JP2002368421A - 多層セラミック基板の製造方法および多層セラミック基板 - Google Patents

多層セラミック基板の製造方法および多層セラミック基板

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JP2002368421A
JP2002368421A JP2001174249A JP2001174249A JP2002368421A JP 2002368421 A JP2002368421 A JP 2002368421A JP 2001174249 A JP2001174249 A JP 2001174249A JP 2001174249 A JP2001174249 A JP 2001174249A JP 2002368421 A JP2002368421 A JP 2002368421A
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ceramic
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multilayer ceramic
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JP2001174249A
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Akira Baba
彰 馬場
Mitsuyoshi Nishide
充良 西出
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Murata Manufacturing Co Ltd
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Murata Manufacturing Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 多層セラミック基板をいわゆる無収縮プロセ
スによって得るために用意される生の積層体において、
基体用セラミック層の厚みに応じて、これに接する拘束
層の厚みを増し、焼成工程において十分な拘束力を及ぼ
せるようにしたとき、厚みの比較的厚い拘束層であって
も、十分に緻密化できるようにする。 【解決手段】 拘束層11〜17に含まれる無機材料粉
末は焼結しないが基体用セラミック層2〜10に含まれ
るセラミック材料粉末が焼結する焼成温度で、生の積層
体1を焼成する工程を経て、多層セラミック基板を製造
しようとする場合、拘束層11〜17に、その軟化点が
焼成温度より低い少なくとも1種類のガラス粉末を含有
させる。ガラス粉末は、焼成工程が終了するまでに拘束
層11〜17に濡れ広がりながら、拘束層11〜17に
含まれる無機材料粉末間の隙間を埋め、それによって、
拘束層11〜17を緻密化するように機能する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、多層セラミック
基板の製造方法およびこの製造方法によって得られた多
層セラミック基板に関するもので、特に、多層セラミッ
ク基板を製造するための焼成工程において無収縮プロセ
スを適用するための拘束層の緻密化を図るための改良に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】多層セラミック基板は、複数の積層され
たセラミック層を備えている。このような多層セラミッ
ク基板には、種々の形態の配線導体が設けられている。
配線導体としては、たとえば、多層セラミック基板の内
部において、セラミック層間の特定の界面に沿って延び
る内部導体膜が形成されたり、特定のセラミック層を貫
通するように延びるビアホール導体が形成されたり、ま
た、多層セラミック基板の外表面上において延びる外部
導体膜が形成されたりしている。
【0003】多層セラミック基板は、半導体チップ部品
やその他のチップ部品等を搭載し、これらの電子部品を
相互に配線するために用いられている。上述した配線導
体は、この相互配線のための電気的経路を与えている。
【0004】また、多層セラミック基板には、たとえば
コンデンサ素子やインダクタ素子のような受動部品が内
蔵されることがある。この場合には、上述した配線導体
としての内部導体膜やビアホール導体の一部によって、
これらの受動部品が与えられる。
【0005】多層セラミック基板は、たとえば、移動体
通信端末機器の分野において、LCR複合化高周波部品
として用いられたり、コンピュータの分野において、半
導体ICチップのような能動素子とコンデンサやインダ
クタや抵抗のような受動素子とを複合化した部品とし
て、あるいは単なる半導体ICパッケージとして用いら
れたりしている。
【0006】より具体的には、積層型セラミック電子部
品は、PAモジュール基板、RFダイオードスイッチ、
フィルタ、チップアンテナ、各種パッケージ部品、複合
デバイス等の種々の電子部品を構成するために広く用い
られている。
【0007】多層セラミック基板をより多機能化、高密
度化、高性能化するためには、上述したような配線導体
を高密度に配置することが有効である。
【0008】しかしながら、多層セラミック基板を得る
ためには、必ず、焼成工程を経なければならないが、こ
のような焼成工程においては、セラミックの焼結による
収縮が生じ、この収縮は多層セラミック基板全体におい
て均一に生じにくく、そのため、配線導体において不所
望な変形や歪みがもたらされることがある。このような
配線導体において生じる変形や歪みは、上述のような配
線導体の高密度化を阻害してしまう。
【0009】そこで、多層セラミック基板を製造するに
あたって、焼成工程において多層セラミック基板の主面
方向での収縮を実質的に生じさせないようにすることが
できる、いわゆる無収縮プロセスを適用することが提案
されている。
【0010】無収縮プロセスによる多層セラミック基板
の製造方法においては、たとえば1000℃以下の温度
で焼結可能な低温焼結セラミック材料が用意されるとと
もに、上述の低温焼結セラミック材料の焼結温度では焼
結しない、収縮抑制用として機能する無機材料粉末が用
意される。そして、焼成することによって目的とする多
層セラミック基板となる生の積層体を作製するにあたっ
ては、低温焼結セラミック材料を含み、かつ積層され
た、複数の生の基体用セラミック層の特定のものの主面
に接するように、無機材料粉末を含む生の拘束層が配置
され、また、基体用セラミック層に関連して、配線導体
が設けられる。
【0011】上述のようにして得られた生の積層体は、
次いで、焼成される。この焼成工程において、拘束層に
含まれる無機材料は実質的に焼結しないため、拘束層に
おいては、収縮が実質的に生じない。このようなことか
ら、拘束層が基体用セラミック層を拘束し、それによっ
て、基体用セラミック層は、厚み方向にのみ実質的に収
縮するが、主面方向での収縮が抑制される。
【0012】その結果、生の積層体を焼成して得られた
多層セラミック基板において不均一な変形がもたらされ
にくくなり、そのため、配線導体において不所望な変形
や歪みがもたらされにくくすることができ、配線導体の
高密度化を可能にする。
【0013】上述したような無収縮プロセスによる多層
セラミック基板の製造方法は、特に、複数の多層セラミ
ック基板を取り出すことが予定された大面積の集合基板
の製造に適用されたとき、その上に搭載されるチップ部
品の実装密度を高めることができるという利点をもたら
すことができる。
【0014】また、たとえば特開2000−31586
4号公報に記載されるように、拘束層を、多層セラミッ
ク基板となるべき積層体の内部に位置させる場合もあ
る。この場合には、焼成工程において、基体用セラミッ
ク層から流動成分の一部が拘束層内に移動し、拘束層に
含まれる無機材料粉末間の隙間を充填して、拘束層が固
着されることになる。
【0015】上述した方法によれば、焼成後に拘束層を
除去する工程が不要になるとともに、多層セラミック基
板にチップ部品等を収容するためのキャビティが設けら
れる場合であっても、キャビティの寸法精度を高めるこ
とができるという優れた利点を奏することができる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、拘束
層が積層体の内部に位置される場合には、通常、基体用
セラミック層の各々に隣接して拘束層が位置される。こ
こで、各基体用セラミック層の主面方向に生じ得る収縮
の大きさは、各基体用セラミック層とこれに隣接する拘
束層との厚みの比率に依存する。
【0017】したがって、各基体用セラミック層の主面
方向での収縮を十分に抑制するためには、基体用セラミ
ック層が比較的厚い場合、これに隣接する拘束層の厚み
も比較的厚くする必要がある。
【0018】また、多層セラミック基板となるべき積層
体が、厚みの互いに異なる少なくとも2種類の基体用セ
ラミック層を備えている場合には、基体用セラミック層
の各厚みに応じて、これに隣接する拘束層の厚みを変化
させ、積層体の積層方向での各部分の局所的な収縮率を
合わせ込み、それによって、積層体全体としての反りや
歪みを低減する必要がある。
【0019】上述のような状況の下、拘束層に対して、
厚みの選択範囲が広いこと、より特定的には、十分に厚
くすることが可能であることが求められる。しかしなが
ら、拘束層が厚くなると、前述したような方法では、拘
束層を十分に緻密化できないという問題に遭遇すること
がある。なぜなら、前述した方法では、拘束層は、焼成
時において、隣接する基体用セラミック層から移動する
流動成分によって固着されるものであるが、拘束層が所
定以上の厚みを有する場合には、流動成分の量または移
動距離が不足するからである。
【0020】このように、拘束層が十分に緻密化されな
いと、得られた多層セラミック基板において、拘束層に
沿う面を介して容易に剥離されたり、拘束層に空孔が生
じ、この空孔内に水分が侵入したり、めっき処理が施さ
れる場合には、めっき液が侵入したりするなど、実用
上、極めて不都合な事態がもたらされる。
【0021】特に、基体用セラミック層に含まれるセラ
ミック材料が流動成分を多く含有していない場合には、
拘束層の厚みについての許容範囲が狭くなり、多層セラ
ミック基板の設計上の自由度を所定以上に確保すること
ができない。
【0022】そこで、この発明の目的は、上述したよう
な問題を解決し得る、多層セラミック基板の製造方法お
よびこの製造方法によって得られた多層セラミック基板
を提供しようとすることである。
【0023】
【課題を解決するための手段】この発明は、簡単に言え
ば、焼成時に流動する流動性成分を拘束層に添加してお
き、この流動性成分によって拘束層の緻密化を図ろうと
するものである。
【0024】より詳細には、この発明は、セラミック材
料粉末を含み、かつ積層された、複数の生の基体用セラ
ミック層と、生の基体用セラミック層の特定のものの主
面に接するようにそれぞれ配置され、かつセラミック材
料粉末の焼結温度では焼結しない無機材料粉末を含む、
複数の生の拘束層と、基体用セラミック層および拘束層
の少なくとも一方に関連して設けられる、配線導体とを
備える、生の積層体を作製する工程と、生の積層体を、
無機材料粉末は焼結しないがセラミック材料粉末が焼結
する焼成温度で焼成する工程とを備える、多層セラミッ
ク基板の製造方法にまず向けられるものであって、上述
した技術的課題を解決するため、拘束層に、その軟化点
が焼成温度より低い少なくとも1種類のガラス粉末を含
ませておくことを特徴としている。
【0025】したがって、焼成工程を実施したとき、上
述のように拘束層に含まれるガラス粉末は、焼成工程が
終了するまでに拘束層に濡れ広がりながら、拘束層に含
まれる無機材料粉末間の隙間を埋め、それによって、拘
束層を緻密化するように機能する。
【0026】この発明において、上述のように拘束層に
含まれるガラス粉末は、焼成工程において、拘束層の焼
結助剤として機能しないものであることが好ましい。
【0027】この発明において、拘束層に添加されるガ
ラス粉末は、非晶質ガラスからなるものであっても、焼
成工程中にその少なくとも一部が結晶化するガラスから
なるものであってもよい。
【0028】ガラス粉末の中心粒径は、好ましくは、5
μm以下とされる。
【0029】また、拘束層中において、無機材料粉末と
ガラス粉末との総体積に対して、ガラス粉末の体積が1
0〜70%となるようにされることが好ましい。
【0030】拘束層に含まれる無機材料粉末としては、
アルミナが好適に用いられる。
【0031】また、無機材料粉末の中心粒径は、5μm
以下であることが好ましい。
【0032】拘束層の厚みは、0.5〜50μmの範囲
内とされることが好ましい。
【0033】ガラス粉末を構成するガラスとしては、当
該ガラスからなる表面積30cm2の平板を40℃の温
度に保たれたpH2のHCl水溶液に6時間浸漬したと
きの重量減少率が5%以下のものが用いられることが好
ましい。
【0034】また、生の基体用セラミック層に含まれる
セラミック材料粉末は、1000℃以下の温度で焼結可
能であることが好ましい。
【0035】上述の場合、ガラス粉末を構成するガラス
は、その軟化点が500〜900℃の範囲内にあること
が好ましい。
【0036】上述したような条件を満たすガラスとして
は、たとえば、SiO2 が40〜60モル%、Al2
3 がSiO2 との合計で50〜70モル%、B2 3
2〜20モル%、BaO、CaO、MgOおよびSrO
から選ばれた少なくとも1種が合計で10〜40モル
%、ならびに、Na2 O、Li2 OおよびK2 Oから選
ばれた少なくとも1種が合計で3〜15モル%、それぞ
れ、含まれる組成を有するものがある。
【0037】また、この発明において、生の基体用セラ
ミック層には、ガラス粉末を含ませなくてもよい。
【0038】また、この発明において、生の積層体を作
製するにあたっては、種々の方法を採用することができ
る。特に、生の拘束層を形成するにあたっては、生の基
体用セラミック層となるセラミックグリーンシートを成
形し、このセラミックグリーンシート上にスクリーン印
刷法によって生の拘束層を形成したり、あるいは、セラ
ミックグリーンシート上で無機材料粉末およびガラス粉
末を含むスラリーをシート状に成形することによって生
の拘束層を形成したりすることができる。
【0039】積層体には、厚みが互いに異なる少なくと
も2種類の拘束層が存在していてもよい。
【0040】また、厚みが互いに異なる少なくとも2種
類の基体用セラミック層が積層体に存在していてもよ
い。この場合、厚みが相対的に厚い基体用セラミック層
には、厚みが相対的に厚い拘束層が隣接し、厚みが相対
的に薄い基体用セラミック層には、厚みが相対的に薄い
拘束層が隣接するような配置状態に選ぶことが好まし
い。
【0041】また、拘束層は、積層体の内部に位置する
ものを含んでいても、積層体の外表面上に位置するもの
を含んでいてもよい。
【0042】上述のように、積層体の外表面上に位置す
る拘束層上には、配線導体としての外部導体膜が形成さ
れてもよい。この外部導体膜にめっきが施されてもよ
い。このように、外部導体膜にめっきを施す場合、この
発明が特に有利に適用される。
【0043】この発明は、また、以上のような製造方法
によって得られた多層セラミック基板にも向けられる。
【0044】また、この発明に係る多層セラミック基板
は、積層された複数の基体用セラミック層と、基体用セ
ラミック層の特定のものの主面に接するようにそれぞれ
配置され、かつ基体用セラミック層を構成するセラミッ
クの焼結温度では焼結しない無機材料粉末を含む、複数
の拘束層と、基体用セラミック層および拘束層の少なく
とも一方に関連して設けられる、配線導体とを含む、積
層体を備え、その構造的特徴として、拘束層は、ガラス
によって無機材料粉末間の隙間が埋められ、それによっ
て緻密化されている。
【0045】
【発明の実施の形態】図1は、この発明の一実施形態に
よる多層セラミック基板の製造方法において、多層セラ
ミック基板を得るために用意される生の積層体1を図解
的に示す断面図である。この生の積層体1を焼成するこ
とによって、多層セラミック基板を得ることができる。
【0046】生の積層体1は、セラミック材料粉末を含
み、かつ積層された、複数の生の基体用セラミック層2
〜10を備えている。これら基体用セラミック層2〜1
0は、その厚みが互いに異なるものを含んでいる。
【0047】基体用セラミック層2〜10に含まれるセ
ラミック材料粉末としては、好ましくは、1000℃以
下の温度で焼結可能なものが用いられる。たとえば、S
iO 2 、Al2 3 、BaCO3 およびB2 3 の各粉
末を混合し、この混合粉末を仮焼して得られた無機組成
物からなるセラミック材料粉末を有利に用いることがで
きる。このセラミック材料粉末は、焼成中に液化する比
較的少量のホウ素リッチ相が焼結助剤として機能するた
め、980℃の温度で焼結可能である。したがって、こ
のような無機組成物を用いると、基体用セラミック層2
〜10にガラス粉末を含有させなくても、1000℃以
下の温度で焼結可能とすることができる。
【0048】上述のように、基体用セラミック層2〜1
0に含まれるセラミック材料粉末が1000℃以下の温
度で焼結可能であれば、後述する配線導体に含まれる導
電成分として、たとえば、銅、銀またはニッケルのよう
な卑金属を用いることができるとともに、後述する拘束
層に含まれる無機材料粉末の材料選択範囲を広げること
ができる。
【0049】基体用セラミック層2〜10は、通常、セ
ラミック材料粉末を含むスラリーをシート状に成形して
得られたセラミックグリーンシートによって与えられ
る。セラミックグリーンシートを作製するため、たとえ
ば、セラミック材料粉末に、バインダ、可塑剤および溶
剤を加えて混練して得られたスラリーを、キャリアフィ
ルム上でシート状に成形することが行なわれる。
【0050】生の積層体1は、生の基体用セラミック層
2〜10の特定のものの主面に接するようにそれぞれ配
置された、複数の生の拘束層11〜17を備えている。
【0051】生のセラミック層11〜17は、まず、基
体用セラミック層2〜10に含まれるセラミック材料粉
末の焼結温度では焼結しない無機材料粉末を含んでい
る。無機材料粉末としては、たとえばアルミナ粉末が有
利に用いられる。また、無機材料粉末の中心粒径は、5
μm以下であることが好ましい。無機材料粉末の中心粒
径が5μmより大きいと、生の基体用セラミック層2〜
10の焼成時の収縮を抑制する効果が低減されるためで
ある。
【0052】生の積層体1は、後述するように、上述の
無機材料粉末については焼結しないが基体用セラミック
層2〜10に含まれるセラミック材料粉末については焼
結する焼成温度で焼成されるが、この焼成温度より低い
軟化点を有する少なくとも1種類のガラス粉末が、拘束
層11〜17に含まれる。このガラス粉末は、非晶質ガ
ラスからなるものであっても、後述する焼成工程中にそ
の少なくとも一部が結晶化するガラスからなるものであ
ってもよい。
【0053】前述したように、生の基体用セラミック層
2〜10に含まれるセラミック材料粉末が1000℃以
下の温度で焼結可能であるとき、このガラス粉末を構成
するガラスは、その軟化点が500〜900℃の範囲内
にあることが好ましい。ガラス軟化点が500℃未満で
あると、焼成工程中において、ガラスが拘束層11〜1
7から流出してしまい、他方、軟化点が900℃を超え
ると、焼成工程中において、ガラスが軟化流動しにくい
ためである。
【0054】また、ガラス粉末を構成するガラスとして
は、当該ガラスからなる表面積30cm2 の平板を40
℃の温度に保たれたpH2のHCl水溶液に6時間浸漬
したときの重量減少率が5%以下のものを用いることが
好ましい。この重量減少率が5%を超えると、必要に応
じて実施されるめっき処理において、拘束層11〜17
中のガラスが溶出し、得られた多層セラミック基板の強
度が低下したり、後述するように、拘束層11および1
7上に形成された外部導体膜18の接合強度が低下した
りするためである。
【0055】上述のように、重量減少率が5%以下であ
るという条件および軟化点が500〜900℃の範囲内
にあるという条件の双方を満足するガラスとして、たと
えば、SiO2 が40〜60モル%、Al2 3 がSi
2 との合計で50〜70モル%、B2 3 が2〜20
モル%、BaO、CaO、MgOおよびSrOから選ば
れた少なくとも1種が合計で10〜40モル%、ならび
に、Na2 O、Li2OおよびK2 Oから選ばれた少な
くとも1種が合計で3〜15モル%、それぞれ、含まれ
る組成を有するものがある。
【0056】ガラス粉末の中心粒径は、5μm以下であ
ることが好ましい。ガラス粉末の中心粒径が5μmより
大きいと、拘束層11〜17の各々の厚みがばらつきや
すいためである。
【0057】また、拘束層11〜17中において、無機
材料粉末とガラス粉末との総体積に対し、ガラス粉末の
体積が10〜70%であることが好ましい。ガラス粉末
の体積が10%を下回ると、拘束層10〜17における
ガラスの量が不足して、これらを緻密化することができ
ず、他方、70%を上回ると、生の基体用セラミック層
2〜10の焼成時の収縮を抑制する効果が弱くなるため
である。
【0058】拘束層11〜17の各々の厚みは、0.5
〜50μmの範囲内にあることが好ましい。厚みが0.
5μm未満であると、実質的な収縮抑制効果を期待でき
ず、他方、厚みが50μmを超えると、多層セラミック
基板の低背化に対して不利であるためである。
【0059】この実施形態では、拘束層11〜17に
は、厚みが互いに異なるものを含んでいる。また、前述
したように、基体用セラミック層2〜10についても、
厚みが互いに異なるものを含んでいる。このような場
合、図1において、その傾向がほぼ現れているように、
基体用セラミック層2〜10のうち、厚みが相対的に厚
いものには、拘束層11〜17のうち、厚みが相対的に
厚いものが隣接し、基体用セラミック層2〜10のう
ち、厚みが相対的に薄いものには、拘束層11〜17の
うち、厚みが相対的に薄いものが隣接するように配置状
態が選ばれることが好ましい。
【0060】なお、拘束層11〜17の各厚みは、上述
のように、基体用セラミック層2〜10の各厚みに応じ
て調整されるほか、基体用セラミック層2〜10の組
成、配線導体の密度、あるいは積層位置等のファクタを
考慮して調整される。すなわち、生の積層体1の各部分
での収縮を同程度に抑制しながら、所望の収縮率を達成
できるように、拘束層11〜17の各厚みが最適化され
る。
【0061】拘束層11〜17を形成するため、上述し
た無機材料粉末およびガラス粉末に、バインダ、可塑剤
および溶剤を加えて混練して得られたスラリーがまず用
意される。そして、拘束層11〜17に隣接する基体用
セラミック層、この実施形態では、基体用セラミック層
2〜5、7、9および10をそれぞれ与えるセラミック
グリーンシート上に、上述したスラリーを用いて、スク
リーン印刷法によって生の拘束層11〜17を形成した
り、これらセラミックグリーンシート上でスラリーをシ
ート状に成形することによって生の拘束層11〜17を
形成したりすることが行なわれる。
【0062】生の積層体1は、さらに、基体用セラミッ
ク層2〜10および拘束層11〜17の少なくとも一方
に関連して設けられる、配線導体を備えている。
【0063】配線導体としては、より具体的には、生の
積層体1の外表面上に形成されるいくつかの外部導体膜
18と、生の積層体1の内部に形成されるいくつかの内
部導体膜19と、基体用セラミック層2〜10の特定の
ものおよび拘束層11〜17の特定のものの少なくとも
一方を貫通するように設けられるいくつかのビアホール
導体20とがある。
【0064】外部導体膜18および内部導体膜19は、
たとえば、金属箔によって形成されたり、導電性ペース
トによって形成されたりすることができる。ビアホール
導体20は、これを設けるための貫通孔に導電性ペース
トを充填することによって形成されることができる。
【0065】このような生の積層体1を得るため、通
常、積層技術が適用される。より具体的には、金型が用
意され、金型内に、まず、生の拘束層11と一体化され
た基体用セラミック層2を与えるセラミックグリーンシ
ートがキャリアフィルムを剥離してから配置される。こ
のとき、拘束層11および外部導体膜18が形成された
側が金型の底面と接するようにされる。
【0066】続いて、拘束層12と一体化された基体用
セラミック層3となるセラミックグリーンシート、拘束
層13と一体化された基体用セラミック層4となるセラ
ミックグリーンシート、拘束層14と一体化された基体
用セラミック層5となるセラミックグリーンシート、基
体用セラミック層6となるセラミックグリーンシート、
拘束層15と一体化された基体用セラミック層7となる
セラミックグリーンシート、基体用セラミック層8とな
るセラミックグリーンシート、拘束層16と一体化され
た基体用セラミック層9となるセラミックグリーンシー
トが、順次、キャリアフィルムを剥離してから積層され
る。
【0067】最後に、拘束層17と一体化された基体用
セラミック層10となるセラミックグリーンシートが、
拘束層17および外部導体膜18を上方に向けた状態で
積層され、その後、金型の上蓋が配置され、生の積層体
1が金型内に密閉される。
【0068】次に、金型を介して、生の積層体1が積層
方向にプレスされる。このプレス工程では、たとえば、
50℃の温度および500kgf/cm2 の圧力が適用
される。
【0069】上述のプレス工程に付された生の積層体1
が、分割されることによって複数の多層セラミック基板
を取り出すことができるようにされたマザー状態のもの
である場合には、プレス後において、個々の多層セラミ
ック基板を与える複数の生の積層体を得るため、切断工
程が実施される。なお、切断工程は、後述する焼成工程
の後に実施されてもよい。
【0070】次に、金型から取り出された生の積層体1
は、脱バインダ処理された後、焼成される。この焼成に
あたっては、生の拘束層11〜17に含まれる無機材料
粉末は焼結しないが生の基体用セラミック層2〜10に
含まれるセラミック材料粉末が焼結する焼成温度が適用
される。たとえば、焼成工程では、還元性雰囲気中にお
いて、980℃の温度で1時間熱処理することが行なわ
れる。
【0071】これによって、基体用セラミック層2〜1
0においては、焼結が達成される。他方、拘束層11〜
17においては、そこに含まれるガラス粉末は、好まし
くは、焼結助剤として機能せず、拘束層11〜17を焼
結させることはないが、焼成工程が終了するまでに拘束
層11〜17に濡れ広がりながら、拘束層11〜17に
含まれる無機材料粉末間の隙間を埋め、それによって、
拘束層11〜17の各々を緻密化するように機能する。
【0072】また、拘束層11〜17は、上述した焼成
工程において、実質的に収縮しない。そのため、拘束層
11〜17は、基体用セラミック層2〜10に対して、
主面方向での収縮を抑制する拘束力を及ぼし、基体用セ
ラミック層2〜10の主面方向での収縮が抑制され、基
体用セラミック層2〜10は、実質的に厚み方向にのみ
収縮する。この場合、生の拘束層11〜17に含まれて
いたガラス粉末は、焼成後において、拘束層11〜17
の緻密化に寄与するばかりでなく、焼成工程中におい
て、上述したような拘束力の向上にも寄与している。
【0073】次に、必要に応じて、外部導体膜18にめ
っきが施される。外部導体膜18が導電成分として、た
とえば銅を含む場合には、ニッケルめっきおよび金めっ
きが施される。
【0074】このようにして、目的とする多層セラミッ
ク基板が完成される。
【0075】図2は、この発明の他の実施形態による多
層セラミック基板の製造方法において作製される生の積
層体21を図解的に示す、図1に相当する断面図であ
る。図2において、図1に示す要素に相当する要素には
同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0076】図2に示した生の積層体21は、図1に示
した生の積層体1と比較して、基体用セラミック層6お
よび8の各々にも隣接して拘束層22および23が配置
されるとともに、拘束層11〜17、22および23の
すべてが互いに同じ厚みを有している点で異なってい
る。
【0077】図3は、この発明のさらに他の実施形態に
よる多層セラミック基板の製造方法において作製される
生の積層体31を図解的に示す、図1または図2に相当
する断面図である。
【0078】図3に示した生の積層体31は、図2に示
した生の積層体21と比較したとき、生の基体用セラミ
ック層2に隣接して生の拘束層11が形成されていない
とともに、生の基体用セラミック層10については、こ
れに隣接して形成された生の拘束層17が、生の基体用
セラミック層9に接するように配置されている点で相違
している。したがって、生の積層体31の外表面上に形
成された外部導体膜18は、生の基体用セラミック層2
上に形成され、生の基体用セラミック層10の外側に向
く面上には、外部導体膜が形成されていない。
【0079】次に、この発明に基づいて実施した実験例
について説明する。
【0080】
【実験例1】実験例1では、実施例1〜4の各々に係る
多層セラミック基板ならびに比較例の各々に係る多層セ
ラミック基板を作製し、焼成による主面方向での収縮率
および反りを評価した。
【0081】(実施例1)実施例1では、図1に示すよ
うな積層構造を有する生の積層体1を作製した。
【0082】より具体的には、基体用セラミック層2〜
10となるセラミックグリーンシートを次のように作製
した。
【0083】すなわち、SiO2 、Al2 3 、BaC
3 およびB2 3 の各粉末を混合し、得られた混合粉
末を仮焼することによって、セラミック材料粉末となる
無機組成物を用意した。この無機組成物は、焼成中に液
化する比較的少量のホウ素リッチ相が焼結助剤として機
能し、980℃の温度で焼結可能な低温焼結セラミック
材料を与えるものである。
【0084】次に、この無機組成物からなる粉末に、バ
インダとしてのポリビニルブチラール、可塑剤としての
ジ−n−ブチルフタレートおよび溶剤としてのトルエン
およびイソプロピレンアルコールを加えて混練してスラ
リーを得、このスラリーをキャリアフィルム上でシート
状に成形することによって、基体用セラミック層2〜1
0の各々となるセラミックグリーンシートを作製した。
【0085】また、基体用セラミック層2〜10の特定
のものを与えるセラミックグリーンシート上で、無機材
料粉末およびガラス粉末を含むスラリーをシート状に成
形することによって、拘束層11〜17を形成した。
【0086】上述の拘束層11〜17に含まれる無機材
料粉末としては、中心粒径が0.5μmのアルミナ粉末
を用い、ガラス粉末としては、中心粒径が1.3μmの
ホウ珪酸ガラス粉末を用い、これらを体積比で6:4に
混合した。
【0087】上述のホウ珪酸ガラスは、SiO2 が55
モル%、Al2 3 が4モル%、B 2 3 が10モル
%、BaOが20モル%、CaOが5.5モル%、Mg
Oが0.5モル%、およびSrOが5モル%、それぞ
れ、含まれる組成のものを用いた。このガラスは、軟化
点670℃の非晶質ガラスである。また、このガラス
は、化学的耐久性に優れており、当該ガラスからなる表
面積30cm2 の平板を40℃の温度に保たれたpH2
のHCl水溶液に6時間浸漬したときの重量減少率が
0.5%であった。
【0088】また、外部導体膜18および内部導体膜1
9は、厚み5μmの銅箔を用いて形成し、ビアホール導
体20は、銅を導電成分として含む導電性ペーストを用
いて形成した。
【0089】また、基体用セラミック層2〜10ならび
に拘束層11〜17の各々の厚みは、表1に示すとおり
とし、表1に示す積層順序に従って積層した。
【0090】
【表1】
【0091】なお、表1において、積層順序は、図1の
下からの順序である。したがって、たとえば、積層順序
「1」の基体用セラミック層は、図1に示した基体用セ
ラミック層2に相当し、積層順序「1」の拘束層は、図
1に示した拘束層11に相当している。
【0092】また、生の積層体1のプレスにあたって
は、50℃の温度で500kgf/cm2 の圧力を付与
する条件を適用した。
【0093】また、焼成工程においては、還元性雰囲気
中において、980℃の温度で1時間熱処理する条件を
適用した。
【0094】また、焼成後において、外部導体膜18に
対して、ニッケルめっきおよび金めっきを施した。
【0095】このようにして得られた多層セラミック基
板において、主面方向での収縮率は0.1%であり、反
りは10μmであった。
【0096】(実施例2)実施例2では、図2に示すよ
うな積層構造を有する生の積層体21を作製した。
【0097】実施例2では、基体用セラミック層2〜1
0ならびに拘束層11〜17、22および23の各厚み
は、表2に示すとおりとし、表2に示す積層順序に従っ
て積層した。
【0098】
【表2】
【0099】その他の点については、実施例1と同様の
条件とした。
【0100】このようにして得られた多層セラミック基
板において、主面方向での収縮率は0.1%であり、反
りは10μmであった。
【0101】(実施例3)実施例3では、図3に示すよ
うな積層構造を有する生の積層体31を作製した。
【0102】実施例3では、基体用セラミック層2〜1
0ならびに拘束層12〜17、22および23の各厚み
は、表3に示すとおりとし、表3に示す積層順序に従っ
て積層した。
【0103】
【表3】
【0104】また、実施例3では、拘束層12〜17、
22および23の形成のために、スクリーン印刷を適用
した。
【0105】また、拘束層12〜17、22および23
に含まれるガラス粉末としては、ホウ珪酸ガラスからな
るものを用いたが、その中心粒径は2.0μmとした。
【0106】また、拘束層12〜17、22および23
に含まれる無機材料粉末とガラス粉末とは、体積比で
7:3の割合で混合した。
【0107】また、ここで用いたホウ珪酸ガラスは、S
iO2 が55モル%、Al2 3 が8モル%、B2 3
が5モル%、BaOが20モル%、CaOが5モル%、
Li 2 Oが5モル%、およびNa2 Oが2モル%、それ
ぞれ、含まれる組成を有するものであり、軟化点が72
0℃のガラスとした。このガラスは、880℃で一部結
晶化するものである。また、このガラスは、化学的耐久
性に優れており、当該ガラスからなる表面積30cm2
の平板を40℃の温度に保たれたpH2のHCl水溶液
に6時間浸漬したときの重量減少率は1.2%であっ
た。
【0108】また、外部導体膜18および内部導体膜1
9の形成のため、銅を導電成分として含む導電性ペース
トを用い、これを厚み5μmをもって形成した。
【0109】その他の条件は、実施例1の場合と同様と
した。
【0110】このようにして得られた多層セラミック基
板において、主面方向での収縮率は0.3%であり、反
りは10μmであった。
【0111】(実施例4)実施例4では、基体用セラミ
ック層および拘束層の各々の厚みは、表4に示すとおり
とし、表4に示す積層順序に従って積層することによっ
て生の積層体を作製した。
【0112】
【表4】
【0113】その他の条件については、実施例1の場合
と同様である。
【0114】このようにして得られた多層セラミック基
板において、主面方向での収縮率は6.2%であり、反
りは1450μmであった。
【0115】(比較例)比較例では、基体用セラミック
層および拘束層の各々の厚みは、表5に示すとおりと
し、表5に示す積層順序に従って積層し、生の積層体を
作製した。
【0116】なお、比較例では、拘束層にガラス粉末を
添加しなかった。
【0117】
【表5】
【0118】その他の条件については、実施例1の場合
と同様とした。
【0119】このようにして得られた多層セラミック基
板において、主面方向での収縮率は8.8%であり、反
りは1360μmであった。
【0120】(考察)実施例1〜3では、基体用セラミ
ック層に含まれる流動成分の量が少ないにも関らず、厚
み6μmといった比較的厚い拘束層であっても、これを
緻密化することができた。なお、この発明に従えば、厚
み50μmの拘束層であっても、これを緻密化できるこ
とを確認している。比較例のように、ガラスを含まない
拘束層では、その厚みが1μmというように薄くても、
これを完全には緻密化し得なかったので、拘束層の緻密
化に対するガラスの効果は明白である。
【0121】しかも、ガラスの添加は、基体用セラミッ
ク層と拘束層との界面での接合力の向上をもたらし、そ
の結果、拘束層による収縮を抑制する能力も高めること
ができる。このことは、拘束層においてガラスが添加さ
れているかいないかの違いしか有していない実施例4と
比較例との比較から明らかである。すなわち、比較例で
は、収縮率が8.8%であるのに対し、実施例4では、
収縮率が6.2%であり、ガラス添加による拘束層の収
縮抑制効果を確認することができる。
【0122】なお、実施例4では、厚みがすべて1μm
の拘束層を形成したため、厚みが150μmといった比
較的厚い積層順序「2」および「3」の基体用セラミッ
ク層に対しては、収縮を抑制する能力が不足し、局所的
に収縮の大きい箇所が生じ、そのため、1450μmと
いった大きな反りが生じることになったが、実施例1〜
3からわかるように、拘束層の厚みをより厚くすること
により、反りを十分に低減することができる。
【0123】また、実施例1〜3からわかるように、最
も厚い150μmの基体用セラミック層に対しても、拘
束層の厚みを6μmにまで厚くすれば、主面方向での収
縮をほぼ完全に抑制できるため、拘束層の厚みを6μm
より厚くする必要はない。
【0124】また、特に、実施例1および2によれば、
主面方向での収縮率はわずか0.1%であり、また実施
例3であっても、0.3%である。このことから、拘束
層の厚みを最適化することにより、多層セラミック基板
の製造ロット間での収縮率のばらつきも低く抑えること
ができることがわかる。
【0125】特に、実施例1によれば、各部分での収縮
率を一定にすることによって反りを低減するため、拘束
層の厚みを各層毎に調整しているため、拘束層が必要以
上に厚くされることがなく、したがって、多層セラミッ
ク基板の低背化に有利である。
【0126】また、特に、実施例2によれば、拘束層の
厚みを一定にしているので、拘束層の厚みを変えること
による工程の煩雑さを招かないようにすることができ
る。
【0127】また、特に、実施例3によれば、各々拘束
層が形成された基体用セラミック層となるセラミックグ
リーンシートを同じ方向に積層するだけでよいので、積
層工程での反転が不要となり、この工程での反転による
煩雑さを回避することができる。
【0128】また、実施例3では、拘束層に含有される
ガラスが一部結晶化するものを用いたが、結晶化する前
に、無機材料粉末間の隙間にガラスが十分濡れ広がるた
め、結晶化によって、拘束層の緻密化が損なわれないこ
とも、実施例3から確認することができる。
【0129】また、実施例1〜4において拘束層に含有
させたガラスは、化学的耐久性に優れているため、外部
導体膜18に対するめっき処理によっても、この外部導
体膜18の接合強度および得られた多層セラミック基板
の強度劣化をほとんど生じないことも確認された。
【0130】
【実験例2】実験例2は、拘束層に添加されるべきガラ
ス粉末を構成するガラスの好ましい組成を見出すために
実施した。
【0131】以下の表6に示すように、ガラスの組成比
(モル分率)を変えた試料1〜8について、軟化点を求
めるとともに、各試料に係るガラスをもって表面積30
cm 2 の平板を作製し、これを40℃の温度に保たれた
pH2のHCl水溶液に6時間浸漬したときの重量減少
率を求めた。
【0132】
【表6】
【0133】表6からわかるように、SiO2 が40〜
60モル%、Al2 3 がSiO2との合計で50〜7
0モル%、B2 3 が2〜20モル%、BaO、Ca
O、MgOおよびSrOから選ばれた少なくとも1種が
合計で10〜40モル%、ならびに、Na2 O、Li2
OおよびK2 Oから選ばれた少なくとも1種が合計で3
〜15モル%といった組成比率条件を満足する試料1〜
4によれば、軟化点が500〜900℃の範囲内にある
という条件と、重量減少率が5%以下であるという条件
との双方を満足することができ、拘束層に含有させるガ
ラスとして適していることがわかる。
【0134】
【実験例3】実験例3は、拘束層に含まれるガラス粉末
を構成するガラスの軟化点および含有量が、主面方向で
の収縮率および拘束層の緻密化に対して及ぼす影響を調
査するために実施した。
【0135】この実験例3では、ガラスの軟化点および
含有量を除いて、前述した実験例1における実施例3の
場合と同じ条件を採用した。
【0136】以下の表7にその結果が示されている。
【0137】
【表7】
【0138】表7に示すように、ガラスの軟化点が50
0〜900℃の範囲内にあり、かつガラスの含有量が1
0〜70体積%の範囲内にある試料11〜15によれ
ば、主面方向での収縮率が0.5%以下と小さく、かつ
拘束層の緻密化について優れた結果を示すことがわか
る。
【0139】
【実験例4】実験例4は、拘束層に添加されるガラスの
前述した重量減少率と、めっき処理前後における外部導
体膜の接合強度の劣化率との関係を調査するために実施
したものである。
【0140】この実験例4では、表8に示すように、重
量減少率の異なるガラスからなるガラス粉末を、同じく
表8に示すような含有量をもって拘束層に含有させ、厚
み3μmをもって形成された拘束層の表面に、銅を含む
導電性ペーストをもって厚み3μmの外部導体膜を形成
し、この外部導体膜の拘束層に対する接合強度を、外部
導体膜にめっき処理を施す前およびめっき処理を施した
後にそれぞれ測定し、その変化を劣化率として求めた。
【0141】その結果が以下の表8に示されている。
【0142】
【表8】
【0143】表8に示すように、重量減少率が5%を超
える試料25および26では、外部導体膜の接合強度の
劣化率が高かったが、重量減少率が5%以下の試料21
〜24によれば、外部導体膜の接合強度の劣化率を低く
抑えることができた。
【0144】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、いわ
ゆる無収縮プロセスを適用する多層セラミック基板の製
造方法において、拘束層に、その軟化点が焼成温度より
低い少なくとも1種類のガラス粉末が含まれているの
で、焼成工程において、このガラス粉末は、焼成工程が
終了するまでに拘束層に濡れ広がりながら、拘束層に含
まれる無機材料粉末間の隙間を埋め、それによって、拘
束層を緻密化するように機能する。
【0145】したがって、拘束層の部分で多層セラミッ
ク基板が剥離したり、拘束層内に水分が侵入して、多層
セラミック基板の特性を劣化させたりするといった問題
を回避することができる。また、拘束層を介してのめっ
き液の侵入も防止でき、めっき液による強度劣化や特性
劣化の問題も回避することができ、多層セラミック基板
の外表面上に位置する拘束層上に形成された外部導体膜
に対するめっき処理を問題なく実施することができる。
【0146】また、拘束層の厚みが増しても、これを良
好に緻密化することができるので、拘束層に隣接する基
体用セラミック層の厚みに応じて拘束層を十分に厚くす
ることができ、基体用セラミック層に対して十分な拘束
力を及ぼすことができる。したがって、生の積層体にお
いて、厚みが互いに異なる少なくとも2種類の基体用セ
ラミック層が存在していても、焼成工程において反りを
生じさせにくいように、拘束層の厚みを選ぶことが容易
になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態による多層セラミック基
板の製造方法において作製される生の積層体1を図解的
に示す断面図である。
【図2】この発明の他の実施形態による多層セラミック
基板の製造方法において作製される生の積層体21を図
解的に示す断面図である。
【図3】この発明のさらに他の実施形態による多層セラ
ミック基板の製造方法において作製される生の積層体3
1を図解的に示す断面図である。
【符号の説明】 1,21,31 生の積層体 2〜10 基体用セラミック層 11〜17,22,23 拘束層 18 外部導体膜 19 内部導体膜 20 ビアホール導体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 5E346 AA12 AA15 AA24 AA43 CC17 CC18 CC32 CC37 CC38 EE27 FF18

Claims (24)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セラミック材料粉末を含み、かつ積層さ
    れた、複数の生の基体用セラミック層と、生の前記基体
    用セラミック層の特定のものの主面に接するようにそれ
    ぞれ配置され、かつ前記セラミック材料粉末の焼結温度
    では焼結しない無機材料粉末を含む、複数の生の拘束層
    と、前記基体用セラミック層および前記拘束層の少なく
    とも一方に関連して設けられる、配線導体とを備える、
    生の積層体を作製する工程と、 前記生の積層体を、前記無機材料粉末は焼結しないが前
    記セラミック材料粉末が焼結する焼成温度で焼成する工
    程とを備え、 前記拘束層には、その軟化点が前記焼成温度より低い少
    なくとも1種類のガラス粉末が含まれている、多層セラ
    ミック基板の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記焼成工程において、前記拘束層に含
    まれる前記ガラス粉末は、前記拘束層の焼結助剤として
    機能しない、請求項1に記載の多層セラミック基板の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 前記ガラス粉末は、非晶質ガラスからな
    る、請求項1または2に記載の多層セラミック基板の製
    造方法。
  4. 【請求項4】 前記ガラス粉末は、前記焼成工程中にそ
    の少なくとも一部が結晶化するガラスからなる、請求項
    1または2に記載の多層セラミック基板の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記ガラス粉末の中心粒径は、5μm以
    下である、請求項1ないし4のいずれかに記載の多層セ
    ラミック基板の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記拘束層中において、前記無機材料粉
    末と前記ガラス粉末との総体積に対し、前記ガラス粉末
    の体積が10〜70%である、請求項1ないし5のいず
    れかに記載の多層セラミック基板の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記無機材料粉末は、アルミナからな
    る、請求項1ないし6のいずれかに記載の多層セラミッ
    ク基板の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記無機材料粉末の中心粒径は、5μm
    以下である、請求項1ないし7のいずれかに記載の多層
    セラミック基板の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記拘束層の厚みは、0.5〜50μm
    の範囲内である、請求項1ないし8のいずれかに記載の
    多層セラミック基板の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記ガラス粉末を構成するガラスとし
    て、当該ガラスからなる表面積30cm2 の平板を40
    ℃の温度に保たれたpH2のHCl水溶液に6時間浸漬
    したときの重量減少率が5%以下のものが用いられる、
    請求項1ないし9のいずれかに記載の多層セラミック基
    板の製造方法。
  11. 【請求項11】 生の前記基体用セラミック層に含まれ
    る前記セラミック材料粉末は、1000℃以下の温度で
    焼結可能である、請求項1ないし10のいずれかに記載
    の多層セラミック基板の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記ガラス粉末を構成するガラスは、
    その軟化点が500〜900℃の範囲内にある、請求項
    11に記載の多層セラミック基板の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記ガラス粉末を構成するガラスは、
    SiO2 が40〜60モル%、Al2 3 が前記SiO
    2 との合計で50〜70モル%、B2 3 が2〜20モ
    ル%、BaO、CaO、MgOおよびSrOから選ばれ
    た少なくとも1種が合計で10〜40モル%、ならび
    に、Na2 O、Li2 OおよびK2 Oから選ばれた少な
    くとも1種が合計で3〜15モル%、それぞれ、含まれ
    る組成を有する、請求項1ないし12のいずれかに記載
    の多層セラミック基板の製造方法。
  14. 【請求項14】 生の前記基体用セラミック層は、ガラ
    ス粉末を含まない、請求項1ないし13のいずれかに記
    載の多層セラミック基板の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記生の積層体を作製する工程は、生
    の前記基体用セラミック層となるセラミックグリーンシ
    ートを成形する工程と、前記セラミックグリーンシート
    上にスクリーン印刷法によって生の前記拘束層を形成す
    る工程とを含む、請求項1ないし14のいずれかに記載
    の多層セラミック基板の製造方法。
  16. 【請求項16】 前記生の積層体を作製する工程は、生
    の前記基体用セラミック層となるセラミックグリーンシ
    ートを成形する工程と、前記セラミックグリーンシート
    上で前記無機材料粉末および前記ガラス粉末を含むスラ
    リーをシート状に成形することによって生の前記拘束層
    を形成する工程とを含む、請求項1ないし14のいずれ
    かに記載の多層セラミック基板の製造方法。
  17. 【請求項17】 前記積層体において、厚みが互いに異
    なる少なくとも2種類の前記拘束層が存在する、請求項
    1ないし16のいずれかに記載の多層セラミック基板の
    製造方法。
  18. 【請求項18】 前記積層体において、厚みが互いに異
    なる少なくとも2種類の前記基体用セラミック層が存在
    し、厚みが相対的に厚い前記基体用セラミック層には、
    厚みが相対的に厚い前記拘束層が隣接し、厚みが相対的
    に薄い前記基体用セラミック層には、厚みが相対的に薄
    い前記拘束層が隣接する、請求項17に記載の多層セラ
    ミック基板の製造方法。
  19. 【請求項19】 前記拘束層は、前記積層体の内部に位
    置するものを含む、請求項1ないし18のいずれかに記
    載の多層セラミック基板の製造方法。
  20. 【請求項20】 前記拘束層は、前記積層体の外表面上
    に位置するものを含む、請求項1ないし19のいずれか
    に記載の多層セラミック基板の製造方法。
  21. 【請求項21】 前記配線導体は、前記積層体の外表面
    上に位置する前記拘束層上に形成される外部導体膜を含
    む、請求項20に記載の多層セラミック基板の製造方
    法。
  22. 【請求項22】 前記外部導体膜にめっきを施す工程を
    さらに備える、請求項21に記載の多層セラミック基板
    の製造方法。
  23. 【請求項23】 請求項1ないし22のいずれかに記載
    の製造方法によって得られた、多層セラミック基板。
  24. 【請求項24】 積層された複数の基体用セラミック層
    と、 前記基体用セラミック層の特定のものの主面に接するよ
    うにそれぞれ配置され、かつ前記基体用セラミック層を
    構成するセラミックの焼結温度では焼結しない無機材料
    粉末を含む、複数の拘束層と、 前記基体用セラミック層および前記拘束層の少なくとも
    一方に関連して設けられる、配線導体とを含む、積層体
    を備え、 前記拘束層は、ガラスによって前記無機材料粉末間の隙
    間が埋められ、それによって緻密化されている、多層セ
    ラミック基板。
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