JP2002329564A - スパークプラグの製造方法及び加締め用金型 - Google Patents
スパークプラグの製造方法及び加締め用金型Info
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Abstract
おける主体金具の各種寸法が寸法公差内から逸脱するこ
とを抑制するスパークプラグの製造方法及びそれに使用
される加締め用金型を提供する。 【解決手段】 主体金具1の加締め予定部200を、該
主体金具1内に挿入された軸線方向に伸びる絶縁体2の
外周面に対して加締め固定する際、加締め用金型111
として、主体金具1の加締め予定部200と接触・摺動
する面200aに、非晶質炭素相を主体としてなる硬質
炭素被膜が形成されたものを使用する。
Description
製造方法及びそれに使用される加締め用金型に関する。
鋼等の鉄系材料で構成されている。そして、腐食防止の
ため主体金具の表面に亜鉛メッキ又はニッケルメッキ等
の金属メッキ層を施したり、さらにこれら金属メッキ層
が形成された後の表面にさらにクロメート被膜を施した
りする方法が行なわれている。これら表面処理のうちで
クロム成分として六価クロムが含有されるクロメート被
膜(以下、六価クロメート被膜ともいう)は、特に防食
性が良好でありスパークプラグに好適に使用されてい
る。しかしながら、六価クロメート被膜はそのクロム成
分として六価クロムを含有しているため、環境保護が高
まりつつある昨今ではしだいに敬遠される傾向にあり、
将来全廃しようとの検討も進められている。
クロメート被膜、つまりクロム成分の略全てが三価クロ
ムであるクロメート被膜(以下、三価クロメート被膜と
もいう)の開発が比較的早くから行なわれていた。この
ようなクロメート被膜は六価クロムの含有量が比較的低
い処理浴によって形成可能であり、また、全く六価クロ
ムが含有しない処理浴からも形成することができる。
おいては、厚い膜厚のものを形成することが困難であっ
たため、六価クロメート被膜と比較して良好な耐食性を
得るのが困難であった。しかし、処理浴の開発によりク
ロメート被膜の膜厚を厚くすることが可能となり、良好
な耐食性を確保できることとなった。したがって、六価
クロメート被膜とともに、スパークプラグの主体金具に
おける腐食防止に好適に使用される傾向にある。
部に挿入された先端側に中心電極を配置した絶縁体の外
側に取付ける方法として、筒状に形成された主体金具の
後端部周縁(加締め予定部)を絶縁体の外周面に向けて
屈曲させて加締め固定する方法が一般的に行われてい
る。
に三価クロメート被膜が形成されているものを使用する
と、加締め固定後に主体金具の各種寸法が寸法公差内か
ら逸脱する場合が目立って多くなった。この各種寸法の
寸法公差内からの逸脱(以下、これを寸法ずれともい
う)は、六価クロメート被膜といった他の表面処理を主
体金具に行った場合でも確認される場合があるが、特に
三価クロメート被膜が形成されている場合において顕著
であった。これらの各種寸法ずれは十分な加締め固定を
阻害する。特に工具係合部の対辺や加締め高さ等の寸法
ずれが過大になると、主体金具の内周面と絶縁体との間
に充填される滑石の充填密度や、スパークプラグ自体の
気密性が低下したりするため好ましくない。そこで、こ
れを抑制するために、主体金具を絶縁体に加締め固定す
る際に用いられる加締め用金型として、加締め予定部の
圧縮スクロールを深くしたものも使用されている。加締
め予定部の圧縮スクロールを深くすることにより工具係
合部の対辺寸法の拡大は抑制されやすくなる。
ような加締め用金型にあっても、使用当初は効果がある
が主体金具の加締め固定を繰り返すことにより該効果が
薄れ、加締め固定後の主体金具の各種寸法ずれが目立つ
ようになる。このような寸法ずれは、主体金具に下地金
属メッキ層としての亜鉛メッキ層を形成し、その上に三
価クロメート被膜を形成した場合において特に顕著であ
ったが、他の表面処理を施した場合であっても発生する
傾向にあった。
締め固定を繰り返しても、加締め固定後における主体金
具の各種寸法が寸法公差内から逸脱することを抑制する
スパークプラグの製造方法及びそれに使用される加締め
用金型を提供することにある。
を解決するために、本発明のスパークプラグの製造方法
は、機関取付けのための工具係合部を有する筒状の主体
金具の加締め予定部を、該主体金具内に挿入された軸線
方向に伸びる絶縁体の外周面に対して加締め固定するス
パークプラグの製造方法であって、前記加締め固定にお
ける加締め用金型として、前記主体金具の前記加締め予
定部と接触・摺動する面に、非晶質炭素相を主体として
なる硬質炭素被膜が形成されたものを使用することを特
徴とする。
造方法に使用される、本発明の加締め用金型は、機関取
付けのための工具係合部を有する筒状の主体金具の加締
め予定部を、該主体金具内に挿入された軸線方向に伸び
る絶縁体の外周面に対して加締め固定するために使用さ
れるスパークプラグの加締め用金型であって、前記主体
金具の前記加締め予定部と接触・摺動する面に、非晶質
炭素相を主体としてなる硬質炭素被膜が形成されている
ことを特徴とする。
起こるのは、加締め固定時に望まざる応力が主体金具に
働いて主体金具の望まざる変形を誘発するためである。
この望まざる応力を低減させるためには、加締め用金型
の主体金具と接触・摺動する面と、主体金具との間の滑
り摺動性を向上させる事が有効である。そこで本発明者
らは鋭意検討の結果、加締め用金型として、主体金具の
加締め予定部と接触・摺動する面に、非晶質炭素相を主
体としてなる硬質炭素被膜が形成されたものを使用すれ
ば、加締め固定における滑り摺動が良好に行われ、加締
め固定後の各種寸法ずれを効果的に抑制することができ
ることを見い出し本発明の完成に至ったものである。
としてなる硬質炭素被膜」とは、膜の主体をなす炭素の
骨格構造が非晶質であり、そのビッカース硬さが150
0kg/mm2以上のものをいう。なお、被膜の硬さ
は、例えば、ダイナミック超微小硬さ試験機によって測
定できる。このような硬質炭素被膜のうちで、非晶質中
の骨格構造を構成する結合に炭素のダイヤモンド結合を
多く含んでいるものは、DLC(Diamonnd Like Carbo
n)被膜とも称され、ダイヤモンドに類似の硬度を有す
る。そのため、高硬度が要求される部材の表面に被膜さ
れて使用されることが多い。また、DLC被膜に代表さ
れる硬質炭素被膜は、摩擦係数が特に小さいため、他部
材との間の滑り摺動性を向上させる効果がある。本発明
においては、このようなDLC被膜に代表される非晶質
炭素相を主体にしてなる硬質炭素被膜を加締め用金型に
形成することにより、主体金具の加締め予定部との間の
滑り摺動性を向上させようとしたものである。なお、本
明細書において「主体に」、あるいは「主に」とは、そ
の対象となる組織中において含有量(質量%)が最も多
いものをいう。
少なくとも前記加締め予定部の外周面に、亜鉛メッキ又
はニッケルメッキ処理を施した後、該表面にさらにクロ
メート処理を施したもの、あるいは、Niメッキ処理の
みを施したものを使用できる。これらの表面処理は、ス
パークプラグの主体金具に一般的に行なわれている処理
である。本発明では、これらの一般的な表面処理を施し
た主体金具を加締め固定する際において、各種寸法の寸
法公差からのずれを抑制できるので、産業上大きな効果
を有する。
ト被膜は、六価クロメート被膜及び三価クロメート被膜
のどちらの場合であってもよい。すなわち、三価クロメ
ート被膜を形成した場合における主体金具の各種寸法ず
れが特に顕著であり、本発明により、該寸法ずれが効果
的に抑制されるものであるが、六価クロメート被膜を形
成した場合においても、本発明を適用することの効果
(すなわち、各種寸法ずれのより一層の抑制)が、十分
に得られるものである。さらに、本発明は、上記のよう
に主体金具にクロメート皮膜を形成した場合にとどまら
ず、Niメッキ処理のみをほどこした場合においても、
同様の効果が得られるものである。
属メッキ及び/又はクロメート被膜を形成した場合、従
来の加締め用金型を使用すると、該加締め用金型の使用
頻度(加締め固定の回数)が増すにつれて、加締め固定
後の主体金具の加締め部における、メッキ剥離あるいは
メッキ荒れ等のメッキの損傷が酷くなる傾向にあった。
しかしながら、本発明の加締め用金型を使用すると、該
加締め用金型の使用頻度が増しても(多数回加締め固定
を行っても)、従来の加締め用金型を使用した場合と比
較して、メッキ剥離あるいはメッキ荒れ等のメッキの損
傷が発生しにくいという効果がある。具体的には、本発
明の加締め用金型を使用した場合、従来金型と比較し
て、10倍以上の回数を使用しても、主体金具の加締め
部においてメッキの損傷が発生しない。
合、主体金具は、含有されるクロム成分の95質量%以
上が三価クロム成分である膜厚0.2〜0.5μmのク
ロメート被膜が、少なくとも前記加締め予定部の外周面
に形成されているものとしてもよい。含有されるクロム
成分の95質量%以上が三価クロムである当該クロメー
ト被膜(広義の三価クロメート被膜とする)は、六価ク
ロムの含有量が5質量%未満と少ないため、該クロメー
ト被膜を使用することの環境対策上の効果は大きい。な
お、上記クロメート被膜は実質的に六価クロムを含有し
ないのが環境保護上さらに望ましい。このような、三価
クロメート被膜においては、前述のとおり加締め固定に
おける主体金具の各種寸法ずれが、特に顕著であるの
で、本発明の効果がより一層期待できる。
れば、主体金具に形成される三価クロメート被膜の膜厚
は0.2〜0.5μmに設定するのがよい。膜厚を0.
2μm以上とすることにより、温度が上昇しやすく酸の
アタック等も受けやすいというスパークプラグ特有の使
用状況であっても、三価クロメート被膜の耐久性を十分
に確保することができる。一方、膜厚が0.5μmを超
えると、加締め固定時に皮膜にクラックが生じたり、あ
るいは被膜の脱落等が発生し、却って耐久性が損なわれ
ることになる。三価クロメート被膜の膜厚は望ましくは
0.3〜0.5μmに設定するのがよい。
ト被膜においては、加締め固定時における各種寸法ずれ
が、特に発生する傾向にある。これは、三価クロメート
被膜の形成が湿式法で行なわれるため、被膜中の含水率
が相対的に高くなり、前述のような膜厚においては、ク
ロメート皮膜の特に表面部分に該水分が過剰に分布する
ためであると考えられる。つまり、この水分のために摺
動相手となる加締め用金型との間で望まざる吸着力が働
き、これらの間の滑り摺動性が損なわれ、寸法ずれが生
じると考えられる。
質炭素被膜を形成することにより、主体金具上の三価ク
ロメート被膜と加締め用金型との水分による吸着を抑制
し、滑り摺動を良好に行うことができる。そして、ひい
ては加締め固定の際の各種寸法ずれを抑制することがで
きる。
成後、さらにその上から、該三価クロメート被膜を形成
した場合には、特に寸法ずれの発生が顕著であったが、
これは、加締め固定を繰り返すことにより、加締め用金
型に亜鉛及びクロム等の成分が付着して、加締め用金型
と主体金型との間の滑り摺動が阻害されるためであると
推測できる。実際、使用後の加締め用金型の表面を観察
すると、これらの成分が付着している様子が観察されて
いる。本発明は、このような状況でも効果を発揮する。
これは、硬質炭素被膜の形成により加締め用金型への亜
鉛及びクロム等の付着が抑制され、主体金型との間で良
好な滑り摺動が継続されるためであると考えられる。
て図面を用いて説明する。図1は本発明により製造され
るスパークプラグ100を示すものである。筒状の主体
金具1、先端部21が突出するようにその主体金具1の
内側に嵌め込まれた絶縁体2、先端に形成された放電部
31を突出させた状態で絶縁体2の内側に設けられた中
心電極3、及び主体金具1に一端が溶接等により結合さ
れるとともに、他端側が側方に曲げ返されて、その側面
が中心電極3の放電部31と対向するように配置された
接地電極4等を備えている。また、接地電極4には上記
放電部31に対向する放電部32が形成されており、そ
れら放電部31と放電部32とに挟まれた隙間に火花放
電ギャップgが形成されている。なお、主体金具1の表
面には、亜鉛メッキ層41及びクロメート皮膜層42が
形成されている。
アルミニウム等のセラミック焼結体により構成され、そ
の内部には自身の軸方向に沿って中心電極3を嵌め込む
ための貫通孔6を有している。また主体金具1は、低炭
素鋼等の金属により円筒状に形成されており、スパーク
プラグのハウジングを構成するとともに、その外周面に
は、プラグ100を図示しないエンジンブロックに取付
けるためのねじ部7が形成されている。貫通孔6の一方
の端部側に端子金具13が挿入・固定され、同じく他方
の端部側に中心電極3が挿入・固定されている。また、
該貫通孔6内において端子金具13と中心電極3との間
に抵抗体15が配置されている。この抵抗体15の両端
部は、導電性ガラスシール層16、17を介して中心電
極3と端子金具13とにそれぞれ電気的に接続されてい
る。なお、放電部31に対向する放電部32は省略する
構成としてもよい。この場合には、放電部31と接地電
極4との間で火花放電ギャップgが形成されることにな
る。
本発明の製造方法について述べる。まず、下地金属層と
しての亜鉛メッキ層41を公知のメッキ処理により主体
金具1に形成する。下地金属層の種類としては他に、ニ
ッケルメッキ層等が好適に採用される。そして、このよ
うな下地金属層が形成されている主体金具1を三価クロ
ム塩と三価クロムに対する錯化剤とが配合されたクロメ
ート処理浴に浸漬することにより三価クロメート被膜4
2を形成させる。なお、処理能率向上のため、公知のバ
レル処理法(透液性の容器内に金属部材をバラ積み挿入
し、上記クロメート処理浴中にて容器を回転させながら
行う処理)等を採用することができる。
ボン酸、トリカルボン酸、オキシ酸、水酸基ジカルボン
酸あるいは水酸基トリカルボン酸:例えば、シュウ酸、
マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリ
ン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン
酸、フタル酸、テレフタル酸、酒石酸、クエン酸、リン
ゴ酸、アスコルビン酸等)を用いることが有効である
が、他の錯化剤を用いても良い。このような処理浴を用
いることにより、比較的厚膜のクロメート被膜を形成す
ることができる。なお、このようなクロメート被膜の形
成方法については、ドイツ公開特許公報DE19638
176A1号に詳細が開示されている。
0〜80℃に設定しておくのが良い。また、クロメート
処理浴への被処理物の浸漬時間は、20〜80秒とする
のが良い。浴温の温度が20℃未満のときは、形成され
るクロメート被膜の膜厚が十分に得られず、一方浴室の
温度が80℃以上のときは、浴からの水分蒸発が激しい
ため、浴条件の精度が困難となる。また、浸漬時間が2
0秒未満になると十分なクロメート被膜が形成できなく
なる場合がある。一方、浸漬時間が80秒を超えると、
形成されたクロメート被膜が厚くなりすぎて、被膜にク
ラックを生じたり、被膜の脱落等が生じたりしやすくな
る。
後、温風等によって乾燥させる。
して、貫通孔6に中心電極3及び導電性シール層16、
17、抵抗体15並びに端子金具13を予め組み付けた
絶縁体2を挿入開口部側から挿入し、絶縁体2の係合部
2hと主体金具1の係合部1cとを線パッキン(図示
略)を介して結合させた状態とする(なお、これらの部
材については図1を参照)。次に、主体金具1の挿入開
口部からその内側に線パッキン62を配置し、タルク等
の充填層61を形成してさらに線パッキン60を配置す
る。その後、これらの線パッキン60、62及び充填層
61を介して主体金具1の加締め予定部を絶縁体2に対
して加締めることにより主体金具1と絶縁体2とを組み
付ける。
は、具体的には図2のようにして行なわれる。まず、加
締めベース110のセット孔110aに主体金具1の先
端部を挿入し、主体金具1に形成されたフランジ状のガ
スシール部1fをその開口周縁に支持させる。次いで、
主体金具1の軸線方向において、主体金具1に加締め金
型111を接触・保持させる。ここまでの状態を図2
(a)に示す。その状態で、加締め金型111に軸線方
向の力(図2(a)に示す矢印参照)を加えると、主体
金具1の加締め予定部200の滑り摺動予定面200a
と加締め用金型111との間に滑り摺動が生じ、その結
果、主体金具1の加締め予定部200が絶縁体2のほう
に向かうように屈曲することにより主体金具1と絶縁体
2とが加締め固定されることになる(図2(b))。そ
して、主体金具1内での絶縁体2の抜き止めがなされる
とともに、主体金具1の内周面と絶縁体2の外周面との
間がシールされる。このとき、座屈部1hは軸線方向の
圧縮により座屈されるとともに、工具係合部1eにはそ
の寸法を広げようとする応力が働く。
される加締め用金型111には、図4(c)に示すよう
に、本発明の要件である非晶質炭素層を主体としてなる
硬質炭素被膜60が形成されている。また、工具用合金
鋼等で構成されることの多い加締め用金型と硬質炭素被
膜との密着性を向上させるために、硬質炭素被膜60と
加締め用金型111との間に中間層61を形成すること
もできる(図4(a)(b))。中間層61は(b)の
ように単層のみを形成してもよいし、(a)のように複
数層形成してもよい。なお、(a)に示すように、中間
層61を2層にて形成するときは、クロム又はチタンを
主体とする下層中間層61bの上に珪素又はゲルマニウ
ムを主体とする上層中間層61aを形成するのが密着性
を高めるためにより望ましい。このような多層の被膜構
造の形成は、例えば特開平6−60404に記載された
方法により形成することができる。詳細は以下の通りで
ある。
洗浄した後、下層中間層61b及び上層中間層61aを
公知の真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタ
リング法等により順次形成する。次いで、これをプラズ
マ重合成膜装置の真空チャンバ内において、そのカソー
ド側にセットする。そして、真空チャンバ内を真空排気
し、ガス導入口から炭化水素ガス(例えば、メタン、エ
チレン、ベンゼン等;水素を混合してもよい。)を導入
し、その圧力を例えば0.1torr程度に調整する。
そして、真空チャンバ内のカソードとアノードとの間に
高周波電圧を印加し、プラズマを発生させる。これによ
り炭化水素が分解して水素を取り込みながら非晶質炭素
の形で堆積し、密着性の良好な硬質炭素被膜60が形成
される。
を示すものである。本発明の加締め用金型111は、軸
線Cの方向に貫通孔112を有するとともに、少なくと
も軸線方向片側の内周面にテーパー状内周面111a
と、主体金具1の前記加締め予定部200を屈曲させる
ための加締めアール部Rが形成されている。なお、加締
めアール部Rはテーパー状内周面111aとストレート
部111cとの間に形成されている。図3においては、
金型の寿命を延ばすために、軸線Cの方向両側にテーパ
ー状内周面111a及び加締めアール部Rを有するリン
グ状に形成されている。また、少なくとも加締めアール
部Rの加締め内周面111bには、スパークプラグの主
体金具1と滑り摺動性を向上させるための、非晶質炭素
相を主体としてなる硬質炭素被膜が形成されている。こ
の加締めアール部Rを形成する加締め内周面111b
は、加締め用金型111の内側に向かって凸形状となっ
ている。そして、この加締め内周面111bと、テーパ
ー内周面111aとの境界付近においては、外側に凸形
状となる形態でアールが付与されている。ここで、該加
締め用金型111の軸断面において、該中心軸線Cと直
交する直線Bと、形成されているテーパー状内周面11
1aとのなす角を、加締め用金型111の金型テーパー
角度A(°)と定義する。そして、加締めアール部Rの
軸線Cの方向における長さを、加締めアール部深さD
(mm)と定義する。該加締めアール部Rの軸線Cの方
向における長さとは、該加締めアール部Rの加締め内周
面111bに沿う仮想円Oと、テーパー状内周面111
aの延長線Gとの交点を点Eとして、点Eから加締め内
周面111bまでの軸線Cの方向における最長距離をい
うものとする。なお、ストレート部111cの内径は、
主体金具1の加締め予定部200よりも後方側の絶縁体
2の外径よりも大きい値で形成され、絶縁体2の上記後
方側を挿通可能なものにしている。
クプラグ100の種類に応じて好適なものを使用するの
がよい。つまり、各種得るべきスパークプラグ(詳細に
は主体金具)の寸法に応じた金型の金型テーパー角度A
(°)及び金型加締めアール部Rの深さD(mm)の条
件がある。すなわち、以下の条件を満足するものを使用
するのがよい。 (1)主体金具1の工具係合部1eの対辺寸法N(m
m)(図6参照)を14mm以下とする場合(以下この
場合を、N≦14mm以下の場合ということもある)、 6≦A/D≦22・・・条件1 (2)主体金具1の工具係合部1eの対辺寸法N(m
m)を15.7〜16mmとするとともに、該主体金具
1のJIS−B8031に規格されるねじ径を14m
m、12mmあるいは10mmのいずれかとする場合
(以下、この場合をN=16mmの場合ということもあ
る)、 5.5≦A/D≦19.5・・・条件2 (3)主体金具1の工具係合部1eの対辺寸法N(m
m)を19.7〜20mmとするとともに、該主体金具
1のJIS−B8031に規格されるねじ径を14mm
とする場合(以下、この場合をN=20mmの場合とい
うこともある)、 3≦A/D≦9.5・・・条件3 となるものを使用する。このような加締め用金型111
を使用すれば、硬質炭素被膜60の形成の効果とも相俟
って、主体金具1の加締め固定後における主体金具1の
各種寸法ずれを抑制できる。
えて、金型テーパー角度A:15〜35°、かつ金型加
締めアール部深さD:1.6〜2.4mmとしたとき、
特に主体金具1の各種寸法ずれを抑制することができ
る。また、上記(2)の場合は、上記条件2に加えて、
金型テーパー角度A:15〜35°、かつ金型加締めア
ール部深さD:1.8〜2.6mmとし、並びに(3)
の場合は条件3に加えて、金型テーパー角度A:10〜
20°、かつ金型加締めアール部深さD:2.2〜3m
mとしたとき、同様に主体金具1の各種寸法ずれを、さ
らに抑制することができる。
過ぎると加締め予定部200が、絶縁体2の所望の位置
に十分に当接せず、主体金具1の各種寸法ずれを誘発し
気密性の低下を招く。また、浅過ぎると加締め固定後に
得られる加締め部220(図2b参照)の形状が良好な
ものとならないため、同様に各種寸法ずれを誘発するた
め好ましくない。従って、得るべきスパークプラグ10
0の形状によって、それぞれ上記のような範囲で加締め
アール部深さD(mm)を設定するのがよい。また、金
型テーパー角度A(°)は、大きすぎると工具係合部1
eに加締め用金型111が早く当接し過ぎて、工具係合
部1e等に余計な応力が働くため寸法ずれを誘発する要
因となる。一方、小さすぎると工具係合部1eに加締め
用金型111が当接するのが遅くなり、同様に寸法ずれ
を誘発する原因となる。従って、得るべきスパークプラ
グの寸法に応じて、上記範囲に金型テーパー角度A
(°)を設定するのがよい。
固定は、熱加締め及び冷間加締めのいずれを行っても差
し支えない。
金型111は、軸線Cの方向両側にテーパー状内周面1
11a及び加締めアール部Rが形成されているものにつ
いて示したが、軸線Cの方向片側のみにテーパー状内周
面111a及び加締めアール部Rが形成されているもの
でもよい。この場合、主体金具1との間の滑り摺動性を
向上させる硬質炭素被膜60が少なくとも加締めアール
部Rの加締め内周面111bに形成されているものを使
用する。
体2の外周面と主体金具1の内周面との間に滑石を充填
して加締め固定する場合について示しているが、本発明
はこれに限られるものではなく、滑石を主体金具1の内
周面と絶縁体2の外周面との間に充填せずに、主体金具
1を加締め固定するスパークプラグの製造方法において
も当然適用することが可能である。
行った。 (実験例1)金型にDLCコーティングを施した場合
の、主体金具の加締め固定時における寸法ずれ低減効果
を調べるため、以下の実験を行った。まず、JIS−G
3539に規定された冷間圧造用炭素鋼線SWCH8A
を素材として用い、図1の主体金具1を冷間鍛造により
製造した。次いで、これに公知のアルカリシアン化物浴
を用いた電解亜鉛メッキ処理を施すことにより、膜厚約
5μmの亜鉛メッキ層を形成した。
ロメート被膜及び六価クロメート被膜を形成したものを
それぞれ用意した。 (1)三価クロメート被膜 クロメート処理浴として、脱イオン水に対して1リット
ル当り、塩化クロム(III)(CrCl3・6H2O)
を50g、硝酸コバルト(II)(Co(NO3)2)を
3g、硝酸ナトリウム(NaNO3)を100g、マロ
ン酸31.2gの割合で溶解することにより建浴し、ヒ
ーターにより液温60℃に保持するとともに、浴のpH
を苛性ソーダ水溶液の添加により2.0に調節したもの
を使用した。そして、亜鉛メッキ後の主体金具1を上記
クロメート処理液に60秒浸漬し、次いで水洗後、70
℃の温風により180秒仮乾燥して、三価クロム系クロ
メート皮膜を形成した。その後、該クロメート被膜を温
風により乾燥した。そして、X線光電子分光分析法(X
PS)により含有されるクロム成分の95質量%が三価
クロムであることを確認した。また、三価クロメート被
膜の膜厚をSEMによる断面からの実測により測定した
ところ、0.2〜5μmの範囲内であることを確認し
た。
クロメート被膜) 黄色クロメート処理浴として、脱イオン水に対し、無水
クロム酸7g/リットル、硫酸3g/リットル、硝酸3
g/リットルの割合で溶解したものを用意し、液温20
℃に保持した。そして、これに主体金具1を約15秒浸
漬して引き上げ、70℃にて温風乾燥させたものを作製
した。また、三価クロメート被膜と同様に、その膜厚を
SEMによる断面からの実測により測定し、膜厚が0.
2〜5μmの範囲内のものを実験に供した。
皮膜の観察を容易にするために、被膜表面に、クロメー
ト被膜よりも導電率の高い成分の薄膜(例えば、Au薄
膜)をスパッタ法により形成する。SEM像では、導電
率の高い下地層(例えば、亜鉛メッキ層)と、新たに形
成した導電率の高い薄膜層(Au被膜層)とに対し、導
電率の低いクロメート被膜層が暗く写るので、そのコン
トラストからクロメート被膜の像を容易に確認すること
ができる。例えば、SEM像中に、該コントラストから
確認されるクロメート被膜層と、例えば亜鉛メッキ層及
びAu皮膜層との各境界に対応する位置に白線を表示
し、その白線間距離から膜厚を同定する。
に対して、絶縁体を組み付けたものを複数準備した上
で、表面にDLC被膜を形成した金型(以下、DLC金
型という)あるいはDLC被膜を形成していない金型
(以下、通常金型という)を使用して、同一寸法の主体
金具に対して、同一の荷重を負荷することにより順次加
締め固定を行っていき、加締め固定回数と、加締め固定
後の主体金具の各種寸法との関係を測定した。なお、加
締め用金型へのDLC被膜の形成は前述したプラズマ重
合法により形成した。ただし、原料ガスはメタンを使用
し、ガス流量を30cm3/分、圧力0.1torr、
高周波電力100Wとした。なお、得られたDLC被膜
のビッカース硬度を前述のダイナミック超微小硬さ試験
機によって測定し、1500kg/mm2以上であるこ
とを確認している。得られた結果を図5に示す。なお、
主体金具1の各種寸法は、図6に示す位置にて測定した
ものである。まず、工具係合部1eの対辺寸法(六角対
辺寸法ともいう)Nは、図6(a)のAA断面図(b)
において、工具係合部1eのそれぞれ対向する二つの平
行面の間の距離Nのことをいう。また座屈部径は、図6
の座屈部1hおいて、得られる外形線の径が最も大きく
なるようにBB断面をとったとき、その断面外形線の直
径Mのことをいう。さらに、加締め蓋高さFとは、屈曲
後形成された加締め予定部200の軸線方向の長さ(す
なわち、加締め部220の軸線方向の長さ)のことをい
う。
法及び加締め蓋高さのいずれの寸法においても、通常金
型の場合は加締め固定回数が増す毎に(つまり使用され
る毎に)寸法が使用初期と比較して大きくなっている
が、DLC金型を使用した場合にあっては、加締め固定
回数が増しても、各種寸法は使用初期と比較してほとん
ど変化せず、寸法の増加は通常金型の場合よりも小さい
範囲内で推移している。つまり、DLC金型により主体
金具の各種寸法ずれが抑制されていることがわかる。
締め用金型との間の滑り摺動性を調べた。、図7に示す
ように、主体金具1内部に絶縁体2を挿入し、それを第
一治具20により保持した後、軸線方向から加締め用金
型111に第二治具21を介してオートグラフにより荷
重Fを加え、その荷重Fと、そのときの加締め用金型1
11の軸線方向における変位xとの関係を測定した。オ
ートグラフの設定条件としては以下の通りにした。 テストモード:単純圧縮 下降スピード:30mm/min 上昇スピード:100mm/min 使用ロードセル:5ton
を見ると、荷重をかけ始めた段階では、ほとんど差がな
いが、1500kgf程度の荷重が印加されだすと、加
締め用金型111の変位xに差が生じ始めているのがわ
かる。すなわち、三価クロメート被膜を形成した場合よ
りも、六価クロメート被膜を形成した場合のほうが同じ
荷重でより多く変位し、さらに、通常金型を使用した場
合よりも、DLC金型を使用した場合のほうが同一荷重
においてより大きな変位が起こっているのがわかる。つ
まり、三価クロメート被膜よりも六価クロメート被膜、
通常金型よりもDLC金型を使用したほうが加締め固定
時の滑り摺動性が良好となることを示している。
被膜あるいは六価クロメート被膜を形成し、これらに対
して、通常金型あるいはDLC金型をそれぞれ使用して
加締め固定を行った場合において、加締め固定後のそれ
ぞれの主体金具1の工具係合部1eの六角対辺寸法N
(mm)(図6参照)を測定した。主体金具の得るべき
所望の六角対片寸法Nはいずれも同一(N=15.7〜
16mm)とし、いずれの加締め固定も同一の荷重を負
荷することにより行った。結果を表1に示す。なお、六
角対辺寸法N(mm)は、加締め固定後のスパークプラ
グにおいて特定個数(通常金型:3個、DLC金型:5
個)測定したときの平均寸法を示すものとする。
六角態変寸法N(mm)も、寸法公差内(15.7〜1
6mm)に収まっているが、通常金型を使用した場合よ
りもDLC金型を使用したほうが六角対辺寸法Nがより
小さく抑制されている。つまり、DLC金型を使用した
ほうが、六角対辺寸法の拡大を抑制することができ、ひ
いては、各種寸法ずれを抑制できることを示している。
また、主体金具に六価クロメート被膜を形成した場合、
六角対辺寸法Nの拡大を抑制することができ、さらに、
三価クロメート被膜を主体金具に形成した場合であって
も、六価クロメート被膜を形成した場合と同様に、六角
対辺寸法の拡大が抑制されている。
た加締め用金型111において、加締めアール部深さD
(mm)及び金型テーパー角度A(°)をそれぞれ変化
させた場合の、主体金具の寸法ずれへの影響を調べた。
まず、N≦14mm以下となるスパークプラグを得たい
場合について、表2に示すようなD(mm)及びA
(°)の組み合わせの加締め金型を用いて加締め固定を
それぞれ50回行い、得られたそれぞれ25個のスパー
クプラグ群における六角対辺寸法N(mm)の標準偏差
(3σ)を求めた。これらのうち、標準偏差(3σ)が
0.05未満のものを◎、0.05〜0.1のものを
○、0.1〜0.15のものを△として評価した。評価
結果を合わせて表2に示す。さらに、N=16mmある
いはN=20mmの場合についても同様に、表3あるい
は表4のようにD(mm)及びA(°)を変化させて上
記実験を行った。得られた結果を同様に表3あるいは表
4に示す。
(1)、6≦A/D≦22(条件1)の条件を満たす加
締め用金型を用いた場合は、より六角対辺寸法N(m
m)の寸法ずれを抑制できることがわかる。同様に表3
あるいは表4に示すようにN=16の場合(2)は、
5.5≦A/D≦19.5(条件2)、あるいはN=2
0の場合(3)は、3≦A/D≦9.5(条件3)の条
件を満たす加締め用金型を使用すれば、六角対辺寸法N
(mm)の寸法ずれを一層抑制することができる。さら
に(1)の場合15°≦A≦35°かつ、1.6mm≦
D≦2.4mmとし、(2)の場合、15°≦A≦35
°かつ、1.8mm≦D≦2.6mmとし、(3)の場
合、10°≦A≦20°かつ、2.2mm≦D≦3mm
とするとき、さらに寸法ずれを軽減することができる。
図。
部深さD、金型テーパー角度Aの定義を説明する図。
をいくつか示す図。
を示した図。
する方法を説明する図。
図。
Claims (7)
- 【請求項1】 機関取付けのための工具係合部を有する
筒状の主体金具の加締め予定部を、該主体金具内に挿入
された軸線方向に伸びる絶縁体の外周面に対して加締め
固定するスパークプラグの製造方法であって、 前記加締め固定における加締め用金型として、前記主体
金具の前記加締め予定部と接触・摺動する面に、非晶質
炭素相を主体としてなる硬質炭素被膜が形成されたもの
を使用することを特徴とするスパークプラグの製造方
法。 - 【請求項2】 前記加締め用金型として、 軸線方向に貫通孔を有するとともに、少なくとも軸線方
向片側の内周面にテーパー状の内周面(以下、テーパー
状内周面ともいう)と、前記主体金具の前記加締め予定
部を屈曲させるための加締めアール部が形成されてお
り、 中心軸線を含む断面において、該中心軸線と直交する直
線と、前記テーパー状内周面とのなす角を、金型テーパ
ー角度A(°)とし、 前記加締めアール部の軸線方向における長さを、加締め
アール部深さD(mm)としたとき、以下の条件、すな
わち;前記主体金具の工具係合部の対辺寸法を14mm
以下とする場合、 6≦A/D≦22;前記主体金具の工具係合部の対辺寸
法を15.7〜16mmとするとともに、該主体金具の
JIS−B8031に規格されるねじ径を14mm、1
2mmあるいは10mmのいずれかとする場合、 5.5≦A/D≦19.5;前記主体金具の工具係合部
の対辺寸法を19.7〜20mmとするとともに、該主
体金具のJIS−B8031に規格されるねじ径を14
mmとする場合、 3≦A/D≦9.5;となるものを使用する請求項1に
記載のスパークプラグの製造方法。 - 【請求項3】 前記主体金具は、少なくとも前記加締め
予定部の外周面に、 亜鉛メッキ又はニッケルメッキ処理を施した後、該表面
にさらにクロメート処理を施したもの、 あるいは、Niメッキ処理のみを施したものである請求
項1又は2に記載のスパークプラグの製造方法。 - 【請求項4】 前記主体金具は、含有されるクロム成分
の95質量%以上が三価クロム成分である膜厚0.2〜
0.5μmのクロメート被膜が、少なくとも前記加締め
予定部の外周面に形成されているものである請求項3に
記載のスパークプラグの製造方法。 - 【請求項5】 前記主体金具は、前記クロメート被膜に
六価クロムが実質的に含有されていないものである請求
項4に記載のスパークプラグの製造方法。 - 【請求項6】 前記クロメート被膜は、前記主体金具を
三価クロム塩と三価クロムに対する錯化剤とを配合した
クロメート処理浴中に浸漬することにより形成される請
求項4又は5に記載のスパークプラグの製造方法。 - 【請求項7】 機関取付けのための工具係合部を有する
筒状の主体金具の加締め予定部を、該主体金具内に挿入
された軸線方向に伸びる絶縁体の外周面に対して加締め
固定するために使用されるスパークプラグの加締め用金
型であって、 前記主体金具の前記加締め予定部と接触・摺動する面
に、非晶質炭素相を主体としてなる硬質炭素被膜が形成
されていることを特徴とする加締め用金型。
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