JP2002317227A - 鋼板の熱処理方法およびその装置 - Google Patents
鋼板の熱処理方法およびその装置Info
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Abstract
が均質な材料となるような熱処理方法およびそれを実現
する熱処理装置を提供する。 【解決手段】 間隔を離して設置した複数の誘導加熱装
置7−1〜7−6と、鋼板2を各誘導加熱装置の中を通
過させる搬送ローラ10と、誘導加熱装置の内部または
誘導加熱装置間もしくは最終段の誘導加熱装置の出側に
設置され、鋼板の板側端部を冷却する1組以上の冷却装
置12と、鋼板の板幅方向の温度分布を測定する温度計
11とを備え、鋼板を誘導加熱装置で加熱中または加熱
直後にその鋼板の板側端部を冷却する。
Description
いた鋼板の熱処理方法およびその装置に関する。
戻し処理により、高強度・高靱性を得るプロセスが熱処
理として行われている。特に、焼戻し処理は、ガス等の
燃焼をエネルギー源とした炉による熱処理が一般的であ
る。例えば、特開平9−256053号公報には、温度
パターンを工夫して能率を上げる技術が提案されてい
る。この技術では、炉内で鋼材を連続的に搬送して熱処
理する場合において、鋼材の進行方法に向かって炉の設
定温度を変化させ、炉の入側を高温に、出側を低温に設
定する。さらにこの技術では、炉の入側を目的とする熱
処理温度より200℃以上高く設定し、炉の出側に向か
って段階的に設定炉温を低下させ、炉の出口前での炉の
設定温度を目的とする熱処理温度±20℃以内とすると
いうものである。
の技術のように温度上昇速度を大きくとることで能率を
上げる方法もある。この技術は、焼戻し中の昇温速度を
1℃/秒以上とすることにより、昇温中における転位の
回復、組織・析出物の粗大化、固溶炭素原子の析出を防
止し、強度、靱性を高めることができるというものであ
る。
鋼板の加熱方法としては提案されている。例えば、特開
平9−225517号公報では、熱延鋼板の製造プロセ
スにおいて、仕上圧延機入側で、粗圧延された粗バーを
誘導加熱で加熱する方法が提案されている。この技術
は、一定速度で通過する粗バーの温度が、長手方向で一
様になるように、加熱するものである。
は、誘導加熱による鋼材の熱処理方法が提案されてい
る。この技術は、鋼管の熱処理に用いられている高周波
焼入れ装置を焼戻しにも適用し、鋼管の焼入れにより生
じた表面硬化層に対して、高温で焼戻すことにより軟化
を図るというものである。
56053号公報記載の技術のように、ガス燃焼による
加熱方式では、ガス燃焼炉による鋼材の熱処理におい
て、熱の伝達は輻射や対流によるため、急速な加熱はで
きなかった。また、ガス燃焼炉では現実的に表層部のみ
の加熱は困難であり、表層部と板厚中央部の温度は、板
厚50mm以下の厚鋼板ではほとんど差がないまま、温
度が上昇していた。
させながら鋼板の加熱を行うソレノイド型誘導加熱方式
では、周波数を変更することで表層部のみを加熱するこ
とは可能であるが、鋼板の表層部に電流が流れて発熱す
るために、電流が集中する鋼板の側端部は、鋼板の幅方
向中央部付近に比べて温度が高くなる。その様相を模式
的に図10に示す。搬送ロール3上を送られてソレノイ
ド型誘導加熱装置1を通過した厚鋼板2の幅方向の温度
分布(図10中A−A’の表面温度分布)は図11のよ
うに板端部の温度が板幅中央部に比べて高くなってお
り、板幅方向端部の過加熱が問題となっていた。この過
加熱は、板端部の材質異常を引き起こし、均質な材料を
得る際の問題であった。あるいは、鋼板に熱処理後の冷
却中や冷却後に熱歪が発生する問題があった。
されたもので、鋼板の板側端部の過加熱を防止し、鋼板
全体が均質な材料となるような熱処理方法およびそれを
実現する熱処理装置を提供することを目的とする。
の鋼板の熱処理方法は、鋼板を誘導加熱装置の中を通過
させながら加熱する鋼板の熱処理方法において、鋼板の
加熱中または加熱直後にその鋼板の板側端部を冷却する
ことを特徴とするものである。
加熱中に、または鋼板が誘導加熱装置を通過した加熱直
後に、鋼板の板側端部を冷却することにしているので、
板側端部の過加熱を防止することができ、その結果板幅
方向の温度分布が均等なものとなり、鋼板全体が均質な
材料となる。また、鋼板の各部に大きな温度差がないの
で、熱歪による鋼板の変形がなく、能率の良い熱処理が
可能であり、かつ品質の良い鋼板が得られる。なお、誘
導加熱装置にはトランスバース型とソレノイド型がある
が、いずれの形式でも本発明を適用することができる。
法は、鋼板の板側端部を衝風冷却または接触冷却するこ
とを特徴とする。
コイル内部またはコイルに近い部分では、コイルからの
漏電によりスパークが発生するおそれがあり、鋼板にス
パーク疵が付いたりするので、これを避けるために、冷
却媒体に水を使わない方法、すなわち衝風冷却または接
触冷却とするものである。衝風冷却は空気を板側端部に
吹き付けて冷却する方法であり、接触冷却は冷却した部
材、例えばロール等を板側端部に接触させて冷却する方
法である。また、コイルから離れた箇所、すなわち誘導
加熱装置間では適切な水切り手段で水の流入を防止すれ
ば、板側端部を水冷することも可能である。
法は、複数の誘導加熱装置を間隔を離して設置した鋼板
の熱処理装置において、鋼板の板幅方向の温度分布を測
定し、その温度分布に基づいて、次以降の誘導加熱装置
の投入電力、鋼板の搬送速度、板側端部の冷却手段の冷
却力のうち1つ以上を調節することにより、目標温度に
鋼板を熱処理することを特徴とする。
離して設置した鋼板の熱処理装置で熱処理を行うもの
で、その場合、鋼板の板幅方向の温度分布をモニター
し、その温度分布に基づいて、次以降の誘導加熱装置の
投入電力、あるいは鋼板の搬送速度、あるいは板側端部
の冷却手段の冷却力を調節することにより、目標温度に
鋼板を熱処理するものである。鋼板の温度コントロール
は、誘導加熱装置の投入電力、鋼板の搬送速度、板側端
部の冷却手段の冷却力のいずれか1つ以上を調節するこ
とで可能である。もちろん、鋼板のサイズ(板厚、板幅
等)が変更になった場合にはこれらのパラメータを変更
する。なお、冷却手段の冷却力は、衝風冷却の場合、冷
却する空気の流量であり、接触冷却の場合、例えば水冷
ロール内に流す冷却水の流量である。本発明によれば、
効率のよい、板側端部の過加熱のない、均一な加熱が可
能であり、目標温度への到達時間も短くてすむ。
置は、間隔を離して設置した複数の誘導加熱装置と、鋼
板を各誘導加熱装置の中を通過させる搬送手段と、前記
誘導加熱装置の内部または誘導加熱装置間もしくは最終
段の誘導加熱装置の出側に設置され、鋼板の板側端部を
冷却する1組以上の冷却手段と、鋼板の板幅方向の温度
分布を測定する温度計と、を備えたことを特徴とする。
って、前述した本発明の熱処理方法を効率よく実施する
ことができる。
て、冷却手段は、鋼板の板側端部に対向する部分に噴射
孔を有する空気噴射管を含むものである。
されるのは、図11に示すように鋼板の側端部であっ
て、温度が高い部分は板端面から板厚の1.5〜2倍程
度の幅の部分である。したがって、板側端部の板厚全体
に空気が当たるように噴射して冷却するようにする。
り込むコ字状の断面を有するものとし、そのコ字状の凹
部に噴射孔を設けたものでもよい。
は、鋼板の板幅方向に拡縮自在になっている。
付けられた水冷ロールを含むものである。この水冷ロー
ルによって板側端部を接触冷却することができる。
おいて、鋼板の板側端部を水冷する水スプレーノズル
と、水の誘導加熱装置への侵入を防止する水切り手段と
を含むものである。
ら離れた箇所では水を使う冷却方法も可能である。水冷
の場合、コイル内への水の侵入を防止する必要があるの
で、誘導加熱装置間において、水切り手段として、例え
ば水切りロールおよび空気噴射ノズルを前後に配設し、
この水切り手段の間で水スプレーノズルより水を噴射し
て板側端部を水冷するようにしている。
を用いて説明する。図1は本発明による鋼板の製造ライ
ンの説明図である。熱間圧延機4によって熱間圧延され
た厚鋼板2に対して、水冷装置5による焼入れ処理を施
す。その後、矯正装置6で歪みを矯正して、誘導加熱装
置7によってオンライン熱処理を行う。なお、本発明は
オンライン熱処理に限定されるものではなく、オフライ
ンに誘導加熱装置を設置してもよい。誘導加熱装置7と
しては、トランスバース型とソレノイド型があり、ここ
では、ソレノイド型の誘導加熱装置を用いているが、ト
ランスバース型においても本発明の効果は同様に得られ
る。トランスバース型は、図9(a)に示すように、上
下一対のコイル8を鋼板2の表面および裏面にほぼ平行
に配置したものであり、ソレノイド型は、図9(b)に
示すように、コイル8を鋼板2の板幅方向の全周を包囲
するように巻回してなるものである。図中、9は電源で
ある。ソレノイド型は、表層部から加熱されるため、表
層部と内部は温度差がある。トランスバース型は、板厚
方向の温度分布が均一な状態で温度上昇する特徴があ
る。両者は、用途、目的、コスト等を考慮して選択さ
れ、あるいは組み合わせて使用される。
に、例えば、6つのソレノイド型誘導加熱装置7−1〜
7−6の中を被加熱物である厚鋼板2が通過するような
装置構成となっている。1段目のソレノイド型誘導加熱
装置7−1の前および最終段のソレノイド型誘導加熱装
置7−6の後と各ソレノイド型誘導加熱装置の間には、
被加熱物の搬送をサポートするローラ10が配置され、
これらのローラ10によりローラテーブルを構成してい
る。このローラテーブルの各ローラ10は、ローラ回転
数を細かく制御できるので、被加熱物である鋼板2の板
幅、板厚、処理量に応じて、各ソレノイド型誘導加熱装
置7−1〜7−6の投入電力や鋼板2が通過する時間
を、細かく制御することによって、細かい温度制御が可
能である。11は温度計である。
装置にしている理由は、3つある。その第1は、誘導加
熱装置を分割すると本実施例のように加熱途中で板幅方
向の温度分布をモニターすることが可能であるので、過
加熱の具合をみながら以降のソレノイド型誘導加熱装置
の出力を調整することが可能である。結果としてより過
加熱を少なくすることが可能となるからである。第2
は、鋼板の先後端部の非定常加熱部分が少なくなるから
である。すなわち、1つのコイルで昇温量を多くすると
そのコイルを通過する時間が長くなる。そのため、コイ
ルの中に鋼板先端が入り、コイル内を充満するまで負荷
変動が大きくなり、鋼板先端部の温度の上昇が定常部す
なわちコイル内に鋼板が充満している状態の定常部の温
度上昇に比べて小さくなる。したがって、コイル長は短
い方が負荷変動を受ける鋼板先端部長さと鋼板後端部長
さが短くなる。第3は、鋼板の板側端部は、端部からの
放熱があるので板中央部に比べて、自然放冷されやすい
である。したがって、ある温度まで加熱する場合、同じ
投入電力で加熱することを想定しても、コイルを複数に
分けて、コイル間に隙間を開け、間欠的に昇温させたほ
うが、すなわち時間をかけて昇熱したほうが、板側端部
の過加熱は小さくなるからである。
加熱物の幅方向温度分布を計測する温度計11を設置
し、板幅中央部付近の測温結果に基づき誘導加熱装置7
−1から7−6の出力を調整し、あるいは被加熱物の通
過(または搬送)速度を調整するなどの制御を行うこと
もできる。特に、厚鋼板の熱処理においては、品質上の
観点から表面の温度の推移を正確に把握する必要があ
る。そのためには、温度計11は必要で、板側端部の過
加熱の度合いを知る上で板幅方向の温度分布を計測可能
な走査型温度計や多点温度計が望ましい。
て、板側端部の冷却は次のように行っている。図3に一
例として第1のソレノイド型誘導加熱装置7−1と第2
のソレノイド型誘導加熱装置7−2間における板側端部
の冷却装置12を示すが、他のソレノイド型誘導加熱装
置間においても同様の冷却装置を設けることができる。
この冷却装置12の全体的な概要は図2に示すようにな
っている。図3において、第1のソレノイド型誘導加熱
装置7−1のコイルの間口には鋼板2が通過する板側端
部の対向するそれぞれの位置に、例えばセラミックス製
の空気噴射管12aが設けられ、その空気噴射管12a
の板側端部に対向する面には、例えば直径3mmφの孔
13が40mm×40mmで開けられていて、この空気
噴射管12aには空気を供給する空気供給管14が接続
されている。空気噴射管12aは断面が四角形の中空管
で構成されているが、特に断面形状は限定されない。ま
た、噴射孔13は冷却用空気が板側端部の板厚全面に均
一に当たるように設けることが望ましい。空気の流量は
流量調整弁によってコントロールされ、板側端部に噴射
孔13から噴射される空気の流量、いわゆる風量密度が
制御可能で、その制御によって冷却能力を自由に変更で
きるものとなっている。
コイル内の空気噴射管12aと同じような噴射孔13を
有する空気噴射管12bが板の側端部に対向するそれぞ
れの位置に設けられていて、コイル内の空気噴射管12
aと接続され、両空気噴射管12a、12bは、板の幅
方向に進退(拡縮)自在なように取り付けられている。
そして、誘導加熱装置間の空気噴射管12bにもコイル
内の空気噴射管12aと同じ径、同じピッチで噴射孔1
3が設けられ、空気供給管14から空気が供給される。
さらに、最終段のソレノイド型誘導加熱装置7−6の出
側にも上記空気噴射管12a、12bと同様の空気噴射
管12c(図2参照)が連接されている。これらの空気
噴射管12a、12b、12cは板幅方向に進退(拡
縮)自在に取り付けられているので、板幅に応じて、空
気噴射管12a、12b、12cの噴射孔13と、被冷
却体である鋼板2の板端部との距離が既定値に保たれる
ように調整可能である。なお、空気噴射管12a、12
b、12cは、鋼板のガイドの役目も兼ねていて、常に
鋼板がコイルの中央部を通るように鋼板を案内する役目
も果たしている。
るいは板裏面のエッジ部分を冷却するには、例えば図4
に示すように、鋼板2の板側端部が入り込むようなコ字
状の断面を有する空気噴射管15とし、この空気噴射管
15のコ字状の凹部に板側端部面および板表裏面のエッ
ジ部を冷却する噴射孔13a、13b、13cを設けた
ものでもよい。前述した空気噴射管12a、12b、1
2c、または15は、コイル内(誘導加熱装置内)また
は誘導加熱装置間もしくは最終段の誘導加熱装置の出側
に、鋼板の両側に1組以上設置してあればよい。
によって誘導電流が発生し発熱することがないように、
例えばセラミックで構成している。また、冷却媒体とし
て空気を採用しているが、これは次の理由による。水の
方が冷却能力が高く、冷却媒体には適しているが、冷却
水が、ソレノイド型誘導加熱装置のコイルに近づくと漏
電してコイルからスパークが発生し、被加熱物にスパー
ク疵が付く。したがって、冷却媒体として水を用いるこ
とは避けたほうが望ましい。ただし、例えば適切な水切
り手段で冷却水の漏出を完全に遮断すれば、部分的に
は、例えば誘導加熱装置間でコイルから離れた位置に部
分的に水冷を採用することは可能である。その例を図5
に示す。この図は板側端部を水スプレーノズル16から
噴射する冷却水で水冷すると共に、噴射された冷却水が
コイル近傍に流入しないように空気噴射ノズル17を設
けて空気を噴射して冷却水の水切りを行い、さらに、コ
イル入側・出側には板側端部に密接する水切りロール1
8を設置して、水切りを行っている。
うな内部を水冷した竪ロール(水冷ロール)19を板側
端部に押し付けて、板側端部を接触冷却によって冷却す
る方法もある。また、水冷ロールに代えて、内部水冷構
造のガイドシュートすることもできる。また、冷却手段
は、第1のソレノイド型誘導加熱装置以降に取り付ける
のが好ましい。第1のソレノイド型誘導加熱装置の前で
はまだ、板温度が上がっていないため、室温である冷却
媒体を噴射しても冷却効果は期待できないためである。
の誘導加熱装置を厚鋼板の製造ラインに適用した例につ
いて説明する。なお、6台のソレノイド型誘導加熱装置
のうち5台の誘導加熱装置7−1〜7−5のコイルの長
手方向の長さ(鋼板の長手方向に対応する寸法)は80
cm、7−6の誘導加熱装置のコイルの長手方向の長さ
(鋼板の長手方向に対応する寸法)は120cm、各コ
イル間の距離は100cmである。通過可能な板幅は最
大4600mm、板幅は最大100mmである。
厚40mm、板幅3000mm、長さ20mの厚鋼板
を、水冷により30℃まで加速冷却する焼入れ処理を行
い、続いて、水冷中に発生した歪みを矯正機で除去して
平坦にした。その後、6台のソレノイドが多誘導加熱装
置7−1〜7−6を通して、焼戻し温度である650℃
まで板中央部の温度が昇熱されるように熱処理を施し
た。このとき、ソレノイド型誘導加熱装置7−1〜7−
6の投入電力、厚鋼板の通板速度を、表1に示すように
設定した。なお、各ソレノイド型誘導加熱装置の周波数
は1000Hz一定である。また、コイル内空気噴射管
12aおよび各ソレノイド型誘導加熱装置間の空気噴射
管12b並びに装置出側の空気噴射管12cに供給する
空気の圧力を同表に示す。本実施例では、第1のソレノ
イド型誘導加熱装置のコイル内から第4と第5のソレノ
イド型誘導加熱装置間までの各空気噴射管から空気を噴
射している。したがって、第5のソレノイド型誘導加熱
装置のコイル内以降の各空気噴射管からは空気は噴射し
ていない。
ら10m)で、鋼板幅方向中央部の表面と板厚中心
および板側端部の角と板厚方向中心部の4点の温度
履歴を図7に示す。鋼板幅方向中央部の表面は、ソレ
ノイド型誘導加熱装置を通過する毎に温度が上昇する
が、コイル間(誘導加熱装置間)では板厚方向に熱が拡
散して温度は下がる。一方、鋼板幅方向中央部の板厚中
心は表面からの熱が拡散するに従って誘導加熱コイル
内およびコイル間で温度は上昇し、最終コイルを通過
後、約650℃に昇温された。
0m)で、板側端部の角と板厚方向中心部の温度履
歴は、それぞれ鋼板幅方向中央部の表面と板厚中心
と比べて若干温度が上がるものの最終的には鋼板幅方向
中央部の表面と板厚中心と同じ650℃まで昇温
し、板側端部に過加熱は生じなかった。その結果、各部
の到達温度が所定の焼戻し温度である650℃となった
ので、この鋼板は板幅、板厚、板長方向に均質になっ
た。なお、焼鈍後常温まで冷却された段階でも熱歪の発
生はなく、フラットな板となった。
気噴射による冷却条件は次のように決定した。熱処理パ
ターンは、処理する鋼板の板幅、板厚、板の搬送速度に
よってあらかじめ数値計算によって板幅方向中央部付近
の昇温カーブを、所要の最終加熱温度によって求めてお
く。なお、各ソレノイド型誘導加熱装置間に設けた温度
計によって、計算による目標温度と実績温度に差が生じ
た場合には次以降のソレノイド型誘導加熱装置の投入電
力を調整した。
方向中央部の所要温度履歴に対する加熱パターン(各ソ
レノイド型誘導装置の投入電力パターン)で板側端部付
近を加熱した場合の温度履歴を数値計算で求め、そのと
き、板側端部の角の温度が許される温度上限以下とな
るように空気噴射圧力を調整して、各空気噴射管から噴
射する空気の流量を調整した。なお、このとき空気噴射
管の空気圧力と冷却能力の関係はあらかじめ求めておい
て、数値計算モデルに組み込んでおく。この場合も、各
ソレノイド型誘導加熱装置間に設けた温度計の指示値に
よって以降の冷却条件を変更すべく空気噴射条件を逐次
変更することが望ましい。
を決めれば、過加熱のない、かつ効率的な加熱を実現可
能である。もちろん、この一連の条件決定の手順は、板
厚や通過速度によって決定すればよい。また数値計算で
毎回計算しなくても、条件をテーブルとして記憶してお
き、そのテーブル値に従って条件を変更調整してもよ
い。
なかった場合を比較例として以下説明する。この比較例
では、前記実施例と同様に、熱間圧延を施した板厚40
mm、板幅3000mm、長さ20mの厚鋼板を、水冷
により30℃まで加速冷却する焼入れ処理を行い、続い
て、水冷中に発生した歪みを矯正機で除去して平坦にし
た。その後、6台のソレノイド型誘導加熱装置7−1〜
7−6を通して、焼戻し温度である650℃まで板中央
部の温度が昇熱されるように熱処理を施した。このと
き、ソレノイド型誘導加熱装置7−1〜7−6の投入電
力、厚鋼板の通板速度を、表1に示すように設定した。
なお、各ソレノイド型誘導加熱装置の周波数は1000
Hz一定である。そして、この比較例では、各空気噴射
管12a、12b、12cから空気を噴射せず、連続的
な誘導加熱を行った。
から10m)で、鋼板幅方向中央部の表面’と板厚中
心’および板側端部の角’と板厚方向中心部’の
4点の温度履歴を図8に示す。鋼板幅方向中央部の表面
’は、ソレノイド型誘導加熱装置を通過する毎に温度
が急激に上昇するが、コイル間(誘導加熱装置間)では
板厚方向に熱が拡散して温度は下がる。一方、鋼板幅方
向中央部の板厚中心’は表面からの熱が拡散するに従
って誘導加熱コイル内およびコイル間で温度は上昇し、
最終コイルを通過後、約650℃に昇温された。
0m)で、板側端部の角’と板厚方向中心部’の温
度履歴は、それぞれ鋼板幅方向中央部の表面’と板厚
中心’と比べて大きく温度が高く、最終的には鋼板幅
方向中央部の表面’と板厚中心’の目標温度650
℃より約100℃高い750℃まで上昇した。その結
果、板側端部は、所定の焼戻し温度である650℃を1
00℃オーバーし、750℃までなったので、この部分
は変態が発生し、得られた組織が当初予定の組織と全く
異なったものとなった。この鋼板は板幅方向に不均質に
なった。なお、焼鈍後常温まで冷却された段階でも熱に
よる変形が発生して歪んだ板となった。
や通過速度を変更することで多少軽減するが、極端に速
度を落としてゆっくり加熱するか、投入パワーを下げて
加熱するしか方法がなく、能率よく熱処理を施すことは
できない。
誘導加熱装置の中を通過させながら加熱するものにおい
て、鋼板の加熱中または加熱直後にその鋼板の板側端部
を冷却するものであるから、板側端部の過加熱を防止で
き、鋼板全体を均一な温度に加熱することができる。そ
のため、能率の良い熱処理が可能であり、かつ均質な材
料が得られる。また、熱歪による鋼板の変形もなく、フ
ラットな鋼板が得られる。
る。
る。
る。
型の説明図である。
理装置の概要図である。
熱処理した場合の板幅方向の温度分布を示す図である。
Claims (9)
- 【請求項1】 鋼板を誘導加熱装置の中を通過させなが
ら加熱する鋼板の熱処理方法において、 鋼板の加熱中または加熱直後にその鋼板の板側端部を冷
却することを特徴とする鋼板の熱処理方法。 - 【請求項2】 鋼板の板側端部を衝風冷却または接触冷
却することを特徴とする請求項1記載の鋼板の熱処理方
法。 - 【請求項3】 複数の誘導加熱装置を間隔を離して設置
した鋼板の熱処理装置において、鋼板の板幅方向の温度
分布を測定し、その温度分布に基づいて、次以降の誘導
加熱装置の投入電力、鋼板の搬送速度、板側端部の冷却
手段の冷却力のうち1つ以上を調節することにより、目
標温度に鋼板を熱処理することを特徴とする請求項1ま
たは2記載の鋼板の熱処理方法。 - 【請求項4】 間隔を離して設置した複数の誘導加熱装
置と、 鋼板を各誘導加熱装置の中を通過させる搬送手段と、 前記誘導加熱装置の内部または誘導加熱装置間もしくは
最終段の誘導加熱装置の出側に設置され、鋼板の板側端
部を冷却する1組以上の冷却手段と、 鋼板の板幅方向の温度分布を測定する温度計と、を備え
たことを特徴とする鋼板の熱処理装置。 - 【請求項5】 前記冷却手段は、鋼板の板側端部に対向
する部分に噴射孔を有する空気噴射管を含むことを特徴
とする請求項4記載の鋼板の熱処理装置。 - 【請求項6】 前記冷却手段は、鋼板の板側端部が入り
込むコ字状の断面の凹部に噴射孔を有する空気噴射管を
含むことを特徴とする請求項4記載の鋼板の熱処理装
置。 - 【請求項7】 前記冷却手段は、鋼板の板幅方向に拡縮
自在になっていることを特徴とする請求項4〜6のいず
れかに記載の鋼板の熱処理装置。 - 【請求項8】 前記冷却手段は、鋼板の板側端部に押し
付けられた水冷ロールを含むことを特徴とする請求項4
記載の鋼板の熱処理装置。 - 【請求項9】 前記冷却手段は、前記誘導加熱装置間に
おいて、鋼板の板側端部を水冷する水スプレーノズル
と、水の誘導加熱装置への侵入を防止する水切り手段と
を含むことを特徴とする請求項4記載の鋼板の熱処理装
置。
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