JP2002322208A - ケイ素化合物 - Google Patents

ケイ素化合物

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JP2002322208A
JP2002322208A JP2001127536A JP2001127536A JP2002322208A JP 2002322208 A JP2002322208 A JP 2002322208A JP 2001127536 A JP2001127536 A JP 2001127536A JP 2001127536 A JP2001127536 A JP 2001127536A JP 2002322208 A JP2002322208 A JP 2002322208A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】無機表面の接着性改良材としてシランカップリ
ング剤を利用する場合は、無機表面とシランカップリン
グ剤との結合は充分であっても、その上に重ねられるポ
リマーとシランカップリング剤との親和性・接着性が充
分でないことが多い。本発明は、機能を強化されたシラ
ンカップリング剤を提供することを目的とする。 【解決手段】式(1)で表されるケイ素化合物。この式
中のXは単量体に対する重合開始能を有する基であ
り、RおよびZはアルキレンであり、Rはアルキ
ル、フェニル、アルケニル、H、または下記の式(2)
で表される基であり、Rはアルキル、CHCO−ま
たはHであり、nは0〜2の整数であり、フェニレン環
へのRの結合位置は、Zの結合位置に対してメタ位お
よびパラ位のどちらでもよい 【化1】 【化2】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、重合性単量体に対
して重合開始能を有することを特徴とする新規ケイ素化
合物に関する。
【0002】
【従来の技術】工業的に生産されているシランカップリ
ング剤は、一般的には、有機ポリマーに対して親和性、
反応性を有する有機官能基(アミノ基、エポキシ基、ビ
ニル基、メタクリル基、メルカプト基など)と、無機、
金属系に対して親和性、反応性を有する加水分解性シリ
ル基(メトキシシリル基、エトキシシリル基など)とを
1分子中に有する化合物であり、有機ポリマーと無機、
あるいは、無機材料の接する界面における接着改良剤と
しての適性を示すとされている(「シリコーンハンドブ
ック」、伊藤邦雄著、日刊工業新聞社(1990)、55頁
−)。例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキ
シシランの場合では、ガラス繊維をこのシランカップリ
ング剤で処理し、これを不飽和ポリエステルなどに添加
して樹脂硬化させるといった、いわゆるガラス繊維補強
プラスチック用の有機・無機界面における接着改良剤と
して利用されることが多い。
【0003】また、シランカップリング剤は、加水分解
性シリル基を有するコモノマーとして、有機過酸化物、
アゾ化合物などの開始剤の存在下、他のアクリル系モノ
マーとのラジカル共重合により、加水分解性シリル基を
側鎖に有するポリマーの合成にも用いられている。これ
により、無機表面へのプライマー処理等を必要とするこ
となく優れた接着性を発現し、且つ無機成分が有機ポリ
マー中に複合化されていることから、優れた力学的特性
を併せ持つ耐候性塗料のベース材料として用いられてい
る(特開平6-65464号公報、特開平6-256706号公報な
ど)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記の
加水分解性シリル基を側鎖に有するポリマーにあって
は、無機表面へのプライマー処理効果が充分でない場合
が多く、また無機表面の接着性改良材として、シランカ
ップリング剤を直接利用する場合は、無機表面とシラン
カップリング剤との結合は充分であっても、その上に重
ねられるポリマーとシランカップリング剤との親和性・
接着性が充分でないことが多い。本発明は、シランカッ
プリング剤の機能を強化することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、シランカ
ップリング剤とポリマーとの接着性を向上させるための
方策について検討し、シランカップリング剤に重合開始
剤としての機能を持たせることに想到した。すなわち、
重合開始能を有するシランカップリング剤であれば、無
機表面をこのシランカップリング剤で処理した後、その
表面に、例えばアクリル系モノマーを塗布することによ
り重合を開始させて、有機ポリマー層を形成させること
が可能である。この場合、重合開始点が無機表面に対し
て強く結合しているシランカップリング剤中に存在する
のであり、従来とは異なるカップリング効果を期待でき
る。また、末端に加水分解性シリル基を有する新規な有
機ポリマーの合成などへの応用も可能であり、シランカ
ップリング剤の諸特性や用途に多様性をもたらすものと
期待される。
【0006】本発明は、下記のような構成からなる。 (1)式(1)
【化8】 (式中、Xは単量体に対する重合開始能を有する基で
あり、Zは炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルキ
レンであり、Rは炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐の
アルキル、置換もしくは無置換のフェニル、炭素数2〜
6の直鎖もしくは分岐のアルケニル、H、または下記の
式(2)で表される基であり、Rは炭素数1〜6の直
鎖もしくは分岐のアルキル、CHCO−またはHであ
り、Rは炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキレ
ンであり、nは0〜2の整数であるが、n=2のとき2
個のRは異なる基であってもよい。また、フェニレン
環へのRの結合位置は、Zの結合位置に対してメタ位
およびパラ位のどちらでもよい。)で表されるケイ素化
合物。
【化9】 (式中のX、RおよびZの意味、およびフェニレン
環へのRの結合位置は前記と同じである。) (2)式(3)
【化10】 (式中、RおよびRはそれぞれ独立してH、炭素数
1〜20の直鎖もしくは分岐のアルキル、炭素数5〜1
0の脂環式基、または炭素数6〜10の芳香族基であ
り、RとRとが結合して窒素原子と共に環を形成し
てもよく、R、ZおよびRの意味、およびフェニレ
ン環へのRの結合位置は前記と同じであり、Rは炭
素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル、置換もしく
は無置換のフェニル、炭素数2〜6の直鎖もしくは分岐
のアルケニル、H、または下記の式(4)で表される基
である。)で表されることを特徴とする、前記(1)項
に記載のケイ素化合物。
【化11】 (式中のR、R、RおよびZの意味、およびフェ
ニレン環へのRの結合位置は前記と同じである。) (3)式(3)におけるRがメチレンであり、Zが
1,2−エタンジイルであり、Rがメチルであること
を特徴とする、前記(2)項に記載のケイ素化合物。 (4)式(3)におけるRおよびRが共にエチルで
あり、nが0であることを特徴とする、前記(3)項に
記載のケイ素化合物。 (5)式(5)
【化12】 (式中、RおよびRはそれぞれ独立してH、炭素数
1〜20の直鎖もしくは分岐のアルキル、炭素数5〜1
0の脂環式基、または炭素数6〜10の芳香族基であ
り、RとRとが結合して窒素原子と共に環を形成し
てもよく、Mは周期律表第1族または第2族の金属元素
であり、mはMの原子価である。)で表されるジチオカ
ルバミン酸塩と、式(6)
【化13】 (式中、Xはハロゲン原子であり、R、ZおよびR
の意味およびフェニレン環へのRの結合位置は前記
(1)項に記載の式(1)におけるものと同じであり、
は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル、置
換もしくは無置換のフェニル、炭素数2〜6の直鎖もし
くは分岐のアルケニル、H、または下記の式(7)で表
される基である。)で表される加水分解性シリル基を有
する化合物とを反応させて、前記(2)項に記載のケイ
素化合物を製造する方法であって、反応に先立ち、前記
ジチオカルバミン酸塩の脱水処理を行うことを特徴とす
るケイ素化合物の製造方法。
【化14】 (式中のX、RおよびZの意味、およびフェニレン
環へのRの結合位置は、前記と同じである。) (6)ジチオカルバミン酸塩の脱水処理を加水分解性ケ
イ素化合物を用いて行うことを特徴とする、前記(5)
項に記載の製造方法。 (7)加水分解性ケイ素化合物がモノアルコキシシリル
基を有する化合物であることを特徴とする、前記(6)
項に記載の製造方法。 (8)加水分解性ケイ素化合物が式(8) (CHSi−OR (8) (式中、Rは炭素数1〜5の直鎖または分岐のアルキ
ルである。)で表される化合物であることを特徴とす
る、前記(7)項に記載の製造方法。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明のケイ素化合物は下記の式
(1)で表される。
【化15】 この式中のXは単量体に対する重合開始能を有する基
であり、Zは炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐のアル
キレン基であり、Rは炭素数1〜6の直鎖もしくは分
岐のアルキル、置換もしくは無置換のフェニル、炭素数
2〜6の直鎖もしくは分岐のアルケニル、H、または下
記の式(2)で表される基であり、Rは炭素数1〜6
の直鎖もしくは分岐のアルキル、CHCO−またはH
であり、R は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアル
キレンであり、nは0〜2の整数であるが、n=2のと
き2個のRは異なる基であってもよい。また、フェニ
レン環へのRの結合位置はZの結合位置に対してメタ
位およびパラ位のどちらでもよい。
【化16】 (式中のX、RおよびZの意味、およびフェニレン
環へのRの結合位置は前記と同じである。)
【0008】そして、Xとしては、ジチオカルバメー
ト基が好ましい。ジチオカルバメート基が光によりラジ
カル解離し、優れた重合開始能、増感能を有することは
良く知られているところである。また、この光重合がラ
ジカル重合であり、しかも結果的にリビング重合的であ
ることもよく知られているところである。従って、ジチ
オカルバメート基を有する本発明のケイ素化合物は、光
照射されているかぎり、重合開始能を維持し続けること
が可能であり、あらゆるラジカル重合性単量体に対して
光重合開始能力を有する。なお、ジチオカルバメート基
は、その光開始剤としての特性の他、耐放射線性、除草
効果等の薬理活性、錯体形成能、および親水性等を活用
することも可能である。
【0009】従って、本発明のケイ素化合物としては、
下記の式(3)で表される化合物が好ましい。
【化17】 この式中のRおよびRはそれぞれ独立してH、炭素
数1〜20の直鎖もしくは分岐のアルキル、炭素数5〜
10の脂環式基、または炭素数6〜10の芳香族基であ
り、RとRとが結合して窒素原子と共に環を形成し
てもよく、R、ZおよびRの意味、およびフェニレ
ン環へのRの結合位置は前記と同じであり、Rは炭
素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル、置換もしく
は無置換のフェニル、炭素数2〜6の直鎖もしくは分岐
のアルケニル、H、または下記の式(4)で表される基
である。
【化18】 (式中のR、R、RおよびZの意味、およびフェ
ニレン環へのRの結合位置は前記と同じである。)
【0010】式(3)および式(4)中のRおよびR
の具体例として、例えばメチル、エチル、プロピル、
イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシ
ル、ヘプチル、オクチル、シクロペンチル、シクロヘキ
シルおよびフェニル等を挙げることができる。Rおよ
びRのどちらもがこれらの基の1種であってもよい
し、片方がこれらの基の1種であって、もう一方がHで
あってもよい。また、R とRとが結合して窒素原子
と共に環を形成している場合のジチオカルバメート基の
例として、N−シクロトリメチレンジチオカルバメート
基、N−シクロテトラメチレンジチオカルバメート基、
N−シクロペンタメチレンジチオカルバメート基、N−
シクロヘキサメチレンジチオカルバメート基、N−シク
ロヘプタメチレンジチオカルバメート基、N−シクロオ
クタメチレンジチオカルバメート基等を挙げることがで
きる。そして、ジチオカルバメート基の好ましい例とし
て、N,N−ジメチルジチオカルバメート基、N,N−
ジエチルジチオカルバメート基、N−メチルジチオカル
バメート基、N−エチルジチオカルバメート基などを挙
げることができ、N,N−ジエチルジチオカルバメート
基が最も好ましい。
【0011】下記の式(9)
【化19】 は、式(1)および式(3)中の単量体に対する重合開
始能を有する基/ジチオカルバメート基を除いた残基で
ある。式(9)中のRは、メチレン、1,2−エタン
ジイル、1,3−プロパンジイル、1,2−プロパンジ
イル、1,4−ブタンジイルなどであるが、原料の入手
しやすさを考慮するとメチレンが好ましい。Rがメチ
レンである場合について、式(9)で表される基の具体
例の一部を、下記の表1で定義する記号を用い、表2〜
6に示す。
【表1】
【0012】
【表2】
【0013】
【表3】
【0014】
【表4】
【0015】
【表5】
【0016】
【表6】
【0017】式(9)で表される基は、上記の表2〜6
に示した基に限られるわけではない。例えば、表2〜6
はRがメチレンである場合に限定されたものであり、
その表2〜6に示した具体例のうちでも、nが1および
2の場合については、Zがメチレンまたは1,2−エタ
ンジイルである場合しか示していない。しかしながら、
これらの限定はその他の結合基が選択されないというこ
とを示すものではない。上記の他、例えば、Rが1,
2−エタンジイルであってもよく、Zが1,3−プロパ
ンジイルであってもよく、また式(9)中のRが下記
の式(4)で表される基であってもよい。
【化20】 (式中のR、R、RおよびZの意味、およびフェ
ニレン環へのRの結合位置は前記と同じである。)
【0018】なお、式(9)中のRは、H以外の基で
ある場合は、カップリング剤として使用される際に加水
分解されて離脱する基である。従って、Rの選択範囲
にHを含めることは意味のないことではない。通常、S
i−OHは非常に縮合しやすい基であり、保存安定性が
よくないが、アルコール系の溶媒を用いて溶液にするな
どの手段により保存できる場合もある。
【0019】式(9)で表される基は、nが0である場
合、またはRがメチルである場合の基が好ましい。そ
して、式(9)におけるZは1,2−エタンジイルであ
ることが好ましい。従って、前記の表2〜6において、
表2中のNo.2、No.10、No.18およびN
o.26など、および表5中のNo.7〜10およびN
o.13〜16などの基を好ましい例として挙げること
ができる。
【0020】本発明の式(3)で表されるケイ素化合物
は、式(5)
【化21】 で表されるジチオカルバミン酸塩と、式(6)
【化22】 で表される加水分解性シリル基を有する化合物とを反応
させることによって得ることができる。式(5)中のR
およびRは、前記の式(3)における場合と同じ意
味であり、Mは周期律表第1族または第2族の金属元素
であり、mはMの原子価である。そして、Mがナトリウ
ムまたはカリウムであることが好ましい。式(6)中の
はハロゲン原子であり、ClまたはBrであること
が好ましい。そして、この式からXを除いた基は式
(9)と同じであり、式(9)の基の具体例および好ま
しい例は前記の通りである。
【0021】式(5)のジチオカルバミン酸塩と式
(6)の化合物との反応は、通常、式(6)中の加水分
解性シリル基に何ら影響することなく、式(6)中のハ
ロアルキル基とジチオカルバミン酸塩のみが関与するい
わゆる求核置換反応により進行する。しかしながら、
N,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムやN−
エチルジチオカルバミン酸ナトリウム等のジチオカルバ
ミン酸塩は、水溶性の塩であり、通常、結晶水を持って
いる。式(6)の化合物中の加水分解性シリル基が、水
に対して非常に敏感な基であって縮合反応を起こしやす
いため、この結晶水を如何にして除くかが重要なポイン
トである。通常、結晶水を除去するには、常圧または減
圧条件下において加熱する方法がとられている。しかし
ながら残り1分子に相当する結晶水を除去することが非
常に難しく、結晶水をすべて除去するためには、高温条
件下で長時間保持する必要がある。その際に、ジチオカ
ルバミン酸塩が熱により分解する可能性もあり、加熱に
よる結晶水の除去は実用上問題があると考えられる。
【0022】本発明の製造方法は、ジチオカルバミン酸
塩中の結晶水を、加水分解性ケイ素化合物を用いて除去
することを特徴とする。加水分解性ケイ素化合物として
は、モノアルコキシシリル基を有する化合物が好まし
く、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシ
ラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルイソプ
ロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン、トリメチ
ルイソブトキシシランなどを挙げることができる。この
うちトリメチルメトキシシランが最も好ましい。以下
に、トリメチルメトキシシランを用い、N,N−ジエチ
ルジチオカルバミン酸ナトリウムの結晶水を除去する例
について詳細に説明する。まず、過剰量のトリメチルメ
トキシシランおよびN,N−ジエチルジチオカルバミン
酸ナトリウム・3水和物をメタノールに溶解させる。次
いで、加熱環流させると、トリメチルメトキシシラン
が、結晶水による加水分解およびこれに伴う縮合によっ
て、ヘキサメチルジシロキサンになり、それに伴ってメ
タノールが生成する。これは、2モルのトリメチルメト
キシシランによって、1モルの水を除去することができ
る反応である。そして、ヘキサメチルジシロキサン、メ
タノールおよび未反応のトリメチルメトキシシランは、
比較的沸点が低いため、減圧蒸留により容易に除去され
る。すなわち、この脱水方法により、ジチオカルバミン
酸塩中の結晶水を容易かつ効果的に脱水することができ
る。
【0023】この脱水反応に用いられる有機溶媒は、原
料をこれと反応することなく容易に溶解するものであれ
ば特に制限は無く、メタノールなどの低級アルコール
類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環式エーテル
類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が好まし
い。そして、ジチオカルバミン酸塩の溶解性、溶媒の沸
点などを考慮すると、テトラヒドロフラン、メタノール
およびエタノールなどが最も好ましい。脱水反応を溶媒
の環流下に行わせるのであれば、温度は選ばれる有機溶
媒の沸点に依存する。しかしながら、加水分解性ケイ素
化合物の分解によって生成するアルコールのみを溜去し
ながら、脱水反応を行わせる場合には、ジチオカルバメ
ートが熱分解する可能性を考慮し、120℃以下、好ま
しくは100℃以下で行うことが望ましい。加熱時間に
は特に制限はないが、通常3〜10時間で結晶水が除去
されたジチオカルバミン酸塩を得ることができる。な
お、ジシロキサン化合物、アルコールおよび未反応の加
水分解性ケイ素化合物を除去するための減圧蒸留の温度
も、ジチオカルバメートが熱分解する可能性を考慮する
と、120℃以下、好ましくは100℃以下であること
が望ましい。そして、この温度以下で上記成分を溜去で
きるように減圧度を調節すればよい。
【0024】ジチオカルバミン酸塩と前記の式(6)の
化合物との反応に際しては、式(6)の化合物中のハロ
ゲン含有量に対して、等モル〜5倍モルのジチオカルバ
ミン酸塩を用いることが好ましい。反応は、通常、窒素
ガスのような不活性気体雰囲気中、原料に対して不活性
な乾燥した有機溶媒中で行う。溶媒としては、例えばメ
タノールなどの低級アルコール類、テトラヒドロフラ
ン、ジオキサン等の環式エーテル類、トルエン、キシレ
ン等の芳香族炭化水素類が使用できるが、ジチオカルバ
ミン酸塩の溶解性、ジチオカルバメートの求核性などを
考慮するとテトラヒドロフランやメタノールが好適であ
る。反応温度は、ジチオカルバメートが熱分解する可能
性を考慮し、120℃以下、好ましくは100℃以下で
あることが望ましい。反応時間には特に制限はないが、
通常1〜10時間で目的のケイ素化合物を得ることがで
きる。また、必要に応じてベンジルトリメチルアンモニ
ウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライ
ド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチ
ルアンモニウムクロライド、ジオクチルメチルアンモニ
ウムクロライド、トリエチルアミンまたはジメチルアニ
リンなどの相間移動触媒を反応に用いることができる。
【0025】得られたジチオカルバメート基含有加水分
解性ケイ素化合物は、沸点が高いため、減圧蒸留では精
製されにくいが、非水条件下で加圧濾過装置を用いた脱
塩を繰り返し行なうことで、目的物の精製および単離が
可能である。また、ジチオカルバミン酸塩と式(6)の
化合物との反応、および目的物の精製および単離は、紫
外線がカットされた蛍光灯(例えば、松下電器産業社
製、ナシヨナルカラード蛍光灯、純黄色、FLR40S-Y-F/
M)、および紫外線カットフィルム(例えばアキレス社
製、アキレスセイデンクリスタル、防炎・帯電防止・紫
外線吸収、FTZR4976)が装着されたドラフト内で行う必
要がある。そして、単離された光重合開始能を有する加
水分解性ケイ素化合物は、光増感基であるジチオカルバ
メートと加水分解性基であるアルコキシシリル基とを有
しているため、非水環境下、窒素やアルゴンなどの不活
性気体を封入した遮光容器内で冷暗所にて保存する必要
がある。
【0026】
【実施例】以下に実施例を挙げて詳細に説明するが、本
発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 実施例1 撹拌子、還流冷却器、温度計および滴下ロートを備えた
500ml−ガラスフラスコに、N,N−ジエチルジチ
オカルバミン酸ナトリウム・3水和物33.8gおよび
メタノール200mlを入れた。窒素ガス雰囲気下、室
温にてトリメチルメトキシシラン125.1gとメタノ
ール50mlの混合物を、滴下ロートから徐々に滴下し
た。滴下終了後、70℃にて8時間環流を行った。ガス
クロマトグラフ(GC)を用いて反応追跡を行った結
果、還流時間の経過とともに、トリメチルメトキシシラ
ンに基づくピークが減少し、ヘキサメチルジシロキサン
に基づくピークの増大が確認された。3時間経過後、ほ
ぼ両者のピーク強度比が変動しなくなったので、反応終
点とした。その後、ロータリーエバポレータを用いて、
まず溶媒を除去した後、1.3×10Paの減圧下1
00℃にて低沸点成分の除去を3時間行い、目的とする
脱水N,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムを
得た(収率:99%)。得られたN,N−ジエチルジチ
オカルバミン酸ナトリウムにおける含水率の定量は、ま
ず第一段階として含水率が既知の各種混合比を変化させ
た水/テトラヒドロフラン溶液を調製し、GC測定結果
に基づいて検量線を作成した。その後、結晶水の除去操
作を行ったN,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリ
ウムのテトラヒドロフラン溶液を調製し、これをGC測
定試料として当該検量線を用いた解析を行った。その結
果、N,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム中
の水に基づくGCピークは観測されず、予想通り脱水が
行われていることが分かった。なお、結晶水の除去操作
を行う前のN,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリ
ウム・3水和物について、同様にして含水率を測定した
結果、37.9重量%であることが分かった。この値
は、N,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムに
対するモル比で5.8に相当する水を含んでいることを
示している。
【0027】比較例1 300ml−セパラブルフラスコにN,N−ジエチルジ
チオカルバミン酸ナトリウム・3水和物33.8gを入
れ、1.3×10Paの減圧下100℃にて加熱脱水
を行った。時間経過とともに、N,N−ジエチルジチオ
カルバミン酸ナトリウムの重量減少が確認され、8時間
経過後重量変動が確認されなくなった時点で脱水終了と
した。脱水後のN,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナ
トリウムについて、実施例1に準拠しその含水率の定量
を行った結果、5.2重量%であることが分かった。こ
の値は、N,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウ
ムに対するモル比で0.52に相当する水が含まれてい
ることを示している。
【0028】実施例2 撹拌機、サンプル採取管および温度計を備えた100m
l−ガラスフラスコに、乾燥窒素ガス雰囲気下に、実施
例1で得られた脱水N,N−ジエチルジチオカルバミン
酸ナトリウム2.7g、4−クロロメチル−フェニルエ
チルトリメトキシシラン3.9g、およびテトラヒドロ
フラン50mlを投入し攪拌しながら反応させた。反応
は発熱を伴って進行し、塩化ナトリウムが沈殿した。G
Cを用いて反応追跡を行った結果、5時間経過後に4−
クロロメチル−フェニルエチルトリメトキシシランに基
づくピークの消失を確認した。反応終了後、加圧濾過を
繰り返し行なうことによって塩化ナトリウムを除去し、
赤褐色の粘ちょう性液体を得た(収率:88.3%)。
反応前後のGPCによる分子量測定の結果、4−クロロ
メチル−フェニルエチルトリメトキシシランに基づくG
PCピークは明らかに高分子量側へシフトし、目的とす
る4−(N,N−ジエチルジチオカルバモイルメチル)
−フェニルエチルトリメトキシシランの分子量に相当す
る値388を示した。また、反応前後においてGPCピ
ークは何れも単一ピークを示し、分子量分布になんら変
化は見られなかった。下記に示すIRおよびNMRの結
果から、この化合物が4−(N,N−ジエチルジチオカ
ルバモイルメチル)−フェニルエチルトリメトキシシラ
ンであることが確認された。 IR:ν= 930(C-S), 1200(C-S), 1300([C-N]-C=S), 1480
([N-C]=S)cm-1 1 H NMR(CDCl3):δ= 7.1(m, 4H, -C6H4-), 4.4(s, 2
H, -C6H4-[CH2]-S-),3.9, 3.6(q, 4H, -N([CH2]CH3)2),
3.5(s, 9H, -(OMe)3),2.6(broad, 2H, -Si-CH2-[C
H2]-C6H4-), 1.2(t, 6H, -N(CH2[CH3])2),0.9 (t, 2
H, -Si-[CH2]-CH2-C6H4-)
【0029】
【発明の効果】本発明は、重合性単量体に対して重合開
始能を有することを特徴とする新規なケイ素化合物を提
供するものである。本発明が提供するケイ素化合物は、
アクリル系モノマーなどに代表されるラジカル重合性単
量体に対し、光重合開始能を有しており、従来のシラン
カップリング剤とは全く異なる特性を発現することが期
待される。例えば、本発明のケイ素化合物を用いて無機
表面をカップリング処理した後、アクリル系モノマーを
塗布してその重合を行なうことが可能である。これによ
って、無機表面上に従来とは異なる特性の有機ポリマー
層が形成されると考えられる。更に、末端に加水分解性
シリル基を有する新規な有機ポリマーの合成などへの応
用も可能であり、また重合開始剤としての機能以外の諸
特性、例えば耐放射線性、除草効果等の薬理活性、錯体
形成能、親水性等を活用することも可能である。即ち、
シランカップリング剤の諸特性や用途に多様性をもたら
すものと期待される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大竹 伸昌 神奈川県横浜市金沢区大川5−1 チッソ 株式会社横浜研究所内 Fターム(参考) 4H049 VN01 VP01 VQ52 VR21 VR43 VS21 VU20 VW02 VW11 4J015 DA24 4J100 AJ02P AL00P AL02P AL08P AM02P AM15P

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】式(1) 【化1】 (式中、Xは単量体に対する重合開始能を有する基で
    あり、Zは炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルキ
    レンであり、Rは炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐の
    アルキル、置換もしくは無置換のフェニル、炭素数2〜
    6の直鎖もしくは分岐のアルケニル、H、または下記の
    式(2)で表される基であり、Rは炭素数1〜6の直
    鎖もしくは分岐のアルキル、CHCO−またはHであ
    り、Rは炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキレ
    ンであり、nは0〜2の整数であるが、n=2のとき2
    個のRは異なる基であってもよい。また、フェニレン
    環へのRの結合位置は、Zの結合位置に対してメタ位
    およびパラ位のどちらでもよい。)で表されるケイ素化
    合物。 【化2】 (式中のX、RおよびZの意味、およびフェニレン
    環へのRの結合位置は前記と同じである。)
  2. 【請求項2】式(3) 【化3】 (式中、RおよびRはそれぞれ独立してH、炭素数
    1〜20の直鎖もしくは分岐のアルキル、炭素数5〜1
    0の脂環式基、または炭素数6〜10の芳香族基であ
    り、RとRとが結合して窒素原子と共に環を形成し
    てもよく、R、ZおよびRの意味、およびフェニレ
    ン環へのRの結合位置は前記と同じであり、Rは炭
    素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル、置換もしく
    は無置換のフェニル、炭素数2〜6の直鎖もしくは分岐
    のアルケニル、H、または下記の式(4)で表される基
    である。)で表されることを特徴とする、請求項1に記
    載のケイ素化合物。 【化4】 (式中のR、R、RおよびZの意味、およびフェ
    ニレン環へのRの結合位置は前記と同じである。)
  3. 【請求項3】式(3)におけるRがメチレンであり、
    Zが1,2−エタンジイルであり、Rがメチルである
    ことを特徴とする、請求項2に記載のケイ素化合物。
  4. 【請求項4】式(3)におけるRおよびRが共にエ
    チルであり、nが0であることを特徴とする、請求項3
    に記載のケイ素化合物。
  5. 【請求項5】式(5) 【化5】 (式中、RおよびRはそれぞれ独立してH、炭素数
    1〜20の直鎖もしくは分岐のアルキル、炭素数5〜1
    0の脂環式基、または炭素数6〜10の芳香族基であ
    り、RとRとが結合して窒素原子と共に環を形成し
    てもよく、Mは周期律表第1族または第2族の金属元素
    であり、mはMの原子価である。)で表されるジチオカ
    ルバミン酸塩と、式(6) 【化6】 (式中、Xはハロゲン原子であり、R、ZおよびR
    の意味およびフェニレン環へのRの結合位置は請求
    項1に記載の式(1)におけるものと同じであり、R
    は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル、置換も
    しくは無置換のフェニル、炭素数2〜6の直鎖もしくは
    分岐のアルケニル、H、または下記の式(7)で表され
    る基である。)で表される加水分解性シリル基を有する
    化合物とを反応させて、請求項2に記載のケイ素化合物
    を製造する方法であって、反応に先立ち、前記ジチオカ
    ルバミン酸塩の脱水処理を行うことを特徴とする、ケイ
    素化合物の製造方法。 【化7】 (式中のX、RおよびZの意味、およびフェニレン
    環へのRの結合位置は、前記と同じである。)
  6. 【請求項6】ジチオカルバミン酸塩の脱水処理を加水分
    解性ケイ素化合物を用いて行うことを特徴とする、請求
    項5に記載の製造方法。
  7. 【請求項7】加水分解性ケイ素化合物がモノアルコキシ
    シリル基を有する化合物であることを特徴とする、請求
    項6に記載の製造方法。
  8. 【請求項8】加水分解性ケイ素化合物が式(8) (CHSi−OR (8) (式中、Rは炭素数1〜5の直鎖または分岐のアルキ
    ルである。)で表される化合物であることを特徴とす
    る、請求項7に記載の製造方法。
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