分子の領域が十分な数
の有効な網目を生じ、分子間会合によって、ゼラチンの
原材料であるコラーゲン様のトリプルヘリックス構造が
形成されたことによるものとされている。また、希薄な
ゼラチン溶液中でも、ゲル化を伴なわないものの、温度
を下げることにより、旋光度測定から、部分的にはゲル
化した濃厚なゼラチン水溶液中と同様なコラーゲン様ト
リプルヘリックス構造を形成することが知られている。
【0017】一方、遠紫外部(190nm〜250n
m)の円二色性スペクトル(以下、「CDスペクトル」
という)は、水溶液中におけるタンパク質の主鎖(ポリ
ペプチド鎖)の構造(二次構造)を評価するのによく用
いられる。CDスペクトルは、測定が容易で、かつ短時
間に測定が行え、タンパク質の主鎖のαヘリックス構造
やβ構造、および不規則(ランダム)構造は、各構造に
特徴のある固有のCDスペクトルを遠紫外部に示す。ま
た、これらの構造に固有なCDスペクトルには加算性が
あり、二次構造が未知のタンパク質のCDスペクトルか
ら、前記に示した各構造の含量を推定することができ、
その後、X線結晶構造解析等から得られた二次構造含量
とも比較的よく一致している。したがって、タンパク質
のCDスペクトル(実際には、直線偏光した入射光が、
光学活性な物質を透過する際、直線偏光を成す左・右円
偏光の吸収係数に差が生じ、透過光は楕円偏光になる。
CDの大きさは、前記楕円の短軸・長軸の比で定義され
る角度θ(楕円率)で表す。CDスペクトルは各波長に
対する前記楕円率[θ]で表したものである)は、タン
パク質の種類に依存することなく、その主鎖の構造に対
して、定性的にだけでなく定量性をも有することが、増
澤益男、山田秀徳 編 バイオ機器分析入門(講談社刊、
2000年)に記載されている。
【0018】ゼラチンもタンパク質の一種で、その主鎖
はポリペプチド鎖であり、水溶液中において、環境要因
の変化(例えば、温度変化、濃度変化、溶媒組成の変
化)によって、その主鎖の構造に変化が誘起された場
合、前記のCDスペクトルにも変化が現れるはずであ
る。R. W. Woody, Method In Enzymology, 246, 34 (19
95)には、ポリペプチド鎖(タンパク質の主鎖)がコラ
ーゲン様トリプルヘリックス構造を形成した場合、その
CDスペクトルには220nm付近に正のピークが現れ
ることが記載されており、希薄水溶液中でゼラチンが有
するコラーゲン様トリプルヘリックス構造の相対な含有
量が調べられる。
【0019】分散媒中に含有させるコラーゲン様トリプ
ルへリックス構造となり得るポリペプチドとしては、ゼ
ラチンが好ましい。ゼラチンの主要な供給源としては、
特に限定されるものでなく、豚、牛類の皮と骨等が挙げ
られるが、より好ましくは、牛骨から生産されるゼラチ
ンである。その処理方法としては酸処理、アルカリ(石
灰)処理、などが挙げられ、これらのいずれも用いるこ
とができるが、好ましくはアルカリ(石灰)処理ゼラチ
ンであり、不純物イオンやその他不純物を除去するため
に脱イオン処理や限外ろ過処理を施したアルカリ処理ゼ
ラチンが好ましく、前記不純物を除去したアルカリ処理
ゼラチンのメチオニン基が過酸化水素等により酸化して
無効化したゼラチン(酸化処理ゼラチン)がさらに好ま
しい。分子量に関しては、1000以上であれば特に制
限はない。
【0020】なお、上記した様に、本発明に用いるコラ
ーゲン様トリプルへリックス構造を有するポリペプチド
は、常時、コラーゲン様トリプルへリックス構造を有す
るものに限定されるものではなく、ハロゲン化銀乳剤を
調製する所定の段階で、前記構造を有すればよい。例え
ば、ゼラチンを分散媒として用いる場合、上記した様に
ゼラチンは、低温にすると水溶液中でコラーゲン様トリ
プルへリックス構造となるので、ハロゲン化銀乳剤の調
製において、ゼラチン水溶液を用い、該ゼラチン水溶液
の温度を所定の段階で低下させ、水溶液中でゼラチンを
コラーゲン様トリプルへリックス構造に変化させてもよ
い。
【0021】本発明のハロゲン化銀乳剤の製造方法は、
下記a)〜c)の工程を含む。 a)分散媒溶液中で双晶粒子核を含むハロゲン化銀粒子
核を形成する工程(核形成工程)、 b)前記双晶粒子核を分散媒溶液中で熟成して平板状粒
子核を優先的に残存させる工程(物理熟成工程)、 c)前記平板状粒子核を分散媒溶液中で成長させる工程
(成長工程)。 本発明では、前記b)物理熟成工程およびc)成長工程
の少なくとも一つの工程においてそれぞれ用いられる分
散媒が、コラーゲン様トリプルヘリックス構造を有する
ポリペプチト゛を含有する。本発明の好ましい態様は、さ
らに前記a)核形成工程において用いられる分散媒が、
コラーゲン様トリプルヘリックス構造を有するポリペプ
チト゛を含有する製造方法である。
【0022】本発明において、前記ポリペプチドは、酸
化処理ゼラチンであるのが好ましく、前記分散媒の溶液
はゼラチンの水溶液が好ましい。前記ポリペプチドとし
て酸化処理ゼラチンを用いる場合、水溶液中の前記酸化
処理ゼラチンの濃度は、1質量%未満であるのが好まし
く、0.5質量%未満であるのがより好ましく、0.2
質量%未満であるのがさらに好ましい。特に前記核形成
工程において、酸化処理ゼラチンの水溶液を用いる場合
は、水溶液中の酸化処理ゼラチンの濃度は、0.1質量
%未満が好ましく、平均分子量は1000〜40000
が好ましい。
【0023】本発明において、使用されるハロゲン化銀
粒子は、その全投影面積の50%以上が、円相当径が
0.6μm以上、粒子厚みが0.2μm未満で、且つ
(111)面を平行な主表面とする平板状ハロゲン化粒
子であるのが好ましい。本発明における平板状ハロゲン
化銀粒子とは、2つの対向する平行な主表面を有し該主
表面の円相当径(前記主表面と同じ投影面積を有する円
の直径)が主表面の距離(即ち粒子の厚み)より2倍以
上大きな粒子をいう。
【0024】本発明において、前記平板粒子の円相当径
/粒子厚み(アスペクト比)は3〜200であるのが好
ましく、10〜200であることがより好ましい。平均
アスペクト比は、ハロゲン化銀乳剤に含まれる全平板粒
子個々のアスペクト比の平均として得られるが、簡便な
方法としては、全平板粒子の平均円相当径と、全平板粒
子の平均厚みとの比として求めることもできる。
【0025】本発明において、前記平板粒子の円相当径
は、0.6〜20μmであるのが好ましく、1.0〜2
0μmであるのがより好ましく、1.0〜10μmであ
るのがさらに好ましい。前記平板粒子の粒子厚みは、
0.01〜0.2μm未満であるのが好ましく、0.0
2〜0.1μm未満であるのがより好ましく、0.02
〜0.05μm未満であるのがさらに好ましい。本発明
における平板粒子の円相当径および粒子厚みの測定につ
いては、米国特許第4434226号明細書に記載の方
法の如く、粒子の電子顕微鏡写真より求めることができ
る。より詳細には、粒子の厚みの測定は、参照用のラテ
ックスとともに粒子の斜め方向から金属を蒸着し、その
シャドーの長さを電子顕微鏡写真上で測定し、ラテック
スのシャドーの長さを参照にして計算することにより容
易に知ることができる。
【0026】本発明において、「平板状ハロゲン化銀粒
子」とは、1枚の双晶面か2枚以上の平行な双晶面を有
するハロゲン化銀粒子の総称として用いる。双晶面とは
(111)面の両側ですべての格子点のイオンが鏡像関
係にある場合にこの(111)面のことをいう。この平
板粒子は上から見た時に三角形状、6角形状もしくはこ
れらが丸みを帯びた形状をしており、三角形状のものは
三角形の、6角形状のものは6角形の、丸みをおびた平
板粒子はそれぞれの角が丸くなった形の互いに平行な外
表面を有している。
【0027】本発明において、前記平板粒子のハロゲン
組成としては特に制限はないが、ヨウ臭化銀、塩ヨウ臭
化銀、ヨウ塩化銀、ヨウ臭塩化銀、塩臭化銀であること
が好ましい。本発明の平板粒子のハロゲン組成に関する
構造については、X線回折、EPMA(XMAという名
称もある)法(電子線でハロゲン化銀粒子を走査して、
ハロゲン化銀組成を検出する方法)、ESCA(X線を
照射して粒子表面から出てくる光電子を分光する方法)
などを組み合わせることにより確認することができる。
【0028】本発明のハロゲン化銀乳剤の製造方法に
は、一般的な方法を適用することができる。例えば、前
記ポリペプチド(例えばゼラチン)の水溶液に、効率良
い撹拌下で、銀塩水溶液およびハロゲン塩水溶液を添加
することによって製造することができる。具体的方法と
しては、P. GlafkIdes 著 ChImIe et PhysIque Phtogra
phIque (Paul Montel 社刊、1967年)、G. F. DufIn 著
PhotographIc EmulsIonChemIstry (The Forcal Press
刊、1966年)、V. L. ZelIkman et al 著 MakIngand Coa
tIng PhotographIc EmulsIon (The Forcal Press 刊、1
964年) 等に記載された方法を適用することができる。
即ち、酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれでもよ
く、また、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる
形式としては、片側混合法、同時混合法、それらの組み
合わせ等のいずれを用いてもよい。同時混合法の一つの
形式としてハロゲン化銀の生成される液相中のpAg
(またはpBr)を一定に保つ方法、即ち、いわゆるコ
ントロールド・ダブルジェット法を用いることもでき
る。また、硝酸銀やハロゲン化アルカリ水溶液の添加速
度を粒子成長速度に応じて変化させる方法(英国特許1
535016号明細書、特公昭48−36890号公報
および同52−16364号各公報に記載)や水溶液濃
度を変化させる方法(米国特許4242445号明細書
および特開昭55−158124号公報に記載)を用い
て臨界過飽和度を超えない範囲において早く成長させる
ことが好ましい。これらの方法は、再核発生を起こさ
ず、ハロゲン化銀粒子が均一に成長するため、好ましく
用いられる。
【0029】本発明の平板粒子の調製においては、分散
媒水溶液を保持する反応容器に、銀塩水溶液とハロゲン
化アルカリ水溶液を添加する一般的な方法も用いられる
が、代わりに予め調製されたハロゲン化銀微粒子を添加
して核形成工程および/または成長工程を行ってもよ
い。即ち、反応容器と混合容器とを別々に用意し、混合
容器中でハロゲン化銀の微粒子を形成させた後、直ち
に、該微粒子を反応容器に供給して、反応容器中で核成
形工程および/または成長工程を実施してもよい。混合
容器には、水溶性銀塩の水溶液とコラーゲン様トリプル
ヘリックス構造を有するポリペプチドを含有する分散媒
を含む水溶性ハライド塩の水溶液とをそれぞれ別々に供
給してもよいし、または水溶性銀塩、水溶性ハライド、
およびコラーゲン様トリプルヘリックス構造を有するポ
リペプチドを含有する分散媒を含む各水溶液をそれぞれ
別々に供給してもよい。この方法については、米国特許
第4879208号明細書、特開平1−183644号
公報、同2−44335号公報、同2−43535号公
報、同2−68538号公報にその技術が開示されてい
る。
【0030】また、平板粒子形成におけるヨウ素イオン
の供給法として、微粒子ヨウ化銀(粒子径が0.1μm
以下、好ましくは0.06μm以下)乳剤を添加しても
よく、この際、ヨウ化銀微粒子の供給法として米国特許
第4879208号明細書に開示されている製造法を用
いることが好ましい。これらの予め調製されたハロゲン
化銀微粒子を添加して平板粒子の調製を行う方法は、乳
剤粒子結晶内のハロゲンの分布を完全に均一にすること
ができ、好ましい写真特性を得ることができる。更に
は、特開平10−239787号公報、同11−767
83号公報に開示された攪拌槽を貫通する回転軸を持た
ない攪拌羽根を攪拌槽内で回転駆動して調製することに
より、より微細なハロゲン化銀粒子(粒子径が0.00
8〜0.05μm)を反応容器に添加することが可能で
ある。
【0031】さらに、本発明においては種々の構造を持
った平板状ハロゲン化銀粒子を用いることができる。粒
子内部(コア部)と外側(シェル部)からなる、いわゆ
るコア/シェル二重構造粒子、さらに三重構造粒子(特
開昭60−222844号公報に記載)や、それ以上の
多層構造粒子が用いられる。乳剤粒子の内部に構造を持
たせる場合、上述のような包み込む構造だけでなく、い
わゆる接合構造を有する粒子を作ることもできる。これ
らの例は、特開昭58−108526号公報、同59−
16254号公報、同59−133540号公報、特公
昭58−24772号公報および欧州特許199290
A2号明細書に記載されている。接合する結晶は、ホス
トとなる結晶と異なる組成をもってホスト結晶のエッジ
やコーナー部、あるいは面部に接合して成長させること
ができる。この様な接合結晶は、ホスト結晶がハロゲン
組成に関して均一であっても、あるいはコア−シェル型
の構造を有するものであっても形成させることができ
る。接合構造の場合には、ハロゲン化銀同士の組み合わ
せは当然可能であるが、ロダン銀、炭酸銀などの岩塩構
造でない銀塩化合物をハロゲン化銀と組み合わせて接合
粒子をとることが可能あれば用いてもよい。
【0032】これらの構造を有する平板状ヨウ臭化銀粒
子の場合、例えば、コア−シェル型の粒子において、コ
ア部のヨウ化銀含有量が高く、シェル部のヨウ化銀含有
率が低くても、また、逆にコア部のヨウ化銀含有率が低
く、シェル部のヨウ化銀含有率が高い粒子でもよい。同
様に接合構造を有する粒子についてもホスト結晶のヨウ
化銀含有率が高く、接合結晶のヨウ化銀含有率が相対的
に低い粒子であっても、その逆の粒子であってもよい。
また、これらの構造を有する粒子の、ハロゲン組成の異
なる境界部分は明確な境界であっても、組成差により混
晶を形成して不明確な境界であってもよく、また積極的
に連続的な構造変化を付けたものでもよい。本発明に用
いる平板状ハロゲン化銀粒子は、粒子に丸みをもたらす
処理(欧州特許96727B1号明細書および同644
12B1号明細書に記載)、あるいは表面の改質処理
(独国特許2306447C2号明細書および特開昭6
0−221320号公報に記載)を行ってもよい。ハロ
ゲン化銀乳剤は表面潜像型が好ましい。ただし、特開昭
59−133542号公報に開示されている様に、現像
液あるいは現像の条件を選ぶことにより内部潜像型の乳
剤も用いることができる。また、うすいシェルをかぶせ
る浅内部潜像型乳剤も目的に応じて用いることができ
る。
【0033】この様にして調製された平板粒子をホスト
粒子とし、エピタキシャル粒子を形成して用いてもよ
い。これについては、例えば、J. E. Maskasky, J. Ima
g. ScI., 32, 166 (1988) 、特開昭64−26837号
公報、同64−26838号公報、同64−26840
号公報、特開平1−179140号公報、米国特許48
65962号明細書、同4968595号明細書の記載
を参考にすることができる。
【0034】また、この様に調製された平板粒子は、転
位線を粒子内に有してもよい。平板状ハロゲン化銀粒子
中に転位をコントロールして意図的に導入する技術に関
しては、特公平6−70708号公報、特開平1−20
149号公報、同1−201649号公報、同3−17
5440号公報、同4−178643号公報、同4−2
51241号公報、同6−27564号公報、同8−2
20664号公報、同10−307355号公報、特願
2000−297152号明細書等に記載がある。転位
を導入した平板粒子は、転位のない平板粒子と比較して
感度、相反則などの写真特性に優れ、これを感光材料に
用いると鮮鋭性、粒状性、圧力性に優れる。
【0035】ハロゲン化銀粒子中の転位線は、例えば、
J. F. HamIlton, Photo. ScI. Eng., 11, 57 (1967)
や、T. ShInozawa, J. Soc. Photo ScI. JAPAN, 35, 21
3 (1972) に記載されている低温での透過型電子顕微鏡
を用いた直接法により観察することができる。即ち、乳
剤から転位が発生するほどの圧力をかけないように注意
して取り出したハロゲン化銀粒子を電子顕微鏡観察用の
メッシュにのせ、電子線による損傷(プリントアウト)
を防ぐように試料を冷却した状態で透過法により観察を
行う。この時、粒子の厚みが厚いほど電子線が透過しに
くくなるので、高圧型(0.25μmの厚さに対し20
0keV以上)の電子顕微鏡を用いた方がより鮮明に観
察することができる。この様な方法により得られた粒子
の写真により、主平面に対し垂直な面から見た場合の各
粒子についての転位線の位置および数を求めることがで
きる。本発明では、平板状ハロゲン化銀粒子のうち、5
0%以上の個数の粒子が1粒子当たり1本以上の転位線
を含むことが好ましい。
【0036】本発明において、前記平板状ハロゲン化銀
粒子は、少なくとも1種の(111)晶相制御剤の存在
下で該主表面を(111)面に制御されているのが好ま
しい。ここで、本明細書において、「(111)晶相制
御剤」とは、ハロゲン化銀結晶の(111)面に選択的
に吸着する性質を有する化合物をいう。この様な性質の
化合物を(111)面が主表面型の平板粒子の形成時に
存在させると、該化合物が平板粒子の主表面のみに選択
的に吸着して平板粒子の厚み方向の成長を抑制し、その
結果、より厚みの薄い平板粒子を得ることができる。前
記(111)晶相制御剤としては、下記一般式(I)、
(II)または(III)で表わされる化合物が好ましい。
【0037】
【化7】
【0038】前記一般式(I)において、R1は炭素数1
〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基(例えば、
メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、
n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、
シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロへキシル
基)、炭素数2〜20のアルケニル基(例えば、アリル
基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基)、炭素数7〜
20のアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェチネル
基)が好ましい。R1で表わされる各基は置換されても
よい。置換基としては、以下のR2〜R6で表わされる置
換基が挙げられる。
【0039】R2、R3、R4、R5およびR6は、それぞ
れ同じであっても、異なっていてもよく、水素原子また
は置換基を表すが、少なくとも一つはアリール基を表
す。前記置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、
アルケ二ル基、アラキニル基、アラルキル基、アリール
基、ヘテロ環基(例えば、ピリジル基、フリル基、イミ
ダゾリル基、ピペリジル基、モルホリノ基等)、アルコ
キシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アシルアミノ
基、ウレイド基、ウレタン基、スルホニルアミノ基、ス
ルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、スル
フィニル基、アルキルオキシカルボニル基、アシル基、
アシルオキシ基、リン酸アミド基、アルキルチオ基、ア
リールチオ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、ヒ
ドロキシ基、ホスホノ基、ニトロ基、スルフィノ基、ア
ンモニオ基(例えば、トリメチルアンモニオ基等)、ホ
スホニオ基、ヒドラジノ基等が挙げられる。これらの基
は、さらに置換されていてもよい。また、R2とR3、R
3とR4、R4とR5、R5とR6は縮環してキノリン環、イ
ソキノリン環、アクリジン環を形成してもよい。
【0040】前記一般式(I)において、X-は対アニ
オンを表す。対アニオンとして、例えば、ハロゲンイオ
ン(クロルイオン、臭素イオン)、硝酸イオン、硫酸イ
オン、p−トルエンスルホン酸イオン、トリフロロメタ
ンスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0041】前記一般式(I)で表される化合物の好ま
しい形態は、R1がアラルキル基を表し、R4がアリール
基を表し、且つX-ハロゲンイオンを表わされる化合物
である。これらの化合物例としては、特開平8−227
117号公報に記載されている晶壁制御剤1〜29が挙
げられるが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
【0042】次に本発明で用いる一般式(II)および
(III)の化合物について説明する。
【0043】
【化8】
【0044】
【化9】
【0045】前記一般式(II)および(III)中、A1
2、A3およびA4は含窒素ヘテロ環を完成させるため
の非金属原子群を表し、それぞれが同一でも異なってい
てもよい。前記窒素へテロ環は窒素原子以外の他のヘテ
ロ原子を含んでいてもよく、例えば、酸素原子、硫黄原
子を含んでいてもよく、ベンゼン環が縮環していてもよ
い。A1、A2、A3およびA4でそれぞれ構成されるヘテ
ロ環は置換基を有していてもよい。該置換基としては、
アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル
基、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル
基、アリールオキシカルボニル基、スルホ基、カルボキ
シ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ
基、アミド基、スルファモイル基、カルバモイル基、ウ
レイド基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、ニトロ
基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基を
表す。A1、A2、A3およびA4はそれぞれ5〜6員環
(例えば、ピリジン環、イミダゾール環、チオゾール
環、オキサゾール環、ピラジン環、ピリミジン環など)
の含窒素へテロ環を完成するための非金属原子群を表す
のが好ましく、ピリジン環を完成するための非金属原子
群を表すのがより好ましい。
【0046】前記一般式(II)および(III)中、Bは
2価の連結基を表す。2価の連結基とは、アルキレン
基、アリーレン基、アルケニレン基、−SO2−、−S
O−、−O−、−S−、−CO−、−N(R3)−(R3
はアルキル基、アリール基または水素原子を表す)を単
独または組合せて構成される基が挙げられる。Bとして
はアルキレン基またはアルケニレン基が好ましい。mは
0または1を表す。
【0047】前記一般式(II)および(III)中、R1
よびR2はそれぞれ独立してアルキル基を表し、炭素数
1〜20のアルキル基を表すのが好ましい。R1および
2は同一でも異なっていてもよい。アルキル基とは、
置換アルキル基および無置換アルキル基の双方を意味す
る。アルキル基の置換基としては、A1、A2、A3およ
びA4の置換基としてあげた置換基と同様である。R1
よびR2はそれぞれ独立して、炭素数4〜10のアルキ
ル基を表すのがより好ましく、置換もしくは無置換のア
リール置換アルキル基を表すのがさらに好ましい。
【0048】前記一般式(II)および(III)中、X-
アニオンを表す。例えば、塩素イオン、臭素イオン、ヨ
ウ素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、p−トルエンス
ルホナート、オギザラートが挙げられる。nは0または
1または2を表す。前記一般式(II)および(III)で
表される化合物は分子内塩であってもよく、その場合は
nは0または1である。
【0049】前記一般式(II)または(III)で表され
る化合物の具体例としては、特開平2−32号公報に開
示されている化合物1〜42が挙げられるが、本発明は
これらの化合物に限定されるものではない。
【0050】前記一般式(I)、(II)または(III)
で表わされる(111)晶相制御剤を用いた厚みの薄い
臭化銀含有率が高い平板粒子の製造法については、特開
平10−104769号公報および特開2000−14
7500号公報に開示されている。本発明においては、
前記(111)晶相制御剤は、核形成時に存在させても
させなくてもよいが、存在させない方が好ましく、熟成
および/または成長時には存在させるのが好ましい。よ
り具体的には、前記(111)晶相制御剤は、核形成終
了後に分散媒溶液中に添加するか、あるいは引き続き行
われる熟成時に分散媒溶液中に添加するのが好ましい。
さらに、平板粒子成長時にも前記(111)晶相制御剤
を存在させ、必要によって成長開始前、あるいは成長中
に前記(111)晶相制御剤を添加することが好まし
い。より好ましくは、前記(111)晶相制御剤を平板粒
子成長時に連続的に添加することである。
【0051】本発明において、前記一般式(I)、(I
I)または(III)で表わされる化合物は、ハロゲン化銀
1mol当たり10-5〜10-1mol添加するのが好ま
しく、10-4〜10-1mol添加するのが特に好まし
い。
【0052】本発明に有用な(111)面選択性晶相制
御効果は下記のテスト法で簡単に見出すことができる。
即ち通常のアルカリ処理骨ゼラチンを分散媒に用い、7
5℃で硝酸銀と臭化カリウムを銀電極と参照電極に飽和
カロメル電極を用いて、+90mVでコントロールダブ
ルジェット法で粒子形成すると、(100)面を持った
立方体臭化銀粒子が得られる。その際、粒子形成の途中
に(111)晶相制御剤を添加すると、立方体に(11
1)面が現れ始めて14面体となり(角部が丸くなる場
合もある)、さらに全ての面が(111)である八面体
に変化することで、この(111)晶相制御剤の効果を
明確に知ることができる。
【0053】本発明の感光性ハロゲン化銀乳剤の製造方
法においては、各工程において種類の異なる分散媒を追
加して用いることができる。核形成工程および/または
物理熟成工程以降に追加して用いる分散媒はゼラチンが
好ましい。前記分散媒に用いられるゼラチンは、アルカ
リ処理ゼラチンでも酸処理ゼラチンでもよいが、アルカ
リ処理ゼラチンが通常よく用いられる。特に不純物イオ
ンや不純物を除去した脱イオン処理や限外ろ過処理を施
したアルカリ処理ゼラチンを用いることがより好まし
い。アルカリ処理ゼラチンや酸処理ゼラチンの他、ゼラ
チンのアミノ基を化学修飾したゼラチン(例えば、フタ
ル化ゼラチン、琥珀化ゼラチン、トリメリット化ゼラチ
ン、フェニルカルバミル化ゼラチン)、ゼラチンのカル
ボキシル基を化学修飾したゼラチン(例えば、エステル
化ゼラチン)、低分子量ゼラチン(分子量1,000〜
60,000で、酵素で分解したゼラチン、酸および/
またはアルカリで加水分解したゼラチン、熱で分解した
ゼラチンが含まれる)、特開平11−237704号公
報および特開2001−281780号公報に記載のゼ
ラチン分子間を酵素や架橋剤を用いて架橋することによ
り高分子量化を行った高分子量ゼラチン、ゼラチン中の
メチオニン含量が50μモル/g以下のゼラチン、ゼラ
チン中のチロシン含量が20μモル/g以下のゼラチ
ン、ゼラチンのメチオニン基が過酸化水素等により酸化
して無効化したゼラチン(酸化処理ゼラチン)、ゼラチ
ンのメチオニンがアルキル化によって不活性化したゼラ
チン、または特願2001−078191号明細書に記
載されているメルカプト基を有する含窒素芳香族へテロ
環を含む修飾基を有するゼラチンを用いることができ
る。これら2種類以上のゼラチン混合物を用いてもよ
い。粒子成長工程で用いられるゼラチン量は、1〜50
0g/銀mmol、好ましくは10〜300g/銀mo
lである。粒子成長工程以降の工程、例えば化学増感工
程におけるゼラチンの濃度は、1〜200g/銀mol
であることが好ましく、1〜100g/銀モルであるこ
とがさらに好ましい。
【0054】本発明のハロゲン化銀乳剤の製造方法で
は、銀塩およびハロゲン塩の添加で生じた余分の塩やそ
の他の余分な添加化合物を取り除き、乳剤外へ除去する
工程を実施するのが好ましい。例えば、水洗により余分
な添加物を除去することができる。水洗する場合は、水
洗の前に粒子の沈降を促進するためにゼラチンを添加し
てもよい。水洗方法としては従来から知られている方
法、即ち、ヌーデル水洗法、沈降剤を加えて乳剤を
沈降させ水洗する方法、フタル化ゼラチンのような変
性ゼラチンを用いる方法、限外濾過法などを用いるこ
とができる(詳細は、G.F.DuffIn, "PhotographIc Emul
sIon ChemIstry", Focal Press. London, 1966年)。
【0055】前記成長工程を経て製造されたハロゲン化
銀乳剤は、さらに化学増感を施された後にハロゲン化銀
写真感光材料に用いるのが好ましい。
【0056】本発明のハロゲン化銀乳剤の調製におい
て、粒子成長時および/または化学増感時に、第8族貴
金属化合物、無機および有機化合物を配位子とする金属
錯体化合物(例えば、ヘキサシアノ鉄(II)錯体、ヘキサ
シアノルテニウム(II)錯体、6塩化イリジウム(IV)錯
体、ペンタクロロニトロシルオスニウム(II)錯体)、カ
ルゴゲン化合物、チオシアン化合物等のドープ剤を添加
してもよい。それぞれ単独もしくは組合わせて添加する
ことができる。金属錯体をハロゲン化銀粒子にドープす
ることにより高感度な乳剤を得た例は、特開平2−20
853号公報、同5−66511号公報、米国特許第5
132203号明細書、同5360712号明細書等に
開示されている。また、一つの粒子内に複数の金属錯体
をドープすることにより高い感度を有し、かつ良好な相
反則特性や好ましい階調を有する乳剤を得た例として、
例えば、特開平4−124643号公報、同8−314
043号公報、米国特許第5360712号明細書、同
5474888号明細書、同5480771号明細書、
同5500335号明細書、同5576172号明細
書、欧州特許0610670号明細書、同060689
3号明細書、同0606894号明細書、同06068
95号明細書に開示されている。
【0057】本発明において、より厚みの薄い平板粒子
を得るために(111)晶相制御剤を使用した場合、平
板粒子形成後は前記(111)晶相制御剤は本質的に不
要であるため、分光増感のために増感色素を吸着させる
以前に、または増感色素を吸着させるのと同時に、でき
る限り平板粒子の表面から(111)晶相制御剤を脱着
させ、さらには乳剤外へ除去させるのが好ましい。
【0058】用いる増感色素としては、J会合体を形成
して粒子に吸着するものが特に好ましい。増感色素添加
時の温度は一般的には40℃〜90℃であるが、好まし
くは50℃〜90℃、より好ましくは60℃〜90℃で
ある。増感色素のJ会合体形成は、吸着時の温度が高い
ほど促進し、増感色素の吸着を強化することが知られて
いる。一方、(111)晶相制御剤は温度が高いほど脱
着し易く、この両者の吸着の温度特性を利用して効率的
に増感色素との交換吸着を行うことが特開平10−62
883号公報に開示されている。また、(111)晶相
制御剤と増感色素との交換吸着時のpHは3〜7で、3
〜5がより好ましい。平板粒子の厚みが0.05μm未
満の高臭化銀平板粒子では、粒子表面に吸着している
(111)晶相制御剤を除去すると、高温および/また
は低pBr下で粒子変形することが懸念されるが、この
様な交換吸着法を利用すれば、前記(111)晶相制御
剤に代って、増感色素が粒子表面に強力に吸着するため
前記粒子変形を防止することができる。
【0059】増感色素の吸着が強化されることは、(1
11)晶相制御剤の脱着を促進するためには有用であ
る。亜硫酸塩やチオ硫酸塩、チオシアン酸塩、リン酸
塩、硫酸塩、硝酸塩などの無機塩を(111)晶相制御
剤と増感色素との交換吸着前に本発明の乳剤に添加する
ことが好ましい。
【0060】増感色素の添加時期は粒子形成後であれば
いつでもよいが、粒子形成後で化学増感前が好ましく、
特に粒子形成後水洗・脱塩前が好ましい。増感色素は一
度に全部を添加してもよいし、分割して添加してもよ
い。乳剤の水洗・脱塩前に交換吸着を行うことは、乳剤
中に存在する(111)晶相制御剤や交換吸着を促進す
るために加えた無機塩など写真材料に好ましくない化合
物を乳剤外へ除去ことに好都合である。増感色素の添加
量は、ハロゲン化銀1mol当たり0.001〜100
mmolであることが好ましく、0.01〜10mmo
lであることがさらに好ましい。
【0061】本発明において、増感色素を用いてハロゲ
ン化銀乳剤を分光増感することができる。前記増感色素
としては、通常メチン色素が用いられる。メチン色素に
は、シアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色
素、複合メロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色
素、ヘミシアニン色素、スチリル色素およびヘミオキソ
ノール色素が包含される。これらの色素類には、塩基性
ヘテロ環として、シアニン色素類に通常利用される環の
いずれも適用できる。塩基性ヘテロ環の例としては、ピ
ロリン環、オキサゾリン環、チアゾリン環、ピロール
環、オキサゾール環、チアゾール環、セレナゾール環、
イミダゾール環、テトラゾール環およびピリジン環を挙
げることができる。また、ヘテロ環に脂環式炭化水素環
や芳香族炭化水素環が縮合した環も利用できる。縮合環
の例としては、インドレニン環、ベンズインドレニン
環、インドール環、ベンズオキサゾール環、ナフトオキ
サゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチアゾール
環、ナフトチアゾール環、ベンゾセレナゾール環および
キノリン環を挙げることができる。これらの環の炭素原
子に、置換基が結合していてもよい。メロシアニン色素
または複合メロシアニン色素には、ケトメチレン構造を
有する5員または6員のヘテロ環を適用することができ
る。そのようなヘテロ環の例としては、ピラゾリン−5
−オン環、チオヒダントイン環、2−チオオキサゾリジ
ン−2,4−ジオン環、チアゾリジン−2,4−ジオン
環、ローダニン環およびチオバルビツール酸環を挙げる
ことができる。
【0062】増感色素とともに、それ自身分光増感作用
を示さない色素、または可視光を実質的に吸収しない物
質であって強色増感を示す物質を、ハロゲン化銀乳剤に
添加してもよい。このような色素または物質の例には、
含窒素複素環基で置換されたアミノスチル化合物(米国
特許2933390号および同3635721号各明細
書に記載)、芳香族有機酸ホルムアルデヒド縮合物(米
国特許3743510号明細書に記載)、カドミウム塩
およびアザインデン化合物が含まれる。増感色素と上記
色素または物質との組み合わせについては、米国特許3
615613号明細書、同3615641号明細書、同
3617295号明細書および同3635721号明細
書に記載がある。
【0063】化学増感としてはカルコゲン増感(硫黄増
感、セレン増感、テルル増感)、貴金属増感(例、金増
感)および還元増感を、それぞれ単独或いは組合せて実
施する。硫黄増感においては、不安定硫黄化合物を増感
剤として用いる。不安定硫黄化合物については、P. Gla
fkIdes著 ChemIe et PhysIque PhotographIque (PaulMo
ntel 社刊、1987年、第5版)、Research DIsclosu
re 誌307巻307105号に記載がある。硫黄増感
剤の例には、チオ硫酸塩(例、ハイポ)、チオ尿素類
(例、ジフェニルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、N−
エチル−N’−(4−メチル−2−チアゾリル)チオ尿
素、カルボキシメチルトリメチルチオ尿素)、チオアミ
ド類(例、チオアセトアミド)、ローダニン類(例、ジ
エチルローダニン、5−ベンジリデン−N−エチル−ロ
ーダニン)、フォスフィンスルフィド類(例、トリメチ
ルフォスフィンスルフィド)、チオヒダントイン類、4
−オキソ−オキサゾリジン−2−チオン類、ジポリスル
フィド類(例、ジモルフォリンジスルフィド、シスチ
ン、ヘキサチオカン−チオン)、メルカプト化合物
(例、システィン)、ポリチオン酸塩および元素状硫黄
が含まれる。活性ゼラチンも硫黄増感剤として利用でき
る。
【0064】セレン増感においては、不安定セレン化合
物を増感剤として用いる。不安定セレン化合物について
は、特公昭43−13489号公報、同44−1574
8号公報、特開平4−25832号公報、同4−109
240号公報、同4−271341号公報および同5−
40324号公報に記載がある。セレン増感剤の例に
は、コロイド状金属セレン、セレノ尿素類(例、N,N
−ジメチルセレノ尿素、トリフルオロメチルカルボニル
−トリメチルセレノ尿素、アセチル−トリメチルセレノ
尿素)、セレノアミド類(例、セレノアセトアミド、
N,N−ジエチルフェニルセレノアミド)、フォスフィ
ンセレニド類(例えば、トリフェニルフォスフィンセレ
ニド、ペンタフルオロフェニル−トリフェニルフォスフ
ィンセレニド)、セレノフォスフェート類(例、トリ−
p−トリルセレノフォスフェート、トリ−n−ブチルセ
レノフォスフェート)、セレノケトン類(例、セレノベ
ンゾフェノン)、イソセレノシアネート類、セレノカル
ボン酸類、セレノエステル類およびジアシルセレニド類
が含まれる。なお、亜セレン酸、セレノシアン化カリウ
ム、セレナゾール類やセレニド類のような比較的安定な
セレン化合物(特公昭46−4553号公報および同5
2−34492号公報記載)も、セレン増感剤として利
用できる。
【0065】テルル増感においては、不安定テルル化合
物を増感剤として用いる。不安定テルル化合物について
は、カナダ国特許800958号明細書、英国特許12
95462号明細書、同1396696号明細書、特開
平4−204640号公報、同4−271341号公
報、同4−333043号公報および同5−30315
7号公報に記載がある。テルル増感剤の例には、テルロ
尿素類(例、テトラメチルテルロ尿素、N,N’−ジメ
チルエチレンテルロ尿素、N,N’−ジフェニルエチレ
ンテルロ尿素)、フォスフィンテルリド類(例、ブチル
−ジイソプロピルフォスフィンテルリド、トリブチルフ
ォスフィンテルリド、トリブトキシフォスフィンテルリ
ド、エトキシ−ジフェニルフォスフィンテルリド)、ジ
アシル(ジ)テルリド類(例、ビス(ジフェニルカルバ
モイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチル
カルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−
メチルカルバモイル)テルリド、ビス(エトキシカルボ
ニル)テルリド)、イソテルロシアナート類、テルロア
ミド類、テルロヒドラジド類、テルロエステル類(例、
ブチルヘキシルテルロエステル)、テルロケトン類
(例、テルロアセトフェノン)、コロイド状テルル、
(ジ)テルリド類およびその他のテルル化合物(例、ポ
タシウムテルリド、テルロペンタチオネートナトリウム
塩)が含まれる。
【0066】貴金属増感においては、金、白金、パラジ
ウム、イリジウムなどの貴金属の塩を増感剤として用い
る。貴金属塩については、P. GlafkIdes著 ChemIe et P
hysIque PhotographIque (Paul Montel 社刊、1987
年、第5版)、Research DIsclosure 誌307巻307
105号に記載がある。金増感が特に好ましい。前述し
たように、本発明は金増感を行う態ようにおいて特に効
果がある。青酸カリウム(KCN)を含む溶液で乳剤粒
子上の増感核から金を除去できることは、フォトグラフ
ィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Photo
graphIc ScIence and EngIneerIng) Vol19322(1
975)やジャーナル・イメージング・サイエンス(Jou
rnal of ImagIng ScIence)Vol 3228(1988)で
述べられている。これらの記載によれば、シアンイオン
がハロゲン化銀粒子に吸着した金原子または金イオンを
シアン錯体として遊離させ、結果として金増感を阻害す
る。本発明に従い、シアンの発生を抑制すれば、金増感
の作用を充分に得ることができる。金増感剤の例には、
塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリ
チオシアネート、硫化金および金セレナイドが含まれ
る。また、米国特許2642361号明細書、同504
9484号明細書および同5049485号明細書に記
載の金化合物も用いることができる。
【0067】還元増感においては、還元性化合物を増感
剤として用いる。還元性化合物については、P. GlafkId
es著 ChemIe et PhysIque PhotographIque (Paul Monte
l 社刊、1987年、第5版)、Research DIsclosure
誌307巻307105号に記載がある。還元増感剤の
例には、アミノイミノメタンスルフィン酸(二酸化チオ
尿素)、ボラン化合物(例、ジメチルアミンボラン)、
ヒドラジン化合物(例、ヒドラジン、p−トリルヒドラ
ジン)、ポリアミン化合物(例、ジエチレントリアミ
ン、トリエチレンテトラミン)、塩化第1スズ、シラン
化合物、レダクトン類(例、アスコルビン酸)、亜硫酸
塩、アルデヒド化合物および水素ガスが含まれる。ま
た、高pHや銀イオン過剰(いわゆる銀熟成)の雰囲気
によって、還元増感を実施することもできる。
【0068】2種以上の化学増感法を組み合わせても実
施してもよい。組み合わせとしては、カルコゲン増感と
金増感の組み合わせが特に好ましい。また、還元増感
は、ハロゲン化銀粒子の形成時に施すのが好ましい。増
感剤の使用量は、一般に使用するハロゲン化銀粒子の種
類と化学増感の条件により決定する。カルコゲン増感剤
の使用量は、一般にハロゲン化銀1mol当り10-8
10-2molであり、10-7〜5×10-3molである
ことが好ましい。貴金属増感剤の使用量は、ハロゲン化
銀1mol当り10-7〜10-2molであることが好ま
しい。化学増感の条件に特に制限はない。pAgは一般
に6〜11であり、好ましくは7〜10である。pHは
4〜10であることが好ましい。温度は40℃〜95℃
であることが好ましく、45℃〜85℃であることがさ
らに好ましい。
【0069】本発明のハロゲン化銀乳剤の調製におい
て、粒子形成時から塗布時までに添加することのできる
添加剤について、特にゼラチン以外には制限はない。ま
た、既知のあらゆる技術との組合せを用いることができ
る。結晶形成過程で成長を促進するために、または粒子
形成および/または化学増感時に化学増感を効果的にな
らしめるためにハロゲン化銀溶剤を用いることができ
る。ハロゲン化銀溶剤としては、水溶性チオシアン酸
塩、アンモニア、チオエーテルやチオ尿素類が利用可能
である。ハロゲン化銀溶剤の例としては、チオシアン酸
塩(米国特許2222264号明細書、同244853
4号明細書、同3320069号明細書記載)、アンモ
ニア、チオエーテル化合物(米国特許3271157号
明細書、同3574628号明細書、同3704130
号明細書、同4297439号明細書、同427634
7号明細書記載)、チオン化合物(特開昭53−144
319号公報、同53−82408号公報、同55−7
7737号公報記載)、アミン化合物(特開昭54−1
00717号公報記載)、チオ尿素誘導体(特開昭55
−2982号公報記載)、イミダゾール類(特開昭54
−100717号公報記載)および置換メルカプトテト
ラゾール(特開昭57−202531号公報記載)を挙
げることができる。
【0070】ハロゲン化銀乳剤には、感光材料の製造工
程、保存中或いは写真処理中のカブリを防止し、または
写真性能を安定化させる目的で、種々の化合物を含有さ
せることができる。このような化合物の例には、アゾー
ル類(例、ベンゾチアゾリウム塩、ニトロインダゾール
類、トリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ベンズイ
ミダゾール類(特にニトロ−またはハロゲン置換体)、
ヘテロ環メルカプト化合物類(例、メルカプトチアゾー
ル類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベン
ズイミダゾール類、メルカプトチアジアゾール類、メル
カプトテトラゾール類(特に、1−フェニル−5−メル
カプトテトラゾール)、メルカプトピリミジン類)、カ
ルボキシル基やスルホン基などの水溶性基を有する上記
のヘテロ環メルカプト化合物類;チオケト化合物(例、
オキサゾリンチオン);アザインデン類(例、テトラア
ザインデン類(特に、4−ヒドロキシ置換(1,3,3
a,7)テトラアザインデン類))、ベンゼンチオスル
ホン酸類およびベンゼンスルフィン酸が含まれる。一般
にこれらの化合物は、カブリ防止剤または安定剤として
知られている。
【0071】カブリ防止剤または安定剤の添加時期は、
通常、化学増感を施した後に行なわれる。しかし、化学
増感の途中または開始以前の時期の中から選ぶこともで
きる。すなわち、ハロゲン化銀乳剤粒子形成過程におい
て、銀塩溶液の添加中でも、添加後から化学増感開始ま
での間でも、化学増感の途中(化学増感時間中、好まし
くは開始から50%までの時間内に、より好ましくは2
0%までの時間内)でもよい。
【0072】ハロゲン化銀写真材料の層構成について特
に制限はない。ただし、カラー写真材料の場合は、青
色、緑色および赤色光を別々に記録するために多層構造
を有する。各ハロゲン化銀乳剤層は、高感度層と低感度
層の二層からなっていてもよい。実用的な層構成の例を
下記(1)〜(6)に挙げる。 (1) BH/BL/GH/GL/RH/RL/S (2) BH/BM/BL/GH/GM/GL/RH/
RM/RL/S (3) BH/BL/GH/RH/GL/RL/S (4) BH/GH/RH/BL/GL/RL/S (5) BH/BL/CL/GH/GL/RH/RL/
S (6) BH/BL/GH/GL/CL/RH/RL/
【0073】前記(1)〜(6)の層構成において、B
は青色感性層、Gは緑色感性層、Rは赤色感性層、Hは
最高感度層、Mは中間感度層、Lは低感度層、Sは支持
体、そしてCLは重層効果付与層である。保護層、フィ
ルター層、中間層、ハレーション防止層や下引層のよう
な非感光性層は省略してある。同一感色性の高感度層と
低感度層を逆転して配置してもよい。(3)について
は、米国特許4184876号明細書に記載がある。
(4)については、RD−22534、特開昭59−1
77551号公報および同59−177552号公報に
記載がある。また、(5)と(6)については、特開昭
61−34541号公報に記載がある。好ましい層構成
は、(1)、(2)および(4)である。本発明のハロ
ゲン化銀写真材料は、カラー写真材料以外にも、X線用
感光材料、黒白撮影用感光材料、製版用感光材料や印画
紙にも、同様に適用することができる。
【0074】ハロゲン化銀乳剤の種々の添加剤(例、バ
インダー、化学増感剤、分光増感剤、安定剤、ゼラチン
硬化剤、界面活性剤、帯電防止剤、ポリマーラテック
ス、マット剤、カラーカプラー、紫外線吸収剤、退色防
止剤、染料)、写真材料の支持体および写真材料の処理
方法(例、塗布方法、露光方法、現像処理方法)につい
ては、リサーチディスクロージャー176巻、アイテム
17643(RD−17643)、同187巻、アイテ
ム18716(RD−18716)および同225巻、
アイテム22534(RD−22534)の記載を参考
にすることができる。これらリサーチ・ディスクロージ
ャーの記載を、以下の一覧表に示す。
【0075】 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 添加剤種類 RD17643 RD18716 RD22534 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 1 化学増感剤 23頁 648頁右欄 24頁 2 感度上昇剤 同上 3 分光増感剤 23〜24頁 648頁右欄〜 24〜28頁 強色増感剤 649頁右欄 4 増 白 剤 24頁 5 かぶり防止剤 24〜25頁 649頁右欄〜 24頁、31頁 及び安定剤 6 光吸収剤、 25〜26頁 649頁右欄〜 フィルター染料、 650頁左欄 紫外線吸収剤 7 ステイン防止剤 25頁右欄 650頁左〜右欄 8 色素画像安定剤 25頁 32頁 9 硬 膜 剤 26頁 651頁左欄 28頁 10 バインダー 26頁 同上 11 可塑剤、潤滑剤 27頁 650頁右欄 12 塗布助剤、表面 26〜27頁 同上 活性剤 13 スタチック 防止剤 27頁 同上 14 カラーカプラー 25頁 649頁 31頁 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0076】ゼラチン硬化剤としては、例えば、活性ハ
ロゲン化合物(2,4−ジクロル−6−ヒドロキシ−
1,3,5−トリアジンおよびそのナトリウム塩など)
および活性ビニル化合物(1,3−ビスビニルスルホニ
ル−2−プロパノール、1,2−ビス(ビニルスルホニ
ルアセトアミド)エタン或いはビニルスルホニル基を側
鎖に有するビニル系ポリマーなど)は、ゼラチンなど親
水性コロイドを早く硬化させ安定な写真特性を与えるの
で好ましい。N−カルバモイルピリジニウム塩類(1−
モルホリノカルボニル−3−ピリジニオ)メタンスルホ
ナートなど)やハロアミジニウム塩類(1−(1−クロ
ロ−1−ピリジノメチレン)ピロリジニウム2−ナフタ
レンスルホナートなど)も硬化速度が早く優れている。
【0077】カラー写真材料は、RD.No. 17643
の28〜29頁、および同No. 18716の651左欄
〜右欄に記載された通常の方法によって現像処理するこ
とができる。カラー写真感光材料は、現像、漂白定着も
しくは定着処理の後に、通常、水洗処理または安定化処
理を施す。水洗工程は二槽以上の槽を向流水洗にし、節
水するのが一般的である。安定化処理としては水洗工程
のかわりに特開昭57−8543号公報記載のような多
段向流安定か処理が代表例として挙げられる。
【0078】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的
に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操
作等は、本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更する
ことができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す
具体例に制限されるものでない。
【0079】[実施例1:ゼラチン水溶液のCDスペク
トルの測定]pBr2.5のKBrを含有する各種ゼラ
チン水溶液を調製し、前記ゼラチン水溶液のCDスペク
トルを日本分光社製J−720型円二色分散計を用いて
測定した。前記ゼラチン水溶液は、目的の温度に達した
後、少なくとも90分間経過した溶液(いずれのゼラチ
ン水溶液もゲル化はしていないことを確認)をCDスペ
クトル測定に使用し、221nmでの楕円率を測定し
た。測定した楕円率を表1に示す。トリメリット化ゼラ
チン以外のゼラチンの水溶液は、15℃以下において、
それらのCDスペクトルの221nm付近に明確な正の
ピークを示した。このことは、コラーゲン様トリプルヘ
リックス構造が水溶液中で形成されていることを示して
いる。また、CDスペクトルは、ポリペプチド鎖の構造
についてもある程度の定量性を有するので、221nm
での楕円率の数値が大きいほど、水溶液中におけるゼラ
チンのコラーゲン様トリプルヘリックス構造の含有量が
相対的に高い。40℃以上では、表1における全てのゼ
ラチン水溶液の221nmでの楕円率は負の値を示し
た。且つそれらのCDスペクトルには221nm付近に
ピークは観測されなかった。このことは、コラーゲン様
トリプルヘリックス構造を有さず、ゼラチン(ポリペプ
チド鎖)は水溶液中でランダムな構造であること(規則
的な構造性がないこと)を示している。
【0080】
【表1】
【0081】[実施例2:臭化銀平板核を含む乳剤Em
−1〜7の調製] 《Em−1の調製(本発明)》反応容器にゼラチン水溶
液1195mL(表1のゼラチン1に相当する低分子量
脱イオン化アルカリ処理骨ゼラチン中のメチオニン含率
が約3μmol/gのゼラチン0.93g、KBr0.
44gを含む)を入れ、温度を1℃に保ち、それを攪拌
しながらダブルジェット法でAg−1液(100mL中
にAgNO3を10g含む)とX−1液(100mL中
にKBrを7.1g含む)を20mL/分で10mLず
つ添加した(核形成工程)。1分間撹拌した後、表1の
ゼラチン2に相当する脱イオン化アルカリ処理骨ゼラチ
ン中のメチオニン含率が約3μmol/gのゼラチン
2.5gを含むゼラチン水溶液150mLをゆっくり添
加した。その後、60分間で温度を15℃に昇温した
後、pBrを2.5に調整し、そのまま15℃に保温し
て、撹拌しながら20時間物理熟成を行って調製した。
【0082】《Em−2の調製(本発明)》Em−2
は、Em−1の調製において、ゼラチン2を表1のゼラ
チン3に相当する脱イオン化アルカリ処理骨ゼラチンに
置き換え、且つ24時間物理熟成を行った以外は、Em
−1の調製と同様にして調製した。
【0083】《Em−3の調製(比較例)》Em−3
は、Em−1の調製において、ゼラチン2を表1のゼラ
チン4に相当する脱イオン化アルカリ処理骨ゼラチン中
のアミノ基の99%を無水トリメリット酸で化学修飾し
たゼラチン4に置き換え、且つ12時間物理熟成を行っ
た以外は、Em−1の調製と同様にして調製した。
【0084】《Em−4〜6の調製(比較例)》Em−
4〜6は、反応容器にゼラチン水溶液1195mL(表
1のゼラチン1に相当する低分子量脱イオン化アルカリ
処理骨ゼラチン中のメチオニン含率が約3μmol/g
のゼラチン0.93g、KBr0.44gを含む)を入
れ、温度を1℃に保ち、それを撹拌しながらダブルジェ
ット法でAg−1液(100mL中にAgNO3を10
g含む)とX−1液(100mL中にKBrを7.1g
含む)を20mL/分で10mLずつ添加した(核形成
工程)。1分間撹拌した後、表1のゼラチン2〜4を
2.5g含むゼラチン水溶液150mLをゆっくり添加
した。その後、20分間で温度を60℃に昇温した後、
pBrを2.5に調整し、そのまま60℃に保温して、
撹拌しながらEm−4、5および6について、それぞれ
12分間、15分間および8分間物理熟成を行って調製
した。
【0085】《Em−7の調製(比較例)》Em−7
は、反応容器にゼラチン水溶液1195mL(表1のゼ
ラチン1に相当するメチオニン含率が約3μmol/g
の低分子量脱イオン化アルカリ処理骨ゼラチン0.93
g、KBr0.44gを含む)を入れ、温度を1℃に保
ち、それを撹拌しながらダブルジェット法でAg−1液
(100mL中にAgNO3を10g含む)とX−1液
(100mL中にKBrを7.1g含む)を20mL/
分で10mLずつ添加した(核形成工程)。1分間撹拌
した後、30%KBr水溶液を14mL添加し、25分
間で温度を75℃に昇温した。昇温開始直後に表1のゼ
ラチン4を20g含むゼラチン水溶液150mLを添加
し、さらに、その直後に1/50mol/Lの(11
1)晶相制御剤を12mL添加した。75℃に昇温
後、その温度に保温して、撹拌しながら8分間物理熟成
を行って調製した。
【0086】
【化10】
【0087】Em−1〜7に含まれる臭化銀(111)
平板核の電子顕微鏡写真から、前記平板核の平均粒子厚
みと平均円相当径を測定し、表2に示した。
【0088】
【表2】
【0089】表2に示す結果から明らかなように、核形
成工程後、物理熟成工程での温度でコラーゲン様トリプ
ルヘリックス構造を有し、且つその含有量が多いゼラチ
ンを用いた方が、同サイズのハロゲン化粒子で、より薄
い平板核の調製が可能で、特開2000−147500
号公報に記載されているように(111)晶相制御剤を
使用した場合とほぼ同等の厚み(0.03μm未満)が
達成できる。薄くなる機構は必ずしも明確ではないが、
低温にすることにより誘起されたコラーゲン様トリプル
ヘリックス構造を有するゼラチンのハロゲン化銀粒子に
対する吸着様式が、主鎖(ポリペプチド鎖)が主として
比較的高温下で支配的なランダムな構造のゼラチンとは
異なり、それが薄板化に関与している可能性がある。ま
た、極端な場合には、(111)晶相制御剤のように、
コラーゲン様トリプルヘリックス構造を有するゼラチン
は、ハロゲン化銀粒子の(111)面(平板粒子の主平
面)に選択的に吸着し、物理熟成工程中における平板粒
子の異方成長性を増大させているものと推定される。
【0090】[実施例3:ヨウ臭化銀平板乳剤Em−A
〜Cの調製] 《Em−Aの調製(本発明)》実施例2でのEm−1
に、15℃のままで、PAGI法によって測定した分子
量分布において、分子量280,000以上の成分が全
体に占める割合が38.5%である脱イオン化高分子量
アルカリ処理ゼラチン30gと1/50mol/Lの
(111)晶相制御剤を、20mL含む水溶液350
mLを反応容器に加え、直ちに25分間で75℃に昇温
した。75℃に昇温後、5分間放置した後、1/50m
ol/Lの(111)晶相制御剤を50mL添加し
た。その後、前記反応容器とは別に特開平10−435
70号公報に記載の容量0.5mLの混合器を用いて、
前記混合器内に0.6mol/Lの硝酸銀水溶液100
0mLと、低分子量脱イオン化アルカリ処理ゼラチン
(平均分子量20000)50gとKIを3mol%含
むKBr0.6mol/Lの水溶液1000mLを56
分間、一定流量で添加した。前記混合器で形成した微粒
子乳剤は連続的に前記反応容器に添加した。その際、前
記混合器の撹拌回転数は2000rpmであった。微粒
子乳剤の添加と同時に、1/50mol/Lの(11
1)晶相制御剤水溶液100mLを一定流量で反応容
器に添加した。反応容器の撹拌翼は、800rpmで回
転され、よく撹拌された。また、前記微粒子乳剤を添加
中、反応容器内の温度を75℃、pBr2.5で一定に
保持した(粒子成長工程)。
【0091】前記粒子成長中、硝酸銀を70%添加した
時点で6塩化イリジウム(IV)錯体を8×10-8mol
/mol銀添加しドープした。さらに、粒子成長終了前
にヘキサシアノ鉄(II)錯体水溶液が混合器に添加され
た。ヘキサシアノ鉄(II)錯体は粒子のシェル部3%
(添加硝酸銀量換算で)に局所濃度で3×10-4mol
/mol銀の濃度になるようにドープした。粒子成長終
了後、4−(5−メルカプト−1−テトラゾリル)安息
香酸を乾燥ゼラチン100g当たり0.4mmol導入
したアルカリ処理骨ゼラチン20g、増感色素を銀1
モルあたり2.7mmol添加し、pHを4.0に調整
後、75℃のまま40分間保持した(色素交換吸着工
程)。
【0092】その後、温度を35℃に降温し、通常のフ
ロキュレイション法で水洗・脱塩を行った。水洗・脱塩
後、再び50℃に昇温し、脱イオン化アルカリ処理骨ゼ
ラチンを50g、蒸留水100mLを加え乳剤の再分散
を行い、NaOHとKBrを添加してpH6.5、pA
g8.7に調整して、Em−Aを得た。このようにして
得られたEm−Aに含まれるヨウ臭化銀(111)平板
粒子の電子顕微鏡写真から、前記平板粒子の平均粒子厚
みは0.031μm、平均円相当径は3.32μmであ
った。また、全粒子の全投影面積に対する前記ヨウ臭化
銀(111)平板粒子の投影面積の比率は97%以上で
あった。
【0093】
【化11】
【0094】《Em−Bの調製(比較例)》Em−B
は、実施例2でのEm−4に、60℃のままで、PAG
I法によって測定した分子量分布において、分子量28
0,000以上の成分が全体に占める割合が38.5%
である脱イオン化高分子量アルカリ処理ゼラチン30g
と1/50mol/Lの(111)晶相制御剤を18
mL含む水溶液350mLを、反応容器に加え、直ちに
8分間で75℃に昇温した。75℃に昇温後はEm−A
の調製と同様の工程を行った。このようにして得られた
Em−Bに含まれるヨウ臭化銀(111)平板粒子の電
子顕微鏡写真から、前記平板粒子の平均粒子厚みは0.
044μm、平均円相当径は2.71μmであった。ま
た、全粒子の全投影面積に対する前記ヨウ臭化銀(11
1)平板粒子の投影面積の比率は97%以上であった。
平板粒子の厚みは、成長工程前の平板核厚みの差をその
まま引き継いで、その差分は成長後の平板粒子も厚くな
るといえる。
【0095】《Em−Cの調製(比較例)》Em−C
は、実施例2でのEm−7に、75℃のままで、PAG
I法によって測定した分子量分布において、分子量28
0000以上の成分が全体に占める割合が38.5%で
ある脱イオン化高分子量アルカリ処理ゼラチン30gと
1/50mol/Lの(111)晶相制御剤を5mL
含む水溶液350mLを、反応容器に加え、5分間75
℃に保温した後、Em−Aの調製と同様の工程を行っ
た。このようにして得られたEm−Cに含まれるヨウ臭
化銀(111)平板粒子の電子顕微鏡写真から、前記平
板粒子の平均粒子厚みは0.030μm、平均円相当径
は3.28μmであった。また、全粒子の全投影面積に
対する前記ヨウ臭化銀(111)平板粒子の投影面積の
比率は97%以上であった。
【0096】Em−A〜Cをチオ硫酸ナトリウム、塩化
金酸、チオシアン酸カリウムを添加して最適に化学増感
を行った。これら化学増感を施した各乳剤それぞれにゼ
ラチン、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを加え
て、下塗層を有するトリアセチルセルロースフィルム支
持体上に、ゼラチン、ポリメチルメタクリレート粒子、
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナ
トリウム塩を含む保護層と共に押し出し法によりそれぞ
れ銀量1g/m2で塗布し、塗布試料101〜103を
それぞれ得た。
【0097】塗布試料101〜103は、富士写真フイ
ルム社製青色カットフィルターSC−50を用いてセン
シトメトリー用露光(1秒)を光学楔を介して与えた
後、下記の処方で得た現像液で、20℃、10分間現像
した後、常法により停止、定着、水洗、乾燥し、光学濃
度を測定した。カブリは、試料の最小光学濃度で求め、
感度は、カブリ+0.1の光学濃度を与えるルックス・
秒で表示する露光量の逆数の対数で評価し、塗布試料1
03の値を100とする相対値として示した。表3にこ
れらの結果を示した。
【0098】 現像液 メトール 2.5g L−アスコルビン酸 10.0g ナボックス 35.0g KBr 1.0g 水を加えて1リットルとし、pHを9.6に合わせる。
【0099】
【表3】
【0100】表3から明らかなように、本発明の核形成
工程、およびそれに引き続く物理熟成工程を(111)
晶相制御剤を使用せずに、分散媒としてゼラチンのみを
用いることにより、カブリをより低く抑え、且つ平板粒
子を薄板化することができ、その結果、その体積に対す
る表面積が増大し高感化が達成できた。カブリが低くな
ることは、これまでの知見では予想できないことであ
り、比較的低温下(20℃以下)でゆっくりと物理熟成
工程を行い、平板核を調製したことと関係しているもの
と推定される。
【0101】[実施例4]実施例3のEm−Cを最適に
化学増感を施し、特開平9−146237号公報の実施
例2の試料201の第6層の乳剤として使用し、同実施
例と同じ処理をして良好な結果を得た。
【0102】
【発明の効果】本発明によれば、高感度であるととも
に、放射線吸収によるカブリを低減し得るハロゲン化銀
写真感光材料、ならびにその安定的な製造を可能とする
ハロゲン化銀乳剤の製造方法を提供することができる。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ハロゲン化銀粒子と分散媒とを含むハロ
    ゲン化銀乳剤の製造方法であって、 a)分散媒の溶液中で双晶粒子核を含むハロゲン化銀粒
    子核を形成する核形成工程と、 b)分散媒の溶液中で前記双晶粒子核を熟成して平板状
    粒子核を優先的に残存させる物理熟成工程と、 c)分散媒の溶液中で前記平板状粒子核を成長させる成
    長工程と、 を含み、且つ前記b)物理熟成工程およびc)成長工程
    にそれぞれ用いられる分散媒の少なくとも一つが、コラ
    ーゲン様トリプルヘリックス構造を有するポリペプチト゛
    を含有することを特徴とするハロゲン化銀乳剤の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 支持体上に少なくとも1層の感光性ハロ
    ゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料にお
    いて、前記感光性ハロゲン化銀乳剤が少なくともハロゲ
    ン化銀粒子と分散媒とを含み、前記ハロゲン化銀粒子
    が、その全投影面積の50%以上が、円相当径が0.6
    μm以上、粒子厚みが0.2μm未満で、且つ(11
    1)面を主表面とする平板状ハロゲン化銀粒子であると
    ともに、前記感光性ハロゲン化銀乳剤が、 a)分散媒の溶液中で双晶粒子核を含むハロゲン化銀粒
    子核を形成する核形成工程と、 b)分散媒の溶液中で前記双晶粒子核を熟成して平板状
    粒子核を優先的に残存させる物理熟成工程と、 c)分散媒の溶液中で前記平板状粒子核を成長させる成
    長工程と、 を含み、且つ前記b)物理熟成工程およびc)成長工程
    にそれぞれ用いられる前記分散媒の少なくとも一つが、
    コラーゲン様トリプルヘリックス構造を有するポリペプ
    チトを含有する製造方法により製造されてなることを特
    徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
  3. 【請求項3】 前記a)核形成工程、b)物理熟成工程
    およびc)成長工程を行う反応容器の外に混合容器を設
    け、前記a)核形成工程および/またはc)成長工程に
    おいて、水溶性銀塩の水溶液と前記コラーゲン様トリプ
    ルヘリックス構造を有するポリペプチドを含む水溶性ハ
    ライド塩の水溶液とをそれぞれ別々に前記混合容器に供
    給して、または水溶性銀塩、水溶性ハライドおよび前記
    コラーゲン様トリプルヘリックス構造を有するポリペプ
    チドを各々含む水溶液をそれぞれ別々に前記混合容器に
    供給して、混合することによりハロゲン化銀の微粒子を
    形成し、前記微粒子を前記反応容器に供給して前記反応
    容器中で前記ハロゲン化銀乳剤を製造することを特徴と
    する請求項2に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
  4. 【請求項4】 さらに前記a)核形成工程に用いる分散
    媒が、コラーゲン様トリプルヘリックス構造を有するポ
    リペプチドを含有することを特徴とする請求項2または
    3に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
  5. 【請求項5】 前記b)物理熟成工程および/または前
    記成長工程に用いられる前記分散媒の溶液が、少なくと
    も1種の(111)晶相制御剤を含有することを特徴と
    する請求項2〜4のいずれか1項に記載のハロゲン化銀
    写真感光材料。
  6. 【請求項6】 前記(111)晶相制御剤が、下記一般
    式(I)、(II)または(III)で表わされる化合物で
    あることを特徴とする請求項5に記載のロゲン化銀写真
    感光材料。 【化1】 (一般式(I)中、R1はアルキル基、アルケニル基ま
    たはアラルキル基を表し、R2、R3、R4、R5およびR
    6はそれぞれ水素原子または置換基を表し、R2とR3
    3とR4、R4とR5、R5とR6は縮環してもよいが、R
    2、R3、R4、R5およびR6の少なくとも一つはアリー
    ル基を表す。X-は対アニオンを表す。) 【化2】 【化3】 (一般式(II)および(III)中、A1、A2、A3および
    4はそれぞれ含窒素ヘテロ環を完成させるための非金
    属原子群を表し、Bは2価の連結基を表し、mは0また
    は1を表し、R1およびR2はそれぞれアルキル基を表
    し、X-はアニオンを表し、nは0、1または2を表
    し、分子内塩のときはnは0または1である。)
JP2002062984A 2002-03-08 2002-03-08 ハロゲン化銀乳剤の製造方法およびハロゲン化銀写真感光材料 Pending JP2003262930A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002062984A JP2003262930A (ja) 2002-03-08 2002-03-08 ハロゲン化銀乳剤の製造方法およびハロゲン化銀写真感光材料

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002062984A JP2003262930A (ja) 2002-03-08 2002-03-08 ハロゲン化銀乳剤の製造方法およびハロゲン化銀写真感光材料

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003262930A true JP2003262930A (ja) 2003-09-19

Family

ID=29196485

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002062984A Pending JP2003262930A (ja) 2002-03-08 2002-03-08 ハロゲン化銀乳剤の製造方法およびハロゲン化銀写真感光材料

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003262930A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JPH0522902B2 (ja)
JP4262401B2 (ja) ハロゲン化銀写真感光材料
JP2003262930A (ja) ハロゲン化銀乳剤の製造方法およびハロゲン化銀写真感光材料
JP4137348B2 (ja) ハロゲン化銀写真感光材料
US5736311A (en) Silver halide photographic emulsion containing tabular grains with dislocations and method of preparing the same
JP3278227B2 (ja) ハロゲン化銀感光材料
JP2001343717A (ja) 平板状ハロゲン化銀乳剤の製造方法
JPH06301129A (ja) 中位アスペクト比平板状粒子乳剤
JPH11202440A (ja) ハロゲン化銀写真乳剤
JP2002107858A (ja) ハロゲン化銀写真感光材料
JP2001264910A (ja) ハロゲン化銀写真乳剤の製造方法
EP0838720B1 (en) Sensitization process of silver halide photographic emulsion
JP2003172985A (ja) ハロゲン化銀乳剤の製造方法
JP2001147500A (ja) ハロゲン化銀写真乳剤及びその製造方法
JPH11352619A (ja) ハロゲン化銀写真乳剤及びその製造方法並びに写真感光材料
JP2001100353A (ja) ハロゲン化銀写真感光材料
JPH0643577A (ja) ハロゲン化銀写真材料
JP2000066325A (ja) ハロゲン化銀乳剤及びハロゲン化銀写真感光材料
JP2001264908A (ja) 平板状ハロゲン化銀写真乳剤の製造方法
JPH09292667A (ja) ハロゲン化銀乳剤
US20030186179A1 (en) Light-sensitive silver halide grain
JP2001235824A (ja) ハロゲン化銀写真感光材料
JP2000112052A (ja) ハロゲン化銀写真感光材料
JP2000241925A (ja) ハロゲン化銀写真乳剤の製造方法および該乳剤を用いたハロゲン化銀写真感光材料
JPH0862761A (ja) ハロゲン化銀写真材料