JP4166937B2 - 新規粉末素材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、香料、色素およびビタミン類等の機能性物質の保存安定性に優れ、各種の飲食品、化粧品などに配合した際に長期間安定に香気、香味、色調および/または各種の機能性を付与することのできる粉末素材に関し、さらに詳しくは、香料、色素および機能性物質から選択される少なくとも1種の成分と、ニゲロオリゴ糖を含んでなる粉末状混合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、飲料、その他の食品および化粧品などに好ましい香気、香味、色調を付与したり、例えば、脳機能改善作用やコレステロール低下作用などの生理活性作用を付与する目的で、油性着香料、油溶性色素類、ビタミン類等の機能性物質などの油性材料を、植物性天然ガム質溶液であるアラビアガム溶液あるいは化工でん粉、デキストリンのごとき乳化剤、賦形剤などと混合した後、噴霧乾燥して得られる粉末素材が一般的に使用されている。また、上記のような油性材料を、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどの合成界面活性剤、適当な賦形剤などを用いて混合または乳化し、噴霧乾燥する方法も行われている。
【0003】
しかしながら、香料、色素およびビタミン類等の機能性物質を乳化剤、賦形剤などの存在下に乳化し、この乳化混合物を、例えば噴霧乾燥して得られる粉末素材は、香気、香味、色調、機能性物質の保存安定性の点で必ずしも満足できるものではない。
【0004】
一方、本発明者らは先に、香料、色素およびビタミン類等の機能性物質の保存安定性を改善することを目的として、香料などの可食性油性材料と水溶性大豆多糖類を含む乳化混合物を乾燥したものからなることを特徴とする水溶性粉末香料(特開平7−107937号公報参照)を提案した。
【0005】
上記の提案は、香料、色素、ビタミン類等の機能性物質の保存安定性を改善するためにそれなりの効果を奏するが、未だ十分に満足できるものではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、香料、色素およびビタミン類等の機能性物質の保存安定性に優れ、各種の飲食品、化粧品などに利用することができ、これらの飲食品、化粧品などの香気、香味、色調、嗜好性などになんら悪影響を与えることなく、飲食品や化粧品などに長期間安定に香気、香味、色調および各種の機能性を付与することのできる粉末状混合物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記のごとき従来型の粉末素材について、その欠点を解決すべく鋭意研究を行った結果、香料、色素または機能性物質の乳化の際に、ニゲロオリゴ糖を使用することにより、香料、色素およびビタミン類等の機能性物質の保存安定性に優れた粉末状混合物が得られること、そしてその粉末状混合物は、各種の飲食品、化粧品などの香気、香味、色調、嗜好性などに悪影響を与えることなく、飲食品や化粧品などに長期間安定に香気、香味、色調および/または機能性を付与することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本発明によれば、香料、色素および機能性物質から選択される少なくとも1種の成分と、ニゲロオリゴ糖を含んでなる粉末状混合物、並びに香料、色素および機能性物質から選択される少なくとも1種の成分と、ニゲロオリゴ糖を含んでなる水性乳化物を乾燥することを特徴とする上記の粉末状混合物の製造法が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0010】
本発明において使用しうる香料および色素は、特に制限されるものでなく、飲食品、化粧品等に通常用いられるものはいずれも使用可能であり、香料としては、例えば、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツなどの柑橘類精油;花精油、ペパーミント油、スペアミント油、スパイス油などの植物精油;コーラナッツ、コーヒー、ワニラ、ココア、紅茶、緑茶、ウーロン茶、香辛料などの粉砕物、エキストラクト類、オレオレジン類、エッセンス類、回収香;合成香料化合物、調合香料組成物及びこれらの任意の混合物などが挙げられ、色素としては、例えば、α−カロチン、β−カロチン、リコペン、パプリカ色素、アナトー色素、クロロフィル、クチナシ色素、ベニバナ色素、モナスカス色素、ビート色素、エルダベリー色素、マリーゴールド色素、コチニール色素などが挙げられる。
【0011】
本明細書において「機能性物質」とは、生体調節作用を有する物質を意味し、かかる機能性物質としては、例えば、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、DHAおよび/またはEPA含有魚油、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、月見草油、ボラージ油、レシチン、オクタコサノール、ローズマリー、セージ、γ−オリザノール、β−カロチン、パームカロチン、シソ油、キチン、キトサン、ローヤルゼリー、プロポリス;ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンKなどの油溶性ビタミン類およびその誘導体;ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンL、ビタミンP、ニコチン酸、パントテン酸、コリンなどの水溶性ビタミン類およびその誘導体などを挙げることができる。
【0012】
また、本発明で使用するニゲロオリゴ糖は、ニゲロースやニゲロシルグルコース(3−O−α−D−glucosylD−maltose)、ニゲロシルマルトース(3−O−α−D−glucosylD−maltotriose)など、分子中にα−1,3−グルコシド結合を1つ以上有するオリゴ糖であり、例えば、α−1,4−グルコシド結合したポリサッカライド又はオリゴサッカライドを含む基質に、アクレモニウム(Acremonium)属に属し、α−1,3−グルコシド結合をもたらす糖転移酵素を生産する真菌を作用させてニゲロオリゴ糖を製造する方法(特開平7−59559号公報参照)などにより製造することができる。
【0013】
本発明で使用するニゲロオリゴ糖は、ニゲロース、ニゲロシルグルコース、ニゲロシルマルトースなどのように、少なくとも1種以上のα−1,3−グルコシド結合を含む、グルコース重合度2以上のオリゴ糖(ニゲロオリゴ糖)の他に、グルコースなどの単糖類、α−1,3−グルコシド結合以外の結合からなる各種のオリゴ糖(マルトースなど)或いはデキストリンなどを含有してもよい。
【0014】
本発明の粉末状混合物におけるニゲロオリゴ糖の含有量は、厳密に制限されるものではなく、使用する香料、色素または機能性物質の種類や形態などにより適宜に選択することができるが、一般には、粉末状混合物の重量を基準にして約5〜約60重量%、好ましくは約10〜約40重量%の範囲内が適当である。
【0015】
本発明によれば、以上に述べた香料、色素および機能性物質から選択される少なくとも1種の成分と、ニゲロオリゴ糖を、水と共に混合し、得られる混合物を乾燥することにより、本発明の粉末状混合物を容易に得ることができる。また、必要に応じて上記混合物には、砂糖、乳糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴等の糖類;糖アルコール類;デキストリン等の各種デンプン分解物およびデンプン誘導体、デンプン、ゼラチン、アラビアガム等の天然ガム類、水溶性ヘミセルロース、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、キラヤ抽出物などの乳化剤を適宜配合することもできる。これらの配合量は粉末状混合物に望まれる特性等に応じて適宜に選択することができる。
【0016】
本発明の粉末状混合物の製造法の好ましい一実施態様を示せば、例えば、まず水に前記した如きニゲロオリゴ糖を溶解させ、それに前記した如き香料、色素および機能性物質から選択される少なくとも1種の成分を添加し、ホモミキサー、コロイドミル、高圧ホモジナイザー等を用いて混合処理を行い、得られる乳化物を真空乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥等の乾燥手段で乾燥することにより、香料、色素および機能性物質の保存安定性に優れた粉末状混合物を得ることができる。
【0017】
かくして得られる粉末状混合物は、例えば、飲料、粉末飲料、チューインガム、錠菓、スナック類、水産加工食品、畜肉加工食品、レトルト食品、冷凍食品、インスタントラーメン、健康食品などの飲食品類に適当量を配合することにより、長期間安定に香気、香味、色調、機能性が付与された飲食品類を提供することができる。また、例えば、制汗剤、シャンプー類、ヘアークリーム類、ポマード類、オシロイ、口紅など化粧品類に適当量を配合することにより長期間安定に香気、色調、機能性が付与された化粧品類を提供することができる。さらにまた、洗濯用洗剤類、消毒用洗剤類、室内芳香剤などの保健・衛生材料類、医薬品、タバコなどに利用することができる。これら飲食品類、化粧品類などに配合される粉末状混合物の使用量は、賦香品の種類、形態などにより異なるが、一般的には、賦香品1重量部に対して約0.001〜約0.1重量部、好ましくは約0.01〜約0.05重量部の範囲内で使用することができる。
【0018】
【実施例】
次に実施例、比較例および参考例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0019】
実施例1
水160gにニゲロオリゴ糖含有シロップ(ニゲロオリゴ糖50重量%含有、固形分:75重量%)200g、オクテニルコハク酸デンプン30gを加えて溶解し、85〜90℃で15分間加熱殺菌する。これを40℃に冷却し、レモンフレーバー20gを添加混合した後、TK−ホモミキサー(特殊機化社製、商品名)で乳化した。この乳化液をモービルマイナー型スプレードライヤー(ニロ社製、商品名)を使用して、入口温度150℃、出口温度80℃にて噴霧乾燥し、レモン粉末香料170g(本発明品1)を得た。
【0020】
実施例2
実施例1においてニゲロオリゴ糖含有シロップ200gを160gに、さらにオクテニルコハク酸デンプン30gをアラビアガム60gに置き換えは以外は実施例1と同様に処理してレモン粉末香料160g(本発明品2)を得た。
【0021】
比較例1
実施例1においてニゲロオリゴ糖含有シロップ200gの代わりにデキストリン(DE10)150gを用いる以外は実施例1と同様に処理してレモン粉末香料170g(比較品1)を得た。
【0022】
比較例2
実施例2においてニゲロオリゴ糖含有シロップ160gの代わりにデキストリン(DE10)140gを用いる以外は実施例2と同様に処理してレモン粉末香料160g(比較品2)を得た。
【0023】
参考例1
実施例1、2及び比較例1、2で得られたレモン粉末香料を0.5%賦香して、下記に示す方法によりタブレットを調製した。調製したタブレットを下記に示す保存試験に付し、専門のパネラーにて香気香味の官能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0024】
Figure 0004166937
【0026】
保存試験方法
▲1▼低密度ポリエチレン袋にタブレットを入れ、遮光下で50℃、4週間保存した。
▲2▼高密度ポリエチレン袋にタブレットを入れ、4500ルックスの蛍光灯照射で2週間保存した。
対照品として、アルミ袋にタブレットを入れ、−18℃に保存したものを用いた。
【0027】
【表1】
Figure 0004166937
【0028】
但し、表中の数字は、−18℃で保存したものの評価を10として、それと対比したときの官能評価であり、数値が低いほど香気香味が劣化していることを意味する。
【0029】
表1から明らかなように、本発明の粉末状混合物を配合した実施例1および実施例2のタブレットは比較例1および比較例2のタブレットに比べて香気香味の安定性の点で優れている。
【0030】
実施例3
水160gにニゲロオリゴ糖含有シロップ160g、オクテニルコハク酸デンプン60gを加えて溶解し、85〜90℃で15分間加熱殺菌する。これを40℃に冷却し、パプリカオイル20gを添加混合した後、TK−ホモミキサーで乳化した。この乳化液をモービルマイナー型スプレードライヤーを使用して、入口温度160℃、出口温度80℃にて噴霧乾燥し、パプリカ含有粉末165g(本発明品3)を得た。
【0031】
比較例3
実施例3においてニゲロオリゴ糖含有シロップ160gに変え、デキストリン(DE10)120gを用いる以外は実施例3と同様に処理してパプリカ含有粉末165g(比較品3)を得た。
【0032】
参考例2
実施例3及び比較例3で得られたパプリカ含有粉末を下記に示す保存試験に付し、分光光度計を用いてパプリカ色素の含量を測定した。その結果を表2に示す。
なお、表2中のパプリカ色素の残存率は、調製直後のパプリカ色素の含量を100%として、50℃にて4週間保存したもののパプリカ色素の残存率で示す。
保存試験方法
低密度ポリエチレン袋に本発明品3および比較品3のパプリカ含有粉末を入れ、遮光下で50℃にて4週間保存した。
【0033】
【表2】
Figure 0004166937
【0034】
実施例4
水160gにニゲロオリゴ糖含有シロップ160g、オクテニルコハク酸60gを加えて溶解し、85〜90℃で15分間加熱殺菌する。これを40℃に冷却し、ビタミンAパルミテート20gを添加混合した後、TK−ホモミキサーで乳化した。この乳化液をモービルマイナー型スプレードライヤーを使用して、入口温度160℃、出口温度80℃にて噴霧乾燥し、ビタミンA含有粉末155g(本発明品4)を得た。
【0035】
比較例4
実施例4においてニゲロオリゴ糖含有シロップ160gの代わりにデキストリン(DE10)120gを用いる以外は実施例4と同様に処理してビタミンA含有粉末160g(比較品4)を得た。
【0036】
参考例3
実施例4及び比較例4で得られたビタミンA含有粉末を下記に示す保存試験に付し、高速液体クロマトグラフィーを用いてビタミンAの含量を測定した。その結果を表3に示す。
なお、表3中のビタミンAの残存率は、調製直後のビタミンAの含量を100%として、35℃にて4週間保存したもののビタミンAの残存率で示す。
保存試験方法
低密度ポリエチレン袋に本発明品6および比較品6のビタミンA含有粉末を入れ、遮光下で35℃にて4週間保存した。
【0037】
【表3】
Figure 0004166937
【0038】
【発明の効果】
以上述べたとおり、本発明の粉末状混合物は、香料、色素、機能性物質の保存安定性に優れ、各種の飲食品、化粧品などに利用することができ、これらの飲食品、化粧品などの香気、香味、色調、嗜好性になんら悪影響を与えることなく、長期間安定に香気、香味、色調および機能性を付与することができ、飲食品、化粧品等、広い分野への用途が開けるなど極めて有用である。

Claims (1)

  1. 香料および乳化剤と、粉末状混合物の重量に基づいて、5〜60重量%のニゲロオリゴ糖を含んでなる水性乳化物を乾燥することを特徴とする粉末香料の製造法。
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