第1の態様に係る冷媒圧縮機は、電動要素と、前記電動要素により駆動されて冷媒を圧縮する圧縮要素と、前記電動要素及び前記圧縮要素を収容する密閉容器と、を備え、前記圧縮要素は、前記電動要素によって回転する軸部品と、前記軸部品を回転可能に摺接する軸受部品と、を有し、前記軸部品の摺動面には、前記軸受部品の摺動面の硬さ以上の硬さを有する皮膜が設けられており、前記軸受部品の摺動面は前記軸受部品の軸心方向の端に向かうにつれて連続的に曲線形状に内径が拡がる曲面部を有している、又は、前記軸部品の摺動面は前記軸部品の軸心方向の端に向かうにつれて連続的に曲線形状に外径が縮まる曲面部を有している。
これにより、軸部品が軸受部品内で傾斜しても、この間の片当りによる局所的な接触を曲面部が緩和する。このため、軸部品と軸受部品との間の油膜の薄膜化及び油膜切れを抑制し、効率低下の低減を図った冷媒圧縮機を提供することができる。
第2の態様に係る冷媒圧縮機は、第1の態様において、前記曲面部は、前記軸心方向の端に近いほど曲率半径が小さい形状を有していてもよい。これにより、軸部品と軸受部品との間の接触面積を広くするため、軸部品と軸受部品との間の油膜の薄膜化及び油膜切れを抑制することができる。
第3の態様に係る冷媒圧縮機は、第1又は2の態様において、前記軸受部品の摺動面は、前記軸部品の摺動面の角又は当該摺動面と同一径を有し且つ当該摺動面から延長された延長面の角に対向しないように配置されていてもよい。これにより、軸部品の角が摺動面に接触しないため、軸部品と軸受部品との間において局部接触を低減することができる。よって、軸部品と軸受部品との間の油膜の薄膜化及び油膜切れを抑制することができる。
第4の態様に係る冷媒圧縮機は、第1〜3のいずれかの態様において、前記軸受部品の前記曲面部は、前記軸受部品の軸心を通る平面において、前記軸受部品の軸心方向における寸法A、及び、当該軸心方向に直交する方向における寸法Bとの関係が、B/A=1/5000以上且つ1/50以下になるように形成されていてもよい。これにより、軸部品と軸受部品との間の接触面積を広くするため、軸部品と軸受部品との間の油膜の薄膜化及び油膜切れを抑制することができる。
第5の態様に係る冷媒圧縮機は、第1又は2の態様において、前記軸部品の摺動面は、前記軸受部品の摺動面の角又は当該摺動面と同一径を有し且つ当該摺動面から延長された延長面の角に対向しないように配置されていてもよい。これにより、軸部品の角が摺動面に接触しないため、軸部品と軸受部品との間において局部接触を低減することができる。よって、軸部品と軸受部品との間の油膜の薄膜化及び油膜切れを抑制することができる。
第6の態様に係る冷媒圧縮機は、第1〜3のいずれかの態様において、前記軸部品の前記曲面部は、前記軸部品の軸心を通る平面において、前記軸部品の軸心方向における寸法C、及び、当該軸心方向に直交する方向における寸法Dとの関係が、D/C=1/5000以上且つ1/50以下になるように形成されていてもよい。これにより、軸部品と軸受部品との間の接触面積を広くするため、軸部品と軸受部品との間の油膜の薄膜化及び油膜切れを抑制することができる。
第7の態様に係る冷媒圧縮機は、第1〜6のいずれかの態様において、前記軸部品は、主軸、及び、前記主軸に偏心して設けられた偏心軸を有し、前記軸受部品は、前記主軸を回転自在に支持する主軸受、及び、前記偏心軸を回転自在に支持する偏心軸受を有していてもよい。これにより、主軸と主軸受との間、及び/又は、偏心軸と偏心軸受との間においても、油膜の薄膜化及び油膜切れを抑制することができる。
第8の態様に係る冷媒圧縮機は、電動要素と、前記電動要素により駆動されて冷媒を圧縮する圧縮要素と、前記電動要素及び前記圧縮要素を収容する密閉容器と、を備え、前記圧縮要素は、前記電動要素によって回転する主軸と、前記主軸を回転自在に支持する主軸受と、を有し、前記主軸の摺動面には、前記主軸受の摺動面の硬さ以上の硬さを有する皮膜が設けられており、前記主軸受は、一端部及び他端部の少なくともいずれか一方の端部に、前記一端部と前記他端部との間の中間部よりも剛性が低い低剛性部を有する。
これにより、主軸により主軸受に荷重が付加されると、主軸受における剛性が低い端部が弾性変形する。このため、主軸と主軸受との間の片当りによる局所的な接触が緩和され、この間の油膜の薄膜化及び油膜切れを抑制する。よって、効率低下の低減を図った冷媒圧縮機を提供することができる。
第9の態様に係る冷媒圧縮機は、第8の態様において、前記低剛性部は、前記主軸受の径方向の厚みが前記中間部の径方向の厚みよりも小さくてもよい。これにより、別途部品を用いることなく、主軸受の端部の剛性を中間部の合成よりも低くできるため、コストの増加を低減することができる。
第10の態様に係る冷媒圧縮機は、第8の態様において、前記端部において、前記主軸により最大荷重が付加される領域に、前記低剛性部が設けられていてもよい。これにより、加工領域を狭くすることができ、コストの増加を低減することができる。
第11の態様に係る冷媒圧縮機は、第8〜10のいずれか一の態様において、前記主軸を有するクランクシャフトと、前記主軸受を有するシリンダブロックと、前記シリンダブロックのスラスト面に配置され且つ前記クランクシャフトを前記主軸受の軸心方向に支持する円筒形状のボールベアリングと、をさらに備え、前記端部は、前記スラスト面から突出した円筒形状であって、円筒形状のスリット溝によって相対的に大径の第1端部と、前記第1端部よりも軸心側に配置された相対的に小径の第2端部とに径方向に分割され、前記第1端部は、前記ボールベアリングに挿入され、前記第2端部は、前記主軸を回転自在に支持し且つ前記中間部の剛性よりも低い前記低剛性部を成していてもよい。これにより、スリット溝によって第2端部の変形に影響されることなく、第1端部はボールベアリングを保持することができる。
第12の態様に係る冷媒圧縮機は、第1〜11のいずれかの態様において、前記電動要素は、複数の運転周波数でインバータ駆動するように構成されていてもよい。これにより、インバータ駆動によって冷媒圧縮機が低速回転運転された場合であっても、効率低下の低減を図った冷媒圧縮機を提供することができる。
第13の態様に係る冷凍装置は、放熱器、減圧装置、吸熱器、並びに、第1〜12のいずれかの態様に係る冷媒圧縮機を備えている。このような効率低下の低減を図った冷媒圧縮機を備えることにより、冷凍装置の消費電力を低減することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。また、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
(実施の形態1)
<冷媒圧縮機の構成>
実施の形態1に係る冷媒圧縮機100は、図1に示すように、密閉容器101を備えている。密閉容器101にR600aを冷媒ガスとして充填されていると共に、密閉容器101の底部に潤滑油103として鉱油が貯留されている。
また、密閉容器101は、電動要素106及び圧縮要素107を収容している。電動要素106は、固定子104、及び、固定子104に対して回転する回転子105を有している。圧縮要素107は、電動要素106により駆動されて冷媒を圧縮し、例えば、往復式機構であって、クランクシャフト108、シリンダブロック112及びピストン132を有している。
クランクシャフト108は、主軸109及び偏心軸110を有している。主軸109は、円柱形状の軸部品であって、下部が回転子105に圧入固定されており、下端には潤滑油103に連通する給油ポンプ120が設けられている。偏心軸110は、円柱形状の軸部品であって、主軸109に対し偏心して配置されている。
シリンダブロック112は、例えば、鋳鉄等の鉄系材料からなり、シリンダボア113、及び主軸受111を有している。このシリンダボア113は、円筒形であって、内部空間を有し、端面がバルブプレート139で封止されている。
主軸受111は、円筒形状の軸受部品であって、内周面によって主軸109を回転可能に支持しており、主軸109のラジアル荷重を支えるジャーナル軸受である。このため、主軸受111の内周面と主軸109の外周面とは対向し、主軸受111の内周面に対して主軸109が摺動する。このように主軸受111の内周面及び主軸109の外周面において互いに摺動する部分が摺動面であって、この摺動面を有する主軸受111及び主軸109は一対の摺動部材を構成する。
ピストン132の一端部は、主軸109の回転によって往復可動にシリンダボア113の内部空間に挿入されている。これにより、シリンダボア113、バルブプレート139及びピストン132により囲まれた圧縮室134が形成される。また、ピストン132の他端部に、ピストンピン孔116が設けられている。
ピストンピン115は、略円筒形状をなし、偏心軸110と平行に配置され、ピストンピン孔116に回転不能に係止されている。コンロッド(連結手段)117は、アルミ鋳造品からなり、一端部に偏心軸受119が設けられ、他端部はピストンピン115を介してピストン132を連結されている。これにより、コンロッド117は、偏心軸受119により軸支する偏心軸110とピストン132とを連結する。
偏心軸受119は、円筒形状の軸受部品であって、内周面によって円柱形状の偏心軸110を軸支しており、偏心軸110のラジアル荷重を支えるジャーナル軸受である。このため、偏心軸受119の内周面と偏心軸110の外周面とは対向し、偏心軸受119の内周面に対して偏心軸110が摺動する。このような偏心軸受119の内周面及び偏心軸110の外周面において互いに摺動する部分が摺動面であって、この摺動面を有する偏心軸受119及び偏心軸110は一対の摺動部材を構成する。
シリンダヘッド140は、バルブプレート139におけるシリンダボア113側と反対側に固定され、バルブプレート139の吐出孔を覆うことにより高圧室(図示せず)を形成している。また、サクションチューブ(図示せず)は、密閉容器101に固定されると共に冷凍サイクルの低圧側(図示せず)に接続され、冷媒ガスを冷凍サイクルから密閉容器101内に導く。さらに、サクションマフラー142は、バルブプレート139とシリンダヘッド140に挟持されている。
<皮膜>
クランクシャフト108は、基材150、及び、基材150の表面を被覆する皮膜により構成されている。基材150は、ねずみ鋳鉄等の鉄系材料により形成されている。皮膜は、主軸受111及び偏心軸受119の硬さ以上の硬さを有し、例えば、酸化皮膜160により形成されている。例えば、炭酸ガス(二酸化炭素ガス)等の公知の酸化性ガス及び公知の酸化設備を用いて、数百℃(例えば400〜800℃)の範囲内で基材150であるねずみ鋳鉄を酸化することにより、基材150の表面に酸化皮膜160を形成することができる。
図2に示すように、酸化皮膜160は縦方向の寸法(膜厚)は、約3μmである。また、酸化皮膜160は、第一の部分151、第二の部分152及び第三の部分153を有しており、これらの部分はこの順で表面側から基材150側に積層されている。なお、図2において、第一の部分151の上には観察試料を保護するための保護膜(樹脂膜)が形成されている。また、酸化皮膜160の表面に平行な方向を横方向と称し、酸化皮膜160の表面に直交する方向を縦方向と称する。
第一の部分151は、酸化皮膜160の表面を構成し、第二の部分152上に形成されており、微結晶の組織により形成されている。EDS(エネルギー分散型X線分光法)分析及びEELS(電子線エネルギー損失分光法)分析を行った結果、第一の部分151は、最も多く占める成分が三酸化二鉄(Fe2O3)であって、ケイ素(Si)化合物も含んでいた。また、第一の部分151は、結晶密度が異なる2つの部分(第一aの部分151a及び第一bの部分151b)を有している。
第一aの部分151aは、第一bの部分151b上に形成され、酸化皮膜160の表面を構成する。第一aの部分151aの結晶密度は、第一bの部分151bの結晶密度よりも小さい。また、第一aの部分151aは、所々に空隙部158(図2中の黒く見える部分)、及び、針状組織159を含有している。針状組織159は、縦長であって、例えば、横方向の短径側の長さが100nm以下であって、縦方向の径を横方向の径で除した比率(アスペクト比)が1以上且つ10以下である。
第一bの部分151bは、粒径100nm以下からなる微結晶155が敷き詰められた組織である。第一bの部分151bには、第一aの部分151aで見られたような空隙部158及び針状組織159は殆ど見られない。
第二の部分152は、第三の部分153上に形成されており、互いに同じ方向に並ぶ多数の縦長の柱状組織156を含有している。例えば、柱状組織156は、縦方向の径が約100nm以上且つ1μm以下であって、横方向の径が約100nm以上且つ150nm以下であって、アスペクト比が約3以上且つ10以下である。また、EDS及びEELSの分析結果、第二の部分152は、最も多く占める成分が四酸化三鉄(Fe3O4)であって、ケイ素(Si)化合物も含んでいる。
第三の部分153は、基材150上に形成されており、横長の層状組織157を含有している。例えば、層状組織157は、縦方向の径が数十nm以下であって、横方向の径が数百nm程度であり、アスペクト比が0.01以上且つ0.1以下と横方向に長い。また、EDS及びEELSの分析結果、第三の部分153は、最も多く占める成分が四酸化三鉄(Fe3O4)であって、ケイ素(Si)化合物及びケイ素(Si)固溶部を含んでいる。
なお、図2では、酸化皮膜160は、第一の部分151、第二の部分152、及び、第三の部分153により構成されており、この順で積層されている。ただし、酸化皮膜160の構成及び積層順はこれに限定されない。
例えば、酸化皮膜160は、第一の部分151の単層によって構成されていてもよい。酸化皮膜160は、第一の部分151が酸化皮膜160の表面を形成するように第一の部分151及び第二の部分152の二層によって構成されていてもよい。酸化皮膜160は、第一の部分151が酸化皮膜160の表面を形成するように第一の部分151及び第三の部分153の二層によって構成されていてもよい。
また、酸化皮膜160は、第一の部分151、第二の部分152及び第三の部分153以外の組成を含んでいてもよい。酸化皮膜160は、第一の部分151が酸化皮膜160の表面を形成するように第一の部分151、第二の部分152、第一の部分151及び、第三の部分153の四層によって構成されていてもよい。
このような酸化皮膜160の構成及び積層順は諸条件を調整することにより容易に実現することができる。代表的な諸条件としては、酸化皮膜160の製造方法(形成方法)が挙げられる。酸化皮膜160の製造方法には、公知の鉄系材料の酸化方法を好適に用いることができるが、これに限定されない。製造方法における条件は、基材150を形成する鉄系材料の種類、基材150の表面状態(研磨仕上げ等)、求める酸化皮膜160の物性等の条件に応じて、適宜、設定される。
<硬さ>
図3は、クランクシャフト108、主軸受111及び偏心軸受119の深さ方向の硬さを表したグラフである。なお、硬さはビッカース硬さで示している。硬さの計測には、シエンタ・オミクロン株式会社製のナノインデンテーション装置(トライボインデンター)を使用した。
クランクシャフト108の硬さの計測では、圧子をクランクシャフト108の表面に押し込んで荷重を負荷した状態を一定時間維持させるステップを行った。そして、次のステップでは、一旦、荷重を除荷した後、除荷前のステップの荷重よりも高い荷重で圧子をクランクシャフト108の表面に押し込み、再び荷重を負荷した状態を一定時間維持するようにした。このような段階的に荷重を増加させるステップを15回、繰り返した。また、最大荷重が1Nになるように各ステップの荷重を設定した。そして、各ステップ後にクランクシャフト108の酸化皮膜160及び基材150の硬さ及び深さを計測した。
また、主軸受111及び偏心軸110の硬さの計測では、主軸受111及び偏心軸110のそれぞれの一部をファインカッターで切り出した。この一部において、主軸受111及び偏心軸110の内周面に圧子を荷重0.5kgfを負荷して、硬さを計測した。
この結果から、クランクシャフト108の主軸109の硬さは、この相手摺動部材である主軸受111の硬さ以上であった。また、クランクシャフト108の偏心軸110の硬さは、この相手摺動部材である偏心軸受119の硬さ以上であった。
このような硬さは、物質及び材料等の物体において表面又は表面近傍の機械的性質の一つであって、物体に外力が加えられた時の、物体の変形し難さ及び傷つき難さである。硬さにはさまざまな測定手段(定義)及びそれに対応する値(硬さの尺度)が存在する。このため、測定対象に応じた測定手段を用いてもよい。
例えば、測定対象が金属又は非鉄金属である場合、押込み硬さ試験法(例えば、先にあげたナノインデンテーション法や、ビッカースやロックウェル硬さ法等)が測定に用いられる。
また、樹脂膜及びリン酸塩皮膜等の皮膜のような、押込み硬さ試験法による測定が困難な測定対象には、例えば、リング・オン・ディスク方式などの摩耗試験が用いられる。この測定方法の一例では、ディスクの表面に皮膜を施した試験片を形成する。この試験片を油中に浸漬した状態で、リングによって皮膜に荷重1000Nを負荷しながら、回転速度1m/sで1時間、回転させて、皮膜上をリングで摺動する。この皮膜及びリングの表面の摺動面の状態を観察する。この結果、リング及び皮膜のうち摩耗量が相対的に大き方を、硬さが低いと判断してもよい。
<形状>
図4に示すように、主軸受111の内周面には面取り面171及び摺動面(第1摺動面111b)が設けられ、第1摺動面111bにはベルマウス170が設けられている。これらは、主軸受111の軸心111aを中心に周方向の全周に亘って形成されている。主軸受111の軸心111aに平行な方向(軸心方向)において、面取り面171は主軸受111の両端のそれぞれに形成され、ベルマウス170は第1摺動面111bの両端のそれぞれに形成されている。なお、図4では、主軸受111の一端側を示しているが、他端側もこれに同様であるため、説明及び図示を省略する。
面取り面171は、主軸受111の軸心方向において第1摺動面111bよりも主軸受111の端側に配置されており、傾斜面により形成されている。この傾斜面は、主軸受111の端に近いほど内径が大きくなり、一定の角度で傾斜する。面取り面171によって、主軸受111のバリが除去される。
第1摺動面111bは、ベルマウス170と、第1ストレート部111cとを有している。第1ストレート部111cは、主軸受111の軸心111aに平行であって、主軸受111の軸心方向において内径が一定である。
ベルマウス170は、主軸受111の軸心方向の端に向かうにつれて連続的に曲線形状に内径が拡がる曲面部であって、この内径は、第1ストレート部111cから拡径している。ベルマウス170は、面取り面171と隣接するように第1摺動面111bの端部に設けられており、例えば、面取り面171の形成後に主軸受111に形成される。主軸受111の軸心方向において、一端(第1端)170Kは、第1摺動面111bの端に一致し、面取り面171の端に接続している。第1端170Kと反対側の他端(第2端)170Gは、第1ストレート部111cの端に接続している。
ベルマウス170は、主軸受111の軸心111aを通る断面において、第2端170Gから第1端170Kに向かって内径が連続的に大きくなる曲線形状である。この曲線形状は、第1端170Kから第2端170Gまでの領域において対数関数により近似される形状である。ベルマウス170は、第2端170Gから第1端170Kに向かって曲率半径が小さくなり、第2端170G側の曲率半径が第1端170K側の曲率半径よりも大きい形状を有している。
主軸109の外周面には、摺動面(第2摺動面109a)、及び、第2摺動面109aから延長された面(延長面109b)が設けられている。第2摺動面109a及び延長面109bは、主軸109の軸心に平行であって、互いに同一径を有している。この延長面109bの角110Tは、第1摺動面111bと対向せず、ベルマウス170よりも主軸受111の端側の面取り面171に対向している。これにより、主軸109が主軸受111内で傾いても、角110Tが主軸受111の内周面と直接的に接触しない。なお、主軸109に延長面109bが設けられていないとき、主軸109の角110Tは延長面109bの端ではなく、第2摺動面109aの端に設けられる場合もある。
ベルマウス170において、軸心方向の長さをA(以下、ベルマウス幅Aと称す)とし、軸心方向に垂直方向の長さをB(以下、ベルマウス深さBと称す)とする。本実施の形態では、ベルマウス幅Aが3mmであって、ベルマウス深さBが6μmのベルマウス170を形成した。このベルマウス深さBをベルマウス長さAで除した値(比B/A)は2/1000である。
<冷媒圧縮機の動作>
商用電源(図示せず)から供給される電力は、外部のインバータ駆動回路(図示せず)を介して電動要素106に供給される。これにより、電動要素106は複数の運転周波数でインバータ駆動され、電動要素106の回転子105はクランクシャフト108を回転させる。このクランクシャフト108の偏心軸110の偏心運動は、コンロッド117及びピストンピン115によってピストン132の直線運動に変換されて、ピストン132はシリンダボア113内の圧縮室134を往復運動する。このため、サクションチューブを通して密閉容器101内に導かれた冷媒ガスをサクションマフラー142から圧縮室134に吸入し、さらに、冷媒ガスを圧縮室134内で圧縮して密閉容器101から吐出する。
また、クランクシャフト108の回転に伴い、潤滑油103は給油ポンプ120から各摺動面に給油され、摺動面を潤滑する。これと共に、潤滑油103はピストン132とシリンダボア113との間においてはシールを形成し、圧縮室134を密閉している。
<冷媒圧縮機の性能>
図5Aは冷媒圧縮機の入力の時系列経時変化を示し、図5Bは冷媒圧縮機の成績係数COP(Coefficient of Performance)の時系列経時変化を示す。COPは、冷凍冷蔵機器などの冷媒圧縮機のエネルギー消費効率の目安として使われる係数であって、冷凍能力(W)を入力(W)で除した値である。ここでは、運転周波数17Hzにて冷媒圧縮機を低速運転した場合の入力及びCOPを得た。また、従来の冷媒圧縮機は、ベルマウスを有していないものである。
図5Aから、本実施の形態の冷媒圧縮機、及び従来の冷媒圧縮機のいずれも運転開始直後の入力(以下、初期入力と称す)が最も高い。その後の運転時間の経過に伴って入力は徐々に低下し、最終的には殆ど変化がない一定の値(以下、定常入力と称す)を示している。さらに、本実施の形態の冷媒圧縮機は、従来の冷媒圧縮機よりも初期入力が低く、また、初期入力から定常入力へ移行する時間(移行時間)も短い。本実施の形態の冷媒圧縮機の移行時間t1、及び、従来の冷媒圧縮機の移行時間t2について、t1はt2の約1/2である。これにより、図5Bに示すように、本実施の形態の冷媒圧縮機は、従来の冷媒圧縮機よりもCOPが早期に安定し、かつ向上している。
<作用、効果>
この点について、図6を参照しながら、以下のように考察する。図6は、冷媒圧縮機における圧縮荷重の作用図である。本実施の形態に係る冷媒圧縮機は、往復動(レシプロ)式であって、圧縮室134内の圧縮荷重Pよりも密閉容器101内の圧力が低い。一般的に、この圧縮荷重Pが偏心軸110に作用する状態において、偏心軸110に繋がる主軸109を一つの主軸受111で片持ち支持している。
このため、伊藤らの文献(日本機械学会年次大会論文集 Vol.5−1 (2005) P.143)に示されるように、主軸109及び偏心軸110を有するクランクシャフト108は、圧縮荷重Pの影響により主軸受111内で傾いた状態で振れ回っている。圧縮荷重Pの分力P1が、対向する主軸109の摺動面及び主軸受111の上端部の摺動面に作用する。一方、圧縮荷重Pの分力P2が、対向する主軸109の摺動面及び主軸受111の下端部の摺動面に作用する。このように、いわゆる、片当りが発生する。
通常の仕上げ研磨工程を経ても、主軸109及び主軸受111の双方において、摺動面に多数の微小な突起が存在している。従来の冷媒圧縮機の場合では、主軸が主軸受内で傾くと、局所的な接触が生じて、面圧が高くなる。さらに、より低速運転では、主軸の摺動面と主軸受の摺動面と間の油膜厚さhが薄くなったり、気膜が切れたりして、突起による固体接触の発生が頻発する。しかも、主軸の摺動面が耐摩耗性の高い酸化皮膜によって形成されている場合、主軸の表面に点在する硬度が硬い微小な突起が摩耗しにくく、主軸と主軸受との間でなじみ難くなる。よって、固体接触の時間が長くなるため、冷媒圧縮機の初期入力が高くなると共に、初期入力から定常入力への移行時間も長くなる。
これに対し、本実施の形態に係る冷媒圧縮機では、第1摺動面111bの上下端部にベルマウス170を形成している。これにより、主軸109が主軸受111内で傾いても、主軸109と主軸受111との局所的な接触を低減し、応力集中を緩和している。これにより、これらの間の油膜形成が促されるため、冷媒圧縮機の初期入力を低く抑え、かつ初期入力から定常入力への移行時間の短縮化を図ることができる。さらに、主軸109の表面に耐摩耗性の高い皮膜を形成していることによって、耐久性も確保することができる。
すなわち、従来の冷媒圧縮機の場合、主軸109が傾くと、主軸109の摺動面が第1摺動面111bの端部にある角(摺動面の端部が面取りされている場合には、この面取り部分とこれ以外の分との境目の角)に当る。この角と摺動面との接触となって両者間の面圧が高くなり、油膜が薄くなる、若しくは切れた状態となって、突起による固体接触の発生が頻発する。
一方、本実施の形態に係る冷媒圧縮機では、第1摺動面111bにおける端部に曲線形状のベルマウス170が形成されている。これにより、主軸109がベルマウス170に当っても、これらの接触面積が従来の冷媒圧縮機よりも広いため、接触応力集中が緩和されて、両者間の面圧が大幅に低減される。よって、主軸109とベルマウス170との間には油膜が形成されやすく、その結果、初期入力を低く抑え、かつ初期入力から定常入力への移行時間の短縮化を図ることができる。
また、主軸109の角110Tが、ベルマウス170よりも主軸受111の端側に対向している。これにより、主軸109が主軸受111内で傾斜しても、角110Tと第1摺動面111bとが接触するのを回避でき、これらを線接触もしくは面接触に近い状態を維持することができる。したがって、これらの間の油膜の薄膜化及び油膜切れを抑制するため、長期信頼性を確保し、かつ運転初期から入力が低い高効率な冷媒圧縮機を提供することができる。
さらに、ベルマウス170は、第1端170Kから第2端170Gまでの間の領域において対数関数により近似される形状である。また、ベルマウス170は、第2端170G側の曲率半径が第1端170K側の曲率半径よりも大きい。よって、主軸109が主軸受111内で傾斜しても、曲率半径が大きい第2端170G側に主軸109が接するため、両者の接触面積を広くすることができる。したがって、これらの間の面圧の増加を抑制し、これらの間の油膜の薄膜化及び油膜切れを抑制するため、長期信頼性を確保し、かつ運転初期から入力が低い高効率な冷媒圧縮機を提供することができる。
また、酸化皮膜160は、第一の部分151、第二の部分152及び第三の部分153を有している。このため、酸化皮膜160によって主軸109は、硬くて耐摩耗性が向上すると共に、主軸受111に対する攻撃性(相手攻撃性)が低下し、摺動初期のなじみ性も向上する。よって、主軸受111にベルマウス170を設けたことによる効果と相まって、冷媒圧縮機の運転初期から入力が低い高効率な運転が可能となる。
この酸化皮膜160の高い耐摩耗性と、相手攻撃性の低下及び摺動初期のなじみ性の向上については本出願人の特願2016−003910号、特願2016−003909号に詳述している通りである。この理由の一つは以下のように考えられる。
酸化皮膜160は鉄の酸化物であるから、従来のリン酸塩皮膜と比較して化学的に非常に安定である。また、鉄の酸化物の皮膜は、リン酸塩皮膜と比較して高い硬度を有する。それゆえ、摺動面に酸化皮膜160が形成されることで、摩耗粉の発生及び付着等を効果的に防止することができる。この結果、酸化皮膜160そのものの摩耗量の増加を有効に回避でき、高い耐摩耗性を示す。
しかも、第一の部分151には、鉄の酸化物よりも硬度が高いケイ素(Si)化合物が含まれている。それゆえ、酸化皮膜160は、ケイ素(Si)化合物を含有する第一の部分151により表面を構成することにより、より高い耐摩耗性を発揮できる。
一方、酸化皮膜160の表面を構成する第一の部分151は、最も多く占める成分として三酸化二鉄(Fe2O3)を有している。この三酸化二鉄(Fe2O3)の結晶構造は、菱面体晶であって、その下方に位置する四酸化三鉄(Fe3O4)の立方晶の結晶構造、並びに、窒化皮膜の周密六方晶、面心立方晶及び体心正方晶の結晶構造よりも、結晶構造の面において柔軟である。そのため、三酸化二鉄(Fe2O3)を多く含む第一の部分151は、従来のガス窒化皮膜又は一般的な酸化皮膜(四酸化三鉄(Fe3O4)単部分皮膜)と比べて適度な硬さを有しつつ、相手攻撃性が低くて、摺動初期のなじみ性が向上すると考えられる。
つまり、主軸109の表面を構成する酸化皮膜160は、その表面側に比較的硬質ではあるが結晶構造が菱面体であって柔軟な三酸化二鉄(Fe2O3)を多く含む。このため、相手攻撃性が低下し、油膜切れ等を抑制して、摺動初期のなじみ性を向上させる。また、これは、主軸受111にベルマウス170を設けたことによる効果と相まって、冷媒圧縮機の運転初期から入力が低い高効率な運転が可能となる。
さらに、酸化皮膜160の第二の部分152及び第三の部分153は、いずれもケイ素(Si)化合物を含み、第一の部分151と基材150との間に位置する。このため、酸化皮膜160の基材150に対する密着力は強力なものとなる。しかも、第三の部分153は、第二の部分152よりもケイ素の含有量が多い。このように、ケイ素(Si)化合物を含む第二の部分152及び第三の部分153が積層され、ケイ素の含有量がより多い第三の部分153が基材150に接する。これにより、酸化皮膜160の密着力をより一層強化する。その結果、摺動時の負荷に対して、酸化皮膜160の耐力が向上し、酸化皮膜160の耐摩耗性が一段と高いものとなる。そして、仮に酸化皮膜160の表面を形成する第一の部分151が摩耗したとしても、第二の部分152及び第三の部分153が残るため、酸化皮膜160はより優れた耐摩耗性を発揮する。
また、酸化皮膜160の高い耐摩耗性、相手攻撃性の低下及び摺動初期のなじみ性の向上については別の観点から見ると、以下の理由によるものとも考えられる。
すなわち、酸化皮膜160の表面を構成する第一の部分151はケイ素(Si)化合物が含まれている上、緻密な微結晶組織となっている。このため、酸化皮膜160は、高い耐摩耗性を発揮する。
また、第一の部分151は微結晶の組織であって、これら微結晶の間には所々にわずかな空隙部158が形成されている、あるいは、表面に微小な凹凸が生じている。そのため、毛細管現象により潤滑油103が酸化皮膜160の表面(摺動面)に保持され易い。つまり、このようなわずかな空隙部158及び/又は微少な凹凸が存在することで、摺動状態が厳しい状況であっても摺動面に潤滑油103を留めること、いわゆる「保油性」を発揮することが可能となる。その結果、摺動面に油膜が形成され易くなる。
さらに、酸化皮膜160は、第一の部分151の下方の基材150側に柱状組織156(第二の部分152)及び層状組織157(第三の部分153)が存在している。これら組織は、第一の部分151の微結晶155に比べて相対的に硬度が低く、軟らかい。そのため、摺動時には、柱状組織156及び層状組織157が「緩衝材」のように機能する。これにより、摺動時の表面に対する圧力により微結晶155は基材150側に圧縮されるように挙動する。その結果、酸化皮膜160の相手攻撃性は、他の表面処理膜よりも著しく低く、相手材の摺動面の摩耗を有効に抑制する。
なお、「緩衝材」の機能は第二の部分152及び第三の部分153のいずれか一方のみであっても発揮される。このため、第一の部分151の下方には第二の部分152又は第三の部分153が位置していればよい。好ましくは、第一の部分151の下方に第二の部分152及び第三の部分153の両方が位置していればよい。
また、酸化皮膜160は、相手攻撃性が低く、且つ、良好な「保油性」を発揮することができる。このため、酸化皮膜160を備える軸部品は、油膜形成能力が格段に高くなる。この油膜形成能力の高さが、主軸受111にベルマウス170を設けたことによる効果と相まって、冷媒圧縮機の運転初期から入力が低い高効率な運転を可能とする。
<変形例>
上記の構成では、軸部品として主軸109を用い、軸受部品として主軸受111を用いたが、軸部品及び軸受部品はこれに限定されない。例えば、偏心軸110を軸部品とし、偏心軸受119を軸受部品として用いてもよい。このため、主軸109及び偏心軸110の少なくともいずれか一方の軸部品に、これに対向する軸受部品の硬さ以上の硬さを有する皮膜が表面に設けられてもよい。また、主軸受111及び偏心軸受119の少なくともいずれかに一方の軸受部品にベルマウス170を形成してもよい。これにより、偏心軸110と偏心軸受119との間においても、薄膜化及び油膜切れを抑制するため、より効果的に初期入力を低く抑え、かつ初期入力から定常入力への移行時間の短縮化を図ることができ、さらには耐久性も確保することが可能となる。
また、上記全ての構成では、軸部品の表面に酸化皮膜160を備えたが、軸部品の表面の皮膜は軸受部品の硬さ以上の硬さを有するものであれば、これに限定されない。例えば、軸部品の皮膜は、例えば、化合物層、機械的強度改善層及び被覆法により形成した層等が挙げられる。
すなわち、軸部品の基材150が鉄系である場合、皮膜は、一般的な焼入れ方法、並びに、表層に炭素又は窒素等を浸み込ませる方法で形成した皮膜であってもよい。また、皮膜は、水蒸気による酸化処理、及び、水酸化ナトリウムの水溶液に浸漬させた酸化処理によって形成された皮膜であってもよい。さらに、皮膜は、冷間加工、加工硬化、固溶強化、析出強化、分散強化及び結晶粒微細化によって形成され、転位のすべり運動を抑制させて基材150の強化を図った層(機械的強度改善層)であってもよい。さらに、皮膜は、メッキ、溶射、PVD、CVDの被覆法により形成した層であってもよい。
なお、上記全ての構成では、軸部品の基材150に鉄系材料を用いたが、基材150は、軸受部品と同等以上の硬さを有する皮膜を形成できるものであれば、鉄系以外の材料を用いることができる。
また、上記全ての構成では、ベルマウス170は第1摺動面111bの両端のそれぞれに設けられていたが、第1摺動面111bの両端のいずれか一方に設けられていてもよい。
また、上記全ての構成では、ベルマウス170の比B/Aは2/1000としたが、これに限定されない。比B/Aは、冷媒圧縮機の仕様及び使用環境等の条件に応じて設定でき、例えば、1/5000以上且つ1/50以下の範囲に設定される。なお、比B/Aが1/5000未満の場合、油膜の薄膜化及び油膜切れによって初期入力が高くなる可能性がある。一方、比B/Aが1/50よりも大きくなると、クランクシャフト108の振れ回りが過剰となり、運転時の振動や騒音が大きくなる可能性がある。
また、上記全ての構成では、第1摺動面111bにおける端部にベルマウス170を設けたが、配置はこれに限定されない。例えば、ベルマウス170を面取り面171と兼用させてもよい。この場合、ベルマウス170の形成によってバリ取りするため、面取り加工工程を省くことも可能である。
また、上記全ての構成では、低速運転(例えば、運転周波数17Hz)によって冷媒圧縮機が駆動される場合を例にしてその効果を説明したが、冷媒圧縮機の運転はこれに限定されない。商用回転数による運転、及び、回転数が増加する高速運転が行われた場合であっても、冷媒圧縮機は低速運転された場合と同様に、性能及び信頼性を向上させることができる。
また、上記全ての構成では、往復動式(レシプロ)の冷媒圧縮機を例示したが、冷媒圧縮機は、回転式、スクロール式及び振動式等の他の形式のものであってもよい。また、軸受部品の硬さ以上の硬さの皮膜を軸部品に備えた構成は、冷媒圧縮機に限定されず、摺動面を有する機器においても同様に用いられ、また、これにより同様の効果が得られる。この摺動面を有する機器としては、例えば、ポンプ及びモータ等であってもよい。
(実施の形態2)
<冷媒圧縮機の構成>
図7は、実施の形態2に係る冷凍装置の模式図を示す。ここでは、冷凍装置の基本構成の概略について説明する。冷凍装置は冷媒圧縮機200を備え、冷媒圧縮機200は、電動要素106によって駆動される往復動式の圧縮要素207を有している。
圧縮要素207は、クランクシャフト208、シリンダブロック212及びピストン132を有している。このクランクシャフト208、シリンダブロック212及びピストン132は、クランクシャフト108、シリンダブロック112及びピストン132とそれぞれ同様であるため、その説明を省略する。
クランクシャフト208は主軸209及び偏心軸210を有している。主軸209及び偏心軸210は、クラウニング270が設けられている点を除いて、主軸109及び偏心軸110とそれぞれ同様である。主軸受211及び偏心軸受219は、ベルマウス170が設けられていない点を除いて、主軸受111及び偏心軸受119とそれぞれ同様である。
図8に示すように、クランクシャフト208の表面に酸化皮膜160が形成されている。クランクシャフト208の主軸209の酸化皮膜160は、この相手摺動部材である主軸受211よりも硬く、クランクシャフト208の偏心軸210の酸化皮膜160は、この相手摺動部材である偏心軸受219よりも硬い。
図9に示すように、主軸209の外周面に第2摺動面209b及び径小部209Uが設けられ、第2摺動面209bにクラウニング270が設けられている。これらは、主軸209の軸心209aを中心に周方向の周方向に亘って形成されている。径小部209Uは主軸209の両端のそれぞれに形成され、クラウニング270は第2摺動面209bの両端のそれぞれに形成されている。なお、図9では、主軸209の一端側を示しているが、他端側もこれに同様であるため、説明及び図示を省略する。
径小部209Uは、第2摺動面209bよりも主軸209の端側に設けられている。径小部209Uは、主軸209の軸心209aに平行な面であって、外径が第2摺動面209bの径よりも外径が小さく、主軸209の軸心209aに平行な方向(軸心方向)において径が一定である。
第2摺動面209bは、クラウニング270と、これ以外の面(第2ストレート部209c)とを有している。第2ストレート部209cは、主軸209の軸心209aに平行であって、主軸209の軸心方向において外径が一定である。
クラウニング270は、主軸209の軸心方向の端に向かうにつれて連続的に曲線形状に外径が縮まる曲面部であって、この外径は、第2ストレート部209cから縮径している。クラウニング270は、径小部209Uと隣接するように第2摺動面209bの端部に設けられており、主軸受211の第1摺動面211aに対向して配置されている。主軸209の軸心209aに平行な方向(軸心方向)において、クラウニング270の一端(第1端270K)は、第1摺動面211aの端と一致し、径小部209Uの端と接続している。第1端270Kと反対側の他端(第2端270G)は、第2ストレート部209cの端と接続している。
クラウニング270は、主軸209の軸心209aを通る断面において、第2端270Gから第1端270Kに向かって径が連続的に縮小する曲線形状である。この曲線形状は、第1端270Kから第2端270Gまでの領域で対数関数により近似される形状である。クラウニング270は、第2端270G側から第1端270K側に向かって曲率半径が小さくなり、第2端270G側の曲率半径が第1端270K側の曲率半径よりも大きい形状を有している。
主軸受211の内周面には、第1摺動面211a及び面取り面が設けられている。第1摺動面211aは、主軸受211の軸心に平行な面である。面取り面は、第1摺動面211aよりも主軸受211の端側に設けられており、端に近づくほど内径が大きくなる傾斜面により形成されている。
主軸受211の第1摺動面211aの角211Tは、クラウニング270よりも主軸209の端側(図9の例では、第1端270Kよりもクラウニング270の外側(上側)の径小部209U)に対向するように配置されている。これにより、主軸209が主軸受211内で傾いても、角211Tが、クラウニング270と直接接触する事を回避できる。なお、主軸受211に、第1摺動面211aと同一径を有し且つ第1摺動面211aから延長された延長面が設けられていてもよい。この場合、主軸受211の角211Tは、第1摺動面211aの端でなく、延長面の端に設けられてもよい。
図9に示すように、クラウニング270において、主軸209の軸心方向における長さをC(以下、クラウニング幅Cと称す)とし、軸心方向に垂直な方向における長さをD(以下、クラウニング深さDと称す)とする。本実施の形態では、クラウニング幅Cが3mmであって、ベルマウス深さDが8μmのクラウニング270を形成した。このクラウニング深さDをクラウニング長さCで除した値(比D/C)は8/3000である。
<冷媒圧縮機の性能>
このような冷媒圧縮機200を運転周波数17Hzにてインバータ駆動による低速運転した場合の入力を得た。また、従来の冷媒圧縮機は、主軸受111にベルマウス170を設けていないものである。
この結果、冷媒圧縮機200及び従来の冷媒圧縮機のいずれも初期入力が最も高い。その後の運転時間の経過に伴って入力は徐々に低下し、最終的には定常入力を示した。さらに、冷媒圧縮機200は、従来の冷媒圧縮機よりも初期入力が低く、また、初期入力から定常入力への移行時間も短い。
この点について、以下のように考察する。冷媒圧縮機200では、主軸209が主軸受211内で傾いても、クラウニング270によって主軸209と主軸受211との局所的な接触を緩和して、この間の油膜の薄膜化及び油膜切れを低減している。このため、初期入力を低く抑え、かつ初期入力から定常入力への移行時間の短縮化を図ることができる。さらに、軸部品の表面に耐摩耗性の高い皮膜を形成していることによって、耐久性も確保できる。
また、クラウニング270が曲線形状であるため、このクラウニング270と主軸受211とが局所接触ではなく面接触に近い状態になる。これにより、接触応力集中が緩和され、両者間の面圧は大幅に低減するため、この間の油膜の薄膜化及び油膜切れが低減される。この結果、初期入力を低く抑え、かつ初期入力から定常入力に移行する時間の短縮化を図ることができる。
さらに、主軸受211の角211Tは、クラウニング270の範囲外に対向するため、主軸209が主軸受211内で傾斜しても、クラウニング270と直接、接触しない。このため、主軸209と主軸受211とは線接触もしくは面接触に近い状態を維持し、この間の油膜の薄膜化及び油膜切れを低減できる。したがって、長期信頼性を確保し、かつ運転初期から入力が低い高効率な冷媒圧縮機とすることができる。
また、クラウニング270は、第1端270Kから第2端270Gまでにおいて対数関数でおよそ近似される形状であって、第2端270G側の曲率半径が第1端270K側の曲率半径より大きい。このため、主軸209が主軸受211内で傾斜しても、第2端270G側のクラウニング270が主軸受211に接することにより、両者の接触面積を広くすることができる。したがって、主軸209と主軸受211との間の面圧増加をより効果的に抑制でき、この間の油膜の薄膜化及び油膜切れを低減できる。したがって、長期信頼性を確保し、かつ運転初期から入力が低い高効率な冷媒圧縮機を提供することができる。
<変形例>
上記の構成では、クラウニング270は、第2摺動面209bの両端のそれぞれに設けられていたが、第2摺動面209bの両端のいずれか一方に設けられていてもよい。
また、上記全ての構成では、主軸209と共に、偏心軸210にも硬い皮膜及びクラウニング270を設けてもよい。また、主軸209に代えて、偏心軸210に硬い皮膜及びクラウニング270を設けてもよい。つまり、軸部品(主軸209、偏心軸210)に、これに対向する軸受部品(主軸受211、偏心軸受219)の硬さ以上の硬さを有する皮膜、及び、クラウニング270を設ければよい。これにより、高効率な冷媒圧縮機を提供することができる。
また、上記全構成では、クラウニング270の比D/Cを8/3000に設定したが、これに限定されない。比D/Cは、冷媒圧縮機200の仕様及び使用環境に応じて、例えば、1/5000以上1/50以下の範囲に設定されてもよい。これにより、上記と同様な効果が得られる。なお、比D/Cが1/5000未満の場合、軸部品と軸受部品の接触状態が従来の冷媒圧縮機と大きく変わらず、冷媒圧縮機の初期入力が高くなる可能性がある。一方、比D/Cが1/50よりも大きい場合、軸部品の振れ回りが過剰となり、振動及び騒音が大きくなる可能性がある。
また、上記全ての構成では、低速運転(例えば、運転周波数17Hz)によって冷媒圧縮機が駆動される場合を例にしてその効果を説明したが、冷媒圧縮機の運転はこれに限定されない。商用回転数による運転、及び、回転数が増加する高速運転が行われた場合であっても、冷媒圧縮機は低速運転された場合と同様に、性能及び信頼性を向上させることができる。
また、上記全ての構成では、往復動式(レシプロ)の冷媒圧縮機を例示したが、冷媒圧縮機は、回転式、スクロール式及び振動式等の他の形式のものであってもよい。また、軸受部品の硬さ以上の硬さの皮膜を軸部品に備えた構成は、冷媒圧縮機に限定されず、摺動面を有する機器においても同様に用いられ、また、これにより同様の効果が得られる。この摺動面を有する機器としては、例えば、ポンプ及びモータ等であってもよい。
(実施の形態3)
図10は、上記実施の形態1に係る冷媒圧縮機100又は実施の形態2に係る冷媒圧縮機200を冷媒圧縮機300として用いた冷凍装置を示す。ここでは、冷凍装置の基本構成の概略についてのみ説明する。
図10において、冷凍装置は、本体301、区画壁307及び冷媒回路309を備えている。本体301は、一面が開口した断熱性の箱体、及び、その開口を開閉する扉体を有している。区画壁307は、本体301の内部を、物品の貯蔵空間303と機械室305とに区画する。冷媒回路309は、冷媒圧縮機300、放熱器313、減圧装置315及び吸熱器317を配管によって環状に接続した構成であって、貯蔵空間303内を冷却する。
吸熱器317は、送風機(図示せず)を具備した貯蔵空間303内に配置されている。吸熱器317の冷却空気は、矢印で示すように、送風機によって貯蔵空間303内を循環するように撹拌され、貯蔵空間303内を冷却する。
以上の構成からなる冷凍装置は、冷媒圧縮機300として上記実施の形態1又は実施の形態2に係る冷媒圧縮機100、200を備えている。これにより、冷媒圧縮機300の軸部品(主軸209、偏心軸210)に、これに対向する軸受部品(主軸受211、偏心軸受219)の硬さ以上の硬さを有する皮膜を有している。また、軸受部品にベルマウス170を設けている、又は、軸部品にクラウニング270を設けている。これにより、軸部品と軸受部品と間の耐摩耗性を向上できると共に、これらの間の局所的な接触摺動を緩和できる。よって、冷凍装置の消費電力が低減でき、省エネルギー化を実現し、かつ信頼性を向上させることができる。
(実施の形態4)
<冷媒圧縮機の構成>
実施の形態4に係る冷媒圧縮機1000は、図11に示すように、密閉容器1101を備え、密閉容器1101に冷媒ガス1102が充填され、底部に潤滑油1103が貯留されている。また、密閉容器1101は電動要素1106及び圧縮要素1107を収容し、電動要素1106は固定子1104及び回転子1105を有する。圧縮要素1107は、電動要素1106によって駆動されて冷媒を圧縮し、例えば、往復式圧縮機構であって、クランクシャフト1108、シリンダブロック1109及びピストン1110を有している。
クランクシャフト1108は主軸1111、偏心軸1112及びフランジ1108aを有している。主軸1111は、円柱形状の軸部品であって、下部が回転子1105に圧入固定されており、下端には潤滑油1103に連通する給油ポンプ(図示せず)が設けられている。偏心軸1112は、円柱形状の軸部品であって、主軸109に対し偏心して配置されている。フランジ1108aは、主軸1111と偏心軸1112との間においてこれらを連結している。
シリンダブロック1109は、例えば、鋳鉄等の鉄系材料からなり、シリンダボア1114、主軸受1115及びスラスト面1136を有している。このシリンダボア1114は、円筒形であって、内部空間を有し、端面がバルブプレート1119で封止されている。スラスト面1136は、主軸受1115の軸心から直交する方向に延びる環状面である。
主軸受1115は、円筒形状の軸受部品であって、内周面によって主軸1111を軸支しており、主軸1111のラジアル荷重を支えるジャーナル軸受である。このため、主軸受1115の内周面と主軸1111の外周面とは対向し、主軸受1115の内周面に対して主軸1111が摺動する。このように主軸受1115の内周面及び主軸1111の外周面において互いに摺動する部分が摺動面であって、この摺動面を有する主軸受1115及び主軸1111は一対の摺動部材を構成する。
ピストン1110は、鉄系の材料からなり、一端部がシリンダボア1114の内部空間に往復可動に挿入されている。これにより、シリンダボア1114、バルブプレート1119及びピストン1110により囲まれた圧縮室が形成される。また、ピストン132の他端部は、ピストンピン1117を介して連結手段(コンロッド1118)により偏心軸1112と連結されている。さらに、主軸1111はコンロッド1118及び偏心軸1112を介してピストン132に連結されている。
シリンダヘッド1120は、バルブプレート1119のシリンダボア1114側と反対側に固定され、バルブプレート1119の吐出孔を覆うことにより高圧室(図示せず)を形成している。サクションチューブ1113は、密閉容器1101に固定されると共に冷凍サイクルの低圧側(図示せず)に接続され、冷媒ガス1102を密閉容器1101内に導く。サクションマフラー1121は、バルブプレート1119とシリンダヘッド1120に挟持されている。
<皮膜>
クランクシャフト1108は、図12に示すように、基材1122、及び、基材1122の表面を被覆する皮膜により構成されている。基材1122は、ねずみ鋳鉄等の鉄系材料により形成されている。皮膜は、主軸受111及び偏心軸受119の硬さ以上の硬さを有し、例えば、酸化皮膜1123により形成されている。例えば、炭酸ガス(二酸化炭素ガス)等の公知の酸化性ガス及び公知の酸化設備を用いて、数百℃(例えば400〜800℃)の範囲内で基材1122であるねずみ鋳鉄を酸化することにより、基材1122の表面に酸化皮膜1123を形成することができる。
図12の例では、酸化皮膜1123は縦方向の寸法(膜厚)は、約3μmである。また、酸化皮膜1123は、第一の部分1125、第二の部分1127及び第三の部分1129を有しており、これらの部分はこの順で表面側から基材1122側に積層されている。なお、図12において、第一の部分151の上には観察試料を保護するための保護膜(樹脂膜)が形成されている。また、酸化皮膜1123の表面に平行な方向を横方向と称し、酸化皮膜160の表面に直交する方向を縦方向と称する。
第一の部分1125は、酸化皮膜1123の表面を構成し、第二の部分1127上に形成されており、微結晶の組織により形成されている。EDS(エネルギー分散型X線分光法)分析及びEELS(電子線エネルギー損失分光法)分析を行った結果、第一の部分151は、最も多く占める成分が三酸化二鉄(Fe2O3)であって、ケイ素(Si)化合物も含んでいた。また、第一の部分1125は、結晶密度が異なる2つの部分(第一aの部分1125a及び第一bの部分1125b)を有している。
第一aの部分1125aは、第一bの部分1125b上に形成され、酸化皮膜1123の表面を構成する。第一aの部分1125aの結晶密度は、第一bの部分1125bの結晶密度よりも小さい。また、第一aの部分1125aは、所々に空隙部1130(図12中の黒く見える部分)、及び、針状組織1131を含有している。針状組織1131は、縦長であって、例えば、横方向の短径側の長さが100nm以下であって、縦方向の径を横方向の径で除した比率(アスペクト比)が1以上10以下である。
第一bの部分1125bは、粒径100nm以下からなる微結晶1124が敷き詰められた組織である。第一bの部分1125bには、第一aの部分1125aで見られたような空隙部1130及び針状組織1131は殆ど見られない。
第二の部分1127は、第三の部分1129上に形成されており、互いに同じ方向に並ぶ多数の縦長の柱状組織1126を含有している。例えば、柱状組織1126は、縦方向の径が約100nm以上1μm以下であって、横方向の径が約100nm以上150nm以下であって、アスペクト比が約3以上10以下である。また、EDS及びEELSの分析結果、第二の部分152は、最も多く占める成分が四酸化三鉄(Fe3O4)であって、ケイ素(Si)化合物も含んでいる。
第三の部分1129は、基材1122上に形成されており、横長の層状組織1128を含有している。例えば、層状組織1128は、縦方向の径が数十nm以下であって、横方向の径が数百nm程度であり、アスペクト比が0.01以上0.1以下と横方向に長い。また、EDS及びEELSの分析結果、第三の部分1129は、最も多く占める成分が四酸化三鉄(Fe3O4)であって、ケイ素(Si)化合物及びケイ素(Si)固溶部を含んでいる。
なお、図12では、酸化皮膜1123は、第一の部分1125、第二の部分1127、及び、第三の部分1129により構成されており、この順で積層されている。ただし、酸化皮膜1123の構成及び積層順はこれに限定されない。
例えば、酸化皮膜1123は、第一の部分1125の単層によって構成されていてもよい。酸化皮膜1123は、第一の部分1125が酸化皮膜1123の表面を形成するように第一の部分1125及び第二の部分1127の二層によって構成されていてもよい。酸化皮膜1123は、第一の部分1125が酸化皮膜1123の表面を形成するように第一の部分1125及び第三の部分1129の二層によって構成されていてもよい。
また、酸化皮膜1123は、第一の部分1125、第二の部分1127及び第三の部分1129以外の組成を含んでいてもよい。酸化皮膜1123は、第一の部分1125が酸化皮膜1123の表面を形成するように第一の部分1125、第二の部分1127、第一の部分1125及び、第三の部分1129の四層によって構成されていてもよい。
このような酸化皮膜1123の構成及び積層順は諸条件を調整することにより容易に実現することができる。代表的な諸条件としては、酸化皮膜1123の製造方法(形成方法)が挙げられる。酸化皮膜1123の製造方法には、公知の鉄系材料の酸化方法を好適に用いることができるが、これに限定されない。製造方法における条件は、基材1122を形成する鉄系材料の種類、基材1122の表面状態(研磨仕上げ等)、求める酸化皮膜1123の物性等の条件に応じて、適宜、設定される。
<硬さ>
図13は、主軸1111及び主軸受1115の深さ方向の硬さを表したグラフである。なお、硬さはビッカース硬さで示している。硬さの計測には、シエンタ・オミクロン株式会社製のナノインデンテーション装置(トライボインデンター)を使用した。
主軸1111の硬さの計測では、圧子を主軸1111の表面に押し込んで荷重を負荷した状態を一定時間維持させるステップを行った。そして、次のステップでは、一旦、荷重を除荷した後、除荷前のステップの荷重よりも高い荷重で圧子を主軸1111の表面に押し込み、再び荷重を負荷した状態を一定時間維持するようにした。このような段階的に荷重を増加させるステップを15回、繰り返した。また、最大荷重が1Nになるように各ステップの荷重を設定した。そして、各ステップ後に主軸1111の酸化皮膜1123及び基材1122の硬さ及び深さを計測した。
また、主軸受1115の硬さの計測では、主軸受1115の一部をファインカッターで切り出した。この一部において、主軸受1115の内周面に圧子を荷重0.5kgfを負荷して、硬さを計測した。
この結果から、主軸1111の酸化皮膜1123の硬さは、この相手摺動部材である主軸受1115の硬さ以上であった。
このような硬さは、物質及び材料等の物体において表面又は表面近傍の機械的性質の一つであって、物体に外力が加えられた時の、物体の変形し難さ及び傷つき難さである。硬さにはさまざまな測定手段(定義)及びそれに対応する値(硬さの尺度)が存在する。このため、測定対象に応じた測定手段を用いてもよい。
例えば、測定対象が金属又は非鉄金属である場合、押込み硬さ試験法(例えば、先にあげたナノインデンテーション法や、ビッカースやロックウェル硬さ法等)が測定に用いられる。
また、樹脂膜及びリン酸塩皮膜等の皮膜のような、押込み硬さ試験法による測定が困難な測定対象には、例えば、リング・オン・ディスク方式などの摩耗試験が用いられる。この測定方法の一例では、ディスクの表面に皮膜を施した試験片を形成する。この試験片を油中に浸漬した状態で、リング によって皮膜に荷重1000Nを負荷しながら、回転速度1m/sで1時間、回転させて、皮膜上をリングで摺動する。この皮膜及びリングの表面の摺動面の状態を観察する。この結果、リング及び皮膜のうち摩耗量が相対的に大き方を、硬さが低いと判断してもよい。
<剛性>
図14に示すように、主軸受1115は、略円筒形状であって、一端部(上端部1115a)、他端部(下端部1115b)及び中間部1137を有している。中間部1137は、上端部1115aと下端部1115bとの間であって、軸方向において径方向の寸法(厚み)が一定の部分である。上端部1115a、下端部1115b及び中間部1137は、軸方向において、内周面が連続しており、主軸受1115の軸心に平行に設けられている。
上端部1115aは、円筒形状であって、この外周縁から径方向にスラスト面1136が拡がる。このスラスト面1136とクランクシャフト1108のフランジ1108aとの間にはスラストボールベアリング1133が配置されている。スラストボールベアリング1133は、円筒形状であって、上端部1115aを取り囲むように配置され、クランクシャフト1108の鉛直方向の荷重を支持している。
上端部1115aは、スラスト面1136よりも主軸受1115の軸心側に配置され、スラスト面1136から上方へ突出している。上端部1115aは、スラストボールベアリング1133の内側に挿入されており、主軸受1115の軸方向寸法(高さ)がスラストボールベアリング1133の高さよりも低い。
上端部1115aにはスリット溝1134が設けられている。スリット溝1134は、環状であって、上端部1115aと同軸になるように設けられている。これによりスリット溝1134は、上端部1115aを径方向に2分している。このため、上端部1115aは、スリット溝1134よりも外側(軸心側の反対側)の第1端部1132とスリット溝1134よりも内側(軸心側)の第2端部1135とに分かれる。第1端部1132及び第2端部1135は、円筒形状であって、同軸に配置されている。径方向の寸法(厚み)が周方向の全周に亘って均一である。第1端部1132は第2端部1135に対し相対的に大径であって、第2端部1135は第1端部1132に対し相対的に小径である。
第2端部1135は、径方向の寸法(厚み)が第1端部1132及び中間部1137の厚みよりも薄い、薄肉部である。これにより、第2端部1135は中間部1137よりも剛性が低い、低剛性部である。
下端部1115bは、円筒形状であって、厚みが周方向の全周に亘って均一である。また、下端部1115bは、段差部によって外径が縮径されており、径方向の寸法(厚み)が中間部1137の厚みよりも薄い、薄肉部である。これにより、下端部1115bは中間部1137よりも剛性が低い、低剛性部である。
このように、主軸受1115の両端部のそれぞれは、第2端部1135及び下端部1115bによって、薄肉部であって、低剛性部である。第2端部1135及び下端部1115bは、この内側に挿入される主軸1111を内周面によって支持している。
<冷媒圧縮機の動作>
商用電源(図示せず)から供給される電力は、外部のインバータ駆動回路(図示せず)を介して電動要素1106に供給される。これにより、電動要素1106は複数の運転周波数でインバータ駆動され、電動要素1106の回転子1105はクランクシャフト1108を回転させる。このクランクシャフト1108の偏心軸1112の偏心運動は、コンロッド1118及びピストンピン1117によってピストン1110の直線運動に変換されて、ピストン1110はシリンダボア1114内の圧縮室1116を往復運動する。このため、サクションチューブ1113を通して密閉容器1101内に導かれた冷媒ガスをサクションマフラー1121から圧縮室1116に吸入し、さらに、冷媒ガスを圧縮室1116内で圧縮して密閉容器1101から吐出する。
また、クランクシャフト1108の回転に伴い、潤滑油1103は給油ポンプから各摺動面に給油され、摺動面を潤滑する。これと共に、潤滑油1103はピストン1110とシリンダボア1114との間においてはシールを形成し、圧縮室1116を密閉している。
<作用、効果>
このような冷媒圧縮機において、近年の高効率化のため、潤滑油1103の低粘度化、及び、摺動部材の摺動長の短縮化が図られている。このため、摺動条件が過酷化し、摺動部材間の油膜の薄膜化及び油膜切れが生じやすくなっている。
また、主軸1111及び主軸受1115の双方には多数の微小な突起が存在している。従来の冷媒圧縮機の構成では、主軸が主軸受内で傾くと、主軸の上端部及び下端部と主軸受との間において局所的な接触が生じて面圧が高くなる。さらに、インバータ駆動によって冷媒圧縮機が低速(例えば20Hz未満)で運転されると、主軸と主軸受との間の油膜が薄くなり、突起による固体接触の発生が頻発する。しかも、主軸の表面に耐摩耗性の高い酸化皮膜が形成されていると、表面の突起が摩耗しにくく、主軸と主軸受との間でなじみ難くなる。この結果、固体接触する時間が長くなると考えられる。故に、初期入力が高く、加えて、初期入力から定常入力に移行する時間も長くなると考えられる。
これに対し、本実施の形態に係る冷媒圧縮機では、主軸受1115の第2端部1135及び下端部1115bの剛性を中間部1137の剛性より低くしている。これにより、主軸1111により主軸受1115に荷重が付加されると、第2端部1135及び下端部1115bが弾性変形して、主軸1111と主軸受1115との間の局所的な接触が緩和され、これらの間の油膜の薄膜化及び油膜切れが防がれる。よって、低速運転時(例えば20Hz未満)においても初期入力を低く抑え、かつ初期入力から定常入力への移行時間の短縮化が図られる。さらに、主軸1111の表面に耐摩耗性の高い酸化皮膜1123を形成していることによって、冷媒圧縮機の耐久性も確保することができる。
また、第2端部1135が変形しても、この変形がスリット溝1134内で行われる。これにより、第2端部1135との間にスリット溝1134を挟んで配置される第1端部1132には、第2端部1135の変形による荷重が作用しない。よって、第1端部1132が変形しないため、第1端部1132に支持されるスラストボールベアリング1133の位置ずれ及び変形を防止することができる。
さらに、スリット溝1134により、低剛性部の第2端部1135、及び、スラストボールベアリング1133を支持する第1端部1132を形成している。このように、部品点数を増やすことないため、コスト上昇を抑制することができる。
また、酸化皮膜1123は、第一の部分1125、第二の部分1127及び第三の部分1129を有している。このような酸化皮膜1123によって主軸1111は、硬くて耐摩耗性が向上すると共に、主軸受1115に対する攻撃性(相手攻撃性)が低下し、摺動初期のなじみ性も向上する。よって、主軸受1115の端部の剛性を低くしたことによる効果と相まって、冷媒圧縮機の運転初期から入力が低い高効率な運転が可能となる。
この酸化皮膜1123の高い耐摩耗性と、相手攻撃性の低下及び摺動初期のなじみ性の向上については本出願人の特願2016−003910号、特願2016−003909号に詳述している通りである。この理由の一つは以下のように考えられる。
酸化皮膜1123は鉄の酸化物であるから、従来のリン酸塩皮膜と比較して化学的に非常に安定である。また、鉄の酸化物の皮膜は、リン酸塩皮膜と比較して高い硬度を有する。それゆえ、摺動面に酸化皮膜1123が形成されることで、摩耗粉の発生及び付着等を効果的に防止することができる。この結果、酸化皮膜1123そのものの摩耗量の増加を有効に回避でき、高い耐摩耗性を示す。
しかも、第一の部分1125には、鉄の酸化物よりも硬度が高いケイ素(Si)化合物が含まれている。それゆえ、酸化皮膜1123は、ケイ素(Si)化合物を含有する第一の部分1125により表面を構成することにより、より高い耐摩耗性を発揮できる。
一方、酸化皮膜1123の表面を構成する第一の部分1125は、最も多く占める成分として三酸化二鉄(Fe2O3)を有している。この三酸化二鉄(Fe2O3)の結晶構造は、菱面体晶であって、その下方に位置する四酸化三鉄(Fe3O4)の立方晶の結晶構造、並びに、窒化皮膜の周密六方晶、面心立方晶及び体心正方晶の結晶構造よりも、結晶構造の面において柔軟である。そのため、三酸化二鉄(Fe2O3)を多く含む第一の部分1125は、従来のガス窒化皮膜又は一般的な酸化皮膜(四酸化三鉄(Fe3O4)単部分皮膜)と比べて適度な硬さを有しつつ、相手攻撃性が低くて、摺動初期のなじみ性が向上すると考えられる。
つまり、主軸1111の表面を構成する酸化皮膜1123は、その表面側に比較的硬質ではあるが結晶構造が菱面体であって柔軟な三酸化二鉄(Fe2O3)を多く含む。このため、相手攻撃性が低下し、油膜切れ等を抑制して、摺動初期のなじみ性を向上させる。また、これは、主軸受111にベルマウス170を設けたことによる効果と相まって、冷媒圧縮機の運転初期から入力が低い高効率な運転が可能となる。
さらに、酸化皮膜1123の第二の部分1127及び第三の部分1129は、いずれもケイ素(Si)化合物を含み、第一の部分1125と基材1122との間に位置する。このため、酸化皮膜1123の基材1122に対する密着力は強力なものとなる。しかも、第三の部分1129は、第二の部分1127よりもケイ素の含有量が多い。このように、ケイ素(Si)化合物を含む第二の部分1127及び第三の部分1129が積層され、ケイ素の含有量がより多い第三の部分153が基材150に接する。これにより、酸化皮膜1123の密着力をより一層強化する。その結果、摺動時の負荷に対して、酸化皮膜1123の耐力が向上し、酸化皮膜1123の耐摩耗性が一段と高いものとなる。そして、仮に酸化皮膜1123の表面を形成する第一の部分1125が摩耗したとしても、第二の部分1127及び第三の部分1129が残るため、酸化皮膜1123はより優れた耐摩耗性を発揮する。
また、酸化皮膜1123の高い耐摩耗性、相手攻撃性の低下及び摺動初期のなじみ性の向上については別の観点から見ると、以下の理由によるものとも考えられる。
すなわち、酸化皮膜1123の表面を構成する第一の部分1125はケイ素(Si)化合物が含まれている上、緻密な微結晶組織となっている。このため、酸化皮膜1123は、高い耐摩耗性を発揮する。
また、第一の部分1125は微結晶の組織であって、これら微結晶の間には所々にわずかな空隙部1130が形成されている、あるいは、表面に微小な凹凸が生じている。そのため、毛細管現象により潤滑油1103が酸化皮膜1123の表面(摺動面)に保持され易い。つまり、このようなわずかな空隙部1130及び/又は微少な凹凸が存在することで、摺動状態が厳しい状況であっても摺動面に潤滑油1103を留めること、いわゆる「保油性」を発揮することが可能となる。その結果、摺動面に油膜が形成され易くなる。
さらに、酸化皮膜1123は、第一の部分1125の下方の基材1122側に柱状組織1126(第二の部分1127)及び層状組織1128(第三の部分1129)が存在している。これら組織は、第一の部分1125の微結晶1124に比べて相対的に硬度が低く、軟らかい。そのため、摺動時には、柱状組織1126及び層状組織1128が「緩衝材」のように機能する。これにより、摺動時の表面に対する圧力により微結晶1124は基材1122側に圧縮されるように挙動する。その結果、酸化皮膜1123の相手攻撃性は、他の表面処理膜よりも著しく低く、相手材の摺動面の摩耗を有効に抑制する。
なお、「緩衝材」の機能は第二の部分1127及び第三の部分1129のいずれか一方のみであっても発揮される。このため、第一の部分1125の下方には第二の部分1127又は第三の部分1129が位置していればよい。好ましくは、第一の部分1125の下方に第二の部分1127及び第三の部分1129の両方が位置していればよい。
また、酸化皮膜1123は、相手攻撃性が低く、且つ、良好な「保油性」を発揮することができる。このため、酸化皮膜1123を備える軸部品は、油膜形成能力が格段に高くなる。この油膜形成能力の高さが、主軸受1115の端部の剛性を低くしたことによる効果と相まって、冷媒圧縮機の運転初期から入力が低い高効率な運転を可能とする。
<変形例>
上記構成では、主軸受1115の両端部のそれぞれに低剛性部の第2端部1135及び下端部1115bを形成したが、主軸受1115の両端部のいずれか一方の端部に低剛性部を形成してもよい。つまり、主軸受1115は第2端部1135又は下端部1115bを有していてもよい。
上記全構成では、スリット溝1134により低剛性部の第2端部1135を形成し、段差部により低剛性の下端部1115bを形成した。ただし、低剛性部の形成方法はこれらに限定されない。
上記全構成では、スリット溝1134は環状であったが、低剛性部が主軸受1115の一方端部に形成されればその形状は限定されない。
上記全構成では、第2端部1135及び下端部1115bでは、周方向の全周に亘って低剛性部が設けられていた。ただし、低剛性部の範囲はこれに限定されない。例えば、第2端部1135及び下端部1115bにおいて、主軸1111により最大荷重が付加される領域に、低剛性部が設けられていてもよい。このため、この領域の厚みは、第2端部1135及び下端部1115bのそれぞれにおける周方向の他の領域よりも小さくなるように形成されていてもよい。
上記全構成では、スリット溝1134が主軸受1115と同軸に設けられたが、スリット溝1134の位置はこれに限定されない。例えば、主軸受1115の周方向において主軸1111の最大荷重が作用する領域の厚みを他の領域よりも薄くなるように、スリット溝1134が主軸受1115と偏心するように配置してもよい。これにより、主軸1111の最大荷重の作用方向に主軸受1115の低剛性部の弾性変形量が最大となる。このため、周方向において主軸1111と主軸受1115との間の油膜を均一にすることができる。
上記の構成では、主軸1111の表面に酸化皮膜1123を備えたが、主軸1111の表面の皮膜は主軸受1115の硬さ以上の硬さを有するものであれば、これに限定されない。例えば、主軸1111の皮膜は、例えば、化合物層、機械的強度改善層及び被覆法により形成した層等が挙げられる。
すなわち、軸部品の基材1122が鉄系である場合、皮膜は、一般的な焼入れ方法、並びに、表層に炭素又は窒素等を浸み込ませる方法で形成した皮膜であってもよい。また、皮膜は、水蒸気による酸化処理、及び、水酸化ナトリウムの水溶液に浸漬させた酸化処理によって形成された皮膜であってもよい。さらに、皮膜は、冷間加工、加工硬化、固溶強化、析出強化、分散強化及び結晶粒微細化によって形成され、転位のすべり運動を抑制させて基材150の強化を図った層(機械的強度改善層)であってもよい。さらに、皮膜は、メッキ、溶射、PVD、CVDの被覆法により形成した層であってもよい。
なお、上記全ての構成では、軸部品の基材150に鉄系材料を用いたが、基材150は、軸受部品と同等以上の硬さを有する皮膜を形成できるものであれば、鉄系以外の材料を用いることができる。
また、本実施の形態では、主軸受1115の低剛性部は、主軸受1115の厚みを薄くすることにより形成したものを例示したが、上下端部を低剛性の部品(樹脂製のブッシュ等)を設けるなどして構成してもよいものであり、同様な効果が得られる。
また、本実施の形態では、主軸受1115の低剛性部を主軸受1115の上端部1115a及び下端部1115bの両方に設けたものを例示したが、これは上下どちらか一方の端部のみに形成してもある程度の効果が期待できるものである。
また、本実施の形態では、主軸受1115の上端部1115a及び下端部1115bに低剛性部を形成したが、偏心軸1112が挿入されるコンロッド1118の上下端部に低剛性部を形成しても同様の効果が得られる。
また、上記全ての構成では、低速運転(例えば、運転周波数17Hz)によって冷媒圧縮機が駆動される場合を例にしてその効果を説明したが、冷媒圧縮機の運転はこれに限定されない。商用回転数による運転、及び、回転数が増加する高速運転が行われた場合であっても、冷媒圧縮機は低速運転された場合と同様に、性能及び信頼性を向上させることができる。
また、上記全ての構成では、往復動式(レシプロ)の冷媒圧縮機を例示したが、冷媒圧縮機は、回転式、スクロール式及び振動式等の他の形式のものであってもよい。また、軸受部品の硬さ以上の硬さの皮膜を軸部品に備えた構成は、冷媒圧縮機に限定されず、摺動面を有する機器においても同様に用いられ、また、これにより同様の効果が得られる。この摺動面を有する機器としては、例えば、ポンプ及びモータ等であってもよい。
(実施の形態5)
図15は、本発明の実施の形態5における冷凍装置の構成を示す模式図である。ここでは、冷凍装置の冷媒回路として、上記実施の形態4に係る冷媒圧縮機を用いている。この冷凍装置の基本構成の概略について説明する。
図9において、冷凍装置1200は、本体1201、区画壁1204及び冷媒回路1205を備えている。本体1201は、一面が開口した断熱性の箱体、及び、その開口を開閉する扉体を有している。区画壁1204は、本体1201の内部を、物品の貯蔵空間1202と機械室1203とに区画する。冷媒回路309は、冷媒圧縮機1206、放熱器1207、減圧装置1208及び吸熱器1209を配管によって環状に接続した構成であって、貯蔵空間1202内を冷却する。
吸熱器1209は、送風機(図示せず)を具備した貯蔵空間1202内に配置されている。吸熱器1209の冷却空気は、破線の矢印で示すように、送風機によって貯蔵空間1202内を循環するように撹拌され、貯蔵空間1202内を冷却する。
以上の構成からなる冷凍装置1200は、冷媒圧縮機1206として上記実施の形態4に係る冷媒圧縮機を備えている。これにより、冷媒圧縮機1206の主軸1111の皮膜は、これに対向する主軸受1115の硬さ以上の硬さを有し、主軸受1115の端部の剛性を中間部の剛性よりも低くした。このため主軸1111と主軸受1115との間において耐摩耗性の向上、局所的な接触摺動の軽減、及び、油膜形成の維持が実現される。よって、冷媒圧縮機1206について性能が向上するので、冷凍装置1200の消費電力の低減による省エネルギー化を実現し、かつ信頼性を向上させることができる。
以上、本発明に係る冷媒圧縮機及びそれを備えた冷凍装置について、上記実施の形態を用いて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。つまり、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。