JP2002193698A - ZnO単結晶の製造方法 - Google Patents

ZnO単結晶の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 種結晶あるいは基板上に、望みの方向に任意
の大きさの良質な単結晶が短時間に製造できるZnO単結
晶の製造方法を提供する。 【課題を解決する手段】溶質である酸化亜鉛ZnOと、溶
媒である酸化バナジウム及び/又は酸化硼素と混合して
加熱融解したのち、融液を降温させ、酸化亜鉛ZnOの微
結晶を種結晶上あるいは基板上に析出、成長させること
を特徴とするZnO単結晶の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は酸化亜鉛の溶液ひきあ
げ法と溶媒移動帯溶融法による単結晶製造方法ならびに
液相成長による単結晶膜作成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】酸化亜鉛は酸化物でありながらバンドギ
ャップが3.3eV の直接遷移型半導体になる興味ある物質
で、青色・紫外発光材料として応用の期待できる材料で
ある。そのほかにも圧電性、蛍光性、光伝導性を示し、
多様な機能を備えており、広く応用が考えられる物質で
ある。そのためには大型の良質な単結晶が必要となり、
その製造方法の開発が望まれている。ZnOは1975℃の
高融点で、蒸発しやすい物質であるため、単結晶と同一
組成の原料から単結晶を製造することが出来ない。その
ためチョクラルスキー法が適用できない。そのため単結
晶は目的物質(ZnO)を溶媒に混合し、その混合溶液を
降温する事によってその混合溶液を過飽和濃度以上の状
態にし、目的物質を融液から単結晶として析出させて得
る静置徐冷法や水熱合成法が製造方法として採用されて
いた。しかし望みの結晶軸方向に長い大型単結晶を得る
ことができず、結晶製造に長時間要する欠点があった。
【0003】静置徐冷法では溶媒としてPbF2を用いるこ
とが多く、30X30ミリの大きい結晶を育成した例が報告
されている(参考文献1J.W.Nielsen and E.F.Dearborn
J.Phys. Chem. 64, (1960) 1762)。また WanklynはV
2O5やP2O5を溶媒に用いたが、単独でもV2O5を用いてい
る(参考文献2 B.M.Wanklyn J.Cryst. Growth 7, (19
70) 107)。しかし、われわれが参考にしたZnOーV2O5
の相図(参考文献3V.A.Makarov,A.A.Fotiev and L.N.S
ereBryakova, Zh. Neorg. Kim., 16, (1971) 2849)が
発表される以前の報告なので、ZnO単結晶を初晶として
析出する組成範囲外(ZnO:V2O5=3:1と2.84:1)の組
成から育成していて、ZnO単結晶が育成されたことが不
思議である。水熱合成でも、ZnO単結晶が製造されてい
るが、(参考文献4R.A.Laudise, E.D.Kolb and A.J.Ca
poraso, J.Am.Ceram.Soc., 47, (1964) 9,参考文献5
関口、宮下、」小原、宍戸、坂上、結晶成長学会誌、2
6, (1999) 39)約1センチの大きさの単結晶を得るのに
10〜20日もの時間を要してしまうことがわかる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述したように静置徐
冷法において育成される結晶は板状であまり大きいとは
いえない。水熱合成法においては結晶育成に10〜20日と
長時間を要する欠点があった。
【0005】
【問題を解決するための手段】この発明はこのような点
にに鑑み成されたもので、目的であるZnOを初晶として
析出させ得る組成範囲内の溶液を酸化亜鉛と酸化バナジ
ウムと酸化硼素から構成し、その融液を降温させること
により融液中に析出してくるZnO微結晶を融液に接触さ
せた種結晶上ならびに基板状に結晶化させ、これを溶液
ひきあげ法ならびに溶媒移動帯溶融法によってZnO単結
晶を製造する方法、ならびに液相成長法によってZnO単
結晶膜を製造する方法である。静置徐冷法とは異なり、
種結晶あるいは基板上に、望みの方向に任意の大きさの
良質な単結晶が短時間に製造できるようにしたものであ
る。
【0006】まず、この発明の原理について述べる。図
1はZnO-V2O5系の相図である(参考文献3)。ZnOが75
から100モル%、V2O5が25から0モル%の組成に液相線
が存在し、この間の混合組成の原料は液相線上の温度で
融解し、融液を徐々に降温させるとZnOが固相となって
析出し、融液の組成は液相線に沿ってV2O5側にずれてゆ
く。さらに、ZnOが75モル%、V2O5が25モル%の点から
左にずれるとZnOは析出せず、Zn4V2O9が固相として析出
し、上記の組成範囲以外ではZnOが析出成長が出来な
い。この状態図において何らかの異種元素を少量混合し
たときに、状態図が特性的に変わらない場合には同じZn
O固溶体が固相となって析出してくる。
【0007】また図2および図3はZnO-B2O3系の相図で
ある(参考文献6 D.E.Harriso andF.A.Hummel, J.Elec
torochem.Soc., 103, (1956) 496、参考文献7Yu.S.Leo
nov, Zhur. Neorg. Kim., 3, (1958) 1246.)。ZnOが約
75から100モル%、B2O3が約25から0モル%の組成に液
相線が存在し、同様にこの間の混合組成の原料は液相線
上の温度で融解し、融液を徐々に降温させるとZnOが固
相となって析出し、融液の組成は液相線に沿ってB2O3
にずれてゆく。さらに。ZnOが75モル%、B2O3が25モル
%の点から右にずれるとZnOは析出せず、他の相が固相
として析出し(これらの相図ではお互いに析出相が一致
していないが)、上記の組成範囲以外ではZnOが析出成
長が出来ない。この状態図において何らかの異種元素を
少量混合したときに、状態図が特性的に変わらない場合
には同じZnO固溶体が固相となって析出してくる。
【0008】また溶質ZnOと溶媒であるV2O5とB2O3のそ
れぞれの混合組成比はZnOが75から100モル%、溶媒が25
から0モル%の組成と同じであるので、溶質ZnOに対し
て溶媒V2O5とB2O3の両者の混合物が25モル%以上になら
なければ、V2O5とB2O3の両者をお互いに0から100モル%
混合した溶媒を用いることによっても、同様にZnOが固
相となって析出させることができ、何らかの異種元素を
少量混合したときに、状態図が特性的に変わらない場合
には同じZnO固溶体が固相となって析出してくる。ZnOは
異種元素の混入によって著しく特性を変えることが知ら
れており、Li,Na,K,Cu,Ag,N,P,As,Cr,Al,Bi,Sb,Co,Mn,P
rが数%以下混合され、p型半導体化、導電率の制御、バ
リスタなどの応用がある。この発明ではこれらの結晶を
同一のZnOまたは格子定数と融点の近い種子結晶上に析
出したZnO単結晶を育成し、ZnO単結晶膜を基板上に成長
させる。
【0009】実施例 以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。 実施例1 ZnO単結晶を溶液ひきあげ法によって製造する例を示
す。図4に使用した単結晶引き上げ装置を示す。図4に
おいて、1 は引き上げシャフト、2は白金シャフト、
3は保温剤、4は高周波加熱コイル、5は熱電対、6は
るつぼ支持物、7は種結晶、8は成長した単結晶、9は
出発原料、10は白金るつぼである。ZnOとV2O5をモル
比にして78:22に混合して、その混合物100gを、口径45
mm、高さ30mmの発熱体を兼ねた白金るつぼ10に入れ、高
周波加熱コイル4による誘導加熱方式により約1050℃ま
で加熱し溶融させたのち、種結晶であるZnO単結晶7を融
液表面に接触させる。融液を徐々に降温させると、融液
中で最も温度の低い種結晶と接触している融液の界面に
ZnO微結晶が少しずつ析出してきて、種結晶7上に結晶化
し成長する。このようにして成長した単結晶8を融液か
ら徐々に引き上げる。すなわち、融液を降温しながら、
育成させた単結晶の引き上げを同時に行ってゆくのであ
る。このときの製造条件としてはZnO単結晶8をひきあげ
る速度は0.5〜1.0mm/h、融液降温速度は2〜10℃/h、結
晶回転数15〜30rpm、雰囲気は大気中であった。10x10
x4mmの大きさの茶褐色のZnO単結晶を6時間の製造時間
で得ることが出来た。
【0010】実施例2 実施例1と同じ装置を用いてZnO単結晶を溶液ひきあげ法
によって製造した。ZnOとV2O5とB2O3をモル比にして7
8:11:11に混合し、不純物としてLi2CO3を2g添加し、
その混合物102gを白金るつぼ10に入れ、製造条件として
ひきあげ速度0.5〜1.0mm/h、融液降温速度2〜10℃/h、
結晶回転数15〜30rpm、雰囲気は大気中で、8x8x3mmの
大きさの黄色のZnO単結晶を6時間の製造時間で得ること
が出来た。
【0011】実施例3 実施例1と同じ装置を用いてZnO単結晶を溶液ひきあげ法
によって製造した。ZnOとB2O3とモル比にして78:22に
混合し、その混合物100gを白金るつぼ10に入れ、製造条
件としてひきあげ速度0.5〜1.0mm/h、融液降温速度2〜1
0℃/h、結晶回転数15〜30rpm、雰囲気は大気中で、10x
10x5mmの大きさのやや褐色のZnO単結晶を10時間の製造
時間で得ることが出来た。以上実施例中融液から気泡が
出ているのが観測されたので、酸素雰囲気中での育成を
おこなったが、単結晶の成長は可能であった。結晶の特
性の比較は行っていない。
【0012】実施例4 ZnO単結晶をフローティングゾーン法によって製造し
た。図5に使用したフローティングゾーン単結晶製造装
置を示す。図において1は原料棒、2は種結晶、3は溶
融帯域(溶媒)、4および5はそれぞれ回転軸、6は石
英管、7はハロゲンランプ、8は回転楕円鏡、9は観察
窓、10はレンズ、11は観察用スクリーンである。Zn
O粉末を加圧成形器で直径6mm、長さ7cmの丸棒状にし
て1400℃で15時間均質に焼成してZnO原料棒1とす
る。同様に、ZnOとV2O5とB2O3をモル比にして78:11:1
1に混合した粉末を750℃で15時間焼成し、その粉末を
加圧成形器で直径6mmの丸棒状にして800℃で15時間
均質に焼成して溶媒とする。しかるのち、この円柱棒状
の溶媒を径方向に切断し円盤状にしてZnO原料棒に融着
する。このようにZnO原料棒の先端に溶媒を融着した円
柱棒状試料を、赤外線加熱方式を採用したフローティン
グゾーン法単結晶製造装置の上部試料回転軸4に固定
し、同様に下部回転軸5に種結晶2としてZnO焼成棒を
固定する。なお、この場合種結晶2と溶媒をつけたZnO
原料棒1が回転軸に対して偏心しないように設定する。
そしてハロゲンランプ7を用い赤外線を使用して上記溶
媒を加熱融解したのちに種結晶を溶媒に接触させ、液体
の表面張力により原料棒と種結晶の間に溶融溶媒を保持
させる。しかる後に原料棒と種結晶とを互いに反対方向
に30rpmで回転させる。さらに、この融けた溶媒を0.
5mm/hrの速度で原料棒方向、すなわち上方に移動させ
て種結晶にZnO単結晶を育成させる。この結果、直径 4
mm、長さ20mmの円柱棒状のZnO結晶が得られた。焼成棒
を種結晶としたため、いくつかのグレインからなる結晶
であった。また上軸の原料棒1には直径100ミクロ
ン、長さ数ミリのZnO針状結晶が作製されており、ZnO焼
成原料棒を母体(種結晶)としてZnOとV2O5とB2O3の請
求項2で請求した組成範囲の溶液が存在すれば、ZnO針
状結晶が作製されることもわかった。
【0013】
【本発明の効果】本発明のZnO単結晶の製造方法は、望
みの方向に任意の大きさの良質な単結晶が短時間に製造
できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、ZnO-V2O5系の相図
【図2】は、ZnO-B2O3系の相図
【図3】は、ZnO-B2O3系の相図
【図4】は、単結晶引き上げ装置
【図5】は、赤外線集中加熱方式の単結晶製造装置
【符号の説明】
1 引き上げシャフト 2 白金シャフト 3 保温剤 4 高周波加熱コイル 5 熱電対 6 るつぼ支持物 7 種結晶 8 成長した単結晶 9 出発原料 10白金るつぼ

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶質である酸化亜鉛ZnOと、溶媒である
    酸化バナジウム及び/又は酸化硼素と混合して加熱融解
    したのち、融液から、酸化亜鉛ZnOの微結晶を種結晶上
    あるいは基板上に析出、成長させることを特徴とするZn
    O単結晶の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記酸化亜鉛ZnOと溶媒の酸化バナジウ
    ム及び/又は酸化硼素の混合比が99.9〜75モル%対0.1
    〜25モル%であり、溶媒である酸化バナジウムと酸化硼
    素の混合比は100〜0モル%対0〜100モル%であることを
    特徴とする請求項1項記載のZnO単結晶の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記酸化亜鉛ZnOが少量の異種元素を含
    むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のZnO
    単結晶の製造方法。
  4. 【請求項4】 異種元素がZnOと固溶限界内で固溶体を
    形成するものから選ばれる1種または2種以上の元素で
    ある請求項1〜請求項3のいずれかひとつに記載のZnO
    単結晶の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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