JP2002202073A - 揺動ピストン型圧縮機およびこれを用いた冷媒圧縮機並びに空気調和機 - Google Patents

揺動ピストン型圧縮機およびこれを用いた冷媒圧縮機並びに空気調和機

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JP2002202073A
JP2002202073A JP2001001395A JP2001001395A JP2002202073A JP 2002202073 A JP2002202073 A JP 2002202073A JP 2001001395 A JP2001001395 A JP 2001001395A JP 2001001395 A JP2001001395 A JP 2001001395A JP 2002202073 A JP2002202073 A JP 2002202073A
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cylinder
shoe
working chamber
oscillating
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博 ▲高▼安
Hiroshi Takayasu
Noboru Baba
馬場  昇
Tadashi Iizuka
董 飯塚
Akihiko Ishiyama
明彦 石山
Toshiaki Yamanaka
敏昭 山中
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Hitachi Ltd
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Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明の目的は高い耐摩耗性を有する摺動材を
用いた高信頼性かつ耐久性に優れる揺動ピストン型圧縮
機を提供することにある。 【解決手段】本発明はピストン、シュー及びシリンダを
主要構成要素とする揺動ピストン型圧縮機において、ピ
ストンに密度7g/cm3以上で引張強さ690MPa
以上でスチーム処理を施した焼結材を用い、シリンダに
リン酸マンガン処理を施した鋳鉄を用い、シューに高速
度工具鋼を用い、各摺接する部分の表面あらさをRz
1.2μm以下に仕上げたことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主に冷媒圧縮機や
冷凍機や空気調和機に用いられ、高い耐摩耗性摺動部材
を使用した揺動ピストン型圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、空気調和機等に使用されるロー
タリー圧縮機は、特開平6−147164号公報に開示
するように、吸入口及び吐出口が開口するシリンダの作
動室と、駆動軸の偏心軸部に回転自在に嵌合され、上記
作動室内に配置されたロータリーピストンと、上記作動
室を吸入口に通じる低圧側と吐出口に通じる高圧側とに
区画するピストンブレードとを備え、駆動軸の回転によ
りロータリーピストンが作動室の外周壁に沿って公転
(旋回)し、公転毎に吸入口から吸い込んで吐出口から
吐出する構成になっている。
【0003】このロータリー圧縮機の一種として揺動ピ
ストン型圧縮機がある。通常のロータリー圧縮機ではベ
ーンが作動室側に出没自在に設けられ、その先端がロー
タリーピストンの外周面に摺動するのに対して、揺動ピ
ストン型圧縮機ではピストンブレードがピストン側に設
けられている。この揺動ピストン圧縮機の場合、ピスト
ンとピストンブレードは鉄系焼結材により一体成形され
ている。シューは高速度工具鋼(SKH51)、シリン
ダは焼結材が用いられている。また、作動室の吸入口と
吐出口との間に作動室に臨むシュー支持穴を形成し、該
シュー支持穴内に上記ピストンブレードの先端側を揺動
自在にかつ進退自在に支持するシューを回動可能に配置
し、これにより、ピストンが駆動軸の回転により作動室
の周壁に沿って公転(旋回)するとき該ピストンがピス
トンブレードを介してシューを支点として揺動する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、揺動ピストン
型圧縮機では、ピストンのピストンブレードとシュー及
びシューとシリンダとの摺動部は、起動時における潤滑
油不足時(油膜切れ)や過負荷時等においては著しい摩
耗を起こすことが懸念される。
【0005】上記の問題に対処し、ピストンブレード、
シューないしシュー支持穴の摩耗が生じにくいものを提
供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、円形空洞の作
動室を有するシリンダと、該シリンダの作動室内で摺動
自在に旋廻するリング状のピストンと、該ピストンと一
体に形成され、かつピストンの外周からほぼ法線の方向
に向かって延在する棒状のピストンブレード部と、前記
作動室の外周より外側に位置し、かつシリンダに摺動自
在に回動支持される外周が円形のシューとを備え、前記
シューには、外周から中心を通り、反対側の外周に抜け
る貫通穴を設け、該貫通穴に摺動自在に挿入される前記
ピストンブレード部の摺動面粗さをRz1.2μm以下
にしたことを特徴とするものである。
【0007】この摺動表面あらさをRz1.2μm以下
に仕上げることで、摩擦係数の上昇を押さえ、起動時に
おける給油不足や過負荷等における境界潤滑において
も、かじりや焼付きを著しく防止でき、信頼性の高い長
期寿命の揺動ピストン型圧縮機を得ることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。
【0009】図1は、本発明の一実施形態に係る揺動ピ
ストン圧縮機の全体構成を示す。図2は図1のA―A線
における断面図を示す。
【0010】揺動ピストン圧縮機の構成および動作につ
いて述べる。揺動ピストン圧縮機の密閉容器1内の電動
機は、固定子2と回転子2aを有する。主軸受け4と副
軸受け5に回動自在に支持される回転子2aには回転軸
(クランク軸6)が備わる。クランク軸6には偏心部6
aが備わる。この偏心部6aに嵌合されたピストン7は
シリンダ3に設けられる円形空洞の作動室16内で旋回
運動する。
【0011】ピストン7は、リング状をなし、外周から
法線方向に延在するピストンブレード7aを有する。シ
ュー8は円形状をなし、シリンダ3のシュー支持穴3a
に摺動自在に回転支持されている。
【0012】シュー8は貫通穴を有する。この貫通穴は
外周から中心を通り、外周に抜けるように形成される。
シュー支持穴3aの下方(作動室16の反対側)には空
洞部が形成されている。シュー8の貫通穴は、下方が空
洞部に上方が作動室16に臨むように取り付けられてい
る。
【0013】またシュー支持穴3aの上方部と下方部は
貫通穴よりも大きく形成される。大きく形成されている
ので、貫通穴に挿入される前記ピストンブレード7aが
ピストン7の旋回に伴って揺動しながら上下に往復運動
する際に、ピストンブレード7aの付け根がシュー支持
穴3aの上方部と下方部に当ることがピストンブレード
7aの往復運動は円滑に行われる。
【0014】このピストンブレード7aでシリンダ3の
作動室16内が吸込側(低圧側)と圧縮側(高圧側)に
仕切られ、吸込パイプ9より吸込側に吸込まれた作動流
体(冷媒等)は吐出ポート12(吐出口)から弁体15
を有する吐出弁装置11を通って吐出カバー13で塞が
れた吐出室14に入り、その後密閉容器1内に吐き出さ
れ、ここから吐出パイプ10を通過して外部に吐出され
る。
【0015】作動室16に冷媒を導入する吸入口は、ピ
ストンブレード7aで仕切られる作動室16の低圧側
に、作動室16から冷媒を吐出する吐出口はピストンブ
レード7aで仕切られる作動室16の高圧側にそれぞれ
通ずるように設けられる。しかも、吸入口と吐出口はピ
ストンブレード7aの近傍に位置するように設けられ
る。
【0016】揺動ピストン型圧縮機の主要構成要素であ
るシリンダ3、ピストン7及びシュー8には潤滑油が供
給されているが、起動時や冷媒吐出圧力が高い場合には
潤滑油の供給が不足してかじり等著しい摩耗が発生し易
い。該揺動ピストン型圧縮機の主要構成要素に本発明を
適用することにより、圧縮機の信頼性及び耐久性を向上
させることができる。
【0017】次に本発明に係わる揺動ピストン型圧縮機
を構成する摺動部品材料で形成した摺動部品の特性を従
来材と比較して説明する。
【0018】図3にストライベック曲線(1)を示す。
材料の組合わせは、焼結材/SKH51(ピストン7お
よびピストンブレード7aを形成する素材)で、表面あ
らさは焼結材がRz1.2μm、SKH51(シュー8
を形成する素材)がRz2.8μmである。ストライベ
ック曲線は、材料間の広ηV/P範囲での摩擦係数の挙
動を求めるものである。ここにη:油の粘度、V:摺動
速度、P:面圧である。冷媒はR134a、油はエステ
ル油である。この表面あらさの材料の潤滑状態は固体と
固体の接触を伴う混合潤滑及び境界潤滑状態となり、材
料間に油が存在し固体接触がない流体潤滑は得られな
い。
【0019】次に、図4にストライベック曲線(2)を
示す。焼結材のあらさをRz1.2μmで同一とし、S
KH51の表面あらさをRz1.2μmに仕上げてスト
ライベック試験を行った。その結果、SKH51の表面
あらさを滑らかにすると流体潤滑域(図中、横軸が0.
1〜1付近の領域)が存在し、かつ、全体的に摩擦係数
が小さくできることが分かった。
【0020】図5にSKH51の表面あらさRzと気体
冷媒雰囲気中での各種材料の摩耗量との関係を示す。本
試験は高圧雰囲気摩耗試験装置を用いて評価した。本装
置は、実機の運転条件が模擬できるので正確な耐摩耗評
価が可能である。摩耗試験条件は、冷媒R134a、潤
滑油なし、面圧10MPa、雰囲気圧力0.5MPa、
摺動速度0.12m/s、試験時間5時間である。図中
の白丸は高速度工具鋼(SKH51)でシュー材、黒丸
は鋳鉄でシリンダ材及び黒四角は燒結材でロータリーピ
ストン材である。これらの材料は摩耗試験において、焼
結材と鋳鉄材は可動片、SKH51は固定片となる。実
機における摺動組合わせは、ピストンブレード/シュー
及びシリンダ/シューとなる。図から、SKH51の表
面あらさが大きくなっても固定片のSKH51の摩耗量
はほとんど変わらないが、可動片の焼結材と鋳鉄材の摩
耗量は、相手材となるSKH51の表面あらさがRz
1.2μm以上になると急激に増加する。
【0021】図6に焼結材の密度と引張強さとの関係を
示す。引張試験は大気中で行った。焼結材の引張強さは
密度が大きくなるとともに高くなる。
【0022】図7に焼結材の引張強さと摩耗量の関係を
示す。摩耗試験条件は、冷媒R134a、潤滑油なし、
面圧10MPa、雰囲気圧力0.5MPa、摺動速度
0.12m/s、試験時間5時間である。摺動相手材
は、SKH51である。引張強さが高くなるとともに摩
耗量は減少する。すなわち、図6、7から密度が大きく
なるとともに引張強さが高くなり、これにともない摩耗
量も少なくなることが分かった。
【0023】図8に焼結材の空孔率と摩耗量の関係を示
す。摩耗試験条件は、冷媒R134a、潤滑油はエステ
ル油、面圧10MPa、雰囲気圧力0.5MPa、摺動
速度0.12m/s、試験時間10時間である。摺動相
手材は、SKH51である。焼結材の潤滑油中での摩耗
量は、空孔率が20Vol%を超えると急激に増加す
る。
【0024】図9に焼結材のスチーム処理なし(比較例
1)とスチーム処理あり(実施例1)の摩耗試験結果を
示す。スチーム処理で表面に酸化被膜が形成されるので
ある。摩耗試験条件は、冷媒R134a、潤滑油なし、
面圧10MPa、雰囲気圧力0.5MPa、摺動速度
0.12m/s、試験時間5時間である。摺動相手材は
SKH51である。スチーム処理をした焼結材の摩耗量
は、スチーム処理をしないものに比べ約1/2となり、
耐摩耗性が向上する。
【0025】図10にSKH51のあらさをRz1.2
μm一定とした時の焼結材の表面あらさとSKH51の
摩耗量の関係を示す。SKH51はシューで焼結材はピ
ストンブレードである。また、本試験ではSKHは固定
片で焼結材は可動片である。本試験は高圧雰囲気摩耗試
験装置を用いて評価した。本装置は、実機の運転条件が
模擬できるので正確な耐摩耗評価が可能である。摩耗試
験条件は、冷媒R134a、潤滑油なし、面圧10MP
a、雰囲気圧力0.5MPa、摺動速度0.12m/
s、試験時間5時間である。図からSKH51の摩耗量
は、焼結材の表面あらさが大きくなるとともに増加する
傾向を示す。
【0026】図11にSKH51のあらさをRz1.2
μm一定とした時の鋳鉄の表面あらさとSKH51の摩
耗量の関係を示す。SKH51はシューで鋳鉄はシリン
ダである。また、本試験ではSKHは固定片で鋳鉄は可
動片である。本試験は高圧雰囲気摩耗試験装置を用いて
評価した。本装置は、実機の運転条件が模擬できるので
正確な耐摩耗評価が可能である。摩耗試験条件は、冷媒
R134a、潤滑油なし、面圧10MPa、雰囲気圧力
0.5MPa、摺動速度0.12m/s、試験時間5時
間である。図からSKH51の摩耗量は、鋳鉄の表面あ
らさが大きくなるとともに増加する傾向を示す。
【0027】図12にSKH51の硬さと各試験片の摩
耗量の関係を示す。摩耗試験条件は、冷媒R134a、
潤滑油なし、面圧10MPa、雰囲気圧力0.5MP
a、摺動速度0.12m/s、試験時間5時間である。
試験片の組合わせは、焼結材が可動片でSKH51が固
定片である。SKH51の硬さが高くなるとともに相手
材の焼結材の摩耗量は増加する。特にSKH51の硬さ
がHV800を超えると急激に増加する。また、SKH
51自身も硬さがHV700以下になると摩耗量が増え
る傾向にある。
【0028】図13に鋳鉄のあらさをRz1.2μm一
定とした時のSKH51の表面あらさと鋳鉄の摩耗量の
関係を示す。SKH51はシューで鋳鉄はシリンダであ
る。また、本試験ではSKHは固定片で鋳鉄は可動片で
ある。本試験は高圧雰囲気摩耗試験装置を用いて評価し
た。本装置は、実機の運転条件が模擬できるので正確な
耐摩耗評価が可能である。摩耗試験条件は、冷媒R13
4a、潤滑油なし、面圧10MPa、雰囲気圧力0.5
MPa、摺動速度0.12m/s、試験時間5時間であ
る。図から鋳鉄の摩耗量は、SKH51の表面あらさが
大きくなるとともに増加する傾向を示す。特に、SKH
51の表面あらさがRz1.2μmを超えると急激に増
加する。
【0029】図14に鋳鉄のリン酸マンガン処理なしと
リン酸マンガン処理ありの摩耗試験結果を示す。摩耗試
験条件は、冷媒R134a、潤滑油なし、面圧10MP
a、雰囲気圧力0.5MPa、摺動速度0.12m/
s、試験時間5時間である。摺動相手材はSKH51で
ある。リン酸マンガン処理をした鋳鉄の摩耗量は、リン
酸マンガン処理をしないものに比べ約1/2となってい
る。
【0030】図15に実機運転試験後の摩耗量を示す。
運転条件は、冷媒R134a、油がエステル油、吸込み
圧/吐出圧=0.08/2.7MPaG、2000rp
m、96時間である。白抜きはピストンブレードに用い
る焼結材で黒塗りはシリンダに用いる鋳鉄材である。相
手材はシューに用いるSKH51で表面あらさはRz
1.2μmの仕上げである。また、焼結材及び鋳鉄材の
表面あらさはRz1.2μmである。ピストンブレード
部の低圧側側面に油溝17を備えないのが比較例3で、
油溝17を有するのが実施例3である。また、シリンダ
の低圧側のシュー支持穴3aに油溝17を備えないのが
比較例4で、油溝17を有するのが実施例4である。焼
結材及び鋳鉄材の摩耗量は比較例に比べ約20%少なく
なり油溝の効果により耐摩耗性が向上する結果が得られ
た。
【0031】図16に冷凍サイクル構成図を示す。冷凍
サイクルは、圧縮機18、凝縮機19、膨張機構20、
蒸発器21、乾燥器22から構成されている。本発明の
揺動ピストン型圧縮機をサイクルに組込み高速高負荷試
験を行った。凝縮機の温度は60℃で蒸発器の温度は5
℃で運転時間は90日である。潤滑油はエステル油で冷
媒はR410aを用いた。
【0032】潤滑油には冷凍サイクルの雰囲気中におい
て冷媒が潤滑油に溶解している。冷媒の溶解する量は、
冷媒及び潤滑油の組合わせにより異なるが、通常は圧力
が高いほど該溶解量は増大する。潤滑油の粘度は溶解量
の増大に伴い小さくなるため、圧力の高い雰囲気では摩
擦摺動が苛酷になる。以上述べた潤滑油の冷媒溶解状態
の差異に起因する摺動条件の制約に影響せずに、本発明
の揺動ピストン型圧縮機は冷凍冷蔵庫、空気調和機の冷
凍サイクルに適用することができ、かじりや焼付きの発
生がなく摩耗量は従来機よりも30パーセント少なくな
り、耐久性に優れた信頼性の高い性能を示した。また、
本冷凍サイクルにて炭化水素の冷媒を用いた場合も信頼
性の高い性能を示した。
【0033】また 鉄系焼結材には、重量%でC:0.
45〜0.55、Ni:5.5〜6.5、Cr:0.6
〜0.9、Mo:0.45〜0.55、Cu:0.05
〜0.15、Bal.Feで示されるように、パーライ
ト+フェライト組織のものやマルテンサイト組織のもの
が良い。
【0034】さらに焼結材の密度が7g/cm3未満で
は摺動部品としての強度が低い。強度が690MPa未
満では過負荷時に摩耗や折損が起こる可能性がある。空
孔率が20%を超えると、空孔内への油の逃げが著しく
なり良好な潤滑効果が得られない。しかし、焼結材の空
孔を完全になくすることは困難である。
【0035】従って、空孔を極力少なくし潤滑油の保持
性を良好にし、耐摩耗性を向上する目的でスチーム処理
を行われる。これは、温度500〜650℃、圧力0.
02〜0.1MPaの加熱水蒸気中に焼結材を2〜3時
間保持するものである。この処理によって、焼結材の基
地組織の空孔に鉄酸化物が生成されるのである。
【0036】さらにまたシューに高速度工具鋼SKH5
1(SKH51〜SKH54を含む)として、重量%で
C:0.8〜0.9、Si:0.4>、Mn:0.4
>、P:0.03>、S:0.03>、Cr:3.8〜
4.5、W:5.5〜6.7、V:1.6〜2.2、B
al.Feを用い、ピストンブレードやシリンダと摺動
する部分の表面あらさをRz1.2μm以下に仕上げる
ことで摩擦係数を小さくし、相手材への摩耗による攻撃
性を少なくして、信頼性の高い長期寿命の揺動ピストン
型圧縮機を提供する。
【0037】また高速度工具鋼(SKH51〜SKH5
4)のビッカース硬さを、HV700〜800の範囲に
調整することが妥当である。HV700未満ではSKH
51本来の耐摩耗性が発揮されず、HV800を超える
とで硬過ぎて相手材への攻撃性が強くなり長寿命の圧縮
機を得ることができない。SKH51は調質処理を行っ
て使用される。一般的な調質処理条件としては、500
℃で25分保持後850℃に上げ15分保持後さらに1
180℃に上げ5秒保持し530℃に下げて5分保持後
空冷する。その後200℃で1時間保持後空冷の焼戻し
を2回行う。
【0038】さらにシリンダ用の鋳鉄の表面あらさをR
z1.2μm以下に仕上げることで相手材との摩擦係数
を小さくし、給油不足時の耐摩耗性の低下や、表面凹凸
による油膜の切れ等が少なくなり耐摩耗性が向上する。
鋳鉄としては、重量%でC:3.1〜3.5、Si:
1.9〜2.3、Mn:0.6〜0.9、P:0.1〜
0.35、S:0.07〜0.11、Ni:0.2〜
0.4、Cr:0.6〜0.9、Mo:0.15〜0.
35、Bal.Feで示されるパーライト地に片状黒鉛
を含んだFC250やマルテンサイト地に片状黒鉛を含
んだMoNiCr鋳鉄が良い。
【0039】さらにまた鋳鉄の表面にリン酸マンガン処
理を施し、材料間に初期なじみを付与し耐摩耗性を高め
ることができる。
【0040】揺動ピストン型圧縮機の起動時の給油不足
時や過負荷運転時には、ピストンブレード/シュー、シ
リンダ/シュー部の摺動部においてかじり、焼付き等の
異常な摩耗状態になることが懸念される。そこで請求項
10に係わる発明は、このような苛酷な運転条件におい
ても、油溝部の溜油が潤滑に寄与するとともに、通常の
運転時においても優先的に摺動部への潤滑を促すことが
でき耐久性に優れる揺動ピストン型圧縮機を得ることが
できる。
【0041】また塩素を含まない冷媒は特に冷媒自体の
摩擦軽減作用が低いため境界潤滑になりやすいことか
ら、境界潤滑に於いても低摩擦、耐摩耗性を有する揺動
ピストン型圧縮機が得られる。
【0042】さらに耐摩耗性に優れた揺動ピストン型圧
縮機を用いたので高性能の冷凍機及び空気調和機が得ら
れる。
【0043】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、ピスト
ンブレード部、シュー及びシリンダのかじりや焼付きが
なく信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかるもので、揺動ピスト
ン型圧縮機の全体構成を示す図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかるもので、ストライベ
ック曲線(1)を示す図である。
【図4】本発明の実施形態にかかるもので、ストライベ
ック曲線(2)を示す図である。
【図5】本発明の実施形態にかかるもので、表面あらさ
と摩耗量の関係を示す図である。
【図6】本発明の実施形態にかかるもので、焼結材の密
度と引張強さの関係を示す図である。
【図7】本発明の実施形態にかかるもので焼結材の引張
強さと摩耗量の関係を示す図である。
【図8】本発明の実施形態にかかるもので、焼結材の空
孔率と摩耗量を示す図である。
【図9】本発明の実施形態にかかるもので、焼結材のス
チーム処理の効果を示す摩耗試験結果を示す図である。
【図10】本発明の実施形態にかかるもので、焼結材の
表面あらさとSKH51の摩耗量を示す図である。
【図11】本発明の実施形態にかかるもので、鋳鉄の表
面あらさとSKH51の摩耗量を示す図である。
【図12】本発明の実施形態にかかるもので、焼結材の
硬さと摩耗量の関係を示す図である。
【図13】本発明の実施形態にかかるもので、SKH5
1の表面あらさと鋳鉄の摩耗量を示す図である。
【図14】本発明の実施形態にかかるもので、鋳鉄材の
リュ−ブライト処理の効果を示す摩耗試験結果示す図で
ある。
【図15】本発明の実施形態にかかるもので、実機運転
試験後の摩耗量を示す図である。
【図16】本発明の実施形態にかかるもので、冷凍サイ
クル構成図を示す図である。
【符号の説明】
1…密閉容器、2…固定子、2a…回転子、3…シリン
ダ、3a…シュー支持穴、4…主軸受け、5…副軸受
け、6…クランク軸、6a…偏心部、7…揺動ピスト
ン、7a…ブレード部、8…シュー、9…吸込パイプ、
10…吐出パイプ、11…吐出弁装置、12…吐出ポー
ト、13…吐出カバー、14…吐出室、15…弁体、1
6…作動室、17…油溝、18…圧縮機、19…凝縮
機、20…膨張機構、21…蒸発器、22…乾燥器。
フロントページの続き (72)発明者 飯塚 董 栃木県下都賀郡大平町大字富田800番地 株式会社日立製作所冷熱事業部内 (72)発明者 石山 明彦 栃木県下都賀郡大平町大字富田800番地 株式会社日立製作所冷熱事業部内 (72)発明者 山中 敏昭 栃木県下都賀郡大平町大字富田800番地 株式会社日立製作所冷熱事業部内 Fターム(参考) 3H029 AA04 AB03 BB31 BB44 CC03 CC05 CC24 CC25 CC38

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 円形空洞の作動室を有するシリンダと、
    該シリンダの作動室内で摺動自在に旋廻するリング状の
    ピストンと、該ピストンと一体に形成され、かつピスト
    ンの外周からほぼ法線の方向に向かって延在する棒状の
    ピストンブレード部と、前記作動室の外周より外側に位
    置し、かつシリンダに摺動自在に回動支持される外周が
    円形のシューとを備え、 前記シューには、外周から中心を通り、反対側の外周に
    抜ける貫通穴を設け、該貫通穴に摺動自在に挿入される
    前記ピストンブレード部の摺動面粗さをRz1.2μm
    以下にしたことを特徴とする揺動ピストン型圧縮機。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載されたものにおいて、 前記作動室に通ずる吸込穴および吐出口を有することを
    特徴とする揺動ピストン型圧縮機。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載されたものにおいて、 前記吸入穴と前記吐出口は前記ピストンブレード部を仕
    切りとして両側に振り分けられるとともにピストンブレ
    ード部の近傍に配置されることを特徴とする揺動ピスト
    ン型圧縮機。
  4. 【請求項4】 請求項1から3の何れか一つに記載され
    たものにおいて、 前記ピストンブレード部および前記ピストンを鉄系燒結
    材で形成したことを特徴とする揺動ピストン型圧縮機。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載されたものにおいて、 前記鉄系焼結材は密度が7g/cm3以上であることを
    特徴とする揺動ピストン型圧縮機。
  6. 【請求項6】 請求項4に記載されたものにおいて、 前記鉄系焼結材は、引張り強さが690MPa以上であ
    ることを特徴とする揺動ピストン型圧縮機。
  7. 【請求項7】 請求項4に記載されたものにおいて、 前記鉄系焼結材は、空孔率が20vol%未満であるこ
    とを特徴とする揺動ピストン型圧縮機。
  8. 【請求項8】 請求項4に記載されたものにおいて、 前記鉄系焼結材は、前記摺動面に酸化被膜を形成したこ
    とを特徴とする揺動ピストン型圧縮機。
  9. 【請求項9】 請求項4に記載されたものにおいて、 前記鉄系焼結材は、摺動面にスチーム処理を施したこと
    を特徴とする揺動ピストン型圧縮機。
  10. 【請求項10】 円形空洞の作動室を有するシリンダ
    と、該シリンダの作動室内で摺動自在に旋廻するリング
    状のピストンと、該ピストンと一体に形成され、かつピ
    ストンの外周からほぼ法線の方向に向かって延在する棒
    状のピストンブレード部と、前記作動室の外周より外側
    に位置し、かつシリンダに摺動自在に回動支持される外
    周が円形のシューとを備え、 前記シューには、外周から中心を通り、反対側の外周に
    抜ける貫通穴を設け、該貫通穴に前記ピストンブレード
    部を摺動自在に挿入し、 前記シューを高速度工具鋼SKH51(SKH51〜S
    KH54を含む)として、重量%でC:0.5〜1.
    8、Si:0.4未満、Mn:0.4未満、P:0.0
    3未満、S:0.03未満、Cr:3.8〜4.5、
    W:5.5〜6.7、V:1.6〜2.2とし、少なく
    ともシューの摺動面粗さをRz1.2μm以下としたこ
    とを特徴する揺動ピストン型圧縮機。
  11. 【請求項11】 請求項10に記載されたものにおい
    て、 前記シューは、ビッカース硬さがHV700〜800で
    あることを特徴とする揺動ピストン型圧縮機。
  12. 【請求項12】 円形空洞の作動室を有するシリンダ
    と、該シリンダの作動室内で摺動自在に旋廻するリング
    状のピストンと、該ピストンと一体に形成され、かつピ
    ストンの外周からほぼ法線の方向に向かって延在する棒
    状のピストンブレード部と、前記作動室の外周より外側
    に位置し、かつシリンダに摺動自在に回動支持される外
    周が円形のシューとを備え、 前記シューには、外周から中心を通り、反対側の外周に
    抜ける貫通穴を設け、 該貫通穴に前記ピストンブレード部を摺動自在に挿入
    し、 前記シリンダを鋳鉄とし、少なくともシリンダの摺動面
    粗さをRz1.2μm以下としたことを特徴とする揺動
    ピストン型圧縮機。
  13. 【請求項13】 請求項12に記載されたものにおい
    て、 前記鋳鉄はリン酸マンガン処理を施したことを特徴とす
    る揺動ピストン型圧縮機。
  14. 【請求項14】 請求項1〜13の何れか一つにおい
    て、 前記シリンダに設けられ、かつ前記シューを回動自在に
    支持するシュー支持穴には、内周囲面(摺動面)で低圧
    側(前記吸入口側)に油溝を設けたことを特徴とする揺
    動ピストン型圧縮機。
  15. 【請求項15】 請求項1〜13の何れか一つにおい
    て、 前記シューに設けられた前記貫通穴の摺動面で低圧側
    (前記吸入口側)に油溝を設けたことを特徴とする揺動
    ピストン型圧縮機。
  16. 【請求項16】 請求項1〜15の何れか一つにおい
    て、 塩素分を含まない冷媒を圧縮することに用いられること
    を特徴とする冷媒圧縮機。
  17. 【請求項17】 請求項1〜15の何れか一つにおい
    て、 冷凍用に用いることを特徴とする冷凍機。
  18. 【請求項18】 請求項1〜15の何れか一つにおい
    て、 空気調和に用いることを特徴とする空気調和機。
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