JP4057404B2 - 保存安定性に優れた粉末素材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、香料、色素およびビタミン類等の機能性物質の保存安定性に優れ、各種の飲食品、化粧品などに配合した際に長期間安定に香気、香味、色調および/または各種の機能性を付与することのできる粉末素材に関し、さらに詳しくは、香料、色素および機能性物質から選択される少なくとも1種の成分と、乳化剤および酵母細胞壁画分を含んでなる粉末状混合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、飲料、その他の食品および化粧品などに好ましい香気、香味、色調を付与したり、例えば、脳機能改善作用やコレステロール低下作用などの生理活性作用を付与する目的で、油性着香料、油溶性色素類、ビタミン類等の機能性物質などの油性材料を、植物性天然ガム質溶液であるアラビアガム溶液あるいは化工でん粉、デキストリンのごとき乳化剤、賦形剤などと混合した後、噴霧乾燥して得られる粉末素材が一般的に使用されている。また、上記のような油性材料を、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどの合成界面活性剤、適当な賦形剤などを用いて混合または乳化し、噴霧乾燥する方法も行われている。
【0003】
しかしながら、香料、色素およびビタミン類等の機能性物質を乳化剤、賦形剤などの存在下に乳化し、この乳化混合物を、例えば噴霧乾燥して得られる粉末素材は、香気、香味、色調、機能性物質の保存安定性の点で必ずしも満足できるものではない。
【0004】
一方、酵母細胞壁画分については、例えば、酵素処理した酵母から可溶性菌体内成分を除去した菌体残さからなる酵母細胞壁画分を、香料などのコーティング剤として使用する提案(特許文献1参照)、コーティング剤として、該酵母細胞壁画分と、増粘多糖類などと組み合わせて使用してなるコーティング粉末(特許文献2参照)などが提案されている。
【0005】
上記の提案は、酵母細胞壁画分を香料などの粉末表面にコーティング処理するものであり、それなりに保存性の高い粉末素材が得られるが、コーティング装置内で長時間、粉末を2次的に加工する必要があり、そのため熱エネルギー等のコストが高くなったり、得られるコーティング粉末が熱ダメージを受けるなどの問題点があり、未だ十分に満足できるものではない。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−44878号公報
【特許文献2】
特開2002−53807号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、香料、色素およびビタミン類等の機能性物質の保存安定性に優れ、各種の飲食品、化粧品などに利用することができ、これらの飲食品、化粧品などの香気、香味、色調、嗜好性などになんら悪影響を与えることなく、飲食品や化粧品などに長期間安定に香気、香味、色調および各種の機能性を付与することのできる粉末状混合物を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記のごとき従来型の粉末素材について、その欠点を解決すべく鋭意研究を行った結果、香料、色素または機能性物質の乳化の際に、例えば、酵素処理した酵母から可溶性菌体内成分を除去した酵母細胞壁画分と、乳化剤を併用すると、香料、色素およびビタミン類等の機能性物質の保存安定性に優れた粉末状混合物が得られること、そしてその粉末状混合物は、各種の飲食品、化粧品などの香気、香味、色調、嗜好性などに悪影響を与えることなく、飲食品や化粧品などに長期間安定に香気、香味、色調および/または機能性を付与することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして、本発明によれば、香料、色素および機能性物質から選択される少なくとも1種の成分と、乳化剤および酵母細胞壁画分を含んでなる粉末状混合物、並びに香料、色素および機能性物質から選択される少なくとも1種の成分と、乳化剤および酵母細胞壁画分を含んでなる水性乳化物を乾燥することを特徴とする上記の粉末状混合物の製造法が提供される。
【0010】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において使用しうる香料および色素は、特に制限されるものでなく、飲食品、化粧品等に通常用いられるものはいずれも使用可能であり、香料としては、例えば、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツなどの柑橘類精油;花精油、ペパーミント油、スペアミント油、スパイス油などの植物精油;コーラナッツ、コーヒー、ワニラ、ココア、紅茶、緑茶、ウーロン茶、香辛料などの粉砕物、エキストラクト類、オレオレジン類、エッセンス類、回収香;合成香料化合物、調合香料組成物及びこれらの任意の混合物などが挙げられ、色素としては、例えば、α−カロチン、β−カロチン、リコペン、パプリカ色素、アナトー色素、クロロフィル、クチナシ色素、ベニバナ色素、モナスカス色素、ビート色素、エルダベリー色素、マリーゴールド色素、コチニール色素などが挙げられる。
【0012】
本明細書において「機能性物質」とは、生体調節作用を有する物質を意味し、かかる機能性物質としては、例えば、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、DHAおよび/またはEPA含有魚油、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、月見草油、ボラージ油、レシチン、オクタコサノール、ローズマリー、セージ、γ−オリザノール、β−カロチン、パームカロチン、シソ油、キチン、キトサン、ローヤルゼリー、プロポリス;ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンKなどの油溶性ビタミン類およびその誘導体;ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンL、ビタミンP、ニコチン酸、パントテン酸、コリンなどの水溶性ビタミン類およびその誘導体などを挙げることができる。
【0013】
さらに、本発明で使用する乳化剤も特に制限されるものではなく、従来から飲食品等に用いられている各種の乳化剤が使用可能であり、例えば、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、化工でん粉、ソルビタン脂肪酸エステル、キラヤ抽出物、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、カラヤガム、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸及びその塩類、カラギーナン、ゼラチン、カゼイン等を挙げることができる。乳化剤の使用量は、厳密に制限されるものではなく、使用する乳化剤の種類などにより異なり一概には言えないが、通常、粉末状混合物に対して0.5〜70重量%、好ましくは1〜40重量%の範囲内を例示することができる。
【0014】
また、本発明で使用する酵母細胞壁画分は、特開2000−44878号公報に記載されているものであれば、酵母の種類、酸処理の有無などに関係なくいずれのものも使用することができ、その取得方法も当該公報に記載されている方法を採用して取得することができる。酵母細胞壁画分は、市場でも入手することができ、例えば、「イーストラップ」(キリンビール(株)製の酵母細胞壁画分の商品名)を例示することができる。酵母細胞壁画分の使用量は、厳密に制限されるものではなく、使用する香料、色素、機能性素材の種類、粉末状混合物の使用目的などにより異なり一概には言えないが、通常、粉末状混合物に対して10〜95重量%、好ましくは20〜90重量%の範囲内が適当である。
【0015】
また、本発明の粉末状混合物における乳化剤と酵母細胞壁画分の配合比率は特に制限されないが、一般には、乳化剤:酵母細胞壁画分の重量比を約1:200〜約10:1、好ましくは約1:100〜約5:1の範囲内とすることにより、香料、色素およびビタミン類等の機能性物質の保存安定性に優れた粉末状混合物が得られる。
【0016】
本発明によれば、以上に述べた香料、色素および機能性物質から選択される少なくとも1種の成分と、乳化剤及び酵母細胞壁画分を、水と共に混合し、得られる混合物を乾燥することにより、本発明の粉末状混合物を容易に得ることができる。また、必要に応じて上記混合物には、砂糖、乳糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴等の糖類;糖アルコール類;デキストリン等の各種デンプン分解物およびデンプン誘導体、デンプンなどを適宜配合することもできる。これらの配合量は粉末状混合物に望まれる特性等に応じて適宜に選択することができる。
【0017】
本発明の粉末状混合物の製造法の好ましい一実施態様を示せば、例えば、まず水に前記した如き乳化剤と酵母細胞壁画分を溶解させ、それに前記した如き香料、色素および機能性物質から選択される少なくとも1種の成分を添加し、ホモミキサー、コロイドミル、高圧ホモジナイザー等を用いて混合処理を行い、得られる乳化物を真空乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥等の乾燥手段で乾燥することにより、香料、色素および機能性物質の保存安定性に優れた粉末状混合物を得ることができる。
【0018】
かくして得られる粉末状混合物は、例えば、飲料、粉末飲料、チューインガム、錠菓、スナック類、水産加工食品、畜肉加工食品、レトルト食品、冷凍食品、インスタントラーメン、健康食品などの飲食品類に適当量を配合することにより、長期間安定に香気、香味、色調、機能性が付与された飲食品類を提供することができる。また、例えば、制汗剤、シャンプー類、ヘアークリーム類、ポマード類、オシロイ、口紅など化粧品類に適当量を配合することにより長期間安定に香気、色調、機能性が付与された化粧品類を提供することができる。さらにまた、洗濯用洗剤類、消毒用洗剤類、室内芳香剤などの保健・衛生材料類、医薬品、タバコなどに利用することができる。これら飲食品類、化粧品類などに配合される粉末状混合物の使用量は、賦香品の種類、形態などにより異なるが、一般的には、賦香品1重量部に対して約0.001〜約0.1重量部、好ましくは約0.01〜約0.05重量部の範囲内で使用することができる。
【0019】
次に実施例、比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0020】
【実施例】
実施例1
酵母細胞壁懸濁液(固形分9.5%)1300gにオクテニルコハク酸エステル化澱粉40gを溶解し、殺菌、冷却後、レモンフレーバー(長谷川香料社製)40gを混合乳化し、スプレードライヤL−8型(大川原化工機)で噴霧乾燥し、レモンフレーバーパウダー(本発明品1)160gを得た。
【0021】
実施例2
酵母細胞壁懸濁液(固形分9.5%)650gにオクテニルコハク酸エステル化澱粉40gとトレハロース60gを溶解し、殺菌、冷却後、レモンフレーバー(長谷川香料社製)40gを混合乳化し、実施例1と同様に噴霧乾燥し、レモンフレーバーパウダー155g(本発明品2)を得た。
【0022】
実施例3
酵母細胞壁懸濁液(固形分9.5%)650gにアラビアガム40gとトレハロース60gを溶解し、殺菌、冷却後、レモンフレーバー(長谷川香料社製)40gを混合乳化し、実施例1と同様に噴霧乾燥し、レモンフレーバーパウダー153g(本発明品3)を得た。
【0023】
比較例1
イオン交換水240gにオクテニルコハク酸エステル化澱粉40gとDEが10のマルトデキストリン120gを溶解し、殺菌、冷却後、レモンフレーバー(長谷川香料社製)40gを混合乳化し、実施例1と同様に噴霧乾燥し、レモンフレーバーパウダー164g(比較品1)を得た。
(保存試験1)
低密度ポリエチレン袋に上記粉末を入れ、遮光下で50℃、−18℃で4週間保存試験を行った。その試料を水に希釈し、パネラー10名による官能評価を行い、パネラー10名の平均的な評価を表1に示す。なお、評価基準は以下に示す基準で行った。
評価基準
5:劣化臭なく非常に良好
4:劣化臭ほとんどなく良好
3:劣化臭がややある
2:劣化臭が強い
1:劣化臭が非常に強い
【0024】
【表1】
【0025】
実施例4
酵母細胞壁懸濁液(固形分9.0%)1500gにオクテニルコハク酸エステル化澱粉40gを溶解し、殺菌、冷却後、パプリカオレオレジン(長谷川香料社製)20g混合乳化し、スプレードライヤL−8(大川原化工機)で噴霧乾燥し、パプリカパウダー(本発明品4)145gを得た。
【0026】
実施例5
酵母細胞壁懸濁液(固形分9.0%)650gにオクテニルコハク酸エステル化澱粉40gとDEが10のマルトデキストリン80gを溶解し、殺菌、冷却後、パプリカオレオレジン(長谷川香料社製)20g混合乳化し、実施例4と同様に噴霧乾燥し、パプリカパウダー155g(本発明品5)を得た。
【0027】
実施例6
実施例5と組成は変えずに、真空乾燥機(共和真空社製)で棚温60℃、乾燥時間15時間にて真空乾燥し、粉砕後30メッシュパスし、パプリカパウダー(本発明品6)187gを得た。
【0028】
比較例2
イオン交換水240gにオクテニルコハク酸エステル化澱粉40gとDEが10のマルトデキストリン140gを溶解し、殺菌、冷却後、パプリカオレオレジン(長谷川香料社製)20gを混合乳化し、実施例4と同様に噴霧乾燥し、パプリカパウダー164g(比較品2)を得た。
(保存試験2)
保存試験1と同様な条件で行い、保存後、分光光度計でパプリカ色素の残存率を測定し、その結果を表2に示す。なお、パプリカ色素の残存率は、製造直後のパプリカ色素の含有量を100%として表示した。
【0029】
【表2】
【0030】
以上のように、酵母細胞壁を賦形剤として粉末素材に使用することにより、保存安定性の優れた製品の調製が可能となった。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、酵母細胞壁画分と、乳化剤を併用することにより、香料、色素およびビタミン類等の機能性物質の保存安定性に優れた粉末状混合物を簡便に得ることができる。そしてその粉末状混合物は、各種の飲食品、化粧品などの香気、香味、色調、嗜好性などに悪影響を与えることなく、飲食品や化粧品などに長期間安定に香気、香味、色調および/または機能性を付与することができる。
Claims (1)
- 香料、色素およびドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、DHAおよび/またはEPA含有魚油、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、月見草油、ボラージ油、レシチン、オクタコサノール、ローズマリー、セージ、γ−オリザノール、β−カロチン、パームカロチン、シソ油、キチン、キトサン、ローヤルゼリー、プロポリス、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンL、ビタミンP、ニコチン酸、パントテン酸、コリンから選ばれる機能性物質から選択される少なくとも1種の成分と、粉末状混合物の重量に基づいて、アラビアガムまたはオクテニルコハク酸エステル化澱粉から選択される乳化剤を0.5〜70重量%および酵母細胞壁画分を10〜95重量%を乳化した水性乳化物を乾燥することを特徴とする粉末状混合物の製造法。
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