JP2002201347A - ポリエチレンテレフタレート樹脂着色組成物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ４００ｎｍ〜５００ｎｍの有害光を遮光する
性能を有する透明乃至半透明な濃緑色を呈する麦酒容器
や医薬品容器等に好適なポリエチレンテレフタレート樹
脂着色組成物を提供する。 【解決手段】 ポリエチレンテレフタレートを主成分と
する樹脂１００重量部に対して、青色顔料としてカラー
インデックス・ピグメントブルー１５：１、カラーイン
デックス・ピグメントブルー２９のうちのいずれか一方
又は両方と、黄色顔料としてカラーインデックス・ピグ
メントイエロー１４７、カラーインデックス・ピグメン
トイエロー１５１のうちのいずれか一方又は両方とを微
量配合する。さらに、長軸径０．０１μｍ乃至０．１μ
ｍの平均粒子径を有する酸化鉄顔料Ｆｅ₂ Ｏ₃ （ｘＨ₂
Ｏ）を、０．０１重量部乃至０．４重量部配合する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は透明乃至半透明なポ
リエチレンテレフタレート樹脂着色組成物に係り、さら
に詳しくは特定顔料により着色された４００ｎｍ〜５０
０ｎｍの波長域の有害光を遮光する性能を有する透明乃
至半透明な濃緑色を呈する麦酒容器や医薬品容器等に好
適なポリエチレンテレフタレート樹脂着色組成物に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】ポリエチレンテレフタレート樹脂（以下
ＰＥＴ樹脂と称する）は、その優れた機械的性質、ガス
遮断性、耐薬品性、保香性、衛生性等に着目されて各種
の容器、フィルム、シート等に加工されて包装材料とし
て広範に利用されている。これらＰＥＴ樹脂からなる包
装材料は大部分が無着色透明な状態で商品化されている
が、食品、医薬品、化粧品等の用途に依っては遮光性や
装飾性等の性能をさらに賦与するために着色を必要とす
る場合が度々生じる。

【０００３】中でもビン容器は用途的機能として内容物
を保護し、また内容量を外部から透視できるように透明
又は半透明に着色することが多い。従来、合成樹脂材料
に透明度の高い着色を施す方法として染料系の色材を使
用し、溶融混練法により着色する方法が知られている。
この方法で用いられる染料系の色材としては、一般に油
溶性染料と称されるもので、カラーインデックス（Ｃ．
Ｉ．）に記載されているソルベントイエロー３３、ソル
ベントレッド２０、ソルベントグリーン３等が挙げられ
る。これら油溶性染料は基材となる合成樹脂材料の諸性
質、すなわち耐熱性、耐光性、耐アルコール性等を考慮
し、最終用途に適した形で適宜選択され、またその他の
色材（チタンホワイト、カーボンブラック等の無機顔
料、フタロシアニンブルー、キナクリドンレッド等の有
機顔料）と組み合わせて使用されている。

【０００４】ところで、前記油溶性染料の欠点の一つに
移行性（着色された合成樹脂材料からの色材の溶出）の
問題がある。これは油溶性染料が被着色樹脂中に溶解し
ているため、樹脂表面への浮き出し（ブリード性）があ
り、浮き出された染料が成形容器中の内容物に移行して
起こるものである。一方、顔料系色材を使用した場合の
移行性の程度は、染料系色材と比較して格段に少ない
が、顔料系色材は一般的にポリマー中に粒子として存在
するため容器等の透明度としては大幅に劣る結果とな
る。

【０００５】なお、透明乃至半透明の緑色ＰＥＴ樹脂中
空成形体は意匠上、各種包装用容器として実用化されて
おり、近年も特に飲料用途での利用が著しい。この透明
乃至半透明の緑色ＰＥＴ樹脂中空成形体に供されている
ＰＥＴ樹脂着色組成物はＰＥＴ樹脂の前記した優れた諸
性能の他に、各用途に応じた特性を併せて具備するもの
でなければその有用性が損なわれる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】すなわち、たとえば各
種ある飲料の中でも麦酒については、日光に曝されたり
すると日向臭い、所謂日光臭を帯び商品価値を減ずると
いう問題点が指摘されている。これは苦み成分であるイ
ソフムロンの側鎖が光分解して、麦酒タンパクやアミノ
酸から同じく光化学作用で生成する硫化水素と結合して
３−ｍｅｔｈｙｌ−２−ｂｕｔｅｎｅ−１−ｔｈｉｏｌ
を生成するためとされている。この光化学反応は、波長
４００ｎｍ〜５００ｎｍの光線により励起されるから、
麦酒はこの波長域の光線を透過させ難い濃緑色、あるい
は茶褐色を呈する容器に詰めなければならない。

【０００７】しかしながら、透明乃至半透明なポリエチ
レンテレフタレート樹脂着色組成物であって、有害な４
００ｎｍ〜５００ｎｍの波長域の光線を遮光し得る麦酒
容器や医薬品容器等に好適なポリエチレンテレフタレー
ト樹脂着色組成物についてはこれまで開発されてこなか
った。

【０００８】本発明者等は有害な４００ｎｍ〜５００ｎ
ｍの波長域の光線から内容物を保護し得る機能性ＰＥＴ
樹脂であって、且つ内容量を透視し得る濃緑色を呈する
透明乃至半透明のＰＥＴ樹脂着色組成物を得るべく数多
くの色材の研究、開発を行ったところ、特定の緑色顔料
と、特定範囲の粒子径を有する酸化鉄顔料を特定量併用
することによって、前記有害な波長域の光線を遮蔽でき
ることを見出し本発明ポリエチレンテレフタレート樹脂
着色組成物の完成に到った。

【０００９】したがって、本発明の目的は４００ｎｍ〜
５００ｎｍの波長域の有害光を遮光する性能を有する透
明乃至半透明な濃緑色を呈する麦酒容器や医薬品容器等
に好適なポリエチレンテレフタレート樹脂着色組成物を
提供することにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明の構成を詳述すれば、請求項１に係る発明はポ
リエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂１００重
量部に対して、青色顔料としてカラーインデックス・ピ
グメントブルー１５：１、カラーインデックス・ピグメ
ントブルー２９のうちのいずれか一方又は両方と、黄色
顔料としてカラーインデックス・ピグメントイエロー１
４７、カラーインデックス・ピグメントイエロー１５１
のうちのいずれか一方又は両方とを微量配合すると共
に、長軸径０．０１μｍ乃至０．１μｍの平均粒子径を
有する酸化鉄顔料Ｆｅ₂ Ｏ₃ （ｘＨ ₂ Ｏ）を、０．０１
重量部乃至０．４重量部配合して透明乃至半透明の濃緑
色を呈する成形品を得られるようになしたことを特徴と
するポリエチレンテレフタレート樹脂着色組成物であ
る。

【００１１】また、請求項２に係る発明は、ポリエチレ
ンテレフタレートを主成分とする樹脂１００重量部に対
して、青色顔料としてカラーインデックス・ピグメント
ブルー１５：１、カラーインデックス・ピグメントブル
ー２９のうちのいずれか一方又は両方と、黄色顔料とし
てカラーインデックス・ピグメントイエロー１４７、カ
ラーインデックス・ピグメントイエロー１５１のうちの
いずれか一方又は両方とを微量配合すると共に、長軸径
０．０１μｍ乃至０．１μｍの平均粒子径を有する酸化
鉄顔料Ｆｅ₂ Ｏ₃ （ｘＨ₂ Ｏ）を、０．０１重量部乃至
０．４重量部配合し、且つステアリン酸マグネシウムを
０．０１重量部乃至０．５重量部配合して透明乃至半透
明の濃緑色を呈する成形品を得られるようになしたこと
を特徴とするポリエチレンテレフタレート樹脂着色組成
物である。

【００１２】先ず、ＰＥＴ樹脂を緑色に着色する手段と
しては、予備分散処理済みの青色顔料及び黄色顔料を添
加して、溶融混練法にて緑色に着色する。ここで使用さ
れる青色顔料としては、各種実験の結果、内容物である
麦酒等に対する衛生性、安全性を考慮し、カラーインデ
ックス・ピグメントブルー１５：１、及び／又はカラー
インデックス・ピグメントブルー２９が好ましく、黄色
顔料はカラーインデックス・ピグメントイエロー１４
７、及び／又はカラーインデックス・ピグメントイエロ
ー１５１が好ましい。他の構造系を持つ青色顔料及び黄
色顔料を使用した場合は、着色されたＰＥＴ樹脂着色組
成物はほとんど不透明となり、内容物を視認することが
できないので麦酒容器等には不向きとなる。

【００１３】なお、ここで濃緑色に限定しているのはＰ
ＥＴ樹脂着色組成物の麦酒容器に要求される優れた意匠
性があり、且つ衛生性の観点からも充分安全な着色処方
が構成し得るからである。しかしながら、前述の配合処
方による透明乃至半透明化のみでは、内容物である麦酒
等の品質保護の機能性が乏しく、有害な４００ｎｍ〜５
００ｎｍの波長域の光線を充分遮光することができな
い。

【００１４】そこで本発明者等は透明乃至半透明緑色着
色組成物であって４００ｎｍ〜５００ｎｍの有害波長域
の光線を遮光すべく鋭意研究の結果、配合処方上、特定
範囲の平均粒子径を有する酸化鉄、すなわち長軸径の下
限値が０．０１μｍ、上限値が０．１μｍ（因みに短軸
径は０．００１μｍ〜０．０１μｍ）の酸化鉄をポリエ
チレンテレフタレートを主成分とする樹脂に対して所定
の範囲で高分散使用することにより効率良く有害波長域
の光線を遮光でき、内容物である麦酒や、薬品、食品等
の品質を保持し得るＰＥＴ樹脂着色組成物を得られるこ
とが判明した。

【００１５】ここで酸化鉄顔料の長軸粒子径を０．１μ
ｍ以下としたのは、この数値を超える粒子径のものでは
ＰＥＴ樹脂の透明度が失われるからであり、また０．０
１μｍ未満の粒子径を持つ酸化鉄顔料では、経済上、技
術上の理由からその製造が困難であると共に、ＰＥＴ樹
脂に対する分散性も悪くなるからである。さらに、酸化
鉄顔料の重量部割合を、ポリエチレンテレフタレートを
主成分とする樹脂１００重量部に対して、０．０１乃至
０．４部としたのは、０．０１部未満では４００ｎｍ〜
５００ｎｍの有害波長域の遮光効果がほとんどなく、ま
た０．４部を超えるとＰＥＴ樹脂の透明度が失われるか
らである。

【００１６】分散剤としてのステアリン酸マグネシウム
の配合割合を、ポリエチレンテレフタレートを主成分と
する樹脂１００重量部に対して、０．０１重量部乃至
０．５重量部としたのは、使用する酸化鉄の配合割合に
対して０．０１部未満では酸化鉄の分散性に効果がな
く、また０．５部を超えるとＰＥＴ樹脂の機械的物性を
損なうからである。なお、ステアリン酸マグネシウムの
添加量によってはＰＥＴ樹脂の機械的物性を損なう可能
性があるが、これを補うため場合によっては、エチレン
ビスステアリン酸アミドをＰＥＴ樹脂１００部に対して
０．０１部乃至０．５部添加するとよい。勿論、高級脂
肪酸金属塩は使用する酸化鉄顔料の高分散助剤としても
効果的に機能する。

【００１７】本発明に係るＰＥＴ樹脂着色組成物を得る
に際しては他の着色剤で透明又は半透明に調色して使用
してもよく、また必要に応じて抗酸化剤、離型剤、その
他滑剤などを併用してもよい。なお、ＰＥＴ樹脂が結晶
化すると白濁するので、成形方法に充分注意して透明度
を保つ必要がある。

【００１８】

【発明の実施の形態】以下、本発明に係るポリエチレン
テレフタレート樹脂着色組成物の実施例を比較例と併せ
て説明する。 〔実施例１〕市販のＰＥＴ樹脂（日本ユニペット株式会
社：ＲＴ−５４３）１００重量部に対し、０．０５μｍ
の平均長軸径を有する酸化鉄を０．２部添加すると共
に、青色顔料としてカラーインデックス・ピグメントブ
ルー１５：１を０．０２部、黄色顔料としてカラーイン
デックス・ピグメントイエロー１４７を０．０２部、さ
らにエチレンビスステアリン酸アミドとステアリン酸マ
グネシウムを各々０．０１部用いて予備分散処理の上、
添加し溶融混練法にて濃緑色を呈するＰＥＴ樹脂組成物
を得た。このＰＥＴ樹脂組成物を用いて１リットルボト
ルを成型したところ、濃緑色に着色されつつも透明性を
保持した容器が得られた。このＰＥＴ樹脂製濃緑色容器
は実験の結果、水、アルコールによる色溶出がなく、４
００ｎｍ〜５００ｎｍの波長域の有害光を効率良く遮光
した。

【００１９】〔実施例２〕市販のＰＥＴ樹脂（日本ユニ
ペット株式会社：ＲＴ−５４３）１００重量部に対し、
０．０２μｍの平均長軸径を有する酸化鉄を０．２部添
加すると共に、青色顔料としてカラーインデックス・ピ
グメントブルー２９を０．０８部、黄色顔料としてカラ
ーインデックス・ピグメントイエロー１５１を０．０４
部、さらにエチレンビスステアリン酸アミド０．２部を
用いて予備分散処理の上、添加し溶融混練法にて濃緑色
を呈するＰＥＴ樹脂着色組成物を得た。このＰＥＴ樹脂
組成物を用いて１リットルボトルを賦型したところ、濃
緑色に着色され、且つ半透明を保持した容器が得られ
た。このＰＥＴ樹脂製濃緑色容器は良好な半透明状を呈
しており、内容量を充分視認することができた。また、
前記実施例１と同等の遮光性能を有していた。

【００２０】〔実施例３〕市販のＰＥＴ樹脂（日本ユニ
ペット株式会社：ＲＴ−５４３）１００重量部に対し、
０．０８μｍの平均長軸径を有する酸化鉄を０．２部添
加する他は、前記実施例１と同様の方法にて１リットル
ボトルを賦型したところ、半透明で、且つ濃緑色を呈す
る容器が得られた。このＰＥＴ樹脂製濃緑色容器は４０
０ｎｍ〜５００ｎｍの波長域の有害光を効率良く遮光し
た。

【００２１】〔比較例１〕実施例１と同じＰＥＴ樹脂１
００重量部に対し、０．２μｍの平均長軸径を有する酸
化鉄を０．２部添加した他は、前記実施例１と同様の方
法にて１リットルボトルを賦型したところ、濃緑色を呈
しているものの、内容物を外部から視認できる程の透明
度のない意匠性に劣る容器が得られた。

【００２２】〔比較例２〕実施例１と同じＰＥＴ樹脂１
００重量部に対し、０．０５μｍの平均長軸径を有する
酸化鉄を０．５部添加した他は、前記実施例１と同様の
方法にて１リットルボトルを賦型したところ、全体に暗
い濃緑色を呈し、透明度のない容器が得られた。

【００２３】

【発明の効果】本発明に係るＰＥＴ樹脂着色組成物を用
いて麦酒容器や、医薬品容器等を賦型することにより下
記の効果が達成される。 軽量で市販の硝子製麦酒瓶と同等の４００ｎｍ〜５０
０ｎｍの波長域の有害光を遮光する濃緑色透明乃至濃緑
色半透明の容器が得られ、所謂日光臭を防ぐことができ
る。 色材溶出の問題が起こらず、麦酒用以外でも紫外線を
受けることによって劣化するおそれのある医薬品や、食
品等の分野においても内容量を外部から確認できると共
に内容物の保護が図れるＰＥＴ樹脂製濃緑色容器が得ら
れる。 供用される組成物は安全性、衛生性に優れ、高品質の
濃緑色に着色された透明乃至半透明容器が得られる。 ＰＥＴ樹脂は元々燃焼カロリーが、ポリエチレン等の
他の合成樹脂材と比較して低いので廃棄物処理が経済的
であり、また設備等を必要とするが本発明による濃緑色
ＰＥＴ樹脂製容器はリサイクルも可能である。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 菅原 裕司 東京都千代田区鍛冶町１丁目９番14号 日 本ピグメント株式会社内 Ｆターム(参考） 2H048 CA05 CA14 CA29 4J002 CF061 DE118 FD096 FD097 FD098 GG01

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ポリエチレンテレフタレートを主成分と
   する樹脂１００重量部に対して、青色顔料としてカラー
   インデックス・ピグメントブルー１５：１、カラーイン
   デックス・ピグメントブルー２９のうちのいずれか一方
   又は両方と、黄色顔料としてカラーインデックス・ピグ
   メントイエロー１４７、カラーインデックス・ピグメン
   トイエロー１５１のうちのいずれか一方又は両方とを微
   量配合すると共に、長軸径０．０１μｍ乃至０．１μｍ
   の平均粒子径を有する酸化鉄顔料Ｆｅ₂ Ｏ₃ （ｘＨ
   ₂ Ｏ）を、０．０１重量部乃至０．４重量部配合して透
   明乃至半透明の濃緑色を呈する成形品を得られるように
   なしたことを特徴とするポリエチレンテレフタレート樹
   脂着色組成物。
2. 【請求項２】 ポリエチレンテレフタレートを主成分と
   する樹脂１００重量部に対して、青色顔料としてカラー
   インデックス・ピグメントブルー１５：１、カラーイン
   デックス・ピグメントブルー２９のうちのいずれか一方
   又は両方と、黄色顔料としてカラーインデックス・ピグ
   メントイエロー１４７、カラーインデックス・ピグメン
   トイエロー１５１のうちのいずれか一方又は両方とを微
   量配合すると共に、長軸径０．０１μｍ乃至０．１μｍ
   の平均粒子径を有する酸化鉄顔料Ｆｅ₂ Ｏ₃ （ｘＨ
   ₂ Ｏ）を、０．０１重量部乃至０．４重量部配合し、且
   つステアリン酸マグネシウムを０．０１重量部乃至０．
   ５重量部配合して透明乃至半透明の濃緑色を呈する成形
   品を得られるようになしたことを特徴とするポリエチレ
   ンテレフタレート樹脂着色組成物。