JP2002270369A - 有機電界発光素子およびその製造方法 - Google Patents
有機電界発光素子およびその製造方法Info
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Abstract
し、駆動電圧の低下をはかる。 【解決手段】 基板上に、陽極及び陰極により挟持され
た発光層を有する有機電界発光素子において、陽極の発
光層側の表面に特定構造にて構成された単分子層設ける
ことを特徴とする。または、陽極の発光層側の表面を、
特定化合物で処理することを特徴とする有機電界発光素
子の製造方法。
Description
よびその製造方法に関するものであり、詳しくは、有機
化合物から成る発光層に電界をかけて光を放出する、薄
膜型デバイスの製造方法に関するものである。
しては、無機材料のII−VI族化合物半導体であるZn
S、CaS、SrS等に、発光中心であるMnや希土類
元素(Eu、Ce、Tb、Sm等)をドープしたものが
一般的であるが、上記の無機材料から作製したEL素子
は、 1)交流駆動が必要(50〜1000Hz)、 2)駆動電圧が高い(〜200V)、 3)フルカラー化が困難(特に青色)、 4)周辺駆動回路のコストが高い、 という問題点を有している。
有機薄膜を用いたEL素子の開発が行われるようになっ
た。特に、発光効率を高めるため、電極からのキャリア
ー注入の効率向上を目的として電極の種類の最適化を行
い、芳香族ジアミンから成る正孔輸送層と8−ヒドロキ
シキノリンのアルミニウム錯体から成る発光層とを設け
た有機電界発光素子の開発(Appl. Phys. Lett., 51巻,
913頁,1987年)により、従来のアントラセン等の単結
晶を用いたEL素子と比較して発光効率の大幅な改善が
なされ、実用特性に近づいている。
子の他にも、発光層の材料として、ポリ(p−フェニレ
ンビニレン)、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシル
オキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ(3-アルキル
チオフェン)、ポリフルオレン等の高分子材料を用いた
電界発光素子の開発や、ポリビニルカルバゾール等の高
分子に低分子の発光材料と電子移動材料を混合分散した
素子の開発も行われている。
動電圧の低電圧化がある。駆動電圧を下げることは、消
費電力の低減させるとともに、駆動寿命の改善をもたら
す。さらには、ドライバーICの低コスト化にもつなが
る。駆動電圧を下げるためには、陽極から有機層への正
孔注入障壁を下げることが重要である。通常の陽極とし
て用いられるITOの仕事関数は4.7 eV程度であるが、
代表的な正孔輸送材料である4,4'-ビス[N-(1-ナフチ
ル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(α-NPDと略す)
のイオン化ポテンシャルは5.2 eVであり、0.5 eV程度の
正孔注入障壁が存在する。この正孔注入障壁を下げる方
法として、ITOの仕事関数を増加させることと、陽極
と有機層の間に正孔注入層を設けることが考えられる。
従来からITOの表面処理を行うことが検討されている
が、シランカップリング剤(特開平8−330071号公報;
同11−121171号公報)、カルボン酸(特開平5− 21165
号公報)では、仕事関数は有効に増加せず、むしろ、表
面に絶縁層を形成することになり、正孔注入障壁を低下
させることはできない。またITO表面の酸素プラズマ
処理も検討されているが、効果の持続性に問題がある。
陽極に接する正孔注入層を設けることも検討されてお
り、例えば、銅フタロシアニン層(特開昭63−295695号
公報)を陽極(ITO)と正孔輸送層(α-NPD)との間
に設けることが行われており、この場合、銅フタロシア
ニンのイオン化ポテンシャルは4.8 eVであるためITO
からの注入障壁は下げられるが、むしろ、銅フタロシア
ニンとα-NPDとの間に0.4 eVの障壁が存在することにな
り、素子の低電圧化効果が十分ではない。なお、下記構
造で表される次亜リン酸系化合物
も提案されている(特開平5−62523号公報)。し
かし上記化合物はπ共役系を有さないため、陽極表面に
電気二重層を有効に形成することができない。また上記
化合物における−OH基は、陽極表面との反応性が充分
であるとは言えず、製膜性の向上も必要とされていた。
動電圧が高いために、消費電力が大きく、駆動寿命が短
いことは、ファクシミリ、複写機、液晶ディスプレイの
バックライト等の光源としては大きな問題であり、フル
カラー・フラットパネル・ディスプレイ等の表示素子と
しても望ましくない。
とができ、かつ長期間に亙って安定な発光特性を維持で
きる有機電界発光素子を提供しようとするものである。
本発明者は上記実状に鑑み、低電圧において安定な発光
特性を維持できる有機電界発光素子を提供することを目
的として鋭意検討した結果、陽極の発光層側の表面を特
定の化合物により処理することで、上記課題を解決する
ことができることを見い出し、本発明を完成するに至っ
た。
は、基板上に、陽極及び陰極により挟持された発光層を
有する有機電界発光素子において、陽極の発光層側の表
面に下記一般式(I)で表される構造にて構成された単
分子層を有することを特徴とする、有機電界発光素子に
存する。
炭化水素環基または芳香族複素環基を表わし、Xは水素
原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、アラルキ
ル基、アルケニル基、シアノ基、アルキニル基、アミド
基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル
基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロアルキル
基、チオシアノ基、アルキルスルフォニル基、またはス
ルフォンアミド基を表し、Yは少なくとも酸素原子を含
む2価の連結基を表す。)
陰極により挟持された発光層を有する有機電界発光素子
の製造方法において、陽極の発光層側の表面を、下記一
般式(I’)で表される化合物で処理することを特徴と
する有機電界発光素子の製造方法に存する。
炭化水素環基または芳香族複素環基を表わし、Xは水素
原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、アラルキ
ル基、アルケニル基、シアノ基、アルキニル基、アミド
基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル
基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロアルキル
基、チオシアノ基、アルキルスルフォニル基、またはス
ルフォンアミド基を表し、Y′は少なくとも酸素原子と
ハロゲン原子を含有する基を表す。)
について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明
に用いられる一般的な有機電界発光素子の構造例を模式
的に示す断面図であり、1は基板、2は陽極、4は発光
層、6は陰極を各々表わす。基板1は有機電界発光素子
の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板
や金属箔、プラスチックフィルムやシートなどが用いら
れる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレ
ート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合
成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合に
はガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリ
ヤ性が低すぎると、基板を通過する外気により有機電界
発光素子が劣化することがある。このため、合成樹脂基
板のどちらか片側もしくは両側に緻密なシリコン酸化膜
等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法
の一つである。
2は発光層5への正孔注入の役割を果たすものである。
この陽極は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、
パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/またはス
ズの酸化物などの金属酸化物、カーボンブラック等によ
り構成される。陽極2の形成は通常、スパッタリング
法、真空蒸着法などにより行われることが多い。また、
カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子等を適当
なバインダー樹脂溶液に分散し、基板1上に塗布するこ
とにより陽極2を形成することもできる。また陽極2は
異なる物質で積層して形成することも可能である。陽極
2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が
必要とされる場合は、可視光波長領域の光透過率を、通
常、60%以上、好ましくは80%以上とすることが望まし
く、この場合、厚みは、通常、10〜1000nm、好ましくは
20〜500nm 程度である。不透明でよい場合は陽極2の厚
みは基板1と同程度でもよい。
式(I)で表される構造が集合してなる単分子層を有す
る。式(I)における2価の連結基Yが陽極表面と結合
し、これが集合することにより単分子層を形成する。本
発明における「単分子層」とは、厚みが分子1個の大き
さに相当する薄膜を意味する。なお、複数の式(I)で
表される構造が一部共有結合し、2量体、3量体、ある
いはオリゴマー状の構造を形成していてもよいが、その
層の厚みは分子1個分である。
しては、特に制限はないが、好ましくは陽極2の表面を
前記一般式(I′)で表される特定のハロゲン化合物で
処理する方法が挙げられる。該処理により陽極からの発
光層5への正孔注入を容易にし、駆動電圧の低電圧化を
達成する。一般式(I′)における置換基Y′が、通
常、陽極表面に存在する反応性官能基(多くの場合は水
酸基)と反応することにより2価の連結基Yとなり、陽
極表面と結合した単分子層が形成され、置換基X及びY
によって付与される双極子による電気二重層が陽極表面
に形成されると考えられる。この電気二重層による電場
により、陽極の仕事関数を増加させることができる。従
って、置換基Xとしては先に列挙した基の中でも特に、
電子吸引性基が好ましいことになる。ここで電子吸引性
基とは、ハメット定数(σm 、σp )が正の値を有する
置換基である("Lange's Handbook of Chemistry", McG
raw-Hill, 14th Ed.,Section 9参照)。本発明では、A
rの部分がパイ共役系である化合物(I)または
(I′)を採用しているために、この部分が非共役系の
直鎖アルキル化合物におけるような絶縁体形成はなく、
電気二重層の効果を十分に引き出すことができる。
て、Ar は置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化
水素環基または芳香族複素環基を表し、好ましくは、5
〜6員環の単環、または2〜3個縮合または直接結合し
てなる2価の基であり、特に好ましくはベンゼン、ナフ
タレン、ビフェニル、アントラセン、チオフェン、フラ
ン、ピリジン等が挙げられる。前記置換基としては、フ
ッ素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;メチル基、エチ
ル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基等のアル
ケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル
基等の炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基;メトキ
シ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フ
ェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ
基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキ
ルアミノ基、アセチル基等のアシル基、トリフルオロメ
チル基等のハロアルキル基、シアノ基を示す。
のハロゲン原子;ニトロ基;メチル基、エチル基等の炭
素数1〜6のアルキル基;ベンジル基等のアラルキル
基;ビニル基等のアルケニル基;シアノ基;アセチレン
等のアルキニル基;アミド基;アセチル基等のアシル
基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の
炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基;カルボキシル
基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコ
キシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリー
ルオキシ基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル
基;チオシアノ基;メタンスルフォニル基等のアルキル
スルフォニル基;スルフォンアミド基を示す。特に好ま
しくは、ハロゲン原子、ハロアルキル基、シアノ基、ニ
トロ基から選ばれる。Y′は少なくとも、酸素原子とハ
ロゲン原子を含有する基を示すが、好ましくは、以下の
置換基から選ばれる。
す。特に塩素原子が好ましい。) 前記一般式(I′)で示される化合物の具体例を表1〜
3に示すが、表中の化合物に限定されるわけではない。
なお式(I)におけるYは少なくとも酸素原子を含む2
価の連結基であるが、好ましくは
は近傍に存在する一般式(I)で表される構造を示し、
この場合、式(I)で表される構造が2量体化している
ことを表す。
処理は、液相、気相のいずれにおいても可能である。液
相処理は、一般式(I′)で示される化合物を適当な溶
媒に所定濃度に希釈した溶液を、一般的なキャスト法に
て陽極の発光層側の表面に展開することにより行う。中
でも一般式(I′)の化合物による陽極表面への作用時
間が比較的長く確保できることから、陽極を有する基板
を所定時間ディップして処理を行うことが好ましい。処
理温度は通常、室温程度で良い。
板を設置し、一般式(I′)で示される化合物が入った
容器を加熱するかまたはキャリアガスによりその蒸気を
上記真空容器中に導入し、所定の蒸気圧の該化合物に陽
極表面をさらすことにより、単分子層を形成するもので
ある。処理温度は通常0〜100℃程度であり、基板を
加熱または冷却して温度調節するのが一般的である。気
相処理の場合、外気から隔離されたまま連続して、発光
層などの陽極−陰極間に設ける層(以下、まとめて「有
機層」と称す)の成膜処理を行っても良い。具体的に
は、例えば真空中や不活性雰囲気中で、一般式(I′)
で表される化合物を用いた気相処理を行い、そのまま真
空を破らずに、あるいは同じ不活性雰囲気を保ったま
ま、陽極付き基板を有機層の蒸着装置に移動し成膜処理
を行う。有機層形成前に、必要に応じて該不活性ガスを
除去するとよい。
も、前記一般式(I′)で表される化合物の置換基Y′
が、陽極表面の水酸基等の反応性官能基と反応すること
によりY′が2価の連結基Yとなり、陽極表面に結合す
ることにより単分子層が形成され、置換基Xによっても
たらされた電気二重層が形成され、結果として、陽極の
仕事関数が増加することなると考えられる。陽極の仕事
関数が増加により、正孔輸送層または正孔注入層への正
孔注入障壁が低下し、素子の駆動電圧を低下させると推
定される。
化学処理を行い仕事関数を増加させることにより、素子
の駆動電圧を大きく下げることが可能となり、駆動時の
劣化も改善させることができる。陽極2の上には発光層
4が設けられる。発光層4は、電界を与えられた電極間
において、陽極2から注入された正孔と陰極6から注入
された電子を効率よく輸送して再結合させ、かつ、再結
合により効率よく発光する材料から形成される。単層型
の発光層4としては、ポリ(p-フェニレンビニレン)
(Nature,347巻,539頁,1990年他)、ポリ[2-メトキ
シ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニ
レン](Appl.Phys.Lett.,58巻,1982頁,1991年
他)、ポリ(3-アルキルチオフェン)(Jpn.J.Appl.
Phys.,30巻,L1938頁,1991年他)等の高分子材料や、
ポリビニルカルバゾール等の高分子に発光材料と電子移
動材料を混合した系(応用物理,61巻,1044頁,1992
年)等が挙げられる。
に、図2に示す様に、正孔輸送層4aと電子輸送層4bに分
割することにより、いわゆる機能分離型素子としてもよ
い(Appl. Phys. Lett., 51巻,913頁,1987年)。上記
の機能分離型素子において、正孔輸送層4aの材料として
は、陽極2からの正孔注入効率が高く、かつ、注入され
た正孔を効率よく輸送することができる材料であること
が必要である。そのためには、イオン化ポテンシャルが
小さく、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優
れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しに
くいことが要求される。
ば、4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]
ビフェニル(α-NPD)で代表される2個以上の3級アミ
ンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した
芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4',4"-
トリス(1-ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン
等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物
(J. Lumin., 72-74巻、985頁、1997年)、トリフェニ
ルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chem.C
ommun., 2175頁、1996年)、2,2',7,7'-テトラキス-(ジ
フェニルアミノ)-9,9'-スピロビフルオレン等のスピロ
化合物(Synth. Metals, 91巻、209頁、1997年)等が挙
げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、
必要に応じて、各々、混合して用いてもよい。
として、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルトリフェ
ニルアミン(特開平7− 53953号公報)、テトラフェニ
ルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホ
ン(Polym. Adv. Tech., 7巻、33頁、1996年)等の高分
子材料が挙げられる。上記の正孔輸送材料を塗布法ある
いは真空蒸着法により前記陽極2上に積層することによ
り正孔輸送層4aを形成する。
は2種以上と、必要により正孔のトラップにならないバ
インダー樹脂や塗布性改良剤などの添加剤とを添加し、
溶解して塗布溶液を調製し、スピンコート法などの方法
により陽極2上に塗布し、乾燥して正孔輸送層3bを形成
する。バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポ
リアリレート、ポリエステル等が挙げられる。バインダ
ー樹脂は添加量が多いと正孔移動度を低下させるので、
少ない方が望ましく、通常、50重量%以下が好まし
い。
空容器内に設置されたルツボに入れ、真空容器内を適当
な真空ポンプで10-4Pa程度にまで排気した後、ルツボを
加熱して、正孔輸送材料を蒸発させ、ルツボと向き合っ
て置かれた基板1上の陽極2上に正孔輸送層4aを形成さ
せる。正孔輸送層4aの膜厚は、通常、10〜300nm、好ま
しくは30〜100nmである。この様に薄い膜を一様に形成
するためには、一般に真空蒸着法がよく用いられる。
有機層全体の陽極への付着力を改善させる目的で、正孔
輸送層4aと陽極2との間に正孔注入層3を挿入すること
も行われている(図3)。正孔注入層3を挿入すること
で、初期の素子の駆動電圧がさらに下がると同時に、素
子を定電流で連続駆動した時の電圧上昇も抑制される効
果がある。正孔注入層に用いられる材料に要求される条
件としては、陽極とのコンタクトがよく均一な薄膜が形
成でき、熱的に安定、すなわち、融点及びガラス転移温
度が高く、融点としては 300℃以上、ガラス転移温度と
しては 100℃以上が要求される。さらに、イオン化ポテ
ンシャルが低く陽極からの正孔注入が容易なこと、正孔
移動度が大きいことが挙げられる。
タロシアニン等のフタロシアニン化合物(特開昭63−29
5695号公報)、インダンスレン顔料(特開2000− 58267
号公報)、キノリノール金属錯体(特開平11−204260号
公報)等の有機化合物や、スパッタ・カーボン膜(Synt
h. Met., 91巻、73頁、1997年)や、バナジウム酸化
物、ルテニウム酸化物、モリブデン酸化物等の金属酸化
物(J.Phys. D, 29巻、2750頁、1996年)が報告されて
いる。また、同様の効果を有するものとして、電子受容
性化合物を混合したポリアニリン(Appl. Phys. Lett.,
64巻、1245頁、1994年)、やポリチオフェン(Optical
Materials, 9巻、125頁、1998年)等の共役系高分子や
正孔輸送性の非共役系高分子(特開2000− 36390号公
報)が挙げられる。
にして薄膜形成可能であるが、無機物の場合には、さら
に、スパッタ法や電子ビーム蒸着法、プラズマCVD法
が用いられる。以上の様にして形成される正孔注入層3
の膜厚は、通常、3〜100nm、好ましくは10〜50nmであ
る。
られる。電子輸送層4bは、電界を与えられた電極間にお
いて陰極からの電子を効率よく正孔輸送層4aの方向に輸
送することができる化合物より形成される。電子輸送層
4bに用いられる電子輸送性化合物としては、陰極4から
の電子注入効率が高く、かつ、注入された電子を効率よ
く輸送することができる化合物であることが必要であ
る。そのためには、電子親和力が大きく、しかも電子移
動度が大きく、さらに安定性に優れトラップとなる不純
物が製造時や使用時に発生しにくい化合物であることが
要求される。
−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯
体(特開昭59−194393号公報)、10-ヒドロキシベンゾ
[h]キノリンの金属錯体(特開平6−322362号公報)、
ビススチリルベンゼン誘導体(特開平1−245087号公
報、同2−222484号公報)、ビススチリルアリーレン誘
導体(特開平2−247278号公報)、(2-ヒドロキシフェ
ニル)ベンゾチアゾールの金属錯体(特開平8−315983
号公報)、シロール誘導体等が挙げられる。これらの電
子輸送層材料は、通常は真空蒸着法により正孔輸送層上
に積層される。前記化合物を用いた電子輸送層4bは、一
般に、電子を輸送する役割と、正孔と電子の再結合の際
に発光をもたらす役割を同時に果たすことができる。
は、電子輸送層4bは電子を輸送する役割だけを果たして
いてもよい。素子の発光効率を向上させるとともに発光
色を変える目的で、例えば、8−ヒドロキシキノリンの
アルミニウム錯体をホスト材料として、クマリン等のレ
ーザ用蛍光色素を発光層にドープすること(J. Appl. P
hys., 65巻, 3610頁, 1989年)等が行われている。素子
の駆動寿命を改善する目的においても、前記発光層材料
をホスト材料として、蛍光色素をドープすることは有効
である。例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウ
ム錯体などの金属錯体をホスト材料として、ルブレンに
代表されるナフタセン誘導体(Jpn. J. Appl. Phys., 7
A巻、L824頁、1995年)、キナクリドン誘導体(Appl. P
hys. Lett., 70巻、1665頁、1997年)をホスト材料に対
して 0.1〜10重量%ドープすることにより、素子の発光
特性、特に駆動安定性を大きく向上させることができ
る。発光層ホスト材料に上記ナフタセン誘導体、キナク
リドン誘導体等の蛍光色素をドープする方法としては、
共蒸着による方法と蒸着源を予め所定の濃度で混合して
おく方法がある。
m、好ましくは30〜100nmである。電子輸送層も正孔輸送
層と同様の方法で形成することができるが、通常は真空
蒸着法が用いられる。有機電界発光素子の発光効率をさ
らに向上させる方法として、発光層4の上にさらに電子
注入層を積層することもできる(図4)。この電子注入
層に用いられる化合物には、陰極からの電子注入が容易
で、電子の輸送能力がさらに大きいことが要求される。
この様な電子輸送材料としては、既に発光層材料として
挙げた8−ヒドロキシキノリンのアルミ錯体、オキサジ
アゾール誘導体(Appl. hys.Lett., 55巻, 1489頁, 198
9年他) やそれらをポリメタクリル酸メチル(PMM
A)等の樹脂に分散した系(Appl. Phys. Lett.,61
巻,2793頁, 1992年)、フェナントロリン誘導体(特開
平5−331459号公報)等が挙げられる。また、アルカリ
金属をドープしたバソフェナントロリン(特開平10−27
0171号公報)も素子の低電圧化に有効である。電子注入
層の膜厚は、通常、5〜200nm、好ましくは10〜100 nmで
ある。
を果たす。陰極6の材料としては、前記陽極2に使用さ
れる材料を用いることが可能であるが、効率よく電子注
入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、ス
ズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニ
ウム、銀等の適当な金属またはそれらの合金が用いられ
る。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシ
ウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等
の低仕事関数合金電極が挙げられる。さらに、陰極と発
光層または電子輸送層の界面にLiF 、MgF2、Li2O、安息
香酸のリチウム塩等の極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を陰極界
面層として挿入することも、素子の効率を向上させる有
効な方法である(Appl. Phys. Lett., 70巻,152頁,19
97年;特開平10−74586号公報;IEEE Trans. Electron.
Devices,44巻,1245頁,1997年;Jpn. J. Appl. Phy
s., 38巻,L1348頁,1999年)。陰極7の膜厚は通常、
陽極2と同様である。低仕事関数金属から成る陰極を保
護する目的で、この上にさらに、仕事関数が高く大気に
対して安定な金属層を積層することは素子の安定性を増
す。この目的のために、アルミニウム、銀、銅、ニッケ
ル、クロム、金、白金等の金属が使われる。
に陰極6、発光層4、陽極2の順に積層することも可能
であり、既述したように少なくとも一方が透明性の高い
2枚の基板の間に本発明の有機電界発光素子を設けるこ
とも可能である。同様に、図2、図3及び図4に示した
前記各層構成とは逆の構造に積層することも可能であ
る。また、本発明の有機電界発光素子の性能を損わない
限りにおいて、既述した各層の間に、更に任意の層を有
していてもかまわない。
説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の
実施例の記載に限定されるものではない。 実験例1 ITOガラス基板をアセトンで超音波洗浄、純水で水
洗、イソプロピルアルコールで超音波洗浄、乾燥窒素で
乾燥させた。さらにUV/オゾン洗浄を行った後、これ
を表2に示した化合物(22)を1mMの濃度で溶解させ
た1,2-ジクロロメタン溶液中に5分間ディップし、乾燥
窒素にて乾燥させ、ITO上に化合物(22)の薄膜を形成
した。
ress microscopy(Annu. Rev.Mater. Sci., 29巻,353
−380頁、1999年)により測定したところ、ディップ処
理をしていないITOと比較して、0.8eVの仕事関数増
加が観測された。 実験例2 表2の化合物(22)の溶液を用いて、実験例1と同様に
処理したITOガラス基板試料の、表面分析を行った。
アルバックファイ社製TRIFT-II装置を用いてTOF−S
IMS(飛行時間−二次イオン質量分析法)により測定
したところ、C6H4ClP2O6、InP2O6に対応する質量数のピ
ークが検出され、ITO表面に化合物(22)と表面水酸
基との反応生成物による単分子膜形成が確認された。
で作製した。ガラス基板上にインジウム・スズ酸化物
(ITO)透明導電膜を堆積したもの(ジオマテック社
製;シート抵抗15Ω)を通常のフォトリソグラフィ技術
と塩酸エッチングを用いて 3mm幅のストライプにパター
ニングして陽極を形成した。パターン形成したITO基
板を、アセトンによる超音波洗浄、純水による水洗、イ
ソプロピルアルコールによる超音波洗浄の順で洗浄後、
窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行っ
た。次に、ITO陽極の表面処理を、1,2-ジクロロメタ
ン中に表1に示す化合物(4)を1mMの濃度で溶解さ
せた溶液に、5分間ディップすることにより実施した。
装置内に設置した。真空蒸着装置の粗排気を油回転ポン
プにより行った後、装置内の真空度が2x10-6Torr(約2.
7x10 -4Pa)以下になるまで液体窒素トラップを備えた油
拡散ポンプを用いて排気した。上記装置内に配置された
タンタルボートに入れた以下に示す芳香族アミン化合
物、4,4'-ビス[N-(m-トリル)-N-フェニルアミノ]ビ
フェニル
の真空度は3x10-6Torr(約4x10-4Pa)、蒸着速度は0.2n
m/秒で、膜厚75nmの膜を正孔注入層の上に積層して正孔
輸送層4aを完成させた。引続き、発光機能を有する電子
輸送層4bの材料として、以下の構造式に示すアルミニウ
ムの8−ヒドロキシキノリン錯体、Al(C9H6NO)3、
アルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体の蒸着速度
は0.25nm/秒で、蒸着時の真空度は3x10-6Torr(約4x10
-4Pa)、蒸着された電子輸送層の膜厚は75nmであった。
ために、陰極界面層として安息香酸のリチウム塩を、蒸
着速度0.5nm/秒、蒸着時の真空度3x10-6Torr(約4x10-4
Pa)の条件において、膜厚 2nmで形成した。上記の正孔
輸送層4a、電子輸送層4b及び陰極界面層を真空蒸着する
時の基板温度は室温に保持した。
子に、陰極蒸着用のマスクとして 3mm幅のストライプ状
シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交
するように素子に密着させた。このマスク交換作業は真
空をやぶらずに行った。続いて、陰極として、アルミニ
ウムを蒸着速度1nm/秒で陰極界面層上に膜厚90nmで形成
した。蒸着時の真空度は6.0x10-5Torr(約8x10-4Pa)で
あった。陰極蒸着時の基板温度は室温に保持した。
機電界発光素子が得られた。この素子を陰極蒸着装置か
ら取り出した後、大気中において陽極と陰極間に順方向
の電圧を印加して発光特性を測定した。この素子の輝度
−電圧特性を図5のグラフに示す。輝度100cd/m2に達す
る電圧は 5.1Vと低電圧であった。 実施例2 陽極表面処理用化合物として表2に示す化合物(22)を
用いた他は、実施例1と同様にして素子を作製した。素
子の輝度−電圧特性を図5に示す。輝度100cd/m2に達す
る電圧は 5.0Vと低電圧であった。
素子を作製した。この素子の輝度−電圧特性を図5に示
す。輝度100cd/m2に達する電圧は10.5Vと高電圧であっ
た。 比較例2 陽極表面処理を行わず、陽極2と正孔輸送層4aとの間
に正孔注入層として膜厚15nmの下記に示す銅フタロシア
ニン層を用いた他は、
−電圧特性を図5に示す。輝度100cd/m2に達する電圧は
7.0Vであった。
定の化合物により陽極表面を処理しているために、低電
圧で駆動可能な素子を得ることができる。従って、本発
明による有機電界発光素子はフラットパネル・ディスプ
レイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)や面
発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の
光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光
源)、表示板、標識灯への応用が考えられ、特に、高耐
熱性が要求される車載用表示素子としては、その技術的
価値は大きいものである。
図。
図。
図。
輝度−電圧特性のグラフ。
Claims (8)
- 【請求項1】 基板上に、陽極及び陰極により挟持され
た発光層を有する有機電界発光素子において、陽極の発
光層側の表面に下記一般式(I)で表される構造にて構
成された単分子層を有することを特徴とする、有機電界
発光素子。 【化1】 (式中、Ar は置換基を有していてもよい2価の芳香族
炭化水素環基または芳香族複素環基を表わし、Xは水素
原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、アラルキ
ル基、アルケニル基、シアノ基、アルキニル基、アミド
基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル
基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロアルキル
基、チオシアノ基、アルキルスルフォニル基、またはス
ルフォンアミド基を表し、Yは少なくとも酸素原子を含
む2価の連結基を表す。) - 【請求項2】 単分子層が、陽極表面を下記一般式
(I’)で表される化合物で処理するにより形成される
ことを特徴とする、請求項1記載の有機電界発光素子。 【化2】 (式中、ArおよびXは一般式(I)におけると同義で
あり、Y’は少なくとも酸素原子とハロゲン原子を含有
する基を表す。) - 【請求項3】 基板上に、陽極及び陰極により挟持され
た発光層を有する有機電界発光素子の製造方法におい
て、陽極の発光層側の表面を、下記一般式(I’)で表
される化合物で処理することを特徴とする有機電界発光
素子の製造方法。 【化3】 (式中、Ar は置換基を有していてもよい2価の芳香族
炭化水素環基または芳香族複素環基を表わし、Xは水素
原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、アラルキ
ル基、アルケニル基、シアノ基、アルキニル基、アミド
基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル
基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロアルキル
基、チオシアノ基、アルキルスルフォニル基、またはス
ルフォンアミド基を表し、Y′は少なくとも酸素原子と
ハロゲン原子を含有する基を表す。) - 【請求項4】 Y′が以下に示す基から選ばれることを
特徴とする、請求項3記載の有機電界発光素子の製造方
法。 【化4】 (式中、Z1およびZ2は、各々独立にハロゲン原子を表
す。) - 【請求項5】 前記陽極がインジウム錫酸化物またはイ
ンジウム亜鉛酸化物であることを特徴とする、請求項第
3または4記載の有機電界発光素子の製造方法。 - 【請求項6】 前記処理が液相中で行われることを特徴
とする、請求項3ないし5のいずれかに記載の有機電界
発光素子の製造方法。 - 【請求項7】 前記処理が気相中で行われることを特徴
とする、請求項3ないし5のいずれかに記載の有機電界
発光素子の製造方法。 - 【請求項8】 前記処理が気相中で行われ、外気から隔
離されたまま連続して、発光層、または発光層と陽極と
の間に設ける層の、成膜工程につながることを特徴とす
る請求項第7項に記載の有機電界発光素子。
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