JP2007005241A - 有機薄膜の層を有する透明導電性基板、その製造方法およびそれを用いた光学的素子 - Google Patents

有機薄膜の層を有する透明導電性基板、その製造方法およびそれを用いた光学的素子 Download PDF

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Abstract

【課題】
低電圧で駆動させることができ、かつ長期間に亙って安定な導電特性を維持できる透明導電性基板、及びこの透明導電性基板を用いる有機EL素子等の光学的素子を提供する。
【解決手段】
基板と、該基板表面に形成された透明導電膜と、及び該透明導電膜上に、式(1):R−Si−X4−n(式中、Rは置換基を有していてもよいC1〜20の炭化水素基等を表し、nは1〜3の整数を表す。)で示されるシラン系界面活性剤、及び該シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒を含む有機薄膜形成用溶液から形成された有機薄膜の層を有することを特徴とする透明導電性基板、並びに、互いに対向する2つの電極間に発光層を必須の層として設けた光学的素子において、前記電極の少なくとも一方が、前記透明導電性基板からなることを特徴とする光学的素子。
【選択図】 なし。

Description

本発明は、高仕事関数を有する透明導電性基板、この透明導電性基板の製造方法、およびこの透明導電性基板を用いる、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」という)などの光学的素子に関する。
近年、有機薄膜を用いた有機EL素子などの光学的素子の開発研究が盛んに行われている。このような光学的素子の技術的課題の一つとして、駆動電圧の低電圧化がある。光学的素子の駆動電圧が高いと消費電力が大きく、駆動寿命が短くなるため、ファクシミリ、複写機、液晶ディスプレイのバックライト等の光源としては大きな問題であり、フルカラー・フラットパネル・ディスプレイ等の表示素子としても望ましくない。
例えば、有機EL素子の場合、駆動電圧を下げるためには、陽極から有機層への正孔注入障壁を下げることが重要である。通常の陽極として用いられるITOの仕事関数は4.7eV程度であるが、代表的な正孔輸送材料である4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルのイオン化ポテンシャルは5.2eVであり、0.5eV程度の正孔注入障壁が存在する。
この正孔注入障壁を下げる方法としては、ITOの表面処理を行うなどのITOの仕事関数を増加させる方法や、陽極と有機層の間に正孔注入層を設ける方法が考えられたが、いずれの方法も素子の低電圧化効果は十分ではなかった。
この問題を解決すべく、特許文献1〜3などにおいては、基板上に、第1電極、少なくとも発光層を有する有機層および第2電極が順次積層された有機EL素子において、第1電極または第2電極上に自己組織化単分子膜が形成されている有機EL素子が提案されている。有機EL素子をこのような構成とすることで、電極層とその上に形成されるホール輸送層などの有機層との密着性を向上させることができ、素子駆動による輝度低下、ダークスポットの発生と成長、電圧上昇を抑制し、安定した発光特性が維持される有機EL素子を得ることができる。
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載された方法で得られる有機EL素子においても、素子駆動による輝度低下、ダークスポットの発生と成長、電圧上昇を抑制する効果が不十分な場合があり、さらなる性能の向上が求められていた。
特開2002−270369号公報 特開2004−047176号公報 特開2005−85731号公報
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、低電圧で駆動させることができ、かつ長期間に亘って安定な導電特性を維持できる透明導電性基板、この透明導電性基板の製造方法、およびこの透明導電性基板を用いる有機EL素子などの光学的素子を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、基板上にITO膜を形成し、さらにこのITO膜上に、オクタデシルトリメトキシシラン(ODS)、及びチタンテトライソプロポキシドの加水分解生成物を触媒として含む有機薄膜形成用溶液を用いて有機薄膜を形成して透明導電性基板を得た。そして、このようにして得られた透明導電性基板を使用して得られる有機EL素子は、低電圧で駆動させることができ、かつ長期間に亙って安定な発光特性を維持することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、下記(1)〜(17)に記載の透明導電性基板が提供される。
(1)基板と、該基板表面に形成された透明導電膜と、および該透明導電膜上に、式(1):R−Si−X4−n(式中、Rは置換基を有していてもよいC1〜20の炭化水素基、置換基を有していてもよいC1〜20のハロゲン化炭化水素基、連結基を含むC1〜20の炭化水素基、又は連結基を含むC1〜20のハロゲン化炭化水素基を表し、Xは水酸基、ハロゲン原子、C1〜C6のアルコキシ基又はアシルオキシ基を表し、nは1〜3の整数を表す。)で示されるシラン系界面活性剤、及び該シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒を含む有機薄膜形成用溶液から形成された有機薄膜の層を有することを特徴とする透明導電性基板。
(2)前記触媒が、金属酸化物;金属水酸化物;金属アルコキシド類;キレート化又は配位化された金属化合物;金属アルコキシド類部分加水分解生成物;金属アルコキシド類を該金属アルコキシド類の2倍当量以上の水で処理して得られた加水分解生成物;有機酸;シラノール縮合触媒;及び酸触媒から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)に記載の透明導電性基板。
(3)前記触媒が、(a)金属酸化物;金属水酸化物;金属アルコキシド類;キレート化又は配位化された金属化合物;金属アルコキシド類部分加水分解生成物;金属アルコキシド類を該金属アルコキシド類の2倍当量以上の水で処理して得られた加水分解生成物;有機酸;シラノール縮合触媒;及び酸触媒から選ばれる少なくとも1種と、(b)前記シラン系界面活性剤を含有する組成物であることを特徴とする(1)又は(2)記載の透明導電性基板。
(4)金属アルコキシド類が、チタンアルコキシド類であることを特徴とする(2)又は(3)の透明導電性基板。
(5)チタンアルコキシド類が、チタンテトライソプロポキシドであることを特徴とする(4)記載の透明導電性基板。
(6)有機薄膜形成用溶液が、炭化水素系溶媒溶液であることを特徴とする(1)〜(5)いずれかに記載の透明導電性基板。
(7)炭化水素系溶媒が、トルエンであることを特徴とする(6)に記載の透明導電性基板。
(8)有機薄膜形成用溶液中の水分量を50ppmから有機溶媒への飽和水分含量の範囲にする又は保持することを特徴とする(1)〜(7)いずれか記載の透明導電性基板。
(9)前記透明導電膜が、θ/2θ法によるX線回折で(400)/(222)の回折強度比が1.0以上である結晶質導電膜であることを特徴とする(1)〜(8)いずれかに記載の透明導電性基板。
(10)結晶質導電膜が、柱状単結晶の集合体であることを特徴とする(9)記載の透明導電性基板。
(11)結晶質導電膜が、結晶子の長軸方向の大きさが20〜100nmの範囲の結晶集合体であることを特徴とする(9)又は(10)記載の透明導電性基板。
(12)結晶質導電膜の最大表面粗さが5〜30nmの範囲であることを特徴とする(9)〜(11)いずれかに記載の透明導電性基板。
(13)結晶質導電膜表面の平均表面粗さが、1〜10nmの範囲であることを特徴とする(9)〜(12)いずれかに記載の透明導電性基板。
(14)結晶質導電膜表面における1μm角領域内に存在する5〜30nmの突起数が、100個以上であることを特徴とする(9)〜(13)いずれかに記載の透明導電性基板。
(15)透明導電膜が、インジウム・スズ酸化物からなることを特徴とする(1)〜(14)いずれかに記載の透明導電性基板。
(16)インジウム・スズ酸化物中のスズ原子が基板から膜表面に向かって膜中に均一にブンプしていること特徴とする(1)〜(15)いずれかに記載の透明導電性基板。
(17)透明導電膜が、スプレー熱分解法またはパイロゾル法で製造された導電膜であることを特徴とするる(1)〜(16)いずれかに記載の透明導電性基板。
本発明の第2によれば、下記(18)〜(25)に記載の透明導電性基板の製造方法が提供される。
(18)表面に透明導電膜が形成された基板の該透明導電膜と、式(1):R−Si−X4−n(式中、Rは置換基を有していてもよいC1〜20の炭化水素基、置換基を有していてもよいC1〜20のハロゲン化炭化水素基、連結基を含むC1〜20の炭化水素基、または連結基を含むC1〜20のハロゲン化炭化水素基を表し、Xは水酸基、ハロゲン原子、C1〜C6のアルコキシ基またはアシルオキシ基を表し、nは1〜3の整数を表す。)で示されるシラン系界面活性剤、及び該シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒を含む有機薄膜形成用溶液とを接触させることで、前記透導電膜上に有機薄膜の層を形成する工程を有する透明導電性基板の製造方法。
(19)前記触媒が、金属酸化物;金属水酸化物;金属アルコキシド類;キレート化または配位化された金属化合物;金属アルコキシド類部分加水分解生成物;金属アルコキシド類を該金属アルコキシド類の2倍当量以上の水で処理して得られた加水分解生成物;有機酸;シラノール縮合触媒;及び酸触媒から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(18)に記載の透明導電性基板の製造方法。
(20)前記触媒が、(a)金属酸化物;金属水酸化物;金属アルコキシド類;キレート化または配位化された金属化合物;金属アルコキシド類部分加水分解生成物;金属アルコキシド類を該金属アルコキシド類の2倍当量以上の水で処理して得られた加水分解生成物;有機酸;シラノール縮合触媒;及び酸触媒から選ばれる少なくとも1種と、(b)前記シラン系界面活性剤を含有する組成物であることを特徴とする(18)または(19)に記載の透明導電性基板の製造方法。
(21)金属アルコキシド類が、チタンアルコキシド類であることを特徴とする(19)または(20)に記載の透明導電性基板の製造方法。
(22)チタンアルコキシド類が、チタンテトライソプロポキシドであることを特徴とする(21)に記載の透明導電性基板の製造方法。
(23)有機薄膜形成用溶液が、炭化水素系溶媒溶液であることを特徴とする(18)〜(22)のいずれかに記載の透明導電性基板の製造方法。
(24)炭化水素系溶媒が、トルエンであることを特徴とする(22)に記載の透明導電性基板の製造方法。
(25)有機薄膜形成用溶液中の水分量を50ppmから有機溶媒への飽和水分含量の範囲にするまたは保持することを特徴とする請求項18〜24のいずれか記載の透明導電性基板の製造方法。
本発明の第3によれば、下記(26)〜(28)に記載の光学的素子が提供される。
(26)互いに対向する2つの電極間に発光層を必須の層として設けた光学的素子において、前記電極の少なくとも一方が、(1)〜(17)いずれかに記載の透明導電性基板からなることを特徴とする光学的素子。
(27)前記電極の少なくとも一方が、ホール注入電極であることを特徴とする(26)に記載の光学的素子。
(28)発光層に有機化合物を用いることを特徴とする(26)又は(27)に記載の光学的素子。
本発明の透明導電性基板は、基板表面に形成された透明導電膜上に、均一で高品質、且つ効率よく形成できる有機薄膜の層を有している。従って、本発明の透明導電性基板によれば、低電圧で駆動させることができ、かつ長期間に亙って安定な導電特性を維持することができる。
本発明の透明導電性基板の製造方法によれば、本発明の透明導電性基板を、簡便かつ効率よく製造することができる。
また、本発明の光学的素子は、本発明の透明導電性基板を用いるので、低電圧で駆動させることができ、かつ長期間に亙って安定な発光特性を維持することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
1)透明導電性基板およびその製造方法
本発明の透明導電性基板は、基板と、該基板表面に形成された透明導電膜と、並びに該透明導電膜上に、式(1):R−Si−X4−n(式中、Rは置換基を有していてもよいC1〜20の炭化水素基、置換基を有していてもよいC1〜20のハロゲン化炭化水素基、連結基を含むC1〜20の炭化水素基、または連結基を含むC1〜20のハロゲン化炭化水素基を表し、Xは水酸基、ハロゲン原子、C1〜C6のアルコキシ基またはアシルオキシ基を表し、nは1〜3の整数を表す。)で示されるシラン系界面活性剤、及び該シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒を含む有機薄膜形成用溶液から形成された有機薄膜の層を有することを特徴とする。
(1)基板
本発明で用いる基板は、積層面が絶縁性物質で構成されていれば特に限定されるものではないが、基板側から光を取り出す場合には、光透過率の高い材料で構成されている必要がある。具体的には、ガラス、石英などの無機材料;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカルバゾール、ポリイミドなどのプラスチック;アルミナなどのセラミックスなどの絶縁性基板;アルミニウム、鉄などの金属基板にSiO、有機絶縁材料などの絶縁物をコートした基板;アルミニウムなどの金属基板の表面を陽極酸化などの方法で絶縁化処理を施した基板などが挙げられる。
(2)透明導電膜
透明導電膜としては、基板上に形成され、透明で導電性を有するものであれば特に制限されない。透明導電膜の光透過率は、光全線透過率で80%以上、さらに、光直線透過率で80%以上であるのが好ましい。
また、前記透明導電膜は、主配向率をθ/2θ法によるX線回折強度で(400)/(222)比で表すと、その比が1.0以上のものが好ましい。1.0未満では、1.0以上の光学的素子に比して駆動電圧が高くなり、同じ駆動電圧において輝度が低くなる。1.0以上であれば、特に制限されず、(222)面の回折強度は0でも構わない。
本発明においては、透明導電膜は結晶質導電膜であるのがより好ましい。その膜構造は特に制限されるものではなく、塊状結晶が積層した構造であってもよいが、中でも柱状単結晶の集合体であるのが特に好ましい。この場合、特に(100)面配向性が強くなり、低駆動電圧、高輝度のEL素子を製造することができる。
上記した結晶質導電膜は、発光層、電子注入輸送層、またはホール注入輸送層と接触する表面結晶子の長軸方向の大きさ、すなわちグレインサイズは、20〜100nmの範囲であるのが好ましい。100nm以上では、局所的凹凸が大きくなり、結果局所的に高電圧が生じて、輝度むら発生の原因となりひいては劣化を促進して発光安定性を低下させる。また、局所的な高電圧は、発光層中の有機化合物の結晶化を促進し、輝度むら、発光安定性を低下させることになる。また、20nm以下では、(100)面方向への結晶の成長が十分でなく、発光層等へ電子またはホールを低電圧で効率よく輸送することができず、発光効率が低下する。
結晶子の形状は、特に限定されるものではないが、球形または回転楕円形が好ましく、突起、角が少ない方が好ましい。なお、結晶子の形状及び大きさの評価は、透過型顕微鏡(TEM)を用いて表面を観察することで行うことができる。
また、前記透明導電膜の最大表面粗さ(Rmax)は、5〜30nmの範囲であるのが好ましく、5〜20nmの範囲であるのがより好ましく、1〜10nmの範囲であるのが特に好ましい。透明導電膜の最大表面粗さ(Rmax)5nmより小さいと、表面が平坦すぎて電子またはホールの注入効率が低下し、30nm以上では局所的凹凸が大きくなり、結果局所的に高電圧が生じて、輝度むら発生の原因となり、ひいては劣化を促進して発光安定性を低下させるおそれがある。
また、透明導電膜の表面の極微細な構造において、凹凸がある方が電荷またはホール注入効率が上がり有利であり、特に、表面の凹凸が均一に分布している表面であるのが好ましい。すなわち、表面凹凸の均一性を評価する指標として、例えば表面の突起数を用いた場合、1μm角領域内に存在する5〜30nmの突起数が100個以上であることが好ましい。この場合の突起数は、1μm角領域内に存在する5〜30nmの突起の数の平均値を意味する。
この場合、突起とは、AFC(原子間力顕微鏡)、STM(走査型透過方顕微鏡)、SEM(走査型電子顕微鏡)等を用いて表面を測定した場合にその得られる画像上で明らかに隆起して突起と認められるものを突起といい、突起の長さは、結晶質導電膜表面の表面粗さの断面曲線の谷における最も低い標高の所から測定した値のことである。突起の数が、100個未満では、局所的に高電圧が生じて輝度むら等の原因となる。また、100個以上であれば、突起の数の上限は特に規定されない。突起の形状は、特に限定されないが、ホール輸送層等との接触を考慮して、突起最上部が鋭角でない形状が好ましい。
透明導電膜を構成する材料としては、仕事関数が大きいものが好ましく、具体的には、金、白金、ニッケルなどの金属;透明電極材料;金属元素の単体または前記金属元素を含む2成分もしくは3成分の合金;などが挙げられる。また、これらを主成分として、必要に応じて、Ir、Mo、Mn、Nb、Os、Re、Ru、Rh、Cr、Fe、Pt、Ti、W、及びVの酸化物からなる群から選ばれる1種または2種以上を、例えば金属換算で、膜中の全金属に対して0.1〜5原子%含有させることもできる。さらに、必要に応じて、C、N、H、F、B、P、S、As、及びSi元素からなる群から選ばれる1種または2種以上を、例えば膜中の全金属原子に対して、5原子%以下になるように含有させることもできる。
これらの中でも、後述するように、本発明の光学的素子が有機EL素子であって、透明導電膜が該有機EL素子のホール注入電極である場合には、透明導電膜を構成する材料としては、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、IZO(亜鉛ドープ酸化インジウム)、ZnO、SnO、In、CuI、ポリアニリンなどの透明電極材料が好ましく、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、IZO(亜鉛ドープ酸化インジウム)がより好ましく、ITOが特に好ましい。
また、透明導電膜が有機EL素子の電子注入電極である場合には、透明導電膜を構成する材料としては、K、Li、Na、Mg、La、Ce、Ca、Sr、Ba、Al、Ag、In、Sn、Zn、Zr、Cs、Er、Eu、Ga、Hf、Nd、Rb、Sc、Sm、Ta、Y、Yb等の金属元素単体;BaO、BaS、CaO、HfC、LaB、MgO、MoC、NbC、PbS、SrO、TaC、ThC、ThO、ThS、TiC、TiN、UC、UN、UO、WC、Y、ZrC、ZrN、ZrO等の化合物;Al−Ca合金、Al−In合金、Al−Li合金、In−Mg合金等の、金属元素を含む2成分、3成分の合金系;等が好ましい。
透明導電膜形成用材料としてITOを用いた場合、通常、InとSnOとを化学量論組成で含有するが、酸素量は多少これらの値から変化していてもよい。ITOの化学組成を、InO・SnOとすると、Xは1.0〜2.0、Yは1.6〜2.4の範囲が好ましい。Inに対しSnOの混合比は、0.05〜40重量%の範囲が好ましく、さらに、1〜20重量%、さらには5〜12重量%の範囲が好ましい。
また、前記透明導電膜がITO膜である場合においては、スズ原子が、基板から膜表面に向かって膜中に均一に分布していることが好ましい。膜表面、膜中に、スズが偏析しないことにより、ホールまたは電子の注入効率が上がる。この場合、均一とは、インジウム・スズ原子比が、深さ方向に傾斜せず、各深さにおけるインジウム・スズ原子比が10%以内の誤差範囲に納まっている状態を表す。
透明導電膜を形成する方法としては、基板上に薄膜を成膜する方法であれば特に制限されず、具体的には、スパッター法、電子ビーム法、イオンプレーティング法または化学的気相成長法(CVD法)、スプレー熱分解法、パイロゾル法等を例示することができる。なかでも、CVD法、スプレー熱分解法、パイロゾル法が好ましく、スプレー熱分解法、パイロゾル法が特に好ましい。
CVD法、スプレー熱分解法、パイロゾル法によりITO膜を形成する場合、用いるインジウム化合物としては、熱分解して酸化インジウムになる物質が好ましく、具体的には、インジウムトリスアセチルアセトナート、インジウムトリスベンゾイルメタネート、三塩化インジウム、硝酸インジウム、インジウムトリイソプロポキシド等を例示することができる。これらのうち、特にインジウムトリスアセチルアセトナートを好ましく使用することができる。
また、スズ化合物としては、熱分解して酸化第2スズになるものを好ましく用いることができ、具体的には、塩化第2スズ、ジメチルスズジクロライド、ジブチルスズジクロライド、テトラブチルスズ、スタニアスオクトエート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズアセテート、ジブチルスズビスアセチルアセトナート等を挙げることができる。
なお、前記インジウム化合物及びスズ化合物に加えて、第3成分として、Mg、Ca、Sr、Ba等の周期律表第2族元素、Sc、Y等の第3族元素、La、Ce、Nd、Sm、Gd等のランタノイド、Ti、Zr、Hf等の第4族元素、V、Nb、Ta等の第5族元素、Cr、Mo、W等の第6族元素、Mn等の第7族元素、Co等の第9族元素、Ni、Pd、Pt等の第10族元素、Cu、Ag等の第11族元素、Zn、Cd等の第12族元素、B、Al、Ga等の第13族元素、Si、Ge、Pb等の第14族元素、P、As、Sb等の第15族元素、Se、Te等の第16族元素等の単体若しくはこれらの化合物を添加してITO膜を形成することも好ましい。
これらの元素の添加割合は、インジウムに対して、0.05〜20原子%程度が好ましく、添加元素によって添加割合は異なり、目的とする抵抗値にあった元素及び添加量を適宜選定することができる。
スプレー熱分解法またはパイロゾル法により、基板上にITO膜を成膜する方法としては、メタノール、エタノール等のアルコール類;アセトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;等の有機溶媒に、上記に例示したインジウム化合物及びスズ化合物を所定割合で溶解させて混合溶液とした後、該混合溶液をキャリアガス中に微粒子化して分散させ、予め400〜750℃、好ましくは、400〜550℃に加熱した基板と常圧下接触させる方法により製造することができる。
前記混合溶液の微粒子化は、超音波霧化法、スプレー法等によって行うことができ、均一な粒径の微粒子を安定して発生させることができる超音波霧化法が好ましい。キャリアガスとしては、酸化性ガス、通常、空気が使用される。
上記スプレー熱分解法またはパイロゾル法を用いた場合、該混合溶液の微粒子と加熱されたガラス基板との接触により、基板上にITO膜組成を有する結晶核が生成し、その核が成長するにつれて隣接する核と接触し、その接触核は相互に拘束されるため成長は基板面に対して垂直方向が主流となり、その結果配向した柱状単結晶の複合体であるITO膜が得られやすくなる。
以上のようにして形成される透明導電膜の厚さは、特に制限されないが、好ましくは10〜500nm、さらに好ましくは20〜200nmである。
以上のように基板上に成膜された透明導電膜は、必要に応じてさらに、アルカリ溶液処理、オゾン処理、酸素存在下または真空下での紫外光の照射処理、プラズマ照射処理などの親水化処理を施すことができる。これらの処理を施すことにより、その上に形成する自己組織化単分子膜の成膜性が良好になるので好ましい。
(3)有機薄膜の層
本発明の透明導電性基板は、上述した透明導電膜上に、式(1):R−Si−X4−nで示されるシラン系界面活性剤、及び該シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒を含む有機薄膜形成用溶液から形成された有機薄膜の層を有する。
有機薄膜の層の形成に用いる有機薄膜形成用溶液は、式(1):R−Si−X4−nで示されるシラン系界面活性剤、及び該シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒を含む。
前記式(1)中、Rは置換基を有していてもよいC1〜20の炭化水素基、置換基を有していてもよいC1〜20のハロゲン化炭化水素基、連結基を含むC1〜20の炭化水素基、又は連結基を含むC1〜20のハロゲン化炭化水素基を表す。
前記置換基を有していてもよいC1〜20の炭化水素基の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−オクタデシル基等の炭素数1〜20のアルキル基;ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンチニル基、n−デシニル基、n−オクタデシニル基等の炭素数2〜20のアルケニル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;等を挙げることができるが、C8〜C20の炭化水素基が好ましい。
前記置換基を有していてもよいハロゲン化炭化水素基のハロゲン化炭化水素基としては、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数2〜20のハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アリール基等が挙げられる。具体的には、上記例示した炭化水素基中の水素原子の1個以上がフッ素原子、塩素原子又は臭素原子等のハロゲン原子に置換された基を挙げることができる。
前記置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよいハロゲン化炭化水素基の置換基としては、カルボキシル基;アミド基;イミド基;エステル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;または水酸基等を挙げることができる。これらの置換基の数は0〜3であるのが好ましい。
連結基を含む炭化水素基の炭化水素基としては、具体的には、前記置換基を有していてもよい炭化水素基の炭化水素基として挙げたものと同様のものを挙げることができる。
また、連結基を含むハロゲン化炭化水素基のハロゲン化炭化水素基としては、具体的には、前記置換基を有していてもよいハロゲン化炭化水素基のハロゲン化炭化水素基として挙げたものと同様のものを挙げることができる。
前記連結基は、炭化水素基若しくはハロゲン化炭化水素基の炭素−炭素結合間、又は炭化水素基の炭素と後述する金属原子Mとの間に存在するのが好ましい。連結基の具体例としては、−O−、−S−、−SO−、−CO−、又は−C(=O)O−等を挙げるこができる。
nは1〜3の整数を表す。
Xは、水酸基、ハロゲン原子、C1〜C6のアルコキシ基又はアシルオキシ基を表し、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができ、C1〜C6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基等を挙げることができ、アシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基等を挙げることができる。
これらの中でも、C1〜C6のアルコキシ基が好ましく、またnは1が好ましい。
前記式(1)で示されるシラン系界面活性剤の具体例としては、(ヘプタデカフルオリン、1,1,2,2−テトラヒドロデシル)−1−トリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオリン1,1,2,2−テトラヒドロデシル)−1−トリクロロシラン、(ヘプタデカフルオリン1,1,2,2−テトラヒドロデシル)−1−ジメチルクロロシラン、又はn−オクタデシルトリメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、n−オクタデシルトリメトキシシランが特に好ましい。
前記シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒としては、シラン系界面活性剤のシラン部分又は加水分解性基部分と配位結合や水素結合等を介して相互作用をすることにより、加水分解性基又は水酸基を活性化させ、縮合を促進させる作用を有する化合物であれば特に制限されない。例えば、(A)金属酸化物、金属水酸化物、金属アルコキシド類、キレート化又は配位化された金属化合物、金属アルコキシド類部分加水分解生成物、金属アルコキシド類を該金属アルコキシド類の2倍当量以上の水で処理して得られた加水分解生成物、有機酸、シラノール縮合触媒、及び酸触媒からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、「触媒A成分」ということがある)、(B)前記触媒A成分と、前記シラン系界面活性剤を含有する組成物(以下、「触媒B成分」ということがある)が好ましく、金属アルコキシド類、金属アルコキシド類の部分加水分解生成物の少なくとも1種を用いるのがより好ましい。
金属アルコキシド類としては、特に限定されないが、透明性に優れる有機薄膜を得ることができること等の理由から、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、インジウム、スズ、タンタル、亜鉛、タングステン及び鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のアルコキシド類が好ましく、チタンテトライソプロポキシド等のチタンアルコキシド類がより好ましい。また、金属アルコキシド類のアルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、含有酸化物濃度、有機物の脱離容易性、入手容易性等から、炭素数1〜4がより好ましい。
本発明に用いる金属アルコキシド類の具体例としては、Si(OCH、Si(OC、Si(OC−i)、Si(OC等のケイ素アルコキシド;Ti(OCH、Ti(OC、Ti(OC−i)、Ti(OC等のチタンアルコキシド;Ti[OSi(CH、Ti[OSi(C等のテトラキストリアルキルシロキシチタン;Zr(OCH、Zr(OC、Zr(OC−i)、Zr(OC等のジルコニウムアルコキシド;Al(OCH、Al(OC、Al(OC−i)、Al(OC等のアルミニウムアルコキシド;In(OCH、In(OC、In(OC−i)、In(OC等のインジウムアルコキシド;Sn(OCH、Sn(OC、Sn(OC−i)、Sn(OC等のスズアルコキシド;Ta(OCH、Ta(OC、Ta(OC−i)、Ta(OC等のタンタルアルコキシド;W(OCH、W(OC、W(OC−i)、W(OC等のタングステンアルコキシド;Zn(OCH、Zn(OC等の亜鉛アルコキシド;Pb(OC等の鉛アルコキシド;等が挙げられる。これらの金属アルコキシド類は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また本発明においては、金属アルコキシド類として、2種以上の金属アルコキシド類の反応により得られる複合アルコキシド、1種もしくは2種以上の金属アルコキシド類と、1種もしくは2種以上の金属塩との反応により得られる複合アルコキシド、及びこれらの組み合わせを用いることもできる。
2種以上の金属アルコキシド類の反応により得られる複合アルコキシドとしては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシドと、遷移金属のアルコキシドとの反応により得られる複合アルコキシドや、第3B族元素の組合せにより錯塩の形で得られる複合アルコキシド等を例示することができる。
その具体例としては、BaTi(OR’)、SrTi(OR’)、BaZr(OR’)、SrZr(OR’)、LiNb(OR’)、LiTa(OR’)、及び、これら2種以上の組合せ、LiVO(OR’)、MgAl(OR’)、(OR’)SiOAl(OR”)、(OR’)SiOTi(OR”)、(OR’)SiONb(OR”)、(OR’)SiOTa(OR”)等の、ケイ素アルコキシドと、他の金属アルコキシド類との反応生成物、及びその縮重合物などが挙げられる。ここで、R’及びR”はアルキル基などを表す。
1種もしくは2種以上の金属アルコキシド類と1種もしくは2種以上の金属塩との反応により得られる複合アルコキシドとしては、金属塩と金属アルコキシド類との反応により得られる化合物を例示することができる。
金属塩としては、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩等を、金属アルコキシド類としては、上述した金属アルコキシド類と同様のものをそれぞれ例示することができる。
金属アルコキシド類の部分加水分解生成物は、金属アルコキシド類を完全に加水分解する前に得られるものであって、オリゴマーの状態で存在するものである。
金属アルコキシド類の部分加水分解生成物の製造方法としては、有機溶媒中、上記例示した金属アルコキシド類に対し0.5〜2.0倍モル未満の水を用い、一100℃から有機溶媒還流温度範囲で加水分解する方法を好ましく例示することができる。
具体的には、
(i)有機溶媒中、金属アルコキシド類に対し0.5〜1.0倍モル未満の水を添加する方法、
(ii)有機溶媒中、加水分解が開始する温度以下、好ましくは0℃以下、より好ましは−20〜−100℃の範囲で、金属アルコキシド類に対し1.0〜2.0倍モル未満の水を添加する方法、
(iii)有機溶媒中、水の添加速度を制御する方法や、水に水溶性溶媒を添加して水濃度を低下させた水溶液を使用する方法等により、加水分解速度を制御しながら、金属アルコキシド類に対し0.5〜2.0倍モル未満の水を室温で添加する方法、等を例示することができる。
上記(i)の方法においては、任意の温度で所定量の水を添加した後、加水分解を開始する温度以下、好ましくは−20℃以下で、水をさらに追加して反応を行うこともできる。
金属アルコキシド類と水との反応は、有機溶媒を用いずに直接金属アルコキシド類と水を混合することにより行うこともできるが、有機溶媒中で行うのが好ましい。具体的には、金属アルコキシド類の有機溶媒溶液に有機溶媒で希釈した水を添加する方法;水が懸濁又は溶解した有機溶媒中に、金属アルコキシド類、又はその有機溶媒溶液を添加する方法;のいずれの方法でも行うことができ、前者の水を後から添加する方法が好ましい。
有機溶媒中の金属アルコキシド類の濃度は、急激な発熱を抑制し、撹拝が可能な流動性を有する範囲であれば特に限定されないが、通常、5〜30重量%の範囲である。
上記(i)の方法における金属アルコキシド類と水との反応温度は特に制限されず、通常、−100〜+100℃の範囲、好ましくは、−20℃から用いる有機溶媒又は加水分解によって脱離してくるアルコールの沸点までの温度範囲である。
上記(ii)の方法における水の添加温度は、金属アルコキシド類の安定性に依存するものであり、加水分解開始温度以下、又は0℃以下の温度であれば特に限定されないが、金属アルコキシド類の種類によっては、金属アルコキシド類への水の添加を−50℃〜−100℃の温度範囲で行うことが好ましい。また、低温で水を添加し、一定時間熟成した後、室温から用いた溶媒の還流温度で加水分解し、さらに脱水縮合反応を行うこともできる。
上記(iii)の方法における金属アルコキシド類と水との反応は、特殊な冷却装置を用いなくても冷却可能な温度範囲、例えば、0℃から室温の範囲で、水の添加速度を制御する等の温度以外の方法により加水分解速度を制御することにより行うことができる。一定時間熟成した後、室温から用いる溶媒の還流温度で加水分解し、さらに脱水縮合反応を行うこともできる。
用いる有機溶媒としては、その有機溶媒中で、金属アルコキシド類の加水分解生成物が、分散質となって分散できるものであるのが好ましく、シラン系界面活性剤を水で処理する反応を低温で行うことができることから、水の溶解度が大きく、低温で凝固しない溶媒がより好ましい。
用いる有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;メチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタンシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン(特開平9−208438号公報等)等;を挙げることができる。
これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
混合溶媒として用いる場合には、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒と、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等の低級アルコール溶媒系の組み合わせが好ましい。この場合の低級アルコール系溶媒としては、イソプロパノール、t−ブタノール等の2級以上のアルコール系溶媒がより好ましい。混合溶媒の混合比は特に制限されないが、炭化水素系溶媒と低級アルコール系溶媒を、体積比で、99/1〜50/50の範囲で用いるのが好ましい。
用いる水は、中性であれば特に制限されないが、不純物が少なく、繊密な有機薄膜を得る観点から、純水、蒸留水又はイオン交換水を用いるのが好ましい。水の使用量は、前記金属アルコキシド類1モルに対し、0.5〜2.0倍モル未満である。
また、金属アルコキシド類の水による部分加水分解反応においては、酸、塩基又は分散安定化剤を添加してもよい。酸及び塩基は、凝結してできた沈殿を再び分散させる解膠剤として、また、金属アルコキシド類を加水分解、脱水縮合させてコロイド粒子等の分散質を製造するための触媒として、及び生成した分散質の分散剤として機能するものであれば特に制限されない。
用いる酸としては、塩酸、硝酸、ホウ酸、ホウフツ化水素酸等の鉱酸;酢酸、ギ酸、シュウ酸、炭酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート等の光照射によって酸を発生する光酸発生剤;を挙げることができる。
用いる塩基としては、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、アンモニア、ジメチルホルムアミド、ホスフイン等を挙げることができる。
分散安定化剤は、分散質を分散媒中に安定に分散させる効力を有する剤であり、解膠剤、保護コロイド、界面活性剤等の凝結防止剤等を挙げることができる。具体的には、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸等の多価カルボン酸;ヒドロキシカルボン酸;ピロ燐酸、トリポリ燐酸等の燐酸;アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸sec−ブチル、アセト酢酸t−ブチル、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、2,4−ノナンジオン、5−メチルヘキサンジオン等の金属原子に対して強いキレート能力を有する多座配位子化合物;スルパース3000、9000、17000、20000、24000(以上、ゼネカ社製)、Disperbyk−161、−162、−163、−164(以上、ビツクケミー社製)等の脂肪族アミン系、ハイドロステアリン酸系、ポリエステルアミン;ジメチルポリシロキサン、メチル(ポリシロキシアルキレン)シロキサン共重合体、トリメチルシロキシケイ酸、カルボキシ変性シリコーンオイル、アミン変性シリコーン等(特開平9−208438号公報、特開平2000−53421号公報等)のシリコーン化合物;等が例示される。
上記のようにして得られる部分加水分解生成物は、有機溶媒中、酸、塩基及び/又は分散安定化剤の非存在下、凝集せずに安定に分散している性質を有する分散質となっている。この場合、分散質とは、分散系中に分散している微細粒子のことをいい、具体的には、コロイド粒子等を例示することができる。
ここで、凝集せずに安定に分散している状態とは、有機溶媒中、酸、塩基及び/又は分散安定化剤の非存在下、加水分解生成物の分散質が、凝結して不均質に分離していない状態を表し、好ましくは透明で均質な状態を表す。
また透明とは、可視光における透過率が高い状態をいい、具体的には、分散質の濃度を酸化物換算で0.5重量%とし、石英セルの光路長を1cmとし、対照試料を有機溶媒とし、光の波長を550nmとする条件で測定した分光透過率で表して、好ましくは80〜100%の透過率を表す状態をいう。
部分加水分解生成物の分散質の粒子径は特に限定されないが、可視光における高い透過率を得るためには、通常1〜100nm、好ましくは1〜50nm、より好ましくは1〜10nmの範囲である。
前記シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒としての触媒B成分は、触媒A成分と前記シラン系界面活性剤とを混合することにより得ることができ、より具体的には、シラン系界面活性剤を、触媒A成分の存在下、有機溶媒中、水で処理することによって調製することができる。触媒B成分中、シラン系界面活性剤を触媒A成分1モルに対して、0.5〜2.0モル含むのが好ましく、0.8〜1.5モル含むのがより好ましい。
前記シラン系界面活性剤を、有機溶媒中、触媒A成分の存在下、水で処理する方法としては、具体的には、(ア)シラン系界面活性剤及び触媒A成分の有機溶媒溶液に水を添加する方法、(イ)シラン系界面活性剤と水の有機溶媒溶液に触媒A成分を添加する方法等を挙げることができる。なお、触媒A成分は、水を含む有機溶媒の状態で使用されるのが一般的である。
触媒B成分の調製に用いる有機溶媒としては、炭化水素系溶媒、フッ化炭素系溶媒及びシリコーン系溶媒が好ましく、なかでも、沸点が100〜250℃のものがより好ましい。具体的には、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、灯油、リグロイン等の炭化水素系溶媒;CBrClCF、CClFCFCC1、CClFCFCHFCl、CFCFCHC1、CFCBrFCBrF、CClFCClFCFCCl、Cl(CFCFCl)Cl、Cl(CFCFCl)CFCCl、Cl(CFCFCl)Cl等のフロンケイ溶媒;フロリナート(3M社製)、アフルード(旭ガラス社製)等のフッ化炭素系溶媒;ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン等のシリコーン系溶媒;を挙げることができる。これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、急激な反応を抑えるためには、(ア)の方法において添加する水、(イ)の方法において添加する触媒A成分は、有機溶媒等で希釈したものであるのが好ましい。
前記有機薄膜形成用溶液は、前記シラン系界面活性剤と触媒A成分、あるいは前記シラン系界面活性剤と触媒B成分とから得ることができる。より具体的には、前記シラン系界面活性剤、有機溶媒、触媒A成分、及び所望により水の混合物を攪拌することで、あるいは前記シラン系界面活性剤、有機溶媒、触媒B成分、及び所望により水の混合物を攪拌することで、有機薄膜形成用溶液を得ることができる。
前記有機薄膜形成用溶液の調製に用いる触媒A成分や触媒B成分の使用量は、形成する単分子の有機薄膜の物性に影響を与えない量であれば特に制限されないが、シラン系界面活性剤1モルに対して酸化物換算モル数で、それぞれ通常0.001〜1モル、好ましくは0.001〜0.2モルである。
前記有機薄膜形成用溶液は、より具体的には、(a)前記触媒B成分及びシラン系界面活性剤の有機溶媒溶液に水を添加する方法、(b)シラン系界面活性剤と水の混合溶液に、前記触媒B成分を添加する方法等を挙げることができる。また、急激な反応を抑えるためには、(a)の方法において添加する水、(b)の方法において添加する触媒B成分は、有機溶媒等で希釈したものであるのが好ましい。
前記有機薄膜形成用溶液の調製に用いる有機溶媒としては、炭化水素系溶媒、フッ化炭素系溶媒及びシリコーン系溶媒が好ましく、なかでも、沸点が100〜250℃のものがより好ましい。具体的には、前記触媒A成分や触媒B成分の調製に用いることができるものとして列記した、炭化水素系溶媒、フッ化炭素系溶媒及びシリコーン系溶媒と同様のものを使用することができる。
前記有機薄膜形成用溶液の調製に用いる水の量は、用いるシラン系界面活性剤、触媒A成分や触媒B成分、塗布する基板等の種類に応じて適宜決定することができる。水の使用量があまり多いと、シラン系界面活性剤が互いに縮合し、基体表面への化学吸着が阻害され、単分子膜とならないおそれがある。
前記シラン系界面活性剤、有機溶媒、触媒A成分や触媒B成分及び水の混合物の攪拌温度は、通常−100℃〜+100℃、好ましくは−20℃〜+50℃である。攪拌時間は、通常、数分から数時間である。また、この場合においては、均一な有機薄膜形成用溶液を得るために、超音波処理を施すことも好ましい。
本発明においては、有機薄膜形成用溶液として、その水分含量が所定量範囲内になるように調整するか又は保持したものを用いることが好ましい。有機薄膜形成用溶液中における水分含量は、基体表面への化学吸着が阻害される、繊密な単分子膜が製造できない、有効に用いることのできるシラン系界面活性剤の量を損失する、又は触媒が失活する等の問題がおきない範囲の量が好ましい。また、ディップ法により該溶液を基板に接触させる場合に、接触時間を10分間以内、好ましくは5分間以内に、繊密で均質な有機薄膜を1度にしかも該溶液が接触した基板前面に形成させるために、基板表面又は膜の形成を促進活性化させるのに十分な水分含量以上が好ましい。
前記有機薄膜形成用溶液の水分含量は、具体的には50ppm以上が好ましく、より好ましくは50ppmから有機溶媒への飽和水分含量の範囲(より具体的には、50〜1000ppmの範囲)である。
前記有機薄膜形成用溶液の水分含量を所定量範囲内になるように調整するか又は保持する方法としては、(i)前記有機薄膜形成用溶液に接触して水層を設ける方法、(ii)水分を含ませた保水性物質を共存させておく方法、(iii)水分を含む気体を吹き込む方法、等を挙げることができる。
透明導電膜上に有機薄膜の層を形成する方法としては、上記のようにして得られた有機薄膜形成用溶液に透明導電膜表面を接触させる方法を挙げることができる。
透明導電膜表面を有機薄膜形成用溶液に接触させる方法としては、透明導電膜が形成された基板を有機薄膜形成用溶液中に浸漬する方法、透明導電膜表面に有機薄膜形成用溶液を公知の方法で塗布する方法、透明導電膜上に有機薄膜形成用溶液をスプレーする方法等を挙げることができる。なかでも、均一な膜質を有する有機薄膜を効率よく成膜できることから、透明導電膜が形成された基板を有機薄膜形成用溶液中に浸漬する方法が好ましい。浸漬時間としては5分間以上が好ましく、また10分間以内が好ましい。そして、炭化水素系溶媒溶液等を用いて、浸漬等の接触後に超音波洗浄することがより好ましい。
有機薄膜形成用溶液に透明導電膜表面を接触させた後、膜表面に付着した余分な試剤、不純物等を除去するために、洗浄工程を設けることが好ましい。洗浄工程を設けることにより、より膜厚を制御することができる。洗浄方法は、表面の付着物を除去できる方法であれば特に制限されないが、前記のように、炭化水素系溶媒溶液等を用いて、浸漬後に超音波洗浄することがより好ましい。
有機薄膜の層を形成後又は有機薄膜の層を形成後洗浄した後は、形成された有機薄膜の層を安定化させるために、基板を加熱するのが好ましい。加熱する温度は、用いる基板の種類、透明導電性膜の種類、形成された有機薄膜の安定性等によって適宜選択することができる。
前記有機薄膜形成用溶液に透明導電膜を接触させると、該溶液中のシラン系界面活性剤が透明導電膜表面に吸着され、有機薄膜の層が形成される。シラン系界面活性剤が透明導電膜表面に吸着される機構の詳細は明らかではないが、次のように考えることができる。すなわち、有機薄膜形成用溶液中においては、シラン系界面活性剤の加水分解性基が水により加水分解された状態となっている。そして、この状態のシラン系界面活性剤が透明導電膜表面の活性水素と反応して、透明導電膜表面と強固な化学結合を形成してなる薄膜が形成される。この薄膜は、透明導電膜の活性水素と反応して形成されるものであって、単分子膜となる。
有機薄膜の層の膜厚は、その形成用分子のアルキル鎖長によるが、通常0.2〜10nmが好ましく、0.5〜3nmが特に好ましい。
前記有機薄膜形成用溶液を使用することにより、透明導電膜表面に、光照射前において、擾油性であり、かつ擾水性である有機薄膜の層を形成することができる。より具体的には、光照射前における水の接触角が好ましくは80°以上、より好ましくは85°以上、さらに好ましくは90°以上、特に好ましくは100°以上であり、かつ、トルエンの接触角が20。以上である耐摩耗性に優れた有機薄膜を形成することができる。
以上のようにして本発明の透明導電性基板を得ることができる。得られる透明導電性基板は、基板表面に形成された透明導電膜上に、均一で高品質、且つ効率よく形成できる有機薄膜を有しているので、低電圧で駆動させることができ、かつ長期間に亙って安定な導電特性を維持することができる。
本発明の透明導電性基板は、後述するように、本発明の光学的素子の製造原料として好適である。
2)光学的素子
本発明の光学的素子は、互いに対向する2つの電極間に発光層を必須の層として設けた光学的素子において、前記電極の少なくとも一方が、本発明の透明導電性基板からなることを特徴とする。
本発明の光学的素子としては、互いに対向する2つの電極間に発光層を必須の層として設けた光学的素子であれば、特に制限されないが、有機EL素子であるのが特に好ましくい。また、本発明の光学的素子においては、前記電極の少なくとも一方がホール注入電極であることが好ましく、発光層に有機化合物を用いることが好ましい。
本発明の光学的素子の一種である有機EL素子の層構成を示す要部の概略断面図を図1に示す。この有機EL素子は、基板1、ホール注入電極2、有機薄膜の層3、ホール注入輸送層4、発光層5、電子注入輸送層6、電子注入電極7、および保護電極8により構成されている。そして、基板1、ホール注入電極2及び有機薄膜の層3からなる部分に、本発明の透明導電性基板を用いている。すなわち、有機薄膜の層3は、前記式(1)で示されるシラン系界面活性剤、及び該シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒を含む有機薄膜形成用溶液から形成されたものである。
図1に示す有機EL素子において、ホール注入輸送層4は、ホール注入電極2からのホールの注入を容易にする機能、ホールを安定に輸送する機能および電子を妨げる機能を有する。ホール注入輸送層4の厚さは、再結合・発光領域の設計によるが、通常、5〜500nm程度、特に10〜300nmとすることが好ましい。
ホール注入輸送層4を構成する材料としては、特開昭63−295695号公報、特開平2−191694号公報、特開平3−792号公報、特開平5−234681号公報、特開平5−239455号公報、特開平5−299174号公報、特開平7−126225号公報、特開平7−126226号公報、特開平8−100172号公報、EP0650955A1等に記載されている各種有機化合物、例えば、テトラアリールベンジジン化合物(トリアリールジアミンないしトリフェニルジアミン:TPD)、芳香族三級アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、ポリチオフェン等が挙げられる。これらの化合物は2種以上を併用してもよく、併用するときは別層にして積層したり、混合したりすればよい。
また、ホール注入輸送層をホール注入層とホール輸送層とに分けて積層する場合は、ホール注入輸送層用の化合物の中から好ましい組合せを選択して用いることができる。このとき、ホール注入電極(ITO等)側からイオン化ポテンシャルの小さい化合物の層の順に積層することが好ましい。またホール注入電極表面には薄膜性の良好な化合物を用いることが好ましく、ホール注入輸送層を2層以上設けるときも同様である。このような積層順とすることによって、駆動電圧が低下し、電流リークの発生やダークスポットの発生、成長を防ぐことができる。また、素子化する場合、蒸着を用いているので1〜10nm程度の薄い膜も、均一かつピンホールフリーとすることができるため、ホール注入層にイオン化ポテンシャルが小さく、可視部に吸収をもつような化合物を用いても、発光色の色調変化や再吸収による効率の低下を防ぐことができる。
発光層5には、発光機能を有する化合物である蛍光性物質を含有させる。このような蛍光性物質としては、例えば、特開昭63−26492号公報に開示されている、キナクリドン、ルブレン、スチリル系色素等の化合物;トリス(8−キノリノラト)アルミニウム等の8−キノリノールおよびその誘導体を配位子とする金属錯体色素等のキノリン誘導体;テトラフェニルブタジエン、アントラセン、ペリレン、コロネン、12−フタロペリノン誘導体;特開平8−12600号公報に記載のフェニルアントラセン誘導体;特開平8−12969号に記載のテトラアリールエテン誘導体等を用いることができる。
また、それ自体で発光が可能なホスト物質と組み合わせて使用することが好ましく、ドーパントとしての使用が好ましい。このような場合の発光層における合物の含有量は0.01〜10wt%、さらには0.1〜5wt%であることが好ましい。ホスト物質と組み合わせて使用することによって、ホスト物質の発光波長特性を変化させることができ、長波長に移行した発光が可能になるとともに、素子の発光効率や安定性が向上する。
ホスト物質としては、キノリノラト錯体が好ましく、さらには8−キノリノールないしその誘導体を配位子とするアルミニウム錯体が好ましい。このようなアルミニウム錯体としては、特開昭63−264692号公報、特開平3−255190号公報、特開平5−70733号公報、特開平5−258859号公報、特開平6−215874号公報等に開示されているものを挙げることができる。
具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム、ビス(8−キノリノラト)マグネシウム、ビス(ベンゾ{f}−8−キノリノラト)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウムオキシド、トリス(8−キノリノラト)インジウム、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム、8−キノリノラトリチウム、トリス(5−クロロ−8−キノリノラト)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−キノリノラト)カルシウム、5,7−ジクロル−8−キノリノラトアルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム、ポリ[亜鉛(II)−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリニル)メタン]、等が挙げられる。
また、8−キノリノールないしその誘導体のほかに他の配位子を有するアルミニウム錯体であってもよい。このような化合物としては、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(o−クレゾラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(m−クレゾラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチ−8−キノリノラト)(p−クレゾラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(o−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(m−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,3−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,6−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(3,4−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(3,5−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,6−ジフェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,4,6一トリフェニルフェノラト)アノレミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,3,6−トリメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,3,5,6−テトラメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(1−ナフトラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2−ナフトラト)アルミニウム(III)、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(o−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(p−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(m−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(3,5−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−4−エチル−8−キノリノラト)(p−クレゾラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キノリノラト)(p−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラト)(o−クレゾラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−6−トリフルオロメチル−8−キノリノラト)(2−ナフトラト)アルミニウム(III)等が挙げられる。
このほか、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)、ビス(4−エチル−2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(4−エチル−2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−4−メトキシキノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(2−メチル−4−メトキシキノリノラト)アルミニウム(III)、ビス(5−シアノ−2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(5−シアノ−2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)等も用いることができる。
このほかのホスト物質としては、特開平8−12600号公報に記載のフェニルアントラセン誘導体や、特開平8−12969号公報に記載のテトラアリールエテン誘導体なども好ましい。
発光層は電子注入輸送層を兼ねたものであってもよく、このような場合はトリス(8−キノリノラト)アルミニウム等を使用することが好ましい。これらの蛍光性物質を蒸着すればよい。
また、発光層は、少なくとも1種以上のホール注入輸送性化合物と少なくとも1種以上の電子注入輸送性化合物との混合層とすることも好ましく、この混合層中にドーパントを含有させることが好ましい。このような混合層における化合物の含有量は、0.01〜20wt%、さらには0.1〜15wt%とすることが好ましい。
混合層では、キャリアのホッピング伝導パスができるため、各キャリアは極性的に優勢な物質中を移動し、逆の極性のキャリア注入は起こり難くなり、有機化合物がダメージを受け難くなり、素子寿命がのびるという利点があるが、前述のドーパントをこのような混合層に含有させることにより、混合層自体のもつ発光波長特性を変化させることができ、発光波長を長波長に移行させることができるとともに、発光強度を高め、かつ素子の安定性を向上させることができる。混合層に用いられるホール注入輸送性化合物および電子注入輸送性化合物は、各々、後述のホール注入輸送層用の化合物および電子注入輸送層用の化合物の中から選択すればよい。なかでも、ホール注入輸送層用の化合物としては、強い蛍光を持ったアミン誘導体、例えばホール輸送材料であるトリフェニルジアミン誘導体、さらにはスチリルアミン誘導体、芳香族縮合環を持つアミン誘導体を用いるのが好ましい。
混合層の形成方法としては、異なる蒸着源より蒸発させる共蒸着が好ましいが、蒸気圧(蒸発温度)が同程度あるいは非常に近い場合には、予め同じ蒸着ボード内で混合させておき、蒸着することもできる。混合層は化合物同士が均一に混合している方が好ましいが、場合によっては、化合物が島状に存在するものであってもよい。発光層は、一般的には、有機蛍光物質を蒸着するか、あるいは樹脂バインダー中に分散させてコーティングすることにより、発光層を所定の厚さに形成する。
電子注入輸送層6は、必要に応じて設けられる層であり、電子注入電極7からの電子の注入を容易にする機能、電子を安定に輸送する機能およびホールを妨げる機能を有するものであり、これらの層は、発光層5に注入されるホールや電子を増大させ、閉じこめさせ、また、再結合領域を最適化させ、発光効率を改善する。
電子注入輸送層を構成する材料としては、、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)等の8−キノリノールまたはその誘導体を配位子とする有機金属錯体等のキノリン誘導体;オキサジアゾール誘導体;ペリレン誘導体;ピリジン誘導体;ピリミジン誘導体;キノキサリン誘導体;ジフェニルキノン誘導体;ニトロ置換フルオレン誘導体;等が挙げられる。
電子注入輸送層は発光層を兼ねたものであってもよく、このような場合は、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム等を使用することが好ましい。
電子注入輸送層を電子注入層と電子輸送層とに分けて積層する場合には、電子注入輸送層用の化合物の中から好ましい組み合わせを選択して用いることができる。このとき、電子注入電極側から電子親和力の値の大きい化合物の順に積層することが好ましい。このような積層順については電子注入輸送層を2層以上設けるときも同様である。
電子注入輸送層6の厚さは、再結合・発光領域の設計によるが、通常、5〜500nm程度、特に10〜300nmとすることが好ましい。
本発明の有機EL素子においては、基板に色フィルター膜や蛍光性物質を含む色変換膜、あるいは誘電体反射膜を用いて発光色をコントロールしてもよい。
色フィルター膜には、液晶ディスプレイ等で用いられているカラーフィルターを用いれば良いが、有機ELの発光する光に合わせてカラーフィルターの特性を調整し、取り出し効率、色純度を最適化すればよい。また、EL素子材料や蛍光変換層が光吸収するような短波長の外光をカットできるカラーフィルターを用いれば、素子の耐光性、表示のコントラストも向上する。
さらに、誘電体多層膜のような光学薄膜を用いてカラーフィルターの代わりにしても良い。蛍光変換フィルター膜は、EL発光の光を吸収し、蛍光変換膜中の蛍光体から光を放出させることで、発光色の色変換を行うものであるが、組成としては、バインダー、蛍光材料、光吸収材料の三つから形成される。
蛍光材料は、基本的には蛍光量子収率が高いものを用いれば良く、EL発光波長域に吸収が強いことが望ましい。実際には、レーザー色素等が適しており、ローダミン系化合物、ペリレン系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン化合物(サブフタロ等も含む)、ナフタロイミド系化合物、縮合環炭化水素系化合物、縮合複素環系化合物、スチリル系化合物、クマリン系化合物等を用いることができる。
バインダーは基本的に蛍光を消光しないような材料を選べば良く、フォトリソグラフィー、印刷等で微細なパターニングが出来るようなものが好ましい。また、ITOの成膜時にダメージを受けないような材料が好ましい。
光吸収材料は、蛍光材料の光吸収が足りない場合に用いるが、必要の無い場合は用いなくても良い。また、光吸収材料は、蛍光性材料の蛍光を消光しないような材料を選べば良い。
ホール注入輸送層4、発光層5および電子注入輸送層6の形成には、均質な薄膜が形成できることから真空蒸着法を用いることが好ましい。真空蒸着法を用いた場合、アモルファス状態または結晶粒径が0.1μm以下の均質な薄膜が得られる。結晶粒径が0.1μmを超えていると、不均一な発光となり、素子の駆動電圧を高くしなければならなくなり、電荷の注入効率も著しく低下する。
真空蒸着の条件は特に限定されないが、10−4Pa以下の真空度とし、蒸着速度は0.01〜1nm/sec程度とすることが好ましい。また、真空中で連続して各層を形成することが好ましい。真空中で連続して形成すれば、各層の界面に不純物が吸着することを防げるため、高特性が得られる。また、素子の駆動電圧を低くしたり、ダークスポットの成長・発生を抑えたりすることができる。
これら各層の形成に真空蒸着法を用いる場合において、1層に複数の化合物を含有させる場合、化合物を入れた各ボートを個別に温度制御して共蒸着することが好ましい。
本発明の有機EL素子は、直流駆動、パルス駆動とすることも、交流駆動とすることもできる。印加電圧は、通常、2〜30V程度である。
本発明の光学的素子の一種である有機EL素子は、電子注入電極の上、つまり有機層と反対側には保護電極を設けてもよい。保護電極を設けることにより、電子注入電極が外気や水分等から保護され、構成薄膜の劣化が防止され、電子注入効率が安定し、素子寿命が飛躍的に向上する。また、この保護電極は、非常に低抵抗であり、電子注入電極の抵抗が高い場合には配線電極としての機能も有する。
この保護電極は、Al、Alおよび遷移金属(ただしTiを除く)、Tiまたは窒化チタン(TiN)のいずれか1種または2種以上を含有し、これらを単独で用いた場合、それぞれ保護電極中に少なくとも、Al:90〜100at%、Ti:90〜100at%、TiN:90〜100mol%程度含有されていることが好ましい。また、2種以上用いるときの混合比は任意であるが、AlとTiの混合では、Tiの含有量は10at%以下が好ましい。また、これらを単独で含有する層を積層してもよい。
保護電極の厚さは、電子注入効率を確保し、水分や酸素あるいは有機溶媒の進入を防止するため、一定以上の厚さとすればよく、好ましくは50nm以上、さらに好ましくは100nm以上、特に好ましくは100〜1000nmの範囲である。
また、電子注入電極と保護電極とを併せた全体の厚さとしては、特に制限はないが、通常100〜1000nm程度とすればよい。
本発明の光学的素子の一種である有機EL素子は、図1に示すものに限定されず、種々の構成とすることができ、例えば発光層を単独で設け、この発光層と電子注入電極との間に電子注入輸送層を介在させた構造とすることもできる。また、必要に応じ、ホール注入輸送層と発光層とを混合しても良い。
ホール注入電極、電子注入電極は前述のように成膜し、発光層等の有機物層は真空蒸着等により成膜することができるが、これらの膜のそれぞれは、必要に応じてマスク蒸着または膜形成後にエッチング等の方法によってパターニングでき、これによって、所望の発光パターンを得ることができる。さらには、基板上に薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、そのパターンに応じて各膜を形成することでそのまま表示および駆動パターンとすることもできる。
電極成膜後に、前記保護電極に加えて、ケイ素酸化物等の無機材料、ポリテトラフルオロエチレン、塩素を含むフッ化炭素重合体等の有機材料等を用いた保護膜を形成してもよい。保護膜は透明でも不透明であってもよく、保護膜の厚さは50〜1200nm程度とする。保護膜は前記した反応性スパッタ法の他に、一般的なスパッタ法、蒸着法等により形成すればよい。
さらに、素子の有機層や電極の酸化を防ぐために素子上に封止層を形成することが好ましい。封止層は、湿気の侵入を防ぐために市販の低吸湿性の光硬化性接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、架橋エチレン−酢酸ビニル共重合体接着剤シート等の接着性樹脂層を用いて、ガラス板等の封止板を接着し密封する。ガラス板以外にも金属板、プラスチック板等を用いることもできる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら制限されるものではない。
(1)触媒の調製−1
チタンテトライソプロポキシド(A−1:純度99%、酸化チタン換算濃度28.2重量%、日本曹達(株)製)12.4gを4つ口フラスコ中で、トルエン45.0gに溶解し、窒素ガス置換した後に、エタノール/液体窒素バス中で−80℃に冷却した。別に、イオン交換水1.26g(HO/Ti=1.6(モル比))をイソプロパノール11.3gに混合後、−80〜−70℃に冷却した状態で、上記4つ口フラスコ中へ攪拌しながら滴下した。滴下中は、フラスコ内の液温を−80〜−70℃に維持した。滴下終了後、30分間冷却しながら攪拌後、室温まで攪拌しながら昇温して、無色透明な酸化チタン換算濃度5重量%の部分加水分解溶液である触媒(C−1)を得た。
(2)触媒の調製−2
窒素ガス置換した4つ口フラスコ中で、チタンテトライソプロポキシド(A−1:純度99%、酸化チタン換算濃度28.2重量%、日本曹達(株)製)530gをトルエン1960gに溶解し、エタノール/ドライアイスバスで−15℃に冷却した。別に、イオン交換水30.4g(HO/Ti=0.9(モル比))をイソプロパノール274gに混合し、上記4つ口フラスコ中へ攪拌しながら90分間で滴下した。滴下中は、フラスコ内の液温を−15〜−10℃に維持した。滴下終了後、−10℃で30分間、室温まで昇温後1時間攪拌を続け、無色透明の液体を得た。この溶液をエタノール/ドライアイスバスで−80℃に冷却し、イオン交換水20.3g(HO/Ti=0.6(モル比))とイソプロパノール183gの混合溶液を90分間で滴下しながら攪拌した。滴下終了後、3時間かけて室温に戻し、この溶液を90〜100℃で2時間還流し、酸化チタン換算濃度で5重量%の無色透明な部分加水分解溶液である触媒(C−2)を得た。この溶液は、平均粒径が5.6nmでシャープな単分散性のゾルであった。
(3)触媒の調製−3
チタンテトライソプロポキシド(A−1:純度99%、酸化チタン換算濃度28.2重量%、日本曹達(株)製)17.79g(62.6mmol)と脱水トルエン65.319を液温18℃、窒素ガス雰囲気下に、フラスコ中で混合攪拌し溶解した。そこへ水1.69g(93.9mmol、HO/Ti=1.5(モル比))、脱水イソプロパノール30.42g、脱水トルエン30.42gの混合物(水の濃度は、イソプロパノールとトルエンの混合溶媒に対する水の飽和溶解度の22%に相当する)を液温18〜20℃で攪拌しながら2時間で滴下したところ、淡い黄色透明の溶液が得られた。さらに液温18℃で1.5時間攪拌すると少し黄色が強くなり、その後、2.5時間還流すると無色の透明液となった。溶液の酸化物濃度は3.4重量%であった。この溶液にトルエンを加え、酸化物濃度1.0重量%になるように希釈し、触媒(C−3)を得た。
(4)シラン系界面活性剤
有機薄膜形成用溶液の調製用のシラン系界面活性剤として、M−1:n−オクタデシルトリメトキシシラン(ODS)(Gelest社製)を用いた。
(5)有機薄膜形成用溶液の調製
脱水トルエンにイオン交換水を加え、強く攪拌して、第1表に示す含水トルエンを調製した。この含水トルエンにシラン系界面活性剤M−1を最終濃度が0.5重量%になるように加え、室温で30分間攪拌した。次に、この溶液に触媒C−1〜C−3を、第1表に示す所定量滴下し、滴下終了後、室温で3時間攪拌して、溶液(SA−1〜SA−3)を得た。
Figure 2007005241
(6)透明導電性基板の作成
パイロゾル法によりガラス基板にITO膜を作成した。即ち、SiO2膜(膜厚150nm)をプレコートしたアルカリガラス基板(250×250×1mm)を500℃に加熱したコンベアー炉の中にベルトコンベアーで投入し、原子比で5%のスズ原子を含む、塩化第2スズ−インジウムアセチルアセトンのアセチルアセトン溶液を霧滴状にして空気をキャリアガスとしてコンベアー炉の中に吹き込み、ガラス基板の表面に接触させて熱分解させることにより、ITO膜を形成させた。得られたITO膜の表面抵抗値は25Ω/□で膜厚は100nmであった。またAFMで膜表面を観察したところ、1μm角内に5nm〜30nmの突起数が100以上観察され、平均表面粗さ(Ra)は1.5nm、最大表面粗さ(Rmax)は18nmであった。またX線回折の結果(400)の面に優先的に配向した膜であり、(400)/(222)のX線強度比は5.82であった。
また、膜中の金属原子の組成をESCAを用いて測定したところ、表面から基板方向の深さにインジウム・スズ原子比が一定比率であり10%以内の誤差範囲に納まって存在していた。
(7)有機薄膜の層の形成
超音波洗浄及びオゾン洗浄したITO膜付ガラスを、上記の溶液(SA−1)中に、所定時間浸漬後引き上げ、トルエンで10秒間超音波洗浄した後に、60℃で10分間乾燥し、有機薄膜の層を形成した。
(8)仕事関数の測定
上記(7)で作成した有機薄膜の層を有するITO膜付きガラスについて、成膜した日から1日後、7日後の仕事関数をAC−2(理研計器社性)で測定した。その結果を第2表に示す。
本発明により作成された有機薄膜付き透明導電性基板は、仕事関数が高く、またその性質を長時間保持できる。
Figure 2007005241
(9)有機EL素子の作製
上記で得た透明導電性基板のITO膜表面を洗浄して有機物を除去した。次いで、この透明導電性基板のITO膜上に、真空蒸着法を用いて、ホール輸送層としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(m−トリル)ベンジジン(略称:TPD)を50nm、次に発光層としてアルミノキノリノール錯体(略称:Alq3)を50nm、最後に対抗電極としてAg−Mg合金(重量比Ag/Mg=1/10)を200nmの膜厚で順次積層し、有機EL素子を作製した。
本発明の光学的素子(有機EL素子)の層構成断面図である。
符号の説明
1…基板、2…ホール注入電極、3…有機薄膜の層、4…ホール注入輸送層、5…発光層、6…電子注入輸送層、7…電子注入電極、8…保護電極

Claims (28)

  1. 基板と、該基板表面に形成された透明導電膜と、並びに該透明導電膜上に、式(1):R−Si−X4−n(式中、Rは置換基を有していてもよいC1〜20の炭化水素基、置換基を有していてもよいC1〜20のハロゲン化炭化水素基、連結基を含むC1〜20の炭化水素基、または連結基を含むC1〜20のハロゲン化炭化水素基を表し、Xは水酸基、ハロゲン原子、C1〜C6のアルコキシ基またはアシルオキシ基を表し、nは1〜3の整数を表す。)で示されるシラン系界面活性剤、及び該シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒を含む有機薄膜形成用溶液から形成された有機薄膜の層を有することを特徴とする透明導電性基板。
  2. 前記触媒が、金属酸化物;金属水酸化物;金属アルコキシド類;キレート化または配位化された金属化合物;金属アルコキシド類部分加水分解生成物;金属アルコキシド類を該金属アルコキシド類の2倍当量以上の水で処理して得られた加水分解生成物;有機酸;シラノール縮合触媒;及び酸触媒から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電性基板。
  3. 前記触媒が、(a)金属酸化物;金属水酸化物;金属アルコキシド類;キレート化または配位化された金属化合物;金属アルコキシド類部分加水分解生成物;金属アルコキシド類を該金属アルコキシド類の2倍当量以上の水で処理して得られた加水分解生成物;有機酸;シラノール縮合触媒;及び酸触媒から選ばれる少なくとも1種と、(b)前記シラン系界面活性剤を含有する組成物であることを特徴とする請求項1または2に記載の透明導電性基板。
  4. 金属アルコキシド類が、チタンアルコキシド類であることを特徴とする請求項2または3に記載の透明導電性基板。
  5. チタンアルコキシド類が、チタンテトライソプロポキシドであることを特徴とする請求項4に記載の透明導電性基板。
  6. 有機薄膜形成用溶液が、炭化水素系溶媒溶液であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透明導電性基板。
  7. 炭化水素系溶媒が、トルエンであることを特徴とする請求項6記載の透明導電性基板。
  8. 有機薄膜形成用溶液中の水分量を50ppmから有機溶媒への飽和水分含量の範囲にするまたは保持することを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の透明導電性基板。
  9. 前記透明導電膜が、θ/2θ法によるX線回折で(400)/(222)の回折強度比が1.0以上である結晶質導電膜であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の透明導電性基板。
  10. 結晶質導電膜が、柱状単結晶の集合体であることを特徴とする請求項9に記載の透明導電性基板。
  11. 結晶質導電膜が、結晶子の長軸方向の大きさが20〜100nmの範囲の結晶集合体であることを特徴とする請求項9または10に記載の透明導電性基板。
  12. 結晶質導電膜の最大表面粗さが5〜30nmの範囲であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の透明導電性基板。
  13. 結晶質導電膜表面の平均表面粗さが、1〜10nmの範囲であることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の透明導電性基板。
  14. 結晶質導電膜表面における1μm角領域内に存在する5〜30nmの突起数が、100個以上であることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の透明導電性基板。
  15. 透明導電膜が、インジウム・スズ酸化物からなることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の透明導電性基板。
  16. インジウム・スズ酸化物中のスズ原子が基板から膜表面に向かって膜中に均一にブンプしていること特徴とするる請求項1〜15のいずれかに記載の透明導電性基板。
  17. 透明導電膜が、スプレー熱分解法またはパイロゾル法で製造された導電膜であることを特徴とするる請求項1〜16のいずれかに記載の透明導電性基板。
  18. 表面に透明導電膜が形成された基板の該透明導電膜と、式(1):R−Si−X4−n(式中、Rは置換基を有していてもよいC1〜20の炭化水素基、置換基を有していてもよいC1〜20のハロゲン化炭化水素基、連結基を含むC1〜20の炭化水素基、または連結基を含むC1〜20のハロゲン化炭化水素基を表し、Xは水酸基、ハロゲン原子、C1〜C6のアルコキシ基またはアシルオキシ基を表し、nは1〜3の整数を表す。)で示されるシラン系界面活性剤、及び該シラン系界面活性剤と相互作用し得る触媒を含む有機薄膜形成用溶液とを接触させることで、前記透明導電膜上に有機薄膜の層を形成する工程を有する透明導電性基板の製造方法。
  19. 前記触媒が、金属酸化物;金属水酸化物;金属アルコキシド類;キレート化または配位化された金属化合物;金属アルコキシド類部分加水分解生成物;金属アルコキシド類を該金属アルコキシド類の2倍当量以上の水で処理して得られた加水分解生成物;有機酸;シラノール縮合触媒;及び酸触媒から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項18に記載の透明導電性基板の製造方法。
  20. 前記触媒が、(a)金属酸化物;金属水酸化物;金属アルコキシド類;キレート化または配位化された金属化合物;金属アルコキシド類部分加水分解生成物;金属アルコキシド類を該金属アルコキシド類の2倍当量以上の水で処理して得られた加水分解生成物;有機酸;シラノール縮合触媒;及び酸触媒から選ばれる少なくとも1種と、(b)前記シラン系界面活性剤を含有する組成物であることを特徴とする請求項18または19に記載の透明導電性基板の製造方法。
  21. 金属アルコキシド類が、チタンアルコキシド類であることを特徴とする請求項19または20に記載の透明導電性基板の製造方法。
  22. チタンアルコキシド類が、チタンテトライソプロポキシドであることを特徴とする請求項21に記載の透明導電性基板の製造方法。
  23. 有機薄膜形成用溶液が、炭化水素系溶媒溶液であることを特徴とする請求項18〜22のいずれかに記載の透明導電性基板の製造方法。
  24. 炭化水素系溶媒が、トルエンであることを特徴とする請求項23に記載の透明導電性基板の製造方法。
  25. 有機薄膜形成用溶液中の水分量を50ppmから有機溶媒への飽和水分含量の範囲にするまたは保持することを特徴とする請求項18〜24のいずれかに記載の透明導電性基板の製造方法。
  26. 互いに対向する2つの電極間に発光層を必須の層として設けた光学的素子において、前記電極の少なくとも一方が、請求項1〜17のいずれかに記載の透明導電性基板からなることを特徴とする光学的素子。
  27. 前記電極の少なくとも一方が、ホール注入電極であることを特徴とする請求項26に記載の光学的素子。
  28. 発光層に有機化合物を用いることを特徴とする請求項26または27に記載の光学的素子。

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