JP6778885B2 - 冷媒圧縮機およびそれを用いた冷凍装置 - Google Patents

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Description

本発明は、冷蔵庫、エアーコンディショナー等に使用される冷媒圧縮機およびそれを用いた冷凍装置に関するものである。
近年、地球環境保護の観点から化石燃料の使用を少なくする高効率の冷媒圧縮機の開発が進められている。
このような高効率の冷媒圧縮機は、そのピストンまたはクランクシャフト等の摺動部分の摩耗を防止すべく当該摺動面に、リン酸塩被膜を形成する等の方策がとられている。このリン酸塩被膜の形成によって機械加工仕上げの加工面の凹凸を消し、摺動部材同士の初期なじみを良好にすることができる(例えば、特許文献1参照)。
図8は、特許文献1に記載された従来の冷媒圧縮機の断面図を示すものである。
図8に示すように、密閉容器1は、冷媒圧縮機の外筐となるものであり、その底部に潤滑油2を貯留するとともに、固定子3および回転子4からなる電動要素5と、これによって駆動される往復式の圧縮要素6と、を収容している。
そして、上記圧縮要素6は、クランクシャフト7、シリンダーブロック11、ピストン15等によって構成されている。以下、圧縮要素6の構成を説明する。
クランクシャフト7は、回転子4を圧入固定した主軸部8と、主軸部8に対し偏心して形成された偏心軸9とからなり、さらに給油ポンプ10を備えている。
シリンダーブロック11は、略円筒形のボアー12からなる圧縮室13を形成するとともに、主軸部8を軸支する軸受部14を有する。
ボアー12に遊嵌されたピストン15は、ピストンピン16を介して、偏心軸9との間を連結手段であるコンロッド17によって連結されている。ボアー12の端面はバルブプレート18で封止されている。
バルブプレート18のボアー12の反対側にはヘッド19が固定されており、ヘッド19により高圧室が形成される。サクションチューブ20は密閉容器1に固定されるとともに、冷凍サイクルの低圧側(図示せず)に接続され、冷媒ガス(図示せず)を密閉容器1内に導く。サクションマフラー21は、バルブプレート18およびヘッド19に挟持される。
クランクシャフト7の主軸部8および軸受部14、ピストン15およびボアー12、ピストンピン16およびコンロッド17、クランクシャフト7の偏心軸9およびコンロッド17は、いずれも互いに摺動部を形成する。
摺動部を構成する摺動部材の中で、鉄系材料同士の組み合わせにおいては、どちらか一方の摺動面に対して、前述した如く多孔質結晶体からなる不溶解性のリン酸塩被膜が形成してある。
以上のような構成において、次に動作を説明する。
商用電源(図示せず)から供給される電力は電動要素5に供給され、電動要素5の回転子4を回転させる。回転子4はクランクシャフト7を回転させ、偏心軸9の偏心運動により連結手段のコンロッド17及びピストンピン16を介してピストン15を駆動する。ピストン15はボアー12内を往復運動する。これにより、サクションチューブ20を通して密閉容器1内に導かれた冷媒ガスは、サクションマフラー21から圧縮室13内に吸入され、圧縮室13内で連続して冷媒ガスが圧縮される。
潤滑油2は、クランクシャフト7の回転に伴って給油ポンプ10から各摺動部に給油され、各摺動部を潤滑する。また、潤滑油2は、ピストン15およびボアー12の間においてはシールを司る。
ここで、クランクシャフト7の主軸部8および軸受部14においては、回転運動が行われている。冷媒圧縮機の停止中は回転速度が0m/sとなり、起動時は金属接触状態からの回転運動開始となって大きな摩擦抵抗力がかかることになる。この冷媒圧縮機では上記クランクシャフト7の主軸部8にリン酸塩被膜が形成されていて、当該リン酸塩被膜が初期なじみ性を有する、それゆえ、リン酸塩被膜により、起動時の金属接触による異常摩耗を防止することができる。
特開平7−238885号公報
ここで、近年、冷媒圧縮機の高効率化を図るために、より粘度の低い潤滑油2を使用したり、または、摺動部間の摺動長さがより短く設計されたりする。このため、従来のリン酸塩被膜では、早期に摩耗もしくは摩滅して、なじみ効果の持続が困難となりおそれがある。これにより、リン酸塩被膜の自己耐摩耗性が低下する可能性がある。
さらに、冷媒圧縮機においては、クランクシャフト7が一回転する間にクランクシャフト7の主軸部8にかかる荷重は大きく変動する。また、この負荷変動に伴って、クランクシャフト7および軸受部14の間で、潤滑油2に溶け込んだ冷媒ガスが気化して発泡することがある。この発泡により油膜が切れて金属接触する頻度が増加する。
その結果、クランクシャフト7の主軸部8に形成したリン酸塩被膜が早期に摩耗して摩擦係数が上昇するおそれがある。また、摩耗係数の上昇に伴い摺動部の発熱も大きくなって、凝着等の異常摩耗が生じる懸念がある。さらに、ピストン15およびボアー12の間においても同様の現象を起こすおそれがある。それゆえ、ピストン15およびボアー12においても、クランクシャフト7と同様の課題を有している。
本発明は、上記従来の課題を解決するものであって、摺動部材の自己耐摩耗性を向上させることにより、信頼性および効率に優れた冷媒圧縮機およびそれを用いた冷凍装置を提供することを目的としている。
本発明に係る冷媒圧縮機は、前記の課題を解決するために、密閉容器内に粘度がVG2〜VG100の潤滑油を貯留するとともに、電動要素と、前記電動要素により駆動され冷媒を圧縮する圧縮要素とを収容し、前記圧縮要素を構成する少なくともひとつの摺動部材が、鉄系材料からなる基材と、前記基材表面に形成された酸化被膜とから構成され、前記酸化被膜は、最表面側に、三酸化二鉄(Fe)を含有する部分を含むとともに、前記基材側に、当該基材よりもケイ素(Si)が多く含有されるケイ素含有部分を含む構成である。
前記構成によれば、ケイ素含有部分により基材に対する酸化被膜の密着性が向上するとともに、三酸化二鉄(Fe)を含有する部分により、相手攻撃性を良好に抑制できるとともに摺動面のなじみ性を向上させている。それゆえ、摺動部材の耐摩耗性をより一層向上することができる。そのため、潤滑油の粘度をより低くできるとともに、各摺動部を構成するそれぞれの摺動部材の摺動長さをより短く設計することができる。したがって、摺動部において摺動ロスの低減を図ることができるので、冷媒圧縮機の信頼性、効率、性能を向上することができる。
また、本発明に係る冷媒圧縮機は、前記の課題を解決するために、前記構成の冷媒圧縮機と、放熱器と、減圧装置と、吸熱器とを含み、これらを配管によって環状に連結した冷媒回路を備える構成である。
前記構成によれば、冷凍装置は、圧縮機効率が向上した冷媒圧縮機を搭載していることになる。そのため、当該冷凍装置の消費電力を低減し、省エネルギー化を実現することができる。
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
本発明では、以上の構成により、摺動部材の自己耐摩耗性を向上させることにより、信頼性および効率に優れた冷媒圧縮機およびそれを用いた冷凍装置を提供することができる、という効果を奏する。
本開示の実施の形態1における冷媒圧縮機の模式的断面図である。 図2Aは、実施の形態1における冷媒圧縮機の摺動部材に施した酸化被膜のSEM(走査型電子顕微鏡)観察を行った結果の一例を示すSEM画像であり、図2B〜図2Dは、図2Aに示す酸化被膜のEDS分析を行った結果の一例を示す元素マップである。 実施の形態1における酸化被膜のX線回折分析を行った結果の一例を示すグラフである。 図4は、実施の形態1における冷媒圧縮機の摺動部材に施した酸化被膜のTEM(透過型電子顕微鏡)観察を行った結果の一例を示すTEM画像である。 実施の形態1における酸化被膜のリング・オン・ディスク式摩耗試験後のディスクの摩耗量を示す説明図である。 実施の形態1における酸化被膜のリング・オン・ディスク式摩耗試験後のリングの摩耗量を示す説明図である。 本開示の実施の形態2における冷凍装置の模式図である。 従来の冷媒圧縮機の模式的断面図である。
本開示に係る冷媒圧縮機は、密閉容器内に粘度がVG2〜VG100の潤滑油を貯留するとともに、電動要素と、前記電動要素により駆動され冷媒を圧縮する圧縮要素とを収容し、前記圧縮要素を構成する少なくともひとつの摺動部材が、鉄系材料からなる基材と、前記基材表面に形成された酸化被膜とから構成され、前記酸化被膜は、最表面側に、三酸化二鉄(Fe)を含有する部分を含むとともに、前記基材側に、当該基材よりもケイ素(Si)が多く含有されるケイ素含有部分を含む構成である。
これにより、ケイ素含有部分により基材に対する酸化被膜の密着性が向上するとともに、三酸化二鉄(Fe)を含有する部分により、相手攻撃性を良好に抑制できるとともに摺動面のなじみ性を向上させている。それゆえ、摺動部材の耐摩耗性をより一層向上することができる。そのため、潤滑油の粘度をより低くできるとともに、各摺動部を構成するそれぞれの摺動部材の摺動長さをより短く設計することができる。したがって、摺動部において摺動ロスの低減を図ることができるので、冷媒圧縮機の信頼性、効率、性能を向上することができる。
前記構成の冷媒圧縮機においては、前記酸化被膜は、前記ケイ素含有部分よりも表面側に位置し、その周囲よりも部分的にケイ素(Si)の含有量が多い、スポット状ケイ素含有部分を含む構成であってもよい。
これにより、基材側のケイ素含有部分によって基材に対する酸化被膜の密着性が向上するとともに、酸化被膜の表面側にスポット状ケイ素含有部分が存在するので、相対的に硬質なケイ素(Si)化合物が酸化被膜の表面に分散することになる。そのため、酸化被膜の耐摩耗性がより向上する。したがって、摺動部において摺動ロスの低減を図ることができるので、冷媒圧縮機の信頼性および性能が向上する。
前記構成の冷媒圧縮機においては、前記酸化被膜は、最表面から順に、最も多く占める成分が三酸化二鉄(Fe)である部分と、最も多く占める成分が四酸化三鉄(Fe)である部分と、で少なくとも構成されてもよい。
これにより、最表面の三酸化二鉄(Fe)が、摺動部材の相手攻撃性を低下させるとともに、摺動面のなじみ性を促進させるので、冷媒圧縮機の信頼性が向上する。
前記構成の冷媒圧縮機においては、前記酸化被膜は、最表面から順に、最も多く占める成分が三酸化二鉄(Fe)である部分と、最も多く占める成分が四酸化三鉄(Fe)である部分と、最も多く占める成分が酸化鉄(FeO)である部分と、で少なくとも構成されてもよい。
これにより、最表面の三酸化二鉄(Fe)が、摺動部材の相手攻撃性を低下させるとともに、摺動面のなじみ性を促進させる。しかも、基材側に酸化鉄(FeO)が存在することで、結晶粒界または格子欠陥のような弱い構造の存在を十分に抑制することができる。そのため、摺動部材が摺動するときに、負荷に対する酸化被膜の耐力が向上する。その結果、酸化被膜の剥離を抑制できるとともに、基材に対する酸化被膜の密着力の向上できるので、冷媒圧縮機の信頼性が向上する。
前記構成の冷媒圧縮機においては、前記酸化被膜の膜厚は、1〜5μmの範囲内である構成であってもよい。
これにより、酸化被膜の耐摩耗性が向上するので、酸化被膜の長期信頼性を向上できる。しかも、酸化被膜の寸法精度も安定化するので、摺動部材の生産性を高めることも可能となる。
前記構成の冷媒圧縮機においては、前記鉄系材料は、ケイ素を0.5〜10%の範囲内で含有するものである構成であってもよい。
これにより、鉄系材料(基材)と酸化被膜との密着性がより一層向上するため、酸化被膜がさらに一層高耐力になる。その結果、冷媒圧縮機の信頼性がさらに向上する。
前記構成の冷媒圧縮機においては、前記鉄系材料が鋳鉄である構成であってもよい。
これにより、鋳鉄が安価で高い生産性を有することから、摺動部材のコストを低くすることができる。しかも、鉄系材料(基材)と酸化被膜との密着性がより一層向上するため、酸化被膜がさらに一層高耐力になる。その結果、冷媒圧縮機の信頼性がさらに向上する。
前記構成の冷媒圧縮機においては、前記冷媒をR134a等のHFC系冷媒もしくはその混合冷媒とし、前記潤滑油をエステル油またはアルキルベンゼン油、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコールのいずれかひとつ、またはこれらの混合油とする構成であってもよい。
これにより、低粘度の潤滑油を使用しても摺動部材の異常摩耗を防止することができる。また、摺動部材の摺動ロスを低減することが可能になる。そのため、冷媒圧縮機の信頼性および効率を優れたものにすることができる。
前記構成の冷媒圧縮機においては、前記冷媒をR600a、R290、R744等の自然冷媒もしくはその混合冷媒とし、前記潤滑油を鉱油、エステル油またはアルキルベンゼン油、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコールのいずれかひとつ、またはこれらの混合油とする構成であってもよい。
これにより、低粘度の潤滑油を使用しても摺動部材の異常摩耗を防止することができる。また、摺動部材の摺動ロスを低減することが可能になる。そのため、冷媒圧縮機の信頼性および効率を優れたものにすることができる。さらに、温室効果の少ない冷媒を使用することで、地球温暖化抑制を図ることができる。
前記構成の冷媒圧縮機においては、前記冷媒をR1234yf等のHFO系冷媒もしくはその混合冷媒とし、前記潤滑油をエステル油またはアルキルベンゼン油、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコールのいずれかひとつ、またはこれらの混合油とする構成であってもよい。
これにより、低粘度の潤滑油を使用しても摺動部材の異常摩耗を防止することができる。また、摺動部材の摺動ロスを低減することが可能になる。そのため、冷媒圧縮機の信頼性および効率を優れたものにすることができる。さらに、温室効果の少ない冷媒を使用することで、地球温暖化抑制を図ることができる。
前記構成の冷媒圧縮機においては、電動要素は、複数の運転周波数でインバータ駆動される構成であってもよい。
これにより、各摺動部への給油量が少なくなる低速運転時においても、耐磨耗性に優れた酸化被膜により、信頼性を向上させることができる。また、回転数が増加する高速運転時においても、優れた信頼性を維持することができる。これにより、冷媒圧縮機の信頼性をより一層向上することができる。
本開示に係る冷凍装置は、前記構成の冷媒圧縮機と、放熱器と、減圧装置と、吸熱器とを含む、これらを配管によって環状に連結した冷媒回路を備える構成である。
これにより、冷凍装置は、圧縮機効率が向上した冷媒圧縮機を搭載していることになる。そのため、当該冷凍装置の消費電力を低減し、省エネルギー化を実現することができ、さらに、冷凍装置としての信頼性も向上させることができる。
以下、本開示の代表的な実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
(実施の形態1)
[冷媒圧縮機の構成]
まず、本実施の形態1に係る冷媒圧縮機の代表的な一例について、図1および図2Aを参照して具体的に説明する。図1は、本実施の形態1に係る冷媒圧縮機100の断面図であり、図2Aは、冷媒圧縮機100の摺動部のSEM(走査型電子顕微鏡)観察を行った結果の一例を示すSEM画像である。
図1に示すように、冷媒圧縮機100においては、密閉容器101内にはR134aからなる冷媒ガス102が充填されるとともに、底部には潤滑油103としてエステル油が貯留されている。また、密閉容器101内には、固定子104および回転子105からなる電動要素106と、これによって駆動される往復式の圧縮要素107とが収容されている。
そして、圧縮要素107は、クランクシャフト108、シリンダーブロック112、ピストン132等によって構成されている。圧縮要素107の構成を以下に説明する。
クランクシャフト108は、回転子105を圧入固定した主軸部109と、主軸部109に対し偏心して形成された偏心軸110と、から少なくとも構成される。クランクシャフト108の下端には潤滑油103に連通する給油ポンプ111を備えている。
クランクシャフト108は、基材171として、ケイ素(Si)を約2%含有してなるねずみ鋳鉄(FC鋳鉄)を使用し、表面に酸化被膜170が形成されている。本実施の形態1における酸化被膜170の代表的な一例を図2Aに示す。図2Aは、酸化被膜170の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察した結果の一例であり、酸化被膜170の厚さ方向の全体像を示す。
なお、本実施の形態1における酸化被膜170の膜厚は約3μmである。また、図2Aに示す酸化被膜170は、後述する実施例1において、リング・オン・ディスク式摩耗試験で用いたディスク(基材171)に形成されたものである。
シリンダーブロック112は鋳鉄からなり、略円筒形のボアー113を形成するとともに、主軸部109を軸支する軸受部114を備えている。
また、回転子105にはフランジ面120が形成され、軸受部114の上端面がスラスト面122になっている。フランジ面120と軸受部114のスラスト面122との間には、スラストワッシャ124が挿入されている。フランジ面120、スラスト面122およびスラストワッシャ124でスラスト軸受126を構成している。
ピストン132はある一定量のクリアランスを保ってボアー113に遊嵌され、鉄系の材料からなり、ボアー113と共に圧縮室134を形成する。また、ピストン132は、ピストンピン137を介して連結手段であるコンロッド138により偏心軸110と連結されている。ボアー113の端面はバルブプレート139で封止されている。
ヘッド140は高圧室を形成している。ヘッド140は、バルブプレート139のボアー113の反対側に固定される。サクションチューブ(図示せず)は、密閉容器101に固定されるとともに冷凍サイクルの低圧側(図示せず)に接続され、冷媒ガス102を密閉容器101内に導く。サクションマフラー142は、バルブプレート139とヘッド140に挟持される。
以上のように構成された冷媒圧縮機100について、以下その動作を説明する。
商用電源(図示せず)から供給される電力は電動要素106に供給され、電動要素106の回転子105を回転させる。回転子105はクランクシャフト108を回転させ、偏心軸110の偏心運動が連結手段のコンロッド138からピストンピン137を介してピストン132を駆動する。ピストン132はボアー113内を往復運動し、サクションチューブ(図示せず)を通して密閉容器101内に導かれた冷媒ガス102をサクションマフラー142から吸入し、圧縮室134内で圧縮する。
潤滑油103はクランクシャフト108の回転に伴い、給油ポンプ111から各摺動部に給油され、摺動部を潤滑するとともに、ピストン132とボアー113の間においてはシールを司る。なお、摺動部とは、複数の摺動部材が互いの摺動面で接した状態で摺動する部位を意味する。
ここで、近年の冷媒圧縮機100では、さらなる高効率化を図るため、潤滑油103として、(1)既述した如くより粘度の低いものを使用する、または、(2)摺動部を構成するそれぞれの摺動部材の摺動長さ(摺動部間の摺動長さとする。)がより短く設計される、等の対応が行われている。そのため、摺動条件はより過酷な方向に進んでいる。すなわち、摺動部の間の油膜はより薄くなる傾向にあり、あるいは、摺動部の間の油膜が形成され難い傾向にある。
加えて、冷媒圧縮機100においては、クランクシャフト108の偏心軸110が、シリンダーブロック112の軸受部114、並びに、クランクシャフト108の主軸部109に対して偏心して形成されている。そのため、圧縮された冷媒ガス102のガス圧により、クランクシャフト108の主軸部109と偏心軸110とコンロッド138との間に、負荷変動を伴う変動荷重が加えられる。この負荷変動に伴って、主軸部109と軸受部114との間などで、潤滑油103に溶け込んだ冷媒ガス102が繰り返し気化するため、潤滑油103に発泡が発生する。
このような理由により、クランクシャフト108の主軸部109と軸受部114との間などの摺動部において、油膜が切れて摺動面同士が金属接触する頻度が増加する。
しかしながら、この冷媒圧縮機100の摺動部、例えば、本実施の形態1で一例として示すクランクシャフト108の摺動部には、前述した構成の酸化被膜170が施してある。そのため、油膜が切れる頻度が増加したとしても、これに伴い発生する摺動面の摩耗を長期間にわたって抑制することができる。
[酸化被膜の構成]
次に、図2Aに加えて、図2B〜図2Dを参照して、摺動部の摩耗を抑制する酸化被膜1760についてさらに詳述する。
図2は、図2B〜図2Dは、いずれも、図2Aに示す酸化被膜170の断面について、EDS(エネルギー分散型X線分光法)分析を行った結果の一例を示す元素マップである。このうち、図2Bは、酸化被膜170における鉄(Fe)の元素マッピング結果を示し、図2Cは、酸化被膜170における酸素(O)の元素マッピング結果を示し、図2Dは、酸化被膜170におけるケイ素(Si)の元素マッピング結果を示す。
本実施の形態1では、クランクシャフト108は、球状黒鉛鋳鉄(FCD鋳鉄)を基材171としている。酸化被膜170は、この基材171の表面に形成されている。具体的には、例えば、基材171の摺動表面を研磨仕上げした後、酸化性ガスを用いた酸化処理により酸化被膜170が形成されている。
前述したように、図2Aに示すように、酸化被膜170は、本実施の形態1では、球状黒鉛鋳鉄(FCD鋳鉄)からなる基材171の上(図2Aでは基材171の右側)に、酸化被膜170が形成されている。
次に、この酸化被膜170に含まれる元素の濃度(すなわち、酸化被膜170を構成する各部分の元素組成)を、図2B〜図2Dを参照して説明する。前記の通り、図2Bは、図2Aに示す酸化被膜170に対応する鉄(Fe)の元素マッピング結果であり、図2Cは、酸化被膜170に対応する酸素(O)の元素マッピング結果であり、図2Dは、酸化被膜170に対応するケイ素(Si)の元素マッピング結果である。
図2B〜図2Dでは、黒いバックグラウンド(背景)に対して、ドット(微小な点)が多くなるほど、対象となる元素が多く存在することを示している。また、図2B〜図2D中に示される線は、元素の強度比を示しており、図2B〜図2Dのいずれにおいても、上方に向かうほど、元素の強度比すなわち該当元素の占める割合が高いことを示している。
これらの元素分析の結果から、酸化被膜170における鉄(Fe)、酸素(O)、およびケイ素(Si)の各元素の濃度比は、以下のような傾向を有していることが分かる。
球状黒鉛鋳鉄(FCD鋳鉄)は、鉄(Fe)に加えてケイ素(Si)を含んでいる。そのため、本実施の形態1では、基材171は、実質的に鉄(Fe)およびケイ素(Si)の2種類の元素で構成される。この基材171を基準として酸化被膜170における各元素の強度比を比較する。
図2Bに示すように、鉄(Fe)の強度比は、基材171よりも酸化被膜170の方が小さく、さらに酸化被膜170の内部でやや増加に転じる傾向を示す。また、図2Cに示すように、酸素(O)の強度比は、酸化被膜170中で顕著に高いことが分かる。
さらに、図2Dに示すように、ケイ素(Si)の強度比は、基材171よりも酸化被膜170の基材171側が高いことが分かる。また、酸化被膜170の内部では、ケイ素(Si)の強度比は一気に減少し、最表面側では、ほとんど検出限界以下に転じることが分かる。
さらに、図2A〜図2Dに示す酸化被膜170の断面について、X線回折分析を行った結果の一例を図3に示す。
図3に示すように、酸化被膜170においては、三酸化二鉄(Fe)または四酸化三鉄(Fe)の結晶に起因するピークは明瞭に検出される。しかしながら、ケイ素および鉄からなる酸化生成物、例えば、ファイアライト(FeSiO)等の結晶に起因するピーク位置は、三酸化二鉄(Fe)または四酸化三鉄(Fe)に起因するピーク位置と重なるために、存在の明確な判定は難しい。さらに、FeOに起因するピークは非常に弱く、存在の明確な判定は難しい。
本実施の形態1では、酸化被膜170は、前記の通り、酸化性ガスを用いた酸化反応S酸化処理)により基材171の表面に形成したものである。酸化反応の初期には、基材171側の界面近傍には、例えば、ファイアライト(FeSiO)といったような鉄およびケイ素の酸化物が形成される。この酸化物は、いわゆる鉄拡散バリヤ機能を発揮し、酸化反応の進行に伴い、基材171の表面に鉄が不足したような状態を作り出すと考えられる。その結果、酸化反応の進行により酸素の内方拡散を助長させていると推察される。
その結果として、酸化反応の初期に形成された酸化鉄(FeO)の酸化が加速されるので、酸化被膜170には、三酸化二鉄(Fe)および/または四酸化三鉄(Fe)といった、耐摩耗性に寄与する結晶構造が生成されたと考えられる。
このような酸化鉄(FeO)の加速的な酸化は、図3に示す酸化被膜170のX線回折分析において、酸化鉄(FeO)の結晶に起因するピークが非常に弱かった(すなわち、酸化鉄(FeO)がほとんど検出されなかった)理由の一つであると考えられる。この推察は、図2Dに示すケイ素(Si)の元素マッピング結果からも裏付けられる。あるいは、別の視点として、酸化被膜170においては、酸化鉄(FeO)は、結晶構造を有しないアモルファスである可能性も考えられる。
それゆえ、本実施の形態1に係る酸化被膜170では、最表面(摺動面)から順に、最も多く占める成分が三酸化二鉄(Fe)である部分(便宜上、三酸化二鉄(Fe)すなわち「酸化鉄(III)」の名称に基づいて「III部分」と称する。)と、最も多く占める成分が四酸化三鉄(Fe)である部分(便宜上、四酸化三鉄(Fe)すなわち「酸化鉄(III)鉄(II)」の名称に基づいて「II,III部分」と称する。)と、で少なくとも構成されていればよい(被膜構成1)。
あるいは、本実施の形態1に係る酸化被膜170では、最表面(摺動面)から順に、最も多く占める成分が三酸化二鉄(Fe)であるIII部分と、最も多く占める成分が四酸化三鉄(Fe)であるII,III部分と、最も多く占める成分が酸化鉄(FeO)である部分(便宜上、酸化鉄(FeO)すなわち「酸化鉄(II)」の名称に基づいて「II部分」と称する。)と、で少なくとも構成されてもよい(被膜構成2)。
酸化被膜170の被膜構成1および被膜構成2のいずれも、最表面のIII部分では、三酸化二鉄(Fe)を主成分としており、その下方には、四酸化三鉄(Fe)を主成分とするII,III部分が位置する。四酸化二鉄(Fe)は、三酸化二鉄(Fe)よりも結晶構造上より強い立方晶であるので、III部分は、下層のII,III部分により支えられることになる。
さらに、酸化被膜170の被膜構成2では、II,III部分の下方に、酸化鉄(FeO)を主成分とするII部分が位置する。酸化鉄(FeO)は、基材171の表面の界面に結晶構造を有しないアモルファス状で存在するので、結晶粒界または格子欠陥のような弱い構造の存在を十分に抑制することができる。そのため、摺動部材が摺動するときに、負荷に対する酸化被膜170の耐力が向上する。その結果、酸化被膜170の剥離の抑制、並びに、基材171に対する酸化被膜170の密着力の向上に寄与している可能性が考えられる。
ここで、図2Dに示すケイ素(Si)の元素マッピング結果から明らかなように、酸化被膜170では、基材171よりもケイ素(Si)が多く含有されるケイ素含有部分を含んでいる。酸化被膜170の構成が被膜構成1であっても被膜構成2であっても、少なくともII,III部分には、最も多く占める成分である四酸化三鉄(Fe)に加えて、ケイ素(Si)化合物が含まれる。II,III部分の下方にII部分が存在する場合にも、ケイ素(Si)化合物が含まれる。
図2Dに示すケイ素(Si)の強度比からも明らかなように、酸化被膜170においては、基材171側にケイ素(Si)が多い部分、すなわち「ケイ素含有部分」が存在する。このケイ素含有部分は、II,III部分の少なくとも一部、あるいは、II,III部分およびII部分と実質的に一致する。
なお、II,III部分は、ケイ素(Si)の含有量を基準として、表面側の含有量の少ない部分と、基材171側の含有量の少ない部分と、に区分することができる。ケイ素(Si)の含有量が少ない上側の部分を、便宜上「II,III部分a」と称し、ケイ素(Si)の含有量が多い下側の部分を、便宜上「II,III部分b」と称する。II,III部分aとII,III部分bとの界面は、図2Dにおいて、ケイ素(Si)の強度比が一気に減少に転ずる箇所に一致する。
また、図2A〜図2Dに示す試料(基材171上に形成された酸化被膜170)とは別の試料について、酸化被膜170のTEM(透過型電子顕微鏡)観察を行った結果の一例を示すTEM画像を図4に示す。
図4に示すように、酸化被膜170において基材171側に位置する部分(II,III部分、または、II,III部分およびII部分)は、基材171よりもケイ素(Si)が多く含有されるケイ素含有部分170aとなっている。さらに、酸化被膜170において、ケイ素含有部分170aよりも表面側となる部位(II,III部分およびIII部分の少なくともいずれか)には、周囲の組成物に比較して部分的にケイ素(Si)の含有量が多いスポット状ケイ素含有部分170bを含んでいる。このスポット状ケイ素含有部分170bは、図4に示すTEM観察等では白色のスポットとして観察されるので「白色部」ということもできる。この「白色部」では、ケイ素(Si)の濃度または強度の上昇が見られる。
特に、II,III部分のうち上側のII,III部分aでは、下側のII,III部分b(ケイ素含有部分170a)に比べて、ケイ素(Si)の含有量が低いが、その内部には、「白色部」すなわちスポット状ケイ素含有部分170bを含んでいる、同様に、本実施の形態1では、最表面側のIII部分には、ほとんどケイ素(Si)を含まないが、諸条件の調整により、III部分中にも「白色部」すなわちスポット状ケイ素含有部分170bを存在させることができる。
スポット状ケイ素含有部分170bには、例えば、二酸化ケイ素(SiO)および/またはファイヤライト(FeSiO)等といった構造の異なるケイ素(Si)化合物が存在している。さらに、「白色部」には、ケイ素(Si)化合物ではなく、ケイ素(Si)が固溶した状態で存在(ケイ素(Si)が単体で存在)している場合もある。それゆえ、III部分および/またはII,III部分aには、スポット状ケイ素含有部分170bとして、ケイ素(Si)化合物を含む部分が存在するだけでなく、ケイ素(Si)固溶部も存在している場合がある。
酸化被膜170は、少なくとも、基材171側に層状のケイ素含有部分170a(II,III部分の一部、II部分等)を有していればよく、好ましくは、ケイ素含有部分170aよりも表面側となる位置に、周囲よりもケイ素(Si)の含有量が多いスポット状ケイ素含有部分170bを有していればよい。酸化被膜170の具体的な構成としては、前記の通り、III部分およびII,III部分を含む被膜構成1、あるいは、III部分、II,III部分およびII部分を含む被膜構成2が挙げられるが、酸化被膜170の構成はこれらに限定されない。
好ましい一例として、酸化被膜170は、前述したように、最表面からIII部分、II,III部分a、およびII,III部分b(並びにII部分)の順で積層されている構成を挙げることができるが、酸化被膜170は、これら3層または4層構成に限定されない。これら以外の他の層を含んでもよいし、一部の層を含まない構成であってもよいし、一部の層が入れ替わる構成であってもよい。
このように、他の層を含む構成、あるいは、各部分の積層順が異なる構成は、諸条件を調整することにより容易に実現することができる。さらには、ケイ素含有部分170aの基材171側への形成、ケイ素含有部分170aのケイ素(Si)濃度の調整、スポット状ケイ素含有部分170bの形成についても、諸条件を調整することにより実現することができる。
代表的な諸条件としては、酸化被膜170の製造方法(形成方法)が挙げられる。酸化被膜170の製造方法は、公知の鉄系材料の酸化方法を好適に用いることができ、特に限定されない。基材171である鉄系材料の種類、その表面状態(前述した研磨仕上げ等)、求める酸化被膜170の物性等の諸条件に応じて、製造条件等については適宜設定することができる。本開示では、炭酸ガス(二酸化炭素ガス)等の公知の酸化性ガスおよび公知の酸化設備を用いて、数百℃の範囲内、例えば400〜800℃の範囲内で基材171であるねずみ鋳鉄を酸化することにより、基材171の表面に酸化被膜170を形成することができる。
特に、本開示では、酸化被膜170の基材171側にケイ素含有部分170aを形成したり、酸化被膜170の表面側にスポット状ケイ素含有部分170bを形成したりするためには、酸化被膜170の製造(形成)に際して、次のような手法を好ましく採用することができる。例えば、(1)基材171に対して付加的にケイ素(Si)を添加してから基材171を酸化する手法、(2)酸化反応の初期に、基材171の表面に、ケイ酸塩等の鉄拡散バリヤ機能を有する化合物を形成させる(もしくは存在させる)手法等を採用することができる。
[酸化被膜の評価]
次に、本実施の形態1に係る酸化被膜170の代表的な一例について、その特性を評価した結果を、図5および図6を参照して説明する。以下の説明では、実施例、従来例、および比較例の結果に基づき、酸化被膜170の摩耗抑制効果、すなわち、酸化被膜170の耐摩耗性について評価している。
(実施例1)
摺動部材として球状黒鉛鋳鉄製のディスクを用いた。したがって、基材171の材質は球状黒鉛鋳鉄であり、ディスクの表面が摺動面となる。前述した通り、炭酸ガス等の酸化性ガスを用いて、400〜800℃の範囲内でディスクを酸化することにより、摺動面に対して本実施の形態1に係る酸化被膜170を形成した。この酸化被膜170は、前述したように、基材171側にケイ素含有部分170aを含むとともに、表面側にスポット状ケイ素含有部分170bも含む構成であった。このようにして本実施例1の評価用試料を準備した。この評価用試料について、後述する自己耐摩耗性および相手攻撃性の評価を行った。
(従来例1)
表面処理膜として、本実施の形態1に係る酸化被膜170の代わりに、従来のリン酸塩被膜を形成した。これ以外は、実施例1と同様にして従来例1の評価用試料を準備した。この評価用試料について、後述する自己耐摩耗性および相手攻撃性の評価を行った。
(比較例1)
表面処理膜として、本実施の形態1に係る酸化被膜170の代わりに、一般的に硬質膜として使用されるガス窒化被膜を形成した。これ以外は、実施例1と同様にして比較例1の評価用試料を準備した。この評価用試料について、後述する自己耐摩耗性および相手攻撃性の評価を行った。
(比較例2)
表面処理膜として、本実施の形態1に係る酸化被膜170の代わりに、従来の一般的な酸化被膜、いわゆる黒染処理、別名フェルマイト処理と呼ばれている方法で形成された四酸化三鉄(Fe)単部分被膜を形成した。これ以外は、実施例1と同様にして比較例2の評価用試料を準備した。この評価用試料について、後述する自己耐摩耗性および相手攻撃性の評価を行った。
(自己耐摩耗性および相手攻撃性の評価)
R134a冷媒およびVG3(40℃での粘度グレードが3mm/s)のエステル油の混合雰囲気下で、前述した評価用試料を用いて、リング・オン・ディスク式摩耗試験を実施した。評価用試料であるディスクとは別に、相手材として、ねずみ鋳鉄を基材とし、その表面(摺動面)に表面研磨のみ施したリングを準備した。摩耗試験は、株式会社エイ・アンド・ディ製の中圧フロン摩擦摩耗試験機 AFT−18−200M(商品名)を用いて、荷重1000Nの条件にて行った。これにより、評価用試料(ディスク)に形成された表面処理膜の摩耗特性(自己耐摩耗性)と、当該表面処理膜の相手材(リング)の摺動面への攻撃性(相手攻撃性)とを併せて評価した。
(実施例1、従来例1、および比較例の対比)
図5は、リング・オン・ディスク式摩耗試験を実施した結果であって、評価用試料であるディスクの摺動面の摩耗量を示す。また、図6は、リング・オン・ディスク式摩耗試験を実施した結果であって、相手材であるリングの摩耗量を示す。
まず、評価用試料であるディスクの表面(摺動面)の摩耗量について比較する。図5に示すように、実施例1、比較例1、および比較例2のいずれの表面処理膜も、従来例1のリン酸塩被膜と比較すると、ディスクの表面の摩耗量は減少している。そのため、実施例1、比較例1、および比較例2における表面処理膜は、いずれも良好な自己耐摩耗性を有することが分かる。ただし、比較例2すなわち四酸化三鉄(Fe)単部分で構成される表面処理膜(一般的な酸化被膜)については、ディスクの表面の所々に基材の界面から剥離している痕跡が認められた。
これに対して、図6に示すように、相手材であるリングの表面(摺動面)の摩耗量について比較する。実施例1の表面処理膜すなわち本実施の形態1に係る酸化被膜170では、従来例1のリン酸塩被膜と比較して、リングの表面の摩耗量はほぼ同等である。これに対して、比較例1のガス窒化被膜、および、比較例2の一般的な酸化被膜では、リングの表面の摩耗量は、明らかに増加していることが分かる。したがって、本実施の形態1に係る酸化被膜170は、従来のリン酸塩被膜と同様に相手材に対する攻撃性(相手攻撃性)が低いことが分かる。
このように、本開示に係る酸化被膜170を採用した実施例1のみが、ディスクおよびリングともにほとんど摩耗が認められていない。それゆえ、本開示に係る酸化被膜170は、自己耐摩耗性および相手攻撃性について良好な結果を示すことが分かる。
酸化被膜170の自己耐摩耗性について検討する。酸化被膜170が鉄の酸化物であることから、酸化被膜170は、従来のリン酸塩被膜と比較して化学的に非常に安定的である。また、鉄の酸化物の被膜はリン酸塩被膜と比較して高い硬度を有する。それゆえ、摺動面に酸化被膜170が形成されることで、摩耗粉の発生および付着等を効果的に防止することができるので、酸化被膜170そのものの摩耗量の増加を有効に回避できると考えられる。
次に、酸化被膜170の相手攻撃性について検討する。酸化被膜170は、最表面側にIII部分、すなわち、最も多く占める成分が三酸化二鉄(Fe)である部分で構成されている。そのため、下記の理由から、酸化被膜170の相手攻撃性を低下させるとともに、摺動面のなじみ性を向上させていると考えられる。
三酸化二鉄(Fe)の結晶構造が菱面体晶であるのに対して、四酸化三鉄(Fe)の結晶構造は立方晶であり、窒化被膜の結晶構造は、周密六方晶、面心立方晶、体心正方晶である。それゆえ、三酸化二鉄(Fe)は、四酸化三鉄(Fe)または窒化被膜に比較して結晶構造の面で柔軟(あるいは弱い状態)になっている。そのため、III部分は、粒子レベルの高度が低くなっている。
これにより、三酸化二鉄(Fe)を最表面に有する酸化被膜170は、比較例1のガス窒化被膜または比較例2の一般的な酸化被膜(四酸化三鉄(Fe)単部分被膜)と比較して、粒子レベルの硬度が低くなる。したがって、実施例1の酸化被膜170は、比較例1または比較例2の表面処理膜と比較して、相手攻撃性を良好に抑制できるとともに、摺動面のなじみ性を向上させていると考えられる。
なお、本実施の形態1におけるリング・オン・ディスク式摩耗試験では、酸化被膜をディスク側に設けて試験を実施しているが、酸化被膜をリング側に設けても同様の結果が得られる。また、酸化被膜の耐摩耗性の評価は、リング・オン・ディスク式摩耗試験に限定されず他の試験方法によって評価することもできる。
(実施例2)
次に、本実施の形態1に係る酸化被膜170が形成されたクランクシャフト108を搭載した冷媒圧縮機100を用いて実機信頼性試験を行った。冷媒圧縮機100は、前述したように、図1に示す構成であるため、その説明を省略する。実機信頼性試験に際しては、前述した実施例1等と同様に、R134a冷媒およびVG3(40℃での粘度グレードが3mm/s)のエステル油を用いた。クランクシャフト108の主軸部109の摩耗を加速させるべく、高温環境の下、短時間で運転および停止を繰り返す、高温高負荷断続運転モードで、冷媒圧縮機100を動作させた。
実機信頼性試験の終了後、冷媒圧縮機100を解体してクランクシャフト108を取り出し、その摺動面を確認した。この摺動面の観察結果に基づいて、実機信頼性試験の評価を行った。
(従来例2)
クランクシャフト108に対して従来のリン酸塩被膜を形成した以外は、実施例2と同様にして、当該クランクシャフト108を備える冷媒圧縮機100の実機信頼性試験を行った。その後、冷媒圧縮機100を解体してクランクシャフト108を取り出し、その摺動面を確認した。
(実施例2および従来例2の対比)
従来例2では、クランクシャフト108の摺動面に摩耗が発生しており、リン酸塩被膜の損耗が認められた。これに対して、実施例2では、クランクシャフト108の摺動面の損傷は極めて軽微であった。このように、冷媒圧縮機100を過酷な条件で動作させたにもかかわらず、クランクシャフト108の摺動面には、酸化被膜170が残存していた。そのため、酸化被膜170を備える摺動部材(実施例2ではクランクシャフト108)は、冷媒を圧縮する環境下においても、耐摩耗性が非常に良好であることが分かる。
実施例1および実施例2の結果を踏まえ、酸化被膜170が、特に、比較例2の一般的な酸化被膜(四酸化三鉄(Fe)単部分被膜)と比較して、自己耐摩耗性が向上するとともに、剥離強度にも優れている点について考察する。
前述したように、本実施の形態1に係る酸化被膜170では、製造時(被膜形成時)の初期に、基材171の界面近傍において、酸化反応時に鉄が不足したような状態が生じ、酸素の内方拡散が助長されていると推察される。そのため、反応初期に形成された酸化鉄(FeO)の酸化が加速され、III部分の主成分である三酸化二鉄(Fe)、あるいは、II,III部分の主成分である四酸化三鉄(Fe)が生成されると考えられる。
これら鉄の酸化物は、いずれも耐摩耗性に寄与する結晶構造を有している。しかも、三酸化二鉄(Fe)は、四酸化三鉄(Fe)に比べて結晶構造の面で柔軟であり、言い換えれば、四酸化三鉄(Fe)は、三酸化二鉄(Fe)に比べて結晶構造の面で強固である。そのため、柔軟な三酸化二鉄(Fe)層を、強固な四酸化三鉄(Fe)層で支持していることになるので、酸化被膜170は優れた自己耐摩耗性を発揮できると考えられる。
また、前述したように、酸化被膜170における基材171の界面近傍には、結晶構造を有しないアモルファスの酸化鉄(FeO)が形成されていると推測される。アモルファスの酸化鉄(FeO)層には、結晶粒界または格子欠陥のような弱い構造の存在を十分に抑制することができる。それゆえ、酸化被膜170の自己耐摩耗性だけでなく、剥離強度の向上も実現できると考えられる。
しかも、酸化被膜170の基材171側に位置する部分(II,III部分の少なくとも一部およびII部分)は、ケイ素含有部分170aとなっている。このケイ素含有部分170aの存在により、酸化被膜170の密着力(耐力)が向上していると考えられる。
例えば、神戸製鋼技報Vol.1.55(No.1 Apr.2005)によれば、(1)鉄鋼材料の熱間圧延工程では、鋼板表面に酸化被膜(スケール)が生成されること、(2)鉄鋼材料に含まれるケイ素量の増加に伴って、脱スケール性が低下すること、という記述がある。これらの記述から、ケイ素および鉄からなる酸化生成物は、鉄系材料の表面において酸化被膜の密着性を向上することが示唆される。
実施例1の酸化被膜170は、最表面から順に、III部分、II,III部分a,およびII,III部分b(諸条件によっては、さらにII部分)で積層される構成となっている。このうちII,III部分b(II部分を含む場合にはII部分も)は、ケイ素(Si)の含有量が基材171よりも多いケイ素含有部分170aとなっている。このように、基材171の側にケイ素(Si)の含有量が多くなっており、しかも、基材171そのものよりもケイ素(Si)の含有量が多くなっていれば(図2D参照)、酸化被膜170の密着性(耐力)は、単にケイ素を含む鉄系材料を単純に酸化して形成される従来の酸化被膜よりも、優れた密着性を発揮することができる。
さらに、実施例1の酸化被膜170では、II,III部分aおよびIII部分は、いずれもII,III部分bよりもケイ素(Si)の含有量が低くなっているが、部分的にケイ素(Si)の含有量が多いスポット状ケイ素含有部分170bを含んでいる。スポット状ケイ素含有部分170bの存在により、相対的に硬質なケイ素(Si)化合物が酸化被膜170の表面側に分散して存在することになる。そのため、酸化被膜170の耐摩耗性をより一層向上することができる。
[変形例等]
このように、本実施の形態1では、密閉容器101内に粘度がVG2〜VG100の潤滑油103を貯留するとともに、電動要素106と、この電動要素106により駆動され冷媒を圧縮する圧縮要素107とを収容し、圧縮要素107を構成する少なくともひとつの摺動部材が、鉄系材料からなる基材171と、基材171表面に形成された酸化被膜170とから構成され、酸化被膜170は、最表面側に、三酸化二鉄(Fe)を含有する部分(III部分)を含むとともに、基材171側に、当該基材171よりもケイ素(Si)が多く含有されるケイ素含有部分170aを含んでいる。
これにより、ケイ素含有部分170aにより基材171に対する酸化被膜170の密着性が向上するとともに、三酸化二鉄(Fe)を含有する部分により、相手攻撃性を良好に抑制できるとともに摺動面のなじみ性を向上させている。それゆえ、摺動部材の耐摩耗性をより一層向上することができる。そのため、潤滑油103の粘度をより低くできるとともに、各摺動部を構成するそれぞれの摺動部材の摺動長さをより短く設計することができる。その結果、摺動部において摺動ロスの低減を図ることができるので、冷媒圧縮機100の信頼性、効率、性能を向上することができる。
酸化被膜170の膜厚としては、本実施の形態1では約3μmを例示したが、酸化被膜170の膜厚はこれに限定されない。代表的な膜厚としては、1〜5μmの範囲内を挙げることができる。膜厚が1μm未満の場合では、諸条件にもよるが、長期にわたって耐摩耗性等の特性を維持することが難しくなる場合がある。一方、膜厚が5μmを超える場合には、諸条件にもよるが、摺動面の面粗度が過大となる。そのため、複数の摺動部材で構成される摺動部の精度を管理することが難しくなる場合がある。
基材171としては、本実施の形態1では球状黒鉛鋳鉄(FCD鋳鉄)を用いているが、基材171の材質はこれに限定されない。酸化被膜170が形成される基材171は、鉄系材料であればよく、その具体的な構成は特に限定されない。代表的には、鋳鉄が好適に用いられるが、これに限定されず、基材171は、鋼材であってもよいし焼結材であってもよいし、それ以外の鉄系材料であってもよい。また、鋳鉄の具体的な種類も特に限定されず、前記の通り球状黒鉛鋳鉄(FCD鋳鉄)であってもよいし、ねずみ鋳鉄(普通鋳鉄、FC鋳鉄)であってもよいし、その他の鋳鉄であってもよい。
ねずみ鋳鉄は、通常、ケイ素を約2%含有しているが、基材171のケイ素の含有量は特に限定されない。鉄系材料がケイ素を含有すれば、酸化被膜170の密着性を向上できる場合がある。一般的に、鋳鉄には通常1〜3%程度のケイ素を含有しているため、基材171としては、例えば、球状黒鉛鋳鉄(FCD鋳鉄)等を用いることができる。さらに、鋼材または焼結材は、ケイ素を実質的に含有しなかったり、ケイ素の含有量が鋳鉄に比べて低かったりするものが多いが、これら鋼材または焼結材に対してケイ素を0.5〜10%程度添加してもよい。これにより、鋳鉄を基材171として用いた場合と同様の作用効果が得られる。
酸化被膜170が形成される基材171の表面、すなわち、摺動面の状態も特に限定されない。通常は、前述したように基材171の表面を研磨した研磨面であればよいが、基材171の種類または摺動部材の種類等によっては研磨していない面であってもよいし、酸化処理する前に公知の表面処理が施されてもよい。
冷媒としては、本実施の形態1ではR134aを用いているが、冷媒の種類はこれに限定されない。同様に、潤滑油103としては、本実施の形態1ではエステル油が用いられているが、潤滑油103の種類もこれに限定されない。冷媒および潤滑油103の組合せとしては、公知の種々のものを好適に用いることができる。
特に好適な冷媒および潤滑油103の組合せとしては、例えば、下記の3例を挙げることができる。これら組合せを用いることで、本実施の形態1と同様に、冷媒圧縮機100において優れた効率および信頼性を実現することが可能となる。
まず、組合せ1としては、冷媒として、例えば、R134aまたはこれ以外の他のHFC系冷媒、あるいはHFC系の混合冷媒を用い、潤滑油103として、エステル油またはエステル油以外のアルキルベンゼン油、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコール、またはこれらの混合油を用いる例を挙げることができる。
また、組合せ2としては、冷媒として、R600a、R290、R744等の自然冷媒もしくはその混合冷媒を用い、潤滑油103として、鉱油、エステル油またはアルキルベンゼン油、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコールのいずれかひとつ、またはこれらの混合油を用いる例を挙げることができる。
さらに、組合せ3としては、冷媒として、R1234yf等のHFO系冷媒もしくはその混合冷媒を用い、潤滑油103としては、エステル油またはアルキルベンゼン油、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコールのいずれかひとつ、またはこれらの混合油を用いる例を挙げることができる。
これらの組合せのうち、特に、組合せ2または組合せ3であれば、温室効果の少ない冷媒を使用することで地球温暖化の抑制を図ることもできる。また、組合せ3では、潤滑油103として例示した一群にさらに鉱油が含まれてもよい。
また、本実施の形態1では、冷媒圧縮機100は、前記の通りレシプロ式(往復動式)であるが、本開示に係る冷媒圧縮機は、レシプロ式に限定されず、回転式、スクロール式、振動式等のように、公知の他の構成であってもよいことは言うまでもない。本開示が適用可能な冷媒圧縮機は、摺動部および吐出弁等を有する公知の構成であれば、本実施の形態1で説明した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
また、本実施の形態1では、冷媒圧縮機100は、商用電源によって駆動されるものであるが、本開示に係る冷媒圧縮機は、これに限定されず、例えば、複数の運転周波数でインバータ駆動されるものであってもよい。冷媒圧縮機がこのような構成であっても、当該冷媒圧縮機が備える摺動部の摺動面に、前述した構成の酸化被膜170を形成することで、基材171に対する密着性が向上するとともに摺動面のなじみ性等も向上するので、摺動部材の耐摩耗性をより一層向上することができる。これにより、各摺動部に給油量が少なくなるような低速運転時、あるいは、電動要素の回転数が増加する高速運転時においても、冷媒圧縮機の信頼性を向上させることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態2では、前記実施の形態1で説明した冷媒圧縮機100を備える冷凍装置の一例について、図7を参照して具体的に説明する。
図7は、前記実施の形態1に係る冷媒圧縮機100を備える冷凍装置の概略構成を模式的に示している。そのため、本実施の形態3では、冷凍装置の基本構成の概略についてのみ説明する。
図7に示すように、本実施の形態3に係る冷凍装置は、本体375、区画壁378、および冷媒回路370等を備えている。本体375は、断熱性の箱体および扉体等により構成されており、箱体はその一面が開口した構成であり、扉体は箱体の開口を開閉する構成である。本体375の内部は、区画壁378により物品の貯蔵空間376と機械室377とに区画される。貯蔵空間376内には、図示しない送風機が設けられている。なお、本体375の内部は、貯蔵空間376および機械室377以外の空間等に区画されてもよい。
冷媒回路370は、貯蔵空間376内を冷却する構成であり、例えば、前記実施の形態1で説明した冷媒圧縮機100と、放熱器372と、減圧装置373と、吸熱器374とを備え、これらが環状に配管で接続された構成となっている。吸熱器374は、貯蔵空間376内に配置されている。吸熱器374の冷却熱は、図7の破線の矢印で示すように、図示しない送風機によって貯蔵空間376内を循環するように撹拌される。これにより貯蔵空間376内は冷却される。
冷媒回路370が備える冷媒圧縮機100は、前記実施の形態1で説明したように、鉄系材料で構成される摺動部材を備え、この摺動部材の摺動面に前述した酸化被膜170が形成されている。
このように、本実施の形態3に係る冷凍装置は、前記実施の形態1に係る冷媒圧縮機100を搭載している。冷媒圧縮機100が備える摺動部では、基材171に対する酸化被膜170の密着性が向上するとともに摺動面のなじみ性等も向上するので、摺動部材の耐摩耗性をより一層向上することができる。そのため、冷媒圧縮機100は、摺動部の摺動ロスを低減することが可能となり、優れた信頼性かつ効率を実現することができる。その結果、本実施の形態3に係る冷凍装置は、消費電力を低減することができるので、省エネルギー化を実現することができる。
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
以上のように、本発明は、低粘度の潤滑油を用いながら信頼性に優れた冷媒圧縮機と、この冷媒圧縮機を用いた冷凍装置を提供することが可能となる。そのため、本発明は、冷凍サイクルを用いた各種機器に幅広く適用することができる。
100 冷媒圧縮機
101 密閉容器
103 潤滑油
106 電動要素
107 圧縮要素
108 クランクシャフト(摺動部材)
170 酸化被膜
170a ケイ素含有部分
170b スポット状ケイ素含有部分
171 基材
200 冷媒圧縮機
201 密閉容器
207 圧縮要素
208 クランクシャフト(摺動部材)
370 冷媒回路
372 放熱器
373 減圧装置
374 吸熱器

Claims (12)

  1. 密閉容器内に粘度がVG2〜VG100の潤滑油を貯留するとともに、
    電動要素と、前記電動要素により駆動され冷媒を圧縮する圧縮要素とを収容し、
    前記圧縮要素を構成する少なくともひとつの摺動部材が、ケイ素を含有する鉄系材料からなる基材と、前記基材表面に形成された酸化被膜とから構成され、
    前記酸化被膜は、
    最表面側に、三酸化二鉄(Fe23)を含有する部分を含むとともに、
    前記基材側に、当該基材よりもケイ素(Si)が多く含有されるケイ素含有部分を含むことを特徴とする、
    冷媒圧縮機。
  2. 前記酸化被膜は、前記ケイ素含有部分よりも表面側に位置し、その周囲よりも部分的にケイ素(Si)の含有量が多い、スポット状ケイ素含有部分を含むことを特徴とする、
    請求項1に記載の冷媒圧縮機。
  3. 前記酸化被膜は、最表面から順に、
    最も多く占める成分が三酸化二鉄(Fe23)である部分と、
    最も多く占める成分が四酸化三鉄(Fe34)である部分と、
    で少なくとも構成されていることを特徴とする、
    請求項1または2に記載の冷媒圧縮機。
  4. 前記酸化被膜は、最表面から順に、
    最も多く占める成分が三酸化二鉄(Fe23)である部分と、
    最も多く占める成分が四酸化三鉄(Fe34)である部分と、
    最も多く占める成分が酸化鉄(FeO)である部分と、
    で少なくとも構成されていることを特徴とする、
    請求項1または2に記載の冷媒圧縮機。
  5. 前記酸化被膜の膜厚は、1〜5μmの範囲内であることを特徴とする、
    請求項1から4のいずれか一項に記載の冷媒圧縮機。
  6. 前記基材は、ケイ素を0.5〜10%の範囲内で含有するものであることを特徴とする、
    請求項1から5にいずれか一項に記載の冷媒圧縮機。
  7. 前記基材である鉄系材料が鋳鉄であることを特徴とする、
    請求項1から6のいずれか一項に記載の冷媒圧縮機。
  8. 前記冷媒をR134a等のHFC系冷媒もしくはその混合冷媒とし、
    前記潤滑油をエステル油またはアルキルベンゼン油、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコールのいずれかひとつ、またはこれらの混合油とすることを特徴とする、
    請求項1から7のいずれか一項に記載の冷媒圧縮機。
  9. 前記冷媒をR600a、R290、R744等の自然冷媒もしくはその混合冷媒とし、
    前記潤滑油を鉱油、エステル油またはアルキルベンゼン油、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコールのいずれかひとつ、またはこれらの混合油とすることを特徴とする、
    請求項1から7のいずれか一項に記載の冷媒圧縮機。
  10. 前記冷媒をR1234yf等のHFO系冷媒もしくはその混合冷媒とし、
    前記潤滑油をエステル油またはアルキルベンゼン油、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコールのいずれかひとつ、またはこれらの混合油とすることを特徴とする、
    請求項1から7のいずれか一項に記載の冷媒圧縮機。
  11. 前記電動要素は、複数の運転周波数でインバータ駆動されることを特徴とする、
    請求項1から10のいずれか一項に記載の冷媒圧縮機。
  12. 請求項1から11のいずれか一項に記載の冷媒圧縮機と、放熱器と、減圧装置と、吸熱器とを含む、これらを配管によって環状に連結した冷媒回路を備えることを特徴とする、冷凍装置。
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