JP2004327166A - 有機電界発光素子及びその製造方法 - Google Patents

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Yoshiharu Sato
佳晴 佐藤
Tomoyuki Ogata
朋行 緒方
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Abstract

【課題】平面性が高く、電荷(正孔)移動度が高い分子構造を有する、特定構造のベンゾポルフィリン化合物を用いることで、有機電界発光素子の駆動電圧を低下させることを可能とした。
【解決手段】基板上に、陽極、陰極及び該両極間に設けられた発光層を有する有機電界発光素子において、該発光層と陽極との間に、下記一般式(I)および/または(II)で表わされるベンゾポルフィリン化合物を含む層を有することを特徴とする、有機電界発光素子。
【化1】
Figure 2004327166

【化2】
Figure 2004327166

【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は有機電界発光素子に関するものであり、詳しくは、有機化合物から成る発光層に電界をかけて光を放出する薄膜型デバイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、薄膜型の電界発光(EL)素子としては、無機材料のII−VI族化合物半導体であるZnS、CaS、SrS等に、発光中心であるMnや希土類元素(Eu、Ce、Tb、Sm等)をドープしたものが一般的であるが、上記の無機材料から作製したEL素子は、
1)交流駆動が必要(50〜1000Hz)、
2)駆動電圧が高い(〜200V)、
3)フルカラー化が困難(特に青色)、
4)周辺駆動回路のコストが高い、
という問題点を有している。
【0003】
しかし、近年、上記問題点の改良のため、有機薄膜を用いたEL素子の開発が行われるようになった。特に、発光効率を高めるため、電極からのキャリアー注入の効率向上を目的として電極の種類の最適化を行い、芳香族ジアミンから成る正孔輸送層と8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体から成る発光層とを設けた有機電界発光素子の開発(非特許文献1参照)により、従来のアントラセン等の単結晶を用いたEL素子と比較して発光効率の大幅な改善がなされ、実用特性に近づいている。
【0004】
上記の様な低分子材料を用いた電界発光素子の他にも、発光層の材料として、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリフルオレン等の高分子材料を用いた電界発光素子の開発や、ポリビニルカルバゾール等の高分子に低分子の発光材料と電子移動材料を混合分散した素子の開発も行われている。
【0005】
ところで、有機電界発光素子の最大の課題は、駆動時の寿命である。駆動時の不安定性としては、発光輝度の低下、定電流駆動時の電圧上昇、非発光部分(ダークスポット)の発生等が挙げられる。これらの不安定性の原因はいくつか存在するが、有機層の薄膜形状の劣化が支配的である。この薄膜形状の劣化は、素子駆動時の発熱による有機非晶質膜の結晶化(または凝集)等に起因すると考えられている。特に、駆動電圧の上昇については陽極と正孔輸送層のコンタクトが重要である。
【0006】
そこで、陽極と正孔輸送層のコンタクトを向上させるため両層の間に正孔注入層を設け、駆動電圧を低下させることが検討されている。正孔注入層に用いられる材料に要求される条件としては、陽極とのコンタクトがよく均一な薄膜が形成でき、熱的に安定、すなわち、融点及びガラス転移温度(Tg)が高いこと、好ましくは 300℃以上の融点と 100℃以上のガラス転移温度を有することが要求される。さらに、イオン化ポテンシャルが低く陽極からの正孔注入が容易なこと、正孔移動度が大きいことが挙げられる。正孔注入層の材料としても種々のものが検討されており、例えばポルフィリン化合物やフタロシアニン化合物(特許文献1参照)、スターバスト型芳香族トリアミン(特許文献2参照)、ポリチエニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリアニリン等の有機化合物や、スパッタ・カーボン膜や、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、モリブデン酸化物等の金属酸化物などが報告されている。
【0007】
上記の正孔注入材料の中で、特に、特許文献1記載のポルフィリン化合物やフタロシアニン化合物は、イオン化ポテンシャルが低く、正孔注入性にすぐれていることから、広く使われている。以下に代表的なポルフィリン化合物とフタロシアニン化合物を示す。
ポルフィン
5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン
5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンコバルト(II)
5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン銅(II)
5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン亜鉛(II)
5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンバナジウム(IV)オキシド
5,10,15,20−テトラ(4−ピリジル)−21H,23H−ポルフィン
29H,31H−フタロシアニン
銅(II)フタロシアニン
亜鉛(II)フタロシアニン
チタンフタロシアニンオキシド
マグネシウムフタロシアニン
鉛フタロシアニン
銅(II)4,4’,4’’,4’’’−テトラアザ−29H,31H−フタロシアニン
上記例示化合物の中では、特に、銅(II)フタロシアニンが広く使われている。
【0008】
ポルフィリン化合物やフタロシアニン化合物は、真空蒸着法による成膜にて非晶質膜または微結晶性膜となるが、これらの化合物は電荷移動度が低いため、厚膜形成した場合に駆動電圧が高くなるという問題がある。
また特許文献2に記載のスターバスト型芳香族トリアミンの場合、イオン化ポテンシャルが低く、膜の透明性が高いという利点はあるものの、ガラス転移点や融点が低いために、得られた有機電界発光素子の耐熱性に難点がある。
【0009】
ポリチエニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリアニリン等の共役系ポリマーの場合は、溶剤への可溶性に問題があるため、製膜プロセス上の問題がある。更に、非共役系の正孔輸送性ポリマーに電子受容性化合物を混合することで低電圧駆動が可能なことが開示されているが(特許文献3参照)、ここで開示されているポリマーはガラス転移温度Tgが低く、また、該ポリマーを用いて作製された有機電界発光素子の耐熱性が向上したとの記載もない。
【0010】
【非特許文献1】Appl. Phys. Lett., 51巻, 913頁,1987年
【特許文献1】特開昭63−295695号公報
【特許文献2】特開平4−308688号公報
【特許文献3】特開平11−283750号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
このように有機電界発光素子の駆動時における電圧が高く、耐熱性を含めた安定性が低いことは、ファクシミリ、複写機、液晶ディスプレイのバックライト等の光源としては大きな問題であり、特にフルカラーフラットパネル・ディスプレイ等の表示素子としても望ましくない。
【0012】
また、通常有機電界発光素子の陽極として用いられるインジウム・スズ酸化物(ITO)は、その表面粗さが10nm程度の粗さ(Ra)を有するのに加えて、局所的に突起を有することが多く、素子作製時に短絡欠陥を生じるという問題もあった。
真空蒸着法による製膜プロセスにおいては、蒸着される分子は基板の粗さに応じた形で付着するので、突起等の表面欠陥を覆うには膜厚を数百nmまで厚くする必要があり、材料の有する移動度の制限から素子電圧の増大を引き起こす場合がある。一方、湿式製膜法においては、膜形成される化合物は液体状態を通して成膜されるので、基板の表面粗さに対して膜のつきまわりがよくなり、表面欠陥に対する被覆性がよいという利点がある。しかし前出のポルフィリン化合物やフタロシアニン化合物は、溶媒に対する溶解度が低く、湿式成膜法を適用することが困難である。
【0013】
本発明は、後述する特定構造のベンゾポルフィリン化合物を使用することにより、上記従来の問題点を解決し、低電圧、高発光効率で駆動させることができ、かつ良好な耐熱性を有し、長期間に亙って安定な発光特性を維持することができる有機電界発光素子を提供することを目的とする。
本発明はまた、上述の陽極の表面粗さに起因する素子作製時の短絡欠陥を防止することができる有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、陽極、陰極及び該両極間に設けられた発光層を有する有機電界発光素子において、該発光層と陽極との間に、下記一般式(I)および/または(II)で表わされるベンゾポルフィリン化合物を含む層を有することを特徴とする有機電界発光素子、およびその製造方法に存する。
【0015】
【化3】
Figure 2004327166
【0016】
【化4】
Figure 2004327166
【0017】
(式中、Zia及びZib(i=1〜4)は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、ジアラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表わすか、或いは、ZiaとZibが結合して置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族複素環、または置換基を有していてもよい非芳香族炭化水素環を形成する。
【0018】
〜Rは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、ジアラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表わす。
【0019】
Mは2価の金属原子、または3価以上の金属に1価または2価の基が結合してなる原子団を表す。)
即ち、本発明者らは、従来の問題点を解決し、安定な発光特性を有する有機電界発光素子を提供するべく鋭意検討した結果、基板上に、陽極及び陰極により挟持された発光層を有する有機電界発光素子において、陽極と発光層との間に、特定構造のベンゾポルフィリン化合物を含有する層を設けることで、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
本発明においては、平面性の高いベンゾポルフィリン化合物を用いることで正孔注入性と移動度を改善でき、素子の駆動電圧低下を可能とした。さらに、ベンゾポルフィリン化合物の可溶性前駆体を用いることにより湿式製膜法の適用が容易になり、湿式製膜法で膜形成することにより、膜の平坦性が向上し、さらに膜形成後に加熱処理によりベンゾポルフィリン含有膜とすることで短絡欠陥を生じにくくすることが可能である。また、本発明におけるベンゾポルフィリン化合物を電子受容性化合物と併用することで、膜の導電性が改善され、さらなる低電圧化が可能となる。
【0021】
なお、本発明におけるベンゾポルフィリン化合物と電気受容性化合物を含む層は、正孔輸送性を示す層であり、陽極と発光層との間であればどこにあっても良く、後掲の図1〜3に示す如く、陽極上に直接設けるものに何ら限定されないが、陽極(無機材料)との電気的接合が良く、耐熱性が高いというこの層の長所を十分に生かすためには、陽極と接する位置に正孔注入層として形成するのが最も有利である。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、陽極、陰極及び該両極間に設けられた発光層を有し、該発光層と陽極との間に、前記一般式(I)および/または(II)で表わされるベンゾポルフィリン化合物を含有する層を有することを特徴とする。ベンゾポルフィリン化合物を含む層は、発光層と陽極の間の層、つまり正孔注入・輸送性の層であれば、どの位置に設けられていてもよいが、好ましくは陽極に接する正孔注入層として設けられている場合が好ましい。なお本発明において、陽極−発光層の間に設けられた層が1つの場合にはこれを「正孔注入層」と称し、2つ以上の場合は陽極に接している層を「正孔注入層」、それ以外の層を総称して「正孔輸送層」と称す。
【0023】
以下、本発明のベンゾポルフィリン化合物について説明する。
前記一般式(I)および(II)における、Zia及びZib(i=1〜4)の例としては、各々独立に、水素原子;フッ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜20のアラルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜7のアルケニル基;シアノ基;アミノ基;アセチル基等の炭素数1〜6のアシル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;フェノキシ基などの炭素数6〜15のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基などの炭素数7〜20のアラルキルオキシ基;ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等の、炭素数1〜6のアルキル鎖を有するジアルキルアミノ基;ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基などの、炭素数7〜20のアラルキル基部分を有するジアラルキルアミノ基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のハロアルキル基;水酸基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜15の、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基;またはチエニル基、ピリジル基等の5または6員環の単環または2〜3縮合環由来の、置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表わす。
【0024】
前記芳香族炭化水素基および芳香族複素環基が有しうる置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数1〜6のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フェノキシ基などの炭素数6〜15のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基などの炭素数7〜20のアラルキルオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の、炭素数1〜6のアルキル鎖を有するジアルキルアミノ基;アセチル基等の炭素数1〜6のアシル基;トリフルオロメチル基等の、炭素数1〜6のハロアルキル基;またはシアノ基などが挙げられる。
【0025】
iaとZibが結合して環を形成する場合、該環は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族複素環、または置換基を有していてもよい非芳香族炭化水素環である。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の、炭素数6〜15の芳香族炭化水素環;置換基を有していてもよいピリジン環、キノリン環、フラン環、チオフェン環等の、5または6員環の単環または2〜3縮合環からなる芳香族複素環;シクロヘキサン環等の炭素数5〜7の非芳香族炭化水素環等が挙げられる。
【0026】
これらの環が有しうる置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜7のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などの炭素数6〜15のアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の、炭素数1〜6のアルキル鎖を有するジアルキルアミノ基;アセチル基等の炭素数1〜6のアシル基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のハロアルキル基;またはシアノ基などが挙げられる。
【0027】
〜Rは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、ジアラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表わす。これらの具体例としては、ZiaおよびZibの具体例として挙げたものと同様の基があげられ、またR〜Rにおける芳香族炭化水素基および芳香族複素環基が有しうる置換基としても、R〜Rにおける同基が有しうる基と同様の基が挙げられる。
【0028】
本発明のベンゾポルフィリン化合物において、分子の平面性を高めるためには、R〜Rは水素原子、ハロゲン原子等の単原子から選ばれるのが好ましい。
Mとしては、2価の金属原子、または3価以上の金属に1価または2価の基が結合してなる原子団を表す。2価の金属原子としては、例えば、Zn、Cu、Fe、Ni、Co等が挙げられ、また3価以上の金属に1価または2価の基が結合してなる原子団としては、例えばFe−B、Al−B、Ti=O、Si−B、等が挙げられる。ここで、B、B、B、Bはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基等の1価の基を表す。
【0029】
以下に、本発明のベンゾポルフィリン化合物として好ましい具体例を挙げるが、本発明における該化合物はこれらに限定されるものではない。また、対称性の良い分子構造を主に例示しているが、部分的な構造の組み合わせによる非対称構造であっても使用できる。
【0030】
【化5】
Figure 2004327166
【0031】
【化6】
Figure 2004327166
【0032】
【化7】
Figure 2004327166
【0033】
前記一般式(I)で表されるベンゾポルフィリン化合物の分子量は、通常、下限が500程度であり、上限は通常1500程度である。
次に、図面を参照して、前記一般式(I)または(II)で表される化合物を用いた、本発明の有機電界発光素子について詳細に説明する。
図1〜3は本発明の有機電界発光素子の実施の形態を示す模式的な断面図であり、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を各々表わす。
【0034】
前述のように、本発明のベンゾポルフィリン化合物は、発光層と陽極との間であれば、どの層に含まれていても良いが、以下では正孔注入層3に含まれている場合を例に説明する。
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシートなどが用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリヤ性が低すぎると、基板を通過する外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板のどちらか片側もしくは両側に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
【0035】
基板1上には陽極2が設けられるが、陽極2は正孔注入層3への正孔注入の役割を果たすものである。この陽極は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/またはスズの酸化物などの金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック等により構成される。陽極2の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法などにより行われることが多い。また、銀などの金属微粒子、ヨウ化銅などの微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子等を適当なバインダー樹脂溶液に分散し、基板1上に塗布することにより陽極2を形成することもできる。陽極2は異なる物質で積層して形成することも可能である。陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常、60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましく、この場合、厚みは、通常10nm以上、好ましくは20nm以上であり、また通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極2は基板1と同一でもよい。また、さらには上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
【0036】
本発明では、図1の素子構造においては、陽極2の上に正孔注入層3が設けられる。この正孔注入層に用いられる材料に要求される条件としては、陽極からの正孔注入効率が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが必要である。そのためには、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが要求される。上記の一般的要求以外に、車載表示用の応用を考えた場合、素子にはさらに 100℃以上の耐熱性が要求される。
【0037】
本発明の有機電界発光素子は、正孔注入層が前記一般式(I)または(II)で表わされるベンゾポルフィリン化合物を含有する場合が特に好ましい。なお、本発明のベンゾポルフィリン化合物は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
平面性が高く、電荷(正孔)移動度が高い分子構造を有する、本発明のベンゾポルフィリン化合物を用いることで、素子の駆動電圧を低下させることを可能とした。さらに、イオン化ポテンシャルの低いベンゾポルフィリン化合物に電子受容性化合物を併用することにより、一部のベンゾポルフィリン分子をラジカルカチオン状態とすることで電気伝導度が高くなり、陽極からの正孔注入障壁が下がり駆動電圧のさらなる低下と同時に連続駆動時の安定性も向上するため、好ましい。
【0038】
電子受容性化合物の量(濃度)は、ベンゾポルフィリン化合物に対して、実用特性上望ましい範囲は通常0.1重量%以上であり、好ましくは1重量%以上である。また、通常50重量%以下であり、好ましくは30重量以下である。電子受容性化合物の好ましい例を以下に示す。
【0039】
【化8】
Figure 2004327166
【0040】
ベンゾポルフィリン化合物を含有する正孔注入層は、真空蒸着法または湿式製膜法により形成することができるが、基板の表面欠陥を抑制する目的からは、湿式製膜法が好ましい。湿式製膜法の場合、本発明のベンゾポルフィリン化合物は有機溶媒等に対する溶解度が低いため、塗布が困難である。この問題を解決する手段として、溶媒に可溶性の前駆体化合物を用いて湿式製膜した後、前駆体化合物を熱転換して目的化合物からなる層を形成することが有効である。
【0041】
前出の例示化合物(BP−1)を例にとって、湿式製膜法により正孔注入層を形成する方法を以下に説明する。
本発明のベンゾポルフィリン化合物は、対応する溶剤可溶性の前駆体化合物であるビシクロ化合物(即ち、ポルフィリン環に縮合しているベンゼン環部分のうち少なくとも1個(好ましくは4個全て)が、ビシクロ[2,2,2]オクテン環である化合物。)を用いて誘導することが出来る。この前駆体は平面構造でないため、溶媒への溶解性が高く、かつ結晶化しにくいため、該化合物を含む溶液を用いて湿式製膜された膜は、アモルファスまたはアモルファスに近い良好な膜質が得られる。この膜を加熱処理し、該前駆体を脱エチレン反応させることにより、平面性の高いベンゾポルフィリン化合物を含む膜を得ることが出来る。
【0042】
【化9】
Figure 2004327166
【0043】
上記の反応は前駆体を100℃以上、好ましくは150℃以上に加熱することにより定量的に進行する。また、脱離するものがエチレン分子であるため、系内に残りにくく、毒性、安全性の面でも問題ない。なお加熱温度の上限は、通常300℃程度である。
本発明のベンゾポルフィリン化合物の可溶性前駆体は、特願2003−84816号記載の方法で合成することができる。可溶性前駆体の合成経路をBP−1を例にとって、以下に示す。
【0044】
【化10】
Figure 2004327166
【0045】
ベンゾポルフィリン化合物を含む正孔注入層3は前記陽極2上に形成される。湿式製膜法の場合、例えば目的とするベンゾポルフィリン化合物の可溶性前駆体であるビシクロ体を適当な溶媒に溶解して、製膜用溶液を調製し、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、インクジェット法等の公知の湿式製膜法により陽極2上に製膜する。製膜後、不活性雰囲気下もしくは減圧下で、前駆体含有膜を100℃以上(好ましくは150℃以上)の温度にて加熱処理することにより、目的とするベンゾポルフィリン化合物を含む膜へと変換できる。電子受容性化合物を混合する場合は、製膜用溶液に所定量の電子受容性化合物を含有させ、上述と同様にして、製膜後加熱処理することにより、電子受容性化合物とベンゾポルフィリン化合物を含有する層が得られる。
【0046】
なお、本発明のベンゾポルフィリン化合物の特徴的な性能を損なわない範囲で、正孔輸送層4の材料として後述する正孔輸送性の材料や、正孔注入層形成用の公知材料など、上述以外の成分を併用していても良い。
また、本発明のベンゾポルフィリン化合物を含有する層は、後述する電子輸送層や正孔輸送層などと同様に、真空蒸着法で形成してもよい。その際、湿式製膜法で層形成した場合と同様に、電子受容性化合物を併用してもよい。
【0047】
正孔注入層3の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常1000nm以下、好ましくは500nm以下である。
図1記載の素子においては、正孔注入層3の上には発光層5が設けられる。発光層5は、電界を与えられた電極間において陰極からの注入された電子と正孔注入層から輸送された正孔を効率よく再結合し、かつ、再結合により効率よく発光する材料から形成される。
【0048】
このような条件を満たす材料としては、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体(特開平6−322362号公報)、ビススチリルベンゼン誘導体(特開平1−245087号公報、同2−222484号公報)、ビススチリルアリーレン誘導体(特開平2−247278号公報)、(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾールの金属錯体(特開平8−315983号公報)、シロール誘導体等が挙げられる。これらの発光層材料は、通常は真空蒸着法により正孔注入層上に積層される。
【0049】
素子の発光効率を向上させるとともに発光色を変える目的で、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体をホスト材料として、クマリン等のレーザ用蛍光色素をドープすること(J. Appl. Phys., 65巻, 3610頁, 1989年)等が行われている。
素子の駆動寿命を改善する目的においても、前記発光層材料をホスト材料として、蛍光色素をドープすることは有効である。例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体をホスト材料として、ルブレンに代表されるナフタセン誘導体(特開平4−335087号公報)、キナクリドン誘導体(特開平5− 70773号公報)、ペリレン等の縮合多環芳香族環(特開平5−198377号公報)を、ホスト材料に対して 0.1〜10重量%ドープすることにより、素子の発光特性、特に駆動安定性を大きく向上させることができる。発光層ホスト材料に上記ナフタセン誘導体、キナクリドン誘導体、ペリレン等の蛍光色素をドープする方法としては、共蒸着による方法と蒸着源を予め所定の濃度で混合しておく方法がある。
【0050】
高分子系の発光層材料としては、先に挙げたポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ(3−アルキルチオフェン)等の高分子材料や、ポリビニルカルバゾール等の高分子に発光材料と電子移動材料を混合した系等が挙げられる。これらの材料は正孔注入層と同様にスピンコートやディップコート等の方法により正孔注入層上に塗布して薄膜化される
発光層5の膜厚は、通常10nm以上、好ましくは30nm以上であり、また通常200nm以下、好ましくは100nm以下である。
【0051】
素子の発光特性を向上させるために、図2に示す様に、正孔輸送層4を正孔注入層3と発光層5の間に設けたり、さらには、図3に示す様に電子輸送層6を発光層5と陰極7の間に設けるなど機能分離型にすることが行われる。
図2及び図3の機能分離型素子において、正孔輸送層4の材料としては、正孔注入層からの正孔注入効率が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが必要である。そのためには、イオン化ポテンシャルが小さく、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが要求される。また、発光層と直接接する層であるために、発光を消光する物質が含まれていないことが望ましい。
【0052】
このような正孔輸送材料としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表される2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4’,4’’−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(J. Lumin., 72−74巻、985頁、1997年)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chem.Commun., 2175頁、1996年)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synth. Metals, 91巻、209頁、1997年)
等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、必要に応じて、各々、混合して用いてもよい。
【0053】
上記の正孔輸送材料を塗布法あるいは真空蒸着法により前記正孔注入層3上に積層することにより正孔輸送層4を形成する。
塗布法の場合は、正孔輸送材料を1種または2種以上と、必要により正孔のトラップにならないバインダー樹脂や塗布性改良剤などの添加剤とを添加し、溶解して塗布溶液を調製し、スピンコート法などの方法により陽極2上に塗布し、乾燥して正孔輸送層4を形成する。バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂は添加量が多いと正孔移動度を低下させるので、少ない方が望ましく、通常、50重量%以下が好ましい。
【0054】
真空蒸着法の場合には、正孔輸送材料を真空容器内に設置されたルツボに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度にまで排気した後、ルツボを加熱して、正孔輸送材料を蒸発させ、ルツボと向き合って置かれた、正孔注入層が形成された基板1上に正孔輸送層4を形成させる。
正孔輸送層4の膜厚は、通常10nm以上、好ましくは30nm以上であり、また通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。この様に薄い膜を一様に形成するためには、一般に真空蒸着法がよく用いられる。
【0055】
有機電界発光素子の発光効率を更に向上させるために、図3に示すように発光層5の上に電子輸送層6を積層することが行われる。この電子輸送層に用いられる化合物には、陰極7からの電子注入が容易で、電子の輸送能力が大きいことが要求される。この様な電子輸送材料としては、従来、既に発光層材料として挙げた8−ヒドロキシキノリンのアルミ錯体、オキサジアゾール誘導体(Appl.Phys.Lett., 55 巻, 1489頁, 1989年他)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、スターバースト型ベンズイミダゾール化合物(特開平10−106749号公報)が挙げられる。電子輸送層に用いられる材料には高い電子移動度と安定な非晶質膜形成能力が求められる。
【0056】
さらに、電子輸送層にアルカリ金属を混合させることにより、導電性を大きく改善させることが可能で、このことは電子輸送性材料がアルカリ金属との反応により還元され、電荷キャリアとなるアニオンラジカルを効率よく生成することが可能なことによる(特開平10−270171号公報)。アルカリ金属としては、Li、Na、K、Cs等が用いられ、アルカリ金属の電子輸送層における含有量は、1〜50重量%が好ましい範囲である。このアルカリ金属を混合させる方法としては、電子輸送材料とアルカリ金属の共蒸着が通常は用いられる。
【0057】
電子輸送層6の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常200nm以下、好ましくは100nm以下である。
陰極7は、発光層5に電子を注入する役割を果たす。陰極7として用いられる材料は、前記陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率よく電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属またはそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。さらに、陰極と発光層または電子輸送層の界面にLiF 、MgF、LiO等の極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも、素子の効率を向上させる有効な方法である(Appl. Phys. Lett., 70巻,152頁,1997年;特開平10− 74586号公報;IEEETrans. Electron. Devices,44巻,1245頁,1997年)。陰極7の膜厚は通常、陽極2と同様である。低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、この上にさらに、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層することは素子の安定性を増す。この目的のために、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。
【0058】
尚、図1とは逆の構造、すなわち、基板上に陰極7、発光層5、正孔注入層3、陽極2の順に積層することも可能であり、既述したように少なくとも一方が透明性の高い2枚の基板の間に本発明の有機電界発光素子を設けることも可能である。同様に、図2及び図3に示した前記各層構成とは逆の構造に積層することも可能である。
【0059】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
実施例1
図2に示す構造を有する有機電界発光素子を以下の方法で作製した。
【0060】
ガラス基板上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を120nm堆積したもの(シート抵抗15Ω)を通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極を形成した。パターン形成したITO基板を、アセトンによる超音波洗浄、純水による水洗、イソプロピルアルコールによる超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0061】
特願2003−84816号記載の方法に準じて合成された、ベンゾポルフィリン化合物BP−1の前駆体(ポルフィリン環に縮合する4個のベンゼン環が、全てビシクロ[2,2,2]オクテン環である化合物)を、クロロホルムに0.2重量%で溶かした溶液を用いて、ITOガラス基板上にスピンコートした。このスピンコートにより30nmの膜厚の均一な薄膜形状を有する正孔注入層3を形成した。
【0062】
塗布後、ホットプレート上で210℃で10分間加熱処理を行った。この加熱処理により褐色の前駆体膜は緑色のBP−1膜と転換された。
次に、上記正孔注入層を成膜した基板を真空蒸着装置内に設置した。上記装置の粗排気を油回転ポンプにより行った後、装置内の真空度が2x10−6Torr(約2.7x10−4Pa)以下になるまで液体窒素トラップを備えた油拡散ポンプを用いて排気した。上記装置内に配置されたセラミックるつぼに入れた以下に示す芳香族アミン化合物、4,4’−ビス[N−(9−フェナンチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
【0063】
【化11】
Figure 2004327166
【0064】
を加熱して蒸着を行った。蒸着時の真空度は2.0x10−6Torr(約2.7x10−4Pa)、蒸着速度は0.3nm/秒で、膜厚40nmの膜をBP−1からなる正孔注入層の上に積層して正孔輸送層4を完成させた。
引続き、発光層5の材料として、以下の構造式に示すアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体、Al(CNO)、を正孔輸送層と同様にして蒸着を行った。
【0065】
【化12】
Figure 2004327166
【0066】
この時のアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体のるつぼ温度は 265〜275℃の範囲で制御し、蒸着時の真空度は1.5x10−6Torr(約2.0x10−4Pa)、蒸着速度は0.5nm/秒で、蒸着された発光層の膜厚は60nmであった。
上記の正孔輸送層4及び発光層5を真空蒸着する時の基板温度は室温に保持した。
【0067】
ここで、発光層5までの蒸着を行った素子を一度前記真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して有機層と同様にして装置内の真空度が2x10−6Torr(約2.7x10−4Pa)以下になるまで排気した。
【0068】
陰極7として、陰極からの電子注入を容易にするために、陰極界面層としてフッ化リチウム塩を、蒸着速度0.1nm/秒、蒸着時の真空度3x10−6Torr(約4x10−4Pa)の条件において、膜厚0.5nmで形成した。続いて、アルミニウムを蒸着速度1nm/秒で陰極界面層上に膜厚80nmで形成した。蒸着時の真空度は6.0x10−5Torr(約8x10−4Pa)であった。陰極蒸着時の基板温度は室温に保持した。
【0069】
以上の様にして、2mmx2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。この素子では、印加電圧5.1Vで100cd/mの輝度が得られた。短絡の少ない素子が得られた。
参考例1
BP−1前駆体塗布後、自然乾燥のみで正孔注入層3とした他は、実施例1と同様にして素子を作製した。この素子では9.3Vで100cd/mの輝度が得られ、駆動電圧が高かった。
【0070】
比較例1
正孔注入層3として、銅(II)フタロシアニンの蒸着膜(蒸着速度:0.1nm/秒、蒸着時の真空度:2×10−6Torr(2.7×10−4Pa、膜厚25nm)を用いた他は、実施例1と同様にして素子を作製した。この素子では、7.4Vで100cd/mの輝度が得られた。
【0071】
【発明の効果】
本発明の有機電界発光素子によれば、特定のベンゾポルフィリンを含有する正孔注入層を有するために、低電圧で駆動可能かつ耐熱性の向上した素子を得ることができる。
従って、本発明による有機電界発光素子はフラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)や面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯への応用が考えられ、その技術的価値は大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】有機電界発光素子の一例を示した模式断面図。
【図2】有機電界発光素子の別の例を示した模式断面図。
【図3】有機電界発光素子の別の例を示した模式断面図。
【符号の説明】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 陰極

Claims (5)

  1. 基板上に、陽極、陰極及び該両極間に設けられた発光層を有する有機電界発光素子において、該発光層と陽極との間に、下記一般式(I)および/または(II)で表わされるベンゾポルフィリン化合物を含む層を有することを特徴とする、有機電界発光素子。
    Figure 2004327166
    Figure 2004327166
    (式中、Zia及びZib(i=1〜4)は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、ジアラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表わすか、或いは、ZiaとZibが結合して置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族複素環、または置換基を有していてもよい非芳香族炭化水素環を形成する。
    〜Rは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、ジアラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表わす。
    Mは2価の金属原子、または3価以上の金属に1価または2価の基が結合してなる原子団を表す。)
  2. ベンゾポルフィリン化合物を含有する層が、さらに電子受容性化合物を含有する、請求項1記載の有機電界発光素子。
  3. 電子受容性化合物の含有量が、ベンゾポルフィリン化合物に対して0.1〜50重量%の範囲である、請求項2記載の有機電界発光素子。
  4. ベンゾポルフィリン化合物を含む層が、陽極に接して設けられた正孔注入層であり、正孔注入層と発光層の間には正孔輸送層を有する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
  5. 請求項1ないし4のいずれか一項に記載の有機電界発光素子の製造方法において、
    ベンゾポルフィリン化合物を含む層が、ベンゾポルフィリン化合物の可溶性前駆体を含む溶液を用いた湿式成膜法にて成膜された後、該膜の加熱処理により前駆体をベンゾポルフィリン化合物に熱転換することにより形成される、有機電界発光素子の製造方法。
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