JP2002180330A - 延伸複合繊維 - Google Patents

延伸複合繊維

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JP2002180330A JP2000380187A JP2000380187A JP2002180330A JP 2002180330 A JP2002180330 A JP 2002180330A JP 2000380187 A JP2000380187 A JP 2000380187A JP 2000380187 A JP2000380187 A JP 2000380187A JP 2002180330 A JP2002180330 A JP 2002180330A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鞘芯構造の複合型であって、高強度を有し、
かつ工業的に安価に生産性よく製造することができる延
伸複合繊維を提供する。 【解決手段】 結晶性プロピレン系重合体を芯材とし、
他のオレフィン系重合体を鞘材とする溶融紡糸された複
合未延伸糸を延伸処理してなるものであって、破断強度
が5.74cN/dTexより高く、伸度が30%以下
で、かつヤング率が43.1cN/dTex以上の延伸
複合繊維である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、延伸複合繊維に関
し、さらに詳しくは、鞘芯構造の複合型であって、高強
度を有し、かつ工業的に安価に生産性よく製造すること
ができ、乾式不織布や、電池用セパレータ等の湿式不織
布などの用途に好適な延伸複合繊維に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】合成繊維、樹脂フィルム、樹脂シート等
の結晶性高分子製品の物性は、その内部構造(結晶性高
分子の微細構造)の影響を強く受け、当該内部構造は延
伸や熱処理によって比較的容易に変化する。そして、未
延伸物よりも延伸物の方が実用上好ましい物性を有して
いることが多く、より高倍率で延伸した方が強度、ヤン
グ率等の物性に優れた延伸物が得られる。このため、結
晶性高分子製品、特に合成繊維、樹脂フィルム、樹脂シ
ート等を得る場合には、通常、延伸処理が施される。ま
た、延伸処理後に必要に応じて熱処理が施される。
【0003】結晶性高分子製品を得る際の延伸方法とし
ては種々の方法が知られているが、例えば延伸合成繊維
を得る際には、金属加熱ロールや金属加熱板等を用いて
の接触加熱延伸、あるいは温水、常圧〜0.2MPa程
度の水蒸気、遠赤外線等を用いての非接触加熱延伸等の
延伸方法が適用されている。
【0004】ところで、不織布などにおいては、鞘芯構
造を有する複合繊維、例えばポリプロピレン樹脂を芯材
とし、ポリエチレン樹脂を鞘材とする鞘芯複合繊維を使
用することが行われている。そして、この鞘芯複合繊維
は、強度を高めるために、通常前記の各方法による延伸
処理が施されている。
【0005】この場合、前記延伸方法では、複合繊維に
おける鞘材の融点未満で、かつできるだけ高い温度下、
低変形速度で高倍率に延伸するほど、その延伸繊維の強
度が向上するが、高変形速度で高倍率に延伸しようとす
ると、容易に延伸切れが生じる。このため、工業的に生
産し得る延伸複合繊維の繊維強度、すなわち50m/分
以上の速度で生産し得る延伸複合繊維の繊維強度は、一
般に3.97cN/dTex(センチニュートン/デシ
テックス)程度で、伸度は30%以上、ヤング率は4
3.1cN/dTex程度である。
【0006】上述したように、結晶性高分子の微細構造
の変化は延伸条件に大きく左右され、その結果として結
晶性高分子製品の物性もまた延伸条件に大きく左右され
るわけであるが、無理に延伸しようとすると延伸切れ等
の不具合が生じる。このため、従来の延伸方法を利用し
て工業的に製造することのできる結晶性高分子からなる
延伸繊維の物性値には、その材質に応じた上限がある。
しかしながら、結晶性高分子製品は様々な分野において
利用されており、その需要の増加に伴って、該結晶性高
分子製品については、物性の向上が常に求められてい
た。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
事情のもとで、鞘芯構造の複合型であって、高強度を有
し、かつ工業的に安価に生産性よく製造することがで
き、乾式不織布や、電池用セパレータ等の湿式不織布な
どの用途に好適な延伸複合繊維を提供することを目的と
するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するために鋭意研究を重ねた結果、結晶性プロピ
レン系重合体を芯材とし、他のオレフィン系重合体を鞘
材とする溶融紡糸された複合未延伸糸を延伸処理、好ま
しくは加圧飽和水蒸気中で延伸処理してなる特定の物性
を有する延伸複合繊維が、その目的に適合し得ることを
見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至っ
た。
【0009】すなわち、本発明は、結晶性プロピレン系
重合体を芯材とし、かつ上記結晶性プロピレン系重合体
以外のオレフィン系重合体を鞘材とする溶融紡糸された
複合未延伸糸を延伸処理してなるものであって、破断強
度が5.74cN/dTexより高く、伸度が30%以
下で、かつヤング率が43.1cN/dTex以上であ
ることを特徴とする延伸複合繊維、好ましくは前記複合
未延伸糸を、100℃以上で、かつ鞘材の融点未満の温
度を有する加圧飽和水蒸気中で延伸処理して得られた延
伸複合繊維を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の延伸複合繊維は、結晶性
プロピレン系重合体を芯材とし、かつ上記結晶性プロピ
レン系重合体以外のオレフィン系重合体を鞘材とする溶
融紡糸された複合未延伸糸を延伸処理することにより、
得られたものであって、延伸処理後に特に捲縮付与工程
を経ることなく非捲縮繊維としたものが好ましい。
【0011】上記複合未延伸糸における芯材を構成する
結晶性プロピレン系重合体としては、アイソタクチック
ポリプロピレン系樹脂が好ましく用いられる。中でもア
イソタクチックペンタッド分率(IPF)が、好ましく
は85%以上、より好ましくは90%以上のものが有利
である。また、分子量分布の指標であるQ値(重量平均
分子量/数平均分子量Mw/Mn比)は6以下、メルト
インデックスMI(温度230℃、荷重2.16kg)
は3〜50g/10分の範囲が好ましい。上記IPFが
85%未満では立体規則性が不充分で結晶性が低く、得
られる延伸繊維における強度などの物性に劣る。
【0012】なお、アイソタクチックペンタッド分率
(IPF)(一般にmmmm分率ともいわれる)は、任
意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−
炭素結合による主鎖に対して、側鎖である5つのメチル
基がいずれも同方向に位置する立体構造の割合を示すも
のであって、同位体炭素核磁気共鳴スペクトル(13C−
NMR)にけるPmmmm(プロピレン単位が5個連続して
アイソタクチック結合した部位における第3単位目のメ
チル基に由来する吸収強度)およびPw(プロピレン単
位の全メチル基に由来する吸収強度)から、式 IPF(%)=(Pmmmm/Pw)×100 によって求めることができる。
【0013】また、このポリプロピレン系未延伸繊維に
用いられるポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独
重合体であってもよいし、プロピレンとα−オレフィン
(例えばエチレン、ブテン−1など)との共重合体であ
ってもよい。すなわち、結晶性プロピレン系重合体とし
ては、例えば結晶性を有するアイソタクチックプロピレ
ン単独重合体、エチレン単位の含有量の少ないエチレン
−プロピレンランダム共重合体、プロピレン単独重合体
からなるホモ部とエチレン単位の含有量の比較的多いエ
チレン−プロピレンランダム共重合体からなる共重合部
とから構成されたプロピレンブロック共重合体、さらに
前記プロピレンブロック共重合体における各ホモ部また
は共重合部が、さらにブテン−1などのα−オレフィン
を共重合したものからなる結晶性プロピレン−エチレン
−α−オレフィン共重合体などが挙げられる。
【0014】このような結晶性プロピレン系重合体は、
チーグラー・ナッタ型触媒、あるいはメタロセン系触媒
などを用いて、プロピレンを単独重合又はプロピレンと
他のα−オレフィンとを共重合させることにより、得る
ことができる。
【0015】一方、該複合未延伸糸における鞘材を構成
する上記結晶性プロピレン系重合体以外のオレフィン系
重合体としては、例えば高密度、中密度、低密度ポリエ
チレンや直鎖状低密度ポリエチレンなどのエチレン系重
合体、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体、
具体的にはプロピレン−ブテン−1ランダム共重合体、
プロピレン−エチレン−ブテン−1ランダム共重合体、
あるいは軟質ポリプロピレンなどの非結晶性プロピレン
系重合体、ポリ4−メチルペンテン−1などを挙げるこ
とができる。これらのオレフィン系重合体は、1種を単
独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いても
よいが、これらの中で、特に強度の点から高密度ポリエ
チレンが好適である。
【0016】この鞘成分として用いられるオレフィン系
重合体のメルトインデックスMI(温度190℃、荷重
2.16kg)は、1〜40g/10分の範囲が好まし
い。また、この複合未延伸糸における鞘材と芯材との比
率としては特に制限はないが、断面積比において70:
30ないし40:60の範囲が好ましくは、強度を上げ
る目的であれば、芯材の比率を高めるのが好ましい。
【0017】本発明で用いる複合未延伸糸は、前記の芯
材とそれを被覆する鞘材とから構成されたものであり、
その製造方法については特に制限はなく、従来、鞘芯複
合型繊維の製造において使用されている公知の方法を用
いることができる。例えば、前記の鞘材および芯材を用
い、押出し機2台と複合型繊維用ノズルを備えた複合紡
糸装置により、紡糸温度200〜260℃程度で溶融紡
糸することにより、鞘心構造の複合未延伸糸が得られ
る。
【0018】本発明の延伸複合繊維は、前記の鞘芯構造
の複合延伸糸を延伸処理してなるものであり、その物性
としては、まず、破断強度は、5.74cN/dTex
(約6.5g/デニール)より高く、好ましくは6.0
cN/dTex以上、より好ましくは6.3cN/dT
ex以上である。その上限については特に制限はない
が、一般的には50cN/dTexである。
【0019】伸度は30%以下であり、またヤング率
は、43.1cN/dTex(約400kg/mm2
以上、好ましくは44.2cN/dTex以上、より好
ましくは48.5cN/dTex以上である。その上限
については特に制限はないが、一般的には110cN/
dTex以下である。
【0020】このような物性を有する本発明の延伸複合
繊維は、不織布にした場合には、強度、ヤング率が高い
ために、金属などの鋭利な硬質部材に対する耐貫通性に
優れるなどの特徴がある。
【0021】このように、本発明の延伸複合繊維は、優
れた物性を有し、その延伸処理方法としては、前述の物
性を有する延伸複合繊維が得られる方法であればよく、
特に制限はないが、以下に示すように、加圧飽和水蒸気
中で前述の鞘芯構造の複合未延伸糸を延伸処理すること
により、所望の物性を有する延伸複合繊維を効果的に得
ることができる。
【0022】本発明においては、加圧飽和水蒸気中での
延伸処理を行う前に、所望により予備延伸処理を行って
もよい。この予備延伸工程においては、続いて行われる
本延伸工程における延伸温度よりも低い温度で複合未延
伸糸の延伸処理が行われる。この予備延伸処理方法とし
ては、例えば一般的に知られている金属加熱ロールや金
属加熱板などを用いた接触加熱延伸、あるいは温水、常
圧〜0.2MPa程度の水蒸気や熱風などの加熱流体、
遠赤外線などの熱線を用いた非接触加熱延伸などの方法
を適用することができる。さらに、本延伸工程で使用す
る高圧蒸気延伸槽と同じシステムにより、本延伸工程に
おける延伸温度よりも低い温度で予備延伸処理すること
も可能である。
【0023】この予備延伸工程における延伸倍率として
は、本延伸処理を含めた全延伸倍率の25〜90%の範
囲が適しており、予備延伸装置のシステム、延伸状態な
どによって、延伸条件を適宜選択すればよい。特に、予
備延伸処理を1段で行ったのち、本延伸処理を行う2段
階延伸の場合、予備延伸倍率は、全延伸倍率の25〜8
5%の範囲が好ましく、さらに35〜80%の範囲が好
ましい。また、該予備延伸処理は1段階で行ってもよい
し、2段以上の多段階で行なってもよく、多段階で行う
場合には、延伸温度を一定とし、予備延伸倍率を多段階
にする方法や、延伸温度に勾配を与えながら、延伸倍率
を多段階にする方法を用いることができる。
【0024】一方、本延伸工程は、複合未延伸糸または
前述の予備延伸工程で得られた複合未延伸糸の予備延伸
処理物を、100℃以上で、かつ鞘材の融点未満の温度
を有する加圧飽和水蒸気により直接加熱して、本延伸処
理する工程である。
【0025】ここで、本延伸処理するには、例えば下記
の装置を用い、延伸処理する方法を採用することができ
る。すなわち、延伸装置として、複合未延伸糸またはそ
の予備延伸処理物を導入するための被本延伸処理物導入
孔と延伸複合繊維を引き出すための延伸複合繊維引き出
し孔を有する気密性容器からなり、かつ絶対圧が好まし
くは1.5MPa以上の加圧飽和水蒸気を充填した延伸
槽が用いられる。この延伸槽においては、被本延伸処理
物導入孔および延伸複合繊維引き出し孔には、それぞれ
延伸槽内の加圧水蒸気が洩出するのを防止するために、
加圧水を利用した漏出防止機構が設けられている。
【0026】まず、複合未延伸糸またはその予備延伸処
理物を、被本延伸処理物導入孔に設けられた漏出防止機
構における加圧水中に導き、被本延伸処理物の表面に水
分を付着させたのち、これを被本延伸処理物導入孔から
延伸槽内に導き、本延伸処理する。この際、被本延伸処
理物が水中を通過するのに要する時間は、概ね0.1秒
以上とするのが有利である。本延伸処理は1段階で行っ
てもよいし、2段以上の多段で行ってもよい。
【0027】延伸複合繊維は、延伸複合繊維引き出し孔
から引き出されて、該引き出し孔に設けられた漏出防止
機構における加圧水中に導かれ、速やかに冷却される。
この際、延伸複合繊維が水中を通過するのに要する時間
は、概ね0.2秒以上とするのが有利である。
【0028】上記本延伸処理においては、通常110℃
以上の加圧飽和水蒸気が用いられる。この温度が110
℃未満では高倍率延伸および高速延伸を行うことが困難
となり、実用的でない。また、加圧飽和水蒸気の温度
は、鞘材のオレフィン系重合体が軟化しない範囲であれ
ば、高い方が基本的には好ましいが、あまり高すぎると
高圧を必要とし延伸装置の設備費が高くつき、経済的に
不利となる。延伸倍率、延伸速度および経済性などを考
慮すると、この加圧飽和水蒸気の好ましい温度は115
℃〜140℃の範囲であり、特に120〜135℃の温
度になるような加圧飽和水蒸気が好適である。
【0029】本延伸倍率は、複合未延伸糸またはその予
備延伸処理物の繊度に応じて適宜選定されるが、通常全
延伸倍率が4.0〜15.0倍、好ましくは6.0〜1
0.0倍になるように選定される。また、本延伸速度
は、一般に40〜200m/分程度である。
【0030】前記本延伸処理に用いられる延伸装置の具
体例としては、以下に示す構造のものを挙げることがで
きる。すなわち、複合未延伸糸またはその予備延伸処理
物を導入するための被本延伸処理物導入孔と延伸複合繊
維を引き出すための延伸複合繊維引き出し孔を有する気
密性容器からなり、かつ延伸媒体として加圧飽和水蒸気
が充填されている延伸槽部と、当該延伸槽部における上
記被本延伸処理物導入孔側に密接配置されている第1の
加圧水槽部と、前記の延伸槽部における延伸複合繊維引
き出し孔側に密接配置されている第2の加圧水槽部と、
前記第1の加圧水槽部の外側から当該第1の加圧水槽部
内、前記の被本延伸処理物導入孔、前記の延伸槽部内、
前記の延伸複合繊維引き出し孔および前記第2の加圧水
槽部内を経由して前記第2の加圧水槽の外へ延伸複合繊
維を導くことができるように前記第1の加圧水槽部およ
び前記第2の加圧水槽部それぞれに形成されている透孔
と、前記第1の加圧水槽部内に被本延伸処理物を送り込
むための被本延伸処理物送出機構と、この送出機構によ
る被本延伸処理物の送り込み速度よりも高速で前記第2
の加圧水槽部から延伸複合繊維を引き出すための延伸複
合繊維引き出し機構とを有している延伸装置が挙げられ
る。
【0031】上記の延伸槽部は、所望の絶対圧を有する
加圧飽和水蒸気を延伸媒体として使用し得るだけの気密
性および強度を有し、かつ、所望の大きさ(長さ)を確
保できるものであればよい。
【0032】また、上記第1の加圧水槽部は、延伸槽部
に形成されている被本延伸処理物導入孔から加圧飽和水
蒸気が延伸槽部の外に漏出するのを防止するためのもの
であると同時に、被本備延伸処理物を加圧水中に導いて
当該被本延伸処理物の表面に水分を付着させるためのも
のであり、当該第1の加圧水槽部には延伸槽部内の加圧
飽和水蒸気と同等乃至は僅かに高い絶対圧を有する加圧
水が貯留される。一方、上記第2の加圧水槽部は、前記
の延伸複合繊維引き出し孔から加圧飽和水蒸気が延伸槽
部の外に漏出するのを防止するためのものであると同時
に、延伸複合繊維引き出し孔から引き出された延伸複合
繊維を加圧水中に導いて冷却するためのものであり、当
該第2の加圧水槽部内にも延伸槽部内の加圧飽和水蒸気
と同等乃至は僅かに高い絶対圧を有する加圧水が貯留さ
れる。これら第1の加圧水槽部および第2の加圧水槽部
は、それぞれ延伸槽部の外側に配置されている。
【0033】延伸槽部、第1の加圧水槽部および第2の
加圧水槽部は、それぞれ別個に形成されたものをこれら
が所定の関係となるように密接配置したものであっても
よいし、単一の容器または筒体を所定間隔で仕切ること
によって形成されたものであってもよい。また、延伸槽
部と第1の加圧水槽部とは、これらの間の隔壁を共有す
るものであってもよい。同様に、延伸槽部と第2の加圧
水槽部とは、これらの間の隔壁を共有するものであって
もよい。
【0034】被本延伸処理物は、第1の加圧水槽部の外
側から当該第1の加圧水槽部内を経由して上記の被本延
伸処理物導入孔から延伸槽部内に入る。したがって、第
1の加圧水槽部の容器壁の所望箇所には、被本延伸処理
物を第1の加圧水槽部内に引き込むための透孔(以下
「透孔A」という。)および被本延伸処理物を第1の加
圧水槽部から引き出すための透孔(以下「透孔B」とい
う。)が設けられている。
【0035】同様に、延伸槽部内に送り込まれた被本延
伸処理物が延伸されたことによって生じた延伸複合繊維
は、延伸槽部に設けられている上記の延伸複合繊維引き
出し孔から第2の加圧水槽部内を経由して当該第2の加
圧水槽部の外へ引き出されなければならないので、第2
の加圧水槽部の容器壁の所望箇所には、前記の延伸複合
繊維を延伸槽部内から第2の加圧水槽部内に引き込むた
めの透孔(以下「透孔C」という。)および前記の延伸
複合繊維を第2の加圧水槽部内から引き出すための透孔
(以下「透孔D」という。)が設けられている。
【0036】上記の被本延伸処理物導入孔、延伸複合繊
維引き出し孔、透孔A,B,C,D、特に透孔B,C
は、これらの孔を被本延伸処理物または延伸複合繊維が
通過する際に当該被本延伸処理物または延伸複合繊維と
容器壁との接触が起こらないように形成されていると共
に配置されていることが好ましく、また、これらの孔か
ら延伸槽部内の加圧飽和水蒸気ができるだけ噴出しない
ように設計されていることが好ましい。
【0037】上記の延伸装置を構成している被本延伸処
理物送出機構は、被本延伸処理物を第1の加圧水槽部内
へ一定の速度で送り込むためのものであり、この送出機
構は第1の加圧水槽部の外側に設けられている。また、
延伸複合繊維引き出し機構は、第2の加圧水槽部を経由
してきた延伸複合繊維を被本延伸処理物送出機構による
被本延伸処理物の送り込み速度より高速で第2の加圧水
槽部から一定の速度の下に引き出すためのものであり、
これによって、主として延伸槽部内で被本延伸処理物が
延伸される。当該延伸複合繊維引き出し機構は第2の加
圧水槽部の外側に設けられている。
【0038】被本延伸処理物送出機構による被本延伸処
理物の送り込み速度と延伸複合繊維引き出し機構による
延伸複合繊維の引き出し速度とは、所望の生産速度の下
に所定の延伸倍率の延伸複合繊維が得られるように適宜
選択される。被本延伸処理物送出機構および本延伸処理
物引き出し機構としては、従来延伸処理に使用されてい
る各種のローラを用いることができる。
【0039】なお、上述した延伸装置を構成している第
1の加圧水槽部に形成されている前記の透孔Aから当該
第1の加圧水槽部内の加圧水が漏出することを抑制する
うえからは、透孔Aを水没させることによって当該透孔
Aからの漏水を緩和させる緩衝水槽部を第1の加圧水槽
部の外側に設けることが好ましい。同様に、第2の加圧
水槽部に形成されている前記の透孔Dから当該第2の加
圧水槽部内の加圧水が漏出することを抑制するうえから
は、透孔Dを水没させることによって当該透孔Dからの
漏水を緩和させる緩衝水槽部を第2の加圧水槽部の外側
に設けることが好ましい。
【0040】本発明においては、予備延伸槽を設ける場
合には、この予備延伸槽と本延伸槽は、一般に、紡糸工
程と延伸工程が別々に設けられた製造方法(アウトライ
ン方式)、紡糸工程と延伸工程が連続して設けられた製
造方法(インライン方式)にかかわらず、連続して延伸
設備ラインに配置されるのが有利である。
【0041】このようにして、複合未延伸糸またはその
予備延伸処理物を、加圧飽和水蒸気中で延伸処理するこ
とにより、前述の物性を有する鞘芯構造の延伸複合繊維
を得ることができる。上記延伸複合繊維は、フィラメン
ト、ショートカットチョップのいずれの繊維形態を有す
るものであってもよい。
【0042】本発明の延伸複合繊維は様々な用途に用い
ることができる。具体的には、繊維形態をフィラメント
とした場合、例えば織布タイプのフィルター(ろ材)、
筒体ケースに繊維を直接ワインディングしたカートリッ
ジタイプのフィルター(ろ材)、編み加工したネット
(建築用)、織り加工したシート(建築用シート基
材)、ロープ、ベルト等の材料繊維として利用すること
ができる。また、繊維形態をショートカットチョップと
した場合、例えば自動車タイヤ用補強繊維、コンクリー
ト用補強繊維、抄紙不織布用繊維等として利用すること
ができる。
【0043】
【実施例】次に、本発明を実施例により、さらに詳細に
説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定
されるものではない。なお、未延伸繊維および延伸繊維
の物性は、下記の方法により測定した。 (1)単糸の繊度(dTex) JIS L 1013の重量法により測定した。 (2)繊維強度、ヤング率、伸度 JIS L 1013により、つかみ間隔200mm、引
張速度200mm/分の定速伸長形条件で引張破断試験
を行って測定した。 (3)熱収縮率 JIS L1013の熱収縮率(B法)に基づき、温度
120℃のオーブン乾燥機を用い、30分間熱処理して
測定した。
【0044】実施例1 (1)複合未延伸糸の作製 鞘材として、高密度ポリエチレン「J310」[旭化成
工業(株)製、MI=20g/10分、Q値=6.7]
を、芯材としてホモポリプロピレン「ZS1337」
[グランドポリマー(株)製、MI=27g/10分、
Q値=5.2]を用い、一軸押出機2台と、径0.4m
mのホール300個を有する複合型繊維用ノズルとを備
えた複合紡糸装置により、シリンダー温度250℃、ノ
ズル温度255℃にて、巻き取り速度500m/分の条
件で紡糸し、鞘材と芯材との断面積比が50:50で、
単糸繊度が5.56dTexの複合未延伸糸マルチフィ
ラメントを作製した。
【0045】(2)延伸複合繊維の作製 予備延伸槽(1段)および本延伸槽が連続して配置され
た延伸装置を用意した。本延伸槽は、中央部に透孔を有
するシリコーンゴムパッキンを筒体の両端および内部
(それぞれ4箇所)に配置することによって延伸槽部
(全長12.5m)、第1の加圧水槽部および第2の加
圧水槽部が形成されており、第1の加圧水槽の外側に予
備延伸糸送出手段としてのローラが、また第2の加圧水
槽の外側に繊維引き出し手段としてのローラがそれぞれ
配設されている。
【0046】本延伸槽においては、温度123℃の加圧
飽和水蒸気を延伸槽部に充填し、当該延伸槽部の内圧よ
りわずかに高い圧力の高圧水を第1の加圧水槽部および
第2の加圧水槽部にそれぞれ貯留させた。まず、上記
(1)で得た複合未延伸糸マルチフィラメントを、予備
延伸槽にて、導入ローラ(G1ローラ)速度15.0m
/分、予備延伸糸送出しローラ(G2ローラ)速度4
5.0m/分の条件で、80℃の熱風により予備延伸処
理したのち、本延伸槽にて、延伸繊維引出しローラ(G
3ローラ)速度105m/分の条件で本延伸処理を行
い、複合延伸繊維を作製した。原料の物性および延伸条
件などを表1に示すと共に、延伸複合繊維の物性を表3
に示す。
【0047】比較例1 (1)複合未延伸糸の作製 実施例1(1)と同様にして、鞘材と芯材との断面積比
が50:50で、単糸繊度が8.89dTexの複合未
延伸糸マルチフィラメントを作製した。 (2)延伸複合繊維の作製 上記(1)で得た複合未延伸糸マルチフィラメントを9
0℃の温水延伸槽にて、導入ローラ(G1ローラ)速度
11.1m/分、送出しローラ(G2ローラ)速度5
0.0m/分の条件にて一段延伸処理を行い、延伸複合
繊維を作製した。原料の物性および延伸条件などを表1
に示すと共に、延伸複合繊維の物性を表3に示す。
【0048】比較例2 (1)複合未延伸糸の作製 実施例1(1)と同様にして、鞘材と芯材との断面積比
が50:50で、単糸繊度が8.89dTexの複合未
延伸糸マルチフィラメントを作製した。 (2)延伸複合繊維の作製 上記(1)で得た複合未延伸糸マルチフィラメントを9
0℃の金属加熱ロールにて、導入ローラ(G1ローラ)
速度11.1m/分、送出しローラ(G2ローラ)速度
50.0m/分の条件にて一段延伸処理を行い、延伸複
合繊維を作製した。原料の物性および延伸条件などを表
1に示すと共に、延伸複合繊維の物性を表3に示す。
【0049】実施例2 (1)複合未延伸糸の作製 鞘材として、高密度ポリエチレン「J310」[旭化成
工業(株)製、MI=20g/10分、Q値=6.7]
を、芯材としてホモポリプロピレン「SA2D」[日本
ポリケム(株)製、MI=14g/10分、Q値=3.
2]を用い、一軸押出機2台と、径0.6mmのホール
60個を有する複合型繊維用ノズルとを備えた複合紡糸
装置により、シリンダー温度250℃、ノズル温度25
5℃にて、巻き取り速度1000m/分の条件で紡糸
し、鞘材と芯材との断面積比が30:70で、単糸繊度
が8.89dTexの複合未延伸糸マルチフィラメント
を作製した。
【0050】(2)延伸複合繊維の作製 上記(1)で得た複合未延伸糸マルチフィラメントにつ
いて、実施例1(2)と同じ延伸装置を用いたが、予備
延伸は行わず、130℃の加圧飽和水蒸気による一段延
伸処理を、G1ローラ速度15.0m/分、G3ローラ
速度105m/分の条件で行い、延伸複合繊維を作製し
た。原料の物性および延伸条件などを表1に示すと共
に、延伸複合繊維の物性を表3に示す。
【0051】比較例3 (1)複合未延伸糸の作製 実施例2(1)と同様にして、鞘材と芯材との断面積比
が30:70で、単糸繊度が8.89dTexの複合未
延伸糸マルチフィラメントを作製した。 (2)延伸複合繊維の作製 上記(1)で得た複合未延伸糸マルチフィラメントを9
0℃の温水延伸槽にて、導入ローラ(G1ローラ)速度
12.5m/分、送出しローラ(G2ローラ)速度5
0.0m/分の条件にて一段延伸処理を行い、延伸複合
繊維を作製した。原料の物性および延伸条件などを表1
に示すと共に、延伸複合繊維の物性を表3に示す。
【0052】比較例4 (1)複合未延伸糸の作製 実施例2(1)と同様にして、鞘材と芯材との断面積比
が30:70で、単糸繊度が8.89dTexの複合未
延伸糸マルチフィラメントを作製した。 (2)延伸複合繊維の作製 上記(1)で得た複合未延伸糸マルチフィラメントを9
0℃の金属加熱ロールにて、導入ローラ(G1ローラ)
速度12.5m/分、送出しローラ(G2ローラ)速度
50.0m/分の条件にて一段延伸処理を行い、延伸複
合繊維を作製した。原料の物性および延伸条件などを表
2に示すと共に、延伸複合繊維の物性を表3に示す。
【0053】実施例3 (1)複合未延伸糸の作製 実施例2(1)と同様にして、鞘材と芯材との断面積比
が30:70で、単糸繊度が8.89dTexの複合未
延伸糸マルチフィラメントを作製した。 (2)延伸複合繊維の作製 上記(1)で得た複合未延伸糸マルチフィラメントにつ
いて、実施例1(2)と同じ延伸装置を用いたが、予備
延伸は行わず、125℃の加圧飽和水蒸気による一段延
伸処理を、G1ローラ速度15.0m/分、G3ローラ
速度90.0m/分の条件で行い、延伸複合繊維を作製
した。原料の物性および延伸条件などを表2に示すと共
に、延伸複合繊維の物性を表3に示す。
【0054】実施例4 (1)複合未延伸糸の作製 実施例2(1)と同様にして、鞘材と芯材との断面積比
が50:50で、単糸繊度が8.89dTexの複合未
延伸糸マルチフィラメントを作製した。 (2)延伸複合繊維の作製 上記(1)で得た複合未延伸糸マルチフィラメントにつ
いて、実施例1(2)と同じ延伸装置を用いたが、予備
延伸は行わず、127℃の加圧飽和水蒸気による一段延
伸処理を、G1ローラ速度15.0m/分、G3ローラ
速度97.5m/分の条件で行い、延伸複合繊維を作製
した。原料の物性および延伸条件などを表2に示すと共
に、延伸複合繊維の物性を表3に示す。
【0055】実施例5 (1)複合未延伸糸の作製 実施例2(1)と同様にして、鞘材と芯材との断面積比
が40:60で、単糸繊度が8.89dTexの複合未
延伸糸マルチフィラメントを作製した。 (2)延伸複合繊維の作製 上記(1)で得た複合未延伸糸マルチフィラメントにつ
いて、実施例1(2)と同じ延伸装置を用いたが、予備
延伸は行わず、130℃の加圧飽和水蒸気による一段延
伸処理を、G1ローラ速度15.0m/分、G3ローラ
速度102m/分の条件で行い、延伸複合繊維を作製し
た。原料の物性および延伸条件などを表2に示すと共
に、延伸複合繊維の物性を表3に示す。
【0056】実施例6 (1)複合未延伸糸の作製 鞘材として、高密度ポリエチレン「J310」[旭化成
工業(株)製、MI=20g/10分、Q値=6.7]
を、芯材としてホモポリプロピレン「2005GP」
[出光石油化学(株)製、MI=22g/10分、Q値
=3.8]を用い、一軸押出機2台と、径0.4mmの
ホール1200個を有する複合型繊維用ノズルとを備え
た複合紡糸装置により、シリンダー温度240℃、ノズ
ル温度240℃にて、巻き取り速度350m/分の条件
で紡糸し、鞘材と芯材との断面積比が30:70で、単
糸繊度が17.8dTexの複合未延伸糸マルチフィラ
メントを作製した。
【0057】(2)延伸複合繊維の作製 実施例1(2)と同じ延伸装置を用い、上記(1)で得
た複合未延伸糸マルチフィラメントを、まず予備延伸槽
にて、G1ローラ速度8.0m/分、G2ローラ速度3
6.0m/分の条件で、90℃の熱水により予備延伸処
理したのち、本延伸槽にて、G3ローラ速度52.0m
/分の条件で本延伸処理を行い、複合延伸繊維を作製し
た。原料の物性および延伸条件などを表2に示すと共
に、延伸複合繊維の物性を表3に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【発明の効果】本発明の延伸複合繊維は、結晶性プロピ
レン系重合体を芯材とし、他のオレフィン系重合体を鞘
材とする、破断強度およびヤング率の高い高強度化され
た鞘芯構造を有する延伸複合繊維であり、加圧飽和水蒸
気中で、鞘芯構造の複合未延伸糸を延伸処理することに
より、得ることができる。なお、このものは、破断強度
が6.6cN/dTex以上であれば、繊維構造とし
て、偏光下、クロスニコルの状態で観察した時に竹の節
構造を発現する場合があり、この場合は、繊維外周部は
明部として、繊維内部は暗部としてそれぞれ視認され、
前記暗部を横断するようにして繊維径方向に伸びている
線状の明部が断続的に視認される。上記延伸複合繊維
は、乾式不織布や電池用セパレータ等の湿式不織布など
の用途に好適に用いられる。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 結晶性プロピレン系重合体を芯材とし、
    かつ上記結晶性プロピレン系重合体以外のオレフィン系
    重合体を鞘材とする溶融紡糸された複合未延伸糸を延伸
    処理してなるものであって、破断強度が5.74cN/
    dTexより高く、伸度が30%以下で、かつヤング率
    が43.1cN/dTex以上であることを特徴とする
    延伸複合繊維。
  2. 【請求項2】 複合未延伸糸を、100℃以上で、かつ
    鞘材の融点未満の温度を有する加圧飽和水蒸気中で延伸
    処理してなる請求項1に記載の延伸複合繊維。
  3. 【請求項3】 鞘材のオレフィン系重合体が、高密度ポ
    リエチレンである請求項1または2に記載の延伸複合繊
    維。
  4. 【請求項4】 鞘材と芯材の比率が、断面積比において
    70:30ないし40:60である請求項1、2又は3
    記載の延伸複合繊維。
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