JP2002361687A - 射出成形型の付着物除去方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 射出成形ラインの稼動を停止せず、また、射
出成形型の分解をすることなくキャビティ内から不揮発
成分を排出する。 【解決手段】 可動型２と固定型３とに区画されたキャ
ビティ４内に樹脂を射出して成形するに際し、成形後か
ら型開きの途中までキャビティ４内に高圧ガスを供給
し、型開きの際に可動型２と固定型３との重ね合わせ面
間に形成される隙間から外部へ高圧ガスを噴出させてキ
ャビティ４内を清掃する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、射出成形型に関
し、特に、可動型と固定型との隙間から高圧ガスを噴出
させてキャビティ内で発生した樹脂の不揮発成分を除去
するようにした射出成形型の付着物除去方法に関するも
のである。

【０００２】

【従来の技術】一般に、射出成形機には可動型と固定型
とから成る射出成形型が備えられており、可動型と固定
型とで形成されたキャビティ内に溶融樹脂を射出して成
形する。この種、従来の射出成形型では可動型と固定型
の型合わせ面に、ガスベントとしてキャビティ内の空気
とガスとを抜くための僅かな隙間(クリアランス)と、こ
の隙間に連通する通気口とを設け、隙間の大きさを、キ
ャビティ内の空気及び溶融樹脂から放出されたガス(以
下、キャビティ内雰囲気という。)のみが通過できる微
少な大きさに設定して、キャビティ全体に溶融樹脂を行
き渡らせるようにしている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】このように、従来の射
出成形型では、キャビティ全体に溶融樹脂を行き渡ら
せ、溶融樹脂をキャビティ面に密着した状態で硬化させ
ることによって、表面及び内部に欠陥のない射出成形品
を成形している。しかし、溶融樹脂から不揮発成分(不
揮発成分：燃焼を防止するための難燃剤や樹脂の流動性
を良くするための添加剤等）が滲み出し、これが冷えて
キャビティ面、及びランド等に付着したときは、この付
着物によってキャビティ内雰囲気の排出不良が発生し、
成形品の歩留まりが悪化することがある。また、不揮発
成分の付着物の量が増えると成形品に不揮発成分の付着
物が付着してしまうという別の問題もある。

【０００４】このため、不揮発成分の付着物を１日に１
回除去するか、又は、キャビティ内に負圧を作用させて
不揮発成分を外部に排出する真空引き回路を設け、溶融
樹脂がキャビティに充填されている状態でキャビティ内
雰囲気を外部に排出した後、成形品を取り出すという操
作がなされている。しかし、前者の場合は、清掃のため
にラインを一時、停止する必要があること、射出成形型
の分解のために多大な労力と時間とが必要となること等
の問題がある。また、後者の真空引きの場合は、たかだ
か１気圧の気圧差では充分な清掃効果が発揮されず、信
頼性が低いという問題がある。

【０００５】そこで、射出成形ラインの稼動を停止せ
ず、また、射出成形型の分解をすることなくキャビティ
内から不揮発成分を排出できるようにするために解決す
べき技術的課題が生じるのであり、本発明はこの課題を
解決することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決
するために、可動型と固定型とで形成されたキャビティ
内に樹脂を射出して成形する射出成形型において、成形
後から型開きの途中までキャビティ内に高圧ガスを供給
し、型開きの際に可動型と固定型との型合わせ面間に形
成される隙間から外部へ高圧ガスを噴出させて樹脂の不
揮発成分を排出するようにした射出成形型の付着物除去
方法を提供するものである。

【０００７】このように、成形後、型開きの途中までキ
ャビティ内に高圧ガスを供給し、型開きの際に、可動型
と固定型との型合わせ面間に形成される隙間から外部へ
高圧ガスが噴出されるようにすると、噴出した高圧ガス
の勢いによってキャビティ内の不揮発成分が除去される
とともに、噴出した高圧ガスの圧力、勢いによってキャ
ビティ面及び可動型と固定型との型合わせ面が清掃され
る。

【０００８】

【発明の実施の形態】まず、図１を参照して本発明にか
かる射出成形型の付着物除去方法を説明する。図１は本
発明の一実施の形態にかかる射出成形型を示す。射出成
形型１は、可動型２と固定型３とで主要部が構成されて
おり、固定型３の型合わせ面に可動型２の型合わせ面が
密着した型合わせ状態で、相互のキャビティ４に溶融樹
脂を射出して成形品を成形する。

【０００９】可動型２と固定型３には、それぞれキャビ
ティ４内に連通するガス通路２１，２２を設け、このガ
ス通路２１，２２を介してキャビティ４内に高圧ガスを
供給する。可動型２と固定型３とのキャビティ４に溶融
樹脂の射出を完了した直後から成形品の取り出しのため
可動型２が固定型３から所定距離離間されるまでの間、
可動型２と固定型３のガス通路２１，２２に高圧ガスの
供給を継続し、この間、可動型２と固定型３との型合わ
せ面間に形成される隙間から高圧ガスを噴出させ、高圧
ガスの勢いと圧力により、キャビティ４内から不揮発成
分を除去し、外部へと排出する。この場合、型開きの初
期に、可動型２の移動速度を微少速度として型開き量を
微少とすると、高圧ガスが可動型２と固定型３との微少
なクリアランスから全方向に噴出されるので、不揮発成
分が効果的に除去されるとともに、可動型２と固定型３
との型合わせ面に沿って移動する高圧ガスによって、可
動型２と固定型３との型合わせ面が清掃される。このた
め相互の型合わせが良好となり、成形品の成形精度が向
上する。

【００１０】なお、不揮発成分の排出に対する信頼性を
より向上するには、可動型２及び固定型３とに、キャビ
ティ内雰囲気を真空引きにより排出する空気圧回路(図
示せず)を設けて、前記ガス通路２１，２２による高圧
ガスの噴出前にキャビティ内雰囲気を排出しておき、こ
の後に、ガス通路２１，２２に高圧ガスを供給して不揮
発成分を排出してもよい。このようにすると、長期に及
んでメンテナンスフリーとすることができる。

【００１１】次に、図２乃至図５を参照して本発明にか
かる射出成形型の付着物除去方法を実施する装置の具体
的例を説明する。図２は射出成形型の内部構造を示す断
面図、図３は図２の要部詳細拡大断面図、図４は可動型
を固定型側から見た平面図、図５はキャビティ内に高圧
ガス、例えば、高圧空気を供給するための空気圧回路図
である。図２及び図３に示されるように、射出成形型１
は可動型２と固定型３とに分割されている。固定型３に
は、可動型２のキャビティ４ａと固定型３のキャビティ
４ｂとで形成されたキャビティ４内に溶融樹脂を射出す
るためのノズル５が取り付けられていて、ノズル５に、
溶融樹脂を加圧状態で供給するための樹脂圧送供給装置
(図示せず)が取り付けられている。

【００１２】可動型２は、固定ベース６に取り付けられ
ている一対のガイドピン７，７と、一対の押し出しピン
８，８に嵌合している。一対のガイドピン７，７及びこ
れを案内するガイド孔９，９は、固定型３の型合わせ面
に可動型２の型合わせ面が正確に重ねられるよう、前記
固定ベース６と可動型２とにそれぞれ取り付けられてお
り、前記押し出しピン８，８及びこれを摺動自在に案内
するための押し出しピン案内孔８ａ，８ａは、可動型２
の移動によって、押し出しピン８，８の先端部が可動型
２側のキャビティ４ａ内に相対的に突き出されるよう、
それぞれ固定ベース６と可動型２とに取り付けられてい
る。

【００１３】可動型２にはキャビティ内雰囲気のみを排
出できるようにするための隙間がランド１０と固定型３
の型合わせ面によって形成されている。ランド１０は可
動型２の型合わせ面で且つ可動型２側のキャビティ４ａ
(図１参照)との連接部に全周に及んで設けられており、
ランド１０の上方側で可動型２のキャビティ４ａと連通
している。また、可動型２の型合わせ面には、図４に詳
細に示されるように、ランド１０と固定型３の型合わせ
面との間の隙間を通過するキャビティ内雰囲気を集合さ
せて排気するためのリング状の溝１１と複数の通気口１
２，１２，１２，１２とが設けられている。前記溝１１
はランド１０を挟んで可動型２側のキャビティ４ａの外
側に設けられ、各通気口１２，１２，１２，１２は溝１
１を挟んで可動型２側のキャビティ４ａ側と反対側に設
けられている。溝１１はランド１０を全周に及んで取り
囲んでおり、各通気口１２，１２，１２，１２は一端が
リング状の溝１１に開口し、他端が可動型２の外側面に
開口している。

【００１４】従って、前記可動型２と固定型３との型合
わせ面が互いに密着した型合わせ状態で、スクリュー式
などの樹脂圧送供給装置を作動し、樹脂圧送供給装置か
ら定量の溶融樹脂をキャビティ４に圧送すると、キャビ
ティ内雰囲気は、溶融樹脂の押し出し圧力によって前記
ランド１０と固定型３の型合わせ面との微少な隙間から
リング状の溝１１に排出され、溝１１と連通する各通気
口１２，１２，１２，１２から外部ヘと排出される。一
方、溶融樹脂はキャビティ内雰囲気の排出に伴って、キ
ャビティ４内全体に行き渡り、キャビティ４の内面と密
着した状態で硬化する。このような過程では溶融樹脂か
ら不揮発成分が滲み出し、特に、ランド１０等の狭い間
隙部や型の隅部に蓄積される傾向がある。

【００１５】そこで、図３に詳細に示すように、固定型
３にノズル５を取り付けるホルダ部１３の外周面と、可
動型２に押し出しピン８，８を取り付ける押し出しピン
取り付け部１５の外周面とに、高圧ガスの通過を可能と
するためのランド１７，１８と、各ランド１７，１８に
連通する通気口１９，２０とを設け、通気口１９，２０
にガス通路２１，２２を連結する。そして、図５に示す
ように、ガス通路２１，２２を高圧ガスを供給するタン
ク２３にガス供給通路２４を介して連結する。なお、前
記タンク２３には、タンク内圧を検出するセンサ(図示
せず)と、タンク内圧を設定するための圧力調節弁(図示
せず)とを設け、圧力調節弁によりタンク２３に接続さ
れているコンプレッサ２５の駆動回路の作動／停止を切
換えてタンク内圧を所定圧に調圧する。

【００１６】ガス供給通路２４には、高圧ガスの供給タ
イミング及び供給時間を設定するための制御弁２６を介
設し、制御弁２６を制御するための制御装置２７に、成
形完了時期を検知するための検知手段Ｓを接続する。前
記制御装置２７は、タイマー、リレー、スピードコント
ローラ等を備えたシーケンス回路(シーケンサーを含む)
又はメモリ、Ｉ／Ｏ、ＣＰＵ等を中心とするマイクロコ
ンピュータからなり、検知手段Ｓは前記樹脂圧送供給装
置の樹脂供給量を制御する定量センサ(図示せず)と、前
記可動型２の移動位置を検知する可動型位置検出センサ
(図示せず)とから構成する。なお、図５中、符号２９は
ミストセパレータである。

【００１７】制御装置２７は、定量センサにより溶融樹
脂の定量供給が完了し且つ、前記可動型位置検出センサ
により可動型２が型合わせ位置に移動されたときを、射
出成形型１の成形完了時として、これより可動型２が所
定の型開き位置に移動されるまで、制御弁２６を開作動
するようプログラムされていて、型開きの直前には、ラ
ンド１０と固定型３の型合わせ面との隙間に高圧ガスの
圧力を作用させ、型開きの際に、可動型２と固定型３と
の型合わせ面間に形成される隙間に高圧ガスの圧力を作
用させてこの隙間から一気に噴出させる。従って、この
実施の形態にかかる装置にあっても図１に示した実施の
形態の方法と同様に、キャビティ４内で発生した不揮発
成分がキャビティ４外に排出され、不揮発成分の残留に
起因した成形品の成形不良及び成形品に対する不揮発成
分の付着が防止される。また、各ガス通路２１，２２に
高圧ガスを供給し、この高圧ガスの圧力を成形品２８の
筒部外周面に外側から加えると、筒部の抜き勾配を０と
した場合でも押し出しピン８，８の押し出し力によって
成形品２８がスムーズに押し出される。

【００１８】なお、型開きの初期のみ可動型２の速度を
緩速又は微速に設定して高圧ガスによるキャビティ４の
清掃効果を向上してもよい。また、型開き開始直後、可
動型２と固定型３との型合わせ面間の隙間の大きさを所
定時間微少に制限し、所定時間経過後、可動型２の移動
速度を通常の型開き速度に戻すことによって、高圧ガス
によるキャビティ４の清掃効果を向上してもよい。

【００１９】このようにすると、可動型２と固定型３と
の型合わせ面相互の隙間の急激な広がりが防止され、可
動型２と固定型３との微少な隙間に作用する高圧ガスの
作用時間が長くなるので、不揮発成分に対する清掃効果
が飛躍的に向上し、清掃の周期が大幅に引き延ばされ
る。

【００２０】また、前記可動型２の型合わせ面に設けら
れたガスベントとしてのランド１０と固定型３の型合わ
せ面との隙間、ランド１７，１８とこれを嵌合する嵌合
部との隙間は、成形する材料の粘度に対応して設定され
る。例えば、ＰＣ(ポリカーボネート)を成形材料とする
場合には、隙間の大きさは１０〜３０μとされ、ＰＯＭ
(ポリアセタール)を成形材料とする場合には、隙間の大
きさは５〜１０数μとされるが、大まかにはランド１０
と固定型３の型合わせ面との隙間、ランド１７，１８と
これを嵌合する型側の嵌合部との隙間の大きさは、１０
μ前後に設定される。また、ランドの長さは略１．８ｍ
ｍ前後とされる。

【００２１】さらに、可動型２及び固定型３に、真空引
きによりキャビティ内雰囲気を排出する空気圧回路(図
示せず)を設け、前記制御装置２７による高圧ガスの噴
き出し前に、ランド１０と固定型３の型合わせ面のクリ
アランスからキャビティ内雰囲気を排出し、この後に、
高圧ガスにより不揮発成分を排出するようにすると、清
掃の信頼性が大幅に向上し、長期のメンテナンスフリー
が達成される。また、この実施の形態では、制御装置２
７により、自動的にキャビティ４内の付着物の清掃がな
されるようにしたが、前記制御弁２６を手動スイッチに
より切換えて清掃をするようにしてもよい。このよう
に、本発明はその技術思想の及ぶ範囲内で種々の改変が
可能であり、本発明はこの改変された発明に及ぶことは
もちろんである。

【００２２】

【発明の効果】本発明は前記一実施の形態に詳述したよ
うに、可動型と固定型とで形成されたキャビティ内に樹
脂を射出して成形するに際して、成形後から型開きの途
中までキャビティ内に高圧ガスを供給し、型開きの際に
可動型と固定型との重ね合わせ面間に形成される隙間か
ら外部へ高圧ガスを噴出させてキャビティ内を清掃する
ので、付着物の清掃周期を大幅に長くすることができ
る。また、ラインの停止周期を大幅に長くすることがで
きるので、量産性が向上し、コストダウンを達成でき
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施の形態を示し、射出成形型の外
観及び内部を示す斜視図である。

【図２】本発明の一実施の形態を示し、射出成形型の内
部構造を示す断面図である。

【図３】本発明の一実施の形態を示し、図２の要部詳細
拡大断面図である。

【図４】本発明の一実施の形態を示し、可動型を固定型
側から見た平面図である。

【図５】本発明の一実施の形態を示し、空気圧回路の一
例を示すブロック図である。

【符号の説明】

２ 可動型 ３ 固定型 ４ キャビティ

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 可動型と固定型とで形成されたキャビテ
   ィ内に樹脂を射出して成形する射出成形型において、成
   形後から型開きの途中までキャビティ内に高圧ガスを供
   給し、型開きの際に可動型と固定型との型合わせ面間に
   形成される隙間から外部へ高圧ガスを噴出させて樹脂の
   不揮発成分を排出するようにしたことを特徴とする射出
   成形型の付着物除去方法。