JP2003028882A - SmalldenseLDLの測定方法 - Google Patents

SmalldenseLDLの測定方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明は、冠状動脈硬化性心疾患やインスリン
抵抗性を生じている2型糖尿病の診断に有用な、検体中
のSmall dense LDLのみを特異的且つ高感度に測定し
得るSmall dense LDLの測定方法を提供すること。 【解決手段】0を超えて310mmol/Lの範囲にあ
る1価のカチオンおよび/または0.1〜500mmo
l/Lの範囲にある2価のカチオンと、ポリアニオンと
を存在させることを特徴とするSmall dense LDLの測
定方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、検体中のSmall dense
LDLのみを特異的且つ高感度に測定し得るSmall dens
e LDLの測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】血液中における脂質は、リポ蛋白の形で
存在し、生体内組織間で輸送されている。リポ蛋白は、
その比重からカイロミクロン、超低比重リポ蛋白(VL
DL)、低比重リポ蛋白(LDL)、高比重リポ蛋白
(HDL)に大別される。
【0003】各リポ蛋白の機能としては、カイロミクロ
ンは、腸管から吸収した中性脂肪を肝に運搬し、肝で生
成されたVLDLは、中性脂肪を末梢組織に運搬しなが
らLDLへと変化し、コレステロールを多く含むLDL
は、末梢組織において吸収される。これに対し、肝で生
成されたHDLは、末梢組織のコレステロールを逆に肝
へと運搬する役目を果たし、末梢組織への脂質蓄積を促
す低比重リポ蛋白群とは明らかに異なった機能を有す
る。
【0004】低比重リポ蛋白群のLDL、VLDLは、
起源は一であるが、生体内の代謝機能の変化または疾病
によりいずれかまたは両者の血中濃度の上昇が認めら
れ、動脈硬化性疾患との関連が指摘されている。
【0005】従来、リポ蛋白の分画法としては、超遠心
法と電気泳動法以外には有効な方法は無かったが、19
72年にScholnickらによりヘパリンおよび塩化カルシ
ウム、塩化マグネシウムおよび塩化ナトリウムによりカ
イロミクロン+VLDL+LDLを濁らせる試薬と、カ
イロミクロン+VLDLを濁らせる試薬と、カイロミク
ロンだけを濁らせる試薬とが調製可能であることが報告
されている(Fluids,19:289,1972)。
【0006】その後、小出らによりヘパリンと、塩化カ
ルシウムおよび塩化ナトリウムとを適当な濃度を選択す
ることにより同様の試薬が調製できるだけでなく、その
濁りの差によりLDL、VLDLが定量可能であること
が報告されている(臨床病理、臨時増刊特集第21号:8
2,1975)。
【0007】本発明者も、動物由来のヘパリンに代えて
合成可能な硫酸デキストランを用い、この硫酸デキスト
ランと、一価のカチオンおよび/または二価のカチオン
との量を変えることによりリポ蛋白分画を段階的に混濁
させる血清リポ蛋白分画の測定法を提案している(特開
平7−294532号公報)。
【0008】ところで、LDLは、比重1.006〜
1.063の幅広いリポ蛋白の集合であり、粒子サイズ
の異なる亜分画より構成される。このうち比重1.04
4〜1.060の亜分画はSmall dense LDLと呼ばれ
ている(Progress in Medicine19:1854-1859,1999)。
また、本出願においては、比重1.006〜1.044
の亜分画をLarge LDLと呼ぶことにする。
【0009】LDL亜分画のうち、小型で比重の重いSm
all dense LDLが主として出現しているヒトは、Larg
e LDLが出現しているヒトに比べて冠状動脈硬化性心
疾患やインスリン抵抗性を生じている2型糖尿病が高頻
度で出現していることが報告されている(JAMA 26
0:1917-1921,1988)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】このようにSmall dens
e LDLは、冠状動脈硬化性心疾患やインスリン抵抗性
を生じている2型糖尿病の鋭敏なマーカーとなり得るた
め、それらの診断法の確立が強く期待されている。
【0011】従って本発明は、このような従来の課題に
着目してなされたものであって、LDLのうち、Small
dense LDLのみを特異的且つ高感度に測定し得る検体
中のSmall dense LDLの測定方法を提供することを目
的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく鋭意研究した結果、特定の濃度の1価のカ
チオンおよび/または2価のカチオンと、ポリアニオン
との存在下で、Smalldense LDLを特異的且つ高感度
に測定できることを見出し、本発明を完成した。
【0013】本発明のSmall dense LDLの測定方法
は、0を超えて310mmol/Lの範囲にある1価の
カチオンおよび/または0.1〜500mmol/Lの
範囲にある2価のカチオンと、ポリアニオンとを存在さ
せることを特徴とする。以下、本発明について更に詳細
に説明する。
【0014】1価のカチオンは、イオン強度の調整に用
いられるため、イオンの活量係数の高い化合物から選択
することが好ましい。このような1価のカチオンとして
は、Na+、K+、およびLi+から成る群から選択され
る少なくとも1種が挙げられる。
【0015】この1価のカチオンの濃度は、0を超えて
310mmol/Lの範囲、好ましくは、150〜22
0mmol/Lの範囲である。1価のカチオンの濃度が
310mmol/Lを超えると、Small dense LDL分
別定量が困難になる。また、1価のカチオン濃度は使用
するポリアニオンの種類や濃度によりその使用量が変動
するので、至適濃度を限定することはできない。
【0016】2価のカチオンは、公知のカチオンの中か
ら適宜選択すれば良い。その具体例としては、Ca2+
Mg2+、Mn2+、Co2+、およびSr2+から成る群から
選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0017】この2価のカチオンの濃度は、0.1〜5
00mmol/Lの範囲、好ましくは、1〜200mm
ol/Lの範囲である。2価のカチオンの濃度が0.1
mmol/L未満になると、十分な感度が得られない。
一方、2価のカチオン濃度は、一定濃度以上あれば良
く、上限濃度は規定されないが、溶解度を考慮すると、
濃度は500mmol/L以下が好ましい。また、2価
のカチオン濃度は、使用するポリアニオンの種類や濃度
によりその使用量が変動するので、その至適濃度を限定
することはできない。
【0018】本発明に使用されるポリアニオンも、公知
のポリアニオンの中から適宜選択することができる。そ
の具体例としては、硫酸多糖類、硫酸アミロペクチン、
およびリンタングステン酸から成る群から選択される少
なくとも1種が挙げられる。
【0019】上記硫酸多糖類としては、硫酸デキストラ
ン、ヘパリン、コンドロイチン硫酸が挙げられ、その中
でも、特に原料入手の容易さや価格の面から硫酸デキス
トランが好ましい。その分子量は、5,000〜50,
000の範囲内が好ましい。
【0020】本発明の実施の態様としては、所定量の一
価のカチオン、好ましくはナトリウムイオンを含有する
第1試薬と検体を混合後、一回目の測定を行い、次いで
第2試薬で一価のカチオンの濃度を減少させて、2回目
の測定を行い、その吸光度の増加からSmall dense LD
Lの量を求める方法が挙げられる。具体的には、一価の
カチオンを含む第1試薬でカイロミクロン+VLDL+
Large LDLを混濁させ、次いで第2試薬で一価のカチ
オンを減少させて、Smalldense LDLを混濁させ、吸
光度の増加としてSmall dense LDLを測定する。
【0021】本発明の別の態様としては、第1試薬でカ
イロミクロン+VLDL+Large LDL+Small dense
LDLを混濁させ、次いで第2試薬で一価のカチオン濃
度を増加させることにより、Small dense LDLのみを
溶解させて、吸光度の減少としてSmall dense LDLを
特異的に測定する方法が挙げられる。
【0022】本発明におけるSmall dense LDLの測定
には、透過光による比濁法や散乱光による比ろう法があ
り、いずれも広く普及している。本発明に係るSmall de
nse LDLとポリアニオンとは、均質な混濁を形成する
ため、いずれの測定法を用いても正確な測定値が得られ
る。
【0023】
【発明の効果】本発明は、Small dense LDLのみを特
異的且つ高感度に測定し得る検体中のSmall dense LD
Lの測定方法を提供する。従って、本発明の測定法によ
れば、冠状動脈硬化性心疾患やインスリン抵抗性を生じ
ている2型糖尿病を精度良く診断することができる。
【0024】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説
明するが、本発明はこれによって限定されるものではな
い。
【0025】実施例1 (1)各リポ蛋白の分離 新生化学実験講座 脂質I(1993)に基づいて、超
遠心法によりヒト血清を下記のような3つの各リポ蛋白
質に分画したものを試料として実験に用いた。 d<1.006(Chylomicron,VLDL) 1.006<d<1.044(Large LDL) 1.044<d<1.060(Small dense LDL)
【0026】(2)試薬組成 硫酸デキストラン(特開平7−294532の実施例1
に記載のものと同じ)0.02w/v%、塩化カルシウ
ム80mmol/L、アジ化ナトリウム7.7mmol
/Lの溶液に、塩化ナトリウムを溶解してその濃度が0
〜450mmol/Lとなるように31種類の試薬を調
製した。
【0027】(3)測定法 日立7170型自動分析装置を用いて、上記のように塩
化ナトリウム濃度が異なる31種類の試薬をR1にセッ
トし、分画した各リポ蛋白と血清を試料として吸光度を
測定した。すなわち、超遠心により分画した血清5μL
を反応セルに分注し、次いで試薬200μLを分注撹拌
し37℃で反応させて、10分後にその吸光度を主波長
660nmで測定した。
【0028】(4)結果 その結果を図1に示す。図1に示すように、Large LD
LとSmall dense LDLとは、塩化ナトリウム濃度によ
り濁度パターンが異なっている。すなわち、Large LD
Lは、塩化ナトリウム濃度0〜280mmol/Lで一
定の濁度を示すが、これを超える濃度では、吸光度が低
下し、350mmol/Lで澄明化する。これに対し
て、Small dense LDLは、塩化ナトリウム濃度200
mmol/Lのとき最も強い濁度を示し、これを超える
濃度では、吸光度が徐々に低下し、300mmol/L
で澄明になる。一方、カイロミクロン+VLDLは、塩
化ナトリウム濃度0〜325mmol/Lの範囲で一定
の濁度を示す。また、データは省略したが、HDLはこ
の濃度範囲で混濁を生じない。従って塩化ナトリウム濃
度200mmol/Lのときの濁度は、カイロミクロン
+VLDL+Large LDL+Small dense LDLの合計
量の濁度を示す。これに対し、塩化ナトリウム280m
mol/Lのときの濁度は、カイロミクロン+VLDL
+Large LDLの濁度の合計量を示す。従ってSmall de
nse LDL量は、この2つの組成における吸光度の差と
して測定することができる。
【0029】実施例2 実施例1で示したように、塩化ナトリウム濃度が異なる
2種類の試薬を用いて濁度を測定し、この2つの試薬の
濁度の差からSmall dense LDL量を測定することが可
能である。しかし、この方法では2つの試薬を自動分析
装置の2つのチャンネルにセットし、1検体を2回測定
するため、つまり2つのチャンネルで1項目を測定する
ため効率が悪い。本発明者らは、更に考えを進めて、1
チャンネルで測定できる方法を考案した。通常、自動分
析装置は、1つのチャンネルに第1試薬と第2試薬の2
試薬をセットできるので、すなわち、第1試薬と第2試
薬で塩化ナトリウム濃度を変化させることにより、自動
分析装置の1チャンネルで測定できることを見出した。
この方法は、臨床検査に必要な試薬チャンネルの使用が
少なく、かつ2チャンネルを使用しないため、演算が容
易である。
【0030】すなわち、塩化ナトリウム濃度280mm
ol/Lを含む第1試薬と試料を混和後1回目の測光を
行い、次いで第2試薬により塩化ナトリウム濃度を20
0mmol/Lに希釈して2回目の測光を行い、液量補
正後その吸光度の増加量からSmall dense LDL量を求
める方法である。つまり第1試薬でカイロミクロン+V
LDL+Large LDLを混濁させ、次いで第2試薬によ
り塩化ナトリウム濃度を減少させて、Small dense LD
Lを混濁させ、すなわち吸光度の増加としてSmall dens
e LDLを測定する方法である(以下、1チャンネル法
と呼ぶ)。
【0031】逆に、第1試薬でカイロミクロン+VLD
L+Large LDL+Small dense LDLを混濁させ、第
2試薬で塩化ナトリウム濃度を増加させることにより、
Small dense LDLのみを溶解させて、吸光度の減少と
してSmall dense LDLを特異的に測定することも可能
である。
【0032】実施例3 (1)公知の方法 文献(動脈硬化 Vol.25 No.1-2:67-70,1997)によれ
ば、LDL粒子サイズがLipophor System(製造元:Quan
timetrix,CALIFORNIA,U.S.A. 輸入元:株式会社常光)
により、簡便に測定でき、LDL-MI値(相対移動
度)が0.40以上の場合、Small dense LDLが存在
することが示されている。そこで、本発明の測定法によ
る測定値とLipophor SystemによるLDL-MI値との相
関性について検討した。
【0033】(2)本発明による測定 以下の試薬組成に基づいて1チャンネル法によりSmall
dense LDLを測定した。 試薬組成 第1試薬 硫酸デキストラン 0.02w/v% 塩化カルシウム 80mmol/L アジ化ナトリウム 7.7mmol/L 塩化ナトリウム 280mmol/L 第2試薬 硫酸デキストラン 0.02w/v% 塩化カルシウム 80mmol/L アジ化ナトリウム 7.7mmol/L 塩化ナトリウム 60mmol/L
【0034】(3)測定法 日立7170型自動分析装置のR1に第1試薬をセット
し、R3に第2試薬をセットし、ヒト血清30例を測定
した。具体的には、まず検体7μLを反応セルに分注
し、次に第1試薬180μLを分注撹拌して37℃で5
分間反応させ、更に第2試薬90μLを分注撹拌して5
分間反応させた後、その濁度を主波長660nmで測定
した。
【0035】(4)結果 上記ヒト血清をLipophor Systemにより電気泳動を行
い、動脈硬化Vol.25 No1-2:67-70,1997に従って、LD
L−MI値を算出した。その結果を図2に示す。図2に
示すように、本発明の測定法による測定値とLipophor S
ystemによるLDL−MI値とは、良好な相関性を示す
ことが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】各リポ蛋白と血清の濁度を測定した結果を示す
グラフである。
【図2】本発明の測定法による測定値とLipophor Syste
mによるLDL−MI値との相関性を示すグラフであ
る。
フロントページの続き Fターム(参考) 2G045 BB50 CA26 DA64 FA11 GC10 2G054 AA07 AB05 CA21 EA04

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】0を超えて310mmol/Lの範囲にあ
    る1価のカチオンおよび/または0.1〜500mmo
    l/Lの範囲にある2価のカチオンと、ポリアニオンと
    を存在させることを特徴とする検体中のSmall dense L
    DLの測定方法。
  2. 【請求項2】1価のカチオンがNa+、K+、およびLi
    +から成る群から選択される少なくとも1種である請求
    項1記載の測定方法。
  3. 【請求項3】2価のカチオンがCa2+、Mg2+、M
    2+、Co2+、およびSr2+から成る群から選択される
    少なくとも1種である請求項1記載の測定方法。
  4. 【請求項4】ポリアニオンが硫酸多糖類、硫酸アミロペ
    クチン、およびリンタングステン酸から成る群から選択
    される少なくとも1種である請求項1記載の測定方法。
  5. 【請求項5】硫酸多糖類が硫酸デキストラン、ヘパリ
    ン、コンドロイチン硫酸である請求項4記載の測定方
    法。
  6. 【請求項6】第1試薬でカイロミクロン+VLDL+La
    rgeLDLを混濁させ、次いで第2試薬で一価のカチオ
    ン濃度を減少させて、Small dense LDLを混濁させ、
    吸光度の増加としてSmall dense LDLを測定する請求
    項1乃至5記載の方法。
  7. 【請求項7】第1試薬でカイロミクロン+VLDL+La
    rge LDL+Small dense LDLを混濁させ、第2試薬
    で一価のカチオン濃度を増加させてSmall dense LDL
    のみを溶解させて、吸光度の減少としてSmall denseL
    DLを測定する請求項1乃至5記載の方法。
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