JP2002320454A - コーティング剤及びコーティング粉末 - Google Patents

コーティング剤及びコーティング粉末

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JP2002320454A JP2001129850A JP2001129850A JP2002320454A JP 2002320454 A JP2002320454 A JP 2002320454A JP 2001129850 A JP2001129850 A JP 2001129850A JP 2001129850 A JP2001129850 A JP 2001129850A JP 2002320454 A JP2002320454 A JP 2002320454A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】吸湿性が低く、保存安定性、酸化安定性に優
れ、芯物質の発現性、放出制御性に優れ、更には呈味性
にも優れ、電子レンジ食品、焼き菓子等食品加工時に加
熱処理を伴なう飲食品においても香気香味付与或いは増
強剤などとして好ましく使用することができるコーティ
ング粉末、このコーティング粉末を製造するために用い
られるコーティング剤、このコーティング粉末の製造方
法及び前記コーティング粉末を含有する飲食品を提供す
ること。 【構成】常温で固体状の脂質と、可食性の水溶性添加剤
及び/又は可食性の高分子物質とを溶剤に溶解し均一な
溶液とするか、溶融状態の前記脂質と、可食性の水溶性
添加剤及び/又は可食性の高分子物質の水溶液とを乳
化、混合して乳化物とし、得られた溶液または乳化物を
コーティング剤として用いて香料粉末などの芯物質の表
面全体にコーティングする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種加工食品、特
に加熱調理食品、電子レンジ食品、焼き菓子等食品加工
時において加熱処理を伴なう各種食品の香気香味付与剤
として好ましく利用できるコーティング粉末、このコー
ティング粉末を製造するために用いられるコーティング
剤、このコーティング剤を用いたコーティング粉末の製
造方法及びこのコーティング粉末を含有する飲食品に関
する。
【0002】
【背景技術】従来、各種飲食品には、その嗜好性を高め
また栄養学或いは機能性の見地から、香料、酸味剤、甘
味料、調味料、ビタミン類、着色料、香辛料、機能性物
質など種々の物質が添加されている。これら添加物質
は、液状物質であっても或いは粉末状または結晶状であ
っても、制御されまた効率的な発現性、取り扱いの容易
性、添加物質の熱、酸素または光安定性などの観点か
ら、アラビアガムのような天然ガム溶液、ゼラチンのよ
うな蛋白質溶液またはデキストリンなどの加工澱粉溶液
を賦形剤として用いて、粉末化或いは顆粒化することが
広く行われている。しかし、このような粉末化あるいは
顆粒化された飲食品添加物質を飲食品等に配合する場
合、保存時に該粉末に起因する吸湿、ケーキング、成分
の揮散、成分の変質、変色、退色などが起こり商品価値
が落ちるという問題があった。特に、高温に加熱する水
を含む食品に粉末化された香料を添加する場合、加熱時
香料が粉末から揮散してしまい香りの持続性がなくな
る、香料組成物の成分の一部が揮散し本来の香りがなく
なるなどして製品としての価値が著しく失われる結果を
招くという問題があり、この問題を改善すべくいくつか
の解決法が提案されている。
【0003】メチルセルロース、エチルセルロース、ヒ
ドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチ
ルセルロース、エチルメチルセルロースなどの修飾セル
ロースが高温下で水に不溶な固化ゲルを形成し、その後
温度の低下とともに同ゲルが可逆的に水溶性となる物性
を有することはよく知られている(S.Nakura,
S.Nakamura,and Y.Onnda:Ko
bunshi Ronbunshu,38,133(1
981))。修飾セルロースのこの性質を食品加工に応
用した例として、例えばメチル・セルロースが高温で水
に不溶のゲルを生成することを利用し、缶入りスープ中
の添加物で加熱殺菌中に変化・消失する性質を有するも
のを保護する技術(米国特許第6,056,992号明
細書)、修飾セルロースを水溶性香料カプセル、例えば
スプレードライ粉末(芯物質)表面に被膜することで、
高温下では同芯物質が水に溶け難くなり、香料が保護さ
れ、同時に常温(例えば口中)では水に溶解し、香料が
発現することが可能となる技術(WO00/1664
3)などが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】修飾セルロースは、セ
ルロースを原料とし、か性ソーダーでアルカリ溶液を作
り、エーテル化剤(塩化メチル等)と反応させて作られ
る水溶性セルロースエーテルである。上記したとおり、
修飾セルロースが高温で水に不溶なゲルを作り、常温で
そのゲルが可逆的に変化し水溶性になるという物性を利
用し、コーティングされた芯物質を保護する応用例がす
でに報告されている。しかしこの修飾セルロースの特性
は、セルロース分子に導入された置換基の種類、及び置
換度により特性が決まってしまい、芯物質の材料、コー
ティング粉末の使用目的あるいは使用態様に応じコーテ
ィング膜の物性を制御することはできないという問題が
ある。
【0005】本発明は、このようなセルロース誘導体を
用いたコーティング剤における問題点を、セルロース分
子の置換基の種類、置換度など化学反応に基づき制御す
るのではなく、修飾セルロースと併用する物質によりコ
ーティング剤の特性をコントロールし、核物質の材料、
コーティング粉末の利用目的に応じ、コーティング膜の
特性を簡便に制御することのできる、修飾セルロースを
用いるコーティング剤、このコーティング剤を用いてコ
ーティングされたコーティング粉末、このコーティング
粉末を製造する方法並びにこのコーティング粉末を含有
する飲食品を提供することを目的とするものである。
【0006】また、本発明は、加熱時及び冷却時の芯物
質を構成する香料組成物の揮散の程度を制御することが
できる、修飾セルロースを用いるコーティング剤、この
コーティング剤を用いてコーティングされたコーティン
グ粉末、このコーティング粉末を製造する方法並びにこ
のコーティング粉末を含有する飲食品を提供することを
目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するため鋭意研究を行い、修飾セルロースに可食
性の水溶性添加剤及び/又は可食性の高分子物質を併用
することにより、修飾セルロースを含むコーティング剤
の特性を制御することができることを見出して、本発明
を成したものである。
【0008】すなわち、本発明は、(a)修飾セルロー
スと(b)可食性の水溶性添加剤及び/又は可食性の高
分子物質を含むことを特徴とするコーティング剤を提供
するものである。
【0009】また、本発明は、常温で固体状の芯物質
を、(a)修飾セルロースと(b)可食性の水溶性添加
剤及び/又は可食性の高分子物質を含むコーティング剤
によりコーティングしてなることを特徴とするコーティ
ング粉末を提供することである。
【0010】また、本発明は、修飾セルロースと可食性
の水溶性添加剤及び/又は可食性の高分子物質との均一
な混合物からなるコーティング剤を、芯物質1重量部に
対して、約0.0006乃至0.60重量部コーティン
グすることを特徴とするコーティング粉末の製造方法を
提供することである。
【0011】また、本発明は、上記コーティング粉末を
含むことを特徴する飲食品を提供するものである。
【0012】以下、本発明について更に詳細に述べる。
本発明おいて、コーティング剤によりコーティングされ
る芯物質は、常温で固体状の物質である。本発明のコー
ティング剤を用いてのコーティングが効果的な芯物質
は、成分の揮散、成分の変化、変色、退色などによる劣
化を防止する必要性があり、かつ水の存在下で速やかに
放出されることが望ましい物質である。このような常温
で固体状の芯物質としては、例えば香料組成物、色素、
酸味料、ビタミン類、甘味料、調味料、香辛料、機能性
物質など種々の常温で固体状の物質を挙げることができ
る。
【0013】またこれら芯物質は、コーティング方法や
芯物質の種類により好適な粒子サイズは異なり、特に制
限されるものではないが、芯物質の粒子サイズは一般的
には5乃至6000μm、好ましくは、50乃至800
μmの範囲内のものを挙げることができる。また、これ
ら常温で固体状の芯物質は単独で用いられてもよいし、
2種以上の混合物として用いられてもよい。以下、本発
明のコーティング粉末の芯物質として好ましく用いられ
る香料組成物、色素、酸味料、ビタミン類、甘味料、調
味料、香辛料、機能性物質について、更に具体的に説明
する。
【0014】まず、常温で固体状の香料組成物として
は、例えばメントール、バニリン、エチルバニリン、桂
皮酸、桂皮酸メチル、シンナミックアルコール、カンフ
ァー、ピペロナール、マルトール、エチルマルトール、
d−ボルネオール、N−メチルアントラニル酸メチル、
メチルβ−ナフチルケトン等の常温で固体状の香料化合
物、及び通常食品香料として使用される香料に粉末化処
理を行って製造された粉末香料が挙げられる。
【0015】通常食品香料として使用される香料として
は、例えば植物性原料から圧搾、水蒸気蒸留などの手段
により得られる精油、植物原料を炭酸ガスを含む溶媒で
抽出し、不溶物を濾別した後、溶媒を除去して得られる
オレオレジン、果汁を濃縮する際に、水と共に留出する
香気成分を回収装置に導き、オイルまたは濃厚水溶液と
して回収した回収フレーバー、動植物原料に各種の溶媒
を接触させ、該原料から必要な香味成分を抽出し、これ
らの溶媒を必要により留去、濃縮して得られるエキスト
ラクト、混合物から一つの化合物を純粋に取り出した単
離香料、食品素材を加熱することにより生成する加熱調
理フレーバー、乳原料、脂質、タンパク質及び糖質を基
質とした生化学反応により生成する微生物・酵素フレー
バーなどの天然香料素材や、酢酸アミル、ベンジルアル
コール、クマリン、ゲラニオール、フェニルエチルアル
コール、テルピネオールなど化学的に合成した合成香料
が挙げられる。天然香料素材の一例を挙げると、鰹節エ
キス、昆布エキス、カニエキス、カキエキス、ビーフエ
キス、チキンエキス、ポークエキス、タマネギエキス、
ニンジンエキス、オレンジ果汁、レモン果汁、ブドウ果
汁などである。これらは用途等に応じて2種以上組み合
わせて用いることもできる。
【0016】香料の粉末化方法としては、例えばデキス
トリン、澱粉類、アラビアガムなど天然ガム質、ゼラチ
ン、カゼインなどのタンパク質などの水溶液に目的物質
を溶解・混合した後、噴霧乾燥するか、これにさらにシ
ョ糖脂肪酸エステル、レシチン、ポリグリセリン脂肪酸
エステル、加工澱粉、キラヤサポニンなどの食品の製造
に使用される乳化剤を用いて目的物質を乳化し、噴霧乾
燥する噴霧乾燥法、ショ糖、マルトース、マルトデキス
トリンなどの各種糖質、パラチニット、マルチトールな
どの糖アルコールの単独あるいは2種以上を配合して所
定量の水を添加後、加熱しながら溶解させて糖濃度を調
整した糖溶液、あるいは糖とタンパク質の混合溶液に目
的物質を添加して均一に攪拌した後、成型、乾燥して粉
体化する押し出し形成法、ゼラチン、アラビアガムなど
による相分離を利用したコアセルベーション法、そのほ
か凍結乾燥法、分子包接法、吸着法、固化粉砕法等を例
示することができる。以下において粉末化物という場
合、上記の如き方法により粉末化されたものを示すこと
とする。
【0017】常温で固体状の色素としては、可食性のも
のであれば特に制限されるものではない。具体的には、
例えばコチニール、クチナシ、ブドウ果皮、ベニコウジ
等の天然系色素や合成系色素の粉末化物が挙げられる。
これらは用途等に応じて2種以上組み合わせて用いるこ
ともできる。
【0018】常温で固体状の酸味料としては、例えばク
エン酸、フマル酸、dl−リンゴ酸、アスコルビン酸な
どの有機酸及びこれらの粉末化物あるいは液状酸味料の
粉末化物が挙げられる。これら酸味料は、用途等に応じ
て2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0019】常温で固体状のビタミン類としては、例え
ばビタミンB1、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミ
ンC、ビタミンD、ビタミンL、ビタミンK、ビタミン
U、リポ酸、ニコチン酸、及びこれらのナトリウム塩、
塩酸塩などの塩類、酢酸エステルなどの誘導体、更には
これらの粉末化物あるいは油状ビタミン類の粉末化物が
挙げられる。これらビタミン類は、単独でまたは2種類
以上組み合わせて用いることができる。
【0020】常温で固体状の甘味料としては、例えば果
糖、ショ糖、アスパルテーム、パラチノース、ラフィノ
ース、トレハロース、エリスリトール、キシリトール及
びこれらの粉末化物或いは液状甘味料の粉末化物などが
挙げられる。これら甘味料は、用途等に応じて2種以上
組み合わせて用いることもできる。
【0021】常温で固体状の調味料としては、例えばグ
ルタミン酸ナトリウム、核酸系調味料などの化学調味
料、天然食品素材から抽出または分解して得られる調味
料などが挙げられる。これら調味料は、単独または2種
以上組み合わせて用いることができる。
【0022】常温で固体状の香辛料としては、例えばク
ローブ、ガーリック、シナモン等のスパイシースパイス
やバジル、パセリ等のハーブスパイス、クミン、アニス
等のシードスパイスなどが挙げられる。これら香辛料
は、単独または2種以上組み合わせて用いることができ
る。
【0023】常温で固体状の機能性物質としては、例え
ばDHAなどの魚油、リノール酸、リノレン酸、レシチ
ン、月見草油等の動植物油脂類などの粉末化物や、ニン
ジン、アロエ等の生薬の粉末、キトサン、ローヤルゼリ
ー、プロポリスなどが挙げられる。これら機能性物質
は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることがで
きる。
【0024】本発明において、上記芯物質粉末をコーテ
ィングするために使用されるコーティング剤は、(a)
修飾セルロースと(b)可食性の水溶性添加剤及び/又
は可食性の高分子物質とを少なくとも主成分として含む
ものである。本発明において好ましく用いることができ
る修飾セルロースとしては、水溶性を有し、可逆性熱ゲ
ル形成機能を有するメチルセルロース、ヒドロキシメチ
ルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げ
られる。これらのなかで水溶液にした時の濃度がなるべ
く低い、例えば15,000mPa・S(20℃、2%
水溶液)以下のものが特に好ましい。
【0025】また、本発明において、コーティング剤を
構成する可食性の水溶性添加剤及び可食性の高分子物質
としては、例えばショ糖脂肪酸エステル(例えばHLB
13〜15、脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチ
ン酸などの硬化牛脂脂肪酸等)、ポリグリセリン脂肪酸
エステル、フォスファチジルコリンなどの水溶性油脂、
ブドウ糖、果糖などの単糖類、砂糖、乳糖、マルトース
などの少糖類、アラビアガム、ローカストビーンガム、
カラギーナン、キサンタンガム等の水溶性の天然ガム
類、天然物由来の澱粉や、サイクロデキストリン、マル
トデキストリン、還元パラチノース、トレハオース、マ
ルチトール、エリスリトール、キシリトール等の糖アル
コール、アルファー澱粉、澱粉誘導体、ペクチン、グル
コマンナンやグルテン、カゼイン、ゼラチン、ゼイン等
のタンパク類などを挙げることができる。これらの可食
性の水溶性添加剤、可食性の高分子物質は、単独でまた
は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0026】本発明において、芯物質を被覆するために
用いられるコーティング剤は、修飾セルロースを昇温さ
れた水溶液に溶解或いは分散し、この水溶液或いは水分
散液に可食性の水溶性添加剤及び/又は可食性の高分子
物質を溶解または分散させ、この液を冷却して均一な液
とすることにより製造することができる。また、これら
成分が共通の溶剤に溶解する場合には、これら各成分を
各々溶剤に溶解した後各溶解溶液を混合することによ
り、または同一の溶剤に各成分を溶解して均一の混合溶
液とすることにより調製できる。このときの共通の溶剤
としては、通常エタノールまたはエタノール水溶液が安
全性の観点から好ましい。このとき必要に応じてサポニ
ンなどの食品の製造に使用される乳化剤を用いてもよ
い。
【0027】修飾セルロースに対する可食性の水溶性添
加剤及び/又は可食性の高分子物質の使用割合は厳密に
制限されるものではなく、その用途に要求される芯物質
の安定性、放出速度に応じて適宜変更することができ
る。例えば修飾セルロースを多く用いれば、加熱時にお
ける香料等の芯物質材料の揮散を低く抑えることがで
き、またコーティング粉末の耐湿性、芯物質の耐酸化性
は向上し、さらに芯物質の水への放出性が抑えられる。
一方、可食性の水溶性添加剤または可食性の高分子物質
の添加により、コーティング粉末の水どけ性が良好とな
り、この可食性の水溶性添加剤または可食性の高分子物
質の添加量を多くすれば、加熱処理時の香料の揮散性が
高くなり、また本発明のコーティング粉末を配合した飲
食品を口に入れたときの高い香気発現性を得ることがで
きる。可食性の水溶性添加剤及び/又は可食性の高分子
物質は、修飾セルロース1重量部に対して一般的には約
0.005乃至0.75重量部であり、好ましい範囲と
しては、例えば約0.01乃至0.6重量部を挙げるこ
とができる。
【0028】コーティング剤を芯物質にコーティングす
る方法としては、それ自体は既知の方法でよく、例えば
スプレードライ、流動層コーティング法、遠心力コーテ
ィング法、接触・衝突コーティング法が挙げられる。
【0029】流動層コーティング法では、芯物質粉体を
流動状態に保ち、これに液状のコーティング剤を噴霧す
ることによりコーティングが行われる。このときの製造
条件は使用する芯物質の種類や、粒径、コーティング剤
の粘度などにより異なるが、例えば水分含量など種々の
条件をコーティングされた粉末の造粒が起きにくい条件
に保つ必要がある。またチャンバー内の温度は溶剤の蒸
発が十分に行える温度に保つ必要がある。
【0030】遠心力コーティング法では、芯物質を修飾
セルロース混合コーティング剤中に懸濁させ、この懸濁
液を回転板の回転面上に供給し、遠心力を利用して噴霧
化し、乾燥することにより芯物質のコーティングが行わ
れる。このときの回転板の回転速度、回転板の温度、回
転板の大きさなどは、使用する芯物質の種類や、粒径、
懸濁液の粘度、コーティング材料、製造されるコーティ
ング粉末の粒径などにより異なる。しかし、回転板の表
面温度は、少なくともコーティング剤の脂質の融点以上
とし、雰囲気温度は脂質の融点以下とすることが必要で
ある。
【0031】また、接触衝突コーティング法では、修飾
セルロース混合コーティング剤を乾燥、粉砕したもの
を、芯物質粉状体にボールミル、乳鉢、ミキサー等の混
合分散型造粒機を利用して接触、衝突させることにより
コーティングが行われる。このときの操作条件は使用す
る芯物質、コーティング剤の種類や、粒径、使用装置な
どにより好適な条件は異なる。
【0032】芯物質に対するコーティング剤の使用割合
は厳密に制限されるものではなく、使用用途に要求され
る芯物質の安定性、芯物質の放出特性などに応じ適宜変
えることができる。一般的には、コーティング剤の量
は、芯物質1重量部に対して約0.0006乃至0.6
0重量部、好ましくは約0.0012乃至0.36重量
部の範囲を例示することができる。
【0033】本発明によるコーティング粉末は、そのコ
ーティング率とコーティング剤の組成を変えることによ
り芯物質の放出が制御可能なため、広範囲な用途に応用
できる。特に好ましく使用できる用途としては、加熱調
理加工が伴う食品類、ホットケーキ、粉末スープなどの
粉状食品材料、スナック、クッキー、ケーキ類、焼き菓
子などの生地、冷凍、レトルト食品、電子レンジ調理用
食品等が挙げられる。
【0034】本発明によるコーティング粉末のこれらの
食品への賦香量は、コーティング粉末の種類や、添加す
る飲食品の種類によって大きく異なるが、一般的には飲
食品1重量部に対し、香料0.00001乃至0.10
重量部、好ましくは0.0005乃至0.05重量部の
範囲である。
【0035】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に
説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定
されるものではない。まず実施例で用いられる芯物質の
製造例を参考例1として示す。
【0036】参考例1(レモン香料入りエクストルージ
ョン・フレーバーの作製) 水260g及び賦形剤であるショ糖440gとデキスト
リン(パインデックス#1、松谷化学製)360gとを
加熱混合し、溶融物を得た。ここにレモン香料(高砂香
料工業)90gを加え、攪拌し均一に混合した。この混
合物を押し出しプレート付きエクストルーダーに投入
し、押し出し後に乾燥して、レモン香料入りエクストル
ージョン・フレーバーを調製した。
【0037】実施例1 水100gにメチルセルロース(メトローズSM−4、
信越化学工業製)20gを加えて加熱、分散し、そこに
果糖10g(純正化学製)を添加し溶解する。冷却攪拌
しながらエタノール(95%、純正化学製)を400g
加え、均一なコーティング剤530gを得た。
【0038】実施例2 マルチプレックスMP−01型(パウレック社製)に参
考例1のレモン香料入りエクストルージョン・フレーバ
ー500gを仕込み、流動状態を保ちつつ、給気温度6
0〜65℃、排気温度30〜70℃、スプレー速度2〜
3g/分の条件で、実施例1のコーティング剤530g
を噴霧してコーティングを行い、コーティング粉末香料
497gを得た。
【0039】実施例3 水100gにメチルセルロース(メトローズSM−4、
信越化学工業製)20gを加えて加熱、分散し、そこに
ショ糖(純正化学製)10gを添加し、溶解する。冷却
攪拌しながらエタノール(95%、純正化学製)を40
0g加え、均一なコーティング剤530gを得た。
【0040】実施例4 マルチプレックスMP―01型(パウレック社製)に参
考例1のレモン香料入りエクストルージョン・フレーバ
ー500gを仕込み、流動状態を保ちつつ、給気温度6
0〜65℃、排気温度30〜70℃、スプレー速度2〜
3g/分の条件で、実施例3のコーティング剤530g
を噴霧してコーティングを行い、コーティング粉末香料
502gを得た。
【0041】実施例5 水100gにメチルセルロース(メトローズSM−4、
信越化学工業製)20gを加えて加熱、分散し、そこに
ソルビタン脂肪酸エステル(ソルゲンFS−700、第
一工業製薬製)10gを添加し、溶解する。冷却攪拌し
ながらエタノール(95%、純正化学製)を400g加
え、均一なコーティング剤530gを得た。
【0042】実施例6 マルチプレックスMP−01型(パウレック社製)に参
考例1のレモン香料入りエクストルージョン・フレーバ
ー500gを仕込み、流動状態を保ちつつ、給気温度6
0〜65℃、排気温度30〜70℃、スプレー速度2〜
3g/分の条件で実施例5のコーティング剤530gを
噴霧してコーティングを行い、コーティング粉末香料5
00gを得た。
【0043】比較例1 水60gにメチルセルロース(メトローズSM−4、信
越化学工業製)30gを加えて加熱、分散する。その後
冷却攪拌しながらエタノール(95%、純正化学製)を
500g加え、均一なコーティング剤590gを得た。
マルチプレックスMP−01型(パウレック社製)に参
考例1のレモン香料入りエクストルージョン・フレーバ
ー500gを仕込み、流動状態を保ちつつ、給気温度6
0〜65℃、排気温度30〜70℃、スプレー速度2〜
3g/分の条件で上記コーティング剤590gを噴霧し
てコーティングを行い、コーティング粉末香料499g
を得た。
【0044】比較例2 参考例1のレモン香料入りエクストルージョン・フレー
バー200gとパーム硬化油脂(SPF1W、不二製油
製)10gとを乳鉢を使用して緊密に混合することによ
りコーテイング粉末香料210gを得た。
【0045】実施例7 実施例2で調製したコーティング粉末香料を、下記組成
のドウに対し1%添加し、レモン香料風味のクッキーを
試作した。得られたクッキーを本発明品1とし、官能試
験に供した。
【0046】実施例8及び9 実施例2のコーティング粉末香料に替えて実施例4及び
6のコーティング粉末香料を用いることを除き実施例7
と同様にして、クッキーを試作した。得られたクッキー
を各々本発明品2及び3とし、官能試験に供した。
【0047】比較例3及び4 実施例2のコーティング粉末香料に替えて比較例1及び
2のコーティング粉末香料を用いることを除き、実施例
7と同様にして、比較例3及び4のクッキーを試作し、
比較品1、2とした。得られたクッキーは以下の官能試
験に供した。
【0048】官能試験1 本発明品1、2、及び比較品1のクッキーを試食し、香
料の発現の速さについて評価した。結果は、発明品1>
発明品2>比較品1であった。この結果は、適当な可食
性の水溶性添加物を加えることで、常温でのメチルセル
ロースの溶解速度をコントロールできることを示してい
る。
【0049】官能試験2 本発明品3及び比較品1、2の各クッキーについて5名
の専門パネラーによる官能試験を実施した。評価は香気
の強さ(焼き残り)、香料の口の中での発現の速さ、強
度について以下の5段階で評価した。(以下は5名のパ
ネラーの平均値)
【0050】〔評価基準〕 A:非常に良好 B:良好 C:普通、 D:やや不良 E:不良
【0051】
【表1】
【0052】*:各パネルの評価のAからEをそれぞれ
5点(A評価)から1点(E評価)とし、その総得点の
15点満点を100点換算した値とする。
【0053】上記評価において、本発明品3が、総合
点、及び香料の焼き残り、香料の口中での発現の速さ、
強度のすべての点で比較品1より優れているとの専門パ
ネラーの評価があった。すなわち、メチルセルロースに
ソルビタン脂肪酸エステルを加えた場合、メチルセルロ
ースのみの場合と較べると、加熱時の香料の保護につい
てはほぼ同等かやや優れている程度であるが、クッキー
を食した場合の口のなかでの香料の発現の速さが改良さ
れている結果が得られた。これは、可食性の水溶性添加
物をメチルセルロースに混合することで、メチルセルロ
ースの高温での可逆性ゲル形成による香料保護を低下さ
せることなく、常温にもどった場合の水溶解性を改良で
きることを示している。また、コーティング剤としてよ
く使われる油脂を用いた比較品2と較べた場合、本発明
品3は、すべての評価項目で比較品2より優れていた。
【0054】実施例10 水500gにメチルセルロース(メトローズSM−4、
信越化学工業製)20gを加えて加熱、分散し、そこに
プルラン(F20、林原(株)製)10gを添加し、溶
解した。これを冷却攪拌し、均一なコーティング剤53
0gを得た。
【0055】実施例11 マルチプレックスMP−01型(パウレック社製)に参
考例1のレモン香料入りエクストルージョン・フレーバ
ー500gを仕込み、流動状態を保ちつつ、給気温度6
0〜65℃、排気温度30〜70℃、スプレー速度2〜
3g/分の条件で実施例10のコーティング剤530g
を噴霧してコーティングを行い、コーティング粉末香料
500gを得た。
【0056】実施例12 水500gにメチルセルロース(メトローズSM−4、
信越化学工業製)20gを加えて加熱、分散し、そこに
マルトデキストリン(パインデックス#1、松谷化学
製)10gを添加し、溶解した。これを冷却攪拌し、均
一なコーティング剤530gを得た。
【0057】実施例13 マルチプレックスMP−01型(パウレック社製)に参
考例1のレモン香料入りエクストルージョン・フレーバ
ー500gを仕込み、流動状態を保ちつつ、給気温度6
0〜65℃、排気温度30〜70℃、スプレー速度2〜
3g/分の条件で、実施例12のコーティング剤530
gを噴霧してコーティングを行い、コーティング粉末香
料497gを得た。
【0058】実施例14 マルチプレックスMP−01型(パウレック社製)に約
100ミクロン程度に粉砕したクエン酸(純正化学製)
500gを仕込み、流動状態を保ちつつ、給気温度60
〜65℃、排気温度30〜70℃、スプレー速度2〜3
g/分の条件で実施例5のコーティング剤530gを噴
霧してコーティングを行い、コーティング酸味料粉末4
92gを得た。
【0059】実施例15 マルチプレックスMP−01型(パウレック社製)に参
考例1のレモン香料入りエクストルージョン・フレーバ
ー500gを仕込み、流動状態を保ちつつ、給気温度6
0〜65℃、排気温度30〜70℃、スプレー速度2〜
3g/分の条件で、実施例1のコーティング剤2,12
0gを噴霧してコーティングを行い、コーティング粉末
香料528gを得た。
【0060】実施例16 マルチプレックスMP−01型(パウレック社製)に参
考例1のレモン香料入りエクストルージョン・フレーバ
ー500gを仕込み、流動状態を保ちつつ、給液温度5
0℃、給気温度65℃、排気温度50℃、スプレー速度
20〜25g/分の条件で、実施例1のコーティング剤
10.6gを噴霧してコーティングを行い、コーティン
グ粉末香料478gを得た。
【0061】実施例17 マルチプレックスMP−01型(パウレック社製)に参
考例1のレモン香料入りエクストルージョン・フレーバ
ー500gを仕込み、流動状態を保ちつつ、給気温度6
0〜65℃、排気温度30〜70℃、スプレー速度2〜
3g/分の条件で、実施例5のコーティング剤3,18
0gを噴霧してコーティングを行い、コーティング粉末
香料548gを得た。
【0062】実施例18 マルチプレックスMP−01型(パウレック社製)に参
考例1のレモン香料入りエクストルージョン・フレーバ
ー500gを仕込み、流動状態を保ちつつ、給気温度6
0〜65℃、排気温度30〜70℃、スプレー速度2〜
3g/分の条件で、実施例5のコーティング剤53gを
噴霧してコーティングを行い、コーティング粉末香料4
80gを得た。
【0063】実施例19 水500gにメチルセルロース(メトローズSM−4、
信越化学工業製)20gを加えて加熱、分散し、そこに
デキストリン0.2g(パインデックス#1、松谷化学
製)を添加し、溶解する。これを冷却攪拌し、均一なコ
ーティング剤520.2gを得た。
【0064】実施例20 マルチプレックスMP−01型(パウレック社製)に参
考例1のレモン香料入りエクストルージョン・フレーバ
ー500gを仕込み、流動状態を保ちつつ、給気温度6
0〜65℃、排気温度30〜70℃、スプレー速度2〜
3g/分の条件で、実施例19のコーティング剤52
0.2gを噴霧してコーティングを行い、コーティング
粉末香料約500gを得た。
【0065】実施例21 水500gにメチルセルロース(メトローズSM−4、
信越化学工業株式会社製)20gを加えて加熱し分散
し、そこにゼラチン12g(AP−200,新田ゼラチ
ン製)を添加し溶解した。これを冷却攪拌し、均一なコ
ーティング剤532gを得た。
【0066】実施例22 マルチプレックスMP−01型(パウレック社製)に参
考例1のレモン香料入りエクストルージョン・フレーバ
ー500gを仕込み、流動状態を保ちつつ、給気温度6
0〜65℃、排気温度30〜70℃、スプレー速度20
〜25g/分の条件で、実施例21のコーティング剤5
32gを噴霧してコーティングを行い、コーティング粉
末香料487gを得た。
【0067】上記実施例11、13、15〜18、20
及び22で得られた粉末香料は、いずれも実施例1、3
及び5の粉末香料と同様の特性を有するものであった。
また、実施例14のコーティングされた酸味料粉末も、
高温において安定であり、かつ冷却時の水中への酸味料
の放出性に優れたものであった。
【0068】
【発明の効果】以上詳述したように、修飾セルロース
と、可食性の水溶性添加剤及び/又は可食性の高分子物
質とを含むコーティング剤を用いることにより、芯物質
の発現性、放出制御性、更には呈味性にも優れ、電子レ
ンジ食品、焼き菓子等食品加工時に加熱処理を伴なう飲
食品においても香気香味付与或いは増強剤などとして好
ましく使用することができるコーティング粉末を製造す
ることができる。また、このコーティング粉末を飲食品
の香気香味付与或いは増強剤として用いることにより、
調理或いは電子レンジ等の加熱によっても香気香味が揮
散しない飲食品を得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C11B 9/00 C11B 9/00 Z 15/00 15/00 // A21D 2/08 A21D 2/08 13/08 13/08 (72)発明者 石井 潯 神奈川県平塚市西八幡一丁目4番11号 高 砂香料工業株式会社総合研究所内 Fターム(参考) 4B018 LB01 LB09 LE03 MC04 MD23 ME13 MF08 4B032 DB21 DL05 4B035 LC01 LE01 LE07 LG09 LG15 LG17 LG18 LG20 LG26 LK01 LK02 LK03 LK19 LP24 LP26 LP36 4B047 LE06 LE08 LG22 LG23 LG24 LG27 LG29 LG30 LG36 LG43 LG70 LP07 LP09 4H059 BA17 BB15 BB22 BB44 BB45 BB51 BC10 BC23 BC43 BC45 BC46 CA53 DA09 DA16

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(a)修飾セルロースと(b)可食性の水
    溶性添加剤及び/又は可食性の高分子物質を含むことを
    特徴とするコーティング剤。
  2. 【請求項2】可食性の水溶性添加剤又は可食性の高分子
    物質が、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸
    エステルなどの水溶性油脂から選ばれた少なくとも1種
    であることを特徴とする請求項1記載のコーティング
    剤。
  3. 【請求項3】可食性の水溶性添加剤又は可食性の高分子
    物質が、ブドウ糖、果糖、砂糖、乳糖、マルトース、ブ
    ドウ糖、糖アルコール類、水溶性の天然ガム類、澱粉、
    澱粉誘導体、タンパク類よりなる群から選ばれた少なく
    とも一種であることを特徴とする請求項1記載のコーテ
    ィング剤。
  4. 【請求項4】常温で固体状の芯物質を、上記請求項1〜
    3の何れかに記載されたコーティング剤によりコーティ
    ングしてなることを特徴とするコーティング粉末。
  5. 【請求項5】芯物質が、香料組成物、香辛料、色素、酸
    味料、ビタミン類、甘味料、調味料、香辛料及び機能性
    物質からなる群から選ばれた少なくとも1種であること
    を特徴とする請求項4記載のコーティング粉末。
  6. 【請求項6】芯物質が香料組成物であることを特徴とす
    る請求項4記載のコーティング粉末。
  7. 【請求項7】修飾セルロースと可食性の水溶性添加剤及
    び/又は可食性の高分子物質との均一な混合物からなる
    コーティング剤を、芯物質1重量部に対して、約0.0
    006乃至0.60重量部コーティングすることを特徴
    とするコーティング粉末の製造方法。
  8. 【請求項8】請求項7に記載のコーティング粉末の製造
    方法において、コーティング剤を常温で固体の芯物質に
    コーティングする方法が、スプレードライ、流動層コー
    ティング法、遠心力コーティング法または接触・衝突コ
    ーティング法で行われることを特徴とするコーティング
    粉末の製造方法。
  9. 【請求項9】請求項4〜6のいずれかに記載のコーティ
    ング粉末を含むことを特徴する飲食品。
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